平成二十三年東京都議会会議録第二号

   午後一時開議

〇議長(和田宗春君) これより本日の会議を開きます。

〇議長(和田宗春君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

〇議長(和田宗春君) この際、会議録署名議員の変更について申し上げます。
 本日の会議より、土屋たかゆき君から九番山内れい子さんに変更いたします。ご了承願います。

〇議長(和田宗春君) これより質問に入ります。
 百二十三番大沢昇君。
   〔百二十三番大沢昇君登壇〕

〇百二十三番(大沢昇君) 私は、都議会民主党を代表して、都政の主要課題について知事並びに関係局長に伺います。
 最初に、都政運営について伺います。
 まず、平成二十二年度最終補正予算案について伺います。
 平成二十二年度の日本の経済状況は、アジアを中心とした外需による持ち直しがここに来て一時減速し、内需の不振も響いています。そして、日本銀行の地域経済報告によると、関東甲信越地域の景気は緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感が見られ、雇用情勢は引き続き厳しい状況にあるということです。
 このような中、都税収入は、二十一年度決算比で一千三百四十億円の減となりました。その一方で、中小企業に対する制度融資は一兆九千億円規模に上り、就労が不安定な母子家庭への貸付金もふえていると聞きます。こうした都政をめぐる状況の中で、どのような方針で最終補正予算の編成を行ったのか、都の所見を伺います。
 昨年、国は、円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策を実施するため、平成二十二年度補正予算を編成いたしました。都は、雇用の下支えや子宮頸がんなどの疾病対策の推進、介護など高齢者の生活の安心を確保するため、国の経済対策による基金事業や交付金を効果的に活用していくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、平成二十三年度予算案について伺います。
 一般会計の予算規模は、前年度比○・四%減の六兆二千三百六十億円で、三年連続の減額としましたが、一般歳出は、石原都政下で二番目の規模、前年度比一・○%減の四兆五千八百三十九億円にとどめています。
 内訳は、経常経費を七百十六億円の減とする一方、投資的経費を前年度比三・三%増の八千四百四億円、単独事業費も前年度比八・六%増の五千百四十八億円とし、ハード面を重視した予算となっています。そして、全二十八会計の規模は、前年度比五・三%減の十一兆七千六百四十二億円としていました。
 予算策定に当たって行った事業評価は、監理団体を通じて行う事業や特別会計に範囲を拡大し、百九十五件を見直して約二百十億円の費用を確保するとともに、歳出を精査して約八百九十億円の事業費を削減しています。こうした取り組みで基金の取り崩しを最小限にとどめた財政運営については、基本的に評価をするものであります。
 本予算案では、雇用情勢が厳しい若年層、離職者への就職サポートや、円高などの影響で経営が苦境にある中小企業への支援、遅々として進まない耐震化の推進など、都民が抱える不安に対する支援を強め、都市の活力を取り戻すとしています。
 中長期的な課題では、急速に進む高齢者の対応、環境、そして次の世代をはぐくむ教育、都市インフラの整備などの諸施策を戦略的に取り組むとして、都民生活を支える公共サービスを含めた諸施策を都政の使命と名づけ、果たしていくとしています。
 しかしながら、医療従事者の確保や、なかなか短縮されない救急搬送時間への対応、木造住宅密集地域の耐震化の促進など、都民福祉の向上を図るため、さらなる取り組みが必要な分野がまだまだあります。石原知事は、この都政の使命を果たすために、どのような理念を持って今回の予算編成を行ったのか、所見を伺います。
 次に、行財政改革について伺います。
 平成二十三年度の都税収入は、四兆二千二百五億円と前年度比一・七%の小幅な伸びとなりました。景気は今後緩やかに回復しつつあると予測されていますが、税収は伸び悩むと考えられています。地方交付税不交付団体である都が財源として活用できる基金残高は九千六百三十五億円に減少しています。
 一方、これから四年が経過した後、団塊の世代が六十五歳を超え、都内では約三百万人の高齢者が暮らす都市型高齢化社会となってきます。働く生産年齢人口は二十二万人減少し、消費水準が下がるとも考えられています。都市基盤の整備費や社会資本ストックの維持更新経費など、世界の主要大都市東京の経営に必要な経費、そして首都特有の経費もかかります。
 都は、行財政改革の一環として、中期財政フレームの試算や事業評価の範囲拡大、そして法人事業税暫定措置の撤廃などに取り組んできましたが、税収が伸び悩むとされる中、だれもが暮らしやすい活力ある東京を目指して、強固で弾力的な財政基盤を堅持していかなければなりません。そのためには、中長期的な展望を持ちながら、将来にわたって健全性を維持する財政運営を徹底していくべきと考えますが、都の所見を伺います。
 都と特別区は、事務移管と配分の検討対象とされた四百四十四項目の評価整理を終え、今後の運営方針を協議しています。そして、国は地域主権戦略会議に対し、まずは直轄国道、河川などを地方移管の対象とする出先機関改革のアクションプラン案を提示するとともに、住民自治の強化などの地方自治法改正案を提案する方向で、地方分権や東京における分権は着実に動いており、この自治権拡充の動きを推進していかなければなりません。
 また、都政を取り巻く状況は、都市型高齢社会の進展や都民ニーズの多様化などで大きく変化していくと考えられます。そこで、都は、さまざまな行政課題に対応でき、都民を向いたモチベーションの高い人材を確保、育成していくことや、組織体制や事務事業の見直し、高水準の説明責任と情報公開、都民やNPOなどとの協働の推進、外郭団体改革など、一層の行政改革の取り組みが求められております。
 都は、中長期的で大都市経営の視点を持って、今後の行政需要変化に適合できる質の改革を行う努力をしていかなければなりません。都はどのような方向性を持って今後の行政改革を進めようとしているのでしょうか。所見を伺います。
 次に、「十年後の東京」について伺います。
 石原知事は、四年前、東京発の日本再生は第一章を終えたばかりで、八年間の具体的な実績を次の四年につなげ、東京の魅力と都民福祉の向上に引き続き全力で取り組むとともに、東京における改革の成果を日本の新たな発展に結実させていくと、都政に対する抱負を述べました。
 今回、都は、三期十二年の石原都政を二○○○年─二○一○年都政の軌跡として総括しました。財政再建や国に先駆けた外形標準課税の導入、新公会計制度による都のコスト意識改革、羽田空港国際化、環境対策など、財政危機への対応や大都市東京の問題を踏まえた政策の進捗を評価するものですが、総括とするならば、すべてを取りまとめて締めくくることから、新銀行東京への追加出資やオリンピック落選といった都政における重要な判断や出来事に触れることや、目標達成が厳しいと思われる都内住宅の耐震化や東京の自治制度など、現下の課題にも言及すべきであったと考えます。みずからの都政の総括について、知事の所見を伺います。
 鈴木俊一知事は、みずからの都政の締めくくりに、有識者による懇談会からの報告や都民とのシンポジウムなど、一年をかけて綿密な二○一五年長期展望を作成しました。二十年後の実現すべき東京の姿と構築すべき社会を都民の思い入れも入れて展望したものです。
 一方、石原知事は、知事就任直後、都市構想では、私たちは都民との協働という理念を大事にすべき、都の施策を広く都民の皆さんに提起し、また、皆さんからの意見を受けながら、皆さんとともにこれからの東京を築き上げていきたいと述べていましたが、将来の指針は、都民や区市町村からの意見を聞くことなく、都庁内部のみで検討したものとなりました。果たして知事は、この二十一世紀中ごろまでの東京はこうあるべきだとしたビジョンを都政にどう位置づけるつもりなのでしょうか。知事の所見を伺います。
 次に、東京の成長戦略について伺います。
 一月二十四日から始まった通常国会の冒頭、菅直人首相が、施政方針演説において国づくりにおける三つの理念を示しました。そして、その第一として、平成の開国を掲げ、明治の開国、戦後の開国に続く第三の開国に挑むとの決意を述べました。
 平成の開国では、特に、ことし六月を目途に交渉参加について結論を出すとしている環太平洋パートナーシップ協定、いわゆるTPPについては賛否さまざまな意見が闘わされています。
 しかし、我が国が今後も世界に確固たる地位を占めていくためには、自由貿易の推進を避けて通ることはできないものと考えます。そして、東京都は環太平洋の一都市として、また、世界の一都市として、改めてその存在意義を問われることとなるのです。そのとき、私たちはグローバルシティーとしての東京を復活させ、この国の原動力となっていかなければなりません。
 そのためにも、十年後、二十年後の将来ビジョンを濶達に議論し、その中に農林水産業のみならず、製造業、非製造業のイノベーション、税制や医療福祉改革、外国人を含めた労働力の確保と積極的労働移動策などを位置づけ、積極的に自由貿易の推進を図っていく必要があると考えますが、石原知事の見解を伺います。
 石原知事が「十年後の東京」への実行プログラム二○一一において示した将来への指針では、その第一に、アジアのヘッドクオーターを掲げ、東京がアジア随一のビジネスセンターになるとの将来像を描いています。
 一方、これに先立ち、東京都は、昨年九月二十一日までに国が行っていた総合特区制度の提案募集に対して、アジア域内ヘッドクオーター特区の創設を提案していますが、私たち都議会民主党も、政権与党に携わる者として、この実現に向けて積極的に取り組んでいきたいと考えています。
 あわせて、今通常国会においては、アジア拠点化推進法案の提案も予定されており、こうした法案の早期成立も求められています。東京がアジアのヘッドクオーターになるべく、特区の創設も含め、東京都の今後の取り組みについて見解を伺います。
 海外企業の誘致について、昨年六月の私たちの代表質問に対して、東京都は、海外の企業を東京へ誘致することは都内中小企業のビジネスチャンスを広げ、産業の活性化につながる重要な取り組みであるとの認識を示しました。
 こうした認識に基づき、現在、東京都は、海外企業誘致セミナーの海外での開催や、意欲ある企業に対する産業交流展への出展の働きかけなどを行うとともに、東京ビジネスエントリーポイントでの相談を通じた必要な情報提供や、定着に向けたサポートなどを実施しているところです。
 しかし、私は、東京が国際ビジネス拠点としての地位を高めていくためには、東京への進出を希望する企業からの個別相談が来るのを待つのではなく、企業の進出にとって、東京が魅力的でメリットのあるエリアであることを行政としてしっかりと発信していくことが重要であると考えます。こうした点を踏まえ、都は外国企業の誘致についてどのように取り組んでいく考えであるのか、見解を伺います。
 さて、我が国日本を追い抜き、隣国である中国がGDPで世界第二位となりました。もちろん中国経済も幾つかの課題を抱えているものの、いずれアメリカのGDPさえも追い抜き、世界一の経済大国になるとさえいわれています。
 このような中、東京都としても、中国との関係については、好き嫌いの感情を超え、ともに成長するアジアのパートナーとして、その連携を強化していくべきであると考えます。そして、それは経済だけでなく、文化面での交流も深め、相互に理解し、協力し合える関係を構築していくべきではないでしょうか。
 現在は市民や学生、NPOや文化団体、経済団体など、さまざまなチャンネルでの交流がありますが、東京都としても、例えば、過去設けていた海外事業所の北京での設置、あるいは北京を初め海外事業所を展開している自治体国際化協会、CLAIRの効果的で有効な活用、さらには、行政同士の人事交流なども含めた関係強化が求められます。中国との関係強化について、石原知事の見解を伺います。
 次に、港湾機能の強化について伺います。
 首都圏のみならず、日本の国際競争力を強化していくためには、港湾機能の強化は欠かせません。釜山などアジア諸港が台頭し、京浜港の国際的な地位が相対的に低下し続ける中で、民主党政権は、これまでのばらまき的、総花的な港湾行政から、集中と選択による港湾行政に大きくかじを切りました。
 昨年八月には、国際コンテナ戦略港湾として京浜港と阪神港の二港が選定されましたが、東京都としても、引き続きポートオーソリティーも視野に入れて、横浜、川崎との連携を深め、アジアのハブ港の実現に向けて取り組んでいかなければなりません。
 私たち都議会民主党も、国際コンテナ戦略港湾総合特区の創設を初め、国の迅速な取り組みを促すべく、これまでにも増して積極的に働きかけていきたいと思います。そこで、今後、国際コンテナ戦略港湾として、どのように国際競争力の強化に取り組むのか、東京都の見解を伺います。
 国際基幹航路における寄港地の絞り込みが進む中で、日本の港はアジアの諸港と比べ、貨物量の相対的な低下やコスト高という現実の中で、寄港するメリットが少ないとみなされつつあります。また、ガントリークレーンの整備を初め、外貿ふ頭の機能強化やリードタイムの向上なども課題として指摘されています。
 このような中、平成二十三年度予算案は、釜山港などから東京港への利用の転換を図るために、輸送コストの一部補助を実施することなどが盛り込まれています。貨物集荷に向けた取り組みについて、東京都の所見を伺います。
 京浜港の国際競争力を強化するためには、集荷策による貨物の集積や、ふ頭機能の向上に加え、臨海部における道路ネットワークの充実強化が求められております。国際コンテナ戦略港湾への取り組みに向けては、そのバックヤードたる機能が十分に充実している必要があります。
 東京港においては、現在整備中の中央防波堤外側コンテナターミナルの供用開始を契機として、コンテナふ頭の再編を進め、ふ頭機能を強化する方針を打ち出していますが、あわせて、現在整備中の臨海道路Ⅱ期工事を初めとして、道路ネットワークの充実強化を図っていくことが不可欠ではないでしょうか。港湾機能の強化に向けた道路ネットワークの整備に向けて、今後、東京都はどのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 次に、中小企業対策について伺います。
 経済のグローバル化やアジアを中心とする新興国の経済成長などとともに、少子化、高齢化に伴う国内市場が縮小する中で、東京都の産業振興策については、さらに目的の明確化を図り、選択と集中を強めていくべきだということは昨年六月の代表質問においても述べてきたところであります。
 このような中、東京都は一月二十六日に産業振興指針二○一一を発表しましたが、前回策定したような三カ年での取り組みではなく、平成二十三年度において重点的に取り組むべき施策のみを記載し、その後の取り組みについては具体的な言及を避けております。これは、今後の三年間を見通すことが困難であるとの理由からですが、しかし、東京の強みを生かしたイノベーションを積極的に促し、国際競争力を強化していくという方向性にだれが異を唱えるのでしょうか。
 また、政府の成長戦略と相まって、東京都としても、環境、健康、観光といった分野への取り組みをさらに促進させていくことは当然であると考えます。こうした方向性を踏まえ、東京都においては、今後、さらにめり張りがきいた、より大胆な産業施策を展開すべきであると考えますが、今後の産業施策の方向性について見解を伺います。
 中小企業に対する金融支援については、私は、昨年九月の代表質問においても、現下の状況にかんがみ、輸出に軸足を置いている中小企業、あるいは輸出向け企業と取引をしている中小零細企業などに対し、セーフティーネットという視点から、さらに手厚い支援策が必要であると主張してまいりました。
 ことし三月末で国の緊急保証が終了することもあり、来年度の取り組みとしてセーフティーネット型の金融支援が重要となり、あわせて、九月議会でも申し上げたとおり、東京の国際競争力を強化していくために、環境や観光、健康や福祉といった成長産業を育成するという視点、あるいは海外販路を拡大していくといった視点も求められています。そこで、中小企業に対する金融支援について、今後どのように対応していこうとしているのか、見解を求めます。
 少子高齢化の進展により日本国内での市場縮小が見込まれる中にあって、成長が見込まれるアジアに向けて、中小企業の販路拡大を積極的に支援していく必要があります。既に東京都では、商社OBである海外販路ナビゲーターによるきめの細かな相談や、専門商社へのマッチングなどを行う海外販路開拓支援事業を実施しており、また、海外の展示会や見本市への出展支援なども実施しているところであります。
 私は、昨年九月の代表質問においても、これら事業の拡充を求めてきましたが、中小企業の海外販路の拡大に向けて今後どのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 次に、都立産業技術研究センターについて伺います。
 昨年二月、多摩地域の新たな産業拠点となるべく、産業サポートスクエア・TAMAが開設し、いよいよことし五月には江東区青海に都立産業技術研究センターが開設する予定です。この産技研本部の開設を契機として、大学や研究機関、企業や業界団体、あるいは国や周辺自治体などの連携をさらに進め、より効果的、効率的な事業展開を望むものであります。
 また、東京の国際競争力を強化していくためには、都立産業技術研究センターにおいても、環境や福祉などの成長産業におけるイノベーションを促していく取り組みが求められております。東京の将来を担う成長産業の育成に向けて、都立産業技術センターはどのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 次に、新銀行東京について伺います。
 二月四日、新銀行東京の第三・四半期決算が発表されました。実質業務純益で開業以来、初の黒字を計上しましたが、経営陣を初め、関係者の引き続きのご努力をお願いしたいと思います。
 一方で、新銀行のセカンドステージについて、石原知事はこの間、聞かれもしない中国での交渉についてみずから切り出したにもかかわらず、その後の議会答弁では、事柄の性格上、今の段階で詳しく答えられないと繰り返すばかりでした。その後、エイチ・アイ・エスなどの名前も取りざたされましたが、二月四日の定例会見では、経営者の判断であり、私たちが口を出すべきではない旨発言するなど、セカンドステージについてみずから積極的に関与するという姿勢も感じられなくなりました。
 しかし、石原知事は製造物責任があります。石原知事の現在の任期では、今定例会が知事と議論できる最後の機会となります。石原知事は、今任期を終える前にセカンドステージを示すつもりがあるのかないのか、見解を伺います。
 次に、築地市場の移転問題について伺います。
 今議会に提案されている平成二十三年度中央卸売市場会計予算案の中には、豊洲新市場関連予算として、新市場の実施設計費や土壌汚染対策工事費など、計二十一億三千九百万円が計上されています。
 昨年十月二十二日の石原知事による豊洲移転の決断宣言及びその後の東京都の取り組みなどを踏まえれば、私たち都議会民主党は、当該予算に対しては極めて厳しい対応をせざるを得ないと、まず申し上げておきます。
 石原知事は、ことし一月七日の定例会見でも、豊洲移転に反対の根拠というものがさっぱりわからないと述べています。しかし、石原知事の宣言以降も、築地市場の地元中央区からは要望書が出され、築地市場最大の業界団体である水産仲卸は、移転賛成派、反対派が拮抗する中で、総代選、理事選、理事長選が行われています。築地移転を取り巻くこうした状況をつぶさに把握していれば、さっぱりわからないという方がナンセンスであります。
 また、私たち都議会民主党は、十月の特別委員会において、平成二十二年度予算の一部執行に言及するなど、大方の合意形成に向けて柔軟かつ慎重な対応をとってきましたが、石原知事の発言や行いは大方の合意を妨げるものでしかありません。
 この間、石原知事は何か具体的な指示を出すなど、みずから汗をかいてきたのでしょうか。私たちは、大方の合意形成に向けて、地元自治体や市場関係者と真摯に協議をしてきたとは到底思えません。今後、築地市場の移転問題に関して、大方の事業者の合意形成に向けてどのように取り組んでいくのか、石原知事の見解を求めます。
 市場会計とは別に、平成二十三年度一般会計予算案には、築地地区を中心とした将来のまちづくりの検討として、三千万円が新規計上されております。平成二十三年度になっての計上は、今さらの感はぬぐえず、この間の中央区の要望をさんざん無視してきたことをまず自戒すべきです。
 加えて石原知事は、昨年十月二十九日の定例会見において、中央区からの要望に対して、論外論外とこきおろし、市場機能をばらばらにするなんてとんでもない話と酷評しています。量販店対応と小口とを分けるツインマーケットの案は、都議会の特別委員会でも議論されてきたところであり、ましてや地元中央区からの提案について、その可能性すら検討しない姿勢はいかがなものなのでしょうか。
 築地地区を中心とした将来のまちづくりの検討に当たっては、築地の伝統文化も生かしながら、銀座や都心に近接し、ポテンシャルの高い築地地区を中心とした将来のまちづくりについて検討しますと説明されていますが、築地の伝統文化とは、まさに市場があることによって培われてきたものではないでしょうか。
 石原知事は、昨年三月十五日の予算特別委員会において、豊洲も築地も、ともにブランドとして並び立つような妙案をと答弁していますが、今回の検討は、市場との関係においてどのような形で検討を進め、結果を示していく予定なのか、見解を求めます。
 豊洲新市場は、豊洲地区における汚染土壌の完全な除去が大前提であり、その安全性が確認されなければ、平成二十六年度中の開場も不可能なのではないでしょうか。多くの都民同様、私たち都議会民主党も、昨年六月の実証実験の結果でもって豊洲の安全性が確認されたとはみじんも思っていませんが、それ以前に、土壌汚染対策工事を実施する上において、そもそも汚染原因者である東京ガスとの費用負担についての協議はどのような状況にあるのでしょうか。
