平成二十三年東京都議会会議録第八号

   午後三時五分開議

〇副議長(鈴木貫太郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 九十番村上英子さん。
   〔九十番村上英子君登壇〕

〇九十番(村上英子君) 平成二十三年第二回東京都議会定例会に当たり、都議会自由民主党を代表して質問をさせていただきます。
初めに、東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げ、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。
 改めて申し上げるまでもなく、政治の役割は、国民の生命、財産を守り、その生涯を安全に安心して暮らせるようにすることです。未曾有の大震災にあって、我が都議会自由民主党は、一日も早い復旧、復興に全力を尽くしてまいります。
 今回の大震災は、東北地方だけではなく、東日本全体に甚大な被害をもたらしました。
 こうした事態にあって、菅政権の対応は、誤った政治主導により後手後手に回っており、極めて遺憾としかいいようがありません。
 瓦れき撤去がおくれ、義援金も行き渡らない国とは対照的に、東京は、まさに獅子奮迅の働きをしています。ハイパーレスキュー隊の活躍で、日本は救われました。警察官が大切なご遺体を遺族にお返しするために、捜索活動を今なお続けていることに深く敬意をあらわします。都民から多大な義援物資、義援金も集まり、多くのボランティアが活躍しています。避難を余儀なくされた被災者の方々を受け入れ、地域ぐるみで応援しています。まさに国家にも匹敵する物的、人的な支援であり、これぞ首都であると思います。
 知事に、国難のもとにおける東京の役割について、所見をお伺いいたします。
 我々は、科学技術によって自然を従え、暑さ寒さをしのぎ、便利で快適な生活を当然と思ってきました。しかし、電気がとまればすべてがとまって身動きができなくなった今回の事態に、かの物理学者、寺田寅彦が書いた「天災と国防」という論文の一節、文明が進めば進むほど、天然の暴威による災害が激烈の度を増すという一文が思い出されます。大都市ほど、災害対策を、あらゆる角度から徹底してやらなければならないというのが、大きな教訓であると思います。
 東京の弱点を徹底補強しなければ、首都として日本を牽引し続けることはできません。
 先般、公表された都政運営の新たな戦略では、中長期的な都政運営の道筋を明らかにするため、「十年後の東京」計画を改定することが示されました。どのような視点を持って改定に当たるのかお伺いいたします。
 次に、財政運営について伺います。
 今般の大震災は、都政を取り巻く環境に根本的な変化をもたらしました。このような中、今回、都は速やかに緊急対策を取りまとめ、震災からの本格的な復興に向けた一歩を歩み出しました。財源探しに終始し、なかなか本格的な復興に向けた道筋を示すことができない国とは極めて対照的です。
 しかしながら、首都東京を高度の防災機能を備えた都市としていくためには、中長期にわたる継続的な取り組みが必要であり、今後、これらの事業が本格化すれば、相当規模の財政支出が見込まれると考えます。
 一方で、今回の震災による経済活動への影響が、歳入の根幹である都税収入の動向に今後どのように及ぶのか、注視していく必要があります。また、昨今の国における税制の抜本改革の検討の中では、都がこれまで繰り返し主張してきた法人事業税の暫定措置撤廃については、議論すらなされておらず、これに対しても都は強く主張していく必要があります。
 このように、都財政を取り巻く環境が大きく変化する中にあっても、今般取りまとめた緊急対策を着実に実行するとともに、今後も引き続き、都民に対する責任を果たし得る財政運営を図っていくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、被災地の復興支援と首都東京の防災対策について伺います。
 被災地の一刻も早い復旧、復興は、まさに国を挙げて取り組むべき課題であり、首都である東京は、全国からの支援の先頭に立ってさまざまな取り組みを行うことが求められています。
 一方、都内でも、帰宅困難者の発生といった直接的な被害に加え、計画停電による生産活動の制約、雇用や景気の悪化など連鎖的な被害も生じています。
 一千三百万都民の安全・安心の確保はもとより、日本全体への影響の大きさを考えると、東京の防災力向上は待ったなしです。
 そこで、今回の大震災が突きつけた被災地の復興支援と首都東京の防災力向上という二つの課題に、今後どのように取り組むのか、知事の所見をお伺いいたします。
 次に、被災地支援の取り組みと今後について伺います。
 都が進めてきた被災地への渾身の支援は、首都で災害が発生したときの応援につながる、都と被災地の貴重なきずなになると確信しております。
 我が党は、東日本大震災復旧・復興対策推進本部を立ち上げ、被災地への応急支援、被害状況の実態調査、都民や各種団体からの要望聴取などを行い、被災地や被災者への支援に党を挙げて取り組んでおります。
 被災地の本格的な復興は長期的な取り組みを要することとなりますが、引き続き東京での人員を確保した上での都職員の効果的な派遣体制を確保するとともに、民間事業者等と連携した総合的な支援がぜひとも必要です。
 そこで、これまでの都の被災地支援の具体的な取り組みを踏まえ、今後の支援のあり方について見解を伺います。
 次に、被災者の受け入れについて伺います。
 都は、我が党の主張も踏まえ、発災後すぐに一万人規模の受け入れ体制を整備するとともに、避難者の精神的、肉体的負担を軽減させるため、都営住宅等で積極的に受け入れを行いました。
 我が党では、本年四月、都の避難者対策の一つとして、都内のホテル、旅館を活用すること、そして、その際には、都内の物価水準を踏まえるべきことを緊急に要望し、都は、都内の旅館等での避難者の受け入れに着手いたしました。今回、六月末に閉鎖される旧グランドプリンスホテル赤坂を退去される方につきましても、積極的にホテル、旅館を避難場所として活用すべきと考えます。
 そこで、避難者の受け入れについて、今後の取り組みを伺います。
 また、避難も長期化していることから、都営住宅等の提供に加え、個別の事情に対応しやすい民間賃貸住宅の活用により、自立した避難生活と、その前提となる就職の支援に一層取り組むことを強く要望いたします。
 なお、旧グランドプリンスホテル赤坂では、現在、被災地の就職活動の会場として、福島県の工業高校に提供されており、我が党としても、こうした取り組みを応援しております。
 さらに、専門学校生等の授業料等減免措置について伺います。
 都内に避難した被災者の中には、幼稚園児や小中高生も含まれており、公立や私立の幼稚園、学校に通っています。
 都は、被災児童生徒等を受け入れた私立の幼稚園や中学校、高等学校が授業料等を減免した場合に補助することとし、今回の補正予算に盛り込んでおります。
 一方、東京には、専門学校等に通学する生徒が多数おり、その中には、東北地方にある実家が東日本大震災で被災し、経済的に困難な状況に陥った生徒も多数いると伺っております。
 都は、幼稚園や中学校、高等学校と同様に──まず、現地における産業の再建が欠かせません。岩手、宮城、福島の三県で、震災後に職を失い、失業手当の受給手続を行った方は十万人を超えるとのことであり、現地における雇用の確保が急務となっています。
 これらの地域では、地震や津波で直接被害を受けた事業所が数多くあります。
 また、これまでの取引先が失われて初めて、改めて販路の開拓をやり直さなければならない事業者もおり、それぞれの状況に応じた支援が必要です。
 都として、被災地の企業が当面の機能を回復するための場や販路の開拓に向けた機会を確保できるような支援を行うべきと考えますが所見を伺います。
 また、ものづくりの担い手である製造業の再建に力を入れていくことがとりわけ重要であります。
 製造業を再開するには、多くの手間と時間がかかります。仕事を海外メーカーに奪われてはならないと、工場再建を急ぐ中小企業の様子がテレビでたびたび放映されます。ものづくり企業の再建は、日本の国際競争力を維持し発展させる上で不可欠なテーマです。
 このため、我が党も、被災地の工場等の復旧に取り組む都内中小企業の支援を強く要望したところであり、補正予算にも盛り込まれました。東北で被災した工場の復興に取り組もうとする東京の中小企業に対して、都としてどのような考えで助成の仕組みをつくり支援を行うのか、所見を伺います。
 次に、被災産地の支援について伺います。
 このたびの大震災は、三陸沿岸を中心に壊滅的な打撃を与え、太平洋に面した地域では、津波により広大な農耕地に甚大な被害を受けました。
 一方、福島第一原発周辺地域では耕作自体が困難になっており、加えて暫定規制値を超える放射能が検出されたとのことで、多くの農産物や水産物が出荷規制を受けています。さらに出荷した安全な農作物等についても売れないという風評被害に見舞われました。
 これまで都民は、これらの地域から生鮮食料品のみならず大量の電力の供給を受けるなど、生活の多くを被災地に依存してきており、復興がおくれれば、被災者だけではなく、都民生活にも重大な影響が出てまいります。
 そこで、都は、都民生活の安定のためにも被災地を支援し、その復興に全力で取り組む必要があります。とりわけ被災産地から多くの生鮮食料品を集荷してきた中央卸売市場の役割が重要であると考えますが、その支援の考え方と取り組みについてお伺いいたします。
 あわせて、消費者に身近な商店街などに協力を求め、被災産地の農作物等の販売を促進していくことも、被災地の復興につながっていくものと考えますが、ご見解を伺います。
 次に、今夏の電力危機への対応について伺います。
 大震災に伴う電力危機を受け、三月に強行された計画停電は、医療機関などのライフライン機能の維持に支障を来し、経済活動にも重大な影響を与えました。
 国は、今夏に向け大口需要家には一五%の削減義務を、小口需要家や家庭には一五%の削減目標を示しましたが、いずれも数値目標を提示し取り組みを促すだけで、対策には何ら具体性がないといわざるを得ません。
 また、一部に節電のための基本理念を示すだけの条例を定めようという動きがありますが、抽象的な行為規範をつくったとしても、全く実効性が上がらないことは明白です。
 我が党が五月二十五日に提出した緊急要望でも示したとおり、都民や事業者による自発的、具体的な行動を促し、実際に節電行動につながる地に足のついた政策をつくり、確実に実行することが重要でございます。
 都はこのたび、電力対策緊急プログラムを策定しましたが、東京の電力不足状況に対し、発電所建設等も含めどのような考え方を持って対応するつもりなのか、まず、知事の基本認識をお伺いいたします。
 この夏は、広く都民、企業が一丸となって節電に取り組んでいく必要がありますが、ここで忘れていけないのは、経済活動を縮小させてはならないということです。節電は確かに大切ですが、電力不足を契機とし、省エネ投資の促進と、日本が誇る技術の活用を積極的に進め、同時に経済の活性化をも図ることが都の役割であると考えます。
 今回の電力対策緊急プログラムでは、どのような実践的な取り組みによって省エネ、節電と経済の活性化の両立を図っていくつもりなのか、お伺いいたします。
 また、都市としての防災、危機管理機能、エネルギーの安定的確保等の視点も加え、東京におけるエネルギー確保、利用の最適化を本格的に考えることも必要です。こうした視点を踏まえてこそ、地球温暖化対策の次なる展開を検討する上での強固な基盤づくりにもつながると考えています。
 首都東京におけるエネルギー施策を本格的に検討する専管組織を設置し、全庁を挙げて都みずからが取り組んでいくべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 震災後に計画停電が強行され、都内でも数多くの中小製造業が操業を停止する事態に追い込まれました。電力の供給が一日のうち数時間でも滞ることで、これまでにない規模の混乱が広がることを我々は身をもって体験いたしました。
 知事は、去る四月七日、計画停電が行われた足立区のメッキ工場を訪れ、中小企業の窮状を理解されたものと考えています。まずは節電に取り組むことが不可欠ですが、多くの中小企業にとっては、電力需要の抑制には限界があるため、事業継続に必要な電力の確保に向けた自家発電設備の導入などの対応も、より重要になると考えます。
 こうした中、節電の推進に合わせて、中小企業の発電用設備の導入が円滑に進むような支援策を打ち出していくべきと考えます。特に、設備の早期導入に向けて思い切った措置を講ずるべきと考えますが、所見を伺います。
 また、今回の計画停電では、都内の医療機関も診療機能に大きな制約を受けました。この夏の電力使用制限については、救急病院などの医療施設は適用除外や制限緩和となりましたが、電力不足の長期化や大規模災害発生時に備えた体制整備が引き続き必要です。
 都は我が党の要望を受け、病院の電力確保による支援制度を創設するとしていますが、具体的な内容についてお伺いいたします。
 さらに、在宅で人工呼吸器を使用している患者にとって、停電は生命の維持を脅かすものであり、多くの患者を不安に陥れました。今夏に備え、在宅で療養している患者家族の不安を解消するため、都として電力確保の支援を行うことは、重要かつ緊急の課題であると考えますが、所見を伺います。
 次に、高齢者の熱中症対策について伺います。
 昨年の夏は記録的な猛暑となり、都内で四千人を超える方が熱中症により緊急搬送されましたが、そのうち約半数が六十五歳以上の高齢者の方々でした。一人一人が体調管理に気をつけることが基本ではありますが、都としても、在宅の高齢者の熱中症対策に取り組む必要があると考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、地震に強い東京の都市づくりについて伺います。
 必ず来る首都直下型地震などから都民の生命と財産を守るため、首都東京を一日も早く、燃えないまち、壊れないまちとしていくことは喫緊の課題です。さきの第一回定例会においては、東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例を制定いたしました。
 予算特別委員会において、知事は、私の質問に対し、この条例を推進するためには、耐震性を示すマークなどにより、人々の意識を変えていく取り組みもあわせて行わなければならないと答弁されました。国に先んじて一歩踏み出したこの条例と耐震化を徹底して進めるという知事の意気込みを高く評価いたします。
 しかしながら、都内には木造住宅密集地域や耐震上課題のある建物がいまだ多く存在しているなど、解決すべき課題が山積しております。今回の震災を踏まえ、地震に強い首都東京の都市づくりを今後どのように進めていくのか、知事の所見をお伺いいたします。
 次に、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化について伺います。
 条例では、特に重要で、早急に沿道建築物の耐震化を図るべき特定緊急輸送道路をまず指定することになっています。これにより、耐震診断が義務づけられる対象建物が明確になることから、都民も大きな関心を寄せています。特定緊急輸送道路は今月末に指定されることになっていますが、どのような考え方で指定するのか、見解を伺います。
 特定緊急輸送道路が指定されると、建物所有者は、耐震診断などの実施に向けた具体的な取り組みを開始できるようになります。建物所有者にとっては、建築士との契約や助成の申し込みなど、経験したことのない手続も多く、円滑に進めるためには丁寧な対応が不可欠です。区市町村や関係団体とも連携して耐震化を進めることが重要と考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、病院の震災対策について伺います。
 都は「十年後の東京」への実行プログラムに基づいて、救急医療機関の耐震化を促進しておりますが、今回の大震災から得た教訓を踏まえ、都として病院の耐震化を一層促進するべきと考えますが、今後の取り組みについてお伺いいたします。
 次に、東日本大震災を踏まえ、水道施設のあり方について伺います。
 我が党はこれまで、八ッ場ダム等の建設による渇水への対応や、施設の耐震化推進など、水道施設整備の重要性を繰り返し主張してまいりました。これを受けて水道局では、水道施設の再構築を考える会を設置し、水道全体の安全度を向上させるための検討を開始いたしました。こうした中、今回の震災が発生し、放射性物質の飛散に伴う水道水への影響や、電力供給不足が発生するなど、東京でも想定し得なかった二次災害に見舞われました。
 都民の生命や生活の源である水道を守っていくため、このような自然の脅威などに備え、多面的な検討を行い、さらに高い安全度を確保するべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、私立学校における防災対策について伺います。
 都内の私立学校に通う多くの子どもたちを震災から守るには、校舎などの耐震化が極めて重要です。我が党は、保護者からの切実な要望を受けて都に強く働きかけてまいりました。都は、耐震化補助率の引き上げや補助対象の拡大など取り組みを進めてまいりました。
 しかし、耐震化の進捗状況は、公立に比べまだ低いのが実態です。当然のことながら、公立学校であれ、私立学校であれ、日本の将来を担う大切な子どもたちの命に公私の格差があってはなりません。
 都は、私立学校の耐震化促進に向けて、これまでの取り組みに加え、よりきめの細かい支援を着実に行うべきと考えますが、所見を伺います。
 また、今回の震災では、適切な避難の仕方や、帰宅困難となった児童生徒への対応など、さまざまな課題が明らかになりました。こうした教訓を今後に生かすため、初期対応を初めとするソフト面での対策も見直していくべきと考えます。
 都は、私立学校における災害発生時の対応力の強化に向けてどのような支援を行っていくのか、所見を伺います。
 次に、都営地下鉄の耐震化対策について伺います。
 都営地下鉄では被害がなかったと聞いておりますが、直下型の地震が起きた際には、本当に大丈夫なのか不安もあります。その点についてお伺いさせていただきます。
 次に、まちづくりについて伺います。
 東京の都心部には、震災復興や戦災復興事業によって整備された街区がそのまま残っている地域があります。こうした市街地は区画街路が狭く、街区も小規模であることから、今日的なニーズに合わせた土地の有効利用ができず、また、建物の更新も進まず一斉に老朽化するなど、防災上も大きな課題を抱えています。
 そこで、これらの地区において、街区を集約して大街区化し、都心にふさわしい都市利用を図るとともに、災害時の一時避難場所など、防災機能を備えたまちづくりを推進することが国際都市東京にとって必要と考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、地震、津波に伴う水害対策についてお伺いいたします。
 このたびの大震災により被災地では、大きな揺れや津波などにより、港湾施設や河川の堤防、水門を初め、下水処理場などのインフラ施設が広範囲において壊滅的な被害を受けました。
 都がこれまでスーパー堤防事業など、耐震性にすぐれた対策を進めていることは高く評価できますが、東京の沿岸部には、ゼロメートル地帯を中心とする低地帯が広がり、満潮面以下の地域に約百五十万人もの人々が生活しています。津波による被害現場を目の当たりにし、より一層対策を行っていく必要性を痛感いたしました。都は万全の備えを早急に講ずるべきであります。水害対策のハード面の取り組みについてお伺いいたします。
 特に、臨海部に都市機能が高度に集積している状況などを踏まえると、東京港における防災機能の点検、見直しが重要と考えますが、見解をお伺いいたします。
 また、万一まちに海水などが浸入して下水道が機能しなくなると、その水を排除できないだけではなく、汚水がまちにあふれることになりかねません。
 そこで、いかなるときにおいても下水道施設の機能を確保することが重要であると考えますが、取り組みについてお伺いいたします。
 次に、建築物における液状化対策について伺います。
 このたびの大震災では、首都圏において、埋立地を中心に地盤の液状化が発生し、都内では江東区での道路の陥没や、足立区や江戸川区での木造住宅の傾斜などの被害が生じました。こうした被害を目の当たりにすると、高度防災都市の実現のためには、住宅市街地などの道路や敷地、建物に対する対策を総合的に進めていく必要があります。
 とりわけ、日々の営みの基盤となる住宅の被害は、都民生活に大きな影響を及ぼすことから、木造住宅などの建築物における液状化対策を的確に講じていくことが重要であると考えます。
 そこで、都は、建築物における液状化対策についてどのように取り組むのか、見解をお伺いいたします。
 また、今回の大震災による都内の被害は、被災者生活再建支援法が適用されず、支援金が支給されません。都内の被災世帯を支援するため、国に要件の見直しを要求するとともに、見直しまでの間、地元自治体と連携した支援の手だてを検討するべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、下水道施設の液状化対策について伺います。
 都内においては、千葉県浦安市のように、トイレの使用制限までは至らなかったものの、江東区や江戸川区などで、下水道管やマンホールの液状化による被害が見られました。下水道は都市の活動を地下から支える重要なインフラであります。
 そこで、今回の震災を踏まえ、下水道施設の液状化対策を一層進めていくべきと考えますが、その取り組みについてお伺いいたします。
 次に、中小河川における今後の整備についてお伺いいたします。
 近年、気候変動の影響ともいわれる時間一〇〇ミリを超える局地的な集中豪雨により、水害や土砂災害が発生しています。人口や高度な都市機能が密集している首都東京においては、水害に対する安全性を高めることが極めて重要です。
 我が党はこれまでも、時間五〇ミリの降雨に対応する施設整備の完了を待つことなく、より高い整備水準に移行するよう強く主張してまいりました。このたび都は、昨今の局地的集中豪雨にも対応するため、中小河川における新たな整備のあり方について検討を開始したと伺っております。
 そこで現在、都はどのような検討を進めているのか、お伺いいたします。
 次に、東京都の防災への対応指針の策定等について伺います。
 大震災は、これまでの震災の想定をはるかに超え、多くの人々のとうとい生命を奪うとともに、住居や仕事といった生活の基盤に大きな被害を与えました。被災地の人々に都として最大限の支援を行うことはもちろんですが、この震災の教訓を都の防災対策の充実に生かしていく必要があります。
 都は、本年十一月を目途に防災対応指針を策定し、その内容を地域防災計画の修正に反映していくとのことですが、防災対策見直しの一連の動きの中で、今回の震災をどう総括し実効ある対策を構築していくのか、所見を伺います。
 次に、我が党は社会を成り立たせていく仕組みとして、日本が歴史の中ではぐくんできた家族のきずな、地域のきずなの重要性をこれまで訴えてまいりました。今回の震災では、その重要性を改めて認識させられました。
 かつて東京でも、隣近所でみそやしょうゆを貸し借りし、よその家の子どもでも我が子同様にしかり、いざ火事や台風、地震の際には互いに助け合うなど、支え合いの光景がごく当たり前でした。これは、本来の日本人の心の持ちようでもあります。今日、とかくプライバシーを強調し、心の通った人と人との交流が薄くなっているように思われます。
 しかし、ケネディの、国が何をしてくれるかではなく、国のために何ができるかという言葉を引くまでもなく、自助、共助がしっかりと根づいた社会こそ、真に豊かで強い社会だと思います。これは防災の点からも必要不可欠です。
 そこで知事に、自助、共助、公助のありようについてお伺いいたします。
 地域で住民同士の結びつきを強める仕組みとして、町会、自治会などがありますが、こうした団体の活動に積極的に参加したいという住民の声を聞く機会は、着実にふえてきております。都は、地域活動に社会的な関心が高まっているこの機会をとらえて、町会、自治会活動の活性化に取り組むべきと考えます。
 あわせて地域防災力の向上のため、我が党の提案により創設された地域の底力再生事業助成を積極的に活用し、地域における防災への取り組みを、これまで以上に支援するべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、学校における防災教育について伺います。
 我が党はこれまでも、みずからの命を守る力、いわゆる自助だけではなく、人や社会の安全に積極的に役立とうとする共助の態度をはぐくむ防災教育を重視し、都議会の場で、その充実に向けてさまざまな提言をしてまいりました。
 被災地のある中学校サッカー部員たちは、地震発生後すぐに津波を想定して避難場所に向かいましたが、周囲の状況からとっさに危険と判断し、近くの小学生たちの手を引き、さらに高台へ避難し、九死に一生を得たとのことです。
 ある都立学校では、約二百名の生徒が、みずからも帰宅困難者となりながら、教職員の指導のもと、帰宅支援ステーションの運営に率先して加わったと伺っております。
 今般の大震災を踏まえ、東京の防災力を強化するには、みずからの生命をみずから守るとともに、社会にも貢献できる人づくり、とりわけ将来を担う子どもたちへの防災教育が必要と考えます。
 そこで、都教育委員会は、今後、学校における防災教育をどのように推進するのか、お伺いいたします。
 次に、自助、共助の拠点ともなる商店街は、少子高齢化社会の進展の中で、災害時の対応はもとより、地域における住民の生活を支えるものとして、さまざまな形で役割を果たすことが望まれております。
 そこで、今後の課題として考えられるのは、いわゆる買い物弱者への対応です。経済産業省においても、平成二十二年度に報告書がまとめられました。
 しかし、全国と都内では状況が異なるところがあります。都としても、地域における商店街の役割という観点から、その実態を調査し、対応を検討するべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、ボランティアの支援についてですが、今回の大震災で、都は、新たに都民ボランティアを立ち上げ、自立型ボランティアを被災地に派遣し、高い評価を受けたと聞いています。今後大切なのは、受け入れの仕組みづくりです。東京が大規模災害に見舞われることを前提に、他の道府県から多数の志あるボランティアを円滑に受け入れ、被災者に対する効果的な救援活動に当たっていただく仕組みを、今のうちから検討しておくべきことを強く要望いたします。
 次は、通信の確保についてであります。
 今回の震災では、通信ネットワークの脆弱性も明らかになりました。発災時の通信ネットワークには二つの課題があります。
 一つは、災害対策に必要な通信基盤の確保です。警察、消防、自衛隊を初め、行政機関相互の連携のほか、ライフライン事業者などの指定公共機関、災害拠点病院等の医療機関、災害時の協定を締結している協力機関との間の情報連絡が発災時でも安定的に行えることが、迅速な応急復旧に向けた第一歩となるのです。こうした情報連絡による通信基盤が十分に確保されているとはいいがたい状況でした。
 二つ目の課題は、都民のための情報基盤の強化です。被災地同様、東京においても携帯電話が機能不全となり、家族の安否確認も困難な状況に置かれました。また、帰宅困難者への対応を通して、発災後の混乱の中で正確な情報を迅速に都民に伝えることの難しさも浮き彫りになりました。
 非常時においても都民に冷静な行動を促すためには、十分な情報が都民に行き渡るよう、情報基盤を強化することが必要です。都は、こうした観点から、発災時の情報通信による課題を整理し、対応策を検討するべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、帰宅困難者対策について伺います。
 今回の震災では、都内においても地震発生直後から鉄道の運行が停止し、JRに至っては、早々に当日の運行再開を断念いたしました。駅周辺や歩道は家路を急ぐ人であふれるなど、東京は、これまでに経験したことのない状況となりました。都が帰宅困難者を支援するため、区市町村と連携し、合計千三十カ所の受け入れ施設を開設し、約九万四千人の帰宅困難者を受け入れたことに対しては、一定の評価をいたします。
 しかし、首都直下地震が発生すると、東京では、今回の震災をはるかに上回る混乱が生じることが明らかであり、十全な備えを講じる必要があります。都内で発生する膨大な帰宅困難者に対応するためには、行政だけではなく、都民、事業者などの都市の構成員が協力して帰宅困難者対策を推進する必要があります。
 今後、都は、首都直下型地震はもとより、東海、東南海、南海連動地震なども視野に入れ、帰宅困難者対策を強力に推進していくべきと考えますが、見解を伺います。
 また、都営地下鉄では、今回の震災の際には、大江戸線が都内の鉄道の中でいち早く再開運行したとのことですが、地震が発生した際の乗客の安全確保や、早期に運行を再開するための取り組みとしてどのような検討を行っているのか、お伺いいたします。
 あわせて、今回の経験を踏まえ、鉄道事業者として新たに見えてきた課題と今後の対策についてお伺いいたします。
 次に、備蓄対策について伺います。
 大震災は、東北三県を初め広範な地域に被害を及ぼし、物流ネットワークにも甚大なダメージを与えました。このため、被災地では、水、食料、医薬品などの必要な物資が迅速に供給されず、多くの人々の生活に重大な支障が生じました。また、都内においても、ガソリン、重油の供給不足という事態が発生し、事業活動が大きく制約されました。物流機能が回復するまでの間の手だてを広域的な視点からあらかじめ講じておくことの重要性を改めて認識いたしました。
 これまで都は、食料を初めとして生活に必要な物資の備蓄を推進してきましたが、災害時においても事業活動を継続する観点から、燃料等の備蓄や調達の仕組みについて、そのあり方を検討する必要があります。
 また、物資の備蓄は、行政だけの対応には限界があり、今後は、これまで以上に事業者の協力も得ながら進めていくことも重要です。
 今回の震災の教訓を踏まえて、首都圏全体で取り組むことができるように備蓄対策を再構築するべきと考えますが、所見を伺います。
 さきの震災では、被災地への緊急救援物資の迅速な輸送が大きな課題となりました。陸路のみならず、海上からの輸送ルートを確保する必要があり、改めてふ頭の岸壁や背後道路など港湾インフラの重要性が確認されました。
 東京港は、首都圏四千万人の経済、生活を支えており、大震災で被災した場合には、その被害や背後圏への影響ははかり知れません。都ではこれまでも、岸壁や背後道路の整備を着実に進めておりますが、今回の震災を踏まえ、耐震強化岸壁の一層の整備促進や臨海部の道路ネットワークのさらなる強化を図るべきです。
 東京港が震災時にも十分な物流機能を発揮していくため、都として今後どのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
 次に、震災対策における広域的な連携について伺います。
 東日本大震災のような大規模な災害に迅速かつ円滑に対応するためには、自治体相互が連携して広域的な取り組みを行うことが大切です。
 とりわけ、いつ起こってもおかしくない首都直下型や東海などの連動地震といった大規模地震に備えるためには、首都圏を構成する都、県、区市町村が一層連携して広域災害に対処する仕組みが重要です。
 このため、都は、目的に応じて都と県、都と区市町村など、多様な連携の仕組みを平素から構築しておく必要があります。また、首都圏の多くの自治体が被災する可能性もあることから、首都圏を超える連携も考えるべきです。
 そこで、首都圏を襲う大規模災害に備え、都が先頭に立って、こうした広域的な連携強化に取り組んでいくべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、消防力と地域防災力の強化について伺います。
 災害への備えは温故知新の姿勢が必要であり、災害への対処は、備えを生かした創意工夫が不可欠であります。震災での東京消防庁消防救助機動部隊、いわゆるハイパーレスキュー隊の活躍は、消防の英知を集めた活動で、まさにその結晶であります。
 今後の東京における災害を考えれば、こうした経験や知恵を、すべての消防部隊を初め、消防団、地域社会に反映させ、災害の備えを向上させるとともに、災害により効果的に対処できる体制を整えることが肝要です。
 このため、ハイパーレスキュー隊の充実、強化を基軸とする東京の消防力を向上するとともに、施設、装備といった活動基盤の整備をさらに促進するなどの消防団の強化や、住民や事業所の災害への行動力や対応力といった地域の防災力をさらに強化し、東京での発災に備えていくべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、放射性物質問題について伺います。
 先日、都は、従来新宿区内で行っていた放射線量の測定体制を拡充し、都内百カ所で測定を行うとともに、区市町村に対し、測定機器を貸与することといたしました。
 これまで都は、単に放射線の値を測定するだけにとどまらず、水道水ではパニックを防止するため、乳児がいる家庭にペットボトル水を緊急で配布いたしました。農作物の風評被害払拭にも取り組み、さらには、東京港のコンテナや工業製品について、測定結果の証明書を発行しております。都民、国民のために、現場としてできることを工夫しながら懸命に努力してきたのであります。
