平成二十三年東京都議会会議録第八号

〇副議長(鈴木貫太郎君) 五十八番かち佳代子さん。
   〔五十八番かち佳代子君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇五十八番(かち佳代子君) 日本共産党を代表して質問します。
 初めに、東日本大震災で亡くなられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様に心からのお見舞いを申し上げます。また、救援、復旧のために懸命に取り組んでいるすべての皆様に心から敬意を表するものです。
 今定例会で問われているのは、都として震災被災地、被災者への支援、住民本位の救援、復旧、復興に全力を挙げるとともに、原発ゼロを目指し再生可能エネルギーへの転換を図ること、防災福祉都市をつくって都民の命と財産を守り抜く道を切り開くかどうかです。
 私は先日、我が党の災害救援ボランティアの一員として、市民の約八割が被災し、六割の家屋が冠水、八割の漁船が流出した石巻市に行ってきました。
 妻が寝たきりで避難所にも行けない高齢の男性は、半壊の自宅で生活し、支援の手さえ入らないと語っていました。多くの人々に義援金や支援金も行き渡らず、被災者の厳しい生活を身にしみて感じてきました。いまだに復旧は緒についたばかりです。瓦れき撤去や炊き出しなどのボランティアも、土木、建築の技術者など専門家も大きく不足しています。
 知事は、被災地の現状と被災者の要求についてどう受けとめていますか。被災者への手厚い支援とライフラインなどの一日も早い復旧、さらには、住民や地元自治体が望む住民本位の生活再建と地域経済の復興は、まさに国民的課題であり、国を挙げて取り組むべき必要があります。首都東京がこの取り組みに大きく貢献することが求められていますが、知事の所見を伺います。
 次に、福島原発事故をどうとらえ、都として放射能汚染やエネルギー問題にどう取り組むかという問題です。
 放射能汚染が拡大する中で、お母さんたちから、子どもの通う保育園や学校の校庭は大丈夫かしらなど心配の声が上がっています。
 日本共産党都議団は、都民の強い要望を受け、都内百二十八カ所で地上一メートルの放射線量を測定しました。ほとんどの地域で、都が地上十八メートルで測定しているモニタリングポストの値より高く、その中でも、区部東部地域で比較的高い数値が測定されました。
 私たちは都の測定方法を、人の生活する高さ地上一メートルで行うよう改め、抜本的に測定箇所をふやすよう求めてきました。都もようやく一定の改善を図ったことは重要ですが、まだまだ不十分です。
 原発事故は収束のめどが立っていません。放射能汚染は今後どうなるのか、微量といえども長い年月に蓄積される内部被曝が体にどう影響するのかなど、未解明なことがたくさんあります。
 都として何よりも重要なことは、未来を担う子どもたちの安全を必ず確保するという厳しい立場で放射能対策に当たることですが、知事、いかがですか。
 そのためにも、各学校や保育園、幼稚園の校庭、砂場などの放射線量を施設ごとに確認できるよう、測定機器購入などへの支援をすべきです。また、給食食材などを測定できるよう支援すべきです。そして、年間線量基準一ミリシーベルトを超える場合には、土を入れかえる、芝を刈るなど可能な対策をとり、その費用負担は東電と国に求めるべきです。
 ストロンチウム、ウラン、プルトニウムなどが放出されていますが、その全容の公開を東電と国に求めるべきです。同時に都としても、これらの放射性物質が測定できる機器を購入し、施設も整備して継続的に測定を実施することが重要です。見解を伺います。
 都として、東京の海域の海水や海底土の定期的測定を行うとともに、海産物や農産物の測定を抜本的に拡充すべきです。
 福島原発事故という未曾有の大災害を引き起こした歴代政府と東電の責任は本当に重大です。同時に知事が、あれは天災だ、十メートルの津波などだれも想定できなかったなどといって、この責任を擁護していることにも都民の厳しい批判の声が上がっています。
 日本共産党はかねてから、福島第一原発などを例に挙げて、大地震、大津波によって原子炉の冷却機能が失われ、炉心溶融の危険があることを具体的に指摘し、改善を求めてきました。二年前には経済産業省の審議会で、貞観津波の調査研究を踏まえ、福島原発の耐震性に対する懸念が東電側に伝えられました。にもかかわらず、歴代政府と東電は、日本では過酷事故は起こらないと安全神話に固執し、何の措置もとらなかったのです。
 知事、今回の事故はとるべき対策すらとってこなかった人災だということは明白ではありませんか。
 知事は、あの事故は管理の問題だとも発言しています。もちろん管理も最低です。しかし原発が安全か否かは、管理というレベルの問題ではありません。どの原発もエネルギーを取り出す過程で大量の放射性物質を生み出します。この死の灰を安全に原子炉内に閉じ込める手段を人類はまだ手にしていないのです。
