平成二十三年東京都議会会議録第十三号

〇副議長(鈴木貫太郎君) 九十六番斉藤あつし君。
   〔九十六番斉藤あつし君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇九十六番(斉藤あつし君) 昨日も放射線関係の質問が幾つか出ましたが、少し軸足を変えて質問したいと思います。
 私の知り合いが埼玉県加須市に、役場ごと避難をしている福島県双葉町の方だったので、七月末に訪ねたときに、たまたまお会いした行政職員の方が、もうそのころ既に、福島県の避難者の多くの方が放射線のために多分すぐに復興ができない、災害救助法の応急仮設住宅の使用期限は二年だけれども、それを超える避難生活を覚悟しなければいけないなというふうにいっている人が大変ふえているという話をしておりました。
 都内の避難者も、住宅に限らず支援メニューすべてに対して、余り期限を決めないでほしいというふうに思っているかと思います。今後、放射性物質の除去が終わらない場合など、避難生活が長期化する際の都内避難者に対する支援のあり方についてまず伺います。
 二点目として、都議会民主党として、先月、旧グランドプリンス赤坂に避難していた母子を中心に、都内ホテルや公務員住宅への分散後の要望を聞きました。約六百人がまとまって避難していたときには情報の共有が簡単だったのですけれども、分散後、非常に難しくなった。今後は、それぞれの避難者への情報提供とその強化が一層求められると思います。
 都内避難者が必要な情報を的確に得るように、点在する避難者に対して支援をしていくように、都の所見を伺います。
 三番目、これは知事に伺うのですけれども、代表質問でホールボディカウンターのお話が出ました。青森にもあるものですが、これは原子力関連施設が多数あるから、つまり、リスクがあるから、それを承知して置いているということです。
 推進だからこそ用意をするということですから、石原都知事は今でも原発推進論者、そして、その必要性をかねがね論じられておりましたけれども、こういった原発について、大事なことですから持論を持つというのは私も当然だと思っております。
 しかし、一般都民は放射線のリスクに関して、現在、十分に感じているときであります。近所のおじさんが、自分は推進だといっているのとは違いますから、そういう意味では、知事はそれをいう以上、そのリスクをどう説いていくか、どうカバーしていくかということについて、都民、特に子どもやその親など、一番不安が強い人に理解されるようにしなければならないと思うんですが、どのように取り組むのか所見を伺います。
 さて、きのうも事例がありましたけれども、ことしの夏、私も地元の小平市議や市民と一緒に、福島県の子どもたちを小平市の八ヶ岳山荘に招待して、外遊びをさせるというツアーを行ってまいりました。きょう議会にいる皆さんの多くの方も、夏休み、そういった企画をされた方、多いんじゃないでしょうか。
 また、先日も小平市内に都の方で放射線測定器を設置するという報道がされました。大変地元でも歓迎をされております。このように、放射線の測定値というのは皆さん気にしているのですが、一方で、その測定値も大事だけれども、健康への影響がどういうふうにあるかということもお母さん方、お父さん方、大変気にしております。
 実際、多くの医師、研究者が放射性沃素、そして、放射性セシウムなどは、やはり高齢者よりも胎児、乳児、児童への影響が大きいとしています。たばこやアルコールもそうなのですけれども、中高年にも健康に害があるけれども、それ以上に若年層に取り込ませないようにということですね。
 私は、子どもや妊婦さんがいる家庭で、家族がそれを心配するというのは当然のことだと思っています。放射線を可能な範囲で避けるべきとして、堂々と回避行動をとってもらっていいんじゃないかと思います。
 しかし、これを全世代が過度に心配をすれば、それは風評被害になってしまうと思いますので、都には流通している食材について、被災地や消費を助けるという意味でも、安全を今後ともアピールしてもらいたいと思っております。
 実際、これは一般成人の方については、原発事故がなくても三割の方ががんで亡くなっております。正直、医師に聞いてみると、この特定の一定の時期の放射線の影響を、その後、何十年か後のがんの遠因というふうに特定すること自体が非常に調査上難しくて、そういう意味では、年配の方にはなかなかこの関係性をはかることは難しい。お子さんについては、一定程度、放射線からの影響というのは、逆に勘案をする必要があるというふうに解釈をしたらいいと思います。
 もちろん基準内の放射線を維持するということが大事なことなのですが、一方で、子どもを持つ、特に不安を持つ親にきちんと的確に情報を与え、広報していくということは戦略的にしていくべきだと私は思っています。
