平成二十三年東京都議会会議録第九号

〇議長(和田宗春君) 四十七番西崎光子さん。
   〔四十七番西崎光子君登壇〕

〇四十七番(西崎光子君) まず初めに、三月十一日に発生しました東日本大震災により亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災した皆様に心よりお見舞い申し上げます。
 今回の震災は、多くの人の価値観を変えるほどの大きな衝撃を与え、明治維新、戦後に次いで、第三の変革期が来たといわれています。政治だけではなく、産業構造、エネルギー政策、社会保障、さらに私たちの生活や生き方までも見直していかなければならない時期になりました。
 石原知事四期目のスタートに当たり、都政運営の新たな戦略も示されましたが、日本の自治体のトップに立つ知事として、どのような決意で臨まれるのか、知事の見解を求めます。
 五月に出された都政運営の新たな戦略には、「十年後の東京」計画を改定して、「(仮称)二〇二〇年の東京」を策定し、都が目指す将来の東京の姿と、そこに向けた政策展開を明らかにすると述べられています。将来の東京を描き、これからの方向性を考えていくためには、大きく時代が転換するときだからこそ、多くの都民が参加し、知恵を出し合い、議論を進めていくことが重要です。都内には、民間企業だけではなく、多くの市民活動の実践があり、経験もスキルも蓄積されています。
 「十年後の東京」計画の改定に当たって、都民が参加する機会をどのようにつくるのか、お尋ねします。
 東日本大震災から三カ月が過ぎても、高齢者や子どもを抱えた母親、病人、障害者など、困難な状況に置かれやすい人々が、避難所などの生活で、依然として不自由を強いられており、きめ細やかな支援が求められています。
 避難所や仮設住宅の運営に当たっては、地域で生活をしている女性の視点を生かし、被災者に寄り添った支援を行うために、避難所運営に女性のリーダーを配置することや、防災会議などに女性の参画を進め、男女がともに共同で災害復興対策を進めていく必要があります。
 このことは、阪神・淡路大震災、中越地震を経験した女性たちから指摘され、二〇〇五年に防災基本計画の中に、女性の参画、男女双方の視点が明記されました。
 今回の災害復興に当たっても、女性の視点を入れる必要があると考えますが、都の見解を求めます。
 都が被災した場合に、ボランティアの受け入れについて、どういう体制をとるかは重要です。災害が起こったときに、被災した初期から地域のボランティアがすぐに活動に入れること、また、被災者のニーズを把握して、ボランティアを受け入れることが必要であり、ボランティアを受け入れるためのコーディネーターの役割がとても重要になります。
 ボランティアの受け入れに向けて、災害ボランティアコーディネーターをどのように育成していくのか、都の見解を伺います。
 次に、放射能汚染対策についてです。
 原発事故収束のめどが立たない中で、放射能汚染への不安は広がるばかりです。チェルノブイリ事故の際、日本では輸入食品の放射能汚染に対し、放射性セシウムについて三百七十ベクレルの暫定限度を設け、それを超えた香辛料や干し肉などが輸出国に送り返されました。
 都の健康安全研究センターは、その後も輸入食品の放射能測定を継続しており、平成二十一年度も基準を超えたブルーベリー加工品などがあったと報告されています。事故発生から二十五年近くになっても、いまだ放射能の影響があることから、こうした検査を継続していることは心強いものです。
 今回は、国内で発生した放射能汚染であり、輸入時の基準では済まないことは明らかです。
 国は三月十七日、急遽、食品に関する暫定規制値を発表、三月二十一日には、飲用水の摂取制限に関する指標が乳児についても設定され、子どもへの影響を懸念する声が高まりました。
