平成二十三年東京都議会会議録第三号

〇議長(和田宗春君) 六十五番山田忠昭君。
   〔六十五番山田忠昭君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇六十五番(山田忠昭君) 昨今の国政を見ると、その迷走ぶりは甚だしいものがあります。民主党政権は、ようやく税と社会保障の一体改革の議論を始めようとしておりますが、国民は不安に包まれ、日本はこのままどうなってしまうのだろうかと心配し、苦しんでおります。
 石原知事は、これまで十二年間、財政再建、都市整備、環境、安全、文化、産業、スポーツ振興など、まさに、東京から日本を変えるをスローガンに大胆な取り組みを行い、大きな成果を上げてまいりました。外交や経済の先行きが不安の中で、今、対外的にはっきり物がいえる石原知事が必要であります。
 都政においても、築地市場の豊洲地区への移転問題や三環状道路の整備など、重要、緊急課題もあり、各方面から、石原知事に引き続き都政のかじ取りをお願いしたいと、知事の四選の出馬を求める声が上がっております。石原知事への評価は絶大であり、都民の期待の強さを私は肌で感じております。
 国政が迷走する中、都政はとどまることなく確かな歩みを続け、これまで以上に都民の期待にこたえていかなければならないときだと思います。石原知事、引き続き、都政をぜひお願いいたしたいと思います。
 一方、東京では、「十年後の東京」というしっかりとした設計図を踏まえて、知事と我々都議会自民党が、緑あふれる環境都市東京を目指して着実に政策を進めてきており、幅広い分野で国をリードする施策が展開されてきております。
 そうした「十年後の東京」の実現をさらに加速させるために、今回、実行プログラムが改定されました。その中で、若者の雇用対策に力を入れられていることは極めて時宣を得たものであり、また、先般の知事の施政方針演説でも、チャレンジする若者に希望を与えることの重要性を説かれたことは、大いに賛同するものであります。知事が述べられたように、若者が次の日本をつくります。我々政治家は、そうした若者に勇気を与えていかなければなりません。私も、一政治家として、全力を尽くしてまいりますが、改めて知事に、チャレンジする若者へのエールをお願いいたしたいと思います。
 次に、東京都のディーゼル車対策の意義について伺います。
 石原知事が強力に推進し、我々都議会自民党も全力で後押しをしてきたディーゼル車対策の結果、多くの都民が東京の空気がきれいになったことを実感しており、今やあの汚かった空気は過去の歴史的事実になろうとしております。
 しかし、ディーゼル車対策の意義は、歴史的事実として残っているだけではありません。第一に、最近明らかになった地球温暖化防止効果の大きさ、第二に、環境規制が経済発展の起爆剤となった実例としての意義、そして第三に、世界共通の難題に対する解決策としての意義、これらの三点について、順次質問をいたしたいと思います。
 初めに、地球温暖化防止効果の大きさに関してであります。
 先月、東京都主催で気候変動対策としてのディーゼル車対策というシンポジウムが開催されました。基調講演では、ディーゼル車が排出するブラックカーボン、黒煙のことでありますけれども、これが太陽の熱を吸収し、周囲の大気を温める温暖化物質であることが明らかにされました。
 そこでまず、ディーゼル車対策によるブラックカーボンの削減が、地球温暖化防止にどのような効果があったのかを伺います。
 同じく、基調講演では、東京都の取り組みがさまざまな点で画期的であったと言及されておりました。中でも、私は、日本の環境技術を大きく発展させた点に注目をしております。燃料品質の面でも、新車の排ガス性能の面でも、今では世界の常識となっているサルファーフリー燃料と黒煙除去フィルターが普及したのは、日本が世界初でありました。今や日本のディーゼル車は世界で最も高性能になっております。
 そこで、東京都の環境規制が起爆剤となって、日本のディーゼル車及びその燃料がどれくらい改良されたのか、また、改良された日本の技術が世界的に見てどの程度進んだものになったのか伺いたいと思います。
 地球温暖化対策について、国際的な枠組みは合意を見ず、国も迷走を続けております。このようなときだからこそ、大都市東京の先駆的な取り組みは、他の自治体を動かし、国を動かし、さらには世界を動かすことが可能であると私は確信をしております。
 温暖化物質であるブラックカーボンの排出削減は、日本全国で実施すべきであると同時に、世界じゅう、とりわけ今でも古いディーゼル車が多い途上国で進めるべき重要な政策であると考えます。車両と燃料に関する先進的な環境技術や政策展開のプロセスなど、政策を進めるさまざまなノウハウが東京には蓄積されております。
