平成二十三年東京都議会会議録第二号

   午後三時四十一分開議

〇副議長(鈴木貫太郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百十三番三宅茂樹君。
   〔百十三番三宅茂樹君登壇〕

〇百十三番(三宅茂樹君) 平成二十三年第一回東京都議会定例会に当たり、東京都議会自由民主党を代表して質問いたします。
 さて、今をさかのぼること百年前、西暦一九一一年、明治四十四年、日本は江戸末期に結んだ不平等条約の改正に成功し、関税自主権を回復しました。真の意味で欧米列強と対等な国になったのであります。その後、日本は、一度は敗戦によって焦土となりましたが、日本民族の底力を発揮して奇跡の経済発展を遂げ、世界第二位の経済大国になりました。
 しかし、今日、こうした輝かしい歴史を持つ日本に落日が迫っている現実から目を背けることはできません。若者は就労の道が狭められ、サラリーマンは会社の将来を憂い、中小企業は独立自営の機会と意欲を失いつつあり、高齢者は社会保障制度が自分を本当に守ってくれるのか、不安を抱えております。
 さらに、GDPで中国に抜かれ、世界第三位に転落したとの報道もなされております。もちろん、中国とは人口も国土面積も異なり、単純な比較は避けるべきです。しかし、看過できないのは、中国が国際社会のルールを無視し、我が国固有の領土である尖閣諸島をねらう強欲さを示してまでも、経済発展を図ろうとしていることであります。
 このゆゆしき問題に対し、我が国政府は毅然とした態度をとることが全くできず、アジア諸国からは、国家としての基本的な姿勢に疑問のまなざしが投げかけられております。それゆえ、日本の存在感はアジアにおいて急速に低下しております。
 日出る処の天子、書を日没する処の天子に致す。つつがなしや。これは、聖徳太子が隋の皇帝煬帝に送った親書の有名な一文であります。我々は、当時の大帝国隋に対して対等の外交を求めた聖徳太子の志を学ばねばなりません。
 今日の日本は、頼みの経済力も陰りが出て、もはや日出る処の国としての勢いを失いつつあり、決然とした国家としての姿勢もとれておりません。また、政治が目先の利害にとらわれ、国民に安易におもねり、国家の未来図を示すことができなければ、国民は、将来に対し大きな不安を抱くことは当然です。この国政の現状について、知事の所見を伺います。
 全く頼りない国に対して、都政では、議会と知事とが車の両輪になって「十年後の東京」計画を未来図として、先進的な政策を着実に展開しております。今般、実行プログラムを改定し、雇用対策や災害対策といった喫緊の課題を緊急重点事業と位置づけ、果敢に推進していくことは高く評価をしております。さらに、「十年後の東京」が計画期間の半ばに差しかかる中、誤りなくかじをとるために、東京の将来像を将来への指針として明らかにしております。
 国に何ら期待ができない状況にあって、都民、国民に希望を指し示すことができるのは都政であり、まさに知事が再三述べられているように、東京が倒れれば日本が倒れるのであります。「十年後の東京」は、今や、日本の活路を切り開くための計画でもあります。日本の浮沈をも占う東京の将来について、知事に所見を伺います。
 平成二十三年度予算案は、都民の不安を払拭する事業に迅速に取り組みながら、東京の新たな成長に向けた施策についても、これを確実に進めるものとなっております。
 特に目を引くのは、景気回復の出口が見えない中、我が国の活力を取り戻すために、雇用創出や経済成長の促進につながる施策を展開している点です。中でも、投資的経費を七年連続で増加させ、昨年度から三・三%増の八千八百四億円とし、東京の都市機能をさらに向上させるインフラ整備などを着実に行っていくとしたことは、二年続けて公共投資を減らし、ばらまき公約の実現に奔走する、成長戦略とは名ばかりの政府の対応とは極めて対照的であります。
 投資的経費は、雇用や成長を十分に踏まえた生きた金の使い道であり、厳しい状況の今こそ、真に必要な事業は積極的に推進すべきです。もとより、投資的経費のほかにも各分野へのきめ細かい配慮が随所に図られるなど、まさに我が党のこれまでの主張と軌を一にする予算であると考えます。
 そこで、現下の状況を見据え、どのような思いで二十三年度予算を編成されたのか、知事に伺います。
 国は、財政運営面においても、戦略のない帳じり合わせに終始しているようです。鳴り物入りで始めた事業仕分けは、今回の予算編成で三千億円の効果しか得られず、苦肉の策として、埋蔵金や税収を超える国債の発行で収支不足を穴埋めするありさまです。将来に負担を先送りするだけの、その場しのぎの財政運営に、我が国の行く末を案じざるを得ません。
 一方、都においては、将来を見据えた財政の健全性をしっかりと維持しております。財政環境の大きな好転が期待できない中、基金の取り崩しを最小限に抑え、残高を九千六百三十五億円確保するなど、将来にわたり都政の使命を果たし得る強固な財政基盤を堅持するものとなっております。
 このように、二十三年度予算が積極的に施策を展開しつつ財政の健全性を堅持することができたのは、これまで知事が我が党とともに手を携え貫いてきた堅実な財政運営に、引き続き揺るぎなく徹したゆえにほかなりません。
 そこで、そうした姿勢に基づき、今回の予算編成では、強固な財政基盤を堅持するために都はどのように取り組んだのかを伺います。
 次に、危機管理について質問します。
 危機は突然として我々を襲います。リスクを予想し、被害を最小限に抑えていくことは、都市を経営する上で極めて重要であります。石原知事ほど、危機管理に力を入れている知事はありません。FEMA、DMAT、ビッグレスキューと、数々の政策が実現しており、就任以来一貫して備えを固めてこられました。
 そして今回、緊急輸送道路の沿道建物や緊急豪雨対策でも、新たな施策を講じることは高く評価いたします。都市そのものを災害に強く生まれ変わらせなければなりません。
 もっとも、危機管理ほど、いうはやすく行うはかたしな政策はありません。都民、国民の皆様に、危機を本気で意識していただかなければ事業は進まないのであり、政治のリーダーシップが問われるのであります。
 我が党も、東京の危機管理の強化に全力で当たってまいる所存でありますが、改めて知事に危機管理への思いを伺います。
 震災対策について伺います。
 東京に一たび大地震が起これば、その被害は甚大です。とりわけ、建物の倒壊により緊急輸送道路が遮断されれば、災害時の避難、救急活動、復旧、復興の動脈としての機能を果たせなくなり、その影響ははかり知れません。
 我が党はかねてより、大地震から都民の安全や首都東京の都市機能を確保するため、一刻も早く緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を促進するよう、踏み込んだ施策を講じるべきと主張してきました。これを受け、都は、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を強力に推進するための新たな条例案を本定例会に提案しました。
 緊急輸送道路沿道には、民間のオフィスビルやマンションも数多くあります。我が党は、耐震化の推進には、費用負担の軽減を初めとする支援策の充実強化が不可欠であると主張してきました。民間建築物に対する支援策の考え方と概要について伺います。
 次に、豪雨対策について伺います。
 昨年末からことしにかけて、オーストラリアなど世界各地で発生している記録的な豪雨による大規模な災害は、近年の地球規模の気候変動の一例といえるのではないでしょうか。こうした豪雨が、都市機能が高度に発達した首都東京を襲えば、都民の生命財産はもとより、社会経済への影響も甚大です。
 このような状況を踏まえ、都では、昨年十二月、「十年後の東京」への実行プログラムで、緊急重点事業の一つとして緊急豪雨対策を位置づけました。我が党は、かねてより治水対策の促進、拡充を主張していますが、さらなる豪雨対策に取り組み、都民の安全・安心を確保すべきであります。
 そこで、まず緊急豪雨対策における河川事業の取り組み状況について伺います。
 一方、都市に網の目のように張りめぐらされ雨水を排除する下水道は、豪雨対策における基幹的都市施設であり、浸水対策事業を強力に促進する必要があります。この観点から、緊急豪雨対策では、地下街対策として銀座地区など五地区で貯留管などの整備を前倒しするとともに、神田川、石神井川、白子川の三流域においても、雨水排除能力を増強するための下水道管等の整備を前倒しするとのことです。
 そこで、これら下水道事業における緊急豪雨対策の取り組み状況について伺います。
 次に、東京都暴力団排除条例案について伺います。
 昨年の第四回定例会において、東京都の暴力団情勢が予断を許さない厳しい現状にある旨を伺いました。この東京都内が暴力団の大きな資金獲得の場となっている現状を踏まえ、都内の事業活動から暴力団を締め出すという強い意志を示すことが、今こそ必要と考えます。
 そのような中で条例案第二十四条では、事業者が利益供与をすることが禁止される対象者については、暴力団員にとどまらず、より広く規制対象者とされていますが、このように規制対象者を規定した趣旨、背景について、警視総監に所見を伺います。
 また、規制対象者に対して利益供与をした事業者については、勧告、公表、命令、罰則の制裁を科すこととされていますが、このように段階的な制裁手続を設けた趣旨、目的について警視総監に伺います。
 さらに、全国的に暴力団の排除に関する条例が制定される中で、警視庁独自の提案として、事業者による違反事実の自主申告を規定した適用除外という規定がありますが、この適用除外を設けた趣旨について、警視総監の所見を伺います。
 次に、福祉、医療について伺います。
 まず、児童虐待について伺います。
 児童虐待防止法施行から十年が経過しましたが、都が受けた虐待の相談件数は、平成二十一年度には、法施行前の二・六倍の三千三百六十六件となるなど、急増しています。また、昨年国が公表したところでは、平成二十年度は全国で百を超える死亡事例が報告されており、救いの手が届かないまま、子どもの命が失われることがあってはなりません。
 都はこれまでも、児童相談所の体制強化や区市町村における先駆型子ども家庭支援センターの設置等、先進的な取り組みを進めてきました。
 我が党は、急増する児童虐待へのさらなる対応が急務と考え、さきの第四回都議会定例会において、虐待防止に向けた取り組みの強化を求めました。
 知事は施政方針表明において、虐待対策の強化に取り組むと述べていますが、虐待防止に向けた知事の決意を伺います。
 虐待防止のためには、児童家庭相談の一義的窓口である区市町村への支援の充実も急務です。区市町村の児童虐待対応力向上に向けた具体的な取り組み内容について、児童相談所における機能強化とあわせ、伺います。
 児童虐待問題は、かけがえのない子どもの命と生活を守るために、社会全体で取り組むべき課題です。我が党は都とともに、この問題に全力で取り組んでまいります。
 次に、保育サービスについて伺います。
 現在、国は、子ども・子育て新システム検討会議において、幼保一体化を含む新たな次世代育成支援のための包括的、一元的なシステムの構築について検討を行っています。制度、財源がさまざまに分かれている現在の子ども、子育て支援施策を再編する大きな制度改正となるにもかかわらず、現政権が政治主導で行っている検討は遅々として進まず、迷走しています。制度の詳細はいまだ不透明ですが、都独自の基準により設置運営されている認証保育所が正当に位置づけられないのではないかと懸念する声があります。
 我が党が積極的に支援してきた認証保育所は、制度創設後十年目を迎え、都民の広範な支持を得て定着していますが、国はこのような現実を直視していません。
 今後とも、認証保育所が保育を必要とする都民のニーズにこたえるサービスを安定して提供していくよう支援すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、子ども手当について伺います。
 政権党が目玉施策としてマニフェストに掲げた子ども手当は、何ら財源の裏づけもなく、金額の根拠も不明であるなど、基本的な制度設計さえ満足にされていないことが明らかとなっています。それにもかかわらず、ただ単にマニフェストに掲げた施策だからとして固執し、ばらまきを行うという政府の姿勢は、まさに無責任としかいいようがありません。
 国は昨年度、その財源については、二十二年度限りの暫定措置として地方負担を残し、平成二十三年度は改めて検討するとしていました。ところが、性懲りもなく来年度も地方負担を継続することとしています。
 このように、地方負担を残したまま子ども手当を継続することについて、都の所見を伺います。
 次に、高齢者施設における防火安全対策等について伺います。
 近年、群馬県の未届け有料老人ホームや札幌市の認知症高齢者グループホームで痛ましい火災事故が続きました。移動等に支援が必要な要介護高齢者を受け入れる施設においては、防火安全対策に万全を期すことが重要であり、都は、独自の補助制度により、グループホームにおけるスプリンクラー等の設置を促進しています。
 また、要介護高齢者を宿泊させている通所介護事業所が増加していることから、先般、消防設備等について緊急調査を行い、現在、消防法に基づく立入検査を実施するとともに、国に対して必要な法整備を求める緊急提案を行ったと聞いています。