 既に一月三十一日には用地取得に係る土地鑑定評価は終了しており、また、東京都の説明では、土地鑑定終了後、速やかに用地を取得することとなっていました。そこで、平成二十二年度の豊洲市場関連予算一千二百八十一億円のうち、一千二百六十億円を占めていた用地取得費に関して、東京ガスの負担する額や負担の考え方、執行時期などを含め、東京ガスとの協議はどのようになっているのか、見解を求めます。
 次に、地球温暖化対策について伺います。
 昨年夏の記録的な猛暑から一転して、この冬は日本海側の都市で、過去最も多い積雪を観測するなど、異常気象が続いております。海外に目を転じても、ヨーロッパにおける百年に一度といわれる寒波の到来や、アメリカ東部での記録的な大雪、さらには、南半球のオーストラリアやブラジルなどにおいても異常気象による大洪水が発生し、人々の生活や経済活動に甚大な被害を与えています。
 地球温暖化対策は、まさに待ったなしの状況であると考えます。この危機を回避するためには、世界全体のCO2を今世紀半ばまでに半減させることが必要であり、中でも先進国は八○%以上の削減が求められております。
 このような中、都は、昨年四月、国に先駆けて大規模事業所を対象としたキャップ・アンド・トレード制度を導入しました。昨年、都議会民主党の調査団がヨーロッパ諸国を視察し、キャップ・アンド・トレード制度などのヒアリングを行いました。
 EU諸国で導入されているEU-ETSは、発電所や製鉄所など大規模なエネルギー集約型施設を対象とした制度であるのに対し、都の制度は、都市に集中的に立地するオフィスビルなどの業務系施設を対象とする、世界初となる先駆的な都市型キャップ・アンド・トレード制度であることを改めて認識いたしました。
 そこで、昨年四月の総量削減義務の開始以降の制度の運用実態はどのようになっているのか、また、義務対象事業所においてどのような取り組みが始まっているのか、所見を伺います。
 都のキャップ・アンド・トレード制度では、オフィスなどの事業系施設に関しては八%、工場などの産業系施設に関しては六%の総量削減義務を課しています。また、省エネ対策に積極的に取り組み、他の模範となる事業所は、削減義務率の軽減を受けることができるトップレベル事業所の認定制度も設けております。
 去る一月上旬の、オフィスなど業務系施設に関する認定申請の締め切り時には、事業所、テナントビルを中心に五十五件の申請があったほか、三月末には工場などの産業系施設からも申請が行われる予定と聞いております。そこで、都のキャップ・アンド・トレード制度においてトップレベル事業所を設けた意義を改めて伺うとともに、都としての今後の取り組みの方向性についての見解を伺います。
 大幅なCO2削減を実現するためには、省エネ対策だけでなく、太陽エネルギーなど再生可能エネルギーの利用拡大が不可欠です。調査団も、スペインでさまざまなタイプの太陽光パネルが大規模かつ集中的に設置されている場所を視察してまいりましたが、ヨーロッパ諸国では太陽エネルギーの導入が進んでおり、我が国においてもその利用拡大は急務であると考えます。
 こうした状況にもかかわらず、都は、過去二年間にわたって実施してきた太陽光発電の補助事業を打ち切り、今後は太陽熱補助に特化していくとのことです。我が国の太陽光発電の利用は拡大への歯車が回り始めたばかりであり、ここで補助をやめるとなれば、活発化しつつある太陽光発電市場も再び失速してしまうのではないかと懸念するものであります。太陽光発電については、今後も導入拡大が進んでいくのかどうか、所見を伺います。
 次に、雇用対策について伺います。
 一月二十八日に総務省が発表した昨年十二月の完全失業率は、十カ月ぶりに五%を下回るとともに、新規求人倍率は一・○一倍と二年一カ月ぶりに一倍を上回りました。
 しかし、同日発表された二○一○年の完全失業率は、前年と同じ五・一%と二年続けて五%台の高水準となるなど、雇用情勢は依然厳しく、特に今春卒業予定の大学生の就職内定率は、昨年十二月一日現在、六八・八%と過去最低となり、超氷河期といわれております。
 このような中で、石原知事は「十年後の東京」実行プログラム二○一一において、緊急事業として、新規学卒者の支援を拡大し、雇用のミスマッチを解消することを第一に掲げ、平成二十三年度予算案においても、未就職卒業者緊急就職サポート事業を初めとする新規事業を打ち出しております。また、国と連携しながら、三月の一日、二日、三日の日程で就職応援面接会の実施を追加するなど、年度末が迫る中にあって、さらに取り組みを強化しております。
 国の補正予算によって緊急雇用創出事業も拡充されましたが、区市町村とともに連携しながら、早期に実効性のある対策が講じられることも期待したいと思います。私は、これら雇用就業対策を迅速かつ効率的に展開することで、雇用の改善に全力で取り組むべきと考えますが、石原知事の見解を伺います。
 平成二十三年度予算案において、新規事業として打ち出した、未就職卒業者緊急就職サポート事業は、紹介予定派遣制度を活用し、未就職卒業者と中小企業をマッチングすることにより、正規雇用就職をサポートするものとされています。
 しかし、一方、ことし三月の大学卒業予定者数のうち、就職希望者が四十万五千人と推計され、東京の大学には全国の学生数の四分の一が集まっていることを踏まえれば、より幅広く効率的な新卒者対策も求められております。
 当サポート事業では、七百五十人を対象に十五億円の予算を投じるわけですから、新卒大学生の正規雇用化の実現はもとより、中小企業にとっても有意義な若手人材の育成、確保につながるよう、確実に成果を上げていく必要があります。そこで、未就職卒業者緊急就職サポート事業の意義、時期、支援、その具体的内容について、都の見解を伺います。
 新卒者対策は、大学生だけでなく、同じく厳しい雇用就業状況に置かれている高校生に対しても積極的に取り組んでいくべきであります。
 特に高校生にとっての就職活動は、進路指導に当たる先生に負うところが大きく、こうした先生たちに対して情報提供を初めとした適切な支援を行うとともに、学生たちの勤労観、職業観を早い段階から育成していくことが求められています。
 こうした取り組みは、学校の責任でしっかりと進めていかなければなりませんが、現下の厳しい状況では、就労支援機関での側面的な支援も重要です。そこで、高校生に対する雇用就業支援について、東京都はどのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 石原知事は、学生たちの就職希望が大企業に多く、中小企業に人材が集まらないことを懸念していますが、例えば東京都においても、都立進学校で何名が有名国立大学に進学したかの実績を競うように、各大学でも、どれほど一部上場企業に就職したかを宣伝することで学生たちを集めているのが実態であります。
 こうした価値観の転換は一朝一夕でできるものでありませんが、東京都としても、ものづくりを担う中小企業の人材確保に向けて、製造業の現場で、その魅力を直接体験できる機会を設けたり、学生がものづくり企業の社員から仕事のすばらしさを直接聞くことのできる場をつくるなど、取り組みを着実に進めていくべきものと考えます。
 このような考え方を踏まえて、中小企業におけるものづくり人材の確保について、都としてどのように取り組んでいくのか、見解を求めます。
 次に、公共サービスにおける労働環境の確保について伺います。
 豊かで安心して暮らすことのできる地域社会を実現するためには、さまざまな都民サービスを良好な水準で提供するとともに、都民が適正な労働条件で働き、生活基盤を安定させることも重要です。
 行き過ぎた公共サービスの効率化、コストダウンの要請のもと、事業者間の競争による低入札のしわ寄せは、結果として労働者側に押しつけられるおそれがあります。こうした観点から、国においては、国と地方公共団体に公共サービスの実施に従事する者の労働環境の整備についても、必要な措置を講じることを定めた公共サービス基本法を施行しました。
 一方、指定管理者制度は、都の施設の管理を民間事業者にゆだねる都民サービスの提供に係る制度であります。この制度のもとで、労働者が適正な労働環境で働き、都の施設の管理をゆだねられた事業者などがその社会的責任を果たすよう努めることが、結果として質の高い都民サービスを提供することになると考えます。
 現在、幾つかの区においては、指定管理者における適正な労働環境を維持確保するため、社会保険労務士などの専門家を活用した労働監査や労働モニタリングの導入を行っている例があります。そこで、都の指定管理者制度において、適正な労働環境を確保する取り組みについて所見を伺います。
 次に、医療について伺います。
 まず、がん死亡率を下げ、がんの早期発見、早期治療に必要ながん検診の受診率を目標の五〇%に引き上げる取り組みについて伺います。
 大腸がんや子宮がん、乳がんといったがんは、検診受診率が高くなれば、がん死亡率が減少することが科学的に実証されております。
 しかしながら、東京都におけるがん検診受診率は三〇%程度で、全国の都道府県の中でも低い状況にあり、受診率向上が急務であります。がん検診の受診率向上には、検診対象者個々への受診勧奨、再勧奨が有効であることが諸外国の研究で明らかにされています。
 メタボ検診や○○検診といった情報が多数発信されており、不特定多数を対象としたキャンペーンで、実際の検診受診に結びつけていくことには限界があるものと考えます。都民のがん検診の受診機会は、職場で受ける検診と区市町村の検診とがあり、このどちらについても、個別の受診勧奨、再勧奨を行って受診率を上げていかなければなりません。
 都として、エビデンスのある受診勧奨の取り組みがすべての区市町村で実施されるよう支援することとあわせて、企業におけるがん検診への取り組みが進むよう積極的に働きかけるべきと考えますが、所見を伺います。
 続いて、がん医療水準の向上について伺います。
 東京都では、都拠点病院、地域拠点病院、さらには都認定病院の指定が進んでいます。これに伴って、私たちがこれまでさまざまな機会をとらえて、拠点病院と地域医療機関の連携によるシームレスながん医療、療養のツールとして普及、そして患者の立場からの改善を求めてきた東京都版がん手帳や、がん患者とそのご家族の抱える不安に的確に対応する相談支援センターの開設など、期待すべき新たな取り組みが始まっております。
 他方で、拠点病院、認定病院は、最低でも五大がんの集学的治療や外来化学療法が可能な体制整備など、さまざまな医療機能を備えることが条件となっております。
 備えた機能が十分に活用されているか、あるいは協力して地域のがん医療の向上に貢献できているのか、治療成績はどうかなど、個々の病院が能力を最大限に発揮し切れているか、都としての評価と、その評価情報の開示を行うとともに、都内のがん医療均てん化を実現していけるよう、都として取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 すべての患者が治療早期から受けられる緩和ケア医療について伺います。
 がんといえば、七転八倒のつらく苦しい治療というイメージがあります。我々の祖父母世代には、がんになったが最後、そのような治療が避けられないという時代もありました。また、緩和ケアといえば、積極的治療を断念した後のものというイメージもいまだに強く、治療初期から全般にわたって痛みを適切にコントロールすることが療養上重要であるということもなかなか知られておりません。
 現在、多くのがんでは、疼痛抑制や激しい副作用を避けることなど、かなり可能となっており、できる限り今までどおりの生活を続けながら、がん制圧を目指す方も多くなっております。
 しかし、最新の方法が受けられなかったり、多様な選択肢を十分検討した上での薬剤選択や痛み軽減対策が行われていないケースもあります。がん医療均てん化の中では、患者のQOLばかりでなく、がんそのものの予後にも影響のある痛み、苦痛のコントロールをがん医療に携わるどの医師にかかっても受けられるよう、取り組みを強化することが必要であります。
 また、緩和ケアの実施に当たっては、医師、看護師を初めとした医療スタッフが一体となって患者を支える体制が必要であります。広く関係者の理解を深める必要があります。今後、こうした取り組みにも力を入れていくべきと考えますが、都の所見を伺います。
 次に、地域がん登録実施に向けての取り組みについて伺います。
 がん基本法制定時から、民主党が求めてきた地域がん登録がようやく本格化されることとなりました。地域がん登録データを活用し、しっかりとがん医療の向上に役立てることができるように取り組むべきです。
 対策の企画や評価に活用できる精緻ながん登録としていくためには、医療機関からの患者さんの情報に加え、その後生存されているかどうかの情報を継続的に収集することが必要であります。地域がん登録に必要なこれらの情報をきちんと把握するために、都としてどのように取り組むのか、所見を伺います。
 次に、高齢者施策について伺います。
 認知症介護は、国、都道府県、区市町村がバランスよく協力し合っていくことが大切であります。認知症医療についても同様で、国、都、区市町村の各行政と介護、地域のかかりつけ医、認知症疾患医療センターがバランスよく役割を果たし合って機能するサポート体制を構築していかなければなりません。
 認知症高齢者の数は全国で二百万人といわれています。しかし、これはあくまでも医師の診断書で日常生活において何らかの支援が必要と書かれた人の数であり、実際にはその一・五倍いるといわれています。
 東京都内には、何らかの認知症症状を有する方は二十九万人となっていますが、十五年後には、この数が五十二万人になる見込みとのことであります。今後も高齢者人口の増加が続くことが見込まれており、認知症高齢者の増加がすさまじい時代を迎えることとなり、認知症医療体制の整備が喫緊の課題であります。
 認知症の早期診断、早期治療は、症状の進行を抑えるためにも、あるいは安定した生活を送る上でも大変重要です。幾つかある認知症の原因疾患を特定し、それぞれに合った適切な治療をできるだけ早期に受ける必要がありますが、認知症の鑑別診断については、予約から受診までに数カ月かかる場合もあるようです。
 今後、どのように迅速な診断、治療開始に取り組めるようにしていくのか、都の見解を伺います。
 認知症疾患医療センターは、全国的には既に九十カ所以上が指定されていますが、東京都もようやく原則として二次保健医療圏に一つ指定することとなりました。都はセンター指定を契機に、各医療圏ごとを基本として、地域の医療機関や介護関係者と連携して、認知症高齢者を支えるネットワークを構築していくとしています。
 ネットワーク構築は、認知症高齢者や家族にとってはもちろんのこと、センターを担う病院にとっても、また地域の医療、介護関係者にとっても、また地元区市町村にとっても必要であり、機能させていかなければなりませんが、それぞれの役割分担、取り組みのバランスがとれていないとなかなかうまくいきません。
 がんなど他の分野では、地域連携パスの策定など、都が具体的な連携ツールの作成支援などを行い、地域の連携体制づくりが進められてきましたが、認知症の地域連携体制構築に対して、都はどのような役割を果たしていくのか、所見を伺います。
 また、センターは、自院の中での総合診療体制、すなわち診療科間の連携をとるとともに、相談室を設置し、地域包括支援センターや地域の医療機関からの相談を受けたり、地域の関係機関の支援の連携の促進など、多くの役割を担います。相談室が求められる役割を果たしていくためには、都としても、機能向上に向けた支援を行うべきと考えますが、見解を求めます。
 一医療圏当たり高齢者人口が多い東京で、果たして二次医療圏に一カ所で十分対応できるのでしょうか。また、量的な問題に加えて機能面での課題もあります。
 今回、都は認知症疾患医療センターを地域型と位置づけていますが、認知症で受け入れ先がなかなか見つからない方のセーフティーネット、いわゆる基幹型センターの整備についても、今後の課題であると考えます。
 まずは地域のネットワーク構築が急務であるということは理解しますが、現実に受け入れ先がなかなか見つからない心理、行動障害、いわゆるBPSDや身体合併症の受け入れ体制構築も急ぐ必要があると考えます。今後の指定拡大についての見解を伺います。
 認知症患者の介護者は、介護により体の疲労蓄積、精神的な不安が募ると、人と会うのがおっくうになり、精神的に不安定になったりすることがあります。自分の介護の仕方や接し方が正しいのかという不安は、介護サービス提供者など専門家からの支援や相談だけでなく、家族会など、同じ経験をし、認知症への理解も深い一般の方との会話によって大きく軽減されることもあります。
 家族会は、認知症を初めとした高齢者の家族介護者のサポートに大きな役割を果たしています。今後指定する認知症疾患医療センターにおいては、家族介護者会との連携も重要だと考えますが、どのように取り組むのか伺います。
 高齢者施策に関連して、地域生活定着支援センターについて伺います。
 刑務所を満期出所したけれども、身元引受人がなく、福祉サービスの利用を必要とする人たちが、出所後スムーズに福祉サービスなど地域の支援を受けられるようにコーディネートする地域生活定着支援センターが、ようやく東京都にも設置されることとなりました。
 対象としては、主に障害や高齢により福祉サービスを必要としている方が想定されますが、まさに文字どおり、地域の生活に定着していくための支援が求められております。受け入れ先施設などに必要な助言を行うフォローアップ業務や本人からの相談に対して助言、支援を行うこともあり、多くの関係者、帰住先自治体など、多岐にわたる連絡調整、協力関係が必要とされております。
 都としてこのセンターにどのような役割を与え、どのように機能させていくのか、その所見を伺います。
 次に、教育施策について伺います。
 初めに、新学習指導要領の全面実施に向けた取り組みについて伺います。
 文部科学省は、平成二十年に学校教育法施行規則の一部改正と小中学校の学習指導要領の改訂を行いました。また、平成二十一年度には高等学校の学習指導要領を改訂しました。新学習指導要領は、小学校は平成二十三年度、中学校は平成二十四年度、高等学校は平成二十五年度の入学生からすべての教科などで全面実施されます。これまで、小中学校は平成二十一年度から、高等学校は二十二年度から移行措置としての諸準備を進めてきたと伺っております。
 新学習指導要領は、生きる力をはぐくむという理念を実現するため、その具体的な手だてを確立する観点から改訂が行われました。具体的には、子どもたちの現状を踏まえ、知識や技能の習得とともに、思考力、判断力、表現力などの育成、学習意欲の向上や学習習慣の確立などをこれまで以上に重視しています。各学校においては、こうした新学習指導要領についての理解を深め、適正な教育課程を編成、実施することが重要であると考えます。
 そこで、新学習指導要領の全面実施に向けた都教育委員会のこれまでの取り組みと今後の展開についてお伺いをいたします。
 次に、学校を地域全体で支援する取り組みの推進について伺います。
 人々の価値感や倫理観などの変化、教育へのニーズの高まりなどを背景に、学校は多くの課題を抱えています。
 本来、教育は、学校、家庭、地域、社会のさまざまな関係者の相互の取り組みによって成り立つものです。子どもの教育に係るさまざまな課題に向けて、教員だけで担おうとしてきた意識を改め、関係者が相互に教育に対する責任を自覚し、地域の多様な人材で学校を支える仕組みを整えていくことがこれまで以上に必要となってきています。
 国の委託事業で、地域による学校支援として実施してきた学校支援地域本部事業は今年度で終了しました。来年度からは、学校、家庭、地域の連携協力推進事業の中で、学校支援地域本部と放課後子ども教室、家庭教育支援など、教育支援活動が各地域の実情に応じて有機的に組み合わせられ、今まで以上に学校、家庭、地域の連携協力の強化が図られると期待されております。
 これまでの全国の学校支援地域本部の取り組みは、本部数、学校数ともに増加傾向にあります。また、文科省の実態調査では、約八割の学校で本事業の取り組みがうまくいっている、ある程度うまくいっていると回答され、一定の成果が見られています。
 その成果の事例として、例えば、平成十九年度に学校支援本部を設置した杉並第一小学校では、数ある企画の一つとして地域住民による学習支援を行っています。朝の十分間の漢字学習などを地域の方々が担当し、その効果として、教員が朝の打ち合わせに集中できる、遅刻をする生徒が減る、地域の人々との交流が深まるといった成果が出ています。
 一方、都内の各学校では、地域コーディネーターやボランティアなど、地域人材の養成、確保が困難であるといった課題もあります。成功事例が数多くある一方、このような課題への取り組みも必要となっています。
 東京都においても、学校と地域の活性化につなげていくために、区市町村の学校支援ボランティア推進協議会の設置を一層支援するなど、学校を地域全体で支援する取り組みを促進、普及すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、少人数指導について伺います。
 政府は、三十年ぶりに学級編制の標準四十人を引き下げ、小学一年生に対して三十五人以下学級を予算案に盛り込みました。これにより、新学習指導要領の本格実施やいじめなどの学校教育上の課題への適正な対応、教員が子ども一人一人に向き合う時間の確保を通した質の高い教育の実現をうたっております。
 しかしながら、小学一年生の三十五人以下学級の実現に必要な教員数四千人に関しては、国で二千三百人の定数改善を行い、残り千七百人に関しては、既に地方自治体において少人数学級に使われている加配定数を活用することとなっております。我々は、事前に都の加配定数を持っていかぬよう国に要請してまいりましたが、東京都においても、他府県との公平性の観点から、少人数指導加配定数が減じられることが考えられます。
 この加配定数が減ると、少人数指導を実施していた学校でも、一部少人数指導が実施できない学級が出てくるおそれがあります。現場の混乱を招かぬよう、また、少人数指導の重要性から少人数指導が後退しないようにすべきと考えますが、都の所見を伺います。
 次に、新しい公共支援基金について伺います。
 政府は、新成長戦略の一環として、市民の参加と選択のもとで、NPO法人などが積極的に公共的なサービスの提供主体となる新しい公共を検討し、補正予算に新しい公共支援事業交付金を盛り込みました。そして、東京都においては六億円の基金を設置することになりました。
 新しい公共支援事業のガイドラインによると、この事業の趣旨として、NPO法人にとって寄附や融資を受けやすい環境の整備、NPO法人などへの自立的活動の支援、そして、その結果生まれる公的な財やサービスの効果的な提供と、地域における雇用や参加の場の拡大を掲げております。
