平成二十三年東京都議会会議録第十三号

   午後一時開議

〇議長(和田宗春君) これより本日の会議を開きます。

〇議長(和田宗春君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

〇議長(和田宗春君) この際、会議録署名議員の変更について申し上げます。
 本日の会議に限り、相川博君から十一番関口太一君に変更いたします。ご了承願います。

〇議長(和田宗春君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 知事より、東京都教育委員会委員の任命の同意について外人事案件二件が提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

〇議長(和田宗春君) 昨日に引き続き質問を行います。
 七十八番松下玲子さん。
   〔七十八番松下玲子君登壇〕

〇七十八番(松下玲子君) 天罰と知事が称した東日本大震災から半年ほどの間に、集中豪雨や台風の被害が相次ぎました。つぶさに振り返れば、ただただ眼を閉じ、とうとい命に深く思いをいたす次第です。
 さて、一たび将来を見据え、今般の甚大な犠牲をもたらしたこれらの災害を検証するとき、極めて差し迫った東京の課題があぶり出されてまいります。
 初めに、エネルギー政策について伺います。
 ことしの夏はオイルショック以来三十七年ぶりに電力使用制限令が発令され、都民一丸となった節電に取り組んだ結果、予定より早く制限令は解除されましたが、ことしの冬や来年の夏以降も含めて、今後の電力の需要と供給がどうなっていくのかは不透明なままで、都としての総合的な対策が必要であると考えます。
 九月二十六日には、東京電力が今夏の電力需給状況に関する発表を行いました。八月の最大電力の推移は、ほぼ平年並みの暑さではあったが、昨夏の同気温の日と比較すると約九百から一千万キロワット低い水準となっており、節電の成果があらわれる結果となっていました。電力供給に不信を募らせたままの現状、東京電力は、ことしの冬や来年の夏の需給見込みとその根拠を早急に開示すべきであると考えます。
 今後、原発を再稼働させなくても、停止中の発電所を稼働させれば電力は足りているという試算もあります。企業の自家発電総量は年々増加し、莫大な埋蔵電力があるという試算もございます。ことしの冬及び来夏の電力の正確な需給見通しを東京電力が早急に発表するよう都としても要望していただき、東電の大株主である責務を果たすべきと考えます。
 都はことし五月、東京緊急対策二〇一一を取りまとめるとともに、今夏の大幅な電力不足に対応するため、電力対策緊急プログラムを策定し、全庁挙げた取り組みを推進してきました。
 都みずからが徹底した節電に取り組みながら、民間事業者や家庭の節電を誘導するとともに、都民生活を支える社会的インフラ施設における電力確保対策を進めるため、非常用発電設備の活用等を図っています。
 そこで、今夏の都の取り組みを振り返り、自家発電の活用も含め、都有施設全体でのピーク時の電力削減の効果はどうであったのか伺います。
 あわせて、民間医療機関や社会福祉施設における自家発電機の導入支援の状況について伺います。
 家庭の分散型電源の確保を支援するために、家庭における創エネルギー機器等の導入補助が始まりました。環境整備公社と連携し、太陽光発電システムやガスコージェネレーションシステム等の補助事業の受け付けを開始していますが、申込状況はどうなっているか伺います。
 家庭において創エネルギー機器等の普及には、機器を導入した際のメリットやデメリットの説明、初期投資にどのくらいかかるのか、ランニングコストがどう変わるのか、賃貸や持ち家等、住宅所有の有無、マンションか戸建てかで設置は異なるのかなど、都民がわかりやすくイメージできるような取り組みが必要であると考えます。家庭における電源分散を進め、どのように創エネルギー機器の導入促進に向けた取り組みを行っていくか伺います。
 例えば、ガスコージェネレーションシステム住宅のモデル事業を環境配慮型分譲住宅として、都有地を定期借地として民間のガス会社や住宅会社等とともに行うこともできるのではないか、行政と民間企業の役割分担を明確にした上で、よりわかりやすく都民への情報提供を求めます。
 原発による電力供給が極めて不安定となった現状、短中期的には、原発にかわり天然ガス発電や地域分散型の発電へ移行すべきと考えます。都の天然ガス発電所プロジェクトチームが発足しているようですが、このプロジェクトチーム発足の目的と開催状況、決定事項について伺います。
 あわせて、天然ガス発電所プロジェクトチームを単独ではなく、エネルギー政策全体をどうしていくかといった観点から取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 九月十四日、天然ガス発電所の用地候補として突如五カ所が発表されました。天然ガス発電所を新設し、都の電力を地産地消で賄おうという趣旨には一定の賛同はいたしますが、都営の発電所をつくるのではなく、都はあくまで土地を貸す程度にとどめ、既に天然ガス発電を行っている民間企業等に事業実施はゆだねるべきであると考えます。なぜ、どのように五カ所を用地候補として選定したのか伺います。