 高齢者施設における防火安全体制等の現状と、法が整備されるまでの間の対応も含め、今後の都の取り組みについて伺います。
 次に、東京都住宅供給公社の住宅を活用した少子高齢化対策について伺います。
 我が党はかねてから、少子高齢化対策に力を入れておりますが、本格的な少子高齢社会に対応するためには、保育、医療、雇用、住まいなど、あらゆる分野における総合的な取り組みが必要と考えています。昨年の予算特別委員会では、高齢者や子育て世帯の住まいの確保という観点から、公社の賃貸住宅における少子高齢社会対応の必要性について訴えたところですが、公社においてさらなる検討を進めていくよう、都としても働きかけていく旨の答弁がありました。
 その後、検討が進んでいることと思いますが、例えば、公社住宅の建てかえの際に生み出す創出用地や保有するオープンスペースを活用し、高齢者向けの住宅等を供給していくことも可能ではないかと考えております。
 今後の公社住宅における少子高齢社会に対応するための取り組みについて伺います。
 次に、障害者施策について伺います。
 平成十八年の障害者自立支援法施行により、障害者が必要とするサービスを受けられる体制が整備されました。また、法施行後も、我が党は利用者負担の大幅な軽減措置や事業者経営の安定化のための報酬改定など、円滑な実施に向けた政策を進めてきたところです。現在、国は、障害者自立支援法にかわる新たな法制度を検討していますが、その議論とは別に、法制度を充実する取り組みは不可欠です。このため、我が党は、利用者の応能負担の導入や重度の視覚障害者の移動支援を法定給付とすることなど、現行の課題を解決する法改正を一昨年来提言しており、昨年十二月、その改正が行われました。
 改正法は、平成二十四年四月までに順次施行することとされておりますが、具体的な改正内容は明らかになっておりません。利用者のためにも円滑に実施していくことが望まれますが、都の対応について伺います。
 次に、精神障害者施策について伺います。
 都は今年度、医療中断などにより地域での安定した生活が困難な精神障害者に対し、医師や保健師等の専門職チームが訪問支援するモデル事業を実施しています。本事業により、自発的に通院するなど効果も出ていると聞いており、昨年十二月の東京都地方精神保健福祉審議会でも指摘されたように、この取り組みを一層推進すべきと考えます。
 また、審議会では、地域生活を継続するためには、症状が悪化する前に短期間入所できる施設の確保も必要とされています。
 都は、モデル事業の成果や審議会の意見を踏まえて、精神障害者の地域生活支援に今後どのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
 次に、地域生活定着支援センターについて伺います。
 矯正施設の退所者が、社会復帰を果たし地域で暮らしていくためには、さまざまな支援が必要であり、特に、高齢であったり障害を有する場合には、福祉的な支援が重要となります。国はこうした退所者を支援するため、地域生活定着支援センターを各都道府県に設置する方針を、平成二十一年七月に打ち出しました。
 我が党は、事業の理念、目的には賛同するものの、実施に当たっては慎重に対応すべきと昨年の第一回定例都議会で指摘しましたが、都はこれを踏まえて準備を進め、現在、来年度の設置に向けて運営事業者を公募しているところです。
 本事業を円滑に実施していくには、関係機関の理解と協力が不可欠と考えますが、今後、センターではどのように事業を進めていくのか、所見を伺います。
 次に、救急医療の東京ルールについて伺います。
 都は、平成二十一年八月から東京ルールに基づく搬送体制を実施しています。我が党は昨年の第二回定例会では、都全域で早期に実施するとともに、ルール導入後の救急医療の実態を把握すべきである旨を提言しました。これを受けて、昨年七月、全都での運用が開始され、地域救急医療センターについても、開始当時の二十六カ所から五十九カ所に指定を拡大するとともに、昨年九月には、一週間にわたって救急搬送の実態調査が実施されました。
 そこで、この調査結果及び今後の課題に対する認識について伺います。
 次に、都立病院改革について伺います。
 過日の本会議場で、包括外部監査人からの報告では、財務処理上の課題が取り上げられておりましたが、都立病院改革そのものは、東京ERの運営による救急医療の充実や、東京医師アカデミーによる質の高い医師の確保、育成体制の確立など、着実に実行されてきております。さらに、新型インフルエンザなどの新たな課題や、医療を取り巻くさまざまな環境変化にも柔軟に対応してきたところです。
 そういった取り組みを結集し、昨年三月に開設した多摩総合医療センター及び小児総合医療センターにおいては、高度な医療機能を備えた多摩地域の医療拠点として、重要な役割を果たしていることを高く評価しています。
 そして、駒込病院は、がん・感染症医療センターとして、松沢病院は精神医療センターとして整備が進められており、来年度にはその最終段階を迎えます。我が国のフロントランナーとして認められているこの二つの病院のオープンで、都立病院改革も大きく進み、医療機能も飛躍的に強化されるものと期待しています。
 そこで、駒込病院と松沢病院の整備により、どのように医療機能が強化されるのか伺います。
 次に、看護師確保対策について伺います。
 都が発表した平成二十三年から二十七年までの看護職員需給見通しによると、二十三年は約二千六百人の不足ですが、二十七年には需給が均衡すると推計されています。少子化の進行により若年人口が減少する中、養成数の大幅な増加は期待できず、一方、看護職員は離職者が多い現状を踏まえると、今働いている看護師がやめない環境づくりを進める必要があります。
 看護師の圧倒的多数は女性であり、結婚や出産などにより職場を離れるケースが多い上、医療技術や医療機器の進歩が非常に速く、一たん現場を離れると、復帰の負担は非常に大きいと聞いています。
 都内の潜在看護師数は約五万人といわれており、その掘り起こしと職場復帰が、看護師確保を進める上で重要なかぎを握っています。需給見通しの最終年の平成二十七年は、四人に一人が高齢者となる超高齢社会に突入し、医療と福祉の充実がますます重要な課題となります。需給均衡を着実に実現するため、どのように確保に取り組んでいくのか、今後の看護師確保対策について伺います。
 次に、新型インフルエンザ対策について質問いたします。
 一昨年、世界各地で発生した新型インフルエンザは、ウイルスの毒性が低く、当初懸念したほどの被害はありませんでしたが、グローバル化の中で瞬く間に世界規模に拡大した新型インフルエンザとして、数多くの教訓を得ることができました。
 しかし、国においては、ワクチン接種の優先順位や接種回数のたびたびの変更などで、現場や国民生活に混乱を来した場面もありました。
 一方、都は、都民への的確な情報提供とともに、重症化しやすい未就学児などに対し、国に先駆けて接種時期の前倒しを行うなど、刻々と変わる状況に応じ、区市町村、医師会など関係機関と連携しながら円滑に対応してきました。
 この秋冬も、渡り鳥への感染や、渡り鳥経由の養鶏場における鳥インフルエンザ発生が報告されており、ウイルス変異による新たな新型インフルエンザ発生への警戒は、引き続き必要です。今後、新たな新型インフルエンザが発生した際には、流行状況に応じ、サーベイランスや相談、防疫体制など、さまざまな分野において迅速かつ的確な対応をとることが必要です。
 都は、平成二十年に新型インフルエンザ発生に備えガイドラインを作成しましたが、今回の教訓を踏まえ、このガイドラインについて、保健医療体制全般にわたる見直しを行うべきと考えますが、所見を伺います。
 まちづくりについて伺います。
 東京の幹線道路ネットワークの整備は、交通渋滞の解消や環境改善、防災や安全性の向上のみならず、日本経済を活性化させ、国際競争力を強化するために必要不可欠であります。とりわけ、外環道は整備効果が絶大で、その便益が国全体に及ぶ幹線道路であり、閉塞した経済状況のもと、その早期完成がこれまでにも増して強く求められています。
 このため、我が党は、都議会外かく環状道路建設促進議員連盟と連携し、外環の早期整備の実現に向け、国などへの積極的な働きかけを行ってきました。明日、二月十六日には、都民や沿線区市、地元及び産業界などが一体となって、外環の早期着工に向けた都民の集いの開催が予定されており、外環の早期完成に向けて、機運は一層高まっております。
 そうした中、現地においては、今年度、道路区域が決定され用地取得が進められるなど、事業は大きく踏み出していますが、一方で、整備手法が未決定であり、来年度予算についても不透明な状況にあります。
 このような状況を打開するために、国に対してどのような働きかけを行い、また、外環の早期完成に向けてどのように取り組むのか、知事の決意を伺います。
 都内には、いまだ約千百三十カ所もの踏切があり、交通渋滞や市街地の分断による都市の活力の低下を招く要因となっています。数多くの踏切を同時に除却する連続立体交差事業は、これら課題を抜本的に解決する極めて効果の高い事業であり、我が党では、これまでも幾度となく本事業の推進を要請してまいりました。
 昨年、京浜急行本線では、環状八号線に唯一残された踏切が除却され、JR中央線では、三鷹駅から立川駅間の全区間において高架化が完了しました。これらの事業に引き続き、連続立体交差事業をより一層推進していくことが不可欠であります。
 そこで、連続立体交差事業の推進に向けた都の取り組みについて伺います。
 次に、歩行空間の整備について質問いたします。
 歩道は、子どもや高齢者、車いす使用者など、すべての人が利用する、日々の都民生活に欠かせない空間であります。安全で安心して通行できる快適な歩行空間を形成するため、歩道から電柱をなくし、段差や勾配の改善を図るとともに、歩行者と自転車の安全対策も大変重要です。
 直近の都政モニターアンケートを見ても、都の施策展開への関心で自転車走行空間の整備、高齢者への対応、無電柱化の推進が上位三位を占めており、歩行空間の整備に対する都民の期待の高さがうかがえます。こうした都民ニーズにどうこたえていくのか、都の取り組みについて伺います。
 次に、屋外広告物を活用したエリアマネジメント活動の支援について伺います。
 平成二十年の第四回定例会において、我が党は、屋外広告物条例に基づく規制を緩和し、商店街の街路灯に企業広告の表示を認めて、その広告収入を商店街の活性化の取り組みに充てることを提案しました。
 これを受け、都が提案を踏まえた仕組みを創設したことから、これを活用して自主財源の確保を図る商店街も出てきました。このように規制緩和をうまく活用し、地域の自主的な活性化の取り組みを支援することは、まちづくりを進める上で効果的であるため、今後は、商店街に限らず、より適用範囲を広げていくことが重要であると考えます。
 特に近年、住民、企業などが、みずからのまちを、みずからの手で維持管理などを行うエリアマネジメント活動に取り組む地域がふえてきました。こうした活動に対して、屋外広告物の規制緩和を活用した支援を行うことは極めて有効であると考えますが、所見を伺います。
 産業対策について伺います。
 我が国の経済は依然として厳しい状況が続いておりますが、経済のかじ取りを担うべき国はいまだ有効な対策を講じることができず、そのため都民は、未来に明るさを見出せずにおります。
 しかし、こうした状況をいつまでも厳しい、厳しいと嘆いていても始まりません。今こそ我々は将来を見据え、歩を前に進めていかなければならないのであります。都内の中小企業は、それぞれにみずからが持つ高度な技術を一層高め、すぐれた新製品を生み出すべく日々懸命に努力しております。こうした中小企業のたゆまぬ努力にこたえ、必要な施策、支援を行い、中小企業の成長を促進することで、東京に新たな発展を実現させなければなりません。
 平成二十三年度予算案では、中小企業対策の予算は、厳しい経済情勢にあって不安を募らせる都民や中小企業の要請に力強くこたえるものであり、これは、これまでの現場に根差した我が党の活動から把握した切実な要望にこたえるものと、高く評価するものであります。
 都が行う産業施策は、東京の産業特性を踏まえた地に足のついたものであり、都政の大きな柱の一つといえます。こうした施策の展開によって、東京の経済に活路を開くことが何よりも大切であります。
 そこで、産業施策についての知事の基本的な考え方を伺います。
 将来の産業発展のためには、足元の対策にも万全を期すことが必要であります。しかるに、昨年夏以降の急激な円高は、下請企業への単価切り下げや発注減少など、ものづくり産業を初めとする都内中小企業に大きな打撃を与えており、数多くの中小企業の経営が行き詰まることが危惧されています。
 この状況を踏まえ、我が党は昨年十一月に、円高対策の実施を求める緊急要望を行い、都は、速やかに資金繰り対策や経営相談、下請対策などの緊急円高対策に着手しました。これらの施策は、企業現場の切実な声にこたえた効果的な支援策であります。現在まで、円高は既に半年以上に及んで長期化の様相を示しております。こうした中で、さらに都は、来年度も円高対策の充実を図っていくべきと考えますが、見解を伺います。
