平成二十三年東京都議会会議録第九号

   午後六時一分開議

〇議長(和田宗春君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 二十六番関口太一君。
   〔二十六番関口太一君登壇〕

〇二十六番(関口太一君) 失われた二十年といわれるほど日本の長期低迷が続き、自信を失いつつある日本。そんな日本の首都としての東京は、日本を引っ張っていく役割と責務があります。東京を強くすれば日本も強くなる。そう願いながら、きょうは東京を強くしていくための質問及び提言を行いたいと思います。
 今日、国家間のみならず、都市間での競争が激しさを増し、都市間競争の時代ともいわれます。そうした激しい競争に東京がこれからも勝ち続けていくために、そして、アジアの盟主であり続けるために、私は二つの分野に焦点を当てます。
 まずは教育です。
 ビジネスにおける日本の状況を見てみますと、これまで、日本のマーケット規模が大きい分、日本人は日本人相手の商売で十分に稼げた時代、裏を返せば、競争相手は日本人のみという時代であったと思います。しかし、超高齢少子化が進むことで日本のマーケットが縮小していく中、いやが応でも海外のマーケットを意識しなくてはなりません。
 そんな時代において、日本人の競争相手はアジアや欧米のビジネスマンであり、彼らと同じ土俵で戦わなくてはなりません。
 さらに、これからの日本の若者たちにとっては、就職活動の段階ですら、アジアや欧米の大学生との競争を強いられることとなります。現にパナソニックは、二〇一一年度の新卒採用において八割を外国人にすることを決定し、日の丸企業ですら世界レベルでの採用になり始めております。
 このような環境の中、世界と戦える力の一つとして必要不可欠なものは、いうまでもなく英語力であります。
 では、今、日本の子どもたちの英語力はどうなっているのか。アメリカの大学留学に必要な英語力をはかる一つの基準であるTOEFL、その平均スコアは、二〇〇九年で韓国は八十一点、中国は七十六点であるのに対し、日本は六十六点と大きく引き離されており、私が知る限り、二十年近くこの状況が続いております。
 では、これからの日本の子どもたちにどう英語力をつけていくのか。日本の英語教育に関しては、ようやく今年度より小学校五年生からの外国語授業の必修化が始まりました。他方、韓国では、今から十四年前の一九九七年に小学校三年生からの必修化、また、中国では、十年前の二〇〇一年に同じく小学校三年生からの必修化が既に始まっております。韓国、中国と比べて、遅きに失した感がある日本の小学校英語の必修化でありますが、とはいえ、日本の教育を前へ前へと進めていくために、教育現場において最大限効果を上げる取り組みが必要であります。
 私が重要だと考えるのは、小学校英語と中学校英語との連携です。先日、ある公立小中学校の英語授業を見てまいりました。小学校では、英会話を楽しむ授業が行われておりましたが、中学校一年生の英語授業でも同じように英会話を楽しむことに終始しておりました。これでは、中学一年生の英語授業が単なる小学校英語の焼き直しになりかねないと心配します。
 そこで伺います。小学校から英語必修化が始まったことを受けて、中学英語が単なる小学英語の焼き直しにならないよう、新しい学習指導要領に示された中学英語のあり方を区市の教育委員会、そして、現場の教職員に周知徹底していくことが必要であると考えますが、都の見解をお尋ねします。
 また、小学校での外国語授業が必修化となったからには、その授業の質がどうであるかが極めて重要です。しかし、小学校教諭の教員試験は簡単な英語力をはかるものにすぎず、このことからも、そもそも小学校教諭に英語力は求められておりません。現に私が視察した幾つかの小学校でも、担任の先生と日本語が話せないALTとの間で意思疎通に時間がかかり、授業がとまってしまう場面がありました。
 小学校英語が必修化された以上、担任の先生の英語力やALTの活用度合いなどによって、学校間、地域間で英語授業の質に差が生じるという事態は避けなくてはなりません。そのために、小学校教諭の英語力を含めた外国語活動の指導力の向上は、まさに喫緊の課題であると考えます。
 そこで、英語研修などを強化することで小学校外国語授業の質を上げていく必要があると考えますが、都の見解をお尋ねします。
 さて、子どもたちが将来、日本を支え、世界で活躍するためには、世界を知ることが重要であると痛感しています。小中学校で英語を学び、コミュニケーション力をつけた子どもたちが、さらに高校の段階で国際交流を経験することは大変意義のあることです。
 そこで、私は、高校生に公費で海外留学できる機会を与え、意欲のある高校生にはどんどんどんどん海外で経験を積んでもらいたいと考えます。
