平成二十三年東京都議会会議録第二号

   午後六時二十分開議

〇副議長(鈴木貫太郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百八番中嶋義雄君。
   〔百八番中嶋義雄君登壇〕

〇百八番(中嶋義雄君) 都議会公明党を代表して質問をいたします。
 最近、大阪都構想とか中京都構想、あるいは新潟州構想などと大変にかまびすしいですが、いかにも軽躁の感が否めません。今必要なのは、場当たり的な思いつきや、つけ焼き刃の構想ではなくて、国のあり方を根源的に問い直す分権改革への真摯な議論であります。
 石原都政がスタートして間もなく十二年。この間の石原都政の成果は、第一に公会計制度の改革であります。例の事業仕分けがほとんど目的を達成できなかったのに比べ、行政にコスト意識を反映させ、日々の会計処理や伝票処理の段階からむだの排除を内部化した公会計制度の改革は画期的であります。
 そして、二番目の成果がディーゼル規制であると思います。バスや大型トラックが吐き出すあの黒煙を何とかできないものかと嘆いていた人は決して少なくありません。ところが、それこそさまざまな事情から、この問題は先送りされてまいりました。
 そこに真っ向から挑んだのが、ほかならぬ石原知事であります。ディーゼル規制が実現しておよそ一年後、私が乗車したタクシーの運転手さんの言葉が印象的でありました。彼の、最近、夕日がやけにまぶしくなったんですよ、やっぱり空気がきれいになったんですかねとの話には実感がこもっておりました。
 確かに東京の空気はきれいになりました。これは東京を初め、九都県市が共同してディーゼル規制に取り組んだ成果にほかなりません。大気汚染などの公害対策は、単独の自治体で解決することは不可能であります。つまり、石原都政の第三の成果は、広域行政を現実の上で展開し、結果を示したことであります。
 私は、今回の代表質問において、この三番目の成果に着目し、改めて広域行政の展開、あるいは地方分権、地域主権改革を展望した道州制の導入に向け、東京都は先導的な役割を果たすべきであると申し上げたいのであります。
 元都庁職員の佐々木信夫氏は最近の著書で、百三十年前の明治時代に画定された都道府県の区分けに今も拘束される必要はあるのか、また、牛馬や人の足しか移動手段のなかった時代の都道府県の範囲は、時代に不適合を来しているのではないかとの同氏の疑問はもっともであります。
 現在、関西では七府県による関西広域連合が発足し、防災、文化、観光、産業、医療、環境などで広域行政の展開に取り組もうとしております。この広域連合は、地方自治法に基づく特別地方公共団体であり、関係自体が合意すれば短時日に結成が可能であります。
 法体系や行政機構の見直しなど、移行にかなりの年月を要する道州制より、手の届く範囲の未来に実現できる広域連合で問題の解決を目指すというなら、それはそれで一つの判断であります。
 一方、道州制は、明治維新以来の本格的な国の統治のあり方を問う改革であり、同時に、民主主義の根幹をなす団体自治、住民自治の本来のあり方を追求する試みであります。自民、公明の連立政権下においては、国の財政の健全化、地方の活性化という観点から、地方分権改革推進委員会や地方制度調査会、あるいは道州制ビジョン懇談会などで議論の俎上に上ったものの、政権交代以降、議論はすっかり影を潜めてしまいました。
 しかし、分権であれ、道州制であれ、これは国が主導するものではなく、あくまでも地方の側の主導権で実現すべき新たな地方政府の確立であります。その意味で、まず東京から、分権改革、地域主権改革の火の手を挙げるべきであると思います。
 政治、経済、財政、社会保障など、あらゆる面で限界状況を来している今こそ、東京から今後、目指すべき新たな国の形の提示が必要であると考えますが、石原知事の見解を求めたいと思います。
 続いて、財政運営について質問いたします。
 平成二十三年度東京都一般会計予算案は、政策的経費である一般歳出が一・〇%減の四兆五千八百三十九億円。しかし、投資的経費は三・三%増の八千四百四億円であり、景気、経済、雇用の拡大に臨む都の姿勢がよくあらわれております。
 さらに注目すべき点は、公会計制度改革の視点を取り入れて、新たな事業評価に取り組み、百九十五件の事業の見直し、再構築によって約二百十億円を確保し、あわせて、歳出の厳しい精査によって約八百九十億円の事業費の見直しを行ったことであります。堅実な財政運営への真摯な取り組みであると高く評価したいと思います。
 首都東京には、他の大都市にはない特有の財政需要が存在します。また、後ほど述べますが、これから東京は、本格的な都市の更新時期に入ります。したがって、新たな公会計制度などをフル活用し、東京都は、これまでにも増して財政基盤の強化に取り組む必要があります。知事の所見を伺いたいと思います。
 一方、国においては、財政危機が恒常化し、政権は、なりふり構わぬ歳入歳出のつじつま合わせに終始し、国民や自治体に大きな不安と不信を与えております。とりわけ、財源確保の手法として導入された、いわゆる一括交付金は、東京を初めとする大都市にとって看過しがたい問題があります。
 当面は、従来の継続事業が実施できるよう配分される見通しとなりましたが、一部に恣意的な、客観的指標なるものを導入し、今後それを拡大するとの方針を示すなど、予断を許しません。地方財政の自由度を高めるという一括交付金の本来の趣旨を生かす意味でも、公平性をゆがめる恣意的な基準ではなく、大都市の財政需要を的確に反映できる基準を設けるよう、国に強く働きかけるべきであります。見解を求めます。
 また、国は、法人事業税の一部国税化を継続し、来年度も東京から年間千八百億円を超える財源が奪われます。この法人事業税の不合理な暫定措置についても、引き続き撤廃を強く訴えていくべきであると改めて申し上げたいと思います。
 次に、都市の再生について質問をいたします。
 東京はまさに都市の更新時期を迎えました。平成六年度に都内区部の下水道普及率がおおむね一〇〇%を達成したと思ったら、比較的早い時期に下水道が整備された地域では、下水道管の老朽化が進み、次々と敷設がえ工事が始まりました。下水道のみでなく、水道管も、道路も、橋梁も、今後次々と更新時期を迎えます。財務局の試算によれば、今後十年間で必要とされる公共施設、主に建物の更新費用だけでおよそ八千三百億円とされております。公の施設だけでなく、民間のマンションや業務用ビルなども、当然次々と更新時期を迎えます。
 つまり、好むと好まざるとにかかわらず、東京は都市の更新時期を迎え、新たなまちづくりに取り組まねばなりません。どうせやらねばならないのであれば、改めて長期の視点に立って、合目的的で体系的、総合的なまちづくりに、まさに挑戦すべきであります。
 環境への配慮、耐震化の推進、そして、バリアフリーやユニバーサルデザインに基づいた新たなまちづくりに、今こそ取り組むチャンスであるといえます。都市の更新時期における、あるべきまちづくりの推進について、知事の見解を求めたいと思います。
 また、都市の更新に当たって危惧すべき点は、個々の施設や建築物、都市インフラなどが、相互の連携もなくばらばらに更新、建てかえを進めてしまうことであります。これでは、かつてと同じことの繰り返しであり、世界をリードする先進都市東京の再生には決してつながりません。都市の更新を体系的、総合的に進めていくためには、目的意識を明確にして、民間の意欲と能力、そして経済力を最大限に発揮できる枠組みを行政サイドで用意する必要があると思います。
 そこにおいて重要なのが、実は街区のあり方であります。思い切った街区の再編を実施し、大胆なまちづくりの構想を促すべきであります。東京都区部のうち約四千三百ヘクタールは、戦後復興や震災復興区画整理によって形成された街区であります。これでは街区規模が極めて小さく、敷地も細分化されているため、利用可能な容積率が低く、都市機能の更新の際の大きな阻害要因となっております。
 したがって、細分化された土地を集約し、街区の拡大を図り、その地域の潜在的な可能性を最大限に引き出す工夫が必要であります。同様に、都心部の街区内の道路についても、思い切って道路指定の弾力化を図り、まちづくりの構想や開発計画の自由度を高めることがこれからは求められます。
 既に民間では、韓国ソウル市の清渓川を参考に、日本橋の復活構想や、都心部の官民合わせた大胆なまちづくりの構想が議論されております。放置しておけば、こうした構想は日の目を見ず、都市の効率的な構造の構築や東京の誇るべき景観は形成されません。
 街区の大型化と公共施設や都市インフラの再編、さらに民間の構想力や実務能力、経済力を総合化して、活力と魅力に満ちた東京の再構築を実現するため、大街区化を促し、今までにない斬新な開発プロジェクトを進めるべきであると思いますが、見解を求めたいと思います。
 関連して、政府の地域戦略会議は、地域主権の観点から、都から区市町村へ都市計画の決定権限や、多摩地区における市町村への用途地域の決定権限の移譲などを行おうとしております。分権を進めることに異論はありませんが、一方で、広域プロジェクトを阻害し、あるいは首都機能の一体的整備を損なうおそれがあります。都は、東京の都市づくりビジョンに基づいて、広域自治体として区市町村との連携を適切に行う必要があります。都市計画や用途地域の決定権限の分権化について、都の見解を求めたいと思います。
 次に、地球温暖化による景気変動について質問いたします。
 気候変動における政府間パネル、IPCC作業部会の前議長であるマーティン・パリー博士によると、二〇五〇年までに五〇%の温室効果ガスを削減してもなお、二一〇〇年には平均二度の気温上昇があり、削減しない場合は平均四度の気温上昇が不可避であると警告をしております。
 つまり、可能な限り温室効果ガスを削減しても、地球の温暖化はとどめることができず、異常気象を初めとしたマイナスの影響は避けがたいということであります。北極海の解氷、北米大陸への巨大ハリケーンの襲来、ヨーロッパにおける熱波の発生、そして国内の集中豪雨や猛暑の襲来など、世界各地で発生している異常な自然現象が、今後も引き続き多発する可能性が極めて高いといえます。
 したがって、重要なことは、これまでと同様、温暖化対策を継続的に実施するとともに、避けがたい温暖化の進展に対する適応策への取り組みを開始することであります。高潮、洪水、集中豪雨など、温暖化を原因とする異常気象や災害に対する適応策を、今後は計画的、体系的に実施する必要があります。
