平成二十三年東京都議会会議録第四号

〇副議長(鈴木貫太郎君) 七十七番野上ゆきえさん。
   〔七十七番野上ゆきえ君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇七十七番(野上ゆきえ君) 近代国家の土台となった「学事奨励に関する被仰出書」から成る我が国の教育制度は、「邑に不学の戸なく、家に不学の人なからしめん事を期す」にあらわされているように、国民皆学の理念を掲げています。学ぶ場としての学校の必要性が認識され、階級社会において大部分を占めていた資本を持たない下層出身者でも、学校というルートを通じて、上昇的な社会移動を遂げられるシステムが整備されるとともに、人が皆、夢を抱くことを許され、個人の志の実現が国家の繁栄につながると考えられたのが我が国の教育の原点です。
 我が国は、教育を国づくりの礎として、国家の地位向上を達成し、ここ首都東京は、集積した人的資源を効率的に吸収し、経済的成功をおさめ、世界を代表する都市に発展してまいりました。
 今、教育には、未来を担う子どもたち一人一人の個性や能力を伸ばし、生涯にわたってたくましく生きていく基盤を身につけさせることとともに、国際都市東京に住む一市民として、また国家、社会の形成者として必要な資質、能力を育成することが求められています。
 子どもたちは、より幸福な社会生活、職業生活を送っていくことができるための学力を身につけ、現状の世代のニーズを担う世代継承のみならず、次世代の未来を切り開く力を育成することが学校、そして教育の役割であると私は考えます。
 しかしながら、現状はどうでしょうか。十五歳から三十四歳までの若年人口のうち、就業も家事も通学もしていない、いわゆる若年無業者が平成二十一年において約六十三万人存在している状況や、新規学卒者が三年以内に離職する割合が平成十九年において、高等学校卒業者で約四〇%、大学卒業者で約三一%といった状況があり、学校から社会や職業生活に出ていくプロセスにおいて、どこかに課題があるといわざるを得ません。
 また、経済格差が学校教育に持ち込まれることがあるとしたら、それこそゆゆしき問題です。
 今、改めて学校教育の使命とは何かという原点に立ち返り、子どもたちが生涯にわたってたくましく生きていく基盤となる資質、能力をはぐくむ教育を行っていくことが求められていると考えますが、見解を伺います。
 教育は人なりといわれているように、教育の直接の担い手である教員の指導力がその成否を決めるといっても過言ではありません。専門性を持った質の高い教員による質の高い教育によって、子どもたちの能力が開花していくものと考えます。
 教員は、採用されるとすぐに教壇に立ち、いわば一国一城のあるじとして、児童生徒を前に授業を行います。教室の中では大人は教員だけであり、普通の職業と比べると、上司や先輩から指導を受けたり、顧客からの苦情や評判を受けとめたりしながら、みずからを高める機会が少ないものと考えられます。だからこそ、教員がみずから教育内容、教育方法、教育成果を自己検証できる能力や仕組みが必要であると考えます。
 教員個人の自己研さんだけに頼っていては、資質、能力の向上を図ることは到底難しく、組織的、計画的な育成を図るべきと考えます。都教育委員会の見解を伺います。
 さらに、教員の資質、能力の向上が学校教育の質の向上に資することはもちろんではありますが、教育に対する高い期待とさまざまなニーズが存在する現在においては、教員だけですべてを担おうとせず、専門性を持った外部からの人材も含めて、分野ごとにベストな人材を活用する視点も重要であると考えます。
 その一つが学校経営の分野です。校長には、教育に関する理解や見識を有し、地域や学校の状況を踏まえつつ、今、本当に何が求められているのかという観点から、歴史や時代を見据えて課題を的確に把握し、関係機関との連絡、折衝を適切に行い、学校を運営することができるすぐれた資質を備えた人材を確保する必要があります。
 教育界の内外から経営手腕を持った熱意あふれる人材が登用され、従来にない手法で学校全体を活性化していけば、他の校長も大いに刺激になり、教員や生徒、地域社会等にもよい影響を与え、大きな相乗効果をもたらすことができると考えます。
 都立高校においては、既に八人の民間人校長を登用してきましたが、これまでの実績を踏まえ、今後どのような考え方で民間人校長を登用していくのか、都教育委員会の見解を伺います。
 また、外部からの人材の確保が期待されるもう一つの分野は、専門的な教科指導の充実が求められる分野であります。
