平成二十三年東京都議会会議録第九号

〇副議長(鈴木貫太郎君) 五十番中谷祐二君。
   〔五十番中谷祐二君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇五十番(中谷祐二君) 私は、地方税財源のあり方及びその拡充について伺います。
 今年度予算における都税収入は、海外経済の減速や円高の影響に加え、繰越欠損金による税収減などにより、前年度に比べ小幅な増収にとどまっています。
 その中でも、景気動向に左右されることなく、安定的に税収を上げているのが固定資産税であります。固定資産税は、法人二税にほぼ匹敵する税収があり、また都区財政調整の原資ともなる重要な基幹税の一つでもあります。
 しかし、多くの減免措置や非課税の仕組みがあり、制度としてはわかりづらく、中には、制度創設当初の目的が、もはや時代おくれとなっているケースもあるのではないでしょうか。より公平で、わかりやすい税制にするためにも、こうした減免措置については、改めて精査が必要であります。
 本来、租税の基本原則は公平の原則にあります。公平の原則を害することによる弊害よりも、課税免除をした方が利益が大きいとき、初めて課税免除とするべきであります。
 都はかつて、公平性の確保から、全国に先駆けて、駅の改札内、いわゆる駅ナカ課税を、通常の評価替えより二年前倒しで課税強化の措置を講じました。商業施設のある駅と近隣の宅地との間では、固定資産税評価に著しい不均衡が生じているという理由からでした。
 しかし、こうした努力の一方、本来は課税されるべき対象にもかかわらず、減免や非課税という制度が残っている事例も見られます。
 一例を挙げれば、首都高速道路に対する固定資産税の非課税措置であります。
 民営化した首都高といっても、株式のすべてを国と関係する地方公共団体が保有しています。株主構成は、国土交通大臣が四九・九九%、東京都が二六・七二%、以下、神奈川県、埼玉県、横浜市、川崎市、千葉県であります。
 民営化する以前、首都高に固定資産税をかけない理由は、料金の徴収期間が定められていること、つまりは、将来は必ず無料化される道路であること。本件は民営化して四十五年後のことであります。徴収する料金の水準が建設費などから見て適正な水準であること。この二つの要件を満たすことから、非課税とされていました。
 しかし、首都高速については、自民党政権時はもちろん、民主党政権にかわっても、一度も無料化される道路であるとの話を耳にしたことがありません。
 平成十六年、地方税法が改正され、首都高速道路株式会社及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構が高速道路の用に供する固定資産で政令で定めるものに対しては、固定資産税、都市計画税を課することができないとしています。非課税の期間は十年間です。
 都は、首都高に三百六十七億円もの資金を低利貸付していますし、第二位の株主でもあります。さらには、二千六百三十億円、機構に出資もしています。これは、首都東京の道路整備という公共事業としての使命を考えれば、一定の理解はできるものであります。
 しかし、首都高は、十五社もの子会社を有し、民間企業と比べても遜色のない利益を上げている優良企業でもあります。
 こうしたれっきとした営利企業としての実態をとらえることなく、公益を担う企業という側面だけをとらえて固定資産税を非課税にすることは、税の公平性、税制への信頼という観点から問題があります。税の減免措置は、形を変えた補助でもあります。
 民営化する以前の試算でありますが、仮に首都高に課税をすれば、固定資産税の推計は三百二十億円程度、国鉄民営化後のJRに適用した特例措置を講ずると三十八億円程度の課税となります。公団当時は、実際四億六千万円の課税がなされておりました。首都高の年間二千五百億円の料金収入からして、担税力は十分であります。
 そもそも、法律上も論争があります。事業の公共性の点から、政策判断により非課税措置や減免を行うことはあってしかるべきだという考えがある一方、地方税法上、固定資産税の減免は、貧困など納税者の税負担能力がない等の理由として行われるものに限られるのではないかという考え方もあります。
 首都高速の固定資産税が非課税であることは、環境や社会条件の変化により、もはや課税すべき対象に課税をしていない例に当たるのではありませんか。
 税収確保のためにも、賦課徴収すべきものに対してはきちんと賦課徴収をする、駅ナカ課税のときのように、こうした都の姿勢が税制全体への信頼につながるものと思われます。
 そこで、都独自で行っている数々の減免措置の精査を行うとともに、特に首都高速道路については、公共性という側面だけではなく、営利企業としての実態も十分踏まえ、近い将来、距離別料金制度導入による実質料金の値上げをする時期を見計らって、首都高速道路株式会社が管理している道路資産についても課税を視野に入れながら、法律による非課税措置について、国に対して改めるよう、それこそ法律を変えてでも税金をかける意気込みで、現場を持つ都から要望していくべきであると考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、地方税財源の拡充について伺います。
