平成二十三年東京都議会会議録第四号

〇議長(和田宗春君) 二十四番鈴木隆道君。
   〔二十四番鈴木隆道君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇二十四番(鈴木隆道君) まず初めに、都市外交についてお伺いをいたします。
 二十一世紀は都市の時代といわれて久しくなりますが、その本当の意味が果たして理解をされているのでありましょうか。
 今、日本は閉塞感に包まれ、真に親しい国と呼べる国が見当たりません。また、資源を持たない日本の命綱は、海外の国々との交流、協力、そして貢献への道であるはずです。今、その命綱とも思われる関係や、特に信頼関係が損なわれているといっても過言ではありません。
 このような我が国の状況にもかかわらず、東京は世界の各都市から尊敬を集めています。世界の国々、とりわけ台湾、ベトナム、インド、モンゴル等々、日本に非常に好意を持っており、日本を範として世界経済成長の道を歩んでおります。彼らは現在でも日本から、とりわけ東京から学ぶために、東京との交流をより一層促進したいと望んでいるのが現実であります。
 国交がない台湾とも、経済、文化、スポーツなど、さまざまな分野で都市間の交流を行うことができます。たとえ国家間の交流が停滞していても、都市外交を推進することにより、企業が持つすぐれた技術や製品を活用することが相手方の都市の発展につながり、ひいては東京の産業の発展にもつながるといったウイン・ウインの関係を構築する、まさに都市と都市との草の根の交流こそが最も重要な役割を果たすことができるのであります。
 本来、国の役割であった外交を都市も担う、真の都市の時代が到来してきたといっても過言ではありません。
 この都市の時代におけるアジア地域との交流の重要性にいち早く着目し、アジアの諸都市との都市外交を推進してきたのが石原知事であります。知事は、各国の大都市とアジア大都市ネットワークを立ち上げて共同で課題に取り組み、アジアの発展に大きく貢献をしてまいりました。また、知事の強力なリーダーシップによって実現した羽田空港の国際化により、東京とアジアの結びつきはより一層強固になりました。
 昨年十月に、私は都議会の同志二十三名とともに、羽田発の一番機で羽田から出発し台北を訪問いたしました。恐らく参加した全員がこのことを強く実感したものと思います。
 我が国が国際的に孤立することも懸念される今、知事の強力なリーダーシップと全庁を挙げての取り組みによって、都市外交を通じた国同士の真に親しい関係を構築し、アジアの時代をつくり上げていくことが、今、求められています。
 そこで、アジア大都市ネットワークの将来展望を見据えて、このネットワークをさらに深化させていくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 また、石原知事は、平成十七年九月にオリンピック招致に名乗りを上げられました。それ以来、知事は、北京オリンピック、ベルリン世界陸上選手権などの主要な国際スポーツイベントに参加をし、招致活動を行いました。二〇一六年の開催都市を決定するコペンハーゲンでのIOC総会においては、私も現地に赴きましたが、知事みずからが先頭に立ってプレゼンテーションを行い、東京の魅力や世界への貢献をアピールされました。非常に残念ながらオリンピック招致の実現には至りませんでしたが、東京の存在感を十分に世界に示したことは紛れのない事実であります。まさにこれは石原知事の都市外交の実績といえるものであります。
 都市の時代において都市外交を積極的に推進し、アジアはもとより、広く国際社会にアピールをして、東京の存在感をさらに高めていくことが、我が国を覆う閉塞感を打ち破る起爆剤になるものと思います。
 また、今後は、水道、下水道、さらにはごみの問題といったような分野で、東京が持つ高い技術力が広く世界に必要とされています。こうした分野での国際貢献は、今後、東京がオリンピックに再度名乗りを上げる場合にも、大いに力になるものと私は信じるところであります。