 にもかかわらず肝心の国は、放射性物質の安全基準についてなかなか示しておりません。現場で幾ら観測をしても、安全基準が定かでなければ観測値の評価ができず、都民、国民の不安は一段と募るばかりです。政権を預かり、政治主導とか国民生活が第一といってきた民主党の皆さんの奮闘を強く求めるものであります。
 しかし、ある民主党の都議会議員は、都民、国民の不安の根源を断つどころか、ちびっ子探偵団のごとく、下水道の南部スラッジプラントに入り込んで放射性数値をはかり、何ら方策もないままに、いたずらに危険とあおり立てております。
 雨によって洗い流された放射性物質が集積するのは、下水道施設の性質上やむを得ないものです。しかし、施設は密閉され、排気もコントロールされています。そうした事実を正確に評価もせず、ただ危険だと騒ぐのは、現場で懸命に働く関係者への努力を踏みにじり、都民、国民の要らぬ不信感を増幅させる行為にほかなりません。
 まずは、政治家として、現下の不安をつくり出しているみずからの政権に対して、物を申していくべきと考えますが、いかがでしょうか。
 今、必要なのは、科学的知見に基づいた放射性物質への明確かつ実効力のある対処方針を国家として速やかに示すことであります。都としても、国に対処方針を出すよう強力に要求すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、災害時には、医療の確保が優先されなければなりません。都立病院、公社病院において、都民の生命を守るため、いち早く初動態勢を確立し、迅速かつ適切に医療を提供することが不可欠です。
 大震災で被災した宮城県の中核病院では、ライフラインが寸断され、診療の維持ができなくなった病院や、辛うじて診療ができたものの、それを支える医療品、診療材料、水、非常用発電の燃料である重油の供給体制など、いずれにおいても不安を抱えながら必死の診療が続きました。
 電力が復旧しない病院では、発電用の重油が途絶え、病院機能が停止し、患者を転院させることが余儀なくされました。
 とりわけ、災害時の通信手段を確保することは重要です。今回の大震災では、被害が広範囲に及んだためか、優先携帯電話などの想定システムが機能しませんでした。
 被災地での実態も踏まえ、首都東京での震災を想定して、都立病院、公社病院はどのような対策をとり、災害時の診療機能を確保するのか伺います。
 次に、障害者への支援等について伺います。
 今回の災害で、障害者団体が、安否確認や支援のため、被災地に赴き、被災者に関する情報提供を自治体に求めたところ、拒否されたとの相談が我が党に寄せられました。
 災害時に障害者の安全を確保するためには、障害者団体との協力を得ることも有効です。都として、震災時に備え、障害者団体等との平時からの協力体制を構築しておくことが必要と考えますが、所見を伺います。
 せんだって、都立府中療育センターの改築について基本計画が発表されました。府中療育センターは、都が初めて設立した重症心身障害児施設ですが、建設後相当の年月が経過しており、利用者サービスの向上に加え、防災面の強化という点からも、早期の改築が課題となっております。
 改築に当たっては、地域で生活する重症心身障害児者への支援の充実はもちろん、今回の震災を踏まえ、防災面での対策の強化も重要と考えますが、所見を伺います。
 次に、産業振興について伺います。
 東日本大震災は、都内経済にも大きな影響を及ぼしております。供給面では、サプライチェーンの寸断や電力不足による生産活動の停滞を訴える声が数多く聞かれています。また、需要面でも、原発事故などの影響により、消費マインドの低迷など、現下の景気の動きは極めて弱いといわざるを得ません。
 さらに、今後の経済の見通しにおいても、復興需要への期待感も高まる一方で、収束への道筋が見えない原発事故への懸念など、問題は山積しております。厳しい経営環境下にある多くの都内中小企業にとって、正念場はまさにこれからであります。
 日本経済の牽引役である東京の疲弊は、被災地の復興のためにも深刻なマイナスとなります。都は、新しいビジネスチャンスを創出するなどして、停滞を打開する端緒を切り開いていくことが重要です。
 そこで、まず、今回の大震災を踏まえた中小企業振興に関する基本的な考え方を知事にお伺いいたします。
 次に、都内中小企業への金融支援について伺います。
 都は、震災直後に特別相談窓口を設置するとともに、直接被害を受けた中小企業の資金繰りを支援するため、災害復旧資金融資を立ち上げるなど、被災した中小企業への支援を速やかに講じてまいりました。
 我が党には、都内各種団体からさまざまな声が寄せられていますが、今回の震災による影響は、直接被害によるものだけではなく、風評被害など間接被害によるものまで広範囲に及んでいます。また、こうした企業の中には、リーマンショック以降の景気悪化に対応するため、借り入れた既往債務の返済に苦しむ企業も多いと聞いております。
 今後、直接間接の被害を受けた都内中小企業の資金繰り支援に、どのように取り組んでいくのか伺います。
 なお、今回の大震災により、災害時の事業継続のための計画、いわゆるBCPの重要性がより明確になりました。これまでも、都は、BCPを作成する中小企業をサポートしてまいりましたが、今後さらに支援を拡充するよう要望しておきます。
 大震災は、東京の観光産業に対しても深刻な被害を及ぼしています。三月、四月の訪日外国人旅行者数は、過去最大の減少幅となり、今なお厳しい状況が続いております。国際会議や見本市などMICEのキャンセルも相次いでおります。
 都は、平成十三年より、世界金融危機を契機とした景気後退や新型インフルエンザの流行等の幾多の危機を乗り越えつつ、国に先駆けて観光産業の振興に取り組んでまいりました。
 民間事業者とも一体となって、かつて経験したことのないこの厳しい状況をはね返して、訪日外国人旅行者の回復を図り、観光産業の振興に取り組んでいく必要があると思いますが、所見を伺います。
 次に、オリンピック・パラリンピック招致についてお伺いいたします。
 本日、武田会長を初め、オリンピック・パラリンピック選手の皆様が要請活動にお見えになりました。
 新たに改定される「十年後の東京」の目標年次二〇二〇年はオリンピックイヤーであり、知事は、開催を目指すことは意義があるとのお考えを述べられました。力強く復興した日本の姿をアピールするには、世界最大のスポーツの祭典であるオリンピック・パラリンピック以上のものはありません。
 震災から三カ月余り、生活再建に向けて日々頑張っておられる被災者の方々には、本当に頭が下がります。そのような今だからこそ、九年後を見据え、次世代の子どもたちに夢や希望を与える、未来に向けた取り組みを進めることが大切と考えます。
 都は、いま一度二〇二〇年の復興オリンピック・パラリンピックの開催を目指すべきであります。実現に向けて、日本が一つになることが必要と考えますが、二〇一六年の招致を戦われた知事の所見を伺います。
 次に、八ッ場ダム事業について伺います。
 大震災後中断されていた八ッ場ダムの検証の幹事会が、ようやく先月開催されました。しかしながら、この場では利水の代替案が示されただけで、その内容も、電力不足が懸念されているにもかかわらず、他のダムにおける水力発電用の水を買い取る等、荒唐無稽なものばかりです。これでは、治水についても現実的な代案が出てくるとは到底考えられません。
 今回の大震災を振り返れば、社会資本整備の必要性は議論の余地がありません。民主党政権は、公共事業をむだ遣いの象徴のように扱い、国家百年の計を顧みず、国民の生命と財産を守る責務を放棄しています。
 八ッ場ダムは、治水、利水のみならず、水力発電をも担う多目的ダムであり、人口や都市機能が高度に集積する首都圏を守るために、絶対につくらなければなりません。
 知事は、関係知事と一致団結し、担当大臣に本体工事中止の方向性を撤回させ、一刻も早く検証結果を出すことを約束させました。
 我が党は、当然、建設推進の結論が出ると考えております。改めて、八ッ場ダム建設事業の推進に向けた知事の決意をお伺いいたします。
 次に、東京外かく環状道路の整備促進について伺います。
 首都圏の高速道路ネットワークは、交通渋滞の解消や環境改善のみならず、日本経済を活性化させるなど、その便益性が広く国全体に及ぶものです。
 今回の大震災では、物資輸送等における高速道路ネットワークの重要性が再認識され、かなめとなる外環の早期完成がこれまで以上に強く求められています。
 我が党は、都議会外かく環状道路建設促進議員連盟と連携し、外環の早期着工に向けて、国などへ積極的な働きかけを行ってまいりました。これにより、本年度予算において二億円の準備工事費を含む百二十五億円が計上され、工事の本格化の期待は高まっています。これらを踏まえ、今後の取り組みについてお伺いいたします。
 次に、リニア中央新幹線について伺います。
 先月、JR東海が建設主体として指名され、いよいよこの計画が実現に向け動き始めました。
 リニア中央新幹線は、交流の機会の拡大や産業の活性化などにより、都市圏、ひいては我が国の成長力を格段に高める重要な社会資本です。
 加えて、始発駅となる品川駅を中心に、東京のポテンシャルが向上することも期待されます。
 また、東海地震等による災害発生が危惧される中で、東海道新幹線のバイパス機能を確保する重要性が一層高まっています。
 東日本大震災により、我が国経済の中長期的な低迷が懸念されていますが、国土の足腰を強化する未来への投資を行っていくことが必要と考えます。首都東京の活力向上に向けたリニア中央新幹線の整備に対する知事の所見を伺います。
 最後に、四期目にかける知事の決意について伺います。
 先般の都知事選挙では、都民の強い期待を受けて当選され、すぐさま東京緊急対策二〇一一をまとめ、補正予算を編成されました。
 これまでの石原都政を振り返っても、常に我が国を牽引してまいりました。
 昨今の電力不足の中で、化石燃料の中ではCO2排出が相対的に少ない天然ガス発電所の建設を打ち出されました。環境と経済との両立のために、都市政策にエネルギー政策を織り込んでいくことは、石原環境政策のさらなる進化であります。
 また、知事は、戦後の権利主張や自己の損得ばかりが強調される社会を変えるために、心の東京革命を提唱されました。
 今回、人間のきずなを再び結び直すと宣言されましたが、従来の取り組みと相乗効果を生んで、社会の立て直しにつながるものと思います。
 そして、今回、国政が混迷する中で、東京から次世代を育てるという明確な方向性が示されました。教育再生・東京円卓会議の設置、若者の海外武者修行支援、多摩でのものづくり教育機関の新設といった教育に関する新たな施策であります。
 大震災や激しくなる国際競争、社会を覆う閉塞感など、課題は山積しております。それを乗り越えられるか否かは、我が国を背負う人材を育てられるかにかかっております。
 折しも、ことしの夏、新しい教育基本法が制定されて初めて、中学校教科書の採択が全国で行われます。
 新教育基本法には、豊かな情操と道徳心を培うことや、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国の郷土を愛することなどが、教育の目標に盛り込まれております。
 日本人の心、家族の愛、歴史認識をしっかりと教えるという、これまでないがしろにされてきた日本人としての確かな土台をつくった上で、国際社会に通用する能力を身につけさせることこそが、今、最も必要なことだと考えます。
 東京から日本を救うために、我が都議会自由民主党も、石原知事に全力で協力してまいります。新しい教育人材育成策を打ち出した知事に、四期目にかける決意をお伺いをして、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 村上英子議員の代表質問にお答えいたします。
 国難のもとでの東京の役割についてでありますが、現下の我が国を見れば、まさに内憂外患で進退きわまったという感があります。
 未曾有の大震災に見舞われておりますが、復興の土台となる経済は長期に低迷しておりまして、国際社会で相対的な地位はどんどん低下している。国家財政も実質的には破綻しておりまして、このままでは、多大な国債が債務不履行、デフォルトになりかねない。
 国民は、非力なばかりか、危機の本質すら理解できているとは思えない現行の政治に、失望し切っているんじゃないんでしょうか。多くの人々が、国の行く先に希望を見出すことができないでいるような気がいたします。
 この閉塞を打破するには、強いメッセージを発信し、現場を踏まえた具体的な手だてを示して、現実を具体的に変えていくしかないと思います。これこそ、国家にも匹敵する力を持った東京の役割でありまして、日本の頭脳、心臓として当然の務めだとも思っております。
 東京の総力を挙げて、被災地、被災者に確かに届く方策で復旧、復興を支援し、また、電力不足という困難をはね返すべく、環境とエネルギーの新たな戦略を示しました。そのための天然ガス発電所の新規の建設等に向けて、民間とも連携しながら行動を開始していきたいと思っております。
 経済のさらなる発展のために、インフラをたゆみなく整備しまして、特区も活用して、アジアの中心都市となっていきたいと思っております。
 義援金配分の差配すら満足にできない今の政府に対して、国難を乗り越えるとは、具体的にこういうことがあるんだということも示していきたいと思っています。
 私は、今の政府が、日赤が預かって歩合取っているんでしょうか。いずれにしろ、ただで預かっているかどうかわかりませんが、とにかくそれを二〇%足らずしか配分できずに、多大な義援金がいまだに配分されずにいるということは、わけがわからない。仮設住宅に避難した人たちは、体育館で集合で生活しているときと違って、住宅に入れば自活しなくちゃいけないわけですから、買い物ができない。財布を持たずに逃げた人たちに、単に仮設住宅を与えるだけで、私は生活が安定するとはとても思えませんし、何でその頭金、せいぜい数十万のお金を、政府が、とにかく果断に配らないか、私は本当にわからない。
 次いで、被災地の復興支援と首都東京の防災力向上についてでありますが、日本全体に深甚な被害をもたらした今回の震災から立ち直るためには、首都東京が強力なリーダーシップを発揮することが求められていると思います。
 都は、発災後直ちに、ハイパーレスキュー隊や機動隊を現地に派遣して、隊員の諸君は、まさに水杯を交わして、身の危険を顧みずに決死的な行動を展開してくださいました。
 その後も、医療救護や避難所の運営支援などに多くの職員を派遣しておりますし、現場を持つ都の強みを生かして、被災者の皆様への力添えを手を惜しむことなく行ってきております。
 東京は、被災地に電力を初め、農林水産物など多くの供給を負っておりまして、首都機能を維持する上でも、被災地を全力で支援することは当然の責務であります。
 今後、被災地が幾多の困難が横たわる中、本格的な復旧、復興に向けて踏み出す歩みを力強く後押しするために、全国の先頭に立って、職員の長期派遣や瓦れきの受け入れ処理、あるいは被災地企業の受注回復など、支援の取り組みを一段と強化していきたいと思っております。
 また、依然として収束の道筋の見えない原子力発電所の事故によりまして、退避を余儀なくされております都内に受け入れた方々に対しては、孤立化を防ぐ個別訪問や就業、就学支援など、生活全般をきめ細かく援助していきたいと思っております。
 同時に、焦眉の急であります東京の防災力の向上に向けた取り組みも着実に進めていきたいと思っております。
 今回の震災は、多くの帰宅困難者の発生など直接的な被害にとどまらず、物流の断絶による経済活動の停滞など、これまでの災害の概念におさまらない連鎖的な被害を発生させました。
 この教訓を踏まえまして、首都直下地震に備えた防災対策の再構築と、東海、東南海、あるいは南海連動地震への対応も含めた東京防災対応指針を本年の十一月までに策定して、地域防災計画の修正に反映させていきたいと思っております。
 一千三百万人が住み、しかも昼間人口が他県から三百万人も超すという、この東京を高度防災都市へと生まれ変わらせるためにも、国が一方的に奪ったあの法人事業税の税収を取り戻さなくてはならぬと思います。
 とにかく、東京が東京のために使うべき金を、親である国が勝手に子どもの財布に手を突っ込んでかっぱらっていって返さないというのは、これは言語道断の話でありまして、これをやったのは自民党でありますけれども、福田内閣、あのときは民主党は強烈に反対してくれたのに、菅君が副総理のときに私がその話をしましたら、あんまり返事はございませんでした。
 いずれにしろ、東京の金を東京が守るために東京が使おうという我々の意思を国が阻む道理は全くないと思います。
 国政は政局に明け暮れて迷走を続けていますが、東京は、現場に根差した具体的な政策を展開し、日本の再生を全力で支えていきたいと思っております。
 次いで、ことしの夏の電力危機への対応についてでありますが、東日本大震災は、これはまさに国難でありまして、享受してきた繁栄と安寧が危機にさらされている今、我々は、こうむった被害の復元に努めるだけではなく、もっと根源的なものへの反省と修復を志すべきだと思います。
 一晩じゅうともっている余計な明かり、遊技場で使われている電力、あってもなくてもさほど生活に支障を来さないはずの世界に例を見ない自動販売機などになれた私たちの生活様式というものは、そろそろ反省の対象にされるべきじゃないんでしょうか。
 つまり、便利というものに甘んじてきた私たちは、我欲をここら辺でやっぱり抑制して、節制ということを考える必要があるんじゃないかと思います。
 首都圏の電力需要が逼迫する今、我々一人一人が我欲をこらえて節制に努めて、これまで当然としてきた電気の使い方や生活様式を見直し、国民全体で協力することがまさに不可欠であります。
 しかし、国は、電力の消費の一五%削減という抽象的な数字を並べるだけで、かつてオイルショックの際に行われたような政令による正当な権限行使に極めて消極的であります。何をもってちゅうちょするか、さっぱりわけがわからない。
 都は、事業者に対して、都民に対して具体性のある対応策を示して、実行を促しておりますが、本当は国が、命令といいますか、依頼すべきでしょうけど、都なり、この首都圏を形成する四県の知事が合意で──今、何しているんですかあの人は。仙谷さんに官邸で会いましたが、はあはあ、わかりましたというだけで、一向に具体案が出てこない。
 この間、あるスポーツクラブで、休日に仙谷君に会いまして、一体どうなるのかねといったら、まあ、なるようになるでしょうということでして、まあこれが政府の中枢にいる人物の発言かと思って、私はいささか寒心にたえませんでしたが。
 また、首都圏の直面する電力不足への対応策として、高効率な天然ガス発電は最も有力なものでありまして、都は、既に浄水場においてガスタービンによる発電を導入しておりますが、燃料であるLNGの価格を見ても、今後見込まれる電力価格の上昇を踏まえると、十分に採算性のある選択肢ではないかと思っております。
 日本のダイナモたる東京の産業活動が停滞し、空洞化することのないよう、高効率な天然ガス発電所の新規建設など、首都圏の電力自給能力の向上に向けた行動を民間とも連携して開始していきたいと思っております。
 これらによりまして、この夏の電力危機への対応に加え、遅々として進まない国にかわって、低炭素型の環境エネルギー政策を推進し、東京から発信していきたいと思っております。
 ともかく、電力というのは必ず売れる商品ですから、需要があるなら、地方自治体は民間とも協力して、あるいは外資とも協力して、こういった手だてを講じることで、その事業は十分に成り立つと私は思います。
 現に、昨日、真夏日ですか、三十度を超したこの東京での電力の消費量を見ますと、かなりそれが高騰して、残り一〇%というぎりぎりのところまで来ておりました。これは、これから続く暑く長い夏というものを意識しますと、私たちに、電力の消費についてもっともっと強い危機感を持つべきということを啓示しているんじゃないかと思います。
 次いで、地震に強い東京の都市づくりについてでありますが、首都東京を地震に強い都市とするには、都内にいまだ多く存在する防災上の脆弱な部分への対策を加速しなければなりません。
 まず、災害時に重要な役割を果たす緊急輸送道路については、制定した条例に基づいて、沿道建築物の耐震化を進め、早期に建物倒壊による道路の閉塞を防止しなければなりません。
 これに加えて、都内すべての耐震性のある建物を対象とするマーク表示制度を創設して、都民の耐震化への意識や機運を高めて、東京全体に耐震化のムーブメントを起こしていきたいものだと思っております。
 木造住宅密集地域に対しては、専門家を派遣して、必ずやってくる地震の怖さを伝え、住民の意識を変えていきます。
 さらに、まちづくり施策や税制などを総動員した新たな手法も編み出しまして、モデル事業を実施して、具体的な成果を目に見える形で示していきたいと思っております。
 一方、都内には、旧耐震基準によるマンションが四十万戸を超えておりまして、これは権利者の合意形成が非常に難しく、なかなかその耐震化が進んでおりません。
 このような状況を打破するために、国に対して、法が定める耐震改修等に必要な合意要件の緩和を求めることを初め、実効性のある方策を講じて、マンションの耐震化を強力に進めていきたいと思っております。
 これらの手だてを複合的に講じることで、日本の頭脳部であり心臓部である東京を高度な防災都市へとつくり変えていきたいと思っております。
 次いで、自助、共助、公助のありようについてでありますが、特に共助の、地域の連帯感の問題でありますけれども、被災地を見るにつけましても、震災の現場における自助、共助の重要性を、被災された方々のあの行動を見て改めて思い知らされました。
 人によっては、身近の人間を助けて、避難させるためにみずからが犠牲になったという、そういう方がたくさんおられます。
 こういったものを私たちは十分にしんしゃくして、都市における非常に粗雑になった人間関係というものをもう一回構築し直すために、一つの町内というとこれは多過ぎまして、本当に周りの四、五軒でいいのですが、そういう連帯感というものをうまく誘導して、再生させていきたいなと思っております。
 戦後、我欲ばかりがはびこりまして、義務や責任といったことがないがしろにされてきましたが、我々が捨ててきたものや忘れてきたものの中にこそ、実は日本の再生のかぎがあるのではないのでしょうか。
 核家族化が進み、価値観が多様化した今日、特に東京のような大都市では、しがらみもなければ、きずなも非常に希薄であります。こうした現状を東京からも変えていくためにも、防災隣組といった、ごく間近な方々の共助のきずなというものを構築していく必要があると思います。自助、共助、公助のバランスを取り戻し、日本人の美質や心意気をよみがえらせたいものだと思っております。
 連帯に裏打ちされた安全・安心な社会を東京からつくり上げることで、日本再生の大きな潮流となるように取り組みを進めていきたいと思っております。
 次いで、大震災を踏まえた中小企業振興についてでありますが、今回の大震災では、部品工場の被災によりまして、自動車産業全体が減産に追い込まれるなど、日本のものづくりが、大企業と中小企業の極めて広範囲による、しかも密接な結びつきによって成り立っていることをさまざま見せつけられました。
 日本のものづくりを支えているのは、いうまでもなく中小企業でありまして、被災地や都内に数多く存在する世界に誇る技術を持った、これらの中小企業を震災の影響から、いかに早期に回復させるか、これが今こそ日本の真価の問われる一つのポイントだと思います。
 都は、発災以降、都内中小企業への影響を最小限に食いとめるために、経営や資金繰りへの支援など、迅速に手だてを講じてきましたが、震災による影響の大きさにかんがみると、さらなる対策に取り組む必要がございます。
 このため、緊急対策として、制度融資の拡充や工業製品の放射能検査体制の充実など、現場に即した対策を講じてまいります。
 また、電力供給への不安による産業の停滞と空洞化は、これは何としても防がなければなりません。そこで、中小企業の自家発電設備の導入を支援するとともに、天然ガス発電所の新規建設に向け、民間とも連携しながら行動を開始したいと思っております。
 こうした重層的な取り組みを通じて、東京の産業活動の維持回復に万全を期していきたいと思っております。
 次いで、オリンピック招致についてでありますが、未曾有の大震災の衝撃によって、我が国は沈滞しています。スポーツは、傷ついた国民の心をいやし、勇気を与えることができます。世界のトップアスリートが集うオリンピックを開催し、日本の再起した姿を世界に見せることは、復興への道を確かに進むための大きなてこになるのではないかと思います。
 先ほども、多くのアスリートがこの都庁を訪れ、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックの日本開催を訴えてまいりました。次代を担う若者たちの熱い思いにこたえるためにも、たいまつを消さずにともし続けることは、日本の将来にとっても大きな意義がございます。
 ただ、そのときに、君らは都に開催を依頼するだけでなしに、それを推進するためには必ず勝ってこい、勝たなければ話にならぬぞと。勝たなければ、オリンピックに対する期待は国にわいてこないよといったら、彼らは大いにうなずいておりましたが、結果はどうなりますか。
 オリンピック招致は、都市間の争いにもとどまらない、国家間のまさに熾烈な闘いであります。陰に陽の非常に熾烈な闘いであります。日本の今の政府の国際感覚というものが、果たしてこの招致運動にどう反映されるかわかりませんが、私たち、前回の敗北に懲りずに、あれを一つの糧として、私たちはこの闘いを、やるならば、緻密に戦術的、戦略的に構築していかなければならないと思います。そのためにも、国民全体の機運の盛り上がりが不可欠だと思います。
 被災地とも連携し、日本全体が一つとなって実現する二〇二〇年のオリンピックは、都民、国民の連帯感を呼び覚まし、我が国は、大震災から真の意味で復活を遂げることになると思います。国を挙げての再招致への取り組みと、都議会初め多くの方々のご協力を期待しております。
 次いで、八ッ場ダム建設事業についてでありますが、我が国は、急峻な山々が連なった狭隘な国土に、一億を超える国民が暮らしておりまして、社会資本の整備によって地勢的不利を克服し、国民の生命と財産を守っていかなければなりません。これは今回の震災を見ても明らかであります。
 現政府は、理屈もなく目先のことばかりを追い求め、長期的な視点で取り組むべき治水、利水をないがしろにして、その結果、国民を極めて危険な状態にさらしてしまっております。国家の大計に立って、真に必要な公共事業を進めなければ、政治の責任を果たすことはできないと思います。
 現地では、昨年八月に開通した湖面三号橋に加え、ことしの四月には、二号橋も完成しました。約九割の世帯が既に移転しているなど、まさにダム工事の本体を残すのみの状況となっているのです。
 国は、ダムの代替案を検討しておりますが、残りわずかの事業費と工期で完成する八ッ場ダムにかわる策などほかにはあり得ないと思います。今さらどこにどんな新しいダムをつくるのですか。
 国は、国土交通大臣が約束したとおり、馬淵は大変しっかりした大臣でしたが、残念ながら更迭されましたけれども、一刻も早く検証結果を出して、直ちに、本体工事に着手すべきだと思います。
 都は、引き続き関係五県と連携し、国に対し、八ッ場ダムの予定どおりの完成を強く求めてまいります。
 次いで、リニア中央新幹線の整備についてでありますが、リニア中央新幹線は、三大都市圏を航空機に匹敵する高速移動で結びまして、我が国の国土全体に大きなインパクトを与える重要なインフラであります。
 品川から発して恐らく新大阪駅の付近に終点を求めるならば、これはほとんどドア・ツー・ドアで、一時間足らずで東京と大阪が結ばれる。その間にワンストップ、名古屋でしても、これは画期的な世界の中でも未曾有のインフラでありまして、これは私が運輸大臣のときに、実験線を宮崎県から山梨県に移したのですが、これをそのまま本線に組み込んで、JR東海が実用化の技術を確立し、先月、国から建設指示を受けました。
 始発駅となる品川駅は、世界と日本を結ぶ羽田空港へのアクセスが極めて良好であります。その品川駅から大阪まで、約一時間で二つの都市圏が結ばれる、首都圏と名古屋圏と大阪圏が実質的に一つの都市圏となりまして、我が国の国際競争力が飛躍的に向上する大きなゆえんになると思います。
 また、災害発生時において、経済活動の停滞を防ぐために、三大都市圏を結ぶ大動脈を二重化することも重要でありまして、こうした機能を早期に発揮させるためには、大阪までの早期開業や、国内外の玄関口となる品川駅の改良が不可欠であります。これを国及びJR東海に強く求めて、リニア中央新幹線を新たな時代を切り開く牽引車として十二分に機能させることにより、首都東京の活力を向上させていきたいと思います。
 ちなみに、このインフラが完成しますと、三大都市圏が一つの都市圏になりますと、その総生産額は二兆六千億米ドル、これはイギリスの二兆六千米ドルにほとんど匹敵する。東京も現在、東京の全予算は、カナダや隣の韓国やオーストラリアに匹敵しておりますが、その東京に加えて大阪と名古屋が加わって、これが密接な機能で動くようになれば、これは私は強力な、何ていうのですかね、経済協定を持つことになるんではないかと思います。
 次いで、四期目にかける決意でありますが、我が国は、停滞を続けておりますけれども、本来、日本人は、可能性、潜在力を秘めております。これを引き出して、沈んでいこうとしている日本をかえていけるのは、東京という現場からだとの決意のもとに、「十年後の東京」計画も構え、政策を展開してきましたが、これを一段と加速させ、災害に対する都市機能のもろさを克服しながら、今後も日本再生の先頭に立っていくつもりであります。
 とりわけ次代を担う人材をいかに育てるかがこの国の行く末を左右いたします。日本の力の源泉は、技術力、他の民族にない独特の発想力でありました。これを受け継ぎ、一段と伸ばす人材が枯渇しては日本は二度と立ち上がれません。
 先般、世界的にも有名な、長らくロンドンで教鞭をとっております数学者の藤原正彦さんと長いこと懇談しましたが、彼にいわせると、平和賞とか文学賞もかなり政治的なものですけれども、それを除いて自然科学において日本人が戦後とったノーベル賞の数は、イギリスを除けば、あとのヨーロッパ全体に匹敵する、それをしのぐということでありまして、これは私たちにとって非常に大事な、大きな大きなレコードだと思います。
 とにかく、昨今の若者が、多くといいましょうか、全部とはいいませんが、何かと意欲が減退して、非常にステレオタイプに甘んじて挑戦することを忘れて、内向き志向で小さな世界に安住しているんでは、日本は激変する世界から取り残され、存在感をますます低下していくと思います。
 しかもその中で、先般、日本人全体が注目し成功に拍手喝采した、あの「はやぶさ」という、ごくごく限られたグループがつくったあの宇宙開発の手だては、これはもう画期的なものでありまして、アメリカや中国が開発している宇宙船なんかとても及ぶものじゃない。全行程四十億キロの宇宙を旅して、一回行方不明になって、転覆したものを遠隔操作でよみがえらせて、日本に、とにかく地球に無事着陸させた。
 こういった私たちは才能というのを持っているわけですから、これを、いかにほかとコンバインさせ、組み合わせて、複合的、重層的に、日本の世界に対する戦略に組み込んでいくかということが、今の国の役人や政治家では発想力がないからできないかもしれないが、せいぜいやっぱり、都庁の皆さんから、都議会の皆さんから知恵でもかしてやってくださいよ。とにかく、こういう危機感に立って、ものづくりの新たな教育機関をつくり、若者の海外武者修行や留学を直接支援していきたいものだと思っております。
 さらに、現在、国の中枢を担っている与野党の政治家の迷走ぶりは、戦後の教育がいかに貧しく、歴史認識、国家社会の愛着と責任感といった本質を欠いてきたかを如実に示していると思います。
 大震災では、私も自分の目で、現場におりて、あの惨状や、また復旧の活動を見てまいりましたが、規律、節度、自己犠牲といった、長い歴史の中で培ってきた価値観の基軸がいかに大切かということを改めて思い知らされました。戦後の教育を改めて冷静にとらえ直し、反省もし、今こそ、知力、体力、人間力を備えた若者を何とかとにかく育てていきたいと思っております。
 国家や社会を根底から再生するためには、教育、人材教育にこそ、育成にこそ力を注がなければならないと思います。教育の再生、それも再建といいましょうか、今の教育を破壊的に、とにかく要するに改正するということが必要ですし、今般できます東京の教育に関する円卓会議の知恵もかりながら、これからの日本を真に担い得る人材を東京から育てていきたいものだと思っております。
 他の質問については、教育長、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 今後の学校における防災教育についてお答え申し上げます。
 都教育委員会は、東日本大震災を踏まえ、震災時のあらゆる場面において、的確な判断と行動ができるよう、その指針となる副読本「地震と安全」を、都内の小学校から高校まで、全児童生徒に七月までに配布するとともに、新たに、防災教育教材「三・一一を忘れない」を作成して、学校の授業における活用を促進してまいります。
 また、地域と学校とが連携した参加型防災教育や救援活動の模擬体験など、実践的な防災教育を推進するモデル事業を実施し、その成果を各学校に普及してまいります。
 これらの取り組みを通じて、お話のように、まず自分の命を守り、次いで身近な人を助け、さらに避難所の運営など、地域に貢献できる人材を育てる防災教育を一層推進してまいります。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