 四月には、国において地方分権改革の関連三法が成立をいたしました。地方のことは地方が決めるという分権の基本精神に基づき、地方に移譲される権限が増せば、当然、自治体の役割も大きくなります。
 都においても、法人二税は平成二十一年度以降大きく落ち込んでいる状況の上、景気の先行きの不透明感を反映し、来年度以降の税収については全く予断を許しません。
 首都東京は、安定的で持続可能な財源の充実が必要であります。
 このような中、地方消費税の税率の引き上げは、東京にとってもまさに宿願であります。しかしながら、地方消費税の賦課徴収は、現在、国が消費税の賦課徴収とあわせて行っていることから、税率の引き上げや賦課徴収において汗をかいていない地方の立場では、なかなか主張が通らないのであります。
 今、まさに国では、社会保障と税の一体改革に関する議論が開始をされ、消費税率の見直しが検討されているこの局面において、地方消費税の引き上げについて、その必要性を住民に説明し、理解を得るのはもちろんですが、その賦課徴収についても、地方が連携して取り組む姿勢をアピールすることが必要であります。
 地方自治体が地方消費税を直接徴収することも視野に入れながら、地方が共同して徴収する仕組みを都として提案し、これに対し、都が人材やノウハウを積極的に提供していくことで、地方の先頭に立って税収を確保するという姿勢を明確に打ち出すことが、地方消費税拡充に対する都民の理解を得ることにつながると考えますが、見解を伺います。
 もちろん、消費税を含む税体系の抜本的改革が行われるまでの間の暫定措置として創設された地方法人特別税は、地方自治体の自主財源である法人事業税を財政調整の手段として利用されているその措置の撤廃に向けて、都議会民主党としても引き続き国に働きかけてまいります。
 次に、課税自主権について伺います。
 みずからの歳出はみずからの財源で賄い、地方自治体が課税自主権を発揮し拡大させることが、自治の原点でもあります。
 都は、過去に、法人に対する超過課税や外形標準課税、宿泊税など、課税自主権を行使してきましたが、まだまだ取り組みに工夫の余地があるのではないでしょうか。
 都税収入の安定的確保に寄与する法人事業税の外形標準課税については、資本金一億円を超える法人が課税対象であります。都内に六十万社あるといわれる法人の中で、対象となる法人数は約二万社であります。
 この外形標準課税について、中小法人の負担に引き続き配慮する必要がありますが、対象法人を広げることも検討されるべきではないでしょうか。これは、現在の地方税法においても、都の裁量でできるはずであります。
 そこで、お伺いをいたしますが、東京の場合、昼間の流入人口が三百万人を超え、都市基盤、環境、警察、消防、災害対策、新たに節電という莫大な行政ニーズも加わり、課題が山積している中では、都の課税自主権の拡充は、地方財政の充実と自治体経営の自立の点からも重要であります。
 課税自主権をさらに発揮し、独自の税の制定、あるいは既存の税に手を加え新たな課税対象を模索するほか、法人事業税の制限税率の廃止や外形標準割合の拡大など、国に法改正を求める必要があると考えますが、所見を伺います。
 次に、震災対策という視点も含めた財産利活用について伺います。
 このたびの緊急対策二〇一一は、震災により浮き彫りになった課題を踏まえ、都が早急に実施すべき具体的な方針を示したものであります。
 しかし、都有地の有効活用という観点での対策は、十分に盛り込まれていません。首都直下型地震に備え、地域の防災拠点や帰宅困難者の受け入れ施設を確保するなど、いざというときのために都有地を確保していくという視点も必要であります。
 確かに、現在の震災対策条例では、災害時の活動拠点となる土地や建物を確保しなければならないと定めていますが、対象となる土地は、都立学校など大規模なスペースに限られています。
 住宅、オフィスが密集し、膨大な人口を抱える都において、たとえ小規模な土地であろうと、町会、自治会レベルやそれぞれのコミュニティの単位で行えるような救援活動を初め、復旧、復興活動に向けた用途も十分に想定できるはずであります。
 そこで、特に未利用、低利用の都有地について、その規模にかかわらず、震災時に、例えばヘリポートや資材置き場、家庭用のごみの仮置き場、地域の救援活動の拠点などの用途に転用できる体制を整えておくことで、いざというとき復旧、復興活動の拠点として直ちに提供できるよう、あらかじめ土地の所在や現況を把握の上、活用計画をつくっておくことも検討すべきと考えますが、見解を伺います。
 都有財産利活用の戦略の見直しとその推進体制について伺います。
 過去の財政再建推進プランのもとでは、積極的に都有地の売却を進め、まずは財源確保が至上命題でありました。