 放射性廃棄物の処理方法は全く見通しが立っておらず、原発敷地内や六ヶ所村にため込んでいるだけです。原発は未完成で危険な技術です。この本質的な問題を知事はどう認識しているのですか。
 知事は、浜岡原発についての見解を問われて、防波堤も含めて、できるだけ早い時期に完成された形で原発が始動することが好ましいと発言しました。首都圏により近い浜岡原発が大地震、津波に襲われ、施設が重大な損害を受ければ、福島原発をはるかに超える損害、被災を都民にもたらすことは火を見るよりも明らかです。
 日本世論調査会の調査では、今ある原発はすべて廃炉にすべきが八二%を占めているのです。浜岡原発は休止ではなく真っ先に廃炉にするよう求めるべきです。知事の見解を伺います。
 知事は、風車、太陽光では電気の供給量は知れているなどと発言しています。しかし、自然エネルギーへの転換は今や世界の大きな流れです。太陽光、水力、風力、波力、地熱などに加え、バイオマスなど再生可能エネルギーを大幅にふやすなら、全体としてコストも下がり、安定的な供給ができるのです。そして、このことによって中小企業は力をつけ、新たな経済発展の道が開けます。知事、自然エネルギーを中心とした東京発の新エネルギー戦略をつくろうではありませんか。いかがですか。
 太陽光発電のコストについていえば、日本の企業は、二〇三〇年には一キロワットアワー時の発電で七円を目標としています。環境省の調査によれば、都有地、学校など公的施設の活用で、年間発電量約六十五億キロワット時の発電が生み出せます。また、私たちの試算では、都内の民間住宅の三割に普及すれば、年間約二十八億キロワット時、合わせて九十三億キロワット時となり、これだけで都内供給電力の一割以上にもなるのです。
 知事も一度は廃止した太陽光発電設置への助成を不十分ながらも復活しましたが、これにとどまらない取り組みが必要です。そのためにも、群馬県太田市が実施しているように、一括購入で設置費を大幅に下げる、十年リースで初期設置費用を無料化するなどの思い切った対策をとり、中小企業、保育園、福祉施設などへも普及することが重要だと考えますが、それぞれお答えください。
 安定した出力を得られる中小水力発電にも着目すべきです。オーストリアでは四割が水力発電です。東京でも大きな可能性があります。主な河川だけで六十三カ所、区市管理の用水路のほか、多摩地域には農業用水路も七十五カ所あるのです。堰がなくても水の流れさえあれば発電できる技術も開発され、東京都ベンチャー企業大賞を受賞し注目されています。上下水道、工業用水、火力発電所の冷却水などでも発電が可能です。地域に根差した無数の小水力発電を進める緊急対策に取り組む必要があると思いますが、答弁を求めます。
 東京都には広大な海域があり、海に浮かべる洋上風力と波力発電の可能性は大きなものがあります。早急に実証実験に踏み出すなど、島しょの経済、漁業振興と一体で進めるべきだと思いますが、どうですか。
 大量生産、大量消費、大量廃棄、二十四時間型社会というエネルギー浪費社会を抜本的に改めることも重要です。それは我慢の社会ではなく、地球と人間に優しい社会のあり方を追求するものです。節電の名で障害者などが危険にさらされたり、子どもたちの学校での活動を制限するなど、あってはならないことを申し述べておくものです。
 次に、いつ東京を襲っても不思議ではない巨大地震に備え、防災福祉都市づくりを緊急に進める問題です。
 その第一は、あらゆる危険性を直視し、どんな地震からも都民の命と財産を守るという立場にしっかりと立つべきことです。
 中央防災会議は、かつて、住民の生命、身体、財産を守ることを第一に、首都圏直下の地震として十八タイプを想定し、予想される地震のすべてに漏れなく対応できる対策をとることが望ましいと呼びかけました。ところがその後、首都中枢機能の継続性の確保を最優先にする立場に転換し、東京湾北部地震対策一つに絞ってしまったのです。しかし、同時に残る十七タイプの地震についても対策を講ずるべきとしていました。
 ところが、都の想定対象としては、東京湾北部地震に多摩直下を加えるにとどまりました。この二つの地震の震度想定は、最大でも六強です。外された立川断層地震は、多摩の南部地域を中心に震度七、都心東部直下地震などは、江東区や台東区の一部で震度七の危険がそれぞれ指摘されているのです。知事はなぜ残る十六のタイプの地震を対策の対象から外したのですか。
 東日本大震災を踏まえて、中央防災会議は、可能性があるすべての地震や津波を対象とするとの中間報告を準備しています。都としても、新たに東海、東南海、南海の三連動地震の想定だけでなく、中央防災会議で示された首都圏の十八タイプ全部を想定すべきです。さらに、新潟から関東に抜ける巨大陥没地帯にある帯状の断層による直下型地震の可能性については、最新の知見を踏まえた調査検討を始めるべきではありませんか。
 続いて、防災福祉都市づくりの課題について提案します。