 また、平成二十年秋のリーマンショック以降、中小企業の資金繰りを支えてきた緊急保証制度は、幅広な業種を対象に一〇〇%保証を実施してきましたが、現政権は、二十二年度末をもってこれを終了し、来年度からは、例えば、主に零細事業者が営む飲食や食料品小売りなど、生活に密着した業種についても一〇〇%保証の対象外とするとしております。これは、国の中小企業に対する金融支援の後退のみならず、都の制度融資も大きな影響を受けることになります。
 都内中小企業の依然として続く厳しい経営環境を考えれば、緊急保証制度終了後においても都内中小企業の資金繰りに不安が生じないよう、最大限の取り組みを行うことが東京都に期待されているわけであります。
 都は来年度、制度融資を初めとした中小企業に対する金融支援にどのように取り組んでいくのか伺います。
 緊急的な対策を的確に実施することに加え、中小企業が売り上げや収益を着実に伸ばしていくことができるよう、新しい販売先を確保する努力を行政としてしっかり支援することも重要と考えます。
 既に国内市場が成熟して、競争力のある商品を売り出しても、国内で安定した業績を上げることが難しくなっている中、アジアを初めとする海外市場に活路を見出そうとする中小企業は確実にふえております。こうした企業の多くは、購買力が高まったアジアでの取引拡大に高い関心を持ちつつも、現地での取引相手の情報が乏しかったり、国内とは異なる法制度や商習慣に対応できずに、具体的な商談に踏み出すことができずにいる実態があります。
 都は今年度から、海外市場での販路開拓を支援するため、商取引に当たり必要となる情報や知識を提供するなどの取り組みを始めましたが、こうした施策は速やかに充実を図ることが不可欠であります。特に、円高の進行などにより、中小企業はさらに厳しい状況に置かれており、海外販路の拡大に対する支援は待ったなしの緊急度の高いものとなっています。
 そこで、都は来年度、中小企業の海外における販路開拓に向けてどのような支援を行っていくのか伺います。
 次に、商店街の振興について伺います。
 商店街は、地域住民の消費生活を支えるだけでなく、地域コミュニティの核として重要な役割を果たしています。各地の商店街では、まちおこしや文化の継承を目指すさまざまなイベントを通じて、地域のにぎわいの創出に取り組むとともに、防犯カメラを設置し、地域を挙げた犯罪防止の取り組みや、東京消防庁と協定を締結し、地域ぐるみの防火安全体制を強化するなど、安全で安心して暮らせるまちづくりの実現に向けた努力を数多く実施しています。
 こうした商店街を後押しするために、都は、平成十五年度から新・元気を出せ商店街事業を創設し、商店街活性化のための意欲ある取り組みを幅広く多角的に支援してきました。最近では、都政の重要なテーマである地球温暖化対策についても、街路灯のLED化を支援することで多くの商店街で具体的な取り組みが着実に広がっております。
 人と人とのつながりが希薄化した地域社会において、身近な触れ合いを大切にする商店街は、住民の暮らしに欠かせないライフラインとしての役割を今後ともしっかりと果たしていくことが期待されており、都もそれを支援すべきと考えます。
 都の商店街支援は、地元商店街からのさまざまなニーズを受けとめながら、その時々の社会経済の状況に適切に対応できるようにつくり上げてきた取り組みであり、我が党がどこよりも力強く一貫して求めてきたものであります。
 これまでの都の商店街施策の展開の考え方を踏まえながら、これからの商店街振興にどのように取り組んでいくのかについて伺います。
 次に、中小企業の人材確保と新卒者対策についてお伺いいたします。
 東京の将来の発展を担うのは今の若者であり、次代を担う若者が夢と希望を持てるような社会をつくっていくことが重要です。
 しかし、先行きが見えない状況が続く中、若年者が安定志向に流れ、中小企業になかなか目が向かない現状があり、その一方で、若年者を採用したいと考えている中小企業からの求人倍率は四倍を超えるなど、中小企業にとって人材の確保が十分に進んでいない状況が続いております。
 現在の若年者の就職をめぐる厳しい状況は、裏を返せば、中小企業にとって優秀な人材を採用する可能性がより一層広がるという意味で、好機ととらえることができます。我が党は、こうした中小企業の魅力を若年者が認識し、厳しい雇用環境の中、強い意志を持って就職を決め、社会的に自立していくことが重要であると指摘し、両者の橋渡しをきめ細かく行うことを求めてまいりました。
 都はこの主張を受け、これまでも中小企業の人材確保のために中小企業が持つ魅力の発信に努めるとともに、合同面接会の実施などによって、中小企業と若者とを結びつける取り組みを実施してきました。
 しかし、若年者の就職状況が一層厳しくなる中で、やる気のある若者の職業的自立を促進するためにも、また中小企業の発展を促すためにも、これまでより踏み込んだ方策を打ち出すべき時期に来ているものと考えますが、知事のご所見を伺います。
 若年者雇用のうち、特に新卒者の就職が深刻な問題となっています。昨年十二月時点の大学卒業予定者の就職内定率は六八・八%で、十月の発表に引き続き過去最低の水準となりました。十二月の時点で七割に到達しなかったのは、調査開始以来初めてのことです。
 前途ある意欲に満ちた若者が就職できないという事態に、手をこまねいているわけにはいかないことから、しごとセンターなどで従来から実施している支援策だけでなく、さらに一歩踏み込んだ対策の実施が急務と考えます。
 今こそ、新たな就職氷河期世代を生み出すことのないよう、学生はもちろん、リーマンショック後に就職できずにいる既卒者も含めて、優秀な人材を求める中小企業への就職につながるよう、より実効性の高い具体的な支援策を進めることが重要となっていると考えますが、所見を伺います。
 次に、都市農業の振興について伺います。
 我が党は、これまでも都民に安全・安心な農産物を供給するとともに、都民生活に潤いを提供する都市の貴重な農地については、できる限り保全に努めるべきと強く主張してきました。しかし、いまだに東京の農地は、相続に伴う農地の処分や農業後継者の不足などにより、減少傾向に歯どめがかからない状況にあります。
 また、長引く景気の低迷により、産業全体が苦戦を強いられる中、都市農業についても農産物価格の低迷などにより、農家の経営は厳しい状況に置かれています。
 一方、都内産農産物の地産地消に対する都民の期待の高まりや、各地域で行われている地場農産物を活用したまちおこしの取り組みなど、都市農業にとって明るく喜ばしい話題も多く聞かれるようになりました。
 こうした変化を踏まえ、将来に向け、都民や農業者が東京の農業に明るい展望を持てるよう、新たな発想のもとに、東京の農政を再構築する必要があると考えますが、所見を伺います。
 次に、地球温暖化対策について伺います。
 地球温暖化対策は、将来に向け、我々世代が責任を持って果たさなければならない重要な課題であり、北欧一国並みのCO2を排出している東京は、率先して削減に取り組んでいく責務があります。CO2を大幅に削減しようとするとき、省エネルギーを進めるとともに、再生可能エネルギーの大幅な導入が不可欠です。
 都が昨年度から実施している太陽エネルギー導入補助は、国による太陽光発電の補助制度を再開させ、余剰電力の新たな買い取り制度を創設するなど、全国的な市場拡大の先導的役割を果たしました。
 今後、さらなる太陽エネルギーの利用拡大を進める上では、エネルギー効率が高いにもかかわらず導入が進まない太陽熱利用の普及が重要であり、都はその普及を牽引していくべきと考えます。知事の所見を伺います。
 この四月からは、都市型キャップ・アンド・トレード制度の義務履行手段として排出量取引が開始されます。削減義務のない中小規模事業所にも取引参加を可能とするなど、温暖化対策と経済が両立する新しいモデルのすそ野を広げる期待も高まっています。
 この制度を円滑に機能させるため、都は、中小規模事業所に対する省エネ促進・クレジット創出プロジェクトを開始しました。このプロジェクトは、中小企業者の省エネ対策を促進するとともに、CO2の削減量を排出量取引に利用可能な中小クレジットとして創出し、さらには、経済への波及をもたらす三方得の仕組みで推進していくべきと考えます。
 そこで、改めて環境施策としての視点から、本事業を開始した主たるねらいと実績について伺います。
 太陽熱利用の拡大や省エネ設備の更新など、都が地球温暖化対策を強力に推進していくことで、新たな環境ビジネスや新技術の創出など経済に原動力を与え、CO2排出量を半減させるビルが建設されるなど、事業者の取り組みも着実に進んできております。
 このように、都の施策と連動した企業の先進的な事例を共有し拡大していくことは、CO2の削減の実現とともに、経済の活性化にもつながると思います。都の考えを伺います。
 次に、下水道事業における国際展開について伺います。
 昨年の第四回定例会において、我が党の質問に対して、積極的に下水道事業の国際展開を推進するとともに、先進的、実用的な個別技術については既に海外展開を進めているとの答弁がありました。
 下水道の分野においても、技術大国日本をアピールし、日本経済の活性化につなげるため、国内企業とも歩調を合わせ、さらに実績を積み上げていくことを期待したいと思います。
 その際、重要なのは、下水道に対するニーズは国や地域によってさまざまであるということです。都でも、海外のニーズ調査や情報収集などを行っていると聞いていますが、今後、日本の有する技術力やノウハウを最大限発揮できるよう、相手国のニーズなどをしっかりと把握した上で、実情に即した具体的な取り組みを推進していくべきであると思います。
 そこで、海外ニーズ調査等も踏まえ、下水道事業における国際展開の進捗状況と今後の取り組みについて伺います。
 次に、水道事業の国際展開について伺います。
 我が党は、世界の水事情の改善と日本経済の活性化のため、都に対しさまざまな提案をしてまいりました。都では、民間企業へのヒアリング、国などへの要請活動、ミッション団の派遣など精力的に施策を推進しており、大変評価しております。
 こうした取り組みにより、今や国を初め、他の自治体や民間企業の動きも活発化し始めておりますが、アジア諸国は四十億人の人口を抱えており、その市場も非常に大きく、我が国一丸となったさらなる取り組みが求められています。
 今後は、都の進めてきた官民連携の流れを加速させるとともに、この取り組みを日本全体の大きなうねりとしていくために、都が牽引役となっていく必要があります。
 そこで、一年間の活動をどのように総括しているのか、また、今後どのように事業展開していくのか伺います。
 次に、多摩地区水道について伺います。
 昨年十月に、日野市で配水管の経年劣化による漏水事故が発生し、バックアップ機能の不足により、断水、濁水の影響が広範囲に及びました。この漏水事故に象徴されるように、多摩地区では広域的な管路のネットワーク化がまだ不十分であり、昨年策定された多摩水道改革計画においても、その整備は急務とされています。
 また、平成二十三年度末には、多摩地区の事務委託が完全解消となる大きな節目を迎えます。
 今後は、都営水道として、多摩地区の給水安定性向上を図るため、一元的に施設整備を進め、広域水道としてのメリットを一層発揮していくことが重要と考えますが、見解を伺います。
 次に、伝統芸能の振興と海外への発信について伺います。
 ロンドン、パリなど世界の主要都市は、国際社会の中で文化都市として確固たる地位を確立している一方、最近では、アジア諸国も、都市の成長戦略として芸術文化の振興に力を入れており、ソウルやシンガポールなどが急速にその存在感を増しています。東京も、これらの都市に伍して、芸術文化都市として確固たる地位を築いていかなければなりません。
 東京の文化の魅力は多様さにありますが、東京が世界の中で独自の存在感を示すためには、とりわけ我が国固有の伝統芸能に強い光を当てていくことが重要です。
 我が党はこれまでも、伝統文化を若い世代に継承し、さらに発展させていくことの重要性について主張し、都の取り組みを強く支援してきました。
 今後とも、東京文化発信プロジェクトなどで実施している伝統芸能に対する取り組みをさらに強化し、海外に発信していくべきと思いますが、所見を伺います。
 次に、私立学校の振興について伺います。
 一昨年の政権交代後、国は、十分な検討もせずにさまざまな施策を打ち出し、多くの分野でゆがみを生じさせています。私学振興についても同様の問題があります。
 まず、幼稚園就園奨励費についてであります。
 国は本年度、対象園児の約七割を占める最大の階層で、保護者の負担を増加させる制度変更を行いました。我が党は、これに反対するとともに、都に対して激変緩和措置を要望し、その結果、二十二年度一年限りの時限措置として独自の就園奨励特別補助が創設され、保護者負担増の抑制を図ることができました。
 その後、都は国に対して、就園奨励費補助の見直し、拡充を強く要望してきましたが、多くの保護者の願いもむなしく、保護者負担増が抜本的に解決されることはありませんでした。結果として、平成二十三年度予算案においても、引き続き、就園奨励特別補助を都の自主財源で盛り込まざるを得なくなったところであり、この間の都の努力は評価はいたします。