 新しい公共の担い手となり得るNPO法人など民間非営利団体の多くは、その活動の源泉を寄附に依存するなど、財政基盤の安定化が課題となっているため、新しい公共支援事業交付金を活用し、その支援をしていくことが重要と考えます。
 NPO法人が六千七百団体と数多く存在する東京都は、率先して寄附を社会に根づかせ、行政依存型ではなく、都民一人一人が地域社会の役割を担っていく新しい公共型社会を実現すべきと考えます。そこで、寄附を東京に根づかせるために、どのような環境整備を行っていくべきとお考えか、都の所見を伺います。
 次に、新しい公共を担う支援対象団体の選定について伺います。
 先般、活動実態の見られない休眠状態の宗教法人が急増していることが朝日新聞で取り上げられました。休眠法人が税制上のメリットを目的に事実上売買されている実態もあり、看過できない問題であります。
 NPO法人に関しても、東京都において事業報告書の提出がなく、督促を行った法人は平成二十一年度で一九・四%ありました。NPO法人は設立、解散などの動きが早く、規模や事業内容もさまざまであります。新しい公共をより発展させていくためには、支援相手を適正に選択していくことが重要であると考えます。そこで、都は、どのようなNPO法人を支援すべきと考えているのか、所見を伺います。
 新しい公共型社会の着実な実現のためには、活動基盤整備や寄附募集の支援など、個々のNPO法人などに対する支援事業とともに、NPO法人などの活動を下支えする市民ファンドや中間支援組織への支援もより重要となってきます。このような市民ファンドや中間支援組織を強化していくことで、寄附文化が広がりを見せ、NPOなどの自立的活動の発展につながっていくと考えられます。そこで、都は、新しい公共の担い手となる団体を支援する組織との連携、支援について、現段階でどのような考えを持っているのか、都の所見を伺います。
 次に、運営委員会の設置について伺います。
 ガイドラインは、都道府県が運営委員会を設置することになっております。運営委員会は、都が作成する基本方針案や事業計画案について了承するとともに、支援事業の選定も行うなど、重要な役割を担っています。
 構成委員は、市民、NPO法人、企業などの中から選定されますが、都が委員を選定する際は、新しい公共型社会の実現の理念と趣旨を理解し、公平中立な選定を行うよう、また、委員会の運営に当たっても、審議内容の透明性を確保するよう取り組みが求められますが、都の所見を伺います。
 次に、離島振興について伺います。
 東京の島々は、豊かな自然や個性あふれる歴史や文化により、都民のいやしの空間として、また、広大な排他的経済水域を確保するなど、その果たす役割は実に大きいものがあります。中でも、伊豆諸島は首都圏に近く、海洋や観光資源など、多くの可能性を有しているにもかかわらず、十分に生かされていないのが現状であります。
 昭和二十八年七月の制定以来、伊豆諸島は離島振興法の対策実施地域に指定され、離島振興計画のもと、離島の自立的発展を促進するための種々の事業が実施されてきました。この間、離島振興法は五次の改定、延長が行われ、現在は平成十五年度から平成二十四年度までの期間延長が行われています。
 そして、離島振興法の基本的な考え方も時代とともに変化しています。東京都離島振興計画にもあるように、離島振興の目的は、離島の後進性を除去し、国土の均衡ある発展から島の個性に着目した振興、価値ある地域差の発揮による発展へと大きくシフトしています。
 離島振興法は、島の暮らしを支える必須な法律となっております。いいかえれば、島の生活は離島振興事業を中心とする公共事業により、島の経済が支えられてきたともいえます。しかしながら、依然として小離島の交通基盤整備を初め、現計画から示された価値ある地域差の発揮による発展のための事業は十分とはいえません。また、各島々の自立的発展のための取り組みも、その目的の達成までの道筋はいまだ厳しい状況であり、さらなる延長は離島住民の方々が強く期待するところであります。
 そこで伺います。平成二十四年度に最終目標年次を迎えるに当たり、離島振興法の基本的な理念を踏まえ、これまでの事業の成果並びに今後の課題について、都の所見を伺います。
 次に、震災対策について伺います。
 都議会民主党は、建築物耐震化の推進を都政の重要課題の一つと位置づけており、これまでにもさまざまな提案を行ってまいりました。建築物の耐震診断、改修の実施は、現行の耐震改修促進法では努力義務にとどまり、所有者の意思にゆだねられていることから、対策の進展に限界があり、耐震化が進んでおりません。
 この課題の解決に向けて、今定例会では、東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例案が提案されています。その内容は、特定緊急輸送道路の指定、その沿道建築物の所有者に対する耐震診断の実施義務、耐震改修などの実施の努力義務、耐震化に要する費用の助成などとなっています。
 私たちは、建築物の耐震化については、その対象を限定せずに進めるべきと考えてはいますが、この条例案を建築物の耐震化促進に向けた施策として、これまでより一歩進んだ内容となっているものと一定の評価をしております。
 そこで、本条例案について、詳細な内容は今後の予算特別委員会や常任委員会で質問をいたしますが、この場では、基本的な考え方などを中心に伺ってまいります。
 まず、本条例案では、耐震診断を義務化することとされています。旧耐震基準で建てられた建築物の所有者が耐震診断を行わない理由として、改修が必要となった場合の建築物の資産価値の低下や、改修や建てかえに向けた設計、工事などの費用負担の発生などに対するおそれから、耐震診断そのものを実施しないケースも多々あるようだと聞いています。
 耐震診断について、これまでの努力義務から、本条例案によって義務化することとした理由とそのねらいとする効果について所見を伺います。
 また、耐震診断を義務化するということは、その義務を所有者が履行することを確実にする必要があります。耐震診断の義務の履行確保策と履行義務の違反者への対応についての所見を伺います。
 次に、本条例案では、耐震診断を義務づけた一方で、耐震診断の結果、耐震性が不足すると判定された建物の耐震改修については、義務でなく、これまでどおりの努力義務にとどめていますが、その理由について所見を伺います。
 耐震改修が努力義務となっていることで、所有者の諸事情により耐震性が不足することが明らかになった建築物が長期間そのまま放置される可能性があります。このように想定される事態に対してどのように対処していくのか、所見を伺います。
 本条例案に伴い、耐震化助成制度の拡充、つまり所有者負担の軽減も実施される予定となっています。昨年の第四回定例会で示された緊急輸送道路沿道建築物の耐震化促進に向けた新たな規制誘導策の基本的な考え方の案では、耐震診断を義務化する必要があること、また耐震診断の義務づけに伴い、公的支援もあわせて拡大する必要があるとの認識が示されていました。
 その際、都議会民主党は、耐震診断を義務化するならば、所有者負担をゼロにすべきと主張をしてまいりました。これに対して都は、今回、耐震診断については、平成二十五年度までの時限措置でありますが、建物所有者の費用負担を実質ゼロとするとしています。
 都はこれまで、建築物の耐震化は基本的には所有者の責任とする考え方、所有者負担の原則を崩してこなかったわけですが、私たちは、耐震診断に限ってはこの原則を大転換したものと受けとめています。
 そこで、耐震診断の所有者負担を実質ゼロとする措置を期限つきとした理由について、所見を伺います。
 都の助成制度は、都が直接所有者に助成するのではなく、区市町村が実施する助成事業に対する助成となっています。しかし、区市町村によって助成制度がない、あるいは制度があっても内容が異なるため、所有者が公的助成を受けられない、あるいは受け取ることができる金額が異なるなどといった状況にあります。このような不公平性を解消するための今後の取り組みについて、都の所見を伺います。
 都が実施している耐震化に向けた耐震化助成制度のうち、緊急輸送道路沿道建築物や木造住宅を対象とした制度では、改修工事に限らず建てかえなども助成の対象となっております。
 一方、緊急輸送道路沿道以外の分譲マンションの耐震改修助成については、現在、改修工事をする場合だけが助成対象となっていますが、マンションの耐震化を促すため、建てかえる場合も助成対象とすべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、暴力団排除条例について伺います。
 この条例は、都内における暴力団の活動が活発であること、すなわち平成元年から二十一年度までの対立抗争の累計件数が全国の約二八%に達するほか、二十一年度中における暴力団などによると見られるけん銃発砲件数が全国の約二七%、暴力団員などの検挙人員は約一七%、暴力団対策法に基づく中止命令の発出件数は約二五%と、いずれも全国の人口に占める東京の割合より大きく上回っていることから、社会全体で暴力団を排除することが必要不可欠として提案されました。
 これまでの警察対暴力団の構図を社会対暴力団に転換することにより、例えば条例案では都民などの責務が盛り込まれ、都民や事業者による情報提供を初め、暴力団排除活動に関する施策への参画、協力などを規定しています。
 しかし、暴力団との対決を警察から社会全体に転換し、都民や事業者に一定の責務を課すのであれば、まずもって東京都が暴力団排除に最前線で積極的に取り組んでいくとの決意なくしては、都民や事業者の協力は得られません。
 そこで、東京都として、暴力団排除に向けた決意についてまず伺いたいと思います。
 事業者が自主的に暴力団との関係を遮断した場合は適用除外とし、それ以外は関与の程度に応じて調査、勧告、事業者名の対外公表、行政命令、そして罰則と、事業者が暴力団との関係遮断を進めるため段階的に措置が定められています。
 また、暴力団との関係遮断を妨害する行為を禁止し、保護対象者に対する警察官による警戒活動その他の安全で平穏な生活を確保するために必要な措置を講じることが定められています。
 暴力団を社会全体で排除していこうというその趣旨は理解でき、評価できるものですが、現実に長い経緯のもとで、直ちに転換することが困難な事例も考えられます。例えば、町会、自治会が主催する祭りへの露店の出店などは、いわゆる長いつき合いの中で行われてきました。この種の露店の中には、暴力団と深い関係のある露店があるのも事実です。
 暴力団と関係する事業者は、当然に排除されなければなりませんが、これが、条例ができたから直ちにやり方を変えるといわれても、いたずらに混乱を引き起こすことになりかねません。
 本条例の施行日までに、こうした町会、自治会などにはどのような働きかけを行い、関係遮断を支援していくのか、都の見解を伺います。
 同時に、必ずしも意図したものではなくとも、暴力団とのかかわりが生じてしまい、その関係を容易に遮断できない場合もあります。こうした事業者を初めとした方々の暴力団との関係遮断を促進するためにどのような対策を講じるお考えか、見解を伺います。
 また、妨害行為の禁止が定められておりますが、それでもなおかつ脅迫、つきまとい、嫌がらせなどが予想され、関係遮断をちゅうちょすることは容易に想像されます。こうした事業者や都民に対してどのような保護策を講じられるのか、所見を伺います。
 こうした暴力団排除の取り組みの一方で、殺人、強盗や暴行など、凶悪犯、粗暴犯を初めとした外国人の犯罪も後を絶ちません。警視庁の取り締まりもあり、検挙件数、人員ともに減りつつありますが、日々生活している私たちの体感としては、決して安心できる状況にはありません。
 政府の観光戦略もあり、訪日外国人が一昨年を除き年々ふえつつありますが、その裏には外国人の犯罪組織の侵入も危惧されております。このような外国人犯罪に対してどのような対策を講じられようとお考えか、所見を伺います。
 以上で、都議会民主党を代表しての質問を終えます。
 なお、答弁によっては再質問を留保しておきます。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 大沢昇議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、二十三年度予算についてでありますが、今回の予算編成では、依然として厳しい財政環境が続いている中にあって、都民の不安を払拭するため、いかに効果的な手だてを迅速に講じるか、また、中長期的な視点に立ち、東京の新たな成長につなげる取り組みをいかに揺るぎなく進めていくかが大きな課題でありました。このため、まず築いてきた強固な財政基盤を堅持しながら、現場を持つ強みを生かして、より実効性の高い施策を構築し、財源を重点的に振り向けました。
 こうして編成した二十三年度予算は、雇用対策や中小企業支援、公共建築物の耐震化の推進など、都民の不安に的確に対応するとともに、都市インフラの整備を初め、東京の可能性を引き出す戦略的な取り組みを着実に進めておりまして、都民の期待に十分こたえるものになっていると確信しております。
 この予算をてことして、厳しい社会経済情勢に直面する都民に安心と活力をもたらすとともに、将来への展望を指し示し、東京から日本の活力を切り開いていきたいと思っております。
 次いで、都政の総括についてでありますが、就任以来さまざまな課題に取り組んでまいりましたが、そうしたものを取りまとめて実行プログラムの中で今回お示しをしたわけであります。
 都政の総括をとのお尋ねでありますが、これまで手がけたことについてみずからあれこれ評価するつもりはありません。かつて中曽根元総理は、政治家の人生は、そのなし終えた結果を歴史という法廷において裁かれることのみで評価されると述べておられましたが、政治家の評価についての正しい見識であると私は思います。
 いずれにしても、首都を預かる知事として、歴史と文明の大きな流れを見きわめながら、東京と日本の現在と将来を一心に考えて、都政のかじ取りに当たってきたつもりであります。
 次いで、将来への指針についてでありますが、今日、我が国が混迷している原因は、追いつき追い越せで発展を遂げたものの、その先の進むべき国家の進路、いかなる社会をつくり上げるかを見失っていることにあります。
 その中で、東京を世界の範となる都市へと進化させるべく、明確な近未来図を「十年後の東京」計画で描いて、日本の羅針盤ともなる政策を率先して進めてきました。東京を世界に冠たる成熟した都市へとさらに進化させていくためには、直面する課題への対応だけではなくて、長期的な展望を持つ必要があります。
 今回の実行プログラムの改定では、そのためのよすがとして「十年後の東京」計画の先に目を向けた、東京の都市像の一端を将来の指針として示しました。
 次いで、自由貿易についてでありますが、我が国は資源にせよ、食料にせよ、その多くを海外に依存しております。また、すぐれた製品をつくり出し、海外に売ることで、経済的にも成り立ってまいりました。
 我が国にとって自由貿易が極めて重要なのは論をまちませんが、一方で今日の国際情勢を眺めれば、日本は難しい事態に直面しております。新興国の発展や世界的な人口増加によって、今後、資源や食料の需要が増大し、物価も上がるでしょう。
 そうした中で、資源は外交カードとしての重みをさらに増してまいります。要は、外交力の問題でありますが、その背景にさらに何を持つべきかという問題でもあります。
 地球温暖化によって干ばつや耕地の荒廃が進めば、食料そのものの確保が難しくなってもまいります。こうした要因によって、自由な経済取引がいつ妨げられるかわかるものでもありません。自由貿易なるものは、もともとそういう本質を持っているということを十分心得てかかるべきだと思います。
 国際情勢が複雑さを増し、かつてないリスクにこの国がさらされている中で、いかに国家と国民を守るかが政治に問われております。国にはTPPへの参加の是非の議論にとどまらず、さらに重層的、複合的に戦略を組み立ててもらいたいものだと思います。
 次いで、中国との関係強化についてでありますが、東京と北京市は長年にわたる友好都市で一応ありまして、近年では水、環境などの分野で相互に協力関係を築いております。
 一方、昨今の中国政府の振る舞いは、尖閣諸島をめぐる一連の事態だけではなく、東京の沖ノ鳥島をただの岩と一方的に呼び、領有権を認めず、日本の排他的経済水域を否認するなど、まさに私にいわせれば言語道断であります。
 昨日、私も属しております外人記者クラブで、あの中国の漁船らしき得体の知れぬ船と保安庁の船の衝突のビデオをリリースしました、もとの職員であります一色さんの講演を聞きましたが、彼も今までの経験に照らして、この春、海上の気象が落ちついてきた段階で一体何が起こるかということを非常に懸念しておりました。いかに中国が経済的に大きくなったとしても、国際ルールを踏みにじり、日本の国益を害する行為は断じて許せません。
 都市同士は国家同士とは異なる友好の関係の形もあるでしょう。都としては、北京市民、中国国民と友好関係を築くことは決してやぶさかではありませんが、しかし、中国政府のあの姿勢では、都市間の友好も何もあったものではないんじゃないでしょうか。
 まずは、日本政府が、現政府も、現実的に理にかなった実効性のある外交戦略、安全保障を構えて、国民の生命と財産をきちっと守るべく、中国政府に毅然とした態度で臨むべきだと思います。
 また、我が国の周囲を眺めますと、インド、ベトナム、インドネシア、ロシアなど、日本にとって有益な、非常に利益的な経済可能性を秘めながら、日本のすぐれた技術や人材などを必要としている国がたくさんあります。選択肢を広げ、多角的に外交、経済協力を求めることが重要であると思います。
 次いで、新銀行東京についてでありますが、新銀行東京は親身に取引先の経営相談というものを、ほかの銀行は全くしておりませんのに、全くとはいいません、ほとんどしていないのに、この銀行はそれを本当に地道にやってまいりました。きめの細かい対応を行ってきました。
 そして、貸付条件の変更を行ういわゆるリスケジュールを他行に先駆けて実施するなど、小零細企業への支援を行いながら、懸命に再建を進めてまいりました。
 平成二十三年度までの再建計画で目標とした黒字の達成でありますが、こうした努力の結果、平成二十二年度第三・四半期において、本業の収支であります実質業務純益についても初の黒字を計上いたしました。
 新銀行東京は、小零細企業を支援するという役割を十全に果たせるように、引き続き再建の努力を重ねております。
 今後の事業展開については、新銀行東京の経営陣がその姿を検討するものでありまして、都はその取り組みを引き続き支援していくつもりであります。
 銀行の製造物責任とのお話がありましたが、確かに私はその新銀行東京の発案者でありますが、設立に当たっては都議会の賛同を得ております。そのときは、都議会民主党も賛成をいただいております。
 新銀行東京の再建のために、私はこれまでセカンドステージへのさまざまなサジェスチョンを行ってきました。議員の皆さんにも、製造の責任者の一人として、小零細企業支援という新銀行東京の趣旨を踏まえて、これからも有益な提案をしていただきたいと思います。
 築地市場の移転問題に関する事業者の合意形成についてでありますが、築地市場は施設の老朽化もきわまり、市場業者の経営環境も一段と悪化しております。首都圏三千三百万人の食生活を支える豊洲新市場の整備を遅滞なく進めることが、首都の行政を預かる主体者としての都の責任であります。
 昨年の豊洲移転の決断の際には、移転への理解を求める私からのメッセージをすべての市場業者に届けるとともに、業界代表の方々とも直接お会いし、話を伺ってきました。水産仲卸業者の一部に反対はありますが、市場はこれらの方々だけではなくて、水産及び青果の卸、仲卸、買い出し人、関連事業者等の多くの事業者で成り立っておるのでありまして、大多数の事業者は早期の豊洲移転を望んでおります。これまで繰り返し、これらの大多数の事業者から新市場の建設推進を進める要望が都や都議会にも提出されております。
 もとより、移転を具体的に進めていくには、市場業者が個別に抱える課題や不安に対して丁寧に耳を傾け、安心して移転ができる環境を整備することが重要であります。そこで、先般、築地市場内に移転相談窓口を設置したことに加え、先月には経営や資金面などにおける移転支援の方向性を業界団体に提示いたしました。
 今後とも、新市場整備に一人でも多くの市場業者の理解が得られるよう努力をしてまいります。
 次いで、雇用就業対策の取り組みについてでありますが、長引く景気の低迷の中で、失業率の高どまりや前年度よりさらに悪化している大学生の就職内定率など、雇用情勢は依然として厳しい状況にあります。
 この問題の本質的な解決のためには、国が明確な成長戦略のもと、実効性のある経済対策を進め、雇用を創出することが不可欠でありますが、都としてこの事態を座視することはできません。
 都はこれまで、雇用創出や職業訓練の大幅な拡充、さらには就業支援の強化など、切れ目のないさまざまな雇用対策を実施してまいりました。
 来年度は、これらの対策をさらに推し進め、東京の活力の源泉である中小企業と若者の双方を結びつける取り組みを新たに実施するほか、雇用創出事業も今年度を上回る規模で実施するなど、機を逸することなく、重層的に雇用就業対策を実施してまいります。
 次いで、暴力団排除についてでありますが、暴力団は社会の脅威であり、社会の敵であります。社会全体でその排除に取り組んでいかなくてはなりません。
 とりわけ、日本経済の中心地である東京は、集中、集積が進み過ぎたせいもあって、全国の暴力団の五人に一人が活動し、不当な利益を上げていく現状であります。東京から暴力団の資金を絶ち、徹底して封じ込めることは、ひとり東京のためだけではなく、日本全体に不可欠なことであります。
 こうした動きを先導すべく、都は既に都営住宅から暴力団員を排除しました。昨年からは、都が締結するすべての契約から暴力団を排除しております。
 今後とも、警視庁、区市町村と連携を強化しながら、企業や地域で暴力団と決別する機運を高め、それに向けた具体の運動をさらに強力にバックアップするなど、都としても全力で取り組んでまいります。
 他の質問については、警視総監、教育長、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監池田克彦君登壇〕