〇東京都技監(河島均君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、耐震化推進条例に基づく特定緊急輸送道路の指定の考え方についてでございます。大地震から都民の生命と財産を守り、首都機能の低下を防ぐためには、震災が発生した際に、広域的な救援活動や復旧、復興の大動脈となる緊急輸送道路の機能を一刻も早く確実に確保する必要がございます。
 このため、まず、緊急輸送道路のうち主要な防災拠点、空港や港湾、他県等と連絡するすべての第一次緊急輸送道路を指定いたします。これに震災時に災害情報の収集や応急対策の指揮など重要な役割を担う区市町村庁舎との連絡を確保するために必要な第一次以外の緊急輸送道路を加えまして、合わせて延長約一千キロメートルを、特定緊急輸送道路に指定することといたします。
 次に、区市町村や関係団体との連携についてでございます。
 特定緊急輸送道路の指定によって、条例の対象建築物が明らかとなります。そこで、来年度からの耐震診断の義務化を待たず、原則として所有者負担なしで耐震診断を行うことができる新たな助成を直ちに開始してまいります。
 このため、できる限り迅速に耐震診断や耐震改修の取り組みが進められるよう、区市町村と連携して、建物所有者に対する個別訪問や説明会を実施いたしまして、助成制度の内容等について周知徹底を図っていくとともに、相談受け付け体制を充実してまいります。
 さらに、耐震診断の担い手となる建築士等の関係団体との間で、信頼できる診断者の確保や紹介などの新たな体制の構築に向けた協定を近々締結して、所有者が安心して耐震化に取り組める環境を整備いたします。
 今後とも、こうした取り組みにより、条例に基づく施策を着実に実施していくことで、耐震化を強力に推進し、災害に強い首都東京を実現してまいります。
 次に、市街地の大街区化についてでございます。
 お話のように、東京には都心を初めとして、かつての震災や戦災の復興事業によって整備された幅の狭い区画街路で囲まれた小規模な街区から成る市街地が残っております。こうした地区は、街区が狭小であるがゆえに、質の高い都市空間の形成や都心等にふさわしい高度な土地利用を図ることが困難であるとともに、旧耐震基準で建てられた建物も多く、更新が進まないなどの防災上の課題も抱えております。
 また、今回の東日本大震災では、都心等で多くの帰宅困難者が発生し、幹線道路にあふれるといった新たな課題も生じました。こうした課題に的確に対応していくためには、道路や街区を集約再編して大街区化を図り、市街地の機能更新を行うとともに、緑豊かなオープンスペースや、機能的な道路空間を創出していくことが有効でございます。
 また、街区の規模を大きくすることによって、環境に調和し、効率的なエネルギー利用が可能となる建築物を誘導し、その中に、帰宅困難者の一時避難施設や防災備蓄倉庫、自家発電設備等を備えた防災上の拠点としての機能を発揮させることも可能となります。
 このため、都は、地元区や民間事業者等と連携を図りながら、例えば、環状二号線の新橋・虎ノ門周辺などにおきまして大街区化を促進し、東京を国際競争力を備えた高度な防災都市とするための取り組みを積極的に推進してまいります。
 最後に、建築物における液状化対策についてでございます。
 今回の震災では、広範な地域で液状化が発生し、多くの木造住宅が傾くなど、被害の大きさを改めて認識させられました。
 液状化に備えるためには、建築物の所有者や建て主が、敷地の状況を把握し、建物の安全を確保することができるように、液状化の可能性や具体的な対策についての情報を、より一層的確に提供していくことが必要であります。
 このため、七月末を目途に、専門家を含めた検討委員会を設置いたしまして、今回の地震で生じた液状化の被害や地盤の状況についての調査を行い、木造住宅を含む建築物を対象に、地域の地盤特性に応じた対策を早急に検討してまいります。
 この検討結果を踏まえ、建築に際し、地盤調査の必要な区域や具体的な対策事例などについて、都民にとってわかりやすい液状化対策の指針を作成してまいります。
 また、この指針に基づき、液状化のおそれのある地域において、区市と連携し、建築確認審査などの機会をとらえ、建物の設計者などに対しましても、的確な対策を講じるよう促してまいります。
   〔知事本局長秋山俊行君登壇〕