 そのために、まず都庁内に局横断的な検討組織を立ち上げ、「十年後の東京」実行プログラムで実施する気候変動の影響調査を踏まえた、東京都独自の適応策の策定に早急に取り組むべきと考えますが、都の見解を求めたいと思います。
 関連して、下水道局が進める温暖化対策について質問いたします。
 下水道局が排出する温室効果ガスは、都庁全体の約四割。そこで、下水道局は、アースプラン二〇一〇を策定し、汚泥処理などの過程で発生する温室効果ガスを、二〇二〇年度までに二〇〇〇年度比で二五%以上削減する目標を掲げました。
 これまで、日本で初となる汚泥炭化炉や汚泥ガス化炉の導入などにより、温室効果ガス削減に多大な成果を上げてきております。都の地球温暖化対策都庁プランで定めた都全体の削減目標値の約八割を下水道局で達成したことは、いささか褒め過ぎではあるかもしれませんが、評価に値します。このような効果の高い対策は、さらに拡充すべきであります。
 汚泥炭化炉や汚泥ガス化炉の今後の導入、拡大、活用の方針を明らかにしていただきたいと思います。見解を伺います。
 環境問題に関連して、金属資源のリサイクルについて質問します。
 昨年来、金、銀などの貴金属やレアメタル、レアアース等の金属資源の獲得競争が激化してまいりました。
 電気製品や電子製品の内部で使用され、再利用されないまま眠っている国内の金属資源の量は、金、銀などの貴金属が七万トン、インジウム、リチウムなどのレアメタルが百万トン、ネオジムなどレアアースが三十万トンといわれ、しかもその一割以上が都内に蓄積されていると推計されております。
 この貴重な金属資源を回収し、効率的にリサイクルするシステムを構築できれば、東京は、世界でも有数のまさに都市鉱山となります。その手始めとして、公明党は、国に携帯電話等の回収システムの構築を提言し、実現をさせました。
 都は、携帯電話に限定することなく、それこそ世界最大級の都市鉱山の開発に着手し、都内に埋蔵されている金属資源のリサイクルに本格的に取り組む体制を整備すべきであると考えますが、見解を求めたいと思います。
 またあわせて、金属類の中には、環境や人体に有害であり、環境における循環の輪を断ち切らなければならないものも存在します。その一つが水銀であり、環境中に放出されると、食物連鎖による生物濃縮等で環境リスクが拡大します。
 近年、日本国内の使用量は減少しておりますが、依然として血圧計、蛍光灯、ボタン電池など、身近なところで使用されております。環境負荷低減のためには、使用を削減していくとともに適正な処理が重要であります。
 特に、水銀含有製品の使用量、廃棄量ともに群を抜いて多い東京では、製造、販売、処理の各分野において、行政としての協議機関を設け、先導的な回収、処理対策を打ち出すべきであります。都の見解を求めます。
 次に、本格的な高齢時代を前にした都の対応について質問をいたします。
 まず、医療体制の整備であります。
 国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、東京都の七十五歳以上の高齢者人口は、今後二十年間で約八十六万人増加し、二百十一万人に達する見通しであります。一方、都の調べによると、平成二十年度の高齢者の死亡総数は八万九百七十九人で、このうちの八割の方、およそ六万四千人の方が病院で亡くなっておられます。
 ところが、一般病床及び療養病床の数は、現在都内で総計九万五千七百四十四床にとどまっております。この病床数は、厚生労働省が都道府県ごとに定めている数でありますが、今後、確実に高齢化が進展し、入院を必要とする人が激増すると予想される中で、現状のこの基準病床数で対応が可能なのかどうか、極めて疑問であります。都の医療体制の整備方針、より具体的には病床数の確保について、都の見解を求めたいと思います。
 一方、本格的な高齢化を迎え、これまで以上に多くの高齢者が複数の医療機関や介護施設、自宅等を行き来することが予想されます。現在、こうした機関等の連携調整は、主に院内に配置されているメディカルソーシャルワーカーが担っておりますが、すべての病院に配置されているわけではなく、おのずと限界があります。病院、介護施設、自宅などの間の移動、調整を円滑に進める仕組みを構築すべきであります。見解を求めたいと思います。
 次に、高齢者向けの住宅整備について質問をします。
 都は昨年九月、今後五年間を視野に入れた高齢者の居住安定確保プランを策定、公表いたしました。本プランは、住宅施策と福祉施策が連携して、高齢者がニーズに応じた居住の場を選択できるよう、計画的に事業を進めるものとして評価できます。高齢者の住宅問題は緊急性の高い課題であり、施策展開のスピードが重要であります。
 まずは、福祉保健、都市整備両局にまたがる実務者レベルの機動的な実行組織を早急に設置し、計画の迅速な展開を図るべきであります。
 また、欠かせないことは、賃貸住宅として供給する場合、医療・介護連携型の住宅であっても、平均的な国民年金受給額の六万円強で入居できる家賃設定の実現であります。こうした住宅の供給を加速化するため、低額な家賃設定が難しければ、助成制度の拡充なども検討すべきであります。見解を求めます。
 関連して、住宅供給公社の少子高齢対応について質問いたします。
 都議会公明党は、昨年の予算特別委員会で、公社に少子高齢に対応する検討組織を設置するよう求めました。これに対して公社は、昨年四月、少子高齢対策室を設置し、高齢者向け住宅の検討などを進めてきたはずでありますが、現段階での検討の結果を示していただきたいと思います。
 また、公社は、公明党の要請を踏まえ、既存住宅の抜本的なバリアフリー化を進める住戸改善を試行的に実施するとしていますが、こうしたハード面のみでなく、地域コミュニティの活性化など、ソフト面の取り組みも重要であります。ハード、ソフト両面の取り組みについて、今後の方針を明らかにしていただきたいと思います。
 また、高齢者の住まいの安定と質の向上を図るためには、家賃が低廉な都営住宅の拡充整備が不可欠であります。都議会公明党は、昨年の第二回定例会の代表質問で、都の財政再建の過程でやむなく採用された、建てかえ後の狭小な間取りの見直しを強く求めました。特に一DKの居室については、単身高齢者の居住空間としても余りにも狭小であり、介護ベッドが入らない、子どもや孫が訪ねてきても居場所がなく介護もできない、寝室と居室が一体で訪問客を招き入れることができないなどの切実な声が寄せられています。
 折から、無縁社会における高齢者の孤立化の問題が提起されており、高齢者の住居には一定の配慮が必要であります。そうした意味で、将来は、一DKを原則廃止し、二DK等に切りかえるべきと考えますが、まずは、現行の一DKをより使い勝手のよい間取りに変更すべきであると考えますが、都の見解を求めます。
 また、我が党は、近い将来、耐用年数を超えた都営住宅が大量に発生し、住宅のセーフティーネット機能が損なわれることがないよう、年四千戸とされている建てかえ事業の加速化を強く訴えてまいりました。今後とも、建てかえ事業の進展を強く求めておきたいと思います。
 次に、ひとり暮らし高齢者への支援について質問いたします。
 無縁社会、高齢者の孤立化は、孤独死の発生を招きました。今や日本は、だれにも気づかれずに亡くなる孤独死が年間で三万人以上も発生する社会となってしまいました。中には、身元すら判明せず、無縁墓地に送られる方もおられます。
 かつてよくいわれた向こう三軒両隣は、もはや昔話でしかなく、日本の社会構造は大きく変化をいたしました。企業の雇用制度の変化による社縁、会社によるえにしの崩壊、未婚の増加や家庭の崩壊、親族関係の希薄化による血縁の弱体化、都市型社会の匿名性の高まりや地域コミュニティの劣化による地縁の崩壊などが無縁社会をもたらしたと指摘されております。
 現在、東京都においても、七十五歳以上の高齢者のうちの二〇%、約二十五万人がひとり暮らし高齢者で、その数は年々ふえ続けております。こうしたひとり暮らし高齢者が孤独死に陥らないためには、地域による見守り機能が不可欠であり、その機能は地域包括支援センターに期待されていました。しかし、同センターは、業務の大半がケアプランの作成に費やされ、ひとり暮らしの高齢者の見守りまで手が届かないのが現状であります。
 そこで、東京都は、区市町村から委託を受けたNPOや民間介護事業者などが、ひとり暮らし高齢者の緊急通報や相談などに二十四時間三百六十五日体制で対応し、必要に応じて個別訪問も行うシルバー交番制度を平成二十二年度から発足をさせました。
 現在、このシルバー交番は、都内で三カ所設置されておりますが、まだまだその数は十分ではありません。区市町村がシルバー交番の設置に踏み切れない原因の一つは、事業の継続性に不安があるからであります。したがって、都は、事業の継続を明確に宣言し、人口や地域の実情に応じて計画的に設置できるよう、区市町村への支援を明らかにすべきであります。都の見解を求めます。
 また、ひとり暮らし高齢者への生活支援に欠かせないのが買い物支援であります。過疎地はもちろん、都心部の団地や中心市街地においても、地元の小売店の撤退が相次ぎ、移動手段を持たない高齢者にとって、日常の買い物が困難になっております。
 そこで、まずひとり暮らしの高齢者の買い物を初めとする生活支援の必要性について答弁を求めたいと思います。
 こうした中、一部の商店街やNPOが、移動販売や宅配サービスなどによりひとり暮らし高齢者の買い物支援を行っていますが、運転資金の捻出で行き詰まっているのが実態であります。
 東京都は、新・元気を出せ商店街事業の中で、福祉、環境施策と連動した事業に五分の四の助成を行っております。平成二十二年度では、街路灯のLED化にほとんどの予算が費やされてしまいましたが、新年度予算案では、新たに十億円のLED化の予算が盛り込まれました。
 したがって、新・元気を出せ商店街事業の特定施策推進型商店街事業に、高齢者の見守りも兼ねた買い物支援事業を加えることは十分に可能であります。都の見解を求めます。
 次に、がん対策について質問をいたします。