〇警視総監(池田克彦君) 四点のご質問にお答えします。
 初めに、祭礼等の行事を主催する町会、自治会等に対する関係遮断に向けた支援についてであります。
 祭礼や縁日で親しまれている露店の中には、古くからいわゆるテキ屋組織とつながりを持つものがあり、その収益の一部が暴力団の資金源になっている実態にあるため、暴力団排除の観点からそのあり方を改善していく必要があると認められます。
 本条例案が可決、成立した場合には、祭礼等の行事からの暴力団排除が進み、暴力団組織に流れる資金を封じる効果が期待できるほか、露天商の皆さんにとりましても暴力団との関係を遮断する契機となり、業界の健全な発展にも寄与するものと考えております。
 警視庁といたしましては、露店が長年にわたり都民の間で親しまれてきたという歴史と事実を尊重し、当面は祭礼等の行事の主催者や運営に携わる町会、自治会の皆様を初め、広く地域のご理解を得ることに力を注ぎ、これらの方々や露天商の皆さんと連携を深めた上で、着実に暴力団の影響を排除するための方策を進めてまいります。
 次に、事業者と暴力団の関係遮断を促進するための対策についてであります。
 ご指摘のとおり、意図せずに暴力団との関係を持ってしまい、容易に関係遮断ができずにいる事業者も少なからず存在していると思われます。このような事業者に対しては、警察の行った調査に基づき、利益供与の事実があれば公安委員会が勧告し、これに従わなければ、その旨を公表することとなります。
 他方、この勧告がなされる前にみずから事実を申告し、将来にわたって違反をしない旨の書面を公安委員会に提出した事業者に対しては、これらの手続は行わないという、いわば引き返す黄金の橋を用意しております。
 警視庁といたしましては、これらの手続の各段階において、当該事業者との接点が生まれることにより、必要な助言指導を行い、あるいは相談を受けるなど、ケース・バイ・ケースのきめ細かい対応を行うとともに、関係遮断を決断した事業者には、暴力団追放運動推進都民センターと連携し、必要な情報の提供や関係者の保護を初めとする支援を適切に行ってまいります。
 このように、本条例案は事業者による自主的な関係遮断を促進して、事業活動から暴力団を排除することを主眼とするものであります。
 次に、保護対策についてであります。
 都民の自主的な暴力団排除活動を促進するためには、活動にかかわる都民や事業者の皆さんが安心して取り組めるよう環境を整えていくことが不可欠であり、警視庁におきましては、従来から関係者の保護に全力で取り組んできております。
 このたびの条例案では、この点を一層明確にするため、暴力団排除活動に取り組んだことなどにより、暴力団または暴力団員から危害を受けるおそれがあると認められる方々に対して、警察官による警戒活動など、必要な保護措置を講ずることを第十四条に明記することとしております。
 また、第二十一条が禁止する妨害行為を行っている者に対しては、公安委員会の委任を受けた警察署長が迅速にその中止等を命令し、これに違反した場合には罰則を科すなど、徹底した取り締まりができるようにしております。
 警視庁といたしましては、暴力団に指一本触れさせないという強い覚悟を持って、都民の安全確保に万全を期してまいります。
 最後に、外国人犯罪への対策についてであります。
 近年の外国人犯罪の情勢は、強盗、侵入窃盗、薬物密売等の従来型の犯罪に加え、犯罪を助長する基盤、すなわち犯罪インフラの蔓延により、世界的規模で活動する犯罪組織が我が国へ浸透するなど、治安への悪影響が現実のものとなってきております。
 このような厳しい情勢に対し、警視庁におきましては、海外の治安機関と連携を強化するとともに、外国人犯罪組織が進出しやすい繁華街等に重点的に捜査力を投入するなど、対策を強化しております。
 また、入国管理局とも連携して合同摘発に取り組むなど、不法滞在者の摘発を積極的に推進しております。
 さらに、蔓延する犯罪インフラ、例えば偽装結婚や偽造旅券などでありますけれども、こういうものが犯罪組織の重要なツールになっている現状にかんがみ、これら犯罪インフラに関する情報収集を行うとともに、その解明を進めることにより、犯罪組織に打撃を与えていくことが重要であり、その対策を進めてまいる所存であります。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、新学習指導要領の全面実施に向けたこれまでの取り組みと今後の展開についてでございます。
 新学習指導要領は、教育基本法や学校教育法の改正などを踏まえ、生きる力をはぐくむという理念のもと、児童生徒が変化の激しいこれからの社会を生きるために、確かな学力、豊かな人間性、健康、体力の知、徳、体をバランスよく育てることをねらいとしております。
 こうした新学習指導要領改訂の趣旨や内容に基づきまして、各学校が適正な教育課程を編成、実施するよう、都教育委員会として支援することは極めて重要な課題であります。このため、都教育委員会は、国に先駆けて、平成十九年度から学習指導要領改訂の背景やその趣旨、今後の東京都における学習指導のあり方や留意点、全面実施までに準備すべき事項等についての都独自の指導資料を作成、配布いたしますとともに、説明会を実施し、各学校の教育課程の適正な編成、実施を支援してまいりました。
 また、公立学校の授業研究の推進役を担う教員を対象といたしまして、すべての教科等で新学習指導要領に対応した授業のあり方についての研究や研修を実施してまいりました。
 今後も、都教育委員会は、こうした教員の研究や研修を一層充実し、その成果を全都に普及するなどして、各学校の学習指導要領の趣旨を実現する教育を強力に支援してまいります。
 次に、学校を地域全体で支援する取り組みの推進についてでございます。
 変化の激しいこれからの社会において、確かな学力、豊かな人間性、健康、体力など、子どもたちの生きる力をはぐくむためには、地域が持つ教育力を学校の教育活動に効果的に取り入れ、多様な体験活動など幅広い教育を行うことが重要でございます。
 学校支援ボランティア推進協議会は、地域全体で小中学校を支援する体制をつくり、地域の人々の多様な知識や経験を活用した支援活動を行うことにより、教育の充実を図る取り組みでございます。
 都教育委員会は、区市町村における学校支援ボランティア推進協議会の設置を推進しておりまして、現在、都内二十一区市の小学校二百八十校、中学校百四十一校で国語や算数の授業の補助のほか、職場体験、読み聞かせ、登下校の安全確保などの支援活動が行われております。
 また、都教育委員会は、広域的な観点から、地域人材と学校との調整を担う地域コーディネーターの研修の実施、先進的な活動事例や企業、NPOと連携した教育支援プログラムの情報提供などを行っており、今後とも、多くの学校で地域の教育力を活用した教育活動が行われますよう、区市町村を支援してまいります。
 次に、少人数指導加配についてでございます。
 小学校一年生の三十五人以下学級の実施に必要となる教員数は、全国で約四千人と見込まれます。これを賄うため、国は、児童数の減少に伴う定数減の二千人と、既存の少人数指導加配定数のうち、全国で小学校一年生を対象に少人数学級を編制するために転用されている千七百人を充当するとともに、三百人の定数を純増し、基礎定数化することといたしました。
 都教育委員会は、従前より少人数指導が極めて有効であると考えておりますことから、少人数指導のための加配を少人数学級に転用はしておりませず、この加配が削減されますと、少人数指導の実施が一部不可能となります。
 このため、都教育委員会は、少人数指導のための加配定数を少人数学級のために転用していない自治体の加配定数を削減しないよう、国に対してあらゆる機会を通して申し入れてまいりました。
 しかし、今月十四日に、国は、全都道府県に対して一律に少人数指導加配定数の削減を行うことといたしまして、都においては九十六の定数の削減が内示されたところでございます。
 このため、都教育委員会としては、国の動きを注視するとともに、少人数指導を実施している小中学校に混乱を生じさせないよう検討しているところでございます。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

