平成二十三年東京都議会会議録第九号

〇議長(和田宗春君) 三十八番橘正剛君。
   〔三十八番橘正剛君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇三十八番(橘正剛君) 都議会公明党が先月実施した東日本大震災の被災地調査や都内で展開されている多様な被災地応援イベント等の視察を踏まえ、今後の施策の展開について質問いたします。
 まず、被災地から都内に避難している障害者、高齢者の支援について伺います。
 都内に避難の障害者や高齢者の中には、地震、津波による家屋の倒壊、流失、原発災害での緊急避難等により、障害者手帳や健康保険証など各種証明書を紛失したり、持ち出せなかった方もおります。そういう方々には緊急対応として、証明書を所持していなくても被災前と同様の福祉、医療、介護等の行政サービスが受けられる特例措置が講じられております。
 ところが実際は、各種サービスを受けたくても、被災前に住んでいた自治体と手続が異なっていたり、都内の相談窓口がわからないといった戸惑いの声も出ております。
 そこで、都内に避難している障害者、高齢者については、特例措置が講じられている手続や各種サービスの相談窓口などを一覧にしたリーフレットを作成し、気軽に安心して利用できるようにすべきと考えます。あわせて、こうした情報をできるだけ多くの方にきめ細かく紹介し、具体的に応援していくためには、地域の協力を得る取り組みも重要と考えます。都の見解を求めます。
 都内に避難している被災者の方々は、都内での生活になれるにつれて外出する機会が多くなり、高齢者、障害者も、通院や施設利用等の外出がふえているようです。公共交通機関を利用する際、七十歳以上の都民であれば、都が実施しているシルバーパスを利用することができますが、住民票を移していない避難住民は、都民でないため適用されません。都民以外の方にこの制度を広げることは、さまざまな課題があることは承知しておりますが、都内に一時的に避難している高齢者、障害者には、特段の措置を講じるべきと考えます。
 被災自治体では、各種証明書の再発行のうち、健康保険証については最優先で発行し、都内に避難している方々の手元にも届き始めているようです。この点を踏まえ、例えば、保険証で年齢や避難前の住所が確認できる障害者や七十歳以上の高齢者であれば、都営交通の運賃を減免するなど、優遇措置が受けられるようにすべきです。都の答弁を求めます。
 次に、被災地の地場産業復興支援について質問します。
 震災発生以来、都は、放射能の風評被害を受けた農水産物の販売を支援する各種イベントを開催し、風評被害の解消を呼びかけてきました。私も、中央卸売市場の淀橋市場と板橋市場で行われた青果物の被災産地応援フェアに伺いましたが、生産者、卸売業者、消費者から大きな反響が寄せられておりました。今後も、継続的な支援フェアの開催を期待するものであります。
 一方、先月下旬、板橋区内のある商店街のアンテナショップに、宮城県石巻市内の水産加工会社の缶詰が並びました。津波で押し流された加工工場の瓦れきと泥の中から、会社の復興に役立てばと掘り出された缶詰は、缶がへこみ、ラベルもはがれておりましたが、販売の趣旨が書かれたチラシを目にした多くの区民が快く購入に協力しておりました。
 この臨時特売は、石巻市内の缶詰工場と板橋区内の商店街が人づてにたまたま結びついたものですが、被災地には、このほかにも被害を免れた加工品や生産の再開可能な特産品もあるとの話を伺いました。
 都は、今定例会に提出している補正予算案に、被災地の農水産物や特産品等を一定期間販売する商店街への助成事業を盛り込んでおり、復興支援策として高く評価いたします。
 被災地を応援したいという熱い思いを持つ商店街の中には、都のこうした事業を踏まえ、復興支援フェアの準備を始めたところもありますが、被災地との連絡、販売物品の調達など課題は多いようです。こうしたイベント開催に関する相談や要望についても、都の仲介で、被災地の商業、農水産業などの団体と都内の関連団体を連携させ、これによって得られる情報を積極的に商店街等に提供すべきと考えます。都の所見を求めます。
 さらに、先ほど紹介した缶詰の特売のように、個別の商店や商店街のアンテナショップ等での販売も都内全域に広がれば、被災地の産業復興支援の大きなうねりとなります。都として、被災地の生産者や製造者と都内の商店などを仲介する取り組みをしっかりと進めていくべきと考えます。答弁を求めます。
 次に、被災者の雇用支援について質問します。
 五月二十四、二十六の両日、被災地から都内などに避難している方を対象に、都と東京労働局による合同就職面接会が都内二カ所で行われました。私は、国分寺市内で行われた面接会の様子を視察し、参加企業ごとに仕切られた面接ブースでのやりとりを見てまいりました。この両日で、都内の中小企業など延べ五十八社の参加に対し、被災三県からの被災者延べ百三十五人が訪れ、その後、順調に再面接や就業に結びついているとのことです。