 これからは、アジアに限らず、世界の大都市との草の根の都市外交を積極的に行っていくべきと考えますが、東京には既に、世界の主要大都市との友好関係を結んできた姉妹友好都市があります。世界の大都市との連携を目指し、まずその手始めとして、姉妹友好都市との連携をより一層強固にしてその活用を図るべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、首都大学東京について伺います。
 首都大学東京は、全く新しい大学をつくるという石原知事の強力なリーダーシップのもと、都民にその存在意義を明確にできる大学として設立をされました。その結果、都や区市町村との連携も進み、社会への貢献という面で成果を出していることは、私も大変評価をしているところでもあります。
 しかし、首都東京をうたう大学として設立された以上、今のこの時代において、首都東京の大学だからこそ果たすべき使命があるのではないでしょうか。その一つは、さきに私が申し上げたことに関連する都市の深化のあり方について具体的に展望を示すことであり、もう一つは、明確な世界観を持って海外で活躍できる人材を輩出することだと思います。
 特に首都大学東京には、世界じゅうに人材を送り出し、世界の至るところに必ずOBがいるというような大学を目指してもらいたいものであります。昨年、ノーベル化学賞を受賞した根岸英一氏は、内向き志向が指摘される日本人に対して、若者よ海外に出よ、日本を外側から見る経験は何にも増して重要だと述べています。
 ところが、大学三年生から始まる今の就職活動は、学業をおろそかにさせるばかりでなく、海外への留学をちゅうちょさせ、若者から見識を広げる貴重な機会を奪っております。これでは、みずからの将来をじっくりと考え、海外に目を向けることなどできるはずもありません。
 経済界においても、日本商工会議所の岡村正会頭が、先般、大学生の採用時期について、四年生の夏休み以降に選考活動に入るのが正常な姿だと述べ、現状よりも採用活動をおくらせるべきとの見解を示されました。大学側もこれに対応して、大学の四年間、じっくりと学生を育てるべきだと考えます。とりわけ、首都大学東京はいち早くこれに対応し、今までにない斬新な取り組みをすべきと考えます。
 首都大学東京は、世界に羽ばたく人材の育成に腰を据えて取り組むとともに、キャンパスには常に海外からの求人情報があふれ、学生は海外企業への就職を当然のように選択できるような、そんな環境づくりに私は早急に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、高校生の海外派遣について伺います。
 海外に留学する学生の中には、中学、高校時代に海外に行った経験を持つ方が多いと聞いています。そこで、私は、若者の内向き志向を打破するためには、まずは高校生のうちに海外を体験させることが有効だと考えます。十日間程度であっても、みずみずしい感性を持った高校生の時期、異文化に接し、さまざまな物の見方、考え方に触れて、訪問した国の人たちと言葉の壁を乗り越えて直接交流することは、その後の彼らの生き方に大きな影響を与えていくと確信しています。
 私の母校の小石川高校を母体校としてできた小石川中等教育学校では、二年次に英語だけを使う環境で国内語学研修を行い、三年次にはオーストラリアで現地校の授業参加等を初めとした海外語学研修を行い、五年次には課題学習を取り入れた海外修学旅行を行っています。
 昨年、この学校の生徒が、高校生国際物理学論文コンテストにおいて、ノーベル物理学賞への第一歩というすばらしい賞を獲得いたしました。生徒が世界を舞台にして果敢にチャレンジした結果が、世界で五名だけが受賞したこの賞の獲得につながったのだと思います。このことは、海外での活動を積極的に取り入れたこの学校の教育活動の大きな成果の一つであると確信をしています。
 このように、無限の可能性を持つ高校生の時期に海外を体験したり、自国を離れ志を持って日本で学んでいる海外からの留学生と直接交流したりすることが、高校生に夢と希望を持たせ、内向き志向を打破することにつながると考えます。
 私は、都内の高校生全員に、在学中に一度は海外を体験させてもよいのではないか。あえていえば、チャーター便を使って世界じゅうに子どもたちを送ってしまう、このような壮大な事業ぐらいを考える。本来、これは国がやるべきことだと思いますが、首都東京が国や他の都市の先陣を切って積極的に取り組んでいってもよいと思います。
