平成二十三年東京都議会会議録第四号

〇副議長(鈴木貫太郎君) 二十三番田中たけし君。
   〔二十三番田中たけし君登壇〕

〇二十三番(田中たけし君) まず初めに、水道事業についてお伺いいたします。
 阪神大震災から十六年目を迎えた本年一月十七日の朝刊に、水道管の耐震化が一七%しか進んでおらず、東京においても、管路の耐震化率は二六%にとどまっていると報じられました。東京での大規模地震の切迫性が指摘される中、震災時の給水確保のための取り組みは急務であります。
 水道局では、管路の取りかえ計画を大幅に前倒しし、耐震化を推進する水道管路の耐震継ぎ手化緊急十カ年事業を今年度より実施しております。事業二年目となる平成二十三年度は、現場での工事が本格化し、これまで以上に断水や交通規制など日常生活への影響が大きく、都民の理解を得ることが不可欠であります。また、事業を円滑に実施するには、請負業者を確保することも重要であります。
 そこで、工事の本格実施に向けた水道局の取り組みについてお伺いをいたします。
 震災時に都民に確実に水を届けるためには、水道本管だけではなく、給水管の耐震化が重要であります。私は平成二十一年の本会議で、私道に多くの給水管が埋設されておりますが、漏水などの問題が生じていることから、私道内給水管の整備も必要であると指摘いたしました。これを受け、私道内の給水管を整理統合し、配水管を布設する私道内給水管整備事業の対象範囲を拡大するとの答弁をいただきましたが、この事業は、漏水防止だけではなく、震災時の給水確保の観点からも非常に効果が高い事業であります。
 そこで、本事業に対する取り組みの決意をお伺いをいたします。
 次に、交通施策について伺います。
 本年八月一日、都営交通創業百周年を迎えますが、これまでの高度経済成長や首都東京の発展に鉄道網の整備が大きく貢献してまいりました。そして、成熟した首都東京のさらなる発展には、東京圏の鉄道ネットワークをさらに充実させることが重要と考えます。
 現在の東京圏の鉄道整備は、旧運輸省の平成十二年に出された運輸政策審議会答申第十八号を基本に路線の整備が進められてきております。一方、答申に位置づけられていながら、未着手となっている路線も多く残っております。中でも、練馬区では大江戸線の延伸を、江東区や墨田区などでは有楽町線、半蔵門線の延伸を地元区と住民が一体となって求めております。また、私の地元品川区内では、東海道貨物線の旅客化にも大きな期待が集まっております。鉄道整備は、鉄道事業者が主体となり実施することが基本でありますが、都としても、その実現に向け積極的に取り組むべきと考えます。
 また、リニア中央新幹線が二〇二七年、名古屋へ、二〇四五年、大阪への開業が予定されており、都内にはその始発駅が設置されます。こうしたことも踏まえ、新たな時代の鉄道ネットワークを考えていくことが必要となります。
 このような中、運輸政策審議会答申第十八号に位置づけられた未整備路線に対し、今後の都の取り組みについてお伺いいたします。
 新幹線は、日本の高度経済成長の象徴であり、大きな役割を果たしてきましたが、特に東京─新大阪間はダイヤ過密状態であり、さらなる増便が不可能な状況にあります。一方、リニア中央新幹線は、東京─大阪間を最速で六十七分で結ばれ、今後の日本の発展に大きく寄与する新しい国土軸となり、その早期開通が望まれます。
 そこで、リニア中央新幹線の整備効果について、都の考えをお伺いをいたします。
 都内には、リニア中央新幹線の始発駅が設置されますが、始発駅周辺のまちづくりに大きな影響を与えるものと考えております。JR東海は品川駅を始発駅にしたい旨、都に申し入れを行ったと聞いておりますが、品川駅であれば、拡張された羽田空港へのアクセスも容易であり、航空路線との連携が可能となるなど、品川駅始発には、首都東京のさらなる発展に大きく貢献するものと期待できます。
 そこで、リニア中央新幹線の始発駅はどのような観点から決められるべきと考えているか、都の見解をお伺いをいたします。
 次に、都営地下鉄の安全対策について伺います。