 そこで、こうした結果を招くことになった国における経過と都の今後の対応について伺います。
 次に、いわゆる高校無償化について質問いたします。
 国は、本年度から、公立高校の授業料を無償化するとともに、私立高校などに通う生徒については、高等学校等就学支援金を支給することとしました。ところが、この就学支援金は、制度が複雑な上、事務手続も煩雑で、学校関係者からは、事務の負担が大き過ぎるとの悲鳴にも近い声が寄せられています。
 本来、国が必要な措置を講じるべきものではありますが、我が党は、こうした声をこのまま放置することができないと判断し、私立高校に対して必要な支援を行うよう強く都に要望いたしました。その結果、来年度は総額一億五千万円の事務費を学校に対して交付することとなりましたが、この事務費交付に関する基本的な考え方を伺います。
 こうした国の私学振興施策のほころびは、現場感覚を全く欠いた制度設計によるものといわざるを得ません。
 我が党は、責任ある政党として、現場の実態を踏まえ、真に子どものことを考えて、私学振興のために引き続き最大限努力していくことを、改めて表明しておきます。
 次に、学力向上施策について伺います。
 教育は、知、徳、体のバランスのとれた人間の育成を目指すものであり、都教育委員会では、この目的を達成するためにさまざまな施策に取り組んでおります。
 特に、知力に関して、全国に先駆け、都独自の悉皆による学力調査を実施してきた結果、東京都の小中学生の学力は、全国的にも高い水準にあると聞いています。これは、都教育委員会が、学力調査の結果を児童生徒一人一人や家庭に還元し、学習意欲を喚起した成果と確信しております。
 国は、この学力調査の方式を、今年度より悉皆調査から抽出調査に変えてしまいました。抽出方式では、すべての児童生徒には調査結果を還元することはできないため、児童生徒一人一人が自己の課題を把握して次なる目標を持つことができないという、まことに遺憾な状況をつくり出しています。
 都教育委員会においては、国のような考え方ではなく、今後とも、児童生徒一人一人の学力を把握してその結果を還元することを継続し、児童生徒の学力向上に取り組んでいただきたいものです。
 そこで、都教育委員会は、今後どのように学力向上施策を展開していくのか、伺います。
 次に、子どもの健全育成について伺います。
 最近の子どもの問題行動は、複雑化、多様化し、まことに憂慮すべき状況です。学校は、課題を抱えた子どもに対して、保護者との連携を大切にするとともに、関係機関との連携を図りながら対応していくことが重要です。
 このため、都教育委員会では、スクールカウンセラーなどを配置し、子どもだけではなく、保護者への支援を行うとともに、関係機関と連携して問題行動の解決を図る取り組みを推進しています。
 しかし、課題を抱えた子どもの保護者の中には、我が子の問題行動への対応を学校に任せきりにしたり、どうしたら我が子を立ち直らせることができるのか、相談もできずに悩んだままでいる保護者もおります。
 今後は、課題を抱えた子どもの家庭を訪問し、保護者からの相談に乗り、解決に向けた方策について助言するなど、直接家庭に働きかけを行う支援体制を構築すべきと考えます。
 都教育委員会では、新たな保護者支援に焦点を当てた取り組みを行うと聞いていますが、この新たな取り組みについて、事業の趣旨と具体的な内容について伺います。
 次に、子どもの体力向上について伺います。
 いうまでもなく、体力は気力や精神力はもとより、学力向上や健全育成の源であります。この重要性にかんがみ、国は平成二十年度から、全国すべての小学校五年生と中学校二年生を対象とした体力調査を開始しました。
 平成二十二年度の調査の結果、東京の中学校の男子が四十七都道府県中四十六番目であることに象徴されるように、東京都の子どもの体力は全国平均を大きく下回っております。これは、東京都の子どもの知、徳、体のバランスが崩れているあかしです。
 今後、東京ならではの方策により、幼少のころからすべての子どもたちの体力を底上げしていくことが重要です。また、教員一人一人が、子どもたちの現実を直視し、危機感を持って指導力を発揮していくことも必要と考えます。
 そこで、都教育委員会は、今後、どのような具体策を講じて子どもの体力向上を図っていくのか、伺います。
 次に、スポーツ振興について伺います。
 昨年七月、ご自身がスポーツマンである知事のリーダーシップのもと、スポーツ振興局が発足いたしました。都のこの先駆的な動きは、国をも刺激し、スポーツ庁の新設やスポーツ基本法提案が改めて俎上にのるなど、我が国におけるスポーツ環境整備の機運を牽引しております。
 来年度の都のスポーツ予算は、百九十億円余を計上し、国の二百二十億円余と遜色のない内容となっております。中でも、ジュニアスポーツのすそ野を広げ、地域からの競技力の向上を図るための取り組みをさらに拡充するなど、これまで我が党が強く要望してきたことにこたえるものとなっていることを高く評価するものであります。
 また、都内六十二全区市町村を会場にして開催されるスポーツ祭東京二〇一三も、いよいよ二年半後となりました。都民、国民に夢と感動を与えるこの一大イベントの開催準備も佳境を迎えます。東京の新たなスポーツ振興を切り開く元年といえる、平成二十三年度予算に込めた知事の思いをお伺いします。
 最後に、豊洲新市場整備について申し上げます。
 知事の豊洲移転の決断を受け、新市場整備が大きく動き出している中、市場業界は、先日、議長及び都議会の全会派に対して、平成二十六年度開場に向けた豊洲関連予算の成立を強く望むとの要望書を提出しました。そこには、豊洲新市場整備が大きく歩み出したことへの歓迎と、早期の整備を願う痛切なる思いが込められていました。
 現在、市場業者を取り巻く経営環境は大変厳しい状況にあります。新市場整備を着実に進めていくことはもとより、あらゆる面で市場業者を支援していくことこそ重要であります。
 今後は、都民及び業界にとって豊洲新市場がよりよいものとなるよう、都議会としては、党派を超えて知恵を出し合い、現実に即した歯車を回し続けていくことが、我々の使命であり、責務であることを申し上げ、私の代表質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 三宅茂樹議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、国政の現況についてでありますが、中国は日本の人口の十倍の人を抱えているわけでありまして、こうした国が経済的にある程度成長すれば、そのGDPも巨大になるのは当然でありまして、日本が中国に抜かれたからといって、それだけで取り立てて騒ぐことはないと思います。
 しかし、問題なのは、我が国が無為のままに衰退の坂道を転げ落ちていることでありまして、このままでは、三位、四位、五位と、じり貧とならざるを得ないような気がいたします。
 国債の予算に対する依存率からしましても、もし日本がヨーロッパにある国であるとするなら、これからEUに入ろうと思ったら、これは拒否されて入れませんし、EUに属している国でも、これだけ借金のかさが膨らんできますと、恐らくユーロの使用というのは禁止されるんじゃないかと思います。
 自民党の政権の存続以来、しかし、今日もなお、対米依存の他力本願が習い性となりまして、国家的な危機に対して余りにも国全体が鈍感のような気がいたします。
 振り返ってみますと、この十二年間政党の離合集散が繰り返され、総理大臣は猫の目のようにかわり、一昨年には政権交代もありました。しかし、政治は、困難から逃げを続けるばかりで、本質的な問題は一向に解決をしていないと思います。情緒的な言葉だけの政治や党派的な利害と決別して、国家の基本にかかわる憲法の問題や、破綻に瀕した財政を立て直すために不可避な消費税の問題など、それこそ大連立でも何だろうと、果敢にやってのけなければならない時期だと思います。
 日本の将来のみならず、人類の未来もかかった地球温暖化対策についても、東京は他の自治体とスクラムを組んで施策を進めておりますが、国も、口ばかりではなくて、本腰を入れた取り組みをすべきだと思います。本質的な問題に正面から取り組まなければ、首相が何人かわろうと、だれにかわろうと、政権が何度交代しようと、このままでは日本は自滅しかねないんじゃないかという気がいたしてなりません。
 次いで、東京の将来については、今日の東京のように高度に集中、集積が進み、国家の中の国家的存在となっている巨大な都市は、世界じゅう見渡してもどこにもありません。首都東京の将来を論じる際には、そのかじ取りが、東京一都市だけではなく、我が国の行く末をも左右する大きな問題であるということを強く認識することが不可欠だと思います。
 こうした認識のもとに、「十年後の東京」計画を策定し、都市インフラを初め、環境、産業、福祉など幅広い分野で、先進的かつ実効性のある施策を展開してきたつもりでございます。
 実行プログラムの改定に当たっては、従来からの施策の充実強化に加えて、「十年後の東京」計画も計画期間の半ばに差しかかったことから、さらにその先を見据えて、近未来の東京の都市像の一端を将来への指針として明らかにいたしました。
 もとより、東京には人材や技術が集積しておりまして、大きな可能性を有しておりますが、将来にわたり我が国を先導し、活路を切り開いていくには、大都市という現場で、その強みをさらに鍛え、磨き上げる必要があります。
 これまでの蓄積の上に、さらなる進歩を重ねることにより、東京は、経済活動と環境が高次元で両立した、魅力と活力にあふれる世界最先端の都市へと進化し、日本のみならず、アジアのヘッドクオーターとしてその存在感を示し続けることができると思います。
 次いで、二十三年度予算についてでありますが、今回の予算編成では、都民の不安を払拭するためにいかに効果的な手だてを迅速に講じるか、また、中長期的な視点に立ち、東京の新たな成長につなげる取り組みをいかに揺るぎなく進めていくかが、大きな課題であります。
 都の税収は、小幅な増にとどまっておりまして、依然として厳しい財政環境が続いておりますが、これまで築いてきた強固な財政基盤を堅持しながら、都政の使命を果たす予算とすべく、現場を持つ強みを生かしまして、より実効性の高い施策を構築し、財源を重点的に振り向けてまいりました。
 とりわけ、現下の厳しい景気状況を踏まえまして、雇用や経済への波及効果にも十分配慮した施策をきめ細かく展開しているつもりであります。
 また、公共事業については、東京の都市機能を一段と高め、経済への還流性もあわせて持つことから、投資効果の高いものを厳選しまして、積極的に推進してまいります。
 我が国全体が閉塞感に覆われている今だからこそ、この予算をてことして、都民に安心と活力をもたらすとともに、東京が先陣を切って、混迷する日本の活路を開いていきたいと思っております。
 次いで、危機管理についてでありますが、信長が愛吟したようでありますが、敦盛の文句の一たび生を得て滅せぬものもあるべきやという有名な文句がありますが、人間は死が不可避であるということを知っていながら、自分が死ぬということは案外信じていないんですね。これは人間の弱さがもたらす現実忌避の最たるものだと思いますが、災害に関しても同様のことがいえると思います。
 日本列島は、地震や豪雨など大規模な災害に幾度も見舞われてきました。しかし、我々はえてして、自分は決してその被害に遭うことはないと思いますが、そうした勝手な思い込みとは全く無関係に、実は災害は襲ってくるわけでありまして、現実を踏まえた備えを着実に進めなければ、これはなりません。
 これまでも、都は、実践的な防災訓練を行い、災害に強いまちづくりも進めるなど、日本の頭脳部、心臓部の機能麻痺を食いとめる手だてを講じてきました。
 もとより、危機に対処するには、行政の公助だけではなく、おのずと限界がありまして、個々人がまず自分と家族を最低限守る自助、そして近隣を助ける共助というものが基本となってこそ、危機の発生に迅速に対処し、被害を最小限に抑えることもできるわけであります。都民、国民の皆さんにも、それぞれの家庭、地域ででき得る備えをぜひしっかりと固めていただきたいと思います。
 次いで、児童虐待についてでありますが、次代を担う子どもたちが、親や地域の人々の愛情に包まれて健やかに育つことは万人の願いでありまして、その育ちを支えることは、行政はもとより、社会全体の責任であります。
 それにもかかわらず、痛ましい虐待事件が後を絶ちません。子どもを慈しみ、守るべき親が、みずからの我欲におぼれて子どもを虐待し、最後は殺してまでしまうということは、日本人の精神のただならぬ荒廃が、最も端的に、また醜悪にあらわれたものといえると思います。
 児童虐待は、子どもの心に深い傷を残すだけでなく、子どもたち一人一人が持つ未来への可能性をも奪うことになりまして、人として決して許されるものではないと思います。
 都は、専門機関である児童相談所の人員を拡充するとともに、第一線の窓口であります区市町村の虐待対応力も高めて、学校や医療機関などと一体となって、児童虐待の防止に全力を挙げて取り組んでいきたいと思います。