 現在、都も細かく放射線量を測定して公表しており、それは絶対に必要なことなんですけれども、ただ、一方で、もしも基準を超えていたらどうしたらいいのか、治療とかはどうしているのか、実際になかなかわからないというのが現状じゃないでしょうか。この情報の少なさがやはり不安につながっているんじゃないかと思います。
 そして、病気や感染症の説明において処置や治療の情報がなければ、これは治す方法がないんじゃないか、取り返しがつかないんじゃないかと思っても、患者さんとしては何ら不思議じゃありません。
 実際にはどうしているのか、核種──放射線の種類のことをいうんですが、核種の差はあれ、大変昼どきに申しわけないんですけれども、体外に汗や尿、便で放射線というのは出ていくものです。出るまでの時間は、物質の半減期よりも総じてずっと短くて、生物学的半減期と呼ばれています。
 今、これから問題になるだろう放射線セシウム137の場合、半減期自体は三十年といわれていますが、生物学的半減期でいうと、成人で百十日間しかなく、さらに新生児から乳児については、吸収するけれども十日から二十五日で体外に出るといわれています。その上、体を休めると、より排出も細胞の修復も促されます。
 大量に被曝した場合ですが、この放射線セシウムというのは、木炭や活性炭を吸着体として投与して体の外に出す。もっといえば、フェロシアン化鉄、通称プルシアンブルーというものを投与すると、セシウムとこのプルシアンブルーは結合して、腸管で吸収されなくなって、かなりの割合で体外に除去できるとされます。
 実際に、これは一九八七年のブラジル・ゴイアニア市の汚染事故で使われているんですけれども、もちろんこういった例は大変被曝が強い場合の例で、都内のような線量であれば、きちんと体を休める、子どもでいえば早寝早起きをきちんとするというようなことでも大分促されるということです。
 いずれにせよ、処置の柱は放射線の種類によりますが、体外への排出だということです。これは結構いわれていないことなので、今回ちょっと強調させていただきますが、普通に医学書に載っていることがなかなか出ていないために、非常に不安を持っている方が多いんじゃないかと思います。
 ニュースなどで母乳から検出というふうなことが、文字が躍れば、基準値内であっても不安を募らせるのは当然かと思いますし、行政自身の広報が弱かったら、なかなかそういったことを報道の方に責められないと思います。
 震災後の母子向けの本においては、放射性物質が仮についたとしても、念のためやってみることができることは多数紹介されております。野菜のゆで汁を捨てることで付着した放射線が五分の一になるとか、そしてまた、外遊びの服をはたくとか、そういったことはどこでやってもコストもかからずできることで、逆に、こういったことだったら東京都でももっと推奨できたり、工夫を打ち出したりすることはできたんじゃないでしょうか。
 東京都も、健康安全研究センターのホームページなどでは、原理や測定の解説、頑張っていると思います。しかし、どうしても数値が基本になってしまうこと、なかなか簡単に書けないということもあって、やはり難解で、今後の課題としては平易にそれを表現すること、さらには、測定後のもしものときの対処について言及をすることが課題だと思います。
 しかしながら、原発や電気を使いながら、国も都も、我々議員も含めて、放射線に関するこのような測定数値から安全の間を埋めるような言葉の用意が不十分だったことは、私は反省すべき点だと思っております。今回、処置の情報を出せばと提案したのはこの反省からであり、そして、ぜひ東京都も、全員野球でこの不安を払拭していただきたいと要望しておきます。
 さて、そこでお待ちかねの質問ですけれども、過去、都は新型インフルエンザや、かつてエイズのときに相当な予算を使って理解を深め、拡大や風評を抑えるための広域でストレートな広報活動の実績があります。治療薬タミフルやリレンザの備蓄を通じて都民に安心感を与えました。今回の放射線についての広報活動は、過去の新型インフルエンザでの実績とどう違うのか、所見を伺います。
 また、今後起こり得る放射能災害の健康被害への広報活動をどのように行っていくのかを伺います。
 前半の最後として──今回の災害で健康被害と同様に都内の産業、経済活動に対しても大きな影響を及ぼしました。安心をはかることは大変難しいですが、それでも私たち都民が消費側、提供側、どちらにあっても、観光を初めとする輸出向け工業製品や農水産物ヘの安全に対する懸念を払拭しなければなりません。事業者及び消費者の不安を取り除くために、都としてどのように取り組んできたか伺います。
 後半の、それでは、児童虐待に入ります。
 きのう、里親の話で随分出たのですが、やはり虐待のニュースというのは社会的に不安を募らせるものです。都内における児童養護施設の話を聞くと、現状は、保護のきっかけは違っていても背景に虐待絡みがある、虐待の関係があるという児童が入所児童の九割になるだろうといっていました。家庭復帰に時間と手間をかけている、大変困っているということです。長時間の虐待によって人間関係の構築ができない児童からの試し行為による職員への暴力や反抗も多く、施設職員の退職もそのため早いと聞きます。そのような入所児童の課題とケアについて、都の取り組みを伺います。