 交通局は、我が党の要望にこたえ、平成二十五年度の全面稼働に向けて、都営地下鉄の総合指令の整備に取り組んでいます。これは、運行管理を行う三つの運輸指令所と電気の供給を一括して管理する電力指令所を統合するもので、事故発生時の応援や信号など重要施設の監視機能を充実させ、トラブル発生時には、利用者へ迅速かつ的確な情報提供を行い、早期の運転再開につなげていくものであり、安全性とサービスの向上に寄与するものであります。
 一方で、統合することにはリスクも伴い、先般、新幹線の運転を集中制御するシステムがダウンし、JR東日本の五つの新幹線がストップしてしまいましたが、統合システムには、一つのトラブルが全線に影響する可能性があり、また、災害や不審者の侵入などにも十分備えが必要であります。
 そこで、総合指令の整備に当たり、危機管理の観点から、リスク対策をどのように講じていくのか、所見をお伺いいたします。
 次に、行財政運営について伺います。
 これまで石原知事は、東京から日本を変える公約のもと、ディーゼル車両規制、大規模事業者へのCO2排出削減の義務化や排出権取引制度の導入、複式簿記・発生主義会計を取り入れた公会計制度の導入などを行い、また、待機児童の解消に向けた認証保育所の創設や羽田空港の再拡張、横田空域の一部返還など、本来、国が行うべき事業にも取り組み、まさに東京から日本を変え、多くの成果を上げてまいりました。
 一方、今日の国政では、首都圏住民の生命、財産を守る八ッ場ダム建設を凍結し、都心部の交通渋滞の解消のために必要な外かく環状道路の建設の凍結、また、災害発生時の避難場所としても活用する小中学校の校舎の耐震化も立ちおくれ、子ども手当の財源や私立幼稚園就園奨励費負担を自治体に押しつけるなど、都民福祉の低下につながる政策ばかりであり、今こそ、さらに東京から日本を変える必要があると強く感じております。
 また、特に行財政改革への取り組みにおいて、国と都では大きな違いがあり、対照的であります。国では、事業仕分けが導入され、大きな反響を呼びましたが、現実は、仕分けにより三兆円の財源を捻出するとしながら、初年度は埋蔵金を入れても二兆円と目標に及ばず、今回の予算編成での歳出削減額では、たったの三千億円であります。結局は成果のない、話題性だけのパフォーマンスでしかなかったと思います。
 象徴的な事例がジョブカードであります。民主党政権が目玉政策として位置づけ、拡充を閣議決定した施策が、何と仕分けの結果、廃止と判定されてしまいました。ところが、その後、政府はこの結論をひっくり返し、結局存続されることになりました。何のために仕分けを行ったのか、民主党自身が事業仕分けの限界を世にさらけ出した事例ではないかと思っております。
 事業仕分けでは、役人の説明を遮り、結論を一方的に押しつけるシーンも見られ、短時間で結論を出すなど一面的な議論に終始し、物事の本質を踏まえた是非の判断やあるべき姿の提示はほとんどないといわざるを得ません。どこまで責任ある議論がなされているのか甚だ疑問であり、事業仕分けの課題と限界は、その仕組みや手法そのものにあるのではないかと考えております。
 一方、都においては、五年目となる事業評価は着実な成果を上げております。財政再建団体に転落する寸前に就任された石原知事は、徹底した内部努力で財政再建を達成し、そこでの取り組みを事業評価という制度に発展させました。都が行っている事業評価の大きな特徴は、廃止、削減という財源捻出のためだけになされるものではなく、評価の結果、充実拡大される事業も多くあるということであります。
 私は、この事業評価は、既に財政再建をなし遂げたという経験に裏打ちされた成熟した財政運営の手法であり、このような着実な取り組みにより、一兆円もの減収にも耐え得る健全な都財政をつくり上げ、石原知事の先駆的な施策を支えてきていると高く評価しております。これらの成果は、都知事就任以来の、東京から日本を変える、知事の強い責任感と使命感によるものであると考えております。
 そこで、これまで着実な成果を上げてきた事業評価を導入したことに対する知事の思いをお伺いいたします。