 学校経営を担う人材だけではなく、各分野でベストな教育を行える多様な人材が必要です。例えば、理数教育や科学技術の分野では、大学教授や企業、研究機関の第一線で活躍している研究者から直接授業を受ける機会を得ることで、子どもたちの学習意欲は大いに喚起され、学問へのあこがれや夢、さらには将来への展望を持つきっかけになると考えます。また、教員にとっての刺激にもなり、研究活動や自己啓発に一層精進していくことが見込まれます。
 そこで、都立高校において、専門的指導の充実が求められる分野ごとにベストな人材が教壇に立てるよう、より積極的に外部人材を活用していくべきと考えますが、都教育委員会の見解を伺います。
 次に、都の施策を担う職員の人材育成について伺います。
 世界のグローバル化は進み、国際社会におけるアジア地域の重要性が高まっています。アジア地域では経済成長を背景に、域内の対応すべき課題も政治的、経済的なものから、技術的、文化的なものまで多様化しております。刻々と変化する状況の中で、将来のよりよい地域の発展を見据え、都においては、環境や産業など各分野で、アジア地域を視野に入れた政策立案が求められています。このために今必要なのは、現地にネットワークを持ってリアルな情報をつかみ、みずから状況を的確に判断していく体制の充実です。
 都は、これまでアジア大都市ネットワークにおいて、各都市と連携した共同事業により、課題解決の取り組みを行ってきました。この協力関係をさらに強め、事業展開に活用していける生きたネットワークとするためには、より具体的に各事業の内容に踏み込んだ職員の交流が重要だと考えます。
 今後は、アジア地域の各都市への職員派遣や研修などを一層促進し、人材の育成を図るべきと考えますが、見解を伺います。
 国際人材の育成として、自国の歴史や文化を深く理解し、その上で、経済、社会、文化など、背景が異なる相手方と対等に協議、交渉し合意を得るという世界に通用する説得力を身につけることもまた重要と考えます。今年度の初め石原知事は、知事と同じく言葉を職業とする猪瀬副知事をリーダーとし、局を横断した言葉の力再生プロジェクトを発足させました。
 昨年十一月に公表されたプロジェクトの報告書によると、世界標準の技術である言語力を身につけることで、国際社会の中で、日本人の視点から世界に貢献していくことができるとされており、都職員を対象に、言語力の向上を目的とした研修を実施したとなっております。プロジェクトのリーダーである猪瀬副知事が、これまで、世界に通用する都職員を育成するために、言葉の力再生プロジェクトとしてどのような取り組みを行ってきたのか、また今後の取り組みについて伺います。
 さて、猪瀬副知事がリーダーを務める水ビジネスのみならず、清潔で機能的な都市東京を維持している廃棄物処理技術についても、成長著しいアジア諸国から大変注目されているところです。アジア新興国では、経済成長や人口増加により廃棄物発生量が急増し、廃棄物の適正処理が追いつかず、環境汚染が深刻化しています。
 環境省の試算では、アジア都市でのごみ処理市場は二〇二〇年で約六百億ドルにも上るとされ、既に限界が来ているといわれている国内市場とは異なり、アジアには巨大な廃棄物処理、リサイクルの潜在的市場が大きく広がっています。深刻な公害問題とその克服を経験した東京都こそ、世界に誇る技術や連携システムをもって、静脈産業を国際貢献ビジネスとして展開できると考えます。
 今後、さらなるこの分野での国際展開、事業、人材交流についても期待したいところです。
 次に、リサイクルに関し、環境面での定量的評価について伺います。
 これからのリサイクルに当たっては、単に最終処分量を減らすだけではなく、気候変動対策に資する方法を選択していくことが不可欠です。そのためには、リサイクルによるCO2削減効果を定量的に評価し、比較することが重要となります。リサイクルにより天然資源採取に伴う多量のCO2を削減することができ、またサーマルリサイクルでは、発電や熱供給によりCO2を削減することができます。
 しかしながら、リサイクルに取り組む企業がばらばらな方法でCO2削減効果を算出したのでは、どれがすぐれているのか、一般の排出者にはわからなくなってしまいます。大消費地である東京においてこそ、地球温暖化対策と資源循環を統合的に進めるため、リサイクルによるCO2削減効果の見える化に先導的に取り組むべきだと考えますが、見解を伺います。