 また、土地に関しても、ほかに本当に用地候補はないのか疑問があります。もともと東京ガスの工場跡地であった豊洲の市場予定地こそが天然ガス発電にはふさわしい用地候補とも考えますが、あわせて見解を伺います。
 本件は、スピード感を持って取り組まなければならない課題であるはずです。同様の計画をエネルギービジョンとして明記している大阪市では、既に九月議会で天然ガス発電の調査予算が計上されています。計画から実施まで何年もかかるような悠長なことでは、ことしの冬や今後の夏場の需要増には対応できません。震災後の今だからこそ、教訓を生かさなければならないはずです。
 つまり、エネルギー政策に対する明確なビジョンを早急に示し、他県に依存してきた電力というエネルギーを地産地消へ、さらには地域分散型へと転換していくべきであると述べ、次に水資源について伺います。
 地産地消の取り組みは電力だけにとどまることなく、今こそエネルギーや水の自立的な都市東京を目指すべきです。他県の犠牲、他県の人々の生活を犠牲にしなければ、東京が利水上も治水上も本当に成り立たないのかどうか検証が必要と考えます。
 今回の福島原発事故後の三月末には、放射性物質の飛散により、水道水からも乳児の飲用基準を超える放射性沃素が検出されました。その後、非検出が続いており、検査体制も強化されているようではありますが、今後、台風や豪雨等で堆積していた放射性物質が川に流され、水道水から新たに放射性物質が検出されるおそれも想定されます。水道水の検査体制や放射性物質の除去等、水道水の安全対策にどのように取り組んでいるのか伺います。
 また、地表に堆積している放射性物質、いわゆるホットスポットともいわれている放射性物質汚染の激しい地域を調査し、除染を行うことが今後の重要な課題でもあり、国の決定を待たずとも、区市町村と連携して取り組んでいただきたいと要望いたします。
 震災以降、水道水に関して引き続き検査が継続され、結果も報告されてはいますが、万が一のときのためにも、災害時の地下水の活用について注目すべきと考えます。現在の水道事業における都内の地下水の利用実態について伺います。
 さらには、新たに利活用できる地下水はないか、今のうちから研究すべきと考えます。災害時を含めて地下水をこれまで以上に積極的に活用すべきです。今回の大震災を教訓として、地下水の活用を推進すべきと考えますが、見解を伺います。
 地下水は、新潟中越沖地震で断水が続いた後も活用され、深刻な水不足を防いだともいわれています。厚生労働省が行っている原発事故後の福島や周辺の地下水の実態調査では、深井戸から水をくみ上げる表流水の影響を受けない地下水は、放射性物質による汚染を受けていません。
 しかし、現状では、地下水は都の保有水源として位置づけられておりません。利用実態がありながら、課題を抱える水源にすら位置づけられていないことが都の利水計画における現状です。この現状を改めて、地盤沈下や地下水盆の実態調査を行った上で、地下水を災害時にも有効な貴重な保有水源として位置づけるべきと要望いたします。
 最後に、八ッ場ダムについて伺います。
 私は、過去五回、八ッ場ダムについて質問を行ってきました。問題が多く、さまざまな角度から……(発言する者あり)現場も行っております。質問せざるを得ないのですが、特に現地の地盤の問題、遠く飛鳥時代から噴火を繰り返している活火山である浅間山から二十キロメートルほどという地理的背景、地すべりの危険性を指摘し、工期の再々再延長や事業費の再々度の増額の可能性があると指摘しました。
 今回、改めて過去の質疑を振り返りましたところ、質問に対して、利水上も治水上も都にとって必要不可欠なダムとの答弁が繰り返されていました。これはまさに、原発は安全だ、安全だと繰り返されてきたことと類似の無味乾燥な答弁が繰り返されてきたということに改めて気づき、本当に治水上、必要不可欠なダムなのかどうか、改めて詳細に確認いたします。
 八ッ場ダムの治水の目的について伺います。
 あわせて、八ッ場ダムが建設された場合に、治水の効果を発揮する地域はどこか伺います。
 ダムの洪水調節効果は、河道貯留効果といわれているように、下流に行くほど小さくなるとの指摘もあります。ダムに頼らずに、都内の河道整備、具体的には堤防整備、河床掘削、堤防強化等を行い、地域住民の安全を守ることができる現実的な治水対策を早急に進めるべきと考えます。
 八ッ場ダムが治水の効果を発揮すると想定される雨量と雨の降り方について伺います。
 自然の脅威に対して、ダムは本当に有効なのでしょうか。台風十二号の被害、ダムが人の命や財産を守るために機能しなかった事実が表面化したと、元国土交通省防災課長で淀川流域委員会委員長であった宮本氏は、記録的豪雨にダムは機能したかと題して、今回の災害直後に意見を述べております。
 ダムが効果を発揮するストライクゾーンは小さく、大災害にダムは極めて効果的には薄く、住民の命を守るためには、優先的にやらねばならないことがたくさんあるとも述べていました。ダムの効果に疑問を持ち、いかに住民の命を守るかといえば、第一には避難、避難体制を整えることであり、ダムをつくっても、その想定以上のものが来たら効果はなくなり、ダムができたから安心ではなく、自然というものはこれで終わるものではない、ダムをつくれば安全というダム安全神話から脱却しなければならないとのことでした。