 今日の国難の時期だからこそ、これまで力強くリーダーシップを発揮し、東京から日本を変えてきた石原知事へのさらなる期待が高まってきていると確信をしております。今後の都政を託すに足る人材が見当たらない今日、石原知事の地元でもありました品川区民の方々から、ぜひとも石原知事に引き続き都知事として東京から日本を変えてほしいという声を多く伺っております。多くの都民が待ち望む石原知事の一刻も早い決意表明を期待をいたしまして、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 田中たけし議員の一般質問にお答えいたします。
 事業評価の取り組みについてでありますが、国では事業仕分けが声高に叫ばれておりますけれども、そもそも、その国の会計制度の欠陥から、見直しの重要なツールである財務諸表が存在しないわけで、それゆえにも結果は最初から知れたものだと思います。
 都は、国よりはるかに先んじて、都議会の協力のもと、身を削るような努力をしながら歳出を切り詰めるとともに、歳入の確保にも努め、瀕死の状態にあった都財政を今日まで立て直してきました。
 都の事業評価は、こうした財政再建の成果の上に立って、施策の検証機能を強化し、効率性や実効性を高める制度としてつくり上げたものであります。この間も非常に厳しい外部監査を導入するとともに、新しい公会計制度の活用と相まって、事業評価の充実を図り、これを、自己改革を当然に進める仕組みとして都庁組織に組み込んできました。
 今回の予算においても、厳しい財政環境のもとにあっても、財政の健全性を堅持しつつ、都政の課題に積極果敢に取り組むことができたのは、まさにこうした取り組みを着実に重ねてきた成果にほかならないと思います。この先も都税の大きな伸びを期待できない状況でありますが、事業の徹底した検証を不断に続け、現場に根差した発想力と行動力を最大限発揮しながら、東京から日本の活路を切り開いていきたいものだと思います。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁します。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

〇東京都技監(河島均君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、未整備の鉄道路線に対する取り組みについてでございます。
 都市の機能や利便性を高めていく上で、鉄道ネットワークの充実を図ることは重要でございます。このため、都は、国や鉄道事業者等と連携し、運輸政策審議会答申第十八号に位置づけられた路線の実現に向け、取り組んでおります。
 この答申の中で、平成二十七年までに開業することが適当とされた都内の十六路線につきましては、既にすべて開業または事業中となっております。
 一方、平成二十七年までに整備着手することが適当とされた路線につきましては、事業主体や採算性などの課題があり、現時点では未着手となっております。
 都としては、将来の輸送需要の動向などを見据えながら、これらの未着手路線の整備につきまして、国や関係自治体と鉄道事業者とともに検討してまいります。
 次に、リニア中央新幹線の整備効果についてでございますが、リニア中央新幹線は、お話のとおり、東京─大阪間を最速で六十七分で結ぶことが予定されており、三大都市圏の交流、連携の一層の緊密化により、経済活動が活性化され、我が国の国際競争力の強化に大きく寄与すると考えられます。
 また、東京─大阪間の航空需要がリニア中央新幹線に転換することにより、羽田空港の国内線の発着枠に余裕が出るものと見込まれますが、これを活用して国際線枠を拡大すれば、羽田の国際空港としての機能を一層強化することができます。
 さらに、東海地震などの災害が発生した場合にも、東海道新幹線のバイパスとして三大都市圏を結ぶ大動脈を途切らせることなく、我が国の経済活動の停滞を防ぐことができます。