〇東京都技監(河島均君) 七点のご質問にお答えいたします。
 まず、緊急輸送道路沿道建築物の耐震診断の義務化についてでございます。
 建築物の耐震化を進めていくためには、耐震診断を確実に実施し、建築物の正確な耐震性能を把握することが必要不可欠でございます。現行法は、耐震診断の実施を所有者の意思にゆだねておりまして、それが大きな壁となっております。
 このため、都では、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を一刻も早く進め、震災時の広域的な救援活動や復旧、復興の大動脈を確実に確保するため、特に重要な道路を指定し、その道路に面する建物の所有者に対して耐震診断を義務づけることといたしました。
 耐震性能が明確になることで、耐震改修に向けた所有者の自覚と行動が促されるとともに、行政としても、個々の所有者に対して具体的な指導や助言等を行うことが可能となります。
 また、不動産取引における重要事項説明におきまして、診断結果に関する説明義務が法律上規定されていることから、耐震性能が不足する場合には、改修等の措置が講じられていくものと考えられます。
 これらのことから、耐震診断の義務づけは、耐震化を推進するための効果的な施策であると考えております。
 次に、耐震診断の義務履行の確保等についてでございますが、耐震診断が円滑に実施されるためには、まず所有者が耐震診断の実施に主体的に取り組める環境を整えることが重要であると認識しております。
 このため、所有者に対して、条例の内容について十分説明するとともに、所有者が安心して耐震診断に取り組めるよう、診断技術者の紹介、相談への対応などの技術的支援や費用負担の軽減策を講じ、所有者の積極的な取り組みを促してまいります。
 耐震診断が自発的に行われない場合には、条例に基づく指導助言等を行い、必要に応じて公表や命令などを適切に実施し、義務履行を促してまいります。その上でなお診断義務が履行されない場合には、罰則の適用も視野に入れ、耐震診断の実施を確実に図ってまいります。
 次に、耐震改修の実施を努力義務にとどめた理由についてでございますが、努力義務を超えて条例による義務づけを行うには、義務づける行為を明確にする必要がございます。しかし、緊急輸送道路沿道建築物の倒壊を防ぐ方法は、耐震改修のほか、建てかえや除却など多種多様でございまして、所有者がそのいずれを選択するかは、テナントの有無や将来の利用計画等、個々の事情によって異なっております。
 したがって、所有者の個々の事情にかかわらず、条例で特定の方法に限定した耐震改修を強いることは適切ではなく、仮に義務づけたとしても義務が履行されない場合に、行政が強制的な措置をとることは困難となり、義務づけの実効性を確保することはできません。こうしたことから、耐震改修につきましては努力義務にとどめたものでございます。
 次に、耐震性能が不足する建築物への対応についてでございますが、耐震化を進めるには、耐震診断の義務づけによって得られる結果を耐震改修に着実につなげていくことが重要でございます。
 今回の条例では、診断結果の報告を義務づけており、その内容を十分踏まえ、個々の建築物の所有者に対して、耐震改修を進めるために必要な具体的な指導助言を適切に行ってまいります。
 また、相談への対応などの技術的支援や耐震改修に係る費用負担の軽減策を講じ、所有者の主体的な取り組みを促してまいります。
 さらに、必要に応じて条例に基づく耐震改修の実施の勧告を行うことで、耐震化の速やかな実現につなげてまいります。
 次に、耐震診断の助成制度についてでございますが、民間建築物の耐震化は、自助、共助、公助の原則に基づき、所有者みずからがその必要性を理解し、主体的に取り組むことが基本でございます。
 耐震診断の費用については、これまでも所有者の責任で対応することを原則としながら、老朽化した木造住宅が特に密集している地域など、防災対策上必要性が高い場合には、一定の助成を行ってまいりました。
 特定緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化は、特に公共性、緊急性が高いことから、耐震診断の義務づけに合わせ、原則として所有者負担がなくなる助成制度を整備するとともに、これを短期間で集中的に推進する必要があることから、平成二十五年度までの時限措置を設け、所有者の迅速な取り組みを促していくことといたしました。
 次に、区市町村を通じた助成についてでございますが、緊急輸送道路の機能を確保するためには、沿道建築物の倒壊による道路の分断を路線全体にわたって防ぐ必要があり、一体的に耐震化を進めていくことが重要でありますが、従来の制度では区市町村の取り組みに差があることから、所有者の負担が異なる場合がございます。
 このため、今回の新たな助成制度では、耐震化に必要不可欠な耐震診断の費用につきましては、従来の制度における区市町村負担分を都がすべて負担することにより、沿道建築物が立地する区市町村にかかわらず、所有者に対する助成に差が生じないようにいたします。
 また、耐震改修費用につきましても、区市町村間の差を可能な限り少なくするため、すべての区市町村で従来の所有者負担を軽減することができるよう、助成制度を拡充いたします。
 今後、緊急輸送道路沿道の耐震化をしっかりと進めるためには、区市町村による取り組みが欠かせないことから、これまで耐震化助成を制度化していない場合にはその創設を、制度化している場合には一層の拡充を強く働きかけてまいります。
 最後に、分譲マンションの耐震改修助成についてでございますが、分譲マンションは建物規模が大きく、被災時の影響が広く及ぶ一方、権利者も多く、耐震化に向けた合意形成が難しいなどの課題がございます。
 都はこれまでも、管理組合の取り組みを促すため、関係団体と連携したセミナーの開催や相談窓口の設置とともに、耐震アドバイザー派遣、耐震診断、改修工事に対する助成を行っております。
 昭和五十六年以前の旧耐震基準のマンションの中には、建築後相当の年数を経たものもあり、これらのマンションでは、改修だけでなく建てかえも視野に入れて検討することが合意形成の上でも有効でございます。
 このため、来年度から建てかえの場合にも耐震改修助成相当分を補助することとしております。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