〇知事本局長(秋山俊行君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず「十年後の東京」計画の改定についてでございますが、これまで都は、二〇一六年を目標とする「十年後の東京」計画を羅針盤にいたしまして、先進的な施策を推進してきましたが、計画期間が半ばを迎え、また、東日本大震災によりまして、安定的な電力の確保策など、従前の枠組みでは対応し切れない新たな課題も浮き彫りになってまいりました。
 こうしたことから、「十年後の東京」計画を充実強化した上で改定し、二〇二〇年までを計画期間といたしまして、東京を新たな成長の軌道に乗せる道筋を示すこととしたものでございます。
 その中で、まずは、高度な防災機能を備えた都市への取り組みの強化とともに、新しい共助の仕組みの構築などにより、安全・安心社会をつくり上げていく考えでございます。
 さらに、エネルギー政策を柱に据えまして、節電意識の徹底を図ることなどによりまして、生活様式や価値観を転換し、環境と経済が高次元で両立した都市を実現していく考えでございます。
 また、今後、羽田空港の国際線発着枠がさらに増加し、平成二十五年度には、中央環状線が全線開通するなど、ここ数年の間に、都市インフラが一段と整備されますことから、こうした都市機能の拡充を契機にいたしまして、東京をアジアのヘッドクオーターへと進化させていくことも大きな視点に据えて、「十年後の東京」計画を改定していく所存でございます。あわせて、これまでと同様、三カ年のアクションプログラムでございます実行プログラムを策定いたしまして、施策の実効性を確保してまいります。
 次に、放射性物質への対応についてでございますが、都といたしまして、これまで、大気中の放射線量などを測定、公表いたしまして、都民生活における不安解消に努めておりまして、区市町村の要望も踏まえながら、さらに測定体制の拡充を図ってきたところでございます。
 放射性物質への対応は、すべての国民の健康、安全にかかわることであり、これを各自治体がおのおの判断で決めるようなことになりますれば、混乱を助長することにもなりかねないことから、ご指摘ございましたように、本来は、国において安全基準や対処方針を示すべきものでございます。
 しかしながら、校庭、園庭の利用に関して、国は暫定的な考え方や当面の対応を示すにとどまり、放射線量の安全基準については何ら示していないため、保護者を中心に、放射能の影響を懸念する声が広がっておりまして、また、放射性物質を含む浄水場発生土、下水汚泥や焼却灰などにつきまして、多くの自治体が対応に苦慮する中、先日、ようやく国から当面の取り扱いに関する考え方が示されましたが、抜本的な解決からはほど遠いものとなっております。
 これまでも都は、国に対し、九都県市首脳会議等と連携し、放射線の安全基準の設定などを緊急要望するとともに、都単独でも、放射性物質が検出された飲料水等に関する統一指針の策定等を求めてきたところでございます。
 都民及び事業者の安全・安心を確保するため、今月末から実施する国の施策及び予算に対する提案要求の中でも、モニタリング体制の充実強化及び対象方針の明確などにつきまして、最重点事項として盛り込み、改めて国に対して強く要求してまいります。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