 都は、都内産の農産物についても検査を行っていますが、消費者のみならず、生産者からも検査品目をふやしてほしいという声が聞かれます。特に、子どもに提供する給食食材等の安全確保も大きな課題です。これからの食の安全について、都の見解を伺います。
 今回の放射能汚染については、都は当初から、連日、健康安全研究センターや産業技術研究センターでの放射線量や放射能測定を行い、さらに、地上一メートルでの測定や、都内百カ所での測定及び測定器の貸し出しなどにも対応してきたことは評価するものですが、放射能汚染の測定や暫定規制値が遵守されても、数値の持つ意味などが正しく理解されない限り、都民の不安はなかなか解消されません。
 残念ながら、放射能汚染は一朝一夕に解決できないことから、その時々に応じて、学習会やシンポジウムを回数や場所をふやして開催し、都民が正しく対応できるようにすべきではないかと思います。都の情報提供のあり方について伺います。
 最後に、エネルギー政策です。
 生活者ネットワークは、これまでも原発に依存しない再生エネルギーや自然エネルギーにシフトしていくエネルギー政策を求めてきました。
 今回の緊急プログラムは、これまでの温暖化対策の取り組みを踏まえて、省エネルギーと再生可能エネルギーの導入をさらに進めようとするものです。ことしの夏については緊急的な措置となりますが、今後の方向性を低炭素・高度防災都市を目指してと将来像を示しています。これはCO2削減とエネルギーの確保をあわせて実現しようという意欲的な取り組みと認識していますが、見解をお尋ねします。
 ことし夏の取り組みは、自家発電を活用することも入っています。緊急対策という観点からやむを得ないところではありますが、CO2削減との両立というところからは課題もあります。
 一方、一般家庭においては太陽光発電が促進されていますが、市民が出資して再生可能エネルギーの発電所をつくる動きも全国に広がっています。
 東京でも、市民の活動により、お寺や幼稚園の屋根を使って太陽光パネルを設置した事例がありますが、自宅に太陽光パネルを設置できない人も参加できる仕組みとして注目されています。今後の支援策の充実を求めるものです。
 また、エネルギーは電気だけではなく、太陽熱や地中熱利用、ガスなどで電気と熱を生み出すコージェネレーションも実用化されています。
 今回の補正予算には、家庭における分散型電源の導入補助として、ガスコージェネ機器も対象としていますが、家庭における分散型電源確保の意義について伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 西崎光子議員の一般質問にお答えいたします。
 この国難のさなかにあっての都政運営に当たっての決意についてでありますが、かつての明治維新であれ、敗戦の後の日本の復興であれ、国家の存亡をかけ、また、みずからの人生をかけて先人たちがそのたび苦労を重ねた結果、我が国は雄々しく立ち上がってきました。今回の大震災も、沈み行く日本にとって致命的な打撃で終わるのか、あるいは再起の起点となるかは、ひとえに我々の決意と覚悟にかかっていると思います。
 物質文明の繁栄を謳歌し、過度の便利さや資源の浪費を当たり前と思う生活を見直して、二十一世紀にふさわしい環境と調和した社会の造成に努めなければならないと思っております。また、防災隣組のような身近な隣人との共助の仕組みを縁として、我欲を抑え、責任への自覚を取り戻し、人間のきずなを再び結び直していく必要があると思います。
 大震災を機に、都民、国民の間には、みずからが生きる国家社会のためにそれぞれが何をなすべきかと考える風潮がようやく再生しつつあると思います。そうした中で、大きな現場を抱える東京から具体的な手だてを通じて、社会の根源的な部分の修復を果たしながら、この国を真の復活へと導いていきたいなと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔知事本局長秋山俊行君登壇〕