 二点目、市区町村の養育支援事業というのがありますが、これは育児が大変なときに家事支援ヘルパーを派遣するものです。養育環境や親の養育能力が低下している場合にもこれは行くんですけれども、私が個人的に子ども家庭支援センターや児童相談所などで複数の専門職に聞いてみたところ、こういった養育困難の背景には、六割方、親の精神疾患や発達障害が見受けられるというふうにいっています。
 私が実際、社会福祉士として扱ったケースの中には、精神障害者の母親に五歳の子どもという母子家庭で、母親に決して悪意はないんですけれども、精神疾患の状態が悪くなると、適切な保育ができず、事実上ネグレクトの虐待になってしまうものがありました。
 不幸なことに、この親自身も自分の親に虐待を受けていた生育歴があって、精神疾患の遠因と推測されます。虐待が連鎖をするようなこのような事態、このような医療支援を要する親に対して、適切な保険医療に親をつなげていくべきと考えますが、児童相談所ではどのように対応しているのか、ここを伺います。
 そして、同時に、虐待を受けた児童の保護とともに、家族が再びともに暮らせるようにというのがひとつ皆さんも思うところでしょうが、親にする指導ということが必要になってまいります。アメリカなんかの場合だと、子どもの保護が始まったと同時に、親に向けた指導というのがスタートするというのが昔からあるんですが、日本ではなかなかこの部分がおくれていました。
 東京都の場合、虐待した親の生活面を含めた支援、指導というのは、どのようにそういうとき行っているのか伺います。
 そして、四点目、児童相談所の現場では、相談、担当案件の増加と内容の複雑化、困難化が進んでいます。研修と十分な職員配置が必要ですが、人材確保、職員育成の取り組みについて伺います。
 五点目、平成二十二年の資料では、各児童相談所の児童福祉司一人に対する児童数を比較してみると、多い順で八王子児童相談所が一万一千六百人、次いで墨田、多摩と続き、小平が一万八百人となっております。
 児童福祉司一人当たりの年間相談件数で見ると、足立児童相談所が百二十八件でトップ、次いで八王子、墨田、また小平が百件と出てきます。そして、エリアが広ければ当然、移動時間もかかりますが、児童福祉司一人の受け持ち面積が多いのは立川、八王子、多摩、また小平です。そして、管轄自治体が多いとその分の連携職員が必要ですから、自治体数がどのくらいあるかというと、立川児童相談所が七市四町と一番多く、次いで小平の九市となっております。職員不足の児童相談所はこのように偏在をしており、私の地元の小平児童相談所は心理士も足りず、地域担当児童福祉司も一市に一・三人程度しかおりません。
 このマンパワー不足を補うためにも、子ども家庭支援センターとの役割分担は重要であります。小平市では指定管理の社会福祉法人が運営しているのですけれども、職員の大半が社会福祉士であるなど、民間事業者での熱意と知識がある専門資格者の確保が近年、大変進んでおります。虐待対策の上で、児童相談所と子ども家庭支援センターとの連携は大変大事だと思いますが、所見を伺います。
 最後に、個人的には小平の児童相談所を含め、先ほど挙げた負荷の大きい相談所の職員をずばりふやしてほしいというのが願いでございます。
 一方で、これら児童相談所とともに、子ども家庭支援センターを初め地域の子どもに携わるさまざまな関係機関が連携をして児童虐待家庭の支援体制を構築してほしいと切に願っているんですけれども、これについてぜひ所見をお願いいたします。
 それでは、以上で質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 斉藤あつし議員の一般質問にお答えいたします。
 原発の問題についてでありますが、質問を聞いていますと、私が何が何でも原子力発電を推進したいといっているように聞こえますけれども、これは勘違いも甚だしいと思います。
 改めて申し上げておきますけれども、そもそも原発推進とか脱原発とかいった、この短絡的な観念的な議論は全く意味がない。これは、頭の粗雑な人間のやることだと思いますね。
 人間として、みずからの考えを説明すべきというご指摘ですが、過日の本会議で都民の代表である皆さんに私の所信をはっきりと申し上げました。昨日の代表質問でも何度も申し上げておりますが、エネルギーの問題は、我々が、あくまで我々が、今後、いかなる経済成長のもとに、いかなる社会、いかなる生活を望むのかということにかかっていると思います。