〇財務局長(安藤立美君) 三点についてお答えをいたします。
 まず、最終補正予算についてでありますが、今回の補正予算は、第一に今年度予算の執行状況を踏まえ、歳入歳出の精査を行うこと、第二に国の経済対策を伴う補正予算に対し所要の対応を行うこと、この二点の方針により編成をいたしました。
 特に歳入歳出の精査といたしましては、母子福祉資金貸付金を増額するなど、所要の経費を計上するとともに、給与改定による給与費の減や事業費の実績減など、不用となることが明らかな事項についてしっかりと精査を行いました。
 こうした取り組みにより、基金の取り崩しを縮減し、財源として活用可能な基金残高をできる限り確保しており、都財政を取り巻く厳しい環境を見据えながら、強固な財政基盤の確保にも十分気を配った予算であるというふうに考えてございます。
 次に、今回の補正予算のもう一つの柱であります国の経済対策に伴う基金事業や交付金の活用についてでありますが、国の補正予算を踏まえ、子宮頸がん対策や子育て支援、雇用創出などのための基金を新たに創設、または拡充するとともに、現時点で実施可能な事業については、その基金の一部を取り崩し、今年度内に実施することといたしております。
 また、新たに創設された地域活性化交付金については、その趣旨に沿って、警察力や消防力のさらなる充実強化、DV対策や自殺予防対策に充当するなど有効に活用しており、都のこれまでの取り組みと相まって、都民の安全・安心に資するものと考えております。
 次に、将来にわたる健全な財政運営についてでありますが、二十一年度に一兆円もの減収となった都税収入は、二十三年度においても小幅な増にとどまっており、こうした厳しい財政環境は今後も続くと見込まれております。
 さらに、少子高齢化の進展や首都機能を維持発展させるためのインフラ整備や更新の需要などを踏まえると、現在のみならず将来に向けても、財政の健全性を維持していくことがこれまでにも増して重要になってまいります。
 そのためには、今後とも事業評価の取り組みなどを通じ、むだの排除を徹底するとともに、一つ一つの施策を厳しく検証し、将来への影響も踏まえながら、その効率性や実効性の一層の向上を図るなど、都庁の自己改革力をさらに高めるべく、努力を続けていかなければならないと考えております。
 その上で、将来の財政負担も見据え、都債を適切に活用しつつ、基金についても計画的に活用し、残高の確保に十分に配慮することで、中長期的に積極的な施策展開を支え得る財政基盤を確保してまいります。
 また、法人事業税の暫定措置については、都財政にとって将来にわたる負担ともなることから、一日も早く撤廃するよう国に対し引き続き強く働きかけてまいります。
   〔総務局長比留間英人君登壇〕