 その一方で、求人内容と求職者の希望が合わないミスマッチが生じているケースも見受けられます。例えば、一定の職業経験のある方から、これまでの経験を生かせる仕事が見つからないといった声も聞かれました。
 このため、今回のような大規模な合同面接会とは別に、求職者一人一人の立場、職歴、技能等の情報を求人側に事前に提供し、マッチングの確度を高める工夫が必要であると考えます。こうした施策の展開については、企業情報を多く持っている東京商工会議所等の経済団体とも連携して、協力を求めていくべきと考えます。あわせて見解を求めます。
 一方、被災地からは、避難生活が長引くにつれて生活費の不安が大きくなり、東京での就業希望者がふえているとの話も多く聞かれるようになっております。そうした被災者の就業支援としては、東京で開催する面接会の情報を現地で発信する仕組みづくりや就職活動の旅費を支給する制度の活用などを組み合わせ、被災者に総合的に紹介することも重要と考えます。都の所見を求めます。
 次に、被災県の観光支援について質問します。
 都は、今回の補正予算案に、震災で打撃を受けている被災三県の観光を応援するため、被災県へ旅行する都民に宿泊料を補助する支援策を盛り込んでおります。これは、被災地の消費喚起、観光振興につながる時宜を得た施策として評価するものであります。
 一方、外国人旅行者は、その多くが東京の観光地から各地の観光地に足を延ばす傾向にあります。したがって、被災県の中で安全な観光地に、東京から外国人旅行者を誘導する支援策も効果的であります。その一方策として、都の事業である海外旅行エージェント招聘事業を活用してはどうかと考えます。
 この事業は、海外の旅行事業者を六日間程度の日程で東京の観光地に案内し、外国人旅行者の増加につなげようというものですが、これを活用し、東京に招聘した海外の旅行事業者から要望があれば、岩手、宮城、福島の被災三県の観光地への訪問も選択肢として提供すべきです。さらに、一般の外国人旅行者に対しても、羽田空港において被災三県の観光情報を提供するなど、都として被災県の観光復興を幅広く支援していくべきと考えます。都の答弁を求めます。
 次に、災害時の医療体制について質問します。
 今回の震災で、被災地の災害拠点病院の中には、施設の一部が被害を受け、医療機能を十分発揮できなかったという事例が発生しました。このことを考えると、都内の災害拠点病院でも、一部の施設の損壊により全体の機能を十分果たすことができなくなる事態が想定されます。今回の震災を契機に、建物本体やライフライン設備など、細部にわたって再点検を行い、都民が安心できるようにすべきと考えます。都の所見を求めます。
 一方、今回の震災では、被災地の医療機関等から要請のあった医薬品や医療機器が東京を初め全国から送られたにもかかわらず、最前線の医療救護所などでは、必要な医薬品等が入りにくい状況があったと聞いております。同様の事態は、東京が大きな震災に見舞われた場合にも発生する可能性があります。災害時の医薬品、医療機器の確保は人命に直接かかわるだけに、今回の震災で発生した問題について東京都独自に詳細に検証し、万全の対策を講じるべきと考えます。都の答弁を求めます。
 都は、震災発生直後から、消防、警察等による救助活動、被災地への人的、物的支援、被災住民の受け入れなど迅速な支援策を講じてきました。さらに、今回の補正予算によって、都の対策はより重厚になると考えます。
 今後は、都による支援事業が被災地の復興や避難住民の生活再建に、効果的に実行されるよう、きめ細かな対応が求められます。支援の長期化が想定される中で、都の支援継続力に対する期待は一段と大きくなると思われます。
 こうした期待に対する石原知事の所見を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 橘正剛議員の一般質問にお答えいたします。
 被災地、被災者への支援の継続についてでありますが、私自身、現地に赴きまして、被災地の壊滅的な状況を目の当たりにしてまいりました。例えば、かつて講演でも赴いたことがありますが、あれだけ美しかった気仙沼のまち、その変わりようはもう本当に言葉がございません。瓦れきの中に数百トンの船が横倒しになって連なっているという、まさに地獄絵の光景でありました。未曾有の天変地異がもたらした被害を思いますと、被災地の復興に向けた道のりは、極めて困難で長いものになるに違いないと思います。