 地震から都民の命を守る上で何よりも重要なことは、災害を未然に防止し被害を最小限に食いとめる予防の原則です。ところが知事は、震災予防条例を廃止し、予防の立場を投げ捨てました。そして都民に、自分の命は自分で守れという自己責任論を押しつけています。その一方、都が重視しているのは、専ら住宅密集地域の再開発などによって幹線道路とビルをつくることです。これでは住民の納得も得られないし、木造住宅の耐震不燃化も進みません。
 この五年間に都の助成で耐震改修を行った木造住宅はわずか三百一件です。静岡県が同じ時期に実施した助成は八千九百四十三件の三%にすぎません。この違いは、静岡では県内すべての地域の木造住宅に助成を行い、高齢者世帯などには上乗せ助成をしているのに、東京都は、耐震化は所有者の自己責任だという考え方で、助成の対象を木造密集地域の中のごく一部に絞り込み、高齢者などへの上乗せ助成もないからです。木造住宅への耐震化助成をすべての地域を対象にし、災害弱者への思い切った上乗せをするなど拡充すべきではありませんか。
 木造住宅密集地域については、住民を主体にした修復型のまちづくりを基本として、一つ一つの住宅を耐震化し、燃えにくい外壁構造にしていくことや、消防車が入れるよう隅切りをすること、そして、小型消防車などの整備を含め、木造住宅密集地域の火災に迅速に対応する体制の拡充を図ることが急務です。
 今回の大震災で津波対策の重要性が浮き彫りになりました。これまでの都の津波想定は最大一・二メートルでしたが、今回の津波はその想定を超えました。地震の震源地によっては、数メートルを超える津波が人を襲う可能性があります。
 重視すべきは、都心部及びゼロメートル地帯が、津波や水害に対して極めて脆弱な構造になっている問題です。東京湾を数メートルから十メートルの高さの津波が襲えば、ゼロメートル地帯が冠水する危険性についてどのように認識していますか。津波対策をどのように進めるのですか。
 今回の地震で注目すべきは液状化問題です。私たちの調査では、都内でも江東区の二十一カ所を初め、八区で液状化が発生しており、被害者への支援が強く求められています。都内は国の支援地域から外されているため、葛飾区や江戸川区は独自の助成を行おうとしていますが、都としても、住宅再建及び地盤強化に対する支援を行うべきではないですか。
 また、専門家の英知を結集し、液状化発生状況の綿密な調査、地盤の科学的、歴史的分析、建築物への影響などを総点検するとともに、側方流動なども含む液状化防止対策を進めることが必要です。お答えください。
 東京湾岸部には、一万キロリットルを超える石油タンクだけでも五百基が存在しており、危険物施設への対策は急務です。
 巨大な地震や津波が東京湾を襲えば、燃料の流出、火災の発生で、湾岸全体に想像を絶する被害をもたらす危険があります。湾岸自治体が共同して、地盤と施設の総点検を実施し、国と企業に安全化を強く求めることが必要です。知事、どうですか。
 帰宅困難者対策も見直しが必要です。東京都が大地震に襲われたときに、膨大な帰宅困難者が発生したら、火災に巻き込まれるなど二次被害を拡大する危険があります。
 既に六年前、中央防災会議の専門調査会報告書は、帰宅困難者対策の基本原則はむやみに移動を開始しないことだとしていました。そして、それを保障するため、企業や学校が従業員や子どもたちを一定期間待機させることや、家族の安否確認の体制を整備すること、それを行政が徹底することを求めていました。
 ところが、都が示している帰宅困難者の行動心得十か条は、帰宅中心の心得です。また、今回発表された東京緊急対策二〇一一でも、この傾向が是正されていません。むやみに行動を開始しないよう都民に周知すること、企業、学校、保育所などにおける安否確認の情報手段を確立すること、食料の備蓄などの体制整備を緊急に行うことを徹底し、支援する必要があると考えますが、いかがですか。
 都民だれもが健康で文化的な最低限度の生活ができる東京をつくることは、都の責務であり、防災都市を進めていく上での前提です。
 例えば、国民健康保険料の問題です。二十三区の国保料は毎年値上げされてきましたが、今回はとりわけ深刻です。夫の介護をしながらの生活をしている年金暮らしの女性は、均等割の減免率七割だったのが五割になり、二人世帯で二万三千九百四十円から四万二百九十円にはね上がりました。今年度の保険料通知が届き、とても払えないという怒りの声が広がっています。
 知事は、都民が自覚を持てば耐震補強が進むかのような発言をしましたが、こんな状況でどうして進むといえるでしょうか。都は市区町村国保への財政支援を行い、国保料軽減を進めるべきです。
 地域医療の充実も重要です。知事は、地域医療を担う都立病院の統廃合を進めてきました。町の民間中小病院も、国の診療報酬削減や医師不足によりどんどんなくなっています。しかし、東日本大震災で浮き彫りになったのは、地域医療の重要性です。