〇財務局長(安藤立美君) 今後の財政運営についてでございますが、このたびの大震災は、都政を取り巻くあらゆる環境に根本的な変化をもたらすものであり、その対応は二十三年度にとどまらず、来年度以降も含めて息の長い取り組みとなると思っております。
 したがいまして、今後の財政運営におきましては、財政環境の先行きを見通すことが大変困難な中にありましても、まずは緊急対策を着実に実行し、現下の都民、中小企業が直面している危機に迅速かつ的確に対応すること、そして、高度な防災力を持つ首都東京の実現に向けた継続的な取り組みを、財政面からしっかり支えていくことが重要であるというふうに認識をしております。
 そのためにも、これまで培ってまいりました基金を初めとする財政対応力を計画的に活用するとともに、それを将来にわたり堅持していくことが必要でございます。
 また、こうした観点から、地道ではありますが、事業評価の取り組みを不断に行い、一つ一つの施策の実効性を高めるなど、都庁の自己改革を推進するこれまでの努力をさらに続けていかなければならないと考えております。
 また、このように堅実な財政運営に徹すると同時に、国に対しましては、地方消費税の引き上げを含めた地方税財源の拡充、そして、その議論の前提であります法人事業税の不合理な暫定措置の即時撤廃について、あらゆる機会をとらえて強く働きかけてまいります。
   〔総務局長比留間英人君登壇〕