 その後、財政再建が一段落した平成十九年には、新たな財産利活用の指針を発表し、都の施策に連動する利用条件をつけた貸し付けを推進するなど、都民サービスの基盤の確保という視点から利活用を進める方針に切りかえています。
 しかし、実態はどうでしょうか。都庁舎改修の財源も、ほとんどが都有資産の売却によるものでありますし、都有地のストックが減少しています。
 一方で、塀で囲って何年も未利用のままにしている都有地が見られるなどの指摘も以前からなされていても、改善が余り進んでいないようにも見受けられます。
 福祉や環境分野、防災力の強化など、行政ニーズがますます多様化している中で、まず一つ一つの土地の活用方法について、より広い見地から、その土地を所管する局の判断を超えて戦略的に検証していかなければなりません。
 各局の事情だとか、次なる用途が決まっていないのに転用用途があるなどといって局がなかなか資産を手放さないなんて話は、もう何年も前からいい続けられている話であります。事業の見直しなどにより行政財産として役割を終えたものも、事業予定地として囲い込んで活用が進まないことも多いと聞きます。
 震災を契機に、本気で都有財産の洗い直しを進めて、一元管理を図れるかどうかが問われているのであります。
 まず、都が所有するすべての土地の棚卸し、そして現状把握を行い、その情報を地域ごとに明らかにすることであります。その上で、それぞれの都有地をどのような用途に使うべきか、売却した方がいいのか、一時的な活用はできないのかについて、地域のニーズも十分に踏まえながら、戦略をしっかり立てるべきであります。
 都有地をめぐる環境のさらなる変化を踏まえ、財産利活用の指針も新たに手を加えるなど、取り組みを一歩も二歩も進め、改めて都有地のあり方を検討し、多様化する行政ニーズにこたえていくことが必要であると考えますが、見解を伺います。
 最後に、先般の震災時の緊急救急車両のガソリン等燃料の確保について伺います。
 震災後一時的にガソリンの需給関係が崩れ、まち中のガソリンスタンドに車が長蛇の列をなし、給油をしていた期間が一週間ほどありました。その間、警察署、消防署関連の車両の給油については、どのような対応がなされたのでしょうか。消防署については、都内八十一カ所ある消防署のうち、七十三カ所は、自家用給油取扱所があり、二十四時間フルで、仮に全車両が稼働した場合でも、約六日間は使用に耐え得るだけの備蓄を有しています。
 一方、警察署等においては、新たに建てかえた警察署も含め、ガソリンの備蓄のタンクを署内に併設している警察施設は、全体の三割にも満たないことがわかりました。特に、都心に所在する警察署については、敷地の面積、建物の構造上からも備蓄タンクを建造することが難しかった事情もありますが、平時はともかく、災害時のガソリンなど燃料確保のためには、この機会に新たに対応が必要であることは間違いありません。
 このたび、緊急対策二〇一一では、大規模震災に対する警察、消防の機能の強化策として、広範囲に予算措置が講じられておりますが、とりわけ、機動力確保のためのガソリンなどの燃料確保は、最優先課題の一つと考えますが、震災時における警察緊急車両のガソリンなどの確保について、どのような対策を講じているのかを伺い私の質問を終えます。(拍手)
   〔警視総監池田克彦君登壇〕

〇警視総監(池田克彦君) 中谷祐二議員の一般質問にお答えいたします。
 震災時における警察車両のガソリン等の確保についてであります。
 警視庁では、震災時でも警察車両の運行に支障がないよう本部庁舎を初めとする四十一の施設にガソリン燃料タンクを設置しているほか、安定的に給油が得られるよう契約ガソリン販売業者に協力を依頼しております。
 しかしながら、東日本大震災では、都内においても、ガソリンの大幅な供給不足が生じ、警察の緊急車両等も、給油が一時滞る事態が生じたことから、この教訓を踏まえ、今後、比較的敷地が広く都内に分散して各所属に供給しやすい、機動隊十個隊のガソリン燃料タンクを、平成二十八年度までに順次増設することを予定しておりまして、当面、今回の補正予算に施設の調査、設計委託費を計上しております。
 現在、警視庁の総備蓄量は三十八万八千リットルでありますが、各機動隊に六千リットルタンクを増設することにより、四十四万八千リットルの備蓄量が確保できることとなります。また、被災現場で活動する大型の警察車両に、軽油を直接給油することができる災害用給油車十一台の整備も、補正予算でお願いしております。
 警視庁といたしましては、今後とも、震災時における警察力の確保に万全を尽くしてまいりたいと考えております。
   〔主税局長荒川満君登壇〕

〇主税局長(荒川満君) 三点についてお答えいたします。
 まず、首都高速道路に対する固定資産税の非課税措置についてのご質問ですが、現行制度についてご理解いただきたいので、私からお答えさせていただきたいと思います。
 現在、首都高速道路株式会社が管理する高速道路用の資産は、いわゆる上下分離方式によりまして、独立行政法人高速道路機構が保有しており、それを会社が借りて事業を行うとともに、会社は料金収入から維持管理費を除いた残りの額を道路のリース料として機構に支払っております。