 私たちは、被災地の医療支援を行っている東京都病院協会の皆さんから話を伺いました。大病院には広域から重症患者が集まるので、中度、軽度あるいは慢性疾患の被災者まで手が回りません。災害拠点病院の整備と同時に、地域の中小病院を災害支援病院として位置づけて、守り充実することが重要だというのです。
 都独自に災害支援病院を制度化するなど、地域医療の中核を担う中小病院への支援の思い切った拡充が求められていると思いますが、いかがですか。
 都が発表した基本戦略では、震災被害に足踏みすることなく、東京の都市インフラの取り組みを加速するとしています。これは、国や都の財源を東京の巨大道路づくりなどに優先的に投入してはばからないというものであり、一日も早い復興を望んでいる被災地の人々の願いにも、地震に強い東京の一日も早い実現を望む都民の願いにも背を向けるものです。
 例えば、知事のいう都市インフラの最重点の一つで、外環道だけで三兆五千億円もの事業費が必要です。一方、都内には、緊急に耐震化すべき木造住宅は約六十万棟も残されています。そのために、国や自治体、都民が合わせて一兆数千億円ものお金を出さなければなりません。震災に備えて下水道のすべてのマンホールを改善するためだけでも四千六百億円もかかるのです。
 しかも知事は、二〇二〇年オリンピックの東京招致までいい出しました。オリンピック基金四千億円余りも招致のために温存するなら、都民は納得しません。オリンピック招致についていえば、被災地の復興や地震に強い東京を実現する中で、仮に都民による招致の声が広がれば、その時点で検討すればよいではありませんか。
 知事の答弁を求め、再質問を留保し、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) かち佳代子議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、被災地支援に係る基本姿勢についてでありますが、震災発生から三カ月がたちますが、依然として被災地には、大地震がもたらしたつめ跡が残っております。被災者の生活再建もままならない状況であります。
 発災直後から都は、警察や消防の部隊を現地に派遣するとともに、救援物資の提供や医療、福祉スタッフの派遣など、全国の先頭に立って持てる力を尽くして支援に取り組んできました。
 首都東京は、被災地に、電力などの供給を初め、農林水産物など多くの供給を負っておりまして、全力で支援することは当然であります。膨大な瓦れきの撤去や仮設住宅の建設、被災地の経済再生など、山積する現地の課題に、機を逸することなく、被災地の実情に即した具体的な支援を行っていく必要があると思っております。
 今後とも、都は、現場を持つ強みを生かしまして、被災地、被災者が復興に向けてみずから踏み出す歩みを、総力を挙げて後押しをしていくつもりでございます。
 次いで、原発に関する三問の質問をいただきましたが、まとめてお答えをいたします。
 私は、歴代政府や東電を擁護した覚えはございません。しかし、地震測定の技術が構えられてから、マグニチュード九の地震は記録の上では未曾有のものだったと思います。
 今回の大地震、大津波はまさに天災でありました。一方、原発事故については、ご指摘をまつまでもなくこれは人災であります。
 平安時代、貞観年間ですか、正確には八六九年のときに大津波に遭って、これは古文書に残っておりまして、それを歌った清少納言のお父さんの歌もありますが、それを踏まえて、地質学者が現地で地質の測定をしまして、実際にかなり大きな津波がここまで来たという報告を、原発、政府にしていたようでありますけれども、こういったものをしんしゃくせずにあの立地が構えられたということは、これはまさに人災といいましょうか、管理の問題だと思います。
 また、どこぞの大臣が、命がけで出向いている東京のハイパーレスキュー隊に、現場の事情も知らず、実態も構わずに無謀な放水命令を出しまして、あまつさえ、いうことを聞かなければ処分をするとのたもうた混乱もありました。これもまさに人災でありますな。
 続いて、原発技術についてでありますが、共産党の主張は全く的外れ、ためにするものでしかないと思います。さらに、浜岡原発の防波堤をつくって安全性を強化するという私の発言について、どこがおかしいんですか。できたらそういうことをしたらいいじゃないですか、原発を生かすためにも。
 共産党のいっていることは、まあ私にはよく理解できませんが、経済や国民生活への影響も顧みずに、短絡的に、原発廃止ありきの共産党の原理主義的な主張は余りにも無責任でありまして、国家の発展を阻害するものだと思います。ただただ硬直して物をとらえて、物事を複合的に、相対的に考えることのできない政党は、もはや政党の名前に値しないんじゃないかという気がいたします。
 次いで、オリンピック招致についてでありますが、我が国が大震災から復興をなし遂げるためには、その目標ともなる夢や希望が必要であります。そのために、オリンピック開催を目指すたいまつを、九月一日がこれタイムリミットでありますから、一応とにかく名乗りを上げて、消さずにたいまつをともし続けることは大きな意義があると思います。