〇総務局長(比留間英人君) 六点のご質問にお答えをいたします。
 まず、今後の被災地支援のあり方についてでございます。
 壊滅的な被害を受けた被災地が、本格的な復旧、復興を進めていくには、国はもとより、自治体や民間事業者等による全国レベルでの継続的な支援が必要でございます。
 東京は、電力や食料の供給等の面で被災地と深いつながりがあるため、他の自治体の先頭に立って、中長期にわたる支援体制を構築するとともに、都内民間事業者等とも緊密な連携を図り、技術やノウハウなどを最大限に活用して支援を行ってまいります。
 今後、具体的には、被災地の復興計画策定等に向けて、技術職員などを中長期で派遣するとともに、区市町村や民間事業者と共同で都内に瓦れきを受け入れるほか、被災地企業の受注回復に向けた販売活動などを後押しするなど、東京の持つ総合力を結集して支援に取り組んでまいります。
 次に、防災対応指針の策定についてでございます。
 今回の震災は、被災地における甚大な被害はもとより、都内でも、大量の帰宅困難者の発生といった直接的な被害をもたらしました。また、遠隔地での災害にもかかわらず、計画停電の実施による都民生活の混乱や、経済活動の停滞などの連鎖的な被害も発生をしております。
 こうした被害の状況は、従来の想定を上回るものであり、首都直下地震に向けた防災対策の一層の強化と遠隔地の大震災への対策の必要性が明らかになりました。
 今回の教訓を踏まえて、これまでの災害の概念をとらえ直し、東海、東南海、南海連動地震も視野に入れるなど、新たな視点からの対応を図るとともに、防災対策を再構築するため、本年十一月を目途に、東京都防災対応指針を策定してまいります。
 指針の策定に当たりましては、科学的な知見を有する専門家の助言も得て、帰宅困難者対策や施設の耐震化など、ソフト、ハード両面にわたる対策のレベルアップを図るとともに、都の対策にとどまらず、国、区市町村、事業者、都民などの取り組みも幅広く提言し、東京の防災力向上への道筋を早期に示してまいります。
 次に、発災時の情報通信についてでございます。
 今回の震災では、被災地において、電源の喪失が行政機関相互の情報連絡の途絶を招いたほか、都内においても、事業者の通信規制の実施に伴う携帯電話の不通などにより、家族との安否確認も困難な状況になりました。
 防災関係機関相互の通信の確保と都民が利用する情報通信基盤の強化は、発災時の迅速な応急復旧活動の実施と都民不安の抑制を図る上で不可欠でございます。
 こうした情報通信を取り巻く課題の解決に向け、通信事業者も含めた協議の場を早急に設置し、対策の検討に着手するとともに、今回の震災でとりわけ問題となった携帯電話事業者による安否確認手段の確保を含め、発災時の情報通信基盤の強化について国に強く働きかけてまいります。
 次に、震災時の帰宅困難者対策についてでございます。
 今回の震災におきまして、都は区市と連携して、帰宅困難者が一時的に待機する施設を開設いたしましたが、施設が不足する地域があったことや、帰宅困難者への情報提供や誘導が滞るなど、さまざまな課題が顕在化したところでございます。
 首都直下地震の発災により、交通機関や道路に被害が生じた場合、今回以上の混乱が起きると想定されます。このため、企業や学校などにおける施設内待機や鉄道事業者などの利用者保護など、安全な帰宅手段が確保されるまでの帰宅の抑制、行政と民間事業者の協力による一時待機施設の確保、家族との安否確認や、正確な情報提供に必要な情報通信基盤の確保など、対策を強化する必要がございます。
 あわせて、道路等の危険な状況がおさまってきた段階では、徒歩帰宅やバスなどの陸上輸送に加え、船舶による海上輸送も実施し、帰宅困難者が早期に帰宅できるよう取り組む必要もございます。
 こうしたことを踏まえ、都は、国、経済団体、鉄道事業者などと横断的な課題について検討する協議会を早期に設置し、行政や事業者の役割と責任を明確化するとともに、それぞれが連携して行う取り組みの具体化を図り、社会全体で取り組む総合的な帰宅困難者対策を策定してまいります。
 さらに、来年一月を目途に、協議会の検討を踏まえた帰宅困難者対策訓練を関係機関と連携して実施し、検証を行い、対策に生かしてまいります。
 次に、備蓄対策についてでございます。
 震災により生産拠点が打撃を受け、加えて広域物流網が遮断されたことに伴い、都内においても、食料や生活必需品、燃料など多くの物資が供給不足に陥りました。
 とりわけ燃料の確保につきましては、医療機関による救命救急、緊急通行車両による支援物資の搬入など、応急復旧活動を迅速かつ円滑に進める上で重要な課題でございます。
 今後、都は、燃料の確保を含め、震災時の物資の備蓄と調達のあり方について、国、自治体、事業者、都民の役割分担や首都圏の自治体における広域的な相互補完などの観点から広く検討を行い、対策の内容を本年十一月に策定する防災対応指針に盛り込んでまいります。
 最後に、震災対策における広域的な連携についてでございます。
 首都直下地震が発生した場合、都県域を超えて広範囲に被害が及ぶため、首都圏を構成する自治体同士が連携して対策を講じる必要がございます。このため、九都県市では、自治体間で物資の支援や職員の派遣等を行うことを目的とした相互応援協定を締結するなど、災害時の連携強化に努めてまいりました。
 今回の震災の教訓を踏まえ、今後は、都内区市町村の連携強化はもとより、首都圏内の広域応援として、緊急物資の受け入れに備えた拠点と輸送ルートの整備など、九都県市間のさらなる連携強化を図ってまいります。
 さらに、首都圏内では対応し切れない応急救護やライフラインの復旧支援などについて、首都圏を超えた自治体と連携していくなど、多様な連携に向けた検討を進めてまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 八点のご質問にお答えいたします。
 まず、都内旅館等での避難者の受け入れについてであります。
 都では、四月二十四日から、災害救助法に基づき、被災県からの要請のありました避難者を都内の旅館等へ受け入れております。この受け入れは、応急仮設住宅等により安定的な生活環境が確保できるまでの間、宿泊及び三食を無料で提供するものであります。六月二十一日現在、東京都ホテル旅館生活衛生同業組合の協力によりまして、延べ二百五十三人の避難者を受け入れております。
 また、これに必要な経費の負担につきましては、国の基準では一日当たり五千円が上限となっておりますが、都内の物価水準を踏まえるべきとのご要望をいただき、都は独自に一日当たり千円を加算することといたしております。
 避難が長期化している状況のもとで、避難者の方々に、生活環境の整った施設を利用していただくことが重要となっており、旧グランドプリンスホテル赤坂の閉鎖にも対応する必要があることから、引き続き旅館等での受け入れを行ってまいります。
 次に、被災地の企業に対する支援についてでありますが、ご指摘のとおり、被災地の企業が直面している状況を正確に把握し、的確な支援策を実施することが重要であります。そのため、都は、五月上旬に現地調査を行って、企業へのヒアリングなどを通じて課題やニーズを確認いたしました。
 調査の結果、被災地では営業所やオフィスの使用ができなくなった事例が多いことから、事業再開の場所として、都内のインキュベーション施設や、地方の会社が東京で営業の拠点を確保できるよう支援するブリッジヘッド事業の施設を、被災地の企業に無料で提供いたします。
 また、取引先の被災により受注が減少した企業が多い実態を踏まえ、被災地の会社が、都内の中小企業と取引を行うきっかけをつくるための現地商談会を、都の主催により、岩手、宮城、福島の各県で行うことといたしました。これらの取り組みを通じて被災地企業の状況に即した的確な支援を行ってまいります。
 次に、被災した現地工場の復興支援についてであります。
 被災地域は、国内外の製造業に幅広く部品を供給するなど、我が国のものづくり産業において重要な拠点となっております。都内の中小企業も、こうした被災地に工場を持っており、その再建がおくれることは、被災地の復興が滞るだけでなく、東京や我が国全体の産業の再生に支障が生じるものと考えます。
 このため、都は、被災地で生産を行う都内中小企業が、工場の建物や設備の復旧に取り組む場合に、必要な費用の一部を助成する制度を緊急的な措置として、今年度に限り実施することといたしました。
 具体的には、被災した企業に中小企業診断士等の経営の専門家を派遣し、操業再開のための計画づくりをアドバイスするとともに、計画に基づく仮設工場等の整備経費の半分を、八千万円を上限として助成する仕組みとしております。
 被災地では、現在、地元の自治体が復興に向けて最大限の努力を行っておりますが、こうした都の支援が加わることで、被災県の産業の復興と経済の回復が迅速に実現するものと考えております。
 次に、被災した産地の農産物等の販売についてであります。
 被災産地の農産物などの販売を通じ、震災や風評の被害を受けた地域を支援していくことは重要であります。こうした取り組みをさらに促進するためには、販売活動の企画や実施について高い能力を持つ中小企業やNPO法人に加え、小売店を数多く抱える商店街の活用を図ることが効果的であります。
 このため、都では、これらの農産物等の販売を効果的に行う意欲と力のある中小企業やNPO法人等の取り組みに要する経費の三分の二を対象に、今月十八件の助成を決定いたしました。また、空き店舗を活用して販売を行う商店街に対しまして、必要となる経費の三分の二を助成する新たな制度を立ち上げることを予定しております。
 今後とも、こうした取り組みを適切に実施し、農産物等の販売を一層促進するなどにより、被災地等の復興につなげてまいります。
 次に、中小企業の発電用設備の導入支援についてであります。
 今回の震災によりまして、電力の供給能力が落ち込み、中長期的な電力不足が懸念される中、都内中小企業の事業活動の継続に向けた都の支援が重要となっております。都内中小企業にとりまして、まず電力需要の抑制が必要でありますことから、都は会社の経営向上に資する節電セミナーや、専門家によるアドバイスを通じ、効果的な対応策の導入を支援することとしております。
 しかしながら、生産活動に特に多くの電力を必要とし、節電の努力に限界がある中小企業では、自家発電設備の整備が必要となります。こうした企業に対しましては、電力や経営に詳しい専門家を派遣し、発電設備に適用される法令やランニングコスト等を含め、個々の中小企業の実情に応じた具体的な計画づくりについて、きめ細かくサポートいたします。
 その上で、自家発電設備の導入には、企業に大きな資金負担が生じるため、都が経費の助成を行うことといたしました。
 具体的には、百億円の基金を設けまして、中小企業が発電設備の早期導入に向け、今年度中に申請を行う場合には、二千万円を上限に三分の二を助成いたします。また、中小企業がグループを組み共同で発電設備を導入する場合には、今年度中に申請のあった案件につきまして、五億六千万円を上限に四分の三を助成することといたしました。
 こうした取り組みを通じて、都内中小企業が生産活動等に必要な電源の早期確保を図り、安定した事業運営を進めることができる経営環境をつくり上げてまいります。
 次に、買い物弱者に対する商店街の役割についてであります。
 商店街は、地域の買い物客に日常生活で必要な商品などを提供する商業活動の拠点であるとともに、地域コミュニティの中心として、住民にとって日々の暮らしを安心して送るために役立つ情報やノウハウを持っております。
 一方、近年、買い物をする場合に、制約や支障を生ずる買い物弱者の問題が取り上げられております。ご指摘のように、昨年、経済産業省におきまして報告書がまとめられましたが、過疎地域などを含めた全国調査であるため、都内において、この内容がそのまま当てはまるか検討が必要であります。
 そこで、この問題につきましては、地域の実情に応じた区市町村の取り組みを基本としつつ、都としても買い物弱者の正確な実態の把握に向けて、必要な調査を実施したいと考えております。その上で商店街の活用方法について検討してまいりたいと考えております。
 次に、震災の被害を受けた都内中小企業の資金繰り支援についてであります。
 ご指摘のとおり、今回の震災による影響は、風評被害を含めて広範囲に及んでおります。このため、都は、間接被害を受け経営に支障を来している都内中小企業にも対応した制度融資として災害緊急を創設いたしました。
 この新たな融資メニューでは、国の保証制度への対応に加え、都独自の取り組みとして最優遇金利を適用するとともに、全事業者に対して保証料の二分の一を補助するなど、手厚い措置を講じております。さらに、既往債務の借りかえにも適切に対応してまいります。
 また、直接被害を受けた中小企業の事業再建を目的とする災害復旧資金融資につきましては、震災直後に速やかに取り扱いを開始しておりますが、さらに据置期間を延長するとともに、一年間の利子補給を行い、利用者の負担軽減を図ることといたしました。
 このような制度融資の拡充を図るため、補正予算において、融資目標額を過去最高レベルの二兆二千億円に引き上げるとともに、預託金や信用保証料補助等に要する経費三百九十一億円を計上しております。こうした取り組みにより、震災により直接、間接の被害を受けた都内中小企業の資金繰り支援に万全を期してまいります。
 最後に、訪日外国人旅行者の回復と観光産業の振興についてであります。
 東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故の影響によりまして、訪日外国人旅行者数は大幅に減少しました。いうまでもなく、観光は多くの産業に経済波及効果をもたらしており、旅行者数の減少が、東京はもとより、日本全体にとって大きなマイナスとなっております。この危機的状況からの回復に向け、都は、国、民間と連携し、訪日外国人旅行者の回復に強力に取り組んでいく必要があると認識しております。
 そこで都は、まずは正確な情報発信を、次いで世界各国の旅行事業者等に積極的に働きかける取り組みを行うことといたしました。
 具体的には、震災の直後から、東京の観光ウエブサイト等によりまして、放射線量や東京の日常の風景等の最新情報をわかりやすく発信しております。
 次いで、世界各国の旅行事業者等への働きかけとして、今般、知事から、四十の国と地域約五千名の海外の旅行事業者等に向けてレターを発出し、東京が既に日常を取り戻していること及び旅行者を歓迎する旨を直接訴えております。
 今後さらに、八月から秋にかけまして、国や民間事業者と連携して、アジア及び欧米のメディア、それから旅行事業者を東京に招き、実際の東京を体験してもらい、正確な記事の掲載及び旅行商品の販売を促進してまいります。あわせて、東京で開催が予定されております国際会議の機会をとらえまして、東京の安全性や魅力をPRしてまいります。
 今後とも、訪日外国人旅行者の誘致に全力を挙げて取り組むなど、旅行者の回復に向けまして、都内の観光産業の振興を図ってまいります。
   〔生活文化局長並木一夫君登壇〕