 私が公費で海外留学をさせたい理由は、それは使命感を与えたいからであります。使命感は困難を乗り越える力となります。子どもたちに対して、税金で海外留学してもらうのは、将来、東京、日本を引っ張ってもらう人物になってくれと伝え、子どもたちに使命感を感じてもらうことが重要だと考えます。
 現状では、受益者負担の原則など障壁があることも承知しておりますが、都立高校から日本を引っ張る人材を輩出することに資すると考えます。知事も、世界と戦える力を養うため、留学支援の新たな仕組みについて言及しておりますが、今後、公費留学制度のあり方などは議論を深めていただきたいと思います。
 そこで伺います。国内外を問わず、高校生の国際交流を積極的に行うべきだと考えますが、都教育委員会の見解を伺います。
 できる子は伸びていってもらう政策がある一方、そうでない子どもたちへのサポートも行政の役割であるのはいうまでもありません。
 東京都は、小中学校時代に不登校などを経験したが、高校でやり直したいという思いを持った子どもたちのために、チャレンジスクール、エンカレッジスクールを設置し、複数担任制や少人数教育など、手厚い高校教育を提供しています。多くの子どもたちに学び直しの環境を提供することは、私立学校ではできない、まさに公立学校の役割であります。
 現在、これらの高校の入学試験において、倍率が二倍を超える状態が続いております。これは、学び直しを望んでもかなわない子どもたちが多く存在していることを意味します。チャレンジ、エンカレッジスクールに入れなかった子どもたちの多くは、現状、夜間定時制高校に行くこととなります。こういう子どもたちに対しても、チャレンジ、エンカレッジのような手厚い教育が必要であると考えますが、都の対応についてお尋ねします。
 また、チャレンジ、エンカレッジ高校に進む子どもたちは、普通科の高校生に比べても中途退学者が極めて多いのが現実です。都は、その現状をどうとらえ、改善に向けてどのように対策をとるのか、お尋ねします。
 さて、アジアで負けない東京をつくるために、特に英語教育に焦点を当てて提案をしてまいりましたが、次に、経済の面から質問したいと思います。
 今日、アジアにおける日本の経済的な地位は低下し、韓国や中国などから猛烈に追い上げられています。事実、薄型テレビ、大型液晶パネル、半導体、携帯電話などの分野では、既に韓国に追い抜かれました。
 さらに、外国人観光客の数においても、二〇一〇年において日本が八百六十一万人であるのに対して、韓国は八百七十九万人で、この分野においても韓国にリードされてしまいました。
 こうしたあらゆる分野での日本の競争力の低下に、私は強い強い危機感を抱きます。アジアの中で、観光客の取り合い、企業の誘致合戦と、まさに人、物、金の奪い合いが激しくなる中で、経済的にも文化的にも技術的にも東京都がアジアで一位であり続けるために、今すぐにでも手を打っていかねばならないと考えます。
 そこで、海外から観光客を引っ張って経済成長につなげていくために、私はカジノ誘致を提案したいと思います。
 いうまでもなく、カジノは、その話題性、集客力などから巨額のキャッシュ・フローを生み出す収益性の極めて高い事業であります。そこに目をつけて、韓国や中国マカオでは既に事業展開されており、また、シンガポールでも、昨年、カジノ解禁に踏み込んで、二つの複合カジノ施設が開業いたしました。
 それぞれ、ことしの第一・四半期だけで、およそ五百九十四億円、そして、およそ四百六十億円の売り上げを記録し、また、昨年には外国人観光客も前年比四九%増の一千百六十万人を記録、さらに、この二つの施設がもたらす雇用効果は三万五千人と試算されるなど、カジノの経済波及効果がいかに大きいかを物語っています。
 私は、昨年、韓国のソウル市にある外国人専用カジノのセブンラックに行き、その経営主体である韓国観光公社の子会社であるGKLという会社の幹部の方々と話をしてまいりました。GKLが経営するこのカジノは外国人専用カジノですが、二〇〇九年に約四千九百億ウォンを売り上げて、雇用波及効果も一万四百四十人とされ、観光客の増加に大きく寄与し、ソウル経済の牽引役となっております。
 このように、年々業績を伸ばしている中、幹部の方々がしきりに心配されていたのが東京カジノ構想の行方でした。東京にカジノが誕生すると観光客が奪われるのではないかと大いに危惧をされている様子で、まさに東京の動向をかたずをのんで見守るといった感じでありました。つまり、東京のカジノは強い強い競争力を持っていることを意味します。
 このような極めて潜在能力の高い東京カジノについては、石原都知事も一度検討されましたが、国の規制の壁があり、断念した経緯があります。しかし、二〇〇九年に国会で超党派によるカジノ議連が結成され、先般、具体的な会長私案が提案されました。この案に基づき、各省庁と具体的な課題の洗い出しが進められております。