 大震災からやがて日本が立ち上がり、復興した日本の姿を全世界に披瀝するならば、世界じゅうから今まで寄せられた友情や励ましへの何よりもの返礼になると思います。
 二〇二〇年大会は、九月一日が申しました立候補申請の期限であります。これを過ぎたら、幾ら都民、国民が望んでも立候補はできなくなるんです、事務的な手続のルールからいって。でありますので、何でも反対の共産党も含めて、日本全体が一つになって、ぜひオリンピック・パラリンピック招致に取り組むことを考えていただきたいと思います。
 他の質問については、教育長、東京都技監、関係局長から答弁します。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 公立学校の給食食材の放射能測定への支援についてでございます。
 給食の食材に用いる農畜産物等につきましては、各都道府県で放射性物質の検査を実施しております。食品衛生法の暫定規制値を超えた食品に対しては、原子力災害対策特別措置法に基づき、内閣総理大臣が地域、品目を指定して出荷制限の指示を行っており、国として食品の安全確保体制が整えられていることから、都として、個々の区市町村が行う食材の検査に対し、支援をする考えはございません。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

〇東京都技監(河島均君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、木造住宅の耐震化助成についてでございますが、都は防災都市づくり推進計画に定める、特に老朽化した木造建築物が集積した区域が連担するなど、震災時に大きな被害が想定される整備地域を対象として、重点的に施策を展開しております。
 このような地域では、震災時に住宅が倒壊した場合、道路閉塞や出火により避難、応急活動が妨げられるとともに、大規模な市街地火災につながるおそれがあるため、区と連携し、耐震診断や改修に対する公的助成を行っております。
 都としては、財源を効率的、効果的に活用する観点から、引き続き整備地域に的を絞り、重点的に木造住宅の耐震化助成を行ってまいります。また、阪神・淡路大震災等で多数の高齢者等が犠牲になっていることを踏まえ、住宅の倒壊から高齢者や障害者等の生命を守るために、緊急に対応すべき施策として、耐震シェルター及び防災ベッドの設置費用助成を既に実施しておりまして、ご指摘のような助成額の上乗せは考えておりません。
 次に、木造住宅密集地域の整備についてでございますが、木造住宅密集地域は老朽化した木造建築物が多いことに加え、狭隘な道路や行きどまり道路など、基盤が脆弱で、狭小な敷地や接道していない敷地が多いといった課題がございます。このため、住民の自発的な個別建てかえや改修に依存した事業だけでは、早期に防災性の向上を図ることが困難であり、道路や公園などの基盤整備とあわせて、建物の共同化などを行う事業や、新たな防火規制などの規制誘導策も組み合わせていくことが不可欠であります。
 こうした住民の安全を守るという公益性の高いまちづくりを進める上では、地元の理解を得ながら、スピード感を持って確実にやり遂げることが行政の責務であります。
 このような考え方に基づいて、今後とも木造住宅密集地域の早期解消に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 八点のご質問にお答えいたします。
 まず、放射線対策の基本的な考え方についてでございますが、現段階における放射線対策の第一は、人体への健康影響を把握することでございまして、そのためには、大気中の放射線量を正確に計測することが必要でございます。こうした考え方に立ちまして、都はこれまで、大気中の放射線量などを測定し、最新のデータを公表いたしますとともに、土壌からの影響を把握するために、都内百カ所で放射線の測定をしております。また、国に対しましては、統一的な放射線量の安全基準の策定を求めております。
 さらに、区市町村に小型の測定器を貸与いたしますとともに、今回の補正予算におきましては、モニタリングポストや放射線を測定するための検査機器を増設するなど、都民の健康を確保するという観点から、必要なさまざまな手だてを講じております。
 次に、放射線測定器購入等に関する支援についてでございますが、ただいま申し上げましたとおり、都は六月十五日から約一週間、区市町村の意向に基づきまして、学校や保育園など、都内百カ所で放射線量の測定を行っております。また、区市町村がそれぞれの地域において独自に行う大気中の放射線量測定を支援するため、既に小型の測定器を貸与いたしました。さらに今後、保健所にも測定器を貸与する予定でございまして、改めて測定器購入などの支援をする考えはございません。