〇生活文化局長(並木一夫君) 四点のご質問にお答えいたします。
 初めに、東日本大震災により経済的困難に陥った生徒の授業料等を減免した専門学校等に対する支援についてでございます。
 文部科学省が五月初旬に実施いたしました調査によれば、東日本大震災によって生徒の家計が急変し、経済的支援が必要と見込まれる専門学校等の生徒数は、全国で約千九百人で、そのうち東京都内には六百人以上の生徒がいると推定されております。都内の専門学校等においては、こうした生徒が経済的理由により学業を断念することがないよう、独自に授業料等の減免を行っているところもございます。
 都は今後、国の動向を踏まえ、これらの専門学校等への支援について、適切に対応してまいります。
 次に、私立学校の耐震化に対する支援についてでございます。
 東京の私立学校は、東京の公教育において非常に大きな役割を担っており、児童生徒等の安全を確保するため、その校舎等の耐震化を促進することは、ご指摘のとおり極めて重要でございます。
 都はこれまでも、耐震化工事への補助を行うなど、積極的な支援を行ってきたところでございますが、東京都内の私立学校における耐震化率は、平成二十二年四月一日現在で約七三%となっており、今回の大震災を教訓に耐震化のさらなる促進が図れるよう、これまでにも増して各学校に耐震化を強く働きかけていく必要がございます。
 このため、今回の緊急対策におきまして、耐震診断や耐震化工事の補助学校数を大幅に拡大することとし、また、新たに建築士を学校現場に派遣し、各学校の実情に応じた耐震化の方法等をアドバイスすることなどにより、私立学校における耐震化計画の策定と実施を支援することといたしました。これらにより、私立学校に通う児童生徒等の安全を確保してまいります。
 次に、私立学校における災害発生時の対応力強化に向けた支援についてでございます。
 今回の大震災では、地震による建物の倒壊や火災よりも、津波により多数の犠牲者が出たことや、都内においても長時間にわたり交通機関がストップし、児童生徒や保護者が帰宅困難となるなど、これまで想定されていなかった課題が明らかになりました。
 都は今回の緊急対策におきまして、こうした課題を収集、調査分析し、効果的な対応策をリスト化し各学校に示すことにより、災害時の対応マニュアルの見直しを支援してまいります。
 同時に、単年度事業でございました緊急地震速報の整備に対する補助を今年度も実施することとし、また新たに被災時の帰宅困難時のための備蓄物資購入等への補助を行うことといたしました。これらにより、私立学校における災害時の対応力強化を促進してまいります。
 最後に、町会、自治会活動の活性化と地域における防災への取り組み支援についてでございます。
 東日本大震災においては、隣近所がお互いに声をかけ合うことにより高齢者を避難させることができた事例や、支援の手が届くまでの間、協力し合いながら、避難生活を支え合った事例などが伝えられており、地域コミュニティを育てていくことの重要性が改めて明らかになりました。
 都はこれまでも、地域の結びつきを強化するために、地域の底力再生事業助成により、町会、自治会の自主的な活動を支援してまいりました。今回、多くの都民が地域のきずなの大切さを再認識したこの時期を逃すことなく、地域の活性化の効果を上げた助成事例をわかりやすく紹介するなどにより、さらなる制度の普及に努めてまいります。
 あわせて、各町会、各自治会が防災事業について積極的に事業助成を活用できるよう、現行制度の運用についても改善を図ってまいります。
   〔中央卸売市場長岡田至君登壇〕

〇中央卸売市場長(岡田至君) 被災産地に対する中央卸売市場による復興支援のあり方についてのご質問にお答えいたします。
 今回被災した地域は、我が国有数の農水産物の産地であり、また、都におきましても、青果物の入荷量が四割以上を占めるなど、安定的な食料供給を維持する上で欠かせない産地であることから、都が復興を支援することは、都民にとって極めて重要であります。
 また同時に、被災産地への支援は、東京の市場が首都圏など広域的な食料供給を担うことから、東京のためだけでなく、まさに首都圏全体の安定的な食料供給に寄与するものでもあります。
 こうしたことから、中央卸売市場は、全庁的な連携のもと、都民の安全・安心の確保とともに、被災産地の支援に取り組んでまいりました。
 具体的には、まず、放射性物質が暫定規制値を超えた農産物等につきまして、国に先駆けて市町村単位という必要最小限度での出荷自粛を求めるなど、被災産地からの入荷物の安全性を確保する体制を整えました。
 その後、国は県単位という大まかな出荷規制を実施いたしましたが、風評被害を助長するおそれがあったため、都は、被災地や首都圏の知事とともに、規制の改善を国に働きかけ、市町村単位とするきめ細かい規制に改めることができました。
 さらに、市場に入荷しても風評被害で返品が生じたため、代金回収が滞り、その結果、産地への支払いが困難となる市場の決済機関に対して緊急融資を行い、被災した産地への支払いを確保いたしました。
 この間、被災産地の出荷を妨げる風評被害の解消を目指しまして、入荷物の安全・安心を都民に積極的にPRする産地支援イベントを、業界の協力のもと各市場で十回開催し、売上金など一千万円を超える義援金を被災地へ寄附いたしました。
 今後は、被災産地の生産活動を長期的に支えるため、生産者への出荷奨励金に都の補助金を上乗せするほか、絶えず変化する被災地側の情報を的確にとらえ、被災産地が必要とする支援を引き続き実施してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点の質問にお答えいたします。
 まず、省エネ節電と経済活性化の両立に向けた取り組みについてでございますが、都では、今般の電力危機を単に克服すべき困難な課題としてのみとらえるのではなく、省エネルギー投資とエネルギーをつくり出す創エネルギー投資を加速し、東京における新たな環境ビジネスを活性化する好機ともとらえ、都内企業の取り組みを支援していく考えでございます。
 既に店舗の照明をすべてLEDに切りかえるといった省エネ投資や、工場に自家用ガスタービン発電機を設置するなどの創エネ投資が活発になってきております。また、家庭用の太陽エネルギー機器やコージェネレーション機器の普及の動きも加速してきております。
 今回のプログラムには、こうした取り組みが円滑に進むよう、関係局とも連携して、設備の導入経費を助成する制度の創設や、創エネ機器導入への支援を盛り込んでおります。
 今後とも、民間事業者との共同によりまして、東京における低炭素型都市の実現と経済の活性化を両立する施策を強力に推進してまいります。
 次に、エネルギーの利用と供給のあり方の検討についてでございますが、都はこれまで、世界で最も省エネルギー型の都市の実現を目指しまして、キャップ・アンド・トレード施策や、中小規模事業所を対象とする地球温暖化対策報告書制度などの、独自の先駆的な施策を展開してまいりました。
 しかしながら、東日本大震災に伴う発電所の被災により、電力供給力の不足を補うための緊急避難的な措置といたしまして、石炭や石油を燃料といたします老朽化した火力発電所の再稼働が進められたために、CO2排出量の増加が懸念される状況となっております。加えて、遠隔地に依存した首都圏におけるエネルギー供給体制の脆弱性が明らかになってきております。
 こうした状況を受けまして、これまでの施策の成果を最大限に生かしつつ、災害時のリスクにも強く、同時にCO2排出量が少ないエネルギーの利用と供給を進める施策のあり方について、直ちに検討を進めることが必要と認識しており、そのための体制の強化を図っていく考えでございます。
 加えて、電力需給対策推進本部を通じて全庁横断的に電力不足問題に対応するとともに、環境審議会における専門家の議論を来月いたしまして、低炭素・高度防災都市の実現に向け、エネルギー供給の確保と低炭素化を両立する新たな環境エネルギー政策の構築に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 七点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、病院の電力確保に係る支援についてでございますが、都は、大規模災害発生時に重症患者の受け入れ拠点となります災害拠点病院に対しまして、非常時の電力確保等を義務づけ、自家発電設備の整備について支援を行ってまいりました。
 一方、今回の計画停電では、多くの病院で十分な電力確保が困難となり、救急患者の受け入れを制限するなど、医療提供体制に大きな影響が生じております。
 このため、新たに創設する支援制度では、電力不足の長期化や大規模災害の発生も視野に入れ、緊急対策として、自家発電装置の新規整備や増設に取り組むすべての病院に補助を行うことといたしております。
 今後、病院の電力確保対策を促進するため、本制度の活用を積極的に働きかけてまいります。
 次に、人工呼吸器を使用している在宅療養患者への電力不足に備えた支援についてでございます。
 都はこれまで、保健所等を通じまして、在宅療養患者に対しまして、災害時の備えのポイントを記載した手引を配布するほか、停電時に東京電力から電話連絡を行う仕組みにあらかじめ登録するよう働きかけてまいりました。
 また、今回の計画停電実施時には、保健所から在宅療養患者に対しまして、個別に電源確保の状況を確認し、必要な情報提供を行っております。
 さらに、この夏には突発的な停電も懸念されていることから、電源確保に万全を期すために、患者の実情に応じた支援をより一層強化いたします。
 現在、在宅療養患者の使用機器の種類やバッテリーの保有状況等の実態を詳細に把握する調査を行っておりまして、その結果も踏まえ、今後、医療機関を通じた非常用バッテリー等の無償貸与を新たに実施し、停電時においても、安全・安心な在宅療養生活の確保を図ってまいります。
 次に、高齢者の熱中症対策についてでございますが、高齢者の熱中症を予防するためには、特にひとり暮らしなど孤立しがちな方に対して、熱中症から身を守るための正しい情報を届け、適切な対応がとれるよう、地域で見守り支えることが重要でございます。
 都はこれまでも、民生委員や自治会、町会などによる高齢者の見守りを行う区市町村に対しまして、包括補助を通じて支援いたしているほか、昨年度からは、シルバー交番設置事業により、地域における支援拠点の充実を図っております。
 これらに加えまして、ことしの夏は、さまざまな地域の担い手による高齢者家庭への個別訪問や商店街の空き店舗などを活用した、涼をとれる交流スペースの設置などに対する補助制度を新たに設けまして、熱中症対策に取り組む区市町村を支援してまいります。
 また、重症化した場合のセーフティーネットといたしまして、都立病院及び公社病院において、緊急病床を確保いたします。
 次に、病院の耐震化についてでありますが、都は、大規模災害時においても継続的に医療を提供できますよう、災害拠点病院や救急医療機関を対象として、国制度に加え、都独自の支援策を実施しており、これまでに約八割の施設で耐震化の取り組みが進んでまいりました。
 こうした取り組みを一層促進するため、これまで補助要件としておりました新築建てかえ時の病床削減義務を撤廃するなど、より利用しやすい制度を創設することとしました。
 また、今回の大震災を踏まえまして、災害時にも地域の病院が個々の医療機能をできる限り確保できるよう、補助対象をすべての病院に拡大いたします。これらの取り組みによりまして、病院の耐震化を促進し、災害時の医療提供体制の強化を図ってまいります。
 次に、都内被災世帯への支援策についてでありますが、今回の東日本大震災におきます都内の住宅被害の状況は、六月十三日現在、全壊十一棟、半壊百二十八棟となっておりますが、お話のように、被災者生活再建支援法の支給要件を満たしておりません。
 東日本大震災は、広域にわたり甚大な被害を及ぼしており、都道府県や区市町村ごとに対応するのではなく、国が統一的な対応を行うべきであります。
 そのため、都としては、同一の災害で被災したすべての地域が支援の対象となるよう、法の見直しを国に提案要求してまいります。見直しが行われるまでの間の被災世帯への支援につきましては、地元自治体の意向も踏まえ、連携しながら、今後具体的に検討してまいります。
 次に、災害時における障害者への支援についてでございますが、都はこれまで、要援護者の情報の把握、地域住民による支援体制づくりなどの手法を示した指針を策定し、区市町村における避難支援プランの策定や、要援護者名簿の整備を支援するなど、障害者の安全対策に取り組んでまいりました。
 お話のように、災害時において個々の障害者の状況を的確に把握し、よりきめ細かな支援を行うためには、こうした取り組みに加えまして、都や区市町村がピアカウンセリングなど独自の支援ノウハウや障害者同士のネットワークを持つ団体等の協力を得ることが有効であります。
 今後、障害者団体等が参加する会議体などを活用しながら、災害時の障害者支援について意見交換を行い、協力体制のあり方など、連携の方策について積極的に検討してまいります。
 最後に、都立府中療育センターの改築についてでございますが、今般策定をした基本計画では、入所施設として質の高い療育を提供するとともに、在宅療育の拠点として、地域で暮らす重症心身障害児者への支援をより一層充実することとしております。
 具体的には、従来の床面積の一・五倍を確保いたしまして、入所者の生活の質の向上を図りますほか、ニーズの高い短期入所や通所事業の受け入れ体制を拡充いたします。
 加えて、多摩メディカルキャンパス内にある病院施設と連携をいたしまして、入所者の重度化に適切に対応いたしますとともに、都立多摩療育園と機能を一体化し、一般外来を実施いたします。
 また、現在の五階建ての建物を低層化し、非常口を多方面に設けますとともに、自家発電設備や備蓄スペースを拡充するなど、災害時における重症心身障害児者の療育拠点としての機能を一層強化してまいります。
   〔水道局長尾崎勝君登壇〕