 また、リサイクルを進める上での環境面の評価としてもう一点は、天然資源消費量の抑制についてです。
 私たちが自然界から天然資源を取り出す際には、大きな環境負荷が生じており、リサイクルによってこれを削減することが可能になります。例えば鉄鉱石を採掘する際には、多量の土砂等を掘り出す必要があり、そこから鉄を製錬するためには、大量の石炭を投入する必要があります。
 建築物等の新築、解体が多い東京では、鉄、アルミ、セメントなど大量の建設廃棄物が発生しており、これらのリサイクルを促進することは、天然資源の消費を抑制していくことにつながります。
 このような天然資源採取に伴う環境負荷について、定量的な情報を広く提供し、企業や都民の行動を促していくべきだと考えますが、見解を伺います。
 さて、一昨日の我が会派の代表質問で、都が進めている世界初の都市型キャップ・アンド・トレード制度が順調にスタートしていることがわかりました。過日、私が参加した日韓排出量取引セミナーでは、韓国では既に地球温暖化対策基本法が成立し、国レベルで排出量取引の具体化に向け、活発な議論が行われていることが紹介されていました。
 都の制度は、世界的に先駆的な制度であり、その経験やノウハウは、CO2削減に取り組む海外の都市や地方政府にとって貴重な情報に違いありません。
 今、急速な経済成長と都市化が進行しているアジア諸都市では、都市のエネルギー消費とCO2排出をいかに抑制するかが課題となっています。昨年十二月に世界銀行が発表した報告書でも、二〇五〇年に世界人口の七〇%は都市に集中すると予測しており、それゆえ、国の枠組みのみならず、都市が気候変動対策において中心的な役割を果たすと報告をしております。
 都は、そうした海外諸都市に都の経験やノウハウを活用してもらうために、海外へ向けてキャップ・アンド・トレード等に関する情報を積極的に発信していくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、海外販路開拓支援について伺います。
 国際的にも注目を集め、成長著しいアジア市場を目の前に、果敢に挑戦したいと考える都内中小企業の声を多く耳にします。
 しかし、すぐれた技術や製品を持ち、国内における販売実績がありながらも、言葉の問題や貿易実務がないこと、現地の商習慣、市場動向、さらには規制、規格などに関する情報が入手できないことなどから、そうした中小企業が海外との取引に簡単には踏み出せないのが実情です。
 さらに、海外の取引先候補との正式な契約締結に至るまでには、正確かつ迅速なコミュニケーションや粘り強い交渉を重ねる必要があることなどからも、現地の実情や貿易実務、各種手続などに精通した専門家のアドバイスが欠かせません。
 こうしたことからも、行政として、企業の海外販路開拓をきめ細やかに支援していくことは重要です。都として一層の支援を進めるべきと考えますが、都の見解を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔副知事猪瀬直樹君登壇〕

〇副知事(猪瀬直樹君) 野上ゆきえ議員の一般質問にお答えします。
 言葉の力再生プロジェクトにおける職員の育成についてでありますが、日本を牽引する首都公務員たる東京都職員にとって、グローバル時代に不可欠な論理的思考力や、他者と十二分に意思を交わし、豊かな人間関係を築くための技術である言葉の力を向上させることが重要であります。
 そこで、言語学や心理学、脳科学などの各分野の専門家を招き、言語力について最新の知見を得るために、職員向けの有識者勉強会を開催しました。また、新規採用職員や教職員、若者の就業支援者といった、特に言語力の向上が求められる職員を対象に、新たな言語力、言語技術研修を実施しました。さらに、自身の言語力を把握する機会として、職員の自己啓発セミナーに言語力検定を取り入れるなど、さまざまな職層の職員に対して言語力の向上を図っております。
 この四月には、すべての新規採用職員を対象とした言語力研修を実施するなど、今後も東京から始めた言葉の力の再生に向けた取り組みを拡充し、国際化、情報化が進む現代社会を生き抜くために、必要な技術と感性、そして情熱を身につけることができるよう、必要な施策を講じていく考えであります。
 なお、東京から言葉の力を再生するというこの報告書は、皆様にお配りしてあります。また、都庁のホームページでも公開しております。ぜひお目通しいただけるようよろしくお願いいたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 四点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、子どもたちが生涯にわたってたくましく生きていく資質、能力をはぐくむ教育についてでございます。