 機構は、これを建設費の償還に充て、将来において完済した後は、機構は解散し、高速道路は本来の道路管理者である東京都などの地元の自治体に帰属し、無料開放されることとなっております。
 また、首都高速道路の料金収入には、利潤を含めないこととされており、お話のあった距離別料金制が導入されても同様でございます。
 こうしたことから、全体として、道路による所得はほとんど上がらず、このため、地方税法において非課税措置が講じられているものと認識しております。
 しかし今後、こうした現行のスキームや道路資産の使用状況等に大きな変化が生じるような場合には、非課税措置についても改めて検討されるべきものと考えます。
 次に、地方消費税の拡充についてでありますが、現在の地方消費税は、国の消費税とあわせて申告納税する方式をとることで、納税者の事務負担を軽減するとともに、地方自治体の徴税コストについても低減を図ることとしております。もとより、地方消費税は、地方の重要な自主財源であり、地方みずから役割を果たすことは、地方自治の本旨に照らしても必要なことであることから、地方消費税の拡充に当たっては、地方が一定の役割を果たすべきとの主張がございます。
 東京都税制調査会におきましても、地方自治体は、地方消費税の賦課徴収に積極的な役割を担っていくべきとの考えが示されております。
 こうしたことを踏まえ、今後、地方自治体による地方消費税の直接徴収、あるいは滞納整理の可能性など、納税者と行政の双方にとってどのような方式が望ましいか、東京都税制調査会とも相談しながら、地方の果たすべき役割について、さらに検討してまいります。
 次に、課税自主権の拡充についてでありますが、首都東京において大都市特有のさまざまな行政需要に的確に対応していくためには、安定的かつ十分な財源の確保が不可欠であり、そのための課税自主権の確立は重要でございます。
 これまで都は、法人二税の超過課税を実施するとともに、世界都市東京の魅力を発信するための宿泊税を新たに課税、さらには、銀行税の創設により、外形標準課税の先導を果たすなど、可能な限り課税自主権を行使して、都税収入の確保に努めてまいりました。
 また、国に対しては、地方分権にふさわしい抜本的な税制改正、都が受けているさまざまな不合理な措置の是正、地球温暖化や省エネ対策等の推進のための税制などについて積極的に提案要求を行っております。
 とりわけ法人事業税の暫定措置については、都の課税自主権を侵害し、一方的に都の財源を奪っているものであり、防災対策などの緊急課題に対応するためにも即時撤廃し、地方税として復元させることが何よりも優先されます。
 今後とも都議会のご協力をいただき、ともに行動しながら、国に対して暫定措置の即時撤廃を訴えるとともに、増加する財政需要に応じた、地方税財源の拡充に向けて強力に働きかけてまいります。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

〇財務局長(安藤立美君) 二点につきましてお答え申し上げます。
 まず、震災時における都有地の効果的活用についてでございますが、震災時にはさまざまな用途での土地活用が直ちに求められるため、その時点で利用していない土地等から早急に候補地を絞り込むことや、全庁的な観点からの調整を行うことなどにより、都有地を効果的に活用していく必要がございます。
 こうした緊急のニーズに対しましては、土地の所在や面積などが即時に検索できる財産情報システムの活用に加えまして、実際の現地確認に基づく都有地の現状をあわせて考慮することで、迅速かつ的確にこたえていくこととなります。
 今回の震災時におきましても、避難者向けの駐車場用地や一時避難施設として活用可能な財産などについて、具体的に抽出し、情報提供を行ったところであります。
 常日ごろからこのシステムのデータを最新の情報に更新するとともに、現地確認を行い、都有地の実態を的確に把握することで、震災時においても、速やかに都有地の有効活用が図れるよう、着実に準備を進めてまいります。
 次に、多様化する行政ニーズに対する都有地の活用についてでありますが、都有地は、都民から負託された貴重な財産であることから、その活用に当たりましては、財産の価値を最大限に発揮させるとともに、都政の喫緊の課題解決のため利活用を図っていく必要がございます。
 これまでも福祉インフラの整備や私立学校の耐震化など、各局の諸施策を着実に推進できるよう、積極的に財産の情報を提供するなど、都有地を活用した取り組みを支援してまいりました。
 今回の震災対策を契機に、改めて都政が直面するさまざまな行政課題に的確に対応していくため、各局とより密接な情報交換を行うとともに、全庁的な視点から効果的な財産の活用を促すなど、都有地の有効活用を一層推進してまいります。

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