 次に、放射性物質への対応についてでございますが、放射性物質への対応は、すべての国民の健康を守るという観点に立って、国において、安全基準や対応方針を示すべきであります。そのため、都は既に、学校、幼稚園、保育園等における放射線量の安全基準値を早急に策定し、公表すること、安全基準値を超えた場合の対応策を示すとともに、その対策等に要した費用については国が全額負担することを、国に対して緊急要望いたしております。
 次に、原発事故で放出された放射性物質の調査についてでございますが、空気中に放出された放射性物質の状況については、文部科学省が福島県内で環境モニタリングを実施しておりまして、その結果はホームページ等で公表されております。また、この測定結果に対する原子力安全委員会の評価結果も公表されております。
 次に、都独自の測定機器の購入や施設の整備についてでございますが、質問のございましたストロンチウム、プルトニウム、そしてウランを測定するためには、専用のRI室を設ける必要がございます。また、これらの測定に必要な標準物質を保有するためには、体制や設備などの要件を満たし、国に届け出て許可を得る必要がございます。さらに、ウランやプルトニウムに関しましては、廃棄物を永久に保存する必要がございます。
 こうした放射性物質の測定が仮に必要になった場合には、財団法人日本分析センターに委託することとしておりまして、都として新たな機器の購入や施設の整備をすることは考えておりません。
 次に、都内被災世帯への支援についてでございますが、東日本大震災は広域にわたり甚大な被害を及ぼしており、自治体ごとの対応ではなく、国が統一的な対応を行うべきものであることから、都は、同一の災害で被災したすべての地域が支援の対象となるよう、国に提案要求をしていきます。
 なお、先ほども答弁したとおり、提案要求が実現するまでの間の対応につきましては、地元自治体の意向も踏まえ、今後検討してまいります。
 次に、国民健康保険についてでございますが、都は、国民健康保険制度の健全かつ安定的な運営を図るため、法令等に基づきまして、各保険者に対する財政支援を既に行っております。保険料負担軽減のため、都として新たな支援を行うことは考えておりません。
 最後に、中小病院への支援についてでございますが、都は、東京都地域防災計画に基づきまして、大規模災害発生時に被災を逃れた中小病院を含むすべての医療機関を後方医療施設と位置づけまして、災害拠点病院とともに区市町村等と連携をして、被災者に適切な医療を提供する体制を整備いたしております。また、今回の補正予算では、耐震化や自家発電設備の整備につきまして、補助対象をすべての病院に拡大することといたしております。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 海水や海底土の定期的測定と水産物、農産物の測定の拡充についてのご質問でございますが、海水や海底土の放射性物質の測定については、現在、国におきまして、広域的なモニタリングが行われております。
 また、水産物、農産物についてでありますが、水産物につきましては国との役割分担のもとに、また農産物につきましては都内産品を対象といたしまして、いずれも既に検査を実施しており、今後とも適切に対応してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 五点のご質問でございます。
 まず、エネルギー施策の検討についてでございますが、今回の震災に伴う電力危機を受け、高効率な天然ガス発電による電力供給の拡大や、住宅用太陽光発電を初めとした再生可能エネルギーの導入促進など、電源確保の重要性が高まっています。こうした状況を受けまして、先ほどもご答弁しましたように、災害時のリスクにも強く、同時にCO2排出が少ないエネルギー利用と供給を進める施策のあり方について、検討することが必要と認識しております。
 次に、太陽光発電への補助についてでございますが、今回の補正予算では、住宅用太陽光発電を初め、ガス発電機なども含めた家庭における電力確保を目的とする補助事業を計上しております。また、住宅用太陽光発電の導入をさらに拡大するためには、先ほどもお答えしたとおり、再生可能エネルギーの全量買い取り制度が開始される必要があると考えております。
 次に、太陽光発電の住宅以外の分野への普及についてでございますが、これにつきましても、全量買い取り制度が開始される必要があると考えており、国に求めております。
 次に、小水力発電についてでございますが、都では既に平成十二年度から水道局の東村山浄水場で、出力千四百キロワットの小水力発電設備を稼働させております。また、規模がさらに小さい、いわゆるミニ水力発電やマイクロ水力発電につきましても、水道局では南千住給水所など三カ所に、下水道局でも葛西水再生センターなど二カ所に、それぞれ発電設備を設置しております。
 最後に、海洋における再生可能エネルギーについてでございますが、波力発電に関しまして、既に今から二年前の平成二十一年七月に、都が大学や民間事業者に呼びかけて波力発電検討会を設置し、この検討会における検討を踏まえ、既に民間主体で実証実験に着手する段階に入っております。都としては、今後、実験の進捗状況を的確に把握してまいります。