 次いで、外環道についてでありますが、現政権が、コンクリートから人へという耳ざわりのいいスローガンを掲げて、その結果、皮肉なことにインフラに使う予算が余っているようでありますが、これも優先順位をどう配分するかについて問題があるでしょうけれども、東京のインフラこそ、これは最優先にされるべきでありまして、私も、ある人脈を通じて現政権の有力な人物に、とにかく東京のためにこれを積極的に使えということを申しておりますが、就任以来、私も外環道の早期整備を都政の最重要施策に掲げ、国を動かし、事業化してきました。しかし、昨今の国政の混乱によって、事業の手法やその財源がいまだに定まっておりません。
 一方、都は、現地に精鋭を配置して、用地取得の推進をより一層加速させております。何よりも、国には外環道の国家的意義の正当性を認識させて、速やかに工事に着手するよう強く求めてまいります。
 あすの外環の早期着工に向けた都民の集いには、私も出席して、これは超党派で、目的達成のために皆さんと協力して事を実現していきたいと思います。
 次いで、産業政策の基本的考えについてでありますが、東京には、他の追従を許さぬ高度な技術力を持つ中小企業の集積がありまして、東京のみならず、我が国の活力の源泉となっております。
 景気は、依然として厳しい状況が続いておりますが、中小企業の高い可能性を存分に発揮できるように支援しまして、今後の成長につなげていくことが、都に与えられた責務であると思います。
 これまでも、CLO、CBOや新銀行東京によりまして、経済活動の血液ともいえる資金の新たな調達の可能性を広げ、将来性にすぐれた中小企業の資金繰りを支援してまいりました。
 また、チャレンジ精神に富む企業の革新的製品、技術を見出して、広くPRするために、ベンチャー技術大賞を創設するなど、中小企業の有する大きな潜在力を生かすためのさまざまな手だてを講じてまいりました。
 ちなみに、私の後輩たちと相談してやりましたローン担保証券あるいは社債担保証券は、アメリカのジャンクボンドマーケットともいわれておりますけれども、これは既に七千億を超します一兆円近いマーケットになりました。参加企業数も一万六千二百社、そのうち上場にこぎつけた会社は七十四社もあります。
 こういった制度は、本来は国がやるべきことでありますけれども、東京都が先鞭をつけたんですが、既に、これに賛同して他の自治体でも、自分の抱えている企業が幾つかこれに参加させてほしいということで受け入れております。来年度には、資金繰り支援や経営支援を初めとする円高対策の拡充など、現下の経済情勢への対策に万全を期します。
 加えて、発展の著しいアジア市場の販路開拓や、成長性の高い産業分野に対する技術支援、さらには産業を支える人材の育成に至るまで、将来を見据えて重層的に施策を展開していきたいと思っております。
 こうした取り組みによりまして、懸命に努力をしている中小企業を全力で支え、東京の産業をさらに発展させていきたいと思っております。
 次いで、中小企業の人材確保と若年者の就職対策についてでありますが、東京の中小企業の力は、世界に誇る高度な技術とそれを駆使できる人材によって支えられております。先般、世界の耳目を集めました小惑星の探査機「はやぶさ」の壮挙は、実は、こうした東京の非常にマイナーな幾つかの会社が、その部品を正確につくって与えることで成功に導かれたものであります。
 現に、中小企業の求人倍率は四倍を超えているのですが、なかなかその求人と就職に乖離が生じてうまくいきません。中小企業は、学生の目にとまりにくいですが、ものづくりの魅力にあふれ、初任給も、大企業と比べて余り遜色ないというところまで来ているんです、企業にもよりますけれども。
 ここで思い起こしますには、私が大学を卒業しました昭和三十一年、余り景気のよかった時期ではありませんけれども、そのときもなかなか就職難でもありましたが、身内の親しい仲間がトヨタ自動車へ入りました。仲間は、何で日本の自動車会社へ入ったんだ、そんなところへ入って大丈夫かと。それが、今では世界のトヨタになりました。電通に入った人間は、広告業、そんなものは一体企業といえるのかねと。今、電通は、日本で確たる最大のシェアを持った広告会社になりました。
 日本航空へ行った人間も、日本の航空会社なんてとばかにされたものですけれども、日航はちょっとよたよたしておりますが、他の飛行機会社も活躍しておりまして、そういうふうにその当時の風俗にまみれた価値観というのは余り当てになりませんで、私は、このミスマッチを何とか克服して、求人というもののニーズを抱えている東京の優秀な中小企業に、でき得れば優秀な人材、新鮮な人材をこれからもより多く供給していきたいと思っております。
 新たな若い力を強く求めて、秘めたる可能性を持つ職場に若者が就職しない状況を放置しては、これはものづくりの基盤を揺るがすことになるわけであります。
 このため、経営者による講義や企業でのインターンシップを通じ、若者に現場の魅力をじかに伝えるとともに、新たに、すぐれた中小企業の成長の軌跡を発信するなど、就職に結びつける機会と場所を確保したいと思います。また、採用した若者を定着させるために、中小企業の経営者に対して、特に労務管理に関する職場づくりについてのアドバイスを都独自の形で行っていきたいと思っております。
 これは、私の特別秘書のアドバイスにあったんですが、私のかつての選挙区の大田区も非常に中小企業が多いところでしたけれども、そこに社長としているおっさんは、仕事熱心のために、夕飯もろくに食わず遅くまで働いちゃうんですな。これはやっぱり、新しくやってくる若い社員には余り好ましい状況じゃないんで、そういったものをしんしゃくして、自分が残って働くのはいいけれども、やっぱり企業としての正当な営業に見合う、成績に見合う労務管理というものをしなくちゃいかぬということは、これは都としてすべきアドバイスだと思います。
 こうした施策を重層的に展開することによりまして、中小企業の人材確保と若者の就業を実現し、東京の産業力を維持強化していきたいと思います。
 あなたも、中小企業の相談の資格を持っていらっしゃる方なので、ぜひその労務管理についてはいいアドバイスをしてやってください。
 次いで、太陽エネルギーの活用についてでありますが、地球上のすべての生物は太陽のエネルギーの恩恵を受けておりまして、地球に一時間に降り注ぐ太陽エネルギーの量は、人類が一年間に消費するエネルギー量に相当するんです。
 昨年、数々の困難を乗り越えて無事地球に帰還した探査機「はやぶさ」も、実に六十億キロメートルという膨大な距離を、ほとんど太陽エネルギーを利用することだけで飛翔したわけでありました。しかし、人類は、いまだにこの無尽蔵な太陽エネルギーを十分に活用できてはおりません。
 都はこれまで、太陽光発電で国を牽引してきましたが、太陽エネルギーを最大限活用するためには、エネルギー効率の高い太陽熱の利用が不可欠であります。
 このため、都は、太陽熱の利用を促進する新たな基金を創設し、先端技術や高い活力を有する民間企業とともに、本格的な太陽熱利用の新たな都市モデルを生み出し、我が国の地球温暖化対策をリードしていきたいと思っております。
 次いで、スポーツ振興についてでありますが、スポーツは、教育や医療、高齢者、障害者福祉など、多岐にわたる問題に直面する現代社会を大きく変えていく力を持っていると思います。
 例えば、近年の若者は、つらいことを嫌がり、避けようとします。日本の将来を担う強い若者を育てるには、スポーツで肉体をしごき、他者との相克にも耐え得る、強くしなやかな心、脳幹を鍛えなければならないと思います。ゆえにも、東京は、国に先駆けてスポーツ局を設置いたしました。来年度は、国や地域を背負って戦うことのできる若いアスリートの育成、スポーツ施設の整備など、ハード、ソフトの面からスポーツ振興に関して積極的な予算を組んでおります。スポーツの力で、日本を東京から再生していきたいなと思っております。
 ことしの東京マラソンも、あと十日になりましたが、東京マラソンを契機に一大ランニングブームが起きつつあるように、老いも若きも健康づくりにはスポーツが不可欠であります。
 さらに、先日のサッカーアジアカップでの日本チームの活躍を見ても、すぐれたアスリートが国を代表して世界のひのき舞台で活躍する姿は、国家への愛着も呼び覚まして、国民を一つにまとめていく大きなよすがになると思います。
 今日、暗い事件が続きまして、閉塞感に包まれている今こそ、スポーツを通じて若者に輝くひとみを取り戻し、すべての人々に若者からも勇気を与える、そういう必要があるんじゃないかと思います。
 他の質問については、警視総監、教育長、技監あるいは関係局長から答弁します。
   〔警視総監池田克彦君登壇〕

〇警視総監(池田克彦君) 三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、事業者の利益供与に関する規制対象者の範囲を広く定めた趣旨、背景についてであります。
 警察による取り締まりの強化や社会における暴力団排除意識の高まりを受けまして、近年の暴力団は、暴力団員ではないものの、暴力団と一定の関係を保ち、その組織的な威力を背景に暴力的不法行為等を行う者や、表向きは暴力団を脱退したかのように装いながら、その実は暴力団やその構成員の利益のために活動している者などをふやし、これらの者を介して、資金獲得活動の拡大と多様化を進めてきております。
 このような現状を踏まえまして、本条例案では、暴力団の資金獲得ルートを効果的かつ確実に遮断することが可能となるよう、事業者による利益供与を禁止する対象を暴力団員のみに限らず、暴力団員ではないものの、暴力団または暴力団員との間に一定の関係を有すると認められる者をも規制対象者として明確に定義し、これらの者を介して行われる資金獲得活動を規制することとしております。
 次に、事業者に対して段階的な制裁等の手続を設けた趣旨、目的についてであります。
 本条例案におきましては、事業者に対し規制対象者への利益供与を禁ずるとともに、これを担保するための制裁等の手続を定めておりますが、この手続は、直接かつ一律に罰則の適用や公表という制裁をもって臨むものではありません。
 事業者の規制対象者への利益供与が、暴力的不法行為を行うことの対償として行われるなど、両者の間にいわば持ちつ持たれつのような密接な関係がある場合には、公安委員会が当該事業者及び規制対象者に勧告を行い、次いで、勧告に従わない場合にはその旨を公表し、さらに違反行為が繰り返される場合には、その防止のための措置を命令するというように、順序を経て慎重に手続を踏んだ上で、命令違反に対する懲役または罰金を科すことにしております。
 また、その一方で、このように暴力団と密接な関係を持つまでには至らない事業者の利益供与行為に関しましては、勧告及び公表にとどめ、さらに一定の要件で手続の適用除外を設けるなど、きめ細かな制度設計を行っております。
 このように、本条例案は、事業活動に伴う暴力団への資金流入を効果的かつ確実に遮断するという目的の達成と健全な事業活動の自由との調和を図るべく、勧告、公表等の手続を段階的に進めることとし、これら手続の各段階、各場面において事業者が自主的に暴力団との関係を遮断できるよう、その機会を提供することとしたものであります。
 最後に、適用除外を設けた趣旨についてであります。
 ただいま申し上げましたように、利益供与違反をした事業者に対しては、制裁を段階的に科すこととしておりますが、暴力団と密接な関係を持つまでには至っていない事業者につきましては、適用除外を設け、勧告を受ける前の段階で利益供与に関する事実報告または資料提出を行い、違反行為を繰り返さない旨の書面を提出した事業者には、その後の制裁に向けた手続を行わないこととしております。
 段階的な制裁手続とあわせて、いわば引き返す黄金の橋ともいうべき自主申告に基づく適用除外を設けることにより、事業者の自主的、自発的判断による暴力団との関係遮断が一層促進されるものと考えております。
 警視庁といたしましては、これらの規定を適時適切に運用するとともに、事業者の身辺に危害が及ぶことのないよう万全を期すことによって、事業者に対し、勇気を持って暴力団との関係を断ち切る決意を促してまいります。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、今後の学力向上施策についてでございます。
 児童生徒の学力向上を図るためには、学力調査によって学力の実態を明らかにし、その結果を児童生徒一人一人に還元するとともに、各学校における授業改善を推進することが重要であると認識しております。
 そのため、都教育委員会は、平成十五年度から独自の学力調査を実施し、平成二十年度にはそれまでの調査結果をもとに東京ミニマムを作成するとともに、平成二十二年度には、習熟の早い児童のために、発展的学習を推進するための教材や指導法を開発いたしました。
 また、各学校においては、調査結果をもとに授業改善推進プランを作成し、日々授業の改善に取り組んでおります。
 お話のように、平成二十二年度に国が学力調査を悉皆から抽出に変更したことにより、調査結果を一人一人に還元できず、学校と家庭が児童生徒の学力の状況を共有できなくなっております。
 こうしたことから、都教育委員会は、平成二十三年度から、小学校五年生と中学校二年生を対象に悉皆で新たな学力調査を行い、その結果を一人一人に還元し、学力向上を図っていくことといたしました。