〇水道局長(尾崎勝君) 東日本大震災を踏まえた水道施設の整備のあり方についてでございますが、水道局ではこれまで、平常時はもとより、震災時等においても可能な限り安定給水を確保するため、八ッ場ダム等の水源確保を初め、送配水管ネットワークの構築や施設の耐震化などの取り組みを進めてまいりました。
 しかし、今回の震災では、ご指摘のように、震源から遠く離れた東京の水道においても、放射性物質による水道水への影響や計画停電による断水、濁水の発生など、過去に経験したことのない二次的災害により大きな被害を受けました。
 そのため、今後の水道施設の整備に当たりましては、これまでの経験や想定では考慮し得なかった新たな安全度を加味した水源確保や施設整備の考え方の創出が必要であると考えております。
 こうしたことから、現在検討を進めている、水道施設の再構築を考える会におきましては、渇水や気候変動等のリスクに、大規模な自然災害や長期的、複合的な災害といった今回の震災の教訓を踏まえた新たなリスクを加え、議論を幅広く展開しております。
 水道局では、この考える会の提言を受け、首都東京にふさわしい水道施設の再構築に向けた基本構想を平成二十三年度内に策定し、将来にわたり都民の安全・安心を守るべく、より安全度の高い水道システムの構築に向けて邁進してまいります。
   〔交通局長金子正一郎君登壇〕

〇交通局長(金子正一郎君) 都営地下鉄に関する三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、直下型地震への対策についてですが、交通局では、平成七年一月に発生した阪神・淡路大震災を受けて、施設の総点検を実施し、同規模の直下型地震にも耐えられるよう、国の基準に基づき、高架部及び橋梁の橋脚やホームの中柱の補強、橋げたの落下防止装置の設置など、耐震補強工事をこれまでに完了しております。
 今回の地震では、こうした取り組みもあって、都営地下鉄の構築物には被害が発生しなかったため、速やかに運行を再開することができました。
 しかしながら、仙台市営地下鉄の高架部などで被害が発生したことから、都営地下鉄においても、独自に、高架部などの施設の耐震性を改めて検証した上で、安全性をより高めるための耐震対策を実施してまいります。
 次に、地震が発生した際の乗客の安全確保と運行再開についてですが、大規模な地震が発生した場合には、緊急地震速報等を受け、一たん列車を停止させ、安全を確認した上で、次の駅まで徐行運転し、乗客を駅構内の安全な場所へ避難誘導します。
 次いで、被害状況を把握し、運行再開に向けた準備を進めることになりますが、都心部を走る都営地下鉄は、特に早期の運行再開が期待されていることから、地震計を地下鉄線内十六カ所に設置し、エリアごとの震度を詳細に把握することで、必要な点検を短時間で効率的に実施できる体制を整えております。
 なお、今回、運行再開に当たりましては、混乱を避けるため、鉄道各社と再開時刻を調整するとともに、警察の協力のもと、駅構内の乗客の安全確保に努めました。
 最後に、今回の経験を踏まえた帰宅困難者対策についてですが、地震発生当日は、運行再開の前から都営地下鉄の各駅に帰宅困難者が集中したため、一部の駅では構内が多くの人であふれ、かなりの混乱が生じました。
 この経験から、交通機関の運行状況や駅周辺の一時待機施設などに関する情報を迅速、的確に提供し、適切な行動をとっていただけるようにすることが課題と考えております。
 今後、こうした点を踏まえ、各駅の改札口に設置してあります列車運行情報表示装置等を更新し、各地の被害状況や交通機関の運行状況を初め、災害に関する情報を今まで以上に幅広く提供するなど、帰宅困難者への適切な情報提供の手法を検討してまいります。
 また、帰宅困難者対策は、社会全体で取り組む必要があることから、区市町村や関係機関とも連携し、帰宅困難者の安全を確保できるよう、鉄道事業者としての役割を適切に果たしてまいります。
   〔建設局長村尾公一君登壇〕

〇建設局長(村尾公一君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、水害対策のハード面の取り組みについてでございますが、都はこれまで、沿岸部や東部低地帯において、スーパー堤防の整備や水門、排水機場の耐震補強を行うなど、耐震性の向上や高潮に対する安全性を高めてまいりました。
 このような中で、国内観測史上最大のマグニチュード九・〇の大地震が発生したことを踏まえ、関係局で連携して緊急に取り組むべき対策について検討を開始いたしました。
 具体的には、今回発生した津波の調査や分析などを行うとともに、地震に対しては、防潮堤や水門、ポンプ所などのインフラ点検を行い、被害を受けやすいと考えられる箇所を洗い出してまいります。
 さらに、施設の耐震性や耐水性の向上策について、学識経験者を含む技術検証委員会から年内に提言を受ける予定でございます。
 今後は、この提言に基づき、関係各局が連携して必要な施策を速やかに実施してまいります。
 次に、中小河川における新たな整備のあり方の検討についてでございますが、首都東京を水害に強い都市とするためには、中小河川の整備を効果的、効率的に進め、早期に安全性を向上させていくことが重要でございます。
 このため、都は、今月初めに専門家による検討委員会を設置し、近年の一時間に一〇〇ミリを超える局地的かつ短時間の集中豪雨も視野に入れ、中小河川における今後の整備のあり方について検討を開始いたしました。
 この検討会では、区部と多摩の地域特性などの違いを分析し、中小河川における新たな整備水準を議論するとともに、昨年の緊急豪雨対策において有効性を確認した、流域を超えて相互に活用できる地下調節池をさらに広域的に配置することや、地下調節池と下水道管の接続など下水道施設と連動した効果的な水害対策について、平成二十四年夏までに報告書として取りまとめます。
 今後とも、安全で安心なまち東京の実現を目指し、中小河川の整備に全力で取り組んでまいります。
 最後に、外環整備に対する今後の都の取り組みについてでございますが、我が国の国際競争力を高め、経済を再び成長軌道に戻すためには、交通物流ネットワークのかなめとなる外環の早期完成が必要不可欠であります。
 東日本大震災では、発災後二十時間で東北道が復旧されるとともに、被災が軽微であった首都圏の高速道路を利用して、西日本からの緊急物資や救援隊が被災地に向けて迅速に移送されました。改めて、高速道路の重要性が明確になりました。
 一方、首都圏が直接被災した場合には、三環状道路を初めとする首都圏の高速道路ネットワークが相互補完的にターミナル機能を維持して、日本の交通物流の東西分断を避けなければなりません。
 このため、国全体の危機管理上からも、三環状道路で最も整備がおくれている外環事業を加速し、首都圏の高速道路ネットワークを一刻も早く完成する必要があります。
 本年四月に、外環は本線工事のための準備工事費が予算計上され、新しい局面を迎えております。地元では、早期整備に対する期待が一層高まっており、当初予算百二十五億円では、これらに十分こたえることはできません。
 都は、国の補正予算及び来年度の概算要求において、必要な事業費の確保がなされるよう国に強く求め、外環の早期完成を全力で目指してまいります。
   〔港湾局長中井敬三君登壇〕

〇港湾局長(中井敬三君) 東京港の防災に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京港の防災機能の点検、見直しについてでありますが、都はこれまでも、国内最大級の伊勢湾台風や想定の津波高が最も大きい関東地震を対象として、高潮や地震、津波に対する水害対策を実施してまいりました。
 今回の震災後、直ちに局内に地震・津波対策会議を設置し、防潮堤、水門及び排水機場などの海岸保全施設の総点検を開始したところであり、この中で、災害時における通信手段の強化や水門等の電気、機械設備の機能確保など、早急に取り組むべき課題を明らかにするとともに、技術検証委員会において専門家の意見も聞きながら、具体的対策を進めてまいります。
 また、東京港で発生した津波について詳細な分析を行うとともに、国の中央防災会議での検討結果なども踏まえ、必要な見直しを行い、東京港の防災機能の一層の強化に取り組んでまいります。
 次に、震災時における物流機能の確保についてでありますが、首都圏が被災した場合には、緊急物資の迅速な輸送を確保するとともに、大都市としての経済活動を停止させないことが不可欠であります。
 そのため、耐震強化岸壁や、ふ頭と背後地とを結ぶ緊急輸送道路の整備を着実に進めることが極めて重要であります。
 現在、耐震強化岸壁については、品川ふ頭など六バースを整備中であり、また、緊急輸送道路については、橋梁の耐震補強を進めるとともに、今年度の完成を目指し、臨海道路Ⅱ期事業の整備を進めております。
 今後、中央防波堤外側地区の新たな国際コンテナふ頭や臨港道路南北線などの早期事業化を図り、震災時においても十分な物流機能を発揮できるよう、全力を挙げて取り組んでまいります。
   〔下水道局長松田二郎君登壇〕

〇下水道局長(松田二郎君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 地震、津波などに対する下水道施設の機能確保の取り組みについてでございますが、今回の大震災で東北地方沿岸部の下水処理場が機能停止したことなどを踏まえ、東京湾岸部に立地しております水再生センターが地震、津波などで被災した場合においても必要な水処理が行えるよう、構造物の補強や地盤改良などにより、水処理の主要施設であります沈殿池や処理をした水を河川に放流する放流渠、下水道施設周辺の護岸などの耐震化を進めてまいります。
 これらの対策を進めるに当たりましては、計画の前倒しを図りますとともに、下水道施設の再構築に合わせて効率的に実施をしてまいります。
 さらに、緊急時における水再生センター間の相互のバックアップ機能を確保する観点から、ネットワーク化についても検討してまいります。
 また、ポンプ所については、ポンプ運転による排水機能が維持できるように、豪雨時にも電気設備が浸水しないための対策を行ってまいりましたが、今後は、さらに大規模な地震、津波、高潮への対策を検討してまいります。
 これらの取り組みによりまして、下水道の基幹的施設であります水再生センターやポンプ所の安全性や機能をより一層高めてまいります。
 次に、下水道施設の液状化対策についてでございます。
 これまで、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震などの教訓を踏まえまして、水再生センターやポンプ所、下水道管などの耐震化に取り組んでまいりました。
 今回の震災では、液状化などにより水再生センターや下水道管の一部で被害が見られたものの、下水道サービスの提供に支障はございませんでした。
 今後は、関東地方の広い範囲で発生した液状化被害を踏まえまして、下水道管とマンホールの接続部の耐震化のスピードアップと、マンホールの浮上抑制対策の実施地区の拡大を図ってまいります。
 具体的には、マンホールとの接続部の耐震化は、避難所や災害拠点病院などに指定をされております約二千五百カ所を対象に進めておりますが、計画を二年前倒しをして、平成二十五年度の完成を目指してまいります。
 また、マンホールの浮上抑制対策は、緊急輸送道路など約五百キロメートルを完了しておりまして、引き続き今年度から避難所などへのアクセス道路に対象を拡大し、実施をしてまいります。
 さらに、これらの取り組みにつきましては、発災時に多くの帰宅困難者が滞留するターミナル駅周辺などの下水道機能を確保する観点から、対策エリアの拡大に向けた検討に着手をいたします。
 このほか、下水道管内に土砂が流入することを防止する耐震化技術の開発とその実用化を早急に進めるなど、下水道施設の液状化対策を視野に入れた、より一層の耐震化に鋭意取り組んでまいります。
   〔消防総監新井雄治君登壇〕

〇消防総監(新井雄治君) 東日本大震災を踏まえた消防力と地域防災力の充実強化についてでありますが、このたびの震災を教訓として、今後東京に起こり得る事態を考慮した対策を考えていくことが重要であると認識をしております。
 東日本大震災においては、津波被害により建物などに取り残された住民の救出救護や、地元消防本部、消防団と連携した大規模火災の消火、放射線により活動時間や手段が制約された核燃料プールへの放水など、かつてない消防活動を実施展開いたしました。
 こうした中、浸水地域からのヘリコプターによる救助活動や災害事象に応じたハイパーレスキュー隊の活動、さらには、地域に根差した即応性の高い消防団の活動は極めて有効であったことから、これらの活動をさらに強化するための装備資器材について早期に整備するよう、東京緊急対策二〇一一に反映させました。
 今後は、現地調査結果から得られる教訓を踏まえ、ハイパーレスキュー隊など消防部隊や消防団活動の強化、必要な装備資器材の整備などについて幅広く検討し、引き続きその充実に努めてまいります。
 また、都内で発生した帰宅困難者の滞留や建物被害等の実態を踏まえた事業所に対する指導を強化するとともに、都民に対しては、自助、共助の理念に基づき、災害の実態に応じた避難のあり方や災害時要援護者への対応、長周期地震動への備えなどにつきまして、防災指導及び訓練をより一層充実させ、地域防災力の向上を図ってまいります。
   〔病院経営本部長川澄俊文君登壇〕

〇病院経営本部長(川澄俊文君) 都立病院、公社病院の災害時における診療機能の確保についてでございます。
 東日本大震災で被災した病院の状況から、診療機能を継続するためには電力の確保は極めて重要であるとの認識に立ち、緊急対策として、耐震性が高い中圧ガスを燃料とした自家発電システムを導入強化することで、電力供給の多様化、分散化を図ってまいります。
 このことにより、災害時や停電など不測の事態には、非常用発電機と併用することで、非常時の備えをより一層強固なものとしてまいります。
 また、災害時の通信手段としては、これまでの防災行政無線に加え、災害時でも信頼性の高い衛星通信端末を導入して、インターネット機能を備えるなど、通信機能の多重化を図り、災害時の初動態勢の確保や各関係機関との情報連絡体制を強化してまいります。
 さらに、災害時の即応態勢を強化するため、今回の震災で起こったさまざまな事象を参考に、必要人員、薬品、診療材料の状況を総点検し、災害時においても継続的な医療を提供する都立病院災害時事業継続計画、BCPを検討し、病院ごとの診療特性に合わせた計画を策定いたします。
 今後とも、災害時の病院機能をさらに強固なものとして、都民の生命を守るため全力で取り組んでまいります。

〇副議長(鈴木貫太郎君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩をいたします。
   午後五時四十分休憩

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