 そこで、都は、集中豪雨や最近の台風などの豪雨にダムは機能すると考えているのか伺います。
 九月十三日、八ッ場ダム建設事業の関係地方公共団体から成る検討の場において、八ッ場ダム建設事業の総合的な評価案が発表されました。この発表について、八ッ場ダム建設容認の検証結果が出たとの報道がなされ、勘違いされている方もいらっしゃるようですが、当日の議題で、今後意見聴取の進め方も取り上げられているように、検証結果の中間発表にすぎず、最終的な評価はこれからということが正確な事実です。
 発表内容は、ダム事業推進にとって有利な結果となっており、これは、ダム事業を推進してきたダム事業者みずからが検証主体である上、推進を主張する関係自治体の意見のみが検証結果に反映され、ダムに疑問を持つ流域住民や有識者が意見を述べる場すら与えられていないからにほかありません。
 八ッ場ダムの検証作業について、事業の実施主体である国土交通省みずからが検証を行っていることの公平性と妥当性をどのように考えるか伺います。
 原発の安全管理を原発推進の経済産業省内の原子力安全・保安院が行ってきたこと、その結果、福島原発の事故が起きたことも考慮に入れるべきです。
 地震が頻発している福島の浜通り、双葉断層上に原発をつくることに警鐘を鳴らし続けていた専門家がいたにもかかわらず、保安院は昨年六月、福島第一原発双葉断層による地震の地震動評価を発表し、敷地の地震動特性が十分に考慮され、不確かさについても適切に考慮されており、妥当なものと判断したという発表も行っていました。警鐘を鳴らす声は決して届かず、結果、今回の原発の大事故です。
 八ッ場ダムも同様、ダム建設が新たな災害を呼ぶ可能性について調査すべきです。八ッ場ダムの予定地では、地すべりの危険性等、専門家からの指摘もあります。こうした指摘について、都として八ッ場ダムの安全性をどう考えているのか伺います。
 適地ではない、安全性に問題がある場所にダムをつくってしまった例として、二〇〇二年に本体工事完成後、地すべりが起き、対策工事のため九年たったいまだに本格運用ができていない奈良県の大滝ダムがあります。地元住民の地すべりの懸念の声を無視し、万全の対策をとっているとして、ダム計画の見直しを行わなかったのは、事業者である国土交通省、当時は建設省です。国土交通省のいう万全の対策は万全ではないことが不幸にも証明されてしまっています。台風十二号の被害、大滝ダムの反省から八ッ場ダムは学ぶべきです。国土交通省の検証は中間結果であり、今後、ダム反対派の意見やパブリックコメントも実施した上で、最終的には、本体工事中止の判断、中止の英断が現政権で行われることを切に願い、質問を終わります。(拍手)
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 松下玲子議員の一般質問にお答えします。
 まず、この夏の電力対策の成果についてでございますが、都は、電力対策緊急プログラムに基づき、この夏の対策に取り組んでまいりましたが、都庁舎では、国が示した一五%の削減目標を上回る二五%をピーク時の削減目標として設定し、この目標値を上回る削減を達成することができました。
 その他の五百キロワット以上の大口の都有施設全体としても、NaS蓄電池の活用や設備の運転時間の変更等に加え、自家発電設備の活用も含めた対策を行い、昨年比でおおむね二〇%のピーク時電力の削減を達成しております。
 また、民間の医療機関や社会福祉施設への自家発電設備事業につきましては、現在約二百件を超える申請をいただいております。
 こうした都の取り組みに加えまして、都内では、企業、家庭での創意工夫により、昨年に比べ二割から三割程度の電力を削減する大きな成果を上げております。
 しかしながら、一部には、いわゆる我慢の節電を強いられた面もあったのも事実でございますから、昨日もご答弁したとおり、現在、都におきましては、この夏の節電の取り組みについて、企業等からすぐれた取り組み事例を収集分析しております。
 今後、無理のない効果的な節電手法を明らかにし、この冬以降は、企業の事業活動や都民生活に大きな支障がない賢い節電を促進するとともに、供給側でも都独自の取り組みを進め、需給バランスの最適化を実現してまいります。
 次に、創エネルギー機器の補助金の申請状況についてでございますが、九月二十八日、太陽光発電システムは二千三百八十七件であり、昨年同時期を三割程度上回っております。一方、七月末に受け付けを開始したガスコージェネレーションシステムは四十六件となっております。
 最後に、創エネルギー機器の導入促進に向けた取り組みについてでございますが、都はこれまで、PR効果の高い広報媒体に記事を掲載するとともに、太陽エネルギー見本市等のイベントを開催し、都民が創エネルギー機器にじかに触れる機会を提供してまいりました。
 今後、一層の導入促進に向け、機器それぞれの特徴や効果、補助制度をわかりやすく解説したリーフレットを作成するなど、引き続き積極的に普及啓発に努めてまいります。
   〔知事本局長秋山俊行君登壇〕