 その前提として、経済がこれ以上成長しなくていいというのは、これは論外でありますけれども、我が国の経済は高度に発達した社会を支えているわけでありまして、その経済の成長に不可欠なエネルギーをあがなうために、いかなるエネルギーをどれだけ確保するか、複合的、冷静的に決めなくてはならない問題だと思います。
 現総理は、原発についてみずからの考えをまだ明確にしておりませんが、国が都の建言を入れ、ことし、夏などとはいわずに、一刻も早く現実的かつ複合的なエネルギー戦略を立てるように、民主党のあなた方もみずからの考えを明確にした上で政府を、促進していただきたい、そう思います。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、都内避難者に対する支援のあり方でございますが、都は、避難生活の長期化等による避難者の孤立化が懸念されることから、同じ県や市町村からの避難者をできるだけ同じ都営住宅等に受け入れ、地元区市や自治会へ紹介するなど、地域とのつながりや避難者間の交流を図ってまいりました。
 また、孤立化を防ぐための個別訪問や福祉相談、就労、就学支援など被害者の生活全般についてきめ細かくサポートをしております。
 都営住宅等の受け入れ期間につきましても、当初、当面六カ月としておりましたが、震災被害が甚大であり、原発事故収束の見通しが不透明であったことから、本年六月、当面、来年の七月末まで延長するなどの措置を講じております。
 都内避難者の支援に当たりましては、今後とも、国の動向、被災県の状況や意向等を踏まえ、適切に対応してまいります。
 次いで、都内避難者に対する情報提供についてでありますが、避難者が地元とのつながりを保ち、都内で安心して避難生活を送れるよう、必要な支援情報などを迅速かつ適切に提供することは重要でございます。
 このため、都は、これまで東雲住宅等の受け入れ施設に避難者向けの情報コーナーを設置するなど積極的な情報提供に努めてまいりましたが、本年八月からは、新たに都内に避難している各世帯を対象に、月に二回、個別郵送による情報提供を開始いたしました。
 具体的には、被災県等が発行する広報誌、都が行う福祉相談、就労支援等の情報、交流会やイベントの案内等を提供しております。
 都は、今後とも、被災県や関係団体との連携を強化して、避難者のニーズに即した的確な情報提供に努めてまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 七点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、放射能に関する広報活動についてでございますが、一昨年に新型インフルエンザが発生した際には、スペイン風邪など過去の事例や海外での鳥インフルエンザの状況を踏まえまして、既に行動計画やガイドラインを策定いたしておりまして、啓発ポスターや広報紙により感染予防、拡大防止策を周知するなど、計画的な広報の実施が可能でございました。
 一方、今回の福島第一原発事故によります放射能の問題につきましては、我が国において例がなく、健康影響などの知見が限られ、対策のよりどころとなる安全基準もいまだ国から明確に示されていない状況でございます。
 こうした状況の中で、都は、刻々と状況が変化する中、リアルタイムに情報が発信できるホームページを中心にいたしまして、大気中の放射線量や食品の検査結果などの最新データを公表してまいりました。
 また、専用の電話相談窓口を設置して都民の質問に対応しているほか、ホームページに放射能の健康に対する影響を含めまして、わかりやすいQアンドAを掲載いたしております。
 今後とも、状況の変化に応じまして、都民の不安や疑問に的確にこたえられるよう、広報の内容や時期、媒体などの検討、工夫を重ねてまいります。
 次に、児童養護施設等に入所している児童の課題とケアについてでございますが、施設に入所している児童には、虐待を受けるなど、それまでの養育環境の影響により良好な対人関係を築くことができなかったり、あるいはパニックを起こすなど、情緒や行動上の問題を抱える者も少なくありません。
 こうした児童に対しては、一人一人の抱える問題に合わせまして、きめ細かなケアを行う必要があるため、都は、児童を六人程度の小規模のグループに分けまして、手厚い体制で養育をいたします小規模グループケアを進めているところでございます。
 また、平成十九年度には、都独自の専門機能強化型児童養護施設制度を創設いたしまして、児童精神科医や治療指導担当職員を配置する施設に対し支援を行うなど、ケアの充実を図っております。
 次に、医療支援を要する親への対応についてでございますが、児童相談所は、親からの虐待が明らかになった場合、子どもの状況や家族環境など、個々の家庭状況等を把握した上で、その家庭に対する支援方針を定め、親への指導を行っております。
 そのうち、精神疾患の疑いがあるなど、医療支援が必要な親に対しては、保健所等と連携をいたしまして、医療機関への受診の働きかけを行いながら家庭生活を立て直し、子どもの養育が適切にできるよう支援を行っております。