 そこで、高校生の海外派遣を通して国際交流を積極的に行うべきと考えますが、都教育委員会の見解を伺います。
 次に、特発性正常圧水頭症について伺います。
 特発性正常圧水頭症という病気をご存じでしょうか。これは認知症の一種でありますが、物忘れに加え、歩行障害、尿失禁の症状が出る病気であります。この病気の治療に熱心に取り組み、都内の多くの医師とも治療のネットワークを既に構築をし、テレビ等、NHK等でも紹介されておりますが、東京共済病院院長の桑名医師から話を聞き、私は本当にびっくりしました。そして、国が本来の役割を果たさず、この病気に真剣に取り組まない現下の状況を見て、都がしっかりやっていくべきと考え、この質問をすることにいたしました。
 本人やご家族が認知症と診断されても、この病気であれば、簡単な検査と一時間程度の手術で劇的に症状が改善します。しかも、東北大学の調査によれば、高齢者の約一%が罹患し、認知症高齢者の何と十人に一人はこの病気の可能性があるとの調査結果も出ています。アルツハイマー病やパーキンソン病と診断されている患者の中にも、特発性正常圧水頭症の方がいるそうです。桑名医師の経験では、ある優秀な税理士さんがパーキンソン病と診断され、治療薬を処方されましたが、薬を飲んでも一向によくならない。しかし、桑名医師のもとで検査をし、この病気であることがわかり、手術で症状が改善し、数カ月後には一日一万歩も歩けるような状況に戻ったとのことであります。
 桑名医師のもとに、特発性正常圧水頭症かもしれないと思った患者さんが、全国から多数やってきます。手術して尿失禁がなくなるとおむつが要らなくなって、病院に寄附をするという家族も多いそうであります。
 また、何度でも転倒する人には、この病気の可能性が高いそうであります。転倒による骨折で要介護状態や寝たきりになる高齢者がたくさんいます。桑名医師の推計によりますと、都内には約二万八千人の特発性正常圧水頭症の可能性のある方々がおり、適切な手術を行うことにより、五年間で三百億円以上の介護費用が削減できるとの話でありました。この病気の存在を知っていれば、歩行障害や尿失禁、物忘れなどがあった場合、この病気を疑い、専門医療機関で正しい検査を受け、正しい治療を受けることができます。
 特発性正常圧水頭症について、医師や介護スタッフなどの専門職も含めたさまざまな普及啓発を行い、専門医療機関への早期受診につなげていくべきと考えますが、都としてどのように取り組むのかを伺って、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 鈴木隆道議員の一般質問にお答えいたします。
 アジア大都市ネットワーク21についてでありますが、昨今の我が国を見ますと、真に友好国といえる国があるだろうかという感じがいたします。ただ仲よくしましょうといって儀礼的に交流しても、あるいは経済力に任せた援助をしても、これは真の友人、真のパートナーは得られないと思います。共存共栄を目指して、具体の課題に連携して取り組み、目に見える成果を協力の中で上げてこそ、双方の間に強固な連帯感、強固なきずなが築かれていくと思います。
 アジア大都市ネットワーク21は、世界の第三の極でもありますアジアの共存共栄を先導するとの思いで私が提唱し、これまで都市間の協力関係を深めてきました。
 具体的な例を挙げますと、アジア製のジェット機の開発というものをしようじゃないかということで、国産ジェット旅客機MRJの設計、製造には、台湾、インドの企業の参加が実現しております。これを足がかりに、十年後をめどにさらに大きな、今、恐らく世界じゅうで一番需要のある百三、四十人の乗客、いってみれば観光バス二台の乗客がそのまま乗り込める旅客機を開発しようということで進めておりますが、加えて災害対策での協力の体制や、あるいはいつ発生するかわからないインフルエンザを、情報を互いに提供し合って素早い対処をしようというネットワークもつくりつつあります。