 公明党は、国会において、がん対策を国家プロジェクトと位置づけ、がん対策基本法の制定の中心的な役割を果たしてまいりました。東京都においても、がん対策推進計画の中で、高度ながん医療や緩和ケア、がん登録の推進などを一貫して主張してまいりました。とりわけ放射線治療に関しては、手術に過度に傾斜した日本のがん治療を改め、欧米並みに手術、放射線、抗がん剤による効果的でバランスのとれた治療の普及を主張してまいりました。
 よく知られているとおり、がん細胞のみに放射線を照射する治療法は、患者への負担が少ない効果的な治療法として、がんの専門医からも期待されています。特に最新型の機器は、常に動きのある肺などの細胞に対してもピンポイントで放射線を照射することが可能で、周辺細胞に損傷を与えません。したがって、患者への負担を最小限にとどめ、午前中に治療を施せば、午後には帰宅が可能とまでいわれております。
 こうした最新鋭の放射線治療器を都立病院に導入し、がんに対する都民の不安を和らげるべきであります。がん治療の拠点病院として機能が一新される駒込病院にこそ、こうした機器を導入すべきであります。都立病院における放射線治療体制の強化について、答弁を求めたいと思います。
 これまで日本のがん治療に欠けていたのは、初期の段階からの緩和ケアであります。東大病院の、知事とも面識のある中川恵一准教授によりますと、欧米では、がんの初期の段階から緩和ケアを行うのが一般的であり、モルヒネなどを適切に処方した場合、生存率が高いとされております。
 モルヒネに対する忌避感の強い日本では、なかなか緩和ケアが普及しませんでしたが、患者本人の療養生活の質を高め、家族の精神的な苦痛を軽減する意味でも、必要かつ十分な緩和ケアを治療の早期から提供する体制を構築すべきであります。
 そして、そのためには、従事する医療人材の育成が急務であり、都は、都議会公明党の提案を受け、平成二十四年度までにがん医療に携わる都内の全医師に緩和ケア研修を行う方針であります。これまでの研修の成果と今後の方針について、改めて都の見解を求めます。
 あわせて、がん患者が住みなれた家庭や地域での療養を選択できるよう、在宅医療における緩和ケアを実施できる体制を整備すべきでありますが、今後の緩和ケアの普及促進について、見解を求めたいと思います。
 がん治療を適切かつ効果的に実施するために必要な制度が、地域がん登録であります。これは、がんの罹患率や生存率を把握するための仕組みであり、がん対策の有効性を評価するために不可欠であります。都議会公明党はこれまで、院内がん登録を実施する医療機関をふやし、地域がん登録の実施につなげていくよう主張してまいりました。
 現在、院内がん登録は、がん診療連携拠点病院と認定病院の三十二カ所で実施されています。一方、地域がん登録について、都は、平成二十四年度の事業開始を目指して具体的な検討を行ってきたと聞いております。
 精度が高く、効果的な地域がん登録を実施するためには、それにふさわしい体制の強化が必要であり、それと同時に、関係する保健医療機関との連携や、何よりも住民の理解と協力を得るための意識啓発が欠かせません。都の見解を求めたいと思います。
 次に、昨年三月に開設した都立小児総合医療センターにおける小児専門医療の充実強化について質問をいたします。
 患者がふえ続けている気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど、小児アレルギー疾患対策の強化が急務であります。都が平成二十一年度に行ったアレルギー疾患に関する三歳児全都調査では、三歳までに何らかのアレルギー症状が出て診察を受けている小児の割合は、三八・八%と非常に高い結果が出ております。しかも、発症の低年齢化、治りにくくなるという難治化の傾向も見られます。こうした状況に対応するためには、アレルギー疾患に精通した専門医の育成のほか、保健師、看護師、薬剤師、栄養士等においても、アレルギー患者に適切に対応できる知識、技術を習得させる必要があります。
 さらに、専門の看護師等が治療管理や生活管理を行う小児アレルギーエデュケーターの活用が有力な取り組みとして今注目を集めております。
 そこで、小児総合医療センターのアレルギー科の機能をさらに拡充するため、こうした専門知識や技能を身につけた医療人材によるチーム医療を強化すべきでありますが、都の見解はいかがでありましょうか。
 次に、小児精神医療の拡充について質問します。
 児童、思春期の精神疾患は、精神遅滞や自閉症などの発達障害、摂食障害や不登校を伴う心因性精神障害など、さまざまな障害が発生します。
 小児総合医療センターでは、児童、思春期の精神疾患に対応するため、子ども家族支援部門を設置しておりますが、児童、思春期の時期においては、患者、家族にとって最も身近な存在の看護師のかかわりが極めて重要であります。平成十九年より精神科認定看護師制度が改正され、児童、思春期精神看護も含め、看護師のかかわる領域が十分野へと拡大され、専門性を生かす活躍の場が広がりました。この看護のスペシャリストともいうべき認定看護師が今後の小児精神医療を支えていく上で極めて重要であります。
 児童、思春期看護認定看護師の今後の育成方針について、都の見解を示していただきたいと思います。
 次に、障害者施策について質問をします。
 自立支援法に定めるサービスの本人負担率は、公明党などの主張で、平成二十二年九月から、一律一〇%から実質〇・三七%に軽減されました。その後、昨年十二月には法律の改正が行われ、応能負担の明確化がなされました。今後は、政府において、政省令等で確実にこうした改正が実施されるよう監視を強めていく必要があります。
 東京都においても、障害者福祉が着実に改善の方向に向かうよう改めて政策提言や改善要求を強く政府に働きかけるべきであります。都は、「十年後の東京」実行プログラムにおいて、世界に誇る福祉健康都市を掲げました。
 そこで、東京都が描く今後の障害者福祉について、まず知事の抱負を伺いたいと思います。
 障害者福祉の充実には、住まい、雇用、社会参加の三つの視点に立った取り組みが不可欠であります。特に居住の安定は、重視しなくてはなりません。都は、平成二十三年を三カ年プランの最終年として、グループホーム、ケアホームなどの整備に取り組んできました。この計画の新年度における事業見通しについて、まず提示していただきたいと思います。
 関連して、グループホームやケアホームなどに適さない重い障害を持つ方々には、地域における入所施設の整備が大きな課題であり、今後の検討を求めたいと思います。
 次に重要なのが雇用であります。一般に、障害者の雇用は景気や経済の動向に左右されます。しかし、その経済の見通しは、残念ながら、政権交代後の混乱によって一層先行き不透明となっています。
 そこで着目したのが、福祉施設における就労拡大であります。予算復活要求でも申し上げましたが、都は新年度より、企業への一般就労に加え、特別支援学校の卒業生などの若年障害者を中心に、福祉職場での雇用創出に力を入れていくべきであると考えますが、都の見解を求めたいと思います。
 また、障害者の方々の生きがいと社会参加のために強く要請されているのが移動支援であります。昨年十二月の法改正で、重度の視覚障害者向けの移動支援が新たに個別給付に加えられましたが、まだ多くの課題を残しております。都は現在、区市町村事業に四分の一の補助を実施していますが、移動についてのガイドラインなどを示していないため、都立特別支援学校に通う生徒同士であっても、利用できるサービスが異なっております。
 そこで、都内の障害者の皆さんがひとしく移動支援サービスを受けられるように、サービス全体の底上げを図るべきであります。見解を示していただきます。
 次いで、精神疾患の早期発見、早期対応について質問をいたします。
 自立支援法に基づく精神通院医療認定者数は、最近の五年間で約二万五千人ふえており、平成二十二年三月現在では十三万七千人に上っております。精神疾患が重症化し、本人の苦しみや家族の負担が増す前に、精神疾患を早期に発見し、適切に治療へと結びつける工夫が必要であります。
 精神疾患の早期発見のためには、精神科治療の知見を備えた一般診療科の医師をふやし、日常的な診療の際に発見、対処する方法が効果的であります。また、専門的な精神科治療が必要となる場合であっても、身近な医師からの紹介であれば、精神科病院への抵抗感が和らぎ、スムーズな受診につながりやすいと考えられます。
 都は、精神科と一般診療科の二人主治医制度を目指していますが、精神科と一般診療科の連携による精神疾患の早期発見、早期対応のためのシステムを構築すべきです。見解を求めます。
 また、一般に精神診療機関は予約制となっています。そこで、都は、急な治療や入院の必要が生じた場合に備え、それぞれの症状に適した治療機関を選択できる情報提供ネットワークを構築すべきであります。見解を求めます。
 都の新年度予算案では、地域に戻ったものの、生活が困難になっている精神障害者を対象に訪問支援を本格実施するとしていますが、これは重症化している精神疾患への対応策として有効ですが、一方で、初期の精神疾患への対応も欠かせません。
 初期の患者はふさぎがちになり、ひきこもりに陥っても、専門機関の診療を受診しない事例が多く、家族の大きな悩みの種となっております。都の訪問型支援の対象をこうした軽症者にまで拡大する必要があり、そのためには、民間診療機関の幅広い協力が不可欠であります。都の積極的な働きかけを求めたいと思いますが、見解を伺います。
 次に、映画のバリアフリー化について質問をいたします。
 耳が不自由な人のため日本映画に字幕をとの、かつての都議会公明党の質問に対し、映画制作の経験を持つ知事は、すべての人が映画文化に触れることのできる社会を実現したいと答弁で表明されました。
 平成十九年六月本会議におけるこの知事答弁が反響を呼び、その後、国の著作権法改正につながり、日本映画に字幕をつける取り組みが大きく前進しました。日本映画製作者連盟によれば、今では公開作品の六割以上が字幕つきになったそうであります。
 一方、目の不自由な方が劇場で映画を楽しめるのが音声ガイドシステムであります。このシステムを使えば、せりふだけでなく、場面の状況説明を音声ガイドで聞くことができ、情景を思い浮かべながら作品を楽しむことができます。昨年、このシステムで「ノルウェイの森」を上映した都内の映画館には、盲導犬を連れた人や杖をついた方たちが列をなしたそうであります。