   〔総務局長比留間英人君登壇〕

〇総務局長(比留間英人君) 四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、都の震災対策の対象となる地震についてでございます。
 国は、首都直下地震対策大綱の策定に当たり、発災後の応急対策を具体的に検討するためには、特定の一つの地震を想定することが現実的かつ実効的であるとの考え方に基づき、地震発生の切迫性、被害や影響の大きさなどの観点から、十八種類の地震の想定の中から東京湾北部地震を選択しております。
 都は、国の東京湾北部地震に加え、同程度に切迫性の高いプレート境界多摩地震を選定し、これら二つの地震を想定した地域防災計画を策定しております。
 一方、施設構造物などの耐震化や、出火、延焼等の防止などの予防対策につきましては、国は想定される地震のすべてに対応することが望ましいとしており、都も同様の考えのもとに、地域防災計画の中で災害予防計画として位置づけ、対策を進めております。
 したがいまして、残る十六種類の地震については、被害想定及び応急対策策定の対象とはしておりませんが、震災対策の対象からすべてを外しているわけではございません。
 次に、直下型地震の可能性の調査検討についてでございます。
 今回の東日本大震災を受け、国は、中央防災会議に新たに専門調査会を設置し、従来の地震対策の再検証に入っております。都も、今回の教訓を踏まえ、これまでの災害の概念をとらえ直し、科学的知見を有する専門家の助言を得て、従来の防災対策を再構築をいたします。
 なお、国は平成十九年から、首都圏で発生するマグニチュード七程度の地震像の解明に向けて、断層を含む地下構造の調査研究を進めており、都も当初からこの研究に積極的に協力をしております。
 次に、東京湾岸部の危険物施設の地盤や施設の点検等についてでございます。
 危険物施設を設置する地盤や構造については、国が厳格な技術基準などを定めており、施設を設置する事業者は、この基準等に従い安全対策を講じる責務があります。
 今回の東日本大震災においては、東北地方に加え、東京湾沿岸など広範囲で石油タンクなどに被害が発生したことなどから、国は、地震や津波で被災した危険物施設や、地盤の液状化の実態調査と対策の検討を開始したところでございます。今後、こうした国の検討状況を踏まえ、九都県市で連携し、東京湾内における石油タンクの安全対策について、国へ要望してまいります。
 最後に、震災時の帰宅困難者対策についてでございます。
 今回の震災では、首都圏の鉄道がすべて停止をしたため、多くの帰宅困難者が発生し、都内は大きく混乱をいたしました。帰宅困難者対策は、一斉帰宅の抑制、帰宅困難者の一時待機施設の確保、速やかな安否確認と情報提供などが重要となります。また、状況が落ちついた段階では、陸上海上輸送を活用し、早期帰宅を推進していく必要があります。
 これらを踏まえ、都は、官民で構成する協議の場を設け、それぞれの役割と責任を明確化するとともに、安否確認や備蓄などを含め、課題の検討を行い、社会全体で取り組む帰宅困難者対策を策定してまいります。
   〔消防総監新井雄治君登壇〕

〇消防総監(新井雄治君) 木造住宅密集地域の火災に迅速に対応する体制についてでありますが、木造住宅密集地域を受け持つ消防署所には、道路の狭隘状況を勘案し、小型ポンプ車を配置するとともに、震災時における危険性を考慮し、消防隊用並びに消防団用可搬ポンプを計画的に整備しております。
 また、これらの地域で火災が発生した場合に備え、出場隊数の増強や、消防団、防災市民組織との連携により、効果的な消防活動を行うこととしており、今後とも、市街地化の進展や消防行政需要の推移などを総合的に勘案し、適正な消防活動体制の確保に努めてまいります。
   〔建設局長村尾公一君登壇〕

〇建設局長(村尾公一君) 津波の危険性に対する認識と対策の進め方についてでございますが、今回の大震災では、これまで予測していた規模を超えるマグニチュード九・〇の地震が発生したことから、東京における大津波の発生の可能性について、国の中央防災会議の動向などを注視するとともに、大震災の際に堤防等の防災施設が安全に機能するか、早急に検証することが必要と考えております。
 このため、都は、緊急にとるべき対策について、既に地震や津波の専門家を含む委員会を立ち上げ、施設の耐震性等について検証を開始しております。
 次に、液状化対策についてでありますが、都は、橋梁や護岸など主要構造物の整備に当たり、地域ごとの液状化発生の可能性を目安として示した液状化予測図や地質調査、道路橋示方書などの技術的基準に基づき、必要があると認められた場合には、地盤改良や基礎部分の強化などの対策を実施してまいりました。このため、今回の地震においては、都が管理する都市施設の主要な構造物について、大きな被害は認められませんでした。