〇総務局長(比留間英人君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、これからの行政改革の方向性についてでございます。
 都はこれまで、社会経済状況の変化や多様化する都民ニーズに的確に対応するため、監理団体や民間など多様な主体との連携を図りつつ、徹底したむだの排除による執行体制の再編や、新たな公会計制度導入によるコスト意識の醸成など、既存の行政システムを抜本的に見直す改革に取り組んでまいりました。
 今日、景気の動向など都を取り巻く状況は極めて不透明であり、こうした中で、今後の地方分権の流れや、都政のさまざまな重要課題に迅速的確に対応していくためには、行政運営の質を高めるさらなる改革を進めていくことが必要でございます。
 今後とも、行政としての責任を果たしつつ、都民サービスの向上を図るため、監理団体や民間などとの連携を一層強化するとともに、スリムで効率的な執行体制の確立や情報公開のさらなる推進、すぐれた実務感覚を備えた人材の確保、育成に取り組むなど、不断の行政改革を推進していきます。
 次に、指定管理者制度における労働環境の確保でございます。
 指定管理者には、公の施設の管理運営に当たり、各施設の設置条例において、労働基準法や最低賃金法など関係法令の遵守を義務づけております。
 また、指定管理者の選定に当たっては、経費面だけではなく、都が募集要項に示す施設の管理水準や適正な人員配置などを満たした事業計画となっているかなど、質的な面を重視して審査を行っております。
 今後とも、指定管理者制度の運用に当たっては、こうした公募段階の取り組みとともに、実際の管理運営において労働環境を含めて事業計画が履行されているかを適切に評価するなど、必要な取り組みを進めてまいります。
 次に、島しょ地域の振興についてでございます。
 島しょ地域は、豊かな海洋資源と自然環境に恵まれ、また、我が国の排他的経済水域の確保等の観点から国益を維持する上でも、重要な役割を担っております。
 都はこれまで、島しょ地域の重要性にかんがみ、地元町村の意見を十分踏まえ、離島の地理的、自然的特性を生かした振興を基本理念に離島振興計画を策定し、島しょ地域の生活水準の向上に取り組んでまいりました。これにより、交通体系、道路、水道、医療体制などの基本的な生活環境は大きく改善してきております。
 しかしながら、島しょ地域特有の厳しい自然環境の中で、島民生活のより一層の安定を図るためには、引き続き、道路、港湾など社会基盤の充実が不可欠であり、また、観光を初めとする産業の活性化、医療人材の確保などの課題も多く残されております。
 島しょ地域の振興には、何より町村みずからが主体性を発揮し、自立した島づくりに取り組むことが重要でございます。
 都は、今後とも、こうした町村の取り組みと連携を図りながら、島しょ地域の自立的発展に向けた振興策を積極的に展開してまいります。
   〔知事本局長秋山俊行君登壇〕

〇知事本局長(秋山俊行君) アジアのヘッドクオーターについてでございますが、国におきましては、総合特区法案やアジア拠点化推進法案が、今後国会で審議される予定となっております。
 東京がアジアのヘッドクオーターとして、海外からの企業誘致や開発拠点の形成を推進していくためには、現行の法律の枠組みを超えた大胆な規制緩和等が必要であると考えておりますが、都といたしましては、今後、国の動向を見きわめながら、新たな制度の活用も含め検討してまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 八点のご質問にお答えいたします。
 まず、海外企業の誘致についてでありますが、都はこれまでも、海外企業の誘致のため、東京のすぐれたビジネス環境等について積極的なPRを行ってまいりました。具体的には、海外の企業に東京の魅力を紹介する海外企業誘致セミナーへの参加を幅広く呼びかけて、東京への進出に向けたきっかけづくりを行ってまいりました。
 また、東京への進出に必要な情報提供の窓口である東京ビジネスエントリーポイントにつきまして、ホームページや在日大使館を通じて宣伝を行いまして、海外企業が都内で活動しやすい環境づくりにつなげております。
 さらに、都内の企業立地や、中小企業の技術や製品の情報を、外国語でウエブサイトを通じ発信しております。
 これらを通じて、今後とも、海外企業の誘致に向けた取り組みを効果的に進めてまいります。
 次に、今後の産業施策の方向性についてであります。
 東京の産業を発展させていくためには、すぐれた技術を有する中小企業や優秀な人材の集積など、東京が持つ強みを生かしてイノベーションを促進し、国際競争力の強化を図ることが重要であります。
 こうした方向性につきましては、既に平成十九年三月に策定いたしました東京都産業振興基本戦略において明らかにしております。これまでも、本戦略に沿いまして、中長期の視点に立った環境、健康、航空機など成長性の高い産業への支援や経済情勢の変化に対応した中小企業の経営基盤の強化など、各種産業振興策を講じてまいりました。
 一方、現在の経済情勢は依然として厳しく、円高も長期化の様相を呈しており、こうした状況が中小企業に及ぼす影響も見きわめる必要がございます。このため、平成二十三年度におきましては、都市課題解決のための技術戦略プログラムなどにより、成長産業への支援を強化するとともに、円高対策に万全を期すことといたしました。
 引き続き、基本戦略を踏まえ、将来の東京の産業発展を見据えながら、具体的な施策を展開してまいります。
 次に、中小企業に対する金融支援についてであります。
 都は、大企業と比較して信用力が弱い中小企業の運転資金や設備資金の需要にこたえるため、幅広く資金繰り支援を行っております。
 平成二十年秋に端を発した世界的な経済危機以降、都の制度融資では、国の緊急保証制度に対応した融資メニューである経営緊急を中心に、厳しい経営環境に直面した都内中小企業を支援してまいりました。
 国は、緊急保証制度を今年度末をもって終了するため、都の経営緊急も終了せざるを得ません。しかしながら、いまだ都内中小企業を取り巻く経営環境は回復しておらず、来年度は、都の制度融資において、これまで講じてきた小規模企業者に対する保証料の二分の一補助を継続するとともに、円高対応融資メニューを創設して五百億円の融資枠を確保するなど、セーフティーネット融資を重点的に推進してまいります。
 こうした取り組みにより、東京の産業基盤を支える中小企業の資金繰りを支援してまいります。
 次に、海外販路開拓支援に向けた取り組みについてであります。
 アジア市場の発展は目覚ましく、今後も大きな成長が見込まれることから、都は、今年度から機械、金属等の分野ごとに、商社OB等による海外販路ナビゲーターを配置し、中小企業に対し、現地の市場動向に関する情報の提供などを行っております。
 これまでの支援の中で、精密機械や化学等の分野でも商取引のニーズが高いことや、海外での展示会出展が効果的との状況が明らかになっております。このため、ナビゲーターの数を倍増して情報提供を行うとともに、海外展示会への出展機会も拡充を図ることといたしました。
 今後とも、本事業を通じて、中小企業の海外販路開拓の支援を着実に行ってまいります。
 次に、産業技術研究センターの取り組みについてであります。
 東京の産業が国際競争力を高めるため、将来に向け成長が期待される産業や新事業を創出し育成していくことが重要であります。このため、産業技術研究センターでは、環境、福祉、安全・安心など、これからの東京を支える産業分野における技術支援を積極的に行うこととしております。
 具体的には、ことし五月、江東区に新本部を開設することを機に、例えば環境負荷の小さい太陽電池を利用した製品や、インフルエンザのウイルスを迅速に判別できる機器などの研究開発を支援してまいります。
 また、首都大学東京と協力し、環境や省エネルギー技術の研究開発等を進め、その成果を今後の実用化に向けて中小企業に提供してまいります。
 次に、未就職卒業者緊急就職サポート事業の内容についてであります。
 新卒者の厳しい就職状況を踏まえ、都はこれまでもさまざまな支援策を実施してまいりましたが、都内にはすぐれた人材を求める中小企業が数多くあるにもかかわらず、学生の目が向きにくく、ミスマッチが生じているため、来年度から新たな支援策として未就職卒業者緊急就職サポート事業を開始いたします。
 この事業は、就職先が決まらないまま大学等を卒業した方や、卒業後三年以内で求職中の方を対象に、中小企業での就業体験を通じて正規雇用を目指すものであります。まず研修で社会人としての基礎力を養い、キャリアカウンセリングを通じて企業とのマッチングを行った上で就業体験を実施いたします。
 就業期間中もキャリアカウンセラーによる職場訪問などにより、若者、企業双方へのフォローアップを行い、正規雇用化を促進いたします。
 現在、新年度の早い段階から本事業を開始できますよう着実に取り組みを進めております。
 次に、高校生に対する就職支援についてであります。
 高校生の就職活動支援は、学校現場がハローワークと連携して行うことが基本でありますが、高校生の就職状況は厳しさが続いており、東京しごとセンターにおいてもきめ細かい支援を実施しております。
 一月には、東京しごとセンターに新卒特別応援窓口を開設し、キャリアカウンセリングや学生向けの各種セミナーを実施しており、高校生も対象としております。
 来年度は、新たに学校現場の希望を踏まえ、三年生を対象に実践的な面接対策セミナーを実施するとともに、就職希望の一、二年生を対象に就職活動の基本を学ぶしごとセンター就職体験セミナーを実施いたします。また、教員を対象とする進路指導者向けセミナーも開催いたします。
 今後とも、学校現場と密接に連携しながら、着実に取り組みを進め、高校生の就職活動を適切に支援してまいります。
 最後に、中小企業のものづくり人材の確保についてでありますが、東京のものづくりを支える中小企業の発展を図る上で、そこで働く人材を安定的に確保することが不可欠であります。そのためには、企業の持つ魅力を学生に伝えて、正しく理解してもらうことが効果的であります。
 これまで都は、中小企業で活躍する若者を紹介したホームページを設けたり、就職活動に臨む学生やその保護者を対象にものづくりの現場を訪問するツアーを実施するなど、中小企業で働く魅力を広く発信してまいりました。
 今後は、若者に現場の魅力を伝える機会をふやすため、中小企業の経営者による学生向けの講義や企業でのインターンシップの機会の確保に取り組んでまいります。
 引き続き、ものづくり中小企業の魅力を発信することによりまして、中小企業の人材確保を支援してまいります。
   〔港湾局長中井敬三君登壇〕

〇港湾局長(中井敬三君) 港湾機能の強化に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、国際コンテナ戦略港湾としての競争力強化に向けた取り組みについてでありますが、都はこれまで、躍進著しいアジア諸港に対峙して、国際基幹航路の維持拡大を図るため、川崎市、横浜市とともに入港料の一元化など、さまざまな連携施策を展開してきております。
 さらに、昨年八月には、国際コンテナ戦略港湾に選定されており、今後は、これを契機として、京浜港への貨物集荷策やターミナルリース料の低減などの取り組みを行ってまいります。
 また、貨物量の増加に備え、中央防波堤外側コンテナターミナルの整備にあわせ、東京港全体のコンテナターミナルの再編を行うなど、港湾機能を充実強化してまいります。
 こうしたハード、ソフト両面の対策を総合的に展開し、熾烈なアジア諸港との競争の中で確固たる地位を築いてまいります。
 次に、貨物集荷に向けた取り組みについてでありますが、現在、国内各港から釜山港などアジア諸港を経由して欧米に輸送されているコンテナ貨物を京浜港に取り戻すためには、国内貨物輸送のコスト低減に向けた取り組みが必要であります。
 このため、都は、来年度から川崎市、横浜市と連携し、船会社や荷主企業などを対象に輸送コストの一部補助を行い、釜山港経由などから、京浜港経由への利用転換を促進する新たな貨物集荷の制度を創設いたします。
 こうした京浜港みずからの取り組みとともに、内航航路や鉄道等の国内貨物輸送ネットワークの強化により、広域からの貨物集荷を進める国のフィーダー機能強化事業とも連携を図り、京浜港の貨物集荷力強化に積極的に取り組んでまいります。
 最後に、東京港の道路ネットワークの整備についてでありますが、港湾物流の効率化を図るためには、ふ頭と背後地とを結ぶ道路交通機能の充実強化が極めて重要であります。
 現在、東京港では、羽田空港や千葉方面への東西方向の交通の円滑化を図るため、平成二十三年度の完成を目指し、臨海道路Ⅱ期事業及び新木場・若洲線の整備を進めております。また、これらの路線の開通に伴う交通量の増加に対応するため、国道三五七号との交差点部において、立体化事業をあわせて実施しております。
 さらに、中央防波堤地区の新たなふ頭開発に対応し、南北方向の交通機能を強化するため、今後、臨港道路南北線の早期事業化を図ってまいります。
 これらの事業を着実に推進することで、東京港の物流機能の強化に全力で取り組んでまいります。
   〔中央卸売市場長岡田至君登壇〕