 しかし、残念なことに、音声ガイドつき映画は、年間八百から九百本の国内公開作品のうち、わずか四、五本にすぎません。音声ガイドをつけて上映にこぎつける作業が、数少ないNPOや企業の社会福祉活動などに依存しているため、限界があるからであります。
 目や耳の不自由な人も話題の映画を楽しめるように、字幕とともに音声ガイドを提供する映画のバリアフリー化により、障害者に対する情報保障を進めることが重要と考えますが、知事の所見を伺いたいと思います。
 こうした映画のバリアフリー化を推進していくためには、制作会社の理解、協力はもとより、広く各種イベントの主催者や映画を所管する国に対しても、対応するように働きかけていくことが必要でありますが、都の見解を求めたいと思います。
 続いて、障害者スポーツについて質問をいたします。
 東京都が平成二十五年に、国体と全国障害者スポーツ大会を一つのスポーツの祭典として、スポーツ祭東京二〇一三を開催することは、障害者スポーツの普及に向けた大きな契機となります。
 いうまでもなく、障害者の皆さんの生きがいと社会参加の実現には、スポーツが重要であります。しかし、これは一朝一夕になし遂げられるものではありません。指導員やボランティアなどの人材の育成、障害者が身近にスポーツを実践できる環境の整備など、中長期的なビジョンを明確にして、今後、体系的、継続的に取り組んでいくべきであります。
 都は、スポーツ祭東京二〇一三にも備え、障害者スポーツ振興のための中長期の指針を策定すべきだと考えますが、知事の所見を伺いたいと思います。
 続いて、教育、学力の向上策について質問をします。
 国際的な大競争の時代、日本はやはり人材が資源であります。将来の日本と東京を展望して、教育の質を高めていく必要がございます。ここでは、まず学力向上のための学力調査のあり方の改善を求めたいと思います。
 現在の学力調査は、試験から結果が届くまで期間がおよそ約半年、これでは遅過ぎます。そもそも学力調査は、その時々の児童生徒の学力の現状を把握し、その後の学習と授業の進め方の参考とするものです。それが、結果がわかるのが半年後では意味がありません。学力調査の結果を教育現場に反映させ、授業の改善、学習効果の向上につなげるために、教員の負担に配慮しながらも、学力調査の実施方法の改善と結果の分析、問題の整理などに取り組むべきであります。所見を伺います。
 体力の向上も重要であります。調査によれば、東京の中学二年生の男子は、全国都道府県で四十六番目との結果が出ております。塾通い等、あるいはゲーム等で慢性的な運動不足が原因であるそうであります。
 先日我々は、体力向上モデル校を二校視察しました。そこでは、足の健康というテーマで、フットプリントを撮って健康状態を調べたり、家庭同士が工夫を凝らした食事情報を交換するなどの取り組みを行い、約半年で大きな効果が上がったそうであります。こうした事例を他校にも公表し普及させるべきでありますが、見解を求めたいと思います。
 続いて、条例案について質問します。
 最初に、耐震化条例であります。
 建物が倒壊して避難路が使えなくなる、こうした事態に対処するために条例が提案されました。本条例は、特定緊急輸送道路を指定して、その沿道建築物の所有者に対して耐震診断を義務づけるものでありますが、しかし、これは道路の起点から最終まで一体的に改修されなければ効果が上がりません。しかし、建物が立地する区市町村によって助成制度が異なることから、その進捗状況に格差が出てしまうおそれがあります。路線全体の一貫した耐震化の実現について、局の見解を求めたいと思います。
 また、今後の課題として、建てかえが必要な場合の誘導策、助成額の拡大あるいは容積率の緩和など、建てかえを促す助成策の検討が今後の課題であることを申し上げておきたいと思います。
 続いて、暴力団排除条例について質問をいたします。
 昨年、都議会警察・消防委員会で福岡県と久留米市を訪問し、福岡県の暴力団排除条例について説明を聞き、福岡市と久留米市では、抗争の舞台となった閉鎖中の元暴力団事務所を視察してまいりました。
 久留米市で伺った話では、抗争が激しかった時期、住民が鋭い発砲音を聞き、表に飛び出してみると、事務所前の路上に旧ソ連製のカラシニコフ機銃が放棄してあったといいます。民家や商店が密集している地域で機銃の掃射があるなどということは、なかなか想像しがたいことでありますが、紛れもない事実であります。
 また一方で、薬物汚染やヤミ金融、おれおれ詐欺などの背景に暴力団の影が見え隠れすることも周知の事実であります。
 近年、全国的な不況の中で、地方の暴力団が上京して、東京を舞台に資金集めに力を注いでいるとの情報もあります。都民の安心・安全に責任を持った都政にとって、こうした状況は決して無視できません。したがって、警視庁がこの条例案を提出したことは歓迎いたしたいと思います。
 その前提で二つ質問します。
 まず、第十六条の青少年に対する措置において、青少年の教育、育成に携わる者の努力義務規定を設けています。本条例案にあえて青少年の健全育成等、教育に関する規定を盛り込んだ意図について、まず警視総監の所見を求めます。
 また、第二十二条の暴力団事務所の開設及び運営の禁止、第二十三条の青少年を暴力団事務所へ立ち入らせることの禁止について、罰則を含めた規制を設けております。これについても、その意図について警視総監の見解を伺いたいと思います。
 最後に、自転車政策について質問いたします。
 自転車協会の国内市場動向調査によれば、都内の自転車保有台数は、平成十一年から約十年間で二百万台以上ふえ、それに伴い自転車交通事故が激増しております。
 中でも看過できないのは歩行者の事故件数であります。過去十年間で三・七倍に急増、最近でも、五十五歳の女性が横断歩道を渡っている際に、信号無視の自転車にはねられて死亡した事故や、横断歩道を渡っていた六十歳の男性が、ブレーキ装備のない競技用自転車にはねられて死亡するといった痛ましい事故も発生しております。
 また、賠償能力のない中学生、高校生が加害者になるケースも目立っております。十五歳の男子中学生が、夜間に歩行中の六十二歳の男性と衝突し死亡させた事故では、裁判所がその中学生に三千万円の賠償を命じたケースもあります。
 自転車による対人事故の増加の背景には、自転車利用の運転マナーの欠如、自転車のための社会資本整備のおくれ、超高齢社会の進展などがあると指摘されています。
 自転車の安全運転対策については、平成十九年一月に自転車の安全利用推進総合プランを策定しましたが、実施主体や具体的な目標が明確にされていないほか、自転車走行空間の整備が進んでいないこともあって、事故の減少に結びついていないのが現状です。
 そこで、都は、都と区市町村の責務、自転車運転者の責任の明確化、義務教育課程での交通安全教育の徹底、登録ナンバー制度の導入、点検、整備や対人保険の加入促進などを定めた東京都自転車条例を策定すべきであると強く訴えて、また答弁を求めて質問を終わりたいと思います。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 中嶋義雄議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、東京から新しい国の形を示すことについてでありますが、国はどんなに疲弊しても国であります。世界が激しく変化して先を見通すことが難しくなっている時代だからこそ、リーダーは、国家として日本の進路や、国民をどこに導くかを示しながら、その使命、役割を果たさなければならないと思います。
 もはや、高度経済成長期のように物質的な豊かさを追い求める時代でもありませんし、今さら日本が第二のアメリカになる必要もありません。
 西洋には、地政学的条件や歴史を踏まえた、特徴のある、個性のある、コンパクトで均衡のとれた国々が幾つもあります。日本は資源も持たず国土も狭くとも、歴史文化の堆積、垂直な価値の基軸に立脚した先端技術、独自の感性などを武器に、世界と伍す凜とした国家の姿をつくり直す必要があります。
 ハンチントンの説でも、日本の文化だけは、世界の中で極めて個性的で独立したものだという評価もありますが、例えば、この日本は世界で有数の、多分第六位だと思いますけれども、非常に広範囲な排他性経済水域を持っております。所によっては深度の問題もありましょうが、この海洋開発というものに関しての先端技術を日本は思い切って開発し、それを活用することで、極めて存在感のある、個性のある国になり得ると思います。
 例えばノルウェーのような国は、大した技術はありませんけれども、これは周りの海底油田を開発することで非常に潤沢な経済というものを持つようになりまして、EUにもあのノルウェーはたしか入っていない、その必要がないような国家になっておりますが、しかし、残念ながら日本を見ますと、それができずにおります。
 そもそも国の政治家の多くは、歴史的認識、危機意識自体が極めて希薄なような気がいたします。国家の将来やありようを語ることもなく、ただ国民におもねるばかりでは、これは本当に国が滅びるばかりであります。
 これに対して、危機が先鋭的にあらわれているこの東京では、皆さんの協力もあって、これまでもさまざまな取り組みを進めてまいりました。首都圏の自治体が協力して行ったディーゼル規制、排気ガス規制もそうでありますし、また公会計制度の改善もそうでありますが、これが東京から全国に発信しているわけですけれども、さらに、東京が世界の大都市で初めて導入しましたキャップ・アンド・トレードの制度もその手法の一つだと思います。
 先般も、すべての都道府県と政令市による地球温暖化対策全国自治体会議を東京で開催いたしました。現場発の具体的な手だてをてこにして、国に変革を迫る必要があると思います。都道府県の枠を超えた広域的な行政を展開しながら、大きな流れにかなったうねりを地方から起こして、国全体を健全に導くことで、目指す国のありようを造形することにつながっていくと思います。東京は、繰り返して申しますけれども、我が国の頭脳部、心臓部としてその先頭に立っていかなきゃならぬと思っております。
 次いで、財政基盤の強化に向けた取り組みについてでありますが、二十三年度予算において、厳しい財政環境のもとにあっても積極果敢に都政の課題に取り組むことができたのは、まさに、これまで皆さんの協力で、強固な財政力を培ってきた成果にほかならないと思います。