 この調査では、新学習指導要領の目標及び内容の定着状況を把握するために、基礎的、基本的事項及び読み解く力を問う問題を国語、算数・数学の二教科から、小学校では社会、理科を加え四教科に、中学校ではさらに英語を加えまして五教科に拡大してまいります。
 今後とも、都教育委員会は、区市町村教育委員会と連携し、学力調査を悉皆で実施することにより、各学校における授業改善を一層推進いたしまして、児童生徒の学力向上を図ってまいります。
 次に、児童生徒の健全育成に向けた保護者支援の新たな取り組みについてでございます。
 児童生徒の健全育成を図るためには、課題を抱えた児童生徒への対応だけでなく、その保護者への支援を行うことが重要であると認識しております。
 これまで都教育委員会は、お話のように平成七年度からスクールカウンセラーの配置を開始いたしまして、平成二十年度からはスクールソーシャルワーカーの配置や健全育成学校支援員の派遣を行うなど、学校における健全育成の取り組みを支援してまいりましたが、これらの取り組みを通しまして、学校から保護者への直接的な支援がないと問題解決につながらないことが多いという実態が明らかになりました。
 このため、都教育委員会は、保護者への支援を強化することを目的に、平成二十三年度から新たに、学校から家庭に出向いて支援を行う学校と家庭の連携推進事業を実施いたします。
 具体的には、学校に家庭と子どもの支援員として配置されました退職教員、保護司、民生児童委員や心理学系大学生等が教員とともに家庭訪問等を行い、保護者に対して子どもが抱える課題について明らかにするとともに、その解決に向けた助言を行います。
 さらに、相談にも積極的に応じまして、保護者の不安や悩みを解消することで子どもの立ち直りを図ってまいります。
 平成二十三年度は、こうした家庭と子どもの支援員を小学校で五十校、中学校百校に配置いたしまして、教員やスクールカウンセラー等との連携を図りながら、学校を拠点とした保護者支援の体制を一層充実して、児童生徒の健全育成を推進してまいります。
 次に、子どもの体力向上の具体策についてでございます。
 子どもの体力を向上させていくためには、何よりも教員が危機感を持ち、児童生徒一人一人の実態を把握し、全体傾向や生活実態等の調査結果の評価分析等を踏まえた取り組みを実施していくことが重要でございます。
 都教育委員会は、昭和四十一年以来、児童生徒の体力運動能力を抽出で調査してまいりました。一方で、区市町村教育委員会は、実施学年や調査内容が異なる体力運動能力調査を独自に行ってまいりました。
 こういった状況を踏まえまして、都教育委員会は、都としての統一的な実態把握の必要性から、小学校五年生と中学校第二学年に限らず、都内公立小学校から高等学校に至るすべての学年、すべての児童生徒約九十四万人を対象とした東京都児童・生徒体力・運動能力、生活・運動習慣等調査、いわば東京都統一体力テストを平成二十三年度から実施してまいります。
 この調査では、都道府県単位で初めてとなる一日の歩数調査もあわせて実施し、体力低下の原因に関する科学的データを得ることとしております。
 また、今後実施する体力テストの結果を学校や児童生徒一人一人に還元して、体力の現状と課題を把握できるようにするとともに、生活・運動習慣モデル事業の普及や体つくり運動実践事例集の活用促進を通して、教員の意識啓発と体育授業の指導力向上に努めてまいります。
 さらに、全公立学校の教員が一校一取り組み運動や東京都体力向上努力月間における取り組みを一層充実できるよう働きかけるなどいたしまして、児童生徒の体力向上を推進してまいります。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

〇東京都技監(河島均君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、緊急輸送道路沿道の民間建築物に対する支援策についてでございますが、所有者の主体的な取り組みを促し、耐震化を着実に進めていくためには、新たな条例に合わせ、必要な支援を的確に行っていくことが重要でございます。
 今回の条例では、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を一刻も早く進め、震災時の広域的な救援活動や復旧復興の大動脈を確実に確保するため、特に重要な道路を指定し、その道路に面する建物の所有者に対しまして耐震診断を義務づけることといたしました。
 これに合わせ、耐震診断の費用につきましては、平成二十五年度までの間、原則として所有者負担がなくなる新たな助成制度を整備することにより、早期に路線全体にわたる建物の耐震性能を明らかにしてまいります。
 この耐震診断の結果、耐震改修が必要となる建物に対しては、助成制度を拡充し、所有者負担を従来よりも軽減することにより、耐震改修の速やかな実施につなげてまいります。
 このほか、建物所有者が安心して耐震化に取り組める環境を整えるため、診断技術者や改修工法の紹介、耐震化総合相談窓口の設置などの技術的支援もきめ細かく行ってまいります。
 新たな条例に基づく耐震診断の義務づけと、こうした建物所有者に対する支援策を一体的、総合的に展開していくことで、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を強力に推進し、災害に強い東京を実現してまいります。
 次に、東京都住宅供給公社の少子高齢社会対応についてでございますが、公社は、現在、約七万戸の公共賃貸住宅を供給管理しております。今後は、市場ではなかなか進まない高齢者向け住宅や子育て世帯向け住宅の供給など、少子高齢社会にも的確に対応することとしております。
 このため、公社では、少子高齢化に向けた今後の取り組みについて検討を進めてきておりまして、今年度中に取り組み方針を策定し、公表する予定でございます。
 具体的には、団地の建てかえなどに合わせ、サービスつき高齢者賃貸住宅や子育てに適した住宅などを供給するとともに、建てかえにより創出した用地を活用して、高齢者施設や子育て支援施設等の誘致を図ること、また、既存住棟について、首都大学東京によるコスト圧縮工法の研究成果を活用しながら、エレベーターの設置や隣接する二つの住戸を一つの広い住戸に改修するなどの住棟改善事業を行うことなどが、主な内容となっております。
 公社では、これらの取り組みを板橋区の向原住宅、世田谷区の烏山住宅及び稲城市の平尾住宅の三団地において、地域のまちづくりとも連携しながら、モデル事業として進めていくこととしております。
 最後に、屋外広告物を活用したエリアマネジメント活動の支援についてでございます。
 地域住民や企業等によるエリアマネジメント活動は、魅力あるまち並みの形成や観光振興など、まちの活性化に大きく寄与することから、これを積極的に支援する必要がございます。
 こうした活動が継続的、安定的に行われるためには財源の確保が重要であり、ご指摘のような屋外広告物の規制緩和を活用した支援策について、現在検討を進めております。
 具体的には、これまで実施してきた商店街の街路灯における規制緩和に加えまして、新たに地域の公共的な空間において案内板等に企業広告の表示を認め、これにより得られる広告収入を財源に充当する仕組みを構築してまいります。
 また、良好なまち並みの形成を図るためには、規制緩和に合わせて地域の景観ルールの策定や広告デザインの自主審査体制の導入なども必要と考えておりまして、来年度の早期にモデル事業を実施し、施策の効果等を検証した上で、平成二十四年度を目途に本格実施し、商店街の振興も含め、まちの活性化を図ってまいります。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

〇財務局長(安藤立美君) 二十三年度予算における財政基盤の堅持に向けた取り組みについてお答えをいたします。
 今回の予算編成では、都税の大きな伸びが期待できない中にあって、将来にわたり都政が継続的に使命を果たしていくため、強固な財政力をいかに堅持していくかという点にも十分配慮いたしました。
 そのため、まずは、これまでなし遂げてきた都庁の自己改革をさらに推し進め、施策の効率性や実効性を高める取り組みを徹底するなど、歳入歳出全般にわたって見直しを行いました。
 具体的には、国に先駆けて、都として五年目となる事業評価をさらに強化し、監理団体等を通じて実施する事業や特別会計、歳入を新たに評価対象に加えました。
 また、新たな公会計手法の活用や関係する部局との連携強化など、評価手法の充実も図っております。
 あわせて、むだをなくすという視点に立って、事業の実績などに基づく歳出の精査を徹底し、事業費の見直しなどを行いました。
 その上で、都債を将来の負担を見据えて適切に活用するとともに、基金を計画的に取り崩し、財源として活用可能な基金残高をできる限り確保いたしたところであります。
 今後とも、将来にわたって積極的な施策展開を支え得る財政基盤を堅持すべく、引き続き取り組んでまいります。
   〔建設局長村尾公一君登壇〕

〇建設局長(村尾公一君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、緊急豪雨対策における河川事業の取り組みについてでございますが、近年の局地的な集中豪雨の増加を踏まえ、迅速かつ集中的に実施する施策として、白子川地下調節池に、流域の異なる石神井川からも取水することといたしました。
 現在、本定例会において、調節池となるトンネル工事等の契約案を上程しております。
 この調節池の整備に当たりましては、技術提案型総合評価方式を採用し、最新のシールド技術を導入するなど民間のノウハウを活用して、工期を約一年間短縮いたします。
 また、平成二十三年度から、石神井川に新たに設ける取水口の構造や取水方法など、具体的な検討を開始いたします。
 一方、昨年溢水のあった石神井川が流れる北区において、出水期前の五月には、水防ポンプ車の出動訓練やヘリコプターによる救助訓練など、東京消防庁、北区及び地元住民と合同で実践的な水防訓練を実施いたします。
 さらに、局地的な集中豪雨による被害を想定して、リアルタイムに雨量、水位情報等のデータを収集、提供する水防災総合情報システムを活用しながら、関連機関と合同で初の情報伝達図上訓練を実施する予定でございます。
 今後とも、都民の命と暮らしを守るため、これまで以上に関係機関と連携を強化し、緊急豪雨対策に全力で取り組んでまいります。
 次に、連続立体交差事業の取り組みについてでございますが、本事業は、数多くの踏切を同時に除却することにより、道路ネットワークの形成を促進するとともに、交通渋滞や地域分断を解消し、地域の活性化にも資する極めて効果の高い事業でございます。
 現在、七路線八カ所で事業を進めており、このうち西武池袋線では、本年四月に練馬高野台から石神井公園付近の下り線を高架化し、六カ所の踏切を除却し、富士街道の踏切で最大五百メートルあった交通渋滞が解消いたします。
 また、JR南武線では、年内に矢野口駅付近から府中本町駅間の下り線を高架化いたします。これにより、踏切の遮断による交通渋滞が緩和されます。
 一方、新規箇所については、二路線四カ所で事業化に向けて諸手続を進めており、このうち京王線では、笹塚駅から八幡山駅間及び八幡山駅から仙川駅間の都市計画案及び環境影響評価準備書の説明会を本年三月に実施いたします。
 また、西武新宿線では、中井駅から野方駅間及び東村山駅付近の都市計画及び環境アセスメントの手続などを進めてまいります。
 今後とも、必要な財源の確保に努めるとともに、区市や鉄道事業者と連携し、連続立体交差事業をより一層推進してまいります。
 最後に、歩行空間の整備についてでございますが、歩道は、歩行者の安全確保はもとより、都市の緑など潤いの空間、また電気、水道などライフラインの収容空間として、日常生活に欠かせない重要な役割を担っております。
 都は、「十年後の東京」計画に基づき、だれもが安心・安全、快適に通行できる歩行空間の整備を着実に進めてまいりました。今後とも、その整備効果を一層高めるため、歩道のバリアフリー化や無電柱化、自転車走行空間の確保を連携して複合的、一体的に整備してまいります。
 具体的には、平成二十三年度より三カ年で、東八道路や環状六号線など五路線で、こうした一体的整備を約十九キロメートル完成させてまいります。
 引き続き、多くの都民の期待にこたえ、すべての人が快適に利用できる歩行空間の整備を積極的に推進してまいります。
   〔下水道局長松田二郎君登壇〕

〇下水道局長(松田二郎君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、下水道事業における緊急豪雨対策の取り組みについてでございます。
 近年、一時間五〇ミリを超える局所的集中豪雨が頻発している中、東京では地下街がさらなる広がりを見せるなど、浸水リスクが増大しております。今回、新たに策定した緊急豪雨対策では、浸水による被害の危険性が高い地域に対策を重点化し、早期に整備を進めていくこととしております。
 具体的な地下街対策といたしましては、一時間七五ミリの降雨に対応できる施設として、渋谷駅東口周辺の街区基盤整備事業の中で貯留施設の整備を行うこととし、平成二十三年度の工事着手に向け、現在、事業者と細部の調整を進めているところでございます。