 今後、東日本大震災による新たな知見について、地盤の専門家などから意見を聞きながら、液状化対策検討の基本となる液状化予測図の見直しを行い、公共施設管理者などに提供してまいります。
 一方、一部の木造住宅については、液状化による被害が生じたため、建築物を対象とした対策の指針などを作成し、広く都民に情報提供してまいります。
   〔五十八番かち佳代子君登壇〕

〇五十八番(かち佳代子君) 知事に再質問を行います。
 質問の前に、先ほどのご答弁で、共産党は何でもかんでも反対するとおっしゃいましたけれども、事実は違いますので、きちんと事実に基づいて発言していただきたいと思います。
 それでは、まずオリンピック招致についてです。
 その第一は、今、日本が一つになって総力を挙げるべきは、何よりも被災地の復興、被災者支援と、地震や放射能から国民、都民の命と暮らしを守ることではないのですか。イエスかノーかではっきり答えてください。
 二つ目は、東京の巨大道路建設や大型開発に重点を置くなら、復興や安全なまちづくりに人、物、お金を集中できません。四千億円以上ため込んだオリンピック基金をなぜ住宅などの耐震化に使わないのですか。お答えください。
 二つ目は、原発についてです。
 再度お聞きしますが、死の灰を原子炉内に閉じ込める手段を人類が手に入れていない、使った核燃料の後始末ができない、こういう本質的な危険について知事はどう考えるのですか。明確にお答えください。
 二つ目は、浜岡原発については、一般的な原発の問題ではなく、この浜岡原発は、東海大地震の予想震源域の真上にあるんです。他の原発にも増して危険だという認識は知事にはないのですか。はっきりお答えください。
 以上で再質問を終わります。
   〔スポーツ振興局長笠井謙一君登壇〕

〇スポーツ振興局長(笠井謙一君) オリンピック招致についてでございますけれども、先ほど知事がご答弁申し上げたとおり、オリンピック開催を目指すたいまつを消さずにともし続けることは、大震災からの復興をなし遂げるためにも大きな意味があると思っております。
 また、本日、多くの若いアスリートたちが、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックの日本招致を直接訴えてまいりました。
 今後も、スポーツ界、国、経済界を初め、都民、国民の機運が盛り上がることを期待しております。
 また、先ほど知事も申し上げましたように、事務的には九月一日が立候補申請の期限でございます。これを過ぎましたら、幾ら都民、国民が望んでも立候補はできなくなります。ぜひご理解をいただきたいと思います。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

〇財務局長(安藤立美君) 基金のお話がございましたので、私の方から。共産党さんの主張のとおり、予算を措置しないから都民に背を向けたむだ遣いというような再質問は、まことに理不尽な感じがいたします。都はそれぞれの施策の分野におきまして、しかるべき事業を実施をしておりまして、福祉、医療、教育はもとより、雇用環境、中小企業などに対する施策も充実してきていると思っておりますし、今般は大震災を受けて、緊急対策として、迅速に被災地、被災者の復興支援や、東京の防災力の強化などに着手をしておりますので、ぜひご理解いただきたいと存じます。
 なお、オリンピック・パラリンピック開催準備基金は、条例によりまして、オリンピック・パラリンピック開催に関連する社会資本等の整備に要する資金に充てるための基金と位置づけられておりまして、これはかねて答弁申し上げているとおりでございます。
   〔知事本局長秋山俊行君登壇〕

〇知事本局長(秋山俊行君) 原発に関します二問の再質問にお答えいたします。
 一問目が、放射性廃棄物の処理に関するご質問でございましたが、先ほど知事の方から、今回の原発の問題は人間の管理の問題であるということでございますので、管理をしっかりすべきだということになろうかと思います。
 次に、浜岡原発に関するご質問でございますけれども、先ほど知事の方から、浜岡原発に防波堤をつくって安全性を強化せよ、安全な形で運転しろということでございまして、そのとおりのお答えになろうかと思います。

〇七十四番(伊藤まさき君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会されることを望みます。

〇議長(和田宗春君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇議長(和田宗春君) ご異議なしと認め、さよう決定いたします。
 明日は、午後一時より会議を開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後八時三十九分散会

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