〇知事本局長(秋山俊行君) 二点の質問にお答えをいたします。
 まず、東京天然ガス発電所プロジェクトチームについてでございますが、大震災以降、定期点検等で停止している原子力発電所の再稼働は依然として不透明であり、加えて、産業界や家庭での厳しい節電と、老朽化した火力発電所のフル稼働や、電力会社間の相互融通などでこの夏を乗り切った現状を見れば、電力の安定供給に関して、いまだ楽観的な見通しに立てない状況にあるというふうに考えております。
 また、原発事故やそれに伴う巨額の賠償への対応を契機といたしまして、今後の電力供給体制のあり方そのものについても、さまざまな議論が行われているところでございます。
 こうした電力事情のもと、電力の大消費地である都が、その大部分を他県に依存してきたこれまでの状況を改善するため、地産地消の東京産エネルギーの創出に主体的に取り組むとともに、環境負荷が少なく高効率な天然ガス発電所による電力の確保を推進していくということは、エネルギー政策全体を考える上でも意義あるものというふうに考えております。
 このため、百万キロワット級の大規模発電所の整備を目指して、局横断型のプロジェクトチームを設置いたしました。去る八月二日にチームを立ち上げ、関係局において課題の整理を行うとともに、専門家からの情報なども得ながら、都有地を一定の条件のもとでスクリーニングし、九月十四日、五カ所の都有地を発表したところでございます。
 次に、天然ガス発電所用地の選定についてでございますが、プロジェクトチームにおいて、百万キロワット級の大規模発電所の整備に必要な条件をあらかじめ設定し、その条件すべてを満たした土地を都有地の中から選定したものでございます。
 まず、百万キロ級の施設が設置可能な五ヘクタール以上の土地で、発電所の設置が許される用途地域にあるか否かということで選別を行い、さらに天然ガスパイプライン、送電網などのインフラへの接続や土地の利用計画の有無等によってスクリーニングを行った結果、五カ所の土地が該当したということでございます。
 ご質問の事業スキームを初めといたしまして、採算性などにつきましては、今後、事業可能性調査の中で検討していく予定でございます。
 また、豊洲新市場予定地についての言及がございましたが、既に市場としての利用計画が明確になっており、スクリーニング条件を満たさないということから、発電所の適地から除外したものでございます。
 なお、当該土地には、昭和六十三年まで都市ガスの製造工場があったということはご指摘のとおりでございますが、今回の発電所計画と四半世紀も前から存在していない工場とは何の関連もなく、これらを結びつけて論ずることは不適切だと考えます。
   〔水道局長増子敦君登壇〕