 ネットワークの発足から十年が経過し、幾つかの成果も上がってきましたが、深刻化するこの環境問題など、アジアにはいまだ克服すべき課題が山積しております。今後、東京が持つ技術や経験、とりわけ中小企業が持っているすぐれた技術を活用して、官と民が連携しながら、幅広い分野で都市間の交流を強力に進めるつもりでおります。都市だからこそできる外交によって、アジアの繁栄と発展を牽引し、日本にとっての真の友人を東京の努力でつくっていきたいと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 高校生の海外派遣を通した国際交流についてお答え申し上げます。
 高校生が海外に出て、外国の文化や生活等に直接触れることは、多様な物の考え方を知るとともに、世界のさまざまな国や地域の人々と望ましい関係を維持していくことの大切さを考える上で重要であり、若者の内向き志向を打破し、世界を舞台に果敢にチャレンジしようとする姿勢をはぐくむことにつながる有効な機会であると考えます。
 都教育委員会では、留学に関する手引や海外修学旅行実施ガイドライン等を策定いたしまして、留学や海外修学旅行の実施等について指導助言を行っております。
 都立高校では、平成二十年度、五十五校百十五名が海外に留学し、十三校が短期留学生二十名を受け入れ、二十八校千六百七十名が海外語学研修や海外修学旅行に参加いたしました。今後とも、都立高校が行う海外修学旅行や、国際都市東京の利点や自校の特色を生かして行うさまざまな国際交流の取り組みを指導助言するなどして支援してまいります。
   〔知事本局長秋山俊行君登壇〕

〇知事本局長(秋山俊行君) 姉妹友好都市についてでございますけれども、都はこれまで、世界の都市との交流が都市の発展と友好関係の増進、ひいては国家間の良好な関係や世界平和の実現に貢献するという基本理念のもとに、ニューヨーク市を皮切りに、北京市やパリ市など、世界の十一都市と姉妹友好都市提携を行ってまいりました。
 最近の具体的な取り組みといたしましては、ベルリン市との提携十五周年記念事業を現地で開催しますとともに、知事とベルリン市長との会談で合意をいたしました現代アートなどの交流を進めておりまして、また北京市とは、平成二十一年に締結した合意書に基づきまして、水及び環境分野における技術協力や人材交流を実施しているところでございます。
 今後も、姉妹友好都市との連携協力がより一層図られるよう、これまで築いてきた信頼関係を礎に、さまざまな機会をとらえて相互理解を深め、各都市との間で具体的な課題を通じた交流を進めてまいります。
   〔総務局長比留間英人君登壇〕

〇総務局長(比留間英人君) 首都大学東京の教育研究の国際化についてでございます。
 首都大学東京は、これまで外国人教員による実践的な語学教育の実施や、海外の六十六の協定校との学生の交流など、教育研究の国際化を進めてきました。こうした取り組みを一層進めるため、都は第二期中期目標において、グローバルな視点に立った教育研究の推進を重点事項として示しております。
 これを受け、首都大学東京では、平成二十三年度から新たに夏季休業期間等を利用した短期留学制度を創設するほか、海外で活躍する社会人を招いて現地での就労体験などを語ってもらう、グローバルキャリア講座を実施することとしております。
 今後とも、首都大学東京が世界で活躍できる人材を輩出する大学として発展するよう、都として一層支援をしてまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 特発性正常圧水頭症についてのご質問についてお答えいたします。
 認知症の中には、お話のとおり、特発性正常圧水頭症など、早期に発見し治療を行えば症状が大きく改善するものがございます。都は、かかりつけ医、介護職員を対象とした研修や、認知症のポータルサイトでございます「とうきょう認知症ナビ」などにおきまして、早期発見、早期治療の重要性について普及啓発を行っております。
 来年度は、都内全域の方を対象に実施いたしております東京都健康長寿医療センターの公開講座のテーマに、特発性正常圧水頭症も含む認知症を取り上げ、広く都民に情報発信をいたしていきます。また、新たに設置いたします認知症疾患医療センターにおきましても、医療、介護の従事者等を対象とする研修を実施するなど、特発性正常圧水頭症を含む認知症の正しい理解の普及に努めてまいります。

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