 今後、本格的な復興を目指す被災地を継続的に後押ししなければならないと思います。これは東京だけの責任じゃなしに、被災を免れた日本全国のそれぞれの市区町村の責任だと思います。そのためにも、実務にたけた職員を東京都としては長期に派遣しまして、手に余る瓦れきを東京に受け入れて処理するなど、復興の担い手となる民間技能者も育成するなど、長丁場になりましょうが、全国の範ともなる息の長い支援を今後も力強く行っていきたいと思っております。
 また、原子力発電所の事故のために避難を余儀なくされた多くの方々が一日も早い収束を待ち望んでおられますが、そうした方々を都営住宅などで受け入れておりまして、孤立化を防ぐ個別訪問や、就業、就学支援など、引き続き生活全般をきめ細くサポートしてまいります。
 実は、この会議が始まります前も、福島の工業高校の卒業間近い諸君が都庁に参りまして、この東京という中小企業の非常にすぐれた技術を開発しているこの現場で、これからも働きたいという意向で、都は、それを全力を挙げて支援していきたいという約束をいたしました。
 これからも都は、刻苦しながら立ち上がろうとしている被災者の皆様に寄り添いながら、復興に向けてみずから踏み出し、困難を乗り越えんとしている被災地、被災者を切れ目なく支えていきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、都内に避難された方々への支援についてでございますが、都はこれまでも、都内避難所におきまして健康福祉相談等を実施してまいりましたが、避難者の方々が都営住宅等に入居された後も、それぞれの地域で必要なサービスを利用しながら安心して生活できるよう、引き続き支援していく必要がございます。
 このため、介護や医療、保育など、避難者のさまざまなニーズに対応する福祉総合相談窓口を新たに設けまして、必要に応じ専門機関につなげてまいります。
 また、区市町村や各地域の社会福祉協議会の協力を得まして、利用できるサービスや手続を記載したリーフレットを作成いたしまして、高齢者、障害者などに対しましては、個別訪問により配布をするなど、避難者に対するきめ細かな情報提供に努めてまいります。
 次に、災害拠点病院の安全性の確保についてでございますが、都は、災害拠点病院の指定に当たりまして、施設本体のほか、非常用電源設備や備蓄倉庫の確保状況などを現地確認いたしますとともに、指定後に建てかえや耐震補強、設備の更新を行った際にも、直接現地において調査を行っております。
 また、病院は建築基準法に基づき、施設の劣化状況等の定期調査を実施することとされております。
 しかしながら、今回の大震災におきまして、被災地の災害拠点病院の中には、施設の一部が被害を受け、十分に機能を果たせなかった病院もあったと聞いております。このため、都では、すべての災害拠点病院に対しまして定期調査報告書の提出を求めるなど、改めてライフラインを含めた施設の安全性について再点検を実施いたします。
 最後に、災害時における医薬品、医療機器などの医療物資の確保についてでございますが、都は、地域防災計画におきまして、災害時には関係団体との協定に基づき医療物資を調達し、区市町村を通じて医療救護所などに供給することを定めております。
 今回の被災県と都では、地形や道路事情、医療物資の流通事情等が大きく異なっております。そのため、被災地の医療物資の実態と都の計画を単純に比較することはできませんが、供給のおくれなどさまざまな問題点が指摘されていることから、調達、運搬、情報伝達などについて実態を調査することといたしました。
 この調査結果から、大都市東京が被災した場合に起こり得るさまざまな事態を想定した上で、災害時の対応を改めて検証し、医療物資の円滑な供給体制を確保してまいります。
   〔交通局長金子正一郎君登壇〕

〇交通局長(金子正一郎君) 都内に避難されている障害者や高齢者の方々に対する都営交通の運賃の減免措置についてお答えします。
 都営地下鉄では、現在、他の鉄道会社と同様、緊急的な措置として、都内に避難されている身体障害者や知的障害者の方については、手帳などの証明書を紛失し、提示できない場合でも、お申し出により、半額で乗車できるようにしております。
 今後は、都民でないため、シルバーパス制度の対象にならない高齢者の方などのうち、保険証等により年齢や避難する前の住所を確認できる方への都営交通の運賃負担の軽減について、関係局とも連携し、具体的に検討を進めてまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 五点の質問にお答えいたします。
 まず、復興支援イベントに関する情報の提供についてであります。
 震災や風評の被害を受けました地域の応援に向け、都内の商店街がイベントを行って、被災地の農産物等を販売し、震災の復興に役立てていくことは重要であります。