〇水道局長(増子敦君) 三点のご質問にお答えします。
 まず、水道水の検査体制及び放射性物質の除去等、水道水の安全対策についてでございますが、東日本大震災後、水道局では、関係各局と連携し、各水系を代表する浄水場の浄水を毎日検査し、水道水全体の状況を把握するとともに、検査結果を即日公表してまいりました。
 さらに、水質センターに放射性物質を測定する機器を導入することにより、八月から、対象を他の浄水場や多摩地区の地下水を水源とする浄水所まで拡大し、検査体制を強化いたしました。
 また、震災後、放射性沃素を除去するため、粉末活性炭注入を強化し、対応してまいりましたが、現在は浄水だけでなく、もとの原水も不検出の状況が続いているため、放射性沃素への対応としての粉末活性炭の注入強化は行っておりません。
 一方、放射性セシウムは、通常の浄水処理で除去可能であり、不検出の状況が続いております。
 次に、地下水の利用実態についてでございますが、当局におきましては、現在、約二百五十本の井戸が稼働中であります。平成二十二年度の地下水揚水量は、一日平均約二十三万立方メートルであり、配水量全体に占める割合は約五%でございます。
 最後に、災害時の地下水活用の推進についてでございますが、さきの補正予算において、地下水を緊急時に活用するため、非常用ポンプや自家発電などの整備を既に事業化したところであります。今後とも、地盤沈下や水質の動向に十分配慮しつつ、可能な限り地下水の活用を図ってまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 八ッ場ダムに関する五点の質問にお答えいたします。
 まず、八ッ場ダムの治水効果でございますが、利根川上流域においては、この流域の東側には多くのダムがあるにもかかわらず、西側でございますいわゆる吾妻川流域には、洪水調節機能を持つダムが今までございませんでした。八ッ場ダムは、この吾妻川流域に初めて建設される施設でございます。
 したがって、八ッ場ダムは、この西側流域の洪水調節の機能を持つものでございまして、このダムが完成すれば、利根川上流の三流域すべてにダムが整備されることになりまして、既存ダム群と相まって洪水調節を効果的に行うことが可能でございます。
 これらにより、利根川全川にわたって洪水時の水位を低下させて、堤防決壊のリスクを軽減することができるようになり、区部東部を初め首都圏全体の洪水被害の危険性を大きく低減することが可能となります。
 次に、八ッ場ダムが効果を発揮する降雨でございますが、八ッ場ダムの一切の予断を持たない検証では、ダムがある場合とない場合の河道整備などを含めた全体の事業を比較し、コストや実現性の面でダム案が最も有利と結論づけたものでございます。
 この検証では、八ッ場ダムについては、治水基準点である八斗島地点において毎秒一万七千トンの流量を確保することを安全度の目標として、国により作業が進められてきております。
 具体的には、昭和十年から平成十九年までの七十三年間における八斗島の実績によるピーク流量と、その上流域において三日間に降った雨量の双方から流量規模の大きな八つの洪水を抽出して、八ッ場ダムによる効果量を試算しております。
 次に、八ッ場ダムの治水効果でございますが、ただいまお答えした八つの洪水について、日本学術会議が妥当と判断した計算モデルを採用して、八ッ場ダムによる効果量を試算しております。その結果、八ッ場ダムが確実に治水効果を発揮することが確認されております。
 次に、八ッ場ダム建設事業の検証でございますが、八ッ場ダムの検証主体や進め方については、当時の国土交通大臣が委員を任命した有識者会議からの提言に基づき決められております。具体的には、提言の内容に沿って、国は、ダム事業の検証に係る検討に関する評価実施要領細目を定め、検証を行ってまいりました。
 その結果、八ッ場ダムが治水、利水の両面から最も有利であるとの結論が出たものでございます。都は、国に対して、直ちにダム本体工事の着工を決断し、予定どおり平成二十七年度までに完成させるよう強く求めてまいります。
 次に、八ッ場ダムの安全性でございますが、国は、地質や地すべりの専門家から成る検討委員会を設置し、貯水池周辺の地盤の性質や状態、地すべりの可能性について調査検討を行い、必要な対策を講じることとしております。
 さらに、平成二十一年に地すべり調査や対策に関する指針を定めたことから、八ッ場ダムについても、最新の技術を用いて今後詳細な調査を行い、対策を決めるとの方針を示しております。これらのことから、地すべりに対する安全性は、国の責任において確保されると考えております。
 なお、実際の施工に当たっては、引き続きコスト縮減や工期短縮に対して努力すると聞いております。

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