〇中央卸売市場長(岡田至君) 二点のご質問にお答えいたします。
 最初に、築地地区を中心としたまちづくりの検討についてです。
 検討に当たっては、このまちの特質を十分考慮する必要があります。
 まず、築地というまちは、都心や銀座に隣接し、都市機能が集積しているなど、極めて高いポテンシャルを有しており、まちづくりという視点から、今後の東京を考える上で極めて重要なエリアになっております。
 また、このまちは、築地市場を中心として、場外市場など周辺とのかかわりの中でにぎわいを生み出し、独特の伝統文化を継承してきたという特質を持っております。
 来年度から実施する豊洲に新市場を整備した後の築地地区を中心とした将来のまちづくりの検討におきましては、このようなまちの特質を考慮して、広く関係者の意見も聞きながら、局をまたいで多面的に取り組んでまいります。
 次に、東京ガス株式会社との協議についてです。
 東京ガス株式会社は、新市場予定地におきまして、環境確保条例上必要な対策を実施し、平成十九年にはその手続を完了しております。
 しかし、その後の都の調査により、新たに都市ガス製造の操業に由来する汚染物質が検出されたことから、都は、平成二十一年二月に土壌汚染対策経費の一部負担につきまして、東京ガス株式会社に協議の申し入れを行いました。
 都はこれまで、東京ガス株式会社に対し、土壌汚染対策の詳細な内容や新市場予定地において行いました実験の結果などについて丁寧に説明し、理解を求めてきました。
 現在、東京ガス株式会社と具体的に話し合いを進めており、今後とも精力的に協議を進め、早期の合意に全力を尽くしてまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 地球温暖化対策に対しての三点のご質問でございます。
 まず、大規模事業所における総量削減義務の取り組み状況についてでございますが、約千三百の対象事業所は、昨年の秋以降、都に対しまして、削減義務量の算定の基礎となる基準排出量の決定申請を行うとともに、今後五年間の削減計画を提出いたしました。
 これらの提出に当たりましては、我が国で初めて第三者機関による検証というプロセスを義務づけましたが、対象事業所におきましては、計画的な取り組みを進めていただきまして、順調に提出が行われました。
 また、本制度の開始を契機に、最新鋭の省エネ性能を有するオフィスビル等の建設が進んでいるほか、既存の建築物におきましても、大幅なCO2の排出削減に向けた省エネ改修や再生可能エネルギーの大量導入が行われるなど、先駆的な取り組みが始まっております。
 次に、トップレベル事業所認定制度についてでございますが、この制度は、総量削減義務の対象となります大規模事業所におきまして、最高水準の省エネ設備の導入や運用対策が進んでいると認定された場合、削減義務率が軽減される仕組みでございまして、事業者の削減努力を正当に評価して、制度の公平性を担保することを目的としております。
 加えて、この認定基準は、事業所が目指すべき省エネ対策の最高水準を提示する内容ともなっておりまして、この水準を目指すことによりまして、CO2の大幅な排出削減が可能となります。
 今後、都は、新築建築物が目指すべき省エネ水準として、この認定基準の活用を促すとともに、既存の事業所におきましても、より高い取り組みを誘導し、大規模事業所の省エネ対策のレベルアップを図ってまいります。
 最後に、太陽光発電の今後の導入拡大についてでございますが、都の補助事業に続く国の補助事業の復活や余剰電力買い取り制度の創設等によりまして、都内の住宅用太陽光発電の年間設置数はこれまでの約五倍に増加いたしまして、全国的にも約二倍となるなど、着実に市場が拡大してきております。
 今後、業務、産業系施設を含めた国の全量買い取り制度が予定どおり開始されれば、太陽光発電の市場は一層拡大するものと認識しております。
 既に都内では、大規模建築物の新築に当たっての再生可能エネルギーの導入検討義務やキャップ・アンド・トレード制度の開始を契機といたしまして、都心の業務ビルや羽田空港などの大規模施設でも太陽光発電の導入が進んでおります。
 今後とも、都の気候変動対策の諸施策を総合的に活用して、太陽光発電の普及拡大を進めてまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 十点のご質問についてお答え申し上げます。
 まず、がん検診についてでございますが、受診率向上のためには、区市町村及び職場の検診それぞれにおいて受診促進を図ることが重要でございます。
 このため、都は、個別の受診勧奨と未受診者への再勧奨等による受診率向上策に取り組む区市町村を、包括補助事業を活用して支援しており、効果が認められた取り組みを周知することにより、実施地区の拡大を図っております。
 また、職域での取り組みを促進するため、がん検診に積極的な企業をがん検診推進サポーターに認定し、活動を支援いたしますとともに、企業や健康保険組合に対しまして、がん検診の重要性や従業員の受診促進の具体的事例を情報提供するなど、積極的な働きかけを行っております。
 今後も、地域や職域での取り組みを進め、都民のがん検診受診率の向上を目指してまいります。
 次に、がん医療水準の向上についてでございますが、がん診療連携拠点病院及び東京都認定がん診療病院の機能を評価し、都民に医療機関の情報を提供するためには、医療機関ごとに取り扱うがんの種別や五年生存率等を把握する院内がん登録データの蓄積が必要でございます。
 都におきましては、拠点病院では平成二十一年に、認定病院では平成二十二年に院内がん登録データの集約を開始しており、現在、必要なデータの蓄積を進めております。
 今後、十分なデータを収集し、東京都がん診療連携協議会におきまして、分析、評価を行い、その結果を医療機関に還元し、都におけるがん医療の均てん化を促進してまいります。
 次に、緩和ケアの取り組み強化についてでございますが、都はこれまでも、拠点病院等による地域の医療機関への診療支援や医師を対象とした緩和ケア研修などに取り組んでまいりました。
 来年度は、緩和ケア等に関するさらなる理解促進を図るため、がん医療に携わる医師や看護師等医療従事者を対象としたがん対策普及啓発事業を実施いたします。
 本事業では、がん治療の経験者による講演や多職種の医療従事者が現場で活用できる取り組みをテーマとしたパネルディスカッションを開催いたします。
 今後とも、都民が安心して緩和ケアを受けられるよう、研修や普及啓発に取り組んでまいります。
 次に、地域がん登録についてでございますが、地域がん登録は、がんに罹患した方の診断、治療等に関するデータや死亡情報等を集約し、罹患率や生存率を把握する仕組みでございます。
 精緻ながん登録としていくためには、がん患者の罹患情報を数多く収集することが必要であり、院内がん登録を実施している拠点病院や認定病院を初めとする医療機関に協力を依頼してまいります。また、患者の生存状況を確実に把握するために、人口動態統計の活用に加え、区市町村への住民票確認を定期的に実施いたします。
 今後、医師会等の関係団体と連携をして、協力医療機関の拡大を図りますとともに、区市町村に対しまして、地域がん登録の意義を説明し、理解と協力を求めてまいります。
 次に、認知症疾患医療センターに関します五点についてお答えいたします。
 まず、認知症の迅速な診断、治療についてでございますが、都内には認知症の専門医療機関が数多く存在しておりますが、特定の医療機関に患者が集中し、予約から初診に至るまで時間を要する事例もございます。
 来年度、二次保健医療圏ごとに整備をいたします認知症疾患医療センターは、みずから診断、治療を行うことに加え、圏域内にある他の専門医療機関の診療状況を把握することなどにより、患者の状況に応じて適切な医療機関を紹介する役割を担うこととなります。これにより、認知症の疑いのある方を迅速に専門医療機関につなげ、早期診断、早期治療を図ってまいります。
 次に、認知症に係る地域連携体制の構築についてでございますが、認知症の方が地域で安心して生活を継続できるようにするためには、地域の医療機関同士、さらには医療と介護が緊密に連携することが必要でございます。
 このため、認知症疾患医療センターは、医療・介護連携協議会や事例検討会の開催などを通じまして、地域の医療機関、地域包括支援センター、区市町村等の関係機関とネットワークの構築に取り組むこととしております。
 都は、各センターのこうした取り組みが円滑に進むよう、標準的な地域連携パスを作成するなど、地域連携体制構築に向けた支援を行ってまいります。
 次に、認知症疾患医療センターの医療相談室についてでございますが、医療相談室は、専門医療機関や地域包括支援センターとの連絡調整、退院時の調整等を行う地域連携のコーディネーター役として位置づけられております。
 このため、医療相談室には、認知症に関する専門知識を有する精神保健福祉士や保健師等を配置することとしております。
 都は、各センターの地域での取り組みについて、専門職同士が情報交換する場を設けるなど、医療相談室の充実を図ってまいります。
 次に、認知症疾患医療センターの指定についてでございますが、センターは、地域の医療機関等と連携して、認知症に係る医療支援体制を構築していくことが重要であるため、東京都保健医療計画に定める二次保健医療圏に一カ所を基本として指定する予定でございます。
 お話の認知症の方の身体合併症や行動障害などについては、センターだけでなく、地域の認知症に係る専門医療機関、一般病院や精神科病院などとの緊密な連携のもと、地域全体で対応してまいります。
 今後の指定拡大につきましては、センターの運営状況などを十分踏まえ、その必要性を検討してまいります。
 次に、家族介護者の会との連携についてでございますが、認知症の方の介護を担っている家族は、徘回などの周辺症状への対応に戸惑い、周囲に理解されない孤立感の中、精神的なストレスや不安を感じていることが多くなります。こうした方々にとって、家族介護者の会は、日ごろの状況を話したり、家族としての思いや悩みを共有し、地域のさまざまな情報を交換するなど、支え合いの場となっております。
 認知症疾患医療センターにおきましては、このような家族介護者の会と十分連携し、介護者に対する相談活動や適切な情報提供などを行ってまいります。
 最後に、地域生活定着支援センターについてでございますが、矯正施設退所後、親族等の受け入れ先がなく、福祉的な支援を必要とする高齢者や障害者を福祉サービス等につなげ、社会復帰を支援していくことがセンターの役割でございます。
 このため、保護観察所と協働し、入所者から本人の意向や生活歴、心身の状況等を把握するとともに、区市町村や他の道府県のセンターなどの関係機関と連携をいたしまして、矯正施設退所者が適切な場で必要な福祉サービスが受けられるよう事業を実施してまいります。
   〔生活文化局長並木一夫君登壇〕

〇生活文化局長(並木一夫君) 新しい公共支援基金に関する四点のご質問にお答えいたします。
 初めに、寄附を根づかせるための環境整備についてでございますが、国は、新しい公共の担い手となるNPO法人等の自立的活動を後押しする新しい公共支援事業交付金を決定し、二年間の限定で約六億円を都に交付することといたしました。
 都は、今後、ファンドレイザーと呼ばれる資金調達の専門家による個別指導や多様な媒体を活用した寄附金の募集の広報など、新しい公共支援事業交付金を利用した方策を検討し、NPO法人等に対する寄附へのインセンティブが働きやすい環境の整備に努めてまいります。
 次に、新しい公共支援事業の対象となるNPO法人等の選定についてでございますが、国が定めた新しい公共支援事業のガイドラインでは、地域の諸課題を解決する意欲や能力があり、継続的に活動していくNPO法人、ボランティア団体、公益法人や社会福祉法人などの民間非営利組織を支援の対象としております。
 今後、新しい公共支援事業に関して、具体的な内容を決定していくこととなりますが、それぞれの支援事業の対象としてふさわしいNPO法人等をこのガイドラインに沿って選定してまいります。
 次に、中間支援組織との連携、支援についてでございますが、都はこれまでも、いわゆる中間支援組織でございます東京ボランティア・市民活動センターを通じて、市民活動に関する情報提供や会計、税務に関する相談等を行い、NPO法人等の活動を支援してまいりました。
 今回の新しい公共支援事業の実施に当たりましては、引き続き東京ボランティア・市民活動センターと連携して支援を行っていきますとともに、当該センターに限らず、NPO法人等に対して支援のノウハウや実績があり、公平に事業を実施できる中間支援組織との新たな連携、支援の方策等について検討してまいります。
 最後に、運営委員会の設置についてでございます。
 国が定めたガイドラインによりますと、新しい公共支援事業の実施に当たって設置する運営委員会では、都が策定する事業計画の検討、支援事業や支援対象者の選定、モデル事業の選定及び評価等を行うものとされております。
 このため、こうした多様な運営委員会の役割を担うことができるNPO法人等の活動に関して高い見識を有する人物など、公平中立な立場から委員を選定していきたいと考えております。
 また、運営委員会は原則として公開することとされておりまして、都におきましても、議事録をホームページで公開することなどにより、審議内容の透明性、公平性を確保してまいります。

〇議長(和田宗春君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時二十三分休憩

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