 また、震災復興のシンボルとして、被災地仙台にカジノをという声も上がり始め、法案成立に向けた動きが加速し始めております。
 その案では、国がカジノ誘致地域として二カ所を国内で選定することとなっています。既にカジノ誘致に、大阪、千葉、神奈川などが名乗りを上げており、法案成立となった際には国内での誘致合戦になることが想定されます。
 法案成立に備えて、東京カジノ構想を細部まで詰めていく必要があります。
 具体的な課題を挙げれば、例えば施設の概要。国がイメージしているカジノ施設は、いわゆる複合型であり、劇場、コンベンションセンター、ホテル、ショッピングモールなど、どういった施設をカジノと併設させるかを詰めていかねばなりません。
 また、外国人専用カジノにするのか否か、また、カジノの収益の都の取り分はどうするのか、また、その取り分をどういう事業に使うかなど、細かな点も含めた課題についての早急なる議論が必要だと考えます。
 東京の経済成長の起爆剤になり得るカジノについて、国の法案成立に備え、早急に課題を抽出し、具体的な計画を描いていくべきだと考えますが、都の見解をお尋ねします。
 さて、具体的な計画を詰めていくと、カジノ施設をどこにつくるかという議論になります。石原知事がカジノ構想を打ち立てた際には、お台場という場所が候補として挙げられていました。お台場を中心とした臨海副都心開発計画は、いまだ計画途上であり、今なお、約四十五ヘクタールもの土地が売れ残っている状態で、債務残高も五千二百億円であることから、土地の売却がうまくいかないと大幅な赤字が残るというおそれもあります。
 しかし、このお台場を含めた臨海地域は、国際化した羽田空港から車で十五分の距離という立地の強みもあり、経済的な潜在価値は極めて極めて高いと考えます。その潜在価値を最大限引き出していくために、羽田空港とリンクさせる形で、この地域に人、物、金を誘導する政策を戦略的に打ち出していく必要があります。こうしたことから、カジノはやはり、この臨海地域に誘致することが最適であると考えます。
 では、臨海のどこにカジノをつくるか。国が想定しているのは、カジノだけではない複合型カジノであります。例えば、先ほどのシンガポールの一つの複合カジノ施設は四十九ヘクタールの規模です。お台場には売れ残っている土地がありますが、四十九ヘクタールもの規模はなかなか見当たりません。もう少し都心に近いところにちょうどいい大きさの土地があります。豊洲です。豊洲なんです。私は、豊洲こそ、複合型カジノをつくるのに最適な場所であると考えます。
 しかし、残念ながら、豊洲は市場移転用地として計画が進んでおり、そのため土壌の入れかえ工事が必要で、五百八十六億円もコストを要します。しかし、市場の移転先としては、豊洲以外にも選択肢があるのも事実です。晴海と築地の利用も我々は提案しました。あるいは、有明の北もあいています。それらは土壌汚染の可能性が低く、市場の機能を十分に果たせるのではないかと私は考えるわけです。
 また、豊洲は、環境確保条例では、いわば問題なかったわけでありますから、仮にあそこにカジノホテルなどの商業施設を建設する場合は、わざわざ、わざわざ土壌を入れかえる必要もなく、つまりは五百八十六億円のコストは不要となります。こうした状況を考えれば考えれば考えれば考えるほど、経済的価値が高い豊洲には市場以外にも可能性はあるんじゃないかと考えます。
 東京の経済成長の起爆剤として、カジノを含めた商業施設の誘致場所は、もう豊洲しかない、そういうことを我々は認識し、このカジノ誘致についての、そして、豊洲こそが最適な場所であるという点について、都の見解をお尋ねしまして、私の質問を終了します。(拍手)
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 関口太一議員の一般質問にお答え申し上げます。
 まず、中学校における英語教育についてでございます。
 平成二十四年度から実施される中学校学習指導要領の教科英語の目標は、小学校外国語活動ではぐくまれた、聞くこと、話すことの素地の上に、読むこと、書くことを加え、これらの四つの技能を総合的に育成し、コミュニケーション能力の基礎を養うことにございます。
 このため、都教育委員会は、平成二十年度から、小学校外国語活動との関連を踏まえつつ、中学生に四つの技能を総合的に育成するための教師用指導資料を作成し、効果的な指導方法に関する説明会を実施してまいりました。
 今後とも、区市町村教育委員会の取り組みとの連携を図りながら、中学生に、より実践的なコミュニケーション能力の基礎を培うため、さらなる指導方法の研究開発や指導資料の作成などを通して、各学校を支援してまいります。