 次代を担う子どもたちが将来への夢や目標を持ち、主体的に未来を切り開いていけるよう、学校教育においては、児童生徒の発達段階に応じた体系的、組織的な教育を行うことにより、知、徳、体をバランスよくはぐくむとともに、社会的、職業的自立に向けた基盤となる能力や態度を身につけさせる必要がございます。
 一方、子どもたちの現状を見ると、大学等への進学に対する十分な心構えができていないことから、進路意識や目的意識が希薄なまま、とりあえず進学する者が増加していることが指摘されております。
 また、ご指摘のように、学校から社会や職業生活に出ていくプロセスにおいて課題を抱えているほか、社会の一員となることへの自覚や責任感の希薄さ、みずから考え行動する自主性や、勤労観、職業観の未熟さ、社会的、職業的生活を営む上での基本的能力の不足等が指摘される状況にございます。
 子どもたちを自立した人間へと育成していくためには、学校教育の充実に加え、学校と家庭、地域、企業等が連携し、社会人、職業人としての経験が豊富な人材の学校教育への参画を得ていく必要があります。家庭や地域の教育力の低下が叫ばれている今だからこそ、その調整者となる学校の役割は非常に重要でございます。
 このような考えのもと、都教育委員会は、今後とも、学校現場と一体となって、子どもたちの自立に向けた取り組みのさらなる充実に努めてまいります。
 次に、教員の組織的、計画的な育成についてでございます。
 教員は、教室において、上司や先輩から日々直接指導を受けることは難しく、また、さまざまな生活指導上の課題を一人で抱え込みがちな環境にございます。教員を孤立させず、教員の資質、能力を向上させるためには、職場研修と通所研修を体系的に実施していく必要がございます。
 このため、現在、職場においては、校長を責任者と位置づけ、職場研修の計画を作成し、管理職や主幹教諭などによる日常的な指導を通じて、教員の育成に組織的、計画的に取り組んでおります。
 また、東京都教職員研修センターにおける通所研修では、教員の経験や職層に応じた研修を実施し、組織の一員として求められる力を育成するとともに、教科や教育課題への対応など、教員としての専門性を高める研修を実施しております。
 例えば、初任者を対象とした研修では、民間企業の講師を活用して、社会人としての接遇に関する研修などを実施しております。また、専門性を高める研修では、平成二十二年度に実施した百三十一講座中九十の講座で、大学教授等の外部人材を活用し、教員の実践的指導力の向上を図っております。
 今後とも、職場研修を推進するとともに、効果的な通所研修を実施し、教員の人材育成を組織的、計画的に推進して、教員の資質、能力の向上を図ってまいります。
 次に、都立高校における民間人校長の登用についてでございます。
 これまでに採用した校長は、企業経験を生かしたキャリア教育を展開し、生徒の進路選択の拡大を図ったり、学校経営に民間の経営手法を取り入れて、教員の意識改革を促したりするなど、顕著な実績を上げております。
 教員とは異なる経験を持つ民間企業の管理職経験者などを校長として任用し、新しい視点から教育改革に取り組むことは、都立高校全体の活性化に寄与するものと考えておりまして、平成二十三年度にも新たに一名を任用する予定でございます。
 今後とも、実社会と連携した活動や、学校の特色に応じた教育を展開するために、学校外からも適切な人材を登用してまいります。
 次に、都立高校における外部人材の活用についてでございます。
 これまで都教育委員会では、キャリア教育や部活動など専門的指導が求められる分野において、すぐれた外部人材を積極的に都立高校に招聘し、その道の専門家ならではの質の高い教育を推進してまいりました。
 例えば都立高校では、キャリア教育の一環として、ノーベル賞受賞者や大学教授、企業経営者など、それぞれの分野の第一人者から、真理を探求する姿勢や、世界を舞台に経営を展開していくやりがいや誇り、責任などについて語っていただき、生徒に心躍る感動と生きる希望や目標を与える取り組みを行っております。
 また、部活動においても、オリンピック選手から直接指導をしていただき、日本代表として競技に臨む誇りとプレッシャーに打ちかつ強靱な精神力について語っていただくなどして、生徒に、より高い目標に挑戦しようとする意欲を喚起する取り組みを行っております。