 神田川流域では、中野区と杉並区を流れる桃園川幹線流域について、雨水排除能力の増強を図る新たな幹線建設のための検討を進めております。また、石神井川流域では、地元区の緑地整備事業と連携し、緑地用地の下に雨水貯留池を整備することを検討しております。さらに白子川流域では、目白通りの延伸事業に合わせて、新たに白子川一号幹線などを整備することとしており、現在、関係機関と調整を進めているところでございます。
 今後とも、地元区や関係機関と密接に連携を図りながら下水道事業を進め、早期に浸水被害の軽減を図ってまいります。
 次に、下水道事業における国際展開についてでございますが、これまで現場の創意工夫から生まれ、高度な技術によって確立した個別技術の海外展開を推進してまいりました。
 例えば、合流式下水道の改善を図る水面制御装置については、昨年のドイツ、韓国に続きまして、現在、アメリカ、カナダの企業との特許実施許諾契約の締結に向けた交渉を進めております。
 また、老朽化した下水道管を更生するためのSPR工法につきましては、シンガポールや北米など、この一年間だけで約二万メートルの施工が見込まれており、累計で約五万メートルの海外での施工実績となります。
 一方、マレーシア、インドへ職員を派遣した現地調査や下水道グローバルセンターによる調査などからは、下水道施設の効率的な整備運営や、下水汚泥の資源化などに対する多様なニーズがあることが確認できました。とりわけ水資源が逼迫する中で、下水処理水の再利用への高い関心があることも明らかになってまいりました。本日も、マレーシアの国営会社の経営責任者が砂町水再生センターに視察に訪れております。
 東京の下水道は、短期間で大規模な下水道システムを構築し、効率的に運営管理してまいりました。その経験やすぐれた技術を生かし、今後、国やJICAなどの関係機関、下水道関連企業や商社などと連携協力し、相手国、地域のニーズに応じた技術支援や、施設計画の提案などを行ってまいります。これらの取り組みを通して、下水道事業における国際展開を積極的に推進してまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 十点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、児童虐待対応力向上に向けた取り組みについてでございますが、都はこれまで、児童福祉司の増員、虐待対策班の全児童相談所への設置、三百六十五日切れ目ない緊急相談窓口の設置など、虐待に迅速かつ的確に対応できる体制の強化に取り組んでまいりました。さらに来年度は、児童福祉司を十一名増員し、児童相談所の体制の充実を図ってまいります。
 また、児童家庭相談の第一線である区市町村におきましては、先駆型子ども家庭支援センターに、新たに虐待対策コーディネーターを配置し、ケースの進行管理を的確に行うとともに、学校や保健センターなどの関係機関との連携を強化いたします。加えて、児童人口に応じて虐待対策ワーカーを増配置し、対応力を強化いたします。今後、児童相談所と先駆型子ども家庭支援センターの連携を一層強化し、都と区市町村が一体となって児童虐待防止に向けた取り組みを推進してまいります。
 次に、認証保育所についてでございますが、認証保育所は、平成十三年度の制度創設以来、大都市の保育ニーズに的確にこたえ、広く都民の支持を得て着実に設置が進んでおります。平成二十三年二月現在の設置数は五百六十カ所、定員は一万八千人を超え、東京の保育施策に不可欠なものとなっております。
 都はこれまで、認証保育所を国の制度に位置づけ、財政措置を講じるよう国に提案要求をしてまいりました。また、子ども・子育て新システムを前倒しした待機児童解消先取りプロジェクトに対しましても、認証保育所を含む地方単独保育施策を財政支援の対象とするよう緊急要望を行いました。今後とも、都は、保育所制度の抜本的改革を国に強く求めるとともに、東京の保育サービスの重要な柱の一つである認証保育所を支援してまいります。
 次に、子ども手当についてでございますが、子ども手当は、全国一律の現金給付であり、国の責任において実施すべきものであることから、その費用につきましては、地方に負担を転嫁することのないよう、都は国に対して再三にわたり要望してまいりました。しかしながら、国が地方に十分な協議や説明も行わずに、平成二十二年度に引き続き児童手当との併給方式とし、地方負担を残そうとしていることは、まことに遺憾でございます。
 都は、実際に支給事務を行う区市町村に配慮して、平成二十三年度予算案に所要経費を計上したものであり、引き続き、国の責任において確実に財源を確保するよう強く働きかけてまいります。
 次に、高齢者施設における防火安全体制についてでございますが、都は、法令上の設置義務にかかわらず、高齢者施設にスプリンクラーの整備費を補助しており、お話の認知症高齢者グループホームにつきましては、今年度末時点で約九五%が設置する見込みとなっております。
 また自主事業で宿泊サービスを提供している通所介護事業所につきましては、昨年十二月に、区市町村と協力して行った調査結果を踏まえ、消防設備等の確認が必要な事業所に対し、東京消防庁と連携して立入検査を実施いたしております。さらに宿泊サービスの実態等について、すべての事業所を対象として立入調査を行い、保険者でございます区市町村とともに必要な指導を行っております。
 あわせて、宿泊サービスを提供する場合の施設基準や届け出の仕組みがなく、事業の実態把握、指導が困難なことから、必要な法整備を行うよう、先般、国に対し緊急提案を行っております。法整備が行われるまでの間、都としては、独自の届け出基準等を早急に策定し、利用者の安全確保を図ってまいります。
 次に、障害者自立支援法の改正への対応についてでございますが、新たな制度を円滑に実施するためには、利用者が安心してサービスを利用できる事業内容や報酬体系等とするとともに、地方自治体や事業者が早期に準備に着手をする必要がございます。
 しかし、現段階では、新たなサービスの基準や障害児サービスの再編などを初め、改正内容の詳細が明らかになっておりません。このため、先般、国に対し、具体的な内容を早急に示すよう提案要求をいたしました。今後も、現場の実情を踏まえた制度となるよう、必要に応じて国に提案要求を行うとともに、区市町村と連携して課題を整理し、詳細な内容が示され次第、利用者や家族への制度内容の周知や、事業者への説明会を実施するなど、着実に準備を進めてまいります。
 次に、精神障害者の地域生活支援についてでございますが、都が今年度、二十三区及び西多摩二次保健医療圏で実施をしております訪問型支援のモデル事業におきましては、医療を中断していた患者の半数が治療を再開したほか、家族の不安が軽減するなどの効果がございました。
 こうした成果を踏まえまして、来年度からは、都内三カ所の精神保健福祉センターに、医師、保健師、福祉職等から成る多職種チームを配置し、区市町村、保健所と連携しながら、都内全域で訪問型支援を実施いたします。
 また、この訪問型支援と緊密に連携して、症状が悪化する前に速やかに精神障害者を受け入れる短期宿泊事業を区部及び多摩地域の二カ所のセンターで新たに実施いたします。今後、こうした取り組みを一層進め、保健、医療、福祉の関係機関が連携しながら、精神障害者の地域生活を支援してまいります。
 次に、地域生活定着支援センターについてでございますが、都は、現在、矯正施設退所後に、親族等の受け入れ先が得られない高齢者や障害者の社会復帰を支援するため、センターの開設に向け準備を進めております。
 お話のように、本事業を円滑に実施していくためには、関係機関の理解と協力が何よりも不可欠でございます。そのため、都が実施するセンターでは、保護観察所と協働し、本人の意向や生活歴、心身の状況等を、入所中から的確に把握することとしております。また、施設退所後には、福祉サービスを提供する区市町村、他の道府県のセンターや、これまで長く矯正施設退所者の支援に携わってきた保護司会等の関係機関と連携し、適切な場で必要な支援が受けられるよう事業を推進してまいります。
 次に、救急医療の実態調査についてでありますが、全都での東京ルール運用開始を機に、都は昨年九月二十七日から一週間、東京ルール事案を含めたすべての救急搬送一万一千四百五十六件の実態を調査いたしました。調査結果では、東京ルールの運用開始前と比較すると、救急搬送患者に占める軽症患者の割合が七・八ポイント減少したほか、救急隊の医療機関への受け入れ照会回数も減少いたしております。この結果は、救急搬送への都民の理解の深まりや医療機関の意識の高まりなどによるものと考えております。
 一方、救急搬送時間については、患者の背景や救急隊の活動環境が大きな影響を及ぼすことが改めて明らかになりました。主な要因として、患者の背景では、ひとり暮らし、精神疾患、泥酔状態などが挙げられ、また活動環境では、医療機関における院内調整や、患者、家族への説明などが挙げられます。
 今後、こうした課題解決に向け、東京消防庁や医療機関と十分な検討を行い、東京ルールの安定的運用とあわせ、救急患者を迅速適切に受け入れるための取り組みを充実強化してまいります。
 次に、看護師確保についてでございますが、都はこれまで、勤務環境の改善や、新人職員の研修体制の整備などの定着対策、地域の身近な病院で復職の相談や研修などを行う再就業対策に取り組んでまいりました。来年度は、東京都ナースプラザの就業協力員を増員して、二次保健医療圏ごとに配置し、定着対策及び再就業対策をより一層強化いたします。
 就業協力員は、看護職員の確保が困難な中小病院を巡回訪問し、多様な勤務形態の導入や研修体制の充実など、看護職員が安心して働き続けることができる環境整備を支援してまいります。また、巡回訪問した中小病院の協力を得て、離職者にナースバンクへの登録を促すとともに、地域ごとの医療機関の求人情報をメールマガジンなどを活用して、きめ細かく提供してまいります。こうした取り組みにより、医療機関、訪問看護ステーション、福祉施設などで、東京の医療、福祉を支える看護職員を着実に確保してまいります。
 最後に、新型インフルエンザのガイドラインの見直しについてでございますが、現在、一昨年の新型インフルエンザ発生時における経験を踏まえ、病原性や感染力に応じて適切に対応できるよう、三月の公表を目途にガイドラインの改定を進めております。
 新たなガイドラインには、サーベイランス、相談、防疫、医療など、保健医療全般の取り組みを盛り込み、流行状況に合わせて、医療機関における院内体制の強化を段階別に示すほか、都が備蓄した抗ウイルス薬の放出や簡易ベッドの配布時期を明確化するなど、医療体制を具体的に定めることとしております。また、流行期には、入院患者の発生状況を調査する都独自の入院サーベイランスを実施するなど、発生段階ごとのサーベイランスについても明記いたします。
 今後、本ガイドラインを活用し、区市町村や医療機関など関係機関による主体的な取り組みと相互の連携を一層推進し、新型インフルエンザへの備えを強化してまいります。
   〔病院経営本部長川澄俊文君登壇〕

〇病院経営本部長(川澄俊文君) 都立病院の再編整備による医療機能の強化についてでございますが、駒込病院は、ことし九月の全面供用開始に向け、鋭意改修工事を進めているところでございます。
 都におけるがんと感染症のセンター病院として、手術室、外来治療センターの拡充、放射線機器等の充実、緩和ケア病棟の整備及び感染症病棟の拡充など、医療機能を強化し、より高度で専門性の高い医療を提供してまいります。
 また、松沢病院は、平成二十四年二月の運営開始を目指し、新館の建設を進めているところでございます。今後の精神医療のニーズにこたえていくため、精神科急性期医療を中心に、他の医療機関では対応困難な救急医療、身体合併症医療、薬物依存等の特殊医療などについて機能強化を図り、都における精神医療のセンター病院としての役割を果たしてまいります。
 今後とも、再編整備を初めとする都立病院改革を着実に進め、行政的医療を適正に都民に提供し、都における医療サービスの一層の向上に向け、全力で取り組んでまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 六点のご質問にお答えいたします。
 まず円高対策についてであります。
 円高が長期化する中、製造業を初めとする都内中小企業の経営状況の悪化が懸念されるため、今年度の緊急対応に引き続き来年度も円高対策を的確に行うことが重要と考えております。
 具体的には、円高に苦しむ中小企業の資金繰りを支援するため、制度融資に円高対応融資メニューを創設して五百億円の融資枠を確保し、このメニューを利用するすべての事業者に対し保証料の二分の一を補助いたします。また、企業の経営内容を改善するため、中小企業診断士等の専門家チームを最大十回まで派遣して、効果的な円高対応策についてのアドバイスなども行う新たな仕組みとして、円高対応・企業変革アシストプログラムを実施することといたしております。
 さらに、円高の影響により、下請関係にある中小企業が不利な条件で取引を行うことがないよう、下請相談の人員や下請法の講習会の回数をふやすことにより支援策の充実に取り組んでまいります。その上で、適正な取引条件のもとで開催される下請企業取引対策商談会や、海外見本市への出展支援の拡充により仕事を確保する取り組みの支援も行うこととしております。