 次に、小学校外国語活動についてでございます。
 小学校外国語活動は、児童に、聞くこと、話すことを体験的になれ親しませながら、中学校や高等学校での英語の学習につながるコミュニケーション能力の素地を養うために設けられた新しい教育活動です。
 都教育委員会は、平成二十年度から設置しました小学校外国語活動推進委員会の報告書や指導資料を配布するとともに、すべての小学校を対象に、これまで外国語活動を指導したことのない教員に対する研修の実施と、その教員を活用した校内研修の促進に努めてまいりました。
 今後とも、区市町村教育委員会と連携を図りながら、実施初年度における実態調査を行い、その結果を踏まえ、小学校外国語活動の趣旨のさらなる徹底を図り、本活動の目的が達成できるよう教員を指導してまいります。
 次に、高校生の国際交流についてでございます。
 高校生が国内外を問わず、外国の人や文化、生活等に直接触れることは、多様な物の考え方を知るとともに、世界のさまざまな国や地域の人々と望ましい関係を維持していくことの大切さを考える上で重要であり、若者の内向き志向を打破し、世界を舞台に活躍する力強い若者を育成することにつながる有効な機会であると考えます。
 都立高校では、平成二十二年度、四十四校八十七名が海外に留学し、十四校が短期留学生二十五名を受け入れ、三十五校三千百三十九名が海外語学研修や海外修学旅行に参加いたしました。
 今後とも、こうした実態を踏まえ、多くの都立高校が自校の特色や国際都市東京の利点を生かして、さまざまな国際交流の取り組みを行うよう、引き続き積極的に支援してまいります。
 次に、夜間定時制高校における取り組みについてでございます。
 夜間定時制高校には、働きながら学ぶ生徒以外に、不登校や中途退学を経験した生徒、学習上のつまずきで基礎学力に課題のある生徒など、さまざまな課題を抱えた生徒が在籍しております。
 このため、生徒の多様な実態に即したきめ細かな指導に取り組むことが求められており、少人数による学習指導、規則正しい生活習慣を確立するための指導、教育相談機能の充実、三年間でも卒業を可能とする取り組みなどを進めております。
 今後、エンカレッジスクールやチャレンジスクールにおける取り組みの成果も取り入れ、生徒の基礎学力の確実な定着を図るなど、力を発揮できずにいる生徒の学び直しを支援してまいります。
 次に、エンカレッジスクール等における中途退学者を減らす取り組みについてでございます。
 エンカレッジスクール及びチャレンジスクールでは生徒の学び直しの支援に取り組んでおりますが、中途退学者が少なからず存在しており、課題であると認識しております。
 その原因を分析しますと、学習に対し興味、関心を十分持てなかったこと、規則正しい生活習慣が身につかなかったことなどにございます。
 このため、各校において、きめ細かな学習指導や体験学習を通じて基礎学力を身につけさせ、勉学への意欲と自己肯定感を高めるとともに、スクールカウンセラーや養護教諭と学級担任との連携を強化するなどの取り組みを一層進めていく必要がございます。
 都教育委員会は、こうした取り組みを進めまして、生徒の高校生活への適応を図り、中途退学の防止に努めてまいります。
   〔知事本局長秋山俊行君登壇〕

〇知事本局長(秋山俊行君) カジノについてでございますけれども、現在、我が国では、カジノは刑法で規制されており、これを実現するためには、何よりもまず、国が法整備を行うことが必要でございます。
 このため、都は国に対して、いまだ法案の姿も見えないことから、必要な法整備を行うこと、また、その際には、地域の実情に即した運営が可能な仕組みとすることなど、地方自治体の意向を十分踏まえることをこれまでも継続して提案要求してきているところでございます。
 このような経緯を踏まえまして、昨年、アイデア募集のございました特区構想への提案も行っているところでございまして、都として、引き続き国の動向を注視してまいります。
   〔中央卸売市場長岡田至君登壇〕

〇中央卸売市場長(岡田至君) 豊洲への商業施設の誘致についてです。
 豊洲地区におきましては、新市場整備のため、既にすべての用地取得を完了しており、現在、平成二十六年度中の開場に向けて全力を挙げて事業を進めております。
 なお、この整備計画におきまして、豊洲地区のにぎわいを創出するため、市場機能を補完するとともに、築地の食文化を継承する商業施設を含めた千客万来施設を整備する方針でありまして、現在、これに基づき、着実に取り組んでございます。

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