 こうしたことから、都としては、リニア中央新幹線は早期整備を図るべきであり、その際、大阪までの早期開業が必要であるとの意見を国に申し入れているところでございます。
 最後に、リニア中央新幹線の都内の始発駅の選定についてでございますが、今お答えを申し上げましたとおり、リニア中央新幹線は、三大都市圏の交流を一層緊密化し、我が国の経済を活性化させるなどの多大な整備効果があることから、始発駅は国内外の多くの利用者にとって便利であること、駅及び周辺における効果的な都市開発が実現できること、建設工事を進める際に、特に支障がないことといった観点から選定されるべきと考えております。
 昨年七月、建設、営業主体となることを予定しているJR東海は、始発駅を品川に整備したい旨を都に申し入れております。現在、都は、これらの観点から始発駅の位置についてJR東海から資料の提供などを受け、鋭意検証を進めているところでございまして、その結果を踏まえ、都としての考え方を明らかにしてまいりたいと考えております。
   〔水道局長尾崎勝君登壇〕

〇水道局長(尾崎勝君) 二点のご質問にお答えします。
 まず、水道管路の耐震継ぎ手化緊急十カ年事業における、工事の本格実施に向けた取り組みについてでございますが、工事量が大幅に増加することから、断水や交通規制によるお客様への影響や請負業者の確保などを、これまで以上に考慮することが必要であります。
 このため、断水時間を大幅に短縮できる仮配管方式を積極的に推進するとともに、事業の内容や意義、重要性を示したリーフレットやホームページを活用して、工事に対する理解を深めてまいります。
 また、請負業者に対しては、事業の目的や規模を周知し、体制づくりを促すとともに、計画的な工事発注を推進して、安定的な受注機会を提供してまいります。
 これらの取り組みにより、水道管路の耐震化を着実に推進し、震災にも強い高水準な水道を構築してまいります。
 次に、私道内給水管整備事業に対する取り組みについてでございますが、この事業は、ご指摘のとおり、漏水防止、出水不良の解消だけでなく、耐震性向上の観点からも効果が高いものであり、当局の重要な施策として位置づけております。また、事業の対象範囲を拡大したことにより、区部では、今年度の施工延長が、平成二十年度と比較して約一五%増加する見込みであります。
 今後も、事業を円滑に進めるため、耐震性の向上など、事業効果を具体的に記載したリーフレットなどを用いて、私道の地権者や近隣住民の皆様へわかりやすく説明し、一層の理解を求めてまいります。
 さらに、区役所の私道助成工事などとあわせて実施することや、工事発注の平準化を図るなどの工夫を行い、私道内給水管整備事業を積極的に推進してまいります。
   〔交通局長金子正一郎君登壇〕

〇交通局長(金子正一郎君) 都営地下鉄の総合指令のリスク対策についてお答えをいたします。
 現在、地下鉄の安全で安定的な運行を確保していくために、平成二十四年度の運用開始、二十五年度の全面稼働を目指して、総合的、効率的に運行管理業務を行う総合指令の構築を進めております。構築に当たりましては、システム及び施設の両面でさまざまなリスクを想定した対策を講ずることとしております。
 具体的には、主要なシステムであります列車運行制御装置を四つの路線ごとに独立させ、一つの路線に障害が発生しても、他の路線に影響が及ばない設計にしております。この列車運行制御装置を初めとした電力管理、通信設備などの重要なシステムは、回線や電源を二重化することにより、リスク対応を図ってまいります。
 また、施設面では、総合指令の庁舎は、大規模な地震を想定した免震構造を採用するとともに、平成十二年に発生した東海豪雨並みの集中豪雨にも耐えられる設計にしております。
 さらに、不審者の侵入にも備え、高度なセキュリティーシステムにより入退室管理を行うこととしており、今後とも、ご指摘の総合指令のリスク対策には万全を期し、着実に整備を進めてまいります。

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