 この十年余りの間、都は、身を削って歳出削減の努力を重ね、人も減らし財政再建を達成した後も、事業を検証する機能を強化し、むだの排除を徹底するなど、自己改革を当然に進める仕組みを都庁の組織に組み込んでまいりました。特に、その過程で導入した新しい公会計制度は、財政の全体像を明らかにし、職員に金利感覚とコストの意識を持たせました。これまでの役所のあり方を本質的に変える強力な武器になったと考えております。
 今後、都税が大きな伸びを期待できない中で、都政が課せられた使命を確実に果たしていくためにも、新しい公会計制度も活用しながら、積極的な施策展開を支え得る財政基盤の強化に不断に取り組みまして、東京から日本の活路を切り開いていかなきゃならぬと思っております。
 次いで、都市の更新期における都市づくりについてであります。
 これは極めて重要な指摘でありまして、東京は日本の成長のエンジンであり、その役割を今後も揺るぎなく果たしていかなきゃなりませんが、そのためにも国際競争力をさらに強化し、地球温暖化対策も十二分に凝らすなど、時代の要請にこたえながら都市を更新していく必要があります。
 この都市の更新はいろいろな面がありますが、例えばそのインフラですね。隅田川にかかっております、過去につくられた有名な橋、言問とか、勝鬨とか、駒形とか、厩とか、こういった橋は、橋によってそれぞれ条件が違いますけれども、もう耐用年数に近くなっておりまして、これは近い将来必ず補強しなくちゃならない。これは案外都民も国も忘れています。都民も忘れていますが、こういった問題に実は非常に鋭敏で、興味を持ってアプローチしてくるのは外国のファンドでありまして、こういった状況は非常に皮肉な現象だと思いますけど、私たちはやっぱりこういうものを逆に活用しながら、この東京というものの、まさにその都市の更新というものを積極的に行っていかなくちゃならないと思っております。
 このため、三環状道路の整備や、羽田空港などの国際線のさらなる導入や、港湾物流の効率化などによって、快適で利便性の高い陸海空の広域ネットワークを再構築してまいります。
 私が気がつきまして、川崎、横浜と図って、東京湾の三つの港を統一化しましたが、これ幾ら統一して機能化しても、物を港に運ぶ道路が完成しなきゃどうにもならぬわけでありまして、この港を生かすためにも私たちは、首都圏における道路というインフラの整備を一刻も早くやらなければ、幾らその三港を統一しても効果が上がってこないと思います。
 また、民間の資金やアイデアを一層生かしまして、最先端の省エネ技術の導入も図りながら、都心部などの再生を積極的に推進する必要があると思います。
 例えば、八路線の鉄道が集まる渋谷駅は、大正時代より増改築が繰り返されておりますが、非常にいびつなものになっておりますけれども、耐震化やバリアフリー化など、乗りかえや利便性の向上などの課題をいまだに抱えております。
 今後、駅の施設の機能更新と、周辺の都市基盤や市街地の再編を一体的に進めまして、魅力のある商業、業務、文化機能などが充実した、安全で、歩いても非常に楽しい安全な副都心を形成していきたいと思っております。
 今後とも、スピード感を持ってこうした取り組みを進めることで、東京をアジア随一の国際都市として発展させるだけではなく、環境と調和し、世界を魅了する多彩な文化も花開くなど、二十一世紀にふさわしい成熟を遂げた都市へと更新していきたいと思っております。
 ついでに申しますと、まさに都市の更新の時期でありますが、このついでに、もう戦後六十五年たっているんですから、東京にいまだにありますマッカーサー通りとか、星条旗通りなんて通りの名前はもうやめてもらいたい。やめるべきだと思います。
 今後の障害者施策についてでありますが、どんなに障害が重くとも、障害者がみずからの生活や人生のあり方を選択し、人間としての尊厳を持って生活できるようにすることが、障害者施策の目指すところであります。
 都はこうした理念のもとに、国に先駆けてグループホームなど地域生活の場を整備してまいりました。また、福祉・保健、教育、労働の各分野が連携し、企業などの協力も得まして、障害者の自立に向けた就労支援への多角的な取り組みを進めております。
 全盲のピアニストの辻井伸行さんの例を引くまでもなく、一人一人が才能や可能性を持っておるわけでありまして、それを見出し、引き出して、仕事にせよ、スポーツ、芸能活動にせよ、その活動を後押ししていかなければならないと思います。また、ハンディキャップを乗り越える人間の真の強さというものを、昨今の若者にこそ知ってもらいたいと思います。
 今後とも、都の先導的な取り組みをさらに前進させ、区市町村と連携しながら、障害者が地域の中で自立し、安心して暮らせる社会を実現してまいります。
 次いで、映画のバリアフリー化についてでありますが、映画という文化に触れることで、人々はさまざまな刺激を受けて心が豊かになり、日々の生活に潤いが持たれるわけでありまして、こうした感動は障害の有無にかかわらず、だれもが求めるものでもあると思います。しかし、残念なことに現在の我が国においては、目や耳の不自由な方がいつでも映画を楽しむことはかなり難しい状況だと思います。
 その助けとなるのが字幕や音声ガイドだと思いますが、三年前の都議会の質問を契機に、長年の関係者の努力が実を結びまして、日本映画への字幕の表示には前進が見られました。私たちが若いころ見たかなりすぐれた映画が、外国にスーパーインポーズがないために埋もれておりましたけれども、あるグループの努力でこれが国際的に復活したことは大変うれしいことだと思います。音声ガイドについても作成を支援するNPOが生まれておりました。
 これらの活動がさらに広がり、すべての方々が映画文化に触れる機会を享受できるようになればすばらしいと思います。都としても、そうした社会の実現に向け、映画関係者や国に対して働きかけていきたいと思います。
 次いで、障害者スポーツの振興についてでありますが、人間はどんなハンディキャップを持っていようと、それぞれ異なる個性、能力を持っているものでありまして、それを支援し、またみずから努力することで、たとえ障害者だろうと、並みの人に比べてもはるかに大きく光輝くこともできるわけです。公明党から教えていただきました、東大の教授にもなった福島さんなどもその典型的な例だと思います。そして、ハンディキャップを強靱な精神力で克服し、アスリートとして活躍する姿は見る者にも大きな感動を与えます。
 パラリンピックが今の形になったのも、一九六四年の東京オリンピックに合わせて開催された大会からでありました。そうした歴史を持つ東京から、障害のある者もない者もともにスポーツの感動を分かち合い、だれもがスポーツを楽しむことのできる都市を実現することは、より高い次元で日本の成熟につながると思います。
 今重要なことは、障害者スポーツのあるべき姿や方向性を明確に指し示すということだと思います。今後、障害者スポーツ振興の指針となる計画策定に向けた準備を進め、スポーツ振興の新たな姿を東京から提示していきたいと思います。
 他の質問については、警視総監、教育長、技監からお答えいたします。
   〔警視総監池田克彦君登壇〕

〇警視総監(池田克彦君) 暴力団排除条例案に関する二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、青少年の健全育成、教育に関する規定を盛り込んだ意図についてであります。
 暴力団は、違法薬物の密売等の不法行為を繰り返すことで暴利をむさぼり、目的達成のためには殺人等の凶悪な犯罪行為も辞さない犯罪者集団でありますが、社会の一部には、暴力団を仁義を重んじる任侠団体として表現したり、あるいは暴力行為を売り物とする映画や雑誌があるなど、暴力団を美化する風潮が少なからず存在し、影響を受けやすい青少年が暴力団に対する誤った印象やあこがれを抱く危険性をはらんでおります。
 また、暴力団自身も、そのような青少年の誤った印象やあこがれに乗じて、青少年に対して勧誘活動を繰り返し行っており、青少年を支配下に置き、違法、不当な活動に加担させることにより、組織の存続を図ろうとしております。その結果、暴走族や不良少年グループの多くが、暴力団のいわば手先となるような事態が生じております。
 そこで、青少年が暴力団の巧みな勧誘に乗って暴力団に加入するようなことのないようにすることはもとより、暴力団による犯罪の被害を受けることがないよう、青少年に暴力団についての正しい認識を持ってもらうことが極めて重要であると考えております。
 そのためには、青少年の育成に携わる者が、青少年に対して、あらゆる機会をとらえて、暴力団排除活動に係る指導助言等を実施する必要があることから、本条例案において、青少年の健全育成、教育に関する規定を盛り込むこととしたものであります。
 次に、学校等青少年が活動する施設の周辺での暴力団事務所の開設・運営及び青少年を暴力団事務所へ立ち入らせる行為に対して、罰則を含めた規制を設けた意図についてであります。
 暴力団は、青少年の暴力団への誤った印象やあこがれに乗じて、勧誘活動を繰り返して行っておりますが、これらは暴力団事務所を拠点として行われていることから、本条例案に、暴力団事務所に青少年を立ち入らせる行為に対する規制を盛り込むものとしたものであります。
 また、ただいま申し上げたことに加え、暴力団事務所が青少年が活動する施設の周辺に存在した場合、出入りをする暴力団員と青少年が接触する機会が増加するなど、青少年の健全な育成に悪影響を及ぼすことが懸念されることから、青少年の活動の場となる施設周辺での暴力団事務所の開設・運営を規制することといたしました。
 規制の対象は暴力団員であり、彼らに厳正に対処することで、青少年の健全な育成の確保に万全を期したものであります。
 警視庁といたしましては、今後とも青少年の健全育成の確保にも配慮した暴力団対策を推進してまいる所存であります。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、今後の学力調査についてでございます。
 児童生徒の学力向上を図るためには、学力調査によって学力の実態を明らかにし、その結果を児童生徒一人一人に還元するとともに、各学校における授業改善を推進することが極めて重要であると認識しております。
 お話のとおり、現在、調査の実施から個人票の返却までに時間を要していることから、児童生徒みずからが解答の誤りを確認し、正しい知識や考え方を身につけることがおくれてしまい、また、教員が学力調査の結果を速やかに授業改善に生かしにくくなるという指摘もございます。