 東京都は、ディーゼル車対策が世界規模で進展するための牽引役を果たすとともに、環境技術で強い国際競争力を持った国内産業の活性化にも寄与するために、東京に蓄積されたノウハウを世界に発信することが必要であると考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、言語能力の向上について伺います。
 これからの時代を展望したとき、言語の課題を果たす役割は重要性を増す一方であります。例えば、価値観の多様化が大きく進展する社会においては、多様な考え方を持った人々が互いに伝え合い、相互理解を深めながら人間関係を形成していくことが必要であると考えます。
 また、国際化が急速に進み、異文化との接触が増大する中、みずからの考えを論理的かつ説得力を持って表現することや、さらに、情報化の進展に伴い情報を収集する力、収集した中から必要な情報を選ぶ力、選んだ情報を活用して自分の考えをまとめて発信する力などがこれまで以上に求められております。こうした力の根源となるのは言語能力であります。
 一方、学校教育において、言語能力はあらゆる教科の基盤でもあります。また、いじめや不登校、暴力行為などの諸問題も、子ども同士、子どもと教員、子どもと親などの間でコミュニケーションが十分にとれなくなっていることが要因の一つになっていると考えられます。
 さらに、感性や情緒は主に他者との人間関係の中ではぐくまれるものであり、さまざまな人々とのかかわりの中で、美しい言葉や心のこもった言葉の交流が、確かな、豊かな感性や情緒をはぐくむものであります。
 このように言語能力は、知的活動、コミュニケーション、感性や情緒の基盤であり、今後の学校教育で重点的に育成すべきものであると考えます。これまで学校においては、子どもたちの言語能力向上を図るため、どのような取り組みを行ってきたのか伺います。
 そして、言語能力を向上させるためには、何よりも子どもたちを指導する教員の力量を向上させることが極めて重要であります。
 そこで、子どもたちの言語能力の向上を図るため、今後、都教育委員会は、どのように教員の指導向上を図っていくのか伺いたいと思います。
 次に、鉄道の立体化についてお伺いをいたします。
 都内には、千百三十カ所もの踏切が残されており、交通渋滞や地域分断などの問題を引き起こしております。踏切の問題には、数多くの踏切を同時に除去する連続立体交差事業が効果的であります。東京都では、現在、西武池袋線など七路線八カ所で事業を進めており、これまでの着実な取り組みを大いに評価いたすところであります。現在、連続立体交差化による踏切問題のさらなる解決に向け、都市計画等の手続を進めているとのことでありますけれども、その取り組み状況について伺います。
 私の地元の西東京市でも踏切による交通渋滞などが発生し、市民生活に大きな影響を及ぼしております。踏切対策基本方針では、西東京市内において、西武池袋線の大泉学園駅から保谷駅付近、ひばりヶ丘駅から東久留米駅付近、西武新宿線の井荻駅から東伏見駅付近、田無駅から花小金井駅付近の四区間を鉄道立体化の検討対象区間に位置づけられており、これらの区間の鉄道立体化は、西東京市だけの問題ではなく、沿線市民共通の問題であることから、西東京市など五市で構成する多摩北部都市広域行政圏協議会が都に連続立体交差化を要望したと聞いております。
 また、特に、昨年六月、ひばりヶ丘駅周辺の商店街から、西東京市議会に西武池袋線連続立体化を推進すべきとの陳情が出されるなど、踏切問題の解決は西東京市民にとっての重要な課題となっております。
 そこで、西武池袋線のひばりヶ丘駅から東久留米駅付近の鉄道の立体化に向けた都の見解について伺います。
 西東京市内における鉄道の立体化に関しては、現在、事業が進められております西武池袋線の石神井公園駅付近に引き続き、大泉学園駅から保谷駅付近の立体化に取り組んでいくことが重要であると考えております。この区間では、保谷駅の南口で再開発事業が行われるなど、駅周辺のまちづくりが進められております。こうした沿線市のまちづくりや市民の熱意を踏まえ、鉄道の連続立体交差化に向け、東京都として積極的に取り組んでいくことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 山田忠昭議員の一般質問にお答えいたします。
 若者へのエールをというお尋ねでありますが、かつて北海道で教鞭をとったクラーク博士は、有名なボーイズビーアンビシャスという言葉を残しました。
 私たちも若いころ、寮にいたとき、まあ蛮カラな寮にいまして、蛮カラな寮歌を歌ったんですが、その中の文句に、尾張名古屋は城でもつ、天下の商大おれでもつというふうな――私は商大、一橋というのは――若者らしい気負った文句があちこちにありましたが、私はやっぱり若者の寮歌に見られたあの気負いというものがこの国を興して、大きなエネルギーの象徴だったというような気がいたします。