 こうした多面的な支援策を講じることにより、長引く円高で厳しい経営環境に置かれた中小企業を全力で支えてまいります。
 次に、来年度の中小企業への金融支援についてであります。
 都制度融資では、これまで国の緊急保証制度に対応した融資メニューである経営緊急、これを中心に、厳しい経営環境にある中小企業を支援してまいりました。
 国は、緊急保証制度を今年度末をもって終了し、この間、信用保証協会の一〇〇%保証の対象となっていた業種も、来年度、特に十月以降は大きく縮小することとしております。このため、都の経営緊急については終了せざるを得ない状況にあります。
 しかし、いまだ都内中小企業を取り巻く経営環境は好転していないことから、都としては、来年度、既存の融資メニューについて、融資条件の拡充や小規模企業者に対する保証料の二分の一補助の継続を行うなど、国の指定から外れる業種も含め幅広い業種を対象としてセーフティーネット融資を重点的に推進してまいります。
 さらに、こうした制度融資の取り組みに加え、地域の金融機関と連携した新保証つき融資や機械設備担保融資といった都独自の融資制度もあわせて推進することによりまして、都内中小企業の資金繰りに万全を期してまいります。
 次に、中小企業の海外販路開拓支援についてであります。
 中小企業が成長著しいアジア市場において販路開拓を進める上で、現地での情報収集などを単独で行うことは困難な場合が多いことから、行政としての着実な支援が極めて重要と考えております。
 都は、今年度から開始いたしました海外販路開拓支援事業により、機械や金属等の四分野について、海外販路ナビゲーターを配置し、中小企業に対するサポートを実施しております。
 支援を行う中で、精密機械、化学、情報サービス等の分野でも、商取引のニーズが高いことや海外での展示会出展が効果的との状況が明らかになっております。このため、ナビゲーターの数を倍増し、ニーズの高い四分野を加えた八分野について、情報提供などをきめ細かく実施するとともに、海外展示会への出展支援の機会も拡充することにより、厳しい経営環境が続いてアジア市場に活路を求める中小企業のニーズに速やかに対応することといたしました。
 今後とも、海外販路開拓の支援を適切に行って、円高などにより苦境に置かれた中小企業の経営の向上を実現してまいります。
 次に、商店街振興の取り組みについてであります。
 商店街は、地域住民の生活を支える重要な役割を果たしていることから、都は、商店街振興を産業施策の重要な柱の一つとして位置づけ、平成十五年度に、新・元気を出せ商店街事業を創設し、商店街活性化に向けたさまざまな支援を行ってまいりました。
 また、商店街が地域コミュニティの中心としての役割を担っていることに着目し、地域と一体となってまちおこしに取り組む商店街を支援する地域連携型商店街モデル事業を開始しております。さらに防犯、防災、環境対策など、東京が直面する重要な課題の解決に結びつく取り組みを商店街が実施した場合に支援する特定施策推進型商店街事業などメニューを順次拡充してまいりました。
 来年度は、商店街がLEDやソーラーパネルを活用した街路灯など、環境対応型の仕組みを取り入れ、その内容を地域に発信していく取り組みを支援する環境対応型商店街活性化事業を新たに開始するなど、商店街の地域社会での役割を踏まえた施策を展開してまいります。
 今後とも、商店街が地域コミュニティの中で適切にその役割を担うことができるよう、その意欲あふれる多様な取り組みを積極的に支援し、効果的な振興策の実現を図ってまいります。
 次に、新卒者等を中小企業への就職につなげる支援策の実施についてであります。
 新卒者等の就職環境は、引き続き厳しい状況にあり、都は、東京しごとセンターに一月から開設した新卒特別応援窓口や合同就職面接会等を通じ、現在、全力を挙げて支援を実施しております。来年度も合同就職面接会を拡充するほか、中小企業が自社の魅力をアピールし、若者と直接交流する合同企業説明会を新たに年十二回開催するなど支援を強化いたします。
 さらに優秀な人材を求める中小企業と若者を効果的に結びつけていくため、より実効性の高い支援策として、未就職卒業者緊急就職サポート事業を新たに開始いたします。この事業は、中小企業での就業体験を通じて正規雇用を目指すものであり、就職先が決まらずに大学等を卒業した方や卒業後三年以内で求職中の方が対象となります。
 まず研修で社会人としての基礎力を養い、キャリアカウンセリングによって本人の適性や希望を踏まえた上で三カ月間の就業体験を実施いたします。さらに正規雇用化への実効性を高めるため、就業期間中も、キャリアカウンセラーによる職場訪問などによりフォローアップを行います。
 今後とも、学生の在学中から卒業まで切れ目なく、多様な就職の機会を提供するなど支援を継続することで、厳しい就職環境が続く中でも、意欲ある若者が早期に就職を実現できるよう支援してまいります。
 最後に、農業振興施策の再構築についてでありますが、東京の農業は、大消費地の中で営まれる優位性を最大限に生かし、豊かな都民生活の実現に貢献しております。都は、都民ニーズの多様化や農業者の高齢化など、都市農業を取り巻く環境の変化へ対応するため、平成十三年に策定いたしました東京農業振興プランに基づき施策を実施してまいりました。
 具体的には、農業、農地の持つ多面的な機能を生かしたまちづくりに向けた取り組みを支援し、貴重な都市の農地保全に努めております。また、大消費地東京のポテンシャルを生かした地産地消の推進など、農業経営の安定に向けた都独自の施策に取り組んでおります。
 今日、都民の農業、食の安全に対する関心や地産地消への期待が高まっていることから、今後こうした取り組みを一層進め、都民や農業者の期待に的確にこたえる農政を展開するため、来年度に東京都農林・漁業振興対策審議会を開催し、その議論を踏まえ、東京農業振興プランの改定に向けて検討を開始してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず省エネ促進プロジェクトについてでございますが、キャップ・アンド・トレード制度では、事業者がみずからCO2を削減することが基本でございますが、結果として、削減できない場合は、CO2削減量を排出量取引により取得する必要がございます。この排出量取引制度を円滑にスタートさせるため、本プロジェクトを創設し、中小規模事業所の省エネ対策を支援するとともに、削減されたCO2を義務履行に活用できる中小クレジットとして都が供給することとしたものでございます。
 昨年秋に実施をいたしました第一回募集の結果、四十一件の助成を決定いたしまして、今後五年間におよそ八千六百トンの中小クレジットの創出が見込まれております。また、この申請の半分は、省エネに対する専門的知見を有するESCO事業者との共同申請となっておりまして、これまで少なかった中小規模事業所におけるESCO事業の拡大にも道を開くものと考えております。なお、先月末に終了しました第二回募集では、第一回の倍以上の約百件の申請がございました。
 今後とも、削減義務の対象となります大規模事業所のCO2削減計画とその実施状況を見きわめつつ、必要な中小クレジットの確保に向けて積極的に取り組んでまいります。
 次に、CO2の削減と経済の活性化についてでございますが、都の地球温暖化対策は、省エネ性能の高い設備への更新を促すなど、経済の新たな牽引役としての役割も果たしてきております。この動きをさらに広めるために、都の制度を活用した企業の先進的な取り組みを、東京商工会議所のホームページで公表しておりますが、今週開催いたします地球温暖化対策セミナーにおきましても、意欲的に取り組みを進めております事業者の皆さんから、具体的な省エネ対策の事例をご紹介いただくこととしております。
 今後は、このような事例の共有化に加えまして、LED照明などの先進技術の活用や、省エネ性能にすぐれた建築物に投資を促す仕組みづくりを進めまして、CO2削減と経済活性化を両立させる新たなビジネスモデルの創出や、経済効果の拡大を目指してまいります。
   〔水道局長尾崎勝君登壇〕

〇水道局長(尾崎勝君) 二点のご質問にお答えをします。
 まず、国際貢献ビジネスにおける一年間の総括及び今後の事業展開についてでございますが、この一年間の総括としましては、東京水道サービスを活用した新たな国際貢献の方針を公表して以来、海外事業調査研究会の設置や、ミッション団の派遣を初め、さまざまな施策を展開し、各国の実情や政策をじかに把握するとともに、相手国政府関係者等とのパイプを広げることができました。また、海外展開に必要な施策について、国や政府系機関に対する要請活動を強力に行うことで、在外大使館などへのインフラプロジェクト専門官の配置や、政策金融支援の拡充などに結実させることができました。
 こうした取り組みの結果、具体的なプロジェクトとして、当局の支援が成功に結びついたオーストラリアの案件のほか、ミッション団派遣国であるマレーシア及びベトナムの案件におきましては、国の資金を引き出して事業調査を手がけることとなりました。
 今後の事業展開としましては、アジア諸国における数多くのニーズにこたえていくために、ご指摘のとおり、民間企業との一層の連携強化が必要でございますが、途上国ゆえにリスクが大きいことや、相手国に事業提案していく際のファイナンス制度が不十分なことなどの状況にあります。
 そこで、ミッション団の派遣により得られたさまざまな情報や、国との協議の場などを活用して、新たな仕組みづくりを牽引していくとともに、民間企業を積極的に支援し、企業連合、すなわちコンソーシアムの形成が進むよう誘導していくなど、国際貢献ビジネスを一層推進してまいります。
 次に、多摩地区の水道施設整備についてございますが、多摩地区では、市町への事務委託完全解消を契機に、広域水道のメリットがさらに発揮できるよう、都営水道として一元的な施設整備を本格的に進め、給水の安定性を向上させる必要があります。このため、昨年八月に策定した多摩水道改革計画に基づき、事務委託中は十分できなかった市町間を結ぶ配水管の整備など、広域的な配水管ネットワークの形成を図ることにより、バックアップ機能を強化してまいります。
 また、日野市における漏水事故の原因である経年劣化した管路につきましては、水道管路の耐震継ぎ手化緊急十カ年事業等に基づき、事業量を倍増して、早急に取りかえを実施してまいります。
 これらの施策を積極的に推進し、多摩地区三百九十万人のお客様が一層確かな安心、安定を実感できるよう、質の高い水道サービスの提供に全力を挙げて取り組んでまいります。
   〔生活文化局長並木一夫君登壇〕

〇生活文化局長(並木一夫君) 三点のご質問にお答えします。
 初めに、伝統芸能の振興と海外への発信についてでございますが、世界に向け文化都市として東京独自の存在感を示していくためには、ご指摘のとおり、我が国固有の文化である伝統芸能分野の取り組みが重要でございます。
 都は、東京文化発信プロジェクトにおいて、能楽や邦楽、日本舞踊など、あらゆる伝統芸能が集積する東京の特性を生かし、東京発・伝統WA感動事業を立ち上げ、第一線で活躍する実演家による新作発表や、子ども向け体験事業など、意欲的な事業を展開してまいりました。
 今後とも、これらの取り組みを充実し、伝統芸能のさらなる振興を図るとともに、外国語解説の導入や、海外メディア、観光業界等への働きかけを積極的に進めることにより、東京から海外に向けて伝統芸能の発信強化を図ってまいります。
 次に、私立幼稚園等就園奨励特別補助についてでございますが、国は、平成二十三年度の予算案で、幼稚園就園奨励費補助の単価を増額する改正を行いました。しかし、今回の国の措置は、すべての所得階層に対して一律で三千二百円上乗せするという内容であり、これまで都が指摘しました対象園児の七割がいる階層での保護者負担増の問題は依然として解決されておりません。このため都は、やむを得ず、さらに一年限り激変緩和措置として私立幼稚園等就園奨励特別補助を継続することといたしました。
 都といたしましては、国に対して、年収に応じてきめ細かな補助制度となるよう、当該階層区分を分割するとともに、補助対象であるすべての保護者について負担増を解消するよう、今後とも、制度の改善を強く国に求めてまいります。
 最後に、就学支援金の学校事務費についてでございますが、都は、就学支援金制度の導入に伴い、新たに事務センターを設け、支給に必要な個別データの入力集計等の事務を集約し、学校の負担軽減に努めてまいりました。
 しかし、学校の現場では、生徒に対する各種申請書類等の配布、回収、保護者からの問い合わせの対応など、まだ多くの事務が残ってございます。これらにかかわる経費をすべて学校の負担とすることは適切でなく、都は来年度から、新たに学校に対する事務費を交付することといたしました。
 もとより就学支援金は、国の政策として導入したものであり、その事務に係る経費も、すべて国の責任で措置すべきであります。都は、今後とも引き続き、事務手続の簡素化による負担軽減と事務費の全額措置を国に強く求めてまいります。

〇副議長(鈴木貫太郎君) この際、議事の都合によりおおむね十五分間休憩をいたします。
   午後六時一分休憩

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