 さらに、児童相談所では、子ども家庭支援センター等の地域の関係機関と連携をしながら、見守りや相談など必要な支援を行っております。
 次に、児童虐待を行った親への指導についてでございますが、各児童相談所では、虐待の再発を防止するため、児童福祉司が面接や家庭訪問などを通じ、家庭環境を把握した上で、生活の改善や親子関係の修復に向けた助言指導を行っております。
 また、都の中央児童相談所でございます児童相談センターにおきましては、親が子どもに対する虐待への問題認識を持つとともに、子どもの問題行動に対応するためのスキルを身につけられるよう、児童精神科医や心理職員などの指導のもとで、グループカウンセリングを実施いたしております。
 今後とも、児童相談所において、こうしたプログラムも有効に活用しながら、虐待を行った親への支援を進めてまいります。
 次に、児童福祉司の確保と育成についてでございますが、都はこれまで、福祉施設での実務経験等がある者の任期つき採用や庁内での人材公募などを行いまして、児童福祉司として高い専門性を持った有能な人材の確保に努めてまいりました。
 また、新任の児童福祉司に対しては、一カ月程度をかけて、児童の発育や心理の基礎知識、親子への指導方法などを習得させる初期研修を行った後、ベテランの児童福祉司の指導のもとで相談援助の実務を行うことにより、実務能力の向上を図っております。
 さらに、中堅以上の児童福祉司に対しましても、法律、心理、医療などの専門家を講師といたします事例検討など、専門性を高めるための研修を行っております。
 次に、児童相談所と子ども家庭支援センターの連携についてでございますが、都は、地域における児童虐待への対応力を強化するため、児童家庭相談の一義的な窓口でございます区市町村に、虐待対策要員を配置いたしました先駆型子ども家庭支援センターの設置を進めておりまして、現在、五十一の区市町が先駆型のセンターを設置しております。
 児童相談所は、子ども家庭支援センターと常に連携をしながら虐待ケースに対応をいたしておりまして、家庭調査や相談など、初期対応についてはセンターが行い、重篤な場合には、児童相談所がセンターの協力も得ながら、心理診断や医学診断など専門的な判断を行い、必要に応じて一時保護などの法的な措置を講じているところでございます。
 最後に、地域の関係機関との連携強化についてでございますが、都は、児童虐待の早期発見に向け、地域の関係機関と情報を共有し、連携をして対応するため、児童相談所に地域支援を行う職員を配置いたしております。
 また、今年度から、区市町の先駆型子ども家庭支援センターに、地域の関係機関と連携や調整を担う虐待対策コーディネーターの配置を進めております。
 こうした取り組みのもとで、個々の児童の援助方針等について、児童相談所、子ども家庭支援センター、学校、保育所、保健所等の地域の関係機関が合同で検討する場を定期的に設けまして、児童の支援に有用な情報を共有しながら、適切な支援を行っております。
 今後とも、地域の関係機関との連携強化を進め、児童虐待への対応力向上に取り組んでまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 福島第一原子力発電所事故に係る産業面での対応についてのご質問にお答えいたします。
 事故による産業への影響を最小限に食いとめるためには、第一に、目に見えない放射性物質に関する正確な情報を、都民を初め国内外に提供していくことが重要であります。
 こうした観点から、都は震災直後から検査体制を整え、正確な情報の発信に取り組んでおります。
 まず、農林水産物につきましては、関係機関が連携して計画的に検査を行い、その結果を迅速に公表しております。これまでに約二百の検体を検査いたしましたが、市場に流通している都内産農林水産物について、国が定めた暫定規制値を超えたものは出ておりません。
 工業製品につきましては、海外での風評被害に対応するため、産業技術研究センターで、都内の中小企業の製品を対象に、無料で放射線量の測定と証明書の発行を実施しておりまして、八月末までに五百件を超える検査要望にこたえております。
 観光分野では、東京の観光ウエブサイトにおきまして、日々の都内の放射線量等を英語のページからでも確認できるようにするなど、旅行者の回復に向けた情報発信に取り組んでおります。
 原子力発電所事故から半年が経過いたしましたが、国はいまだ安全基準の設定、検査体制の構築、処分方法の確立が一体となった十分な対策を講じておりません。
 都は、速やかに対策の実施を国に求めるとともに、今後とも事故の動向を見きわめつつ、こうした多面的な取り組みを行いまして、都内の産業を支援してまいります。

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