 商店街は、そのノウハウを生かして、イベントのための商品調達等に努力をしておりますが、都が得ている情報の活用を図ることで、より効果的なイベントが展開できると考えられます。
 このため、都としても復興支援のイベントについて相談があれば、被災地の県の産業担当の部門と連絡をとりましたり、東京都中小企業振興公社や都内の農業団体が現地の関係団体等から得られる情報の提供に努めてまいります。
 商店街みずからの努力と都のサポートにより、震災復興に向けて、被災地産品の販売支援を通じた取り組みを着実に進めてまいります。
 次に、被災地生産者と都内の商店を結ぶ取り組みについてであります。
 被災地で生産された加工品や農産品などを都内の商店などで効果的に販売することにより、被災地の産業復興に結びつけていくことが重要であります。
 このため、都は、販売活動の企画などで高い能力を持つ中小企業やNPO法人などが、被災地の加工業者や農家と卸売業者とを結びつけるマッチング活動を行い、被災地の生産品を都内の商店等での販売につなげる取り組みにつきまして、その経費の三分の二を対象に、四百万円を上限として助成することとしまして、今月、その案件の決定をいたしました。
 こうした取り組みにより、被災地産品の販売を促進し、震災からの復興を着実に後押ししてまいります。
 次に、被災者に対する雇用支援についてであります。
 都内へ避難されている被災者の方々は、就職に関してさまざまな困難や不安を抱えていることから、きめ細かく就職を支援していくことが重要であります。
 このため、都はこの夏から、都内での就職を希望される被災者の方を支援するための緊急窓口を東京しごとセンターに開設いたします。この新たな窓口では、就職に関する相談、助言を行うカウンセラーなどの専門家を配置し、被災前の職歴や経験、今後の希望職種など一人一人の状況を踏まえたカウンセリングを行うとともに、被災者の方を六カ月以上正規雇用した企業に対しまして、原則六十万円を支給する助成金制度も創設いたします。
 また、ご指摘のような求人側への事前の情報提供については、同センターで行う被災者の経歴やニーズ等に応じた面接会の際に、承諾を得た方について事前に求人企業にプロフィールを提示するなど、きめ細かくマッチングを行います。
 さらに、経済団体等と連携し、これらの取り組みについて、各団体の傘下の企業に対して広く協力を求めてまいります。
 こうした取り組みにより、被災者の方の早期の就職実現に向けた支援を行ってまいります。
 次に、被災地の求職者に対する情報提供についてであります。
 都は、都内での就職を希望する被災者に対し、さまざまな支援策を実施いたします。大震災などの影響により、被災地にいて、やむを得ず都内での就職を希望する方につきましても、活用できる情報については適時適切に発信していくことが重要であります。
 このため、都内で実施する被災者向け就職面接会の実施に当たりましては、被災地の自治体やハローワークなど国の機関と連携し、参加企業の労働条件を初めとする詳細な情報を被災地の求職者にも事前に提供する仕組みを構築いたします。
 この中で、遠隔地での求職活動に要する費用を支給する国の制度や、都が実施する被災者向け就職支援策についてもきめ細かく周知してまいります。
 こうした取り組みにより、希望する被災者の都内での就職を後押ししてまいります。
 最後に、被災地の観光復興支援についてであります。
 ご指摘のとおり、東京から関東一円を初め、東北地方など日本の各地域を訪れる外国人旅行者も多くいらっしゃいます。
 しかし、東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故の影響により、残念ながら海外では、旅行目的地としての東京のイメージが損なわれております。また、東北地方につきましても、被災地を中心に、各国による渡航自粛等の措置が引き続き行われているのも現状における事実であります。
 こうした状況を打開するため、都としては、東京への旅行者の回復に向けて、夏以降、海外の旅行事業者約九十社の招聘を予定しており、実際の東京を体験していただく事業を行います。
 あわせて、この機会を活用し、国との連携等により、東北地方を初めとする各地域の旅行情報の提供を行います。
 さらに、東京を訪れた海外の旅行事業者が訪問を希望される場合には、都は、岩手県、宮城県、福島県の被災三県と調整し、被災三県が招聘の機会を提供できるよう協力してまいります。
 また、羽田空港に都が設置している東京観光情報センターに、被災三県に係る外国語表記の観光パンフレットの設置場所を提供してまいります。
 こうした事業を展開することで、被災地の観光復興を支援してまいります。

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