〇知事本局長(秋山俊行君) 「十年後の東京」計画の改定についてでありますが、東京が今回の大震災を乗り越え、二十一世紀に真にふさわしい世界の範となる都市へと進化するためには、行政だけではなく、都民、区市町村、民間事業者、NPOなど、東京を支える多様な主体との協働が欠かせないものというふうに認識をしております。
 これまでも、「十年後の東京」計画を着実に推進するためのアクションプランでございます実行プログラムの策定過程におきまして、区市町村はもとより、世論調査やインターネット都政モニターアンケート等を活用し、都民の意見、要望を計画に反映してきたところでございます。
 「十年後の東京」計画の改定に当たりましても、引き続き多様な機会、手法を用いながら、都民意見の集約に努めてまいります。
   〔総務局長比留間英人君登壇〕

〇総務局長(比留間英人君) 防災分野における男女共同参画についてでございます。
 今回の震災では、長引く避難生活の中、プライバシーの確保が十分でないなどにより、女性がさまざまな不安や悩みを抱える事例もあったと聞いております。
 防災基本計画のお話がありましたが、東京都地域防災計画でも、男女双方の視点に配慮した防災を進めるため、防災に関する政策方針決定過程や防災の現場における女性の参画の拡大を掲げております。
 この趣旨を踏まえ、今後、ハード、ソフト両面にわたり、東京の防災力向上に取り組んでまいります。
   〔生活文化局長並木一夫君登壇〕

〇生活文化局長(並木一夫君) 災害ボランティアコーディネーターの育成についてでございますが、都は平成十六年七月に、東京都社会福祉協議会と協定を結び、ボランティアと被災地のニーズを調整する災害ボランティアコーディネーターを育成することといたしました。
 これに基づきまして、東京ボランティア・市民活動センターにおきまして、コーディネーター経験者が被災地で実際に行った活動を報告するプログラムやボランティアに対する現地ニーズの収集の方法、被災状況を想定した図上訓練など、実践的な内容の研修を実施しております。
 引き続き、東日本大震災における経験を踏まえ、災害ボランティアコーディネーターの育成に努めてまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、食品の放射能汚染についてでございますが、安全を確認するためには、作付状況や出荷時期が把握できる生産地におきまして、出荷前に検査をすることが最も確実でございます。
 そこで国は、生産状況が把握できる生産地におきまして検査を実施し、暫定規制値を超える農産物などが市場に流通しないよう、出荷制限等の措置を講じるなどの仕組みを構築いたしております。
 都内産の農産物などは、都が計画的に検査を実施いたしますとともに、必要に応じて対象品目を追加いたしております。
 今後とも、食品の放射能測定体制の充実を図りまして、都内における食の安全を確保してまいります。
 次に、放射能に関する情報提供のあり方についてでございますが、都は、都民の不安を解消するため、ホームページにおきまして大気中の放射線量などの最新のデータを公表いたしますとともに、電話相談窓口を設置し、これまでに四千件を超える都民からの問い合わせに対応してまいりました。
 また、今月十一日には、放射性物質と食品の安全性をテーマに食の安全都民フォーラムを開催し、専門家による講演やパネルディスカッションを行いました。
 今後は、さらに都民向けのシンポジウムや学校関係者等への講習会を開催いたしますとともに、ホームページを再構築いたしまして、その時々に都民の関心が高い事項についてデータなどを用いてわかりやすく解説するなど、内容の充実を図ってまいります。
 こうした取り組みによりまして、都民に対して、放射線のリスクの程度や必要な対応に関する情報を提供してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点のご質問でございます。
 まず、CO2削減とエネルギー確保についてでございますが、都は、国に先駆けた地球温暖化対策を展開してまいりましたが、電力危機の克服に向けた措置として、老朽化した火力発電所の再稼働が行われ、CO2排出量の増加が懸念される状況にございます。
 こうした状況を踏まえ、災害時のリスクにも強く、同時にCO2排出量が少ないエネルギーの利用と供給のあり方について検討を進めていくことにしております。
 次に、家庭における分散型電源の確保についてでございますが、家庭においても可能な限り自前の電源を保有することは、電力不足が生活にもたらすリスクを減少させる意味でも、また、社会全体における電力のピークカットに資する意味でも重要でございます。
 このため、今回の緊急対策では、これまでの太陽エネルギー利用機器に加え、家庭向けコージェネレーション機器等も補助の対象とすることで、家庭における多様な電源確保を支援していくことといたしました。

〇議長(和田宗春君) 以上をもって質問は終わりました。

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