 いずれにしろ、若者が強い情熱やエネルギーを抱いて未知の事柄に挑んでいくことは、日本の再生といいましょうか、社会の発展のために必要不可欠でありまして、若い諸君には、みずからの可能性を試し、能力を発揮する場があることにぜひ目を開いてもらいたいと思います。
 このごろの若者は非常に情報の供給が過剰なものですから、その情報の整理といいましょうか、分析といいましょうか、評価を情報にまた頼るという、非常におかしな状況の中に埋没しておりますが、やはり自分で本当に物を思い詰めて考えて、勘違いする、思い違いするということもとても大事だと思うんですが、その傾向がなくなりまして、例えば、青春につきものの恋愛にしても、何か自分のランキングを情報で決めてしまって、心に抱いている相手の女性もとても自分にはそぐわないとか、そういう意味で、ある意味で失恋をする若者が減ってきたというのも非常に不思議な現象だと思います。
 話は別ですが、毎年のベンチャー技術大賞を見ましても、東京の小零細企業のコロンブスの卵のような発想にいつも驚嘆させられます。非常に若い人たちが少人数でやっている企業がとんでもない発想をする。この変化の激しい時代に求められるのは、何よりもみずみずしい発想、創造意欲でありまして、東京には若者の力を存分に生かせる中小企業が人生の場所として数多く存在しております。
 単に大きな企業、見ばえのいい企業を選んで、そこで安定を求めるのではなくて、こうした少数でも、何ていうんでしょう、自分たちの発想力で大きなものを切り開いていこうという、そういう経営者というかリーダーの下で働くことが、実は自分にとっての思いがけない大きな人生をもたらすことになると思います。現在は一流企業でも、未来永劫安定、安寧であるわけはありませんし、そうした中で、東京のすぐれた技術をさらに発展させることに挑戦してもらいたいものだと思います。
 次の時代を切り開いていくのは、これはあくまでも若者でありまして、そのだいご味といいましょうか、先頭を切って大きなトンネルのための一番のみの切り先になって、最初にとにかく小さな穴をあけるということこそが実は大きなトンネルにつながるわけであって、そういう使命を若者こそが負っているという、そういう自覚を何とかこう、今の若者たちに持ち直していただきたいものだと思います。
 他の質問については、教育長、技監及び環境局長から答弁いたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、学校における子どもたちの言語能力向上の取り組みについてでございます。
 子どもたちの思考力、判断力、表現力等をはぐくむためには、学習活動の基盤となる言語能力を向上させることが重要であり、都教育委員会はこうした認識に立って、平成十六年度から、国語科のみならず、すべての教科等で読解力を育成するための方法に関する研究を開始し、その成果を各学校に還元してまいりました。
 また、平成十九年一月には、読解力向上のための学校図書館活用ガイドブックを作成配布するなどして、各学校を支援してまいりました。
 一方、国においては、平成二十年三月に学習指導要領が改訂され、国語科を含めたすべての教科等において、言語活動の充実が求められることとなりました。
 こうした状況を踏まえ、現在、各学校では、すべての教科等において、児童生徒の言語能力を高める取り組みを強力に推進しております。
 次に、子どもたちの言語能力を高めるための教員の指導力向上についてでございます。
 これまで都教育委員会は、読解力向上のための指導資料を作成配布するとともに、児童生徒の言語能力の向上に関する研究や研修を行ってまいりました。また、今年度は、研究の推進役を担う教員を対象に、言語技術にかかわる研修を、専門家を講師として三回にわたり実施いたしました。
 こうした取り組みに加えまして、平成二十三年度から、都内公立小中学校五十校、都立学校十五校を推進校として指定いたしまして、新たに言語能力向上推進事業を実施いたします。推進校では、教員の指導力を高めるため、読み聞かせの達人や言語技術に係る大学教授等の専門家を招聘した授業及び教員研修を行ってまいります。
 今後、都教育委員会は、こうした取り組みの成果を全都に普及いたしますとともに、教員の指導力を高め、猪瀬副知事をリーダーとした活字離れ対策検討チームによる言葉の力再生プロジェクトの取り組みとも連携を図りまして、児童生徒の言語能力の向上を強力に推進してまいります。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

〇東京都技監(河島均君) 鉄道の立体化に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、連続立体交差化の取り組み状況についてでございますが、都では、平成十六年度に踏切対策基本方針を策定し、鉄道立体化の可能性を検討する鉄道立体化の検討対象区間二十区間を選定いたしました。連続立体交差化に当たりましては、鉄道と交差する都市計画道路をあわせて整備することや、沿線地域のまちづくりを一体的に進めていくことが、その効果を高めていく上で大変重要でございます。