 そこで、平成二十三年度から悉皆で実施する新学力調査におきましては、児童生徒への結果の返却に即時性を持たせるために、各学校において調査結果を集計し、児童生徒一人一人に配布する個人票の印刷や、学級、学校の学力の全体傾向等の把握ができる集計処理ソフトを開発して、都内の全公立小中学校に配布し、教員の授業改善を支援してまいります。
 また、平成二十三年度においては、都と区市町村の代表者で構成される東京都学力向上施策検討委員会を設置し、これまでの取り組みの成果や課題を検証するとともに、学力調査における都と区市町村の役割分担などについて協議し、区市町村教育委員会に対する具体的な支援策について検討してまいります。
 今後とも、都教育委員会は、児童生徒一人一人の学力向上を図るための調査を、学力向上施策の中核に据えまして、東京都における義務教育の質の向上に努めてまいります。
 次に、生活・運動習慣改善を目指した研究の成果の普及についてでございます。
 現在、子どもたちは生活環境やライフスタイルの変化により、日常生活で体を動かさずに済む状況にあることから、運動やスポーツを行う以前に生活習慣を見直し、今以上に生活の中で体を動かす習慣を身につけていくことが必要であると認識しております。
 このため、都教育委員会は平成二十二年度、生活習慣や運動習慣等の定着に関する実践研究モデル校事業を小学校九校で実施し、児童の日常生活における活発な身体活動を推奨し、体力向上に向けた生活・運動習慣の改善方策について実践研究をしております。
 今後、こうしたモデル校での実践研究の成果を報告書として取りまとめ、都内全公立小学校に配布するとともに、実践報告会を開催するなどして、体力向上に向けた児童の生活・運動習慣の改善方策を積極的に普及啓発してまいります。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

〇東京都技監(河島均君) 七点のご質問にお答えいたします。
 まず、都市再生に向けた大街区化についてでございますが、都市間競争が激化する今日、東京の活力を一層高めていくためには、都心を初めとする既成市街地において、街区再編や機能更新を計画的に行い、都市再生を進めていくことが必要であります。
 震災復興や戦災復興事業により、一定の都市基盤が整備された市街地の中には、高いポテンシャルを有するものの、区画街路により街区が細分化されているため、国際都市にふさわしい多様な機能を導入しようとする際に、土地の有効かつ高度な利用が阻害される例が見られます。
 こうした地区においては、複数の街区を集約して大型の街区を創出し、これとあわせて公共施設の再編を一体的に行うことにより、今日的なニーズに合わせた土地利用を図るとともに、交通アクセス機能や防災性の向上、さらには街区全体で環境負荷の低減を図ることが可能となります。
 都内ではこれまで、千代田区の神保町一丁目南地区や、中央区の京橋三丁目一地区などで、再開発事業や都市再生特別地区などの制度を活用した、民間主体による大街区化の取り組みが行われており、都もこれを積極的に支援してまいりました。
 今後、地元区や民間事業者等との連携により、より一層大街区化の取り組みを誘導し、東京の都市再生と国際競争力強化を図ってまいります。
 次に、用途地域などの権限移譲についてでございますが、国は昨年、地域主権改革の一環として、都が持つ用途地域等の決定権限を区市町村へ移譲しようとしました。しかし、都市のあり方を方向づける用途地域等について、機械的に全国一律の考え方で分権を進めれば、日本の心臓部、頭脳部の役割を担ってきた東京において、都市としての一体的な機能を発揮させる都市づくりが極めて困難となり、東京は機能的にばらばらになってしまいかねません。このため、都は国に対し、首都東京の一体性を損なう権限移譲はすべきではないと強く主張した結果、区部では従来どおり都が決定することとなりました。
 これまで都は、区部、とりわけ都心部を一体的にとらえて、用途地域や都市開発諸制度等を活用し、機能集積のメリットの発揮や、風格ある景観の形成などを進めてまいりました。
 今後とも、これらの都市計画を効果的に運用することにより、都市機能の一層の強化を図ってまいります。
 また、多摩では、用途地域等が市町村決定となる場合におきましても、市町村と連携して、その運用を支援、調整する仕組みを構築いたします。これにより、引き続き広域的視点を持った都市づくりを進めることで、多摩全体として土地利用のバランスが確保された自立した都市圏の形成を推進してまいります。
 都は現在、都市づくりビジョンに基づき、個々の都市計画を方向づける都市計画区域マスタープランの改定に着手しておりまして、この中で、区部、多摩を通じて地域の意向を反映しつつ、大都市東京の一体性を確保する考え方について明らかにしてまいります。
 今後とも、区市町村等と連携し、マスタープランに即した都市づくり等を推進することにより、都市全体として一体的な機能を十全に発揮できる東京の実現に取り組んでまいります。
 次に、高齢者向け住宅の整備についてでございますが、高齢化が急速に進行する中、住宅のハードと生活支援サービス等のソフトを組み合わせ、高齢者が安心して暮らせる住まいを実現していくことが喫緊の課題であると認識しております。
 都では、少子高齢時代にふさわしい新たな「すまい」実現プロジェクトチームにおいて、住宅施策と福祉施策との連携を図りながら検討を行い、その結果に基づき、緊急通報など生活支援サービスつきの高齢者向け賃貸住宅の供給を促進しております。
 こうした動きなどを受け、国においては、高齢者の居住の安定確保に関する法律の改正を検討しております。
 都としては、ご提案のあった実務者レベルでの連携会議を設けることなどにより、高齢者向け住宅の供給促進に向けた取り組みを一層強化してまいります。
 また、高齢者の居住の安定を図るためには、高齢者が適切な負担で入居できる住宅が必要であることから、都では従来より、高齢者向け優良賃貸住宅の家賃助成制度を導入した区市町村に対して補助を行ってまいりましたが、さらに来年度からは家賃の助成限度額を引き上げ、補助制度の拡充を図ることといたしました。
 今後とも、区市町村との緊密な連携を図り、都の補助制度を活用できる地域の拡大に努めるなど、高齢者が住みなれた地域で安心して暮らすことができる環境の整備に取り組んでまいります。
 次に、東京都住宅供給公社における少子高齢対応についてでございますが、公社では、一般賃貸住宅の建てかえや既存住宅の再生を通じて、民間では進みにくい、少子高齢社会に対応した住まいの供給を行っていく方策について鋭意検討してまいりました。
 その成果として、年度内に今後の取り組み方針をまとめる予定でございまして、具体的には、板橋区の向原住宅、世田谷区の烏山住宅及び稲城市の平尾住宅の三団地におきまして、高齢者向け住宅や子育てに適した住宅を供給するとともに、建てかえにより創出した用地を活用し、高齢者施設や子育て支援施設等を誘致するなどのモデル事業を実施してまいります。
 特に高齢者向け住宅には、緊急通報設備の設置はもとより、地域のニーズに応じて高齢者福祉施設を併設し、あわせて、見守りやワンストップでの生活相談に対応するサービススタッフを配置するなど、高齢者が安心して暮らせるよう、きめ細かな配慮を施した住まいを提供していくこととしております。
 次に、公社の既存住宅のバリアフリー化等についてでございますが、公社では個々の住戸内において、床の段差解消や介護に配慮した間取りへの変更などの住戸改善を行うこととしており、まず、立川市富士見町住宅の空き住戸を活用したモデル事業を実施し、改修技術やコスト等についての検証を行った上で、その結果を踏まえ、順次展開を図ってまいります。
 また、ご指摘のように、地域コミュニティの活性化を図ることは重要であり、地元自治体や団地自治会等と連携し、高齢者や子育て世帯が支え合うための地域コミュニティ活動を支援することとしております。具体的には、集会所使用料の優遇や講習会に関する情報提供などにより、高齢者同士、また子育て世帯同士が気軽に交流し、情報交換できる環境づくりなどを予定しております。
 公社ではこれらにより、ハード、ソフト両面から、既存住宅における少子高齢対応に向けた取り組みを進めてまいります。
 次に、都営住宅の間取りについてでございますが、都営住宅については、都民の住宅セーフティーネットとしての機能を適切に保持するため、老朽化した住宅の建てかえを推進しております。
 建てかえに当たっては、居住者の世帯構成に応じた規模や間取りの住宅を供給しており、これまでも子育て世帯に配慮し、小規模世帯向け住宅の間取りを見直すなどの改善に努めてまいりました。
 現在、高齢化が急速に進行する中で、自宅での介護を必要とする居住者も増加しており、こうした状況を踏まえて、お尋ねの一DKの住宅については、収納スペースや水回りの配置等を工夫し、介護のための使い勝手の向上を図るなど、間取りの見直しを行ってまいります。
 最後に、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化の確実な実施についてでございますが、建築物の耐震化を進めていくためには、耐震診断を行って、建築物の正確な耐震性能を把握することが必要不可欠でございます。
 また、緊急輸送道路の機能を確保するためには、沿道建築物の倒壊による道路の分断を路線全体にわたって防ぐ必要があり、一体的に耐震化を進めていくことが重要でございます。
 このため、今回の条例では、特に重要な緊急輸送道路沿道建築物の所有者に対して、耐震化に必要不可欠な耐震診断の実施を義務づけ、これにあわせ、診断費用について、平成二十五年までの間、原則として所有者の負担がなくなる新たな助成制度を整備することといたしました。
 耐震診断の費用については、従来の制度における区市町村負担分を都がすべて負担することにより、建築物が立地する区市町村にかかわらず、所有者に対する助成に差が生じないようにいたします。
 また、耐震改修費用についても、区市町村間の差を可能な限り少なくするため、すべての区市町村で従来の所有者負担を軽減するよう、助成制度を拡充し、耐震改修の速やかな実施につなげてまいります。