 今後とも、各都立高校が、関係機関との連携や人材バンクモデル事業の活用などにより、専門的指導が求められる分野の卓越した外部人材を活用し、質の高い教育を一層推進するよう指導してまいります。
   〔総務局長比留間英人君登壇〕

〇総務局長(比留間英人君) アジアを重視した職員の人材育成についてでございます。
 これまで都は、環境対策や産業振興など、さまざまな分野で国際的な事業展開を担う人材を育成するため、米国大学院への派遣研修や、政策課題の調査研究を行う海外研修のほか、外務省など各機関を通じた海外への職員派遣に取り組んでまいりました。
 近年、アジア大都市ネットワーク21の共同事業を初めとして、都政のさまざまな分野において、アジア地域における関係がより一層緊密になっております。
 今後、アジアに関する政策課題をテーマとした海外研修や、アジア各都市への職員派遣の拡大についても検討するなど、アジア地域の重要性を踏まえた国際ネットワークづくりの観点から、職員のグローバルな人材育成を進めてまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 三点のご質問でございます。
 まず、廃棄物のリサイクルによる温室効果ガス削減効果の明確化についてでございますが、今後の廃棄物、リサイクル対策の実施に当たりましては、最終処分量の削減に取り組むとともに、地球温暖化防止にも積極的に寄与していくことが必要となっております。
 そのため、まずリサイクルの品目や方法ごとに、どれだけの量の温室効果ガスが削減されるかを定量的に示し、比較可能にすることが必要でございます。
 こうした削減効果の定量化に当たりましては、計算方法や基準の統一を図る必要があるため、都は現在、ルールの確立に向けた技術的な検討を進めております。
 次に、天然資源の採取に関する情報の提供についてございますが、資源循環型社会の構築のためには、工業製品の生産に必要な天然資源の採取などが地球に与える影響の大きさについて、広く認識を共有していくことが重要でございます。
 例えば、鉄などの金属素材を生産する際には、原料となる鉱石だけでなく、製錬に要する石炭などのエネルギー資源も地中から採取され、またこれに伴い、多量の土砂も採掘することとなります。これらの合計量を示すものとして、関与物質総量という指標が開発されてきておりまして、例えば鉄一トンの関与物質総量は八トン、アルミの場合は四十八トンとされております。
 このような情報を広く都民、事業者に提供しまして、製品の生産、さらには消費が自然界に与える影響の全体像を正しく認識してもらい、リサイクルの取り組みを推進してまいります。
 最後に、東京の気候変動対策の海外発信についてでございますが、気候変動対策に関する国際合意は、昨年のCOP16でも先送りとなりまして、国家レベルの対応がおくれる中、都市や地方政府の役割の重要性に対する認識が高まっております。
 中でも、都市レベルで唯一キャップ・アンド・トレード制度を実施している東京の取り組みに高い注目が集まっておりまして、これまでも世界大都市気候先導グループ等で紹介をしてまいりました。特に最近では、韓国、台湾、中国、シンガポールなど、アジア各国から東京のキャップ・アンド・トレード制度の紹介の依頼が増加をしてきております。
 今後とも、さまざまな機会に、アジア諸都市を初め世界の都市や地方政府に、都のノウハウと経験を発信してまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 海外販路開拓支援についてのご質問にお答えいたします。
 今後も大きな成長が見込まれるアジア市場での販路開拓の支援に向けまして、都は、機械、金属等の分野ごとに海外販路ナビゲーターを配置いたしまして、現地のビジネスデスクからの現地情報を活用し、中小企業の相談に応じているところであります。
 来年度につきましては、精密機械等の分野でも商取引のニーズが高いことから、ナビゲーターの数を倍増するとともに、販路開拓の効果の高い海外展示会への出展機会の拡充も図ることといたしました。
 また、アジア大都市ネットワーク21と連携し、引き続き産業交流展において、都内中小企業が海外企業と交流する場を設けまして、販路開拓につなげてまいります。

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