 こうしたことから、二十区間のうち、道路整備計画が具体化するとともに、まちづくりの取り組み熟度が高い五区間について、現在、都市計画等の手続を進めております。
 具体的には、西武新宿線では、中井駅から野方駅間で昨年十月に都市計画案及び環境影響評価書案の説明会を、東村山駅付近では十一月に都市計画素案の説明会をそれぞれ開催いたしました。京王線では、笹塚駅から八幡山駅間及び八幡山駅から仙川駅間の二区間につきまして、本年三月に都市計画案及び環境影響評価準備書の説明会を開催いたします。東武伊勢崎線では、竹ノ塚駅付近につきまして都内初の区施行による連続立体交差化を三月に都市計画決定いたします。
 今後とも、関係機関と連携を図りながら、都市計画等の手続を進めるなど、早期事業化に向け積極的に取り組んでまいります。
 次に、西武池袋線のひばりヶ丘駅から東久留米駅付近の鉄道の立体化についてでございますが、お話のとおり、この区間は、踏切対策基本方針の中で、鉄道立体化の検討対象区間二十区間の一つに位置づけられております。
 鉄道の立体化に当たっては、本区間の西武池袋線と交差する西東京三・四・二〇号など、三路線の都市計画道路がいずれも第三次事業化計画の優先整備路線に位置づけられていないことから、これらの道路整備計画との調整などが課題となっております。
 また、鉄道の立体化の効果を高めていく上で、地域のまちづくりと連動させていくことも必要でございます。
 都としては、本区間の鉄道立体化につきましては、今後の道路整備計画の具体化や、地元市によるまちづくりの取り組みの状況などを十分に踏まえまして、適切に対応してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) ディーゼル車対策に関します三点のご質問でございます。
 まず、ディーゼル車対策による黒煙の削減が地球温暖化防止に及ぼした効果についてでございますが、ディーゼル車から黒煙として排出される粒子状物質は、人の健康に影響を及ぼすだけでなく、太陽熱を吸収し、周囲の大気を温める地球温暖化物質でもあることが最近の研究によりまして明らかになってまいりました。
 この黒煙のもたらす温暖化効果の定量的な評価は、現在、世界じゅうで専門家が検討を行っている段階でございますけれども、最も少なく見積もる評価によりましても、一都三県のディーゼル規制によりまして、家庭の年間CO2排出量の五十万世帯分に相当する百五十万トン程度の排出削減効果があったものと推計されます。
 次に、東京都のディーゼル車規制を契機とした我が国の環境技術の進展についてでございますが、国内の石油メーカーは軽油中の硫黄分を率先して五十分の一に削減しまして、ほとんど硫黄分が含まれない、いわゆるサルファーフリーの軽油を世界で初めて全国規模で販売いたしました。
 また、ディーゼル車から排出される粒子状物質も、最新規制適合車では四十分の一程度にまで削減されております。
 東京都の取り組みの前には、我が国の排ガス規制は欧米の水準に大きく立ちおくれておりましたが、現在では世界で最も厳しい水準を競い合っておりまして、日本の自動車メーカー、石油メーカーの環境技術は世界でも最先端のものとなっております。
 こうしたディーゼル車対策の経験は、環境規制が経済発展を阻害するのではなく、むしろ技術革新をもたらしまして、新しい成長の原動力となることを示したものと認識をしております。
 最後に、ディーゼル車対策の世界への発信についてでございますが、今回のシンポジウムにおきましては、ディーゼル車対策は、大気汚染対策としてだけでなく、地球温暖化対策としても重要であることが明らかになりました。都の経験の世界への発信は一層重要性が高まったものと認識をしております。
 シンポジウムでは、都のディーゼル車対策が黒煙の大気中濃度を七年間で三分の一に削減する効果を上げまして、今日では、東京の大気がアジアの諸都市の中で、際立ってきれいな状況にあることが報告されました。また、参加した国内外の専門家からは、東京の経験は、中国、インド、ブラジルといった新興国の大都市に生かされるべきものであるとの指摘もございました。
 今回のシンポジウムの内容は、既に環境局のホームページにおきまして、日英二カ国語で情報提供しております。
 都の施策とその実現を可能とした日本の環境技術につきましては、昨年来、強化を進めてきております海外の諸都市、国際機関等とのネットワークを活用するとともに、先駆的な民間企業とも連携し、今後さらに積極的に発信してまいります。

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