 さらに、耐震性能が不足する緊急輸送道路沿道建築物の建てかえを促進するため、昨年九月に、容積率を割り増しする総合設計制度を導入しておりまして、条例の制定に合わせ、より一層この制度の活用を図ってまいります。
 同時に、耐震改修や建てかえを着実に進めるためには、区市町村による積極的な取り組みが欠かせないことから、区市町村に対して支援策の活用や充実を強く働きかけてまいります。
 新たな条例に基づく耐震診断の義務づけと、こうしたさまざまな支援策を一体的、総合的に展開していくことで、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を強力に推進し、災害に強い東京を実現してまいります。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

〇財務局長(安藤立美君) 国庫補助負担金の一括交付金化についてお答えをいたします。
 国の来年度予算において、都道府県向けの投資関係補助金等の一部が一括交付金化されることとなりました。地方への配分方法については、当面継続事業が実施できる配分とする一方、各府省の枠にとらわれず、客観的指標に基づく配分を一部に導入し、今後拡大していくとされております。
 制度の詳細がいまだ明らかとなっておりませんが、この先一括交付金化が、国の財源捻出や地方間の財政調整の手段として利用されてはならないと考えております。
 また、都には投資効果の高いインフラ需要が存在しており、我が国の成長を牽引していくためにも、引き続きこのような需要に応じた財源を確保していくことが必要でございます。
 こうしたことも踏まえ、一括交付金化が都にとって不合理な制度とならないよう、国に強く求めてまいります。
   〔知事本局長秋山俊行君登壇〕

〇知事本局長(秋山俊行君) 気候変動への対応についてでございますが、記録的な猛暑や局所的豪雨など、異常な気象は東京でも発生しておりまして、温暖化による気候変動は決して将来ではなく、今まさに取り組むべき課題であるというふうに認識しております。
 都では、現在副知事をトップとするカーボンマイナス都市づくり推進本部のもとに、温暖化適応に関する調査・分析チームを設置し、国や国立環境研究所などと共同して、専門家の意見を交えながら、東京における気候の変化と、それに伴う洪水などの自然災害や熱中症などの健康被害への影響につきまして、スーパーコンピューターも活用しながら予測を行うこととしております。この予測結果を検証し、都民の安全と生活を守るための適応策を、局横断的な体制のもと、総合的な視点から検討してまいります。
   〔下水道局長松田二郎君登壇〕

〇下水道局長(松田二郎君) 下水道事業で取り組んできた汚泥炭化炉と汚泥ガス化炉の導入の拡大についてでございますが、汚泥炭化炉は、一般的な汚泥焼却と比べ温室効果ガスを約八割削減でき、生成した炭化物を火力発電所の燃料として活用することで、資源化率の向上にも寄与するものであります。
 汚泥ガス化炉は、汚泥を蒸し焼きにして生成するガスを用いて汚泥を処理することで、従来の燃料使用量を大幅に削減するとともに、発電も行い、温室効果ガスを約九割削減するものであります。
 導入に当たりましては、立地条件や資源化製品の販路を考慮し、炉の形式を選定しております。
 汚泥炭化炉につきましては、良質な炭化物を生成する技術が確立し、炭化物の販路が確保できたことから、平成十九年より、東部スラッジプラントに導入いたしました。現在、温室効果ガスのさらなる削減が可能な新型の汚泥炭化炉を同プラントに増設する事業を進め、平成二十五年四月の稼働を目指しております。
 さらに、南多摩水再生センターに汚泥炭化炉を新たに建設する予定で、平成二十三年度中の事業着手に向け、設計中でございます。
 汚泥ガス化炉につきましては、我が国初の実用化施設として、昨年七月、清瀬水再生センターに導入いたしました。今後、運転状況の検証を行い、既存の焼却炉の更新時期に合わせて追加導入を検討してまいります。
 今後とも、快適な地球環境を次世代に継承していくため、また引き続きご評価をいただけるよう、さまざまな手法を駆使し、地球温暖化対策に局を挙げて全力で取り組んでまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 資源循環に関します二点のご質問でございます。
 まず、金属資源のリサイクルについてでございますが、レアメタルなどの金属資源のリサイクルを進めることは、我が国産業の国際競争力維持に貢献するとともに、地球規模での環境負荷低減に資するものでございます。
 電気電子製品にはレアメタルなどの金属が使われておりまして、高度な経済都市である東京は世界でも有数の都市鉱山を有しております。このため、都がレアメタルなどの金属資源のリサイクルに取り組む意義は非常に大きいと考えております。
 今後都は、さまざまな電気電子製品を効率的に回収し、その中に含まれる有用な金属資源をリサイクルする方法につきまして、関連業界や区市町村と連携して検討を進め、東京にふさわしい金属資源回収システムの構築に取り組んでまいります。
 次に、水銀の回収と適正処理についてでございますが、水銀による環境汚染を食いとめるため、現在水銀条約の締結についての検討が進められております。活発な都市活動の中で多量の水銀が使われている東京におきましても、水銀の製造、使用、処理の各段階での取り組みが必要でございます。
 その第一歩といたしまして、特に水銀血圧計に水銀の含有量が多いことから、都は、東京都医師会並びに血圧計の大手製造メーカーと連携し、廃棄時の注意を明示したラベルの表示を推進する取り組みをこのたび開始することといたしました。
 さらに今後、水銀に関する専門家、区市町村、製造事業者など、さまざまな関係者で構成する検討会を立ち上げまして、代替製品への転換や、水銀含有製品の回収、適正処理について、積極的な役割を果たしてまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 十三点のご質問についてお答え申し上げます。
 まず、医療体制の確保についてでございますが、都の基準病床数を定める国の算定基準には、年齢階級別人口も加味されており、高齢化に伴って必要となる病床数については一定の配慮がなされております。しかしながら、この基準は全国一律で、都道府県の裁量の余地がなく、高度医療を提供する特定機能病院などに全国から多数の患者が集まるなどの、東京の特殊性を反映することができません。
 このため、都は基準病床数制度について、都道府県が地域の実情を反映できるような仕組みとするよう国に提案要求を行っており、引き続き平成二十四年度末の保健医療計画の改定に向けて国に働きかけてまいります。
 次に、病院や介護施設等の間の連携調整の仕組みづくりについてでございますが、都では今年度、病院から在宅への円滑な移行と在宅療養生活の継続を支援するため、都内三地域において在宅医療連携調整窓口を設置し、病院のメディカルソーシャルワーカーとかかりつけ医、介護事業者等との調整などを行うモデル事業を実施いたしております。
 このモデル事業を踏まえまして、来年度からは区市町村が主体となって、地域包括支援センターや医師会等に在宅療養支援の窓口を設置する事業を新たに実施いたします。また、円滑な転院調整に資するよう、メディカルソーシャルワーカーからの意見を取り入れ、東京都医療機関案内サービス「ひまわり」に、入院患者受け入れが可能な医療機関の情報を追加し、逐次更新をいたしております。
 今後は、さらに患者が病状に応じて適切な医療や介護を受けられるよう、関係機関相互の連携調整の仕組みづくりを進めてまいります。
 次に、シルバー交番事業についてでございますが、この事業は、少子高齢時代にふさわしい新たな「すまい」実現プロジェクトチームにおきまして提案されたものでございまして、高齢者などからの相談にワンストップで対応するとともに、訪問や安否確認などにより、高齢者の在宅生活の安全・安心を確保する都独自の取り組みでございます。
 シルバー交番は、地域包括支援センターなどと連携しながらサービスを提供するものであり、区市町村ごとに人口規模や日常生活の範囲などを考慮して設置することといたしております。来年度末までに六十カ所の設置を予定しており、以降は、平成二十三年度中に策定いたします高齢者保健福祉計画に盛り込み、これに基づき計画的に設置してまいります。
 次に、ひとり暮らし高齢者への生活支援についてでございますが、高齢者の地域における在宅での生活を支えるためには、介護保険サービスだけでなく、買い物など家事援助や日常生活上の困り事への対応など、多様な生活支援が必要でございます。
 今後、都内の六十五歳以上のひとり暮らし世帯は、平成十七年の約五十万世帯から、平成四十二年には約九十万世帯に達すると推計されており、ひとり暮らし高齢者への生活支援の充実がますます重要になってくると認識をいたしております。
 次に、医師緩和ケア研修についてでございますが、都は、がん患者の生活の質を総合的に高めるため、現在のがん対策推進計画期間であります平成二十四年度末までに、研修修了者数を三千八百名とすることを目標として、緩和ケアに精通した医師を育成する研修を実施いたしております。
 この研修は、がん診療連携拠点病院及び東京都認定がん診療病院において実施しており、本年三月末までに約二千四百名が研修を修了する予定でございます。今後、目標の達成に向けまして拠点病院等と連携し、積極的に取り組みを進めてまいります。
 次に、緩和ケア推進に向けた取り組みについてでございますが、都はこれまで、拠点病院、認定病院の取り組みに加えまして、東京厚生年金病院に在宅緩和ケア支援センターを設置し、医療従事者等への専門的助言や在宅療養者、家族を対象とした講演会の開催など、在宅緩和ケアの普及を促進してまいりました。
 来月には、緩和ケアをさらに推進するため、東京都がん対策推進協議会に新たに緩和ケアあり方検討部会を設置いたします。その中では、専門病院とかかりつけ医の地域連携、在宅緩和ケアにかかわる薬局や訪問看護ステーションの確保などについて検討を行うこととしており、今後、この検討結果に基づきまして、治療の初期段階から在宅医療までの緩和ケアが広く提供できるよう取り組んでまいります。また、その成果は、次期のがん対策推進計画にも反映させてまいります。
 次に、地域がん登録についてでございますが、地域がん登録は、がんに罹患した方の診断、治療に関するデータや死亡情報を集約し、罹患率や生存率等を把握する仕組みであり、予防から治療に至るがん対策全般の評価や企画立案に重要な役割を果たすものでございます。
 実施に当たっては、個人情報の保護に万全を期すとともに、収集した情報を正確に登録し、的確な分析を行う仕組みや体制の整備が必要でございます。
 このため、都は、がん登録の専門家を交えた検討会を設置し、個人情報の取り扱いや具体的な登録方法等について検討を進めており、来月、取りまとめを行う予定でございます。
 平成二十四年度からの開始に向け、来年度は専管組織を新たに設置し、医療機関や区市町村に対する説明やリーフレットを活用した都民への普及啓発を行うなど、準備を着実に進めてまいります。
 次に、障害者グループホーム等の充実についてでございますが、都は、障害者の就労支援・安心生活基盤整備三か年プランに基づきまして、整備費の事業者負担を軽減する特別助成を実施し、障害者の居住の場の整備を促進いたしております。
 プランでは、平成二十三年度末までに、グループホーム等の定員を三年間で千六百四十人ふやし、五千五百十四人にすることとしておりますが、昨年十二月現在で四千八百三十二人分を整備しており、目標を達成できるものと考えております。
 最終年度となる来年度は、目標の達成に向けまして、事業者への働きかけをさらに強化するとともに、整備が十分でない区市町村に対して重点的な働きかけを行うなど、積極的に取り組んでまいります。
 次に、障害者の福祉施設での就労についてでございますが、都はこれまでも、区市町村障害者就労支援センター等の就労支援機関を通じまして、福祉施設における障害者の雇用を促進するとともに、職場実習の受け入れを進めてまいりました。
 福祉施設には、洗濯、清掃、事務補助など多様な業務があり、障害特性に応じた仕事の選択が可能であることに加えて、障害に対する職員の理解も深いことから、円滑な受け入れが期待できます。
 来年度は、福祉施設での障害者の就労をさらに拡大するため、指導員の確保など、受け入れ体制の整備に係る経費を新たに補助いたしますとともに、関係団体を通じまして積極的な受け入れを働きかけ、就労経験が少ない若年障害者の雇用を促進してまいります。
 次に、障害者の移動支援についてでございますが、障害者の移動支援は、地域での自立と社会参加の促進に不可欠な、日常生活を支える基幹的なサービスであると認識いたしております。
 しかしながら、現在の移動支援は、障害者自立支援法に基づく区市町村地域生活支援事業の一つとして位置づけられており、国から十分な補助がないため、区市町村に超過負担が生じております。そのことが、区市町村が事業の充実を図りにくい大きな要因となっており、都では十分な予算措置をするよう国に求めてまいりました。
 国は、障害者等に対する全般的な移動支援の充実が必要という観点から、今後、移動支援のあり方について検討を行うこととしており、都としては、事業の充実が図れるよう、引き続き国に強く働きかけてまいります。
 次に、精神疾患への対応についてでございますが、心の不調を感じた場合、まずは内科など一般診療科を受診する傾向が見られることから、精神疾患を早期に発見し重症化を防止するためには、かかりつけ医と精神科医が緊密に連携し、専門的医療につなげることが有効でございます。
 こうした連携を進めるため、都は来年度から、地域ごとに一般診療科医師を対象として、精神疾患や精神保健医療制度に関する研修を行うとともに、一般診療科と精神科の合同症例検討会を実施いたします。
 また、精神疾患の初期症状やかかりつけ医から精神科医への紹介の流れなどを示したリーフレット等を新たに作成し、医療関係者や都民への普及啓発を行ってまいります。こうした取り組みを進め、精神疾患の早期発見、早期対応を図ってまいります。
 次に、精神科医療のネットワークについてでございますが、精神障害者の地域生活を支えるには、症状の変化に応じ適切な医療が受けられるよう、地域の医療機関や保健所、相談支援機関等による連携が重要でございます。
 このため、都は、今年度から二カ年の予定で、地域精神科医療ネットワークモデル事業を、区東北部と南多摩の二つの二次保健医療圏において実施いたしており、現在、各圏域において、地域で対応可能な疾患や診療時間等の情報の共有とその活用方法などについて調査検討を行っております。
 今後、モデル事業の実施状況を評価、検証し、それを踏まえて、精神障害者が必要なときに身近な地域で受診しやすい医療連携体制の整備を進めてまいります。
 最後に、精神障害者に対する訪問型支援についてでございますが、都が来年度から全都で実施する訪問型の支援事業では、医療の中断などにより地域での安定した生活が困難な精神障害者に対し、精神保健福祉センターの医師、保健師等の多職種チームが、区市町村、保健所と連携して支援を行うこととしております。
 今後、お話のように訪問型支援の対象を拡大し、身近な地域で普及していくためには、区市町村、保健所に加え、より多くの医療機関や福祉サービス事業者等の協力が必要でございます。
 このため、来年度は、事例検討会等を通じまして、区市町村等の支援力向上を図るとともに、東京都地方精神保健福祉審議会の議論なども踏まえ、訪問チームの担い手となる医療機関や訪問看護ステーション、相談支援機関等の確保や効果的な連携策について検討してまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、商店街における高齢者の生活支援についてでありますが、商店街は地域の住民が便利で安心して買い物をする場所であるとともに、地域コミュニティの中心として住民の生活を支える重要な役割を果たしております。こうした商店街が、宅配サービスや訪問販売などにより、日用品の購入など高齢者の生活支援を行っている事例は承知しております。
 都では、特定施策推進型商店街事業により、福祉や環境対策など東京全体が直面する重要な行政課題の解決に結びつく商店街の取り組みを支援しております。
 その一方で、ひとり暮らしの高齢者の生活支援については、地域の実情に応じた対応が基本であります。こうした商店街の活用のあり方を、今後、関係各局等と連携しながら検討してまいります。
 次に、映画のバリアフリー化についてでありますが、音声ガイドや字幕などバリアフリーの映画がふえ、目や耳の不自由な方々が気軽に楽しむことのできる環境を整えることは重要であります。
 都は、映画産業振興の視点から、東京国際映画祭やショートショートフィルムフェスティバル・アジアなどの各種イベントの支援を行っております。
 ご指摘のように、近年、字幕つき映画は着実にふえてきたところでありますが、音声ガイドつきの映画は極めて少ない状況といえます。今後、福祉保健局などと連携し、厚生労働省、文化庁、経済産業省といった関係省庁にバリアフリー映画の作成、普及に向けた取り組みを要望するとともに、東京国際映画祭などのイベント関係者に対し、機会をとらえ働きかけを行ってまいります。
   〔病院経営本部長川澄俊文君登壇〕

〇病院経営本部長(川澄俊文君) 三点の質問にお答えいたします。
 まず、駒込病院における放射線治療についてでございますが、これまで駒込病院では、がん細胞に放射線を照射して治療する、いわゆるリニアックを三台活用して放射線治療を行ってきておりますが、今回の改修工事に当たっては、これを充実強化することとしております。
 具体的には、頭部や頸部のがんにピンポイントで放射線を照射できるサイバーナイフのほか、照射位置を確認する画像撮影機能と精度の高い照射機能が一体化された最新鋭の放射線治療機器を導入し、現在保有している三台の機器とあわせて稼働していく予定でございます。これらの治療機器を最大限活用して、患者の身体的負担がより少ない放射線治療を目指すとともに、手術、化学療法を効果的に組み合わせ、症状に応じた高度で専門的ながん医療を、今後とも都民に提供してまいります。
 次に、小児総合医療センターのアレルギー医療についてでございますが、小児アレルギーの治療効果を高めるためには、患者や家族の生活管理に対する指導や相談など、長期の治療計画に基づくきめ細かな対応が必要であり、医師の治療に加え、看護師、栄養士等が専門性を生かしながら、協同して治療にかかわっていくことが重要でございます。
 具体的には、栄養士による食物アレルギー患者への食事指導や看護師によるアトピー性皮膚炎患者へのステロイド使用法の指導、さらには生活環境の管理として、地域の医師、学校などとの連携や家族を含めた患者指導を行い、患者のQOL向上を目指してまいります。それぞれの専門分野が密接に連携し、チーム医療を行うことで、総合的な医療提供体制を強化してまいります。
 最後に、児童思春期看護認定看護師の配置育成についてでございます。
 小児精神医療においては、精神科分野に卓越した看護実践や指導、コンサルテーション能力等を習得した専門看護師及び認定看護師の存在が重要でございます。こうした専門性の高い看護師を育成するため、都立病院では東京看護アカデミーを活用し、看護職員のキャリアアップを図るシステムを構築しているところでございます。
 現在、家族を含めた治療を支援するための知識と技術を持つ精神科専門看護師及び児童思春期精神看護分野の認定看護師の資格取得のため、看護職員を専門の教育、育成機関に派遣して人材育成を行っているところであり、今後、その活用を図ってまいります。
〔青少年・治安対策本部長倉田潤君登壇〕

〇青少年・治安対策本部長(倉田潤君) 自転車政策についてでございますが、自転車に関する施策につきまして、都は、警視庁等の関係機関、区市町村とともに、安全教育の実施、交通法規の遵守の徹底、走行空間の整備などを推進しております。
 しかしながら、都内においても、近年、自転車対歩行者の事故は増加傾向にあります。ご指摘のとおり、行政のみならず民間を巻き込んだ取り組みにより、施策の再構築が必要と考えておりますが、ご提案の内容の条例の制定に関しましては、道路交通法との関係、既存の類似の登録制度との関係など、国や区市町村も含めて検討すべき多くの課題がございます。
 このため、まず、官民の関係機関が連携し、自転車をめぐる諸問題を解決するため、条例制定についての課題も含め、自転車の総合的な政策の検討を行ってまいります。

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