平成二十三年東京都議会会議録第一号

平成二十三年二月八日(火曜日)
 出席議員 百二十六名
一番小林 健二君
二番加藤 雅之君
三番吉住 健一君
四番桜井 浩之君
五番山崎 一輝君
六番野田かずさ君
七番福士 敬子君
八番土屋たかゆき君
九番山内れい子君
十番くりした善行君
十一番小山くにひこ君
十二番西沢けいた君
十三番田中  健君
十四番関口 太一君
十五番畔上三和子君
十六番斉藤やすひろ君
十七番栗林のり子君
十八番遠藤  守君
十九番大松あきら君
二十番鈴木 章浩君
二十一番菅  東一君
二十二番きたしろ勝彦君
二十三番田中たけし君
二十四番鈴木 隆道君
二十五番星 ひろ子君
二十六番柳ヶ瀬裕文君
二十七番淺野 克彦君
二十八番新井ともはる君
二十九番佐藤 由美君
三十番中村ひろし君
三十一番たきぐち学君
三十二番田の上いくこ君
三十三番島田 幸成君
三十四番しのづか元君
三十五番大島よしえ君
三十六番中山 信行君
三十七番高倉 良生君
三十八番橘  正剛君
三十九番松葉多美子君
四十番神林  茂君
四十一番早坂 義弘君
四十二番高木 けい君
四十三番宇田川聡史君
四十四番鈴木あきまさ君
四十五番矢島 千秋君
四十六番山加 朱美君
四十七番西崎 光子君
四十八番滝沢 景一君
四十九番中谷 祐二君
五十番笹本ひさし君
五十一番山下ようこ君
五十二番神野 吉弘君
五十三番鈴木 勝博君
五十四番興津 秀憲君
五十五番岡田眞理子君
五十六番伊藤 ゆう君
五十七番古館 和憲君
五十八番かち佳代子君
五十九番伊藤 興一君
六十番吉倉 正美君
六十一番上野 和彦君
六十二番谷村 孝彦君
六十三番野上 純子君
六十四番吉原  修君
六十五番山田 忠昭君
六十六番三宅 正彦君
六十七番石森たかゆき君
六十八番高橋 信博君
六十九番服部ゆくお君
七十番こいそ 明君
七十一番原田  大君
七十二番佐藤 広典君
七十三番尾崎 大介君
七十四番伊藤まさき君
七十五番山口  拓君
七十六番松下 玲子君
七十七番野上ゆきえ君
七十八番西岡真一郎君
七十九番今村 るか君
八十番吉田康一郎君
八十一番たぞえ民夫君
八十二番清水ひで子君
八十三番小磯 善彦君
八十四番長橋 桂一君
八十五番藤井  一君
八十六番ともとし春久君
八十七番遠藤  衛君
八十八番三原まさつぐ君
八十九番中屋 文孝君
九十番村上 英子君
九十一番林田  武君
九十二番田島 和明君
九十三番樺山たかし君
九十四番古賀 俊昭君
九十五番くまき美奈子君
九十六番大西さとる君
九十七番いのつめまさみ君
九十八番門脇ふみよし君
九十九番小沢 昌也君
百番石毛しげる君
百一番花輪ともふみ君
百二番大津 浩子君
百三番大塚たかあき君
百四番相川  博君
百五番大山とも子君
百六番鈴木貫太郎君
百七番東村 邦浩君
百八番中嶋 義雄君
百九番木内 良明君
百十番川井しげお君
百十一番高橋かずみ君
百十二番野島 善司君
百十三番三宅 茂樹君
百十四番吉野 利明君
百十五番宮崎  章君
百十六番比留間敏夫君
百十八番斉藤あつし君
百十九番増子 博樹君
百二十番泉谷つよし君
百二十一番山下 太郎君
百二十二番酒井 大史君
百二十三番大沢  昇君
百二十四番中村 明彦君
百二十五番馬場 裕子君
百二十六番和田 宗春君
百二十七番吉田 信夫君

 欠席議員 なし
 欠員
百十七番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事佐藤  広君
副知事猪瀬 直樹君
副知事吉川 和夫君
副知事村山 寛司君
教育長大原 正行君
東京都技監都市整備局長兼務河島  均君
知事本局長秋山 俊行君
総務局長比留間英人君
財務局長安藤 立美君
警視総監池田 克彦君
主税局長荒川  満君
生活文化局長並木 一夫君
スポーツ振興局長笠井 謙一君
環境局長大野 輝之君
福祉保健局長杉村 栄一君
産業労働局長前田 信弘君
建設局長村尾 公一君
港湾局長中井 敬三君
会計管理局長新田 洋平君
消防総監新井 雄治君
交通局長金子正一郎君
水道局長尾崎  勝君
下水道局長松田 二郎君
青少年・治安対策本部長倉田  潤君
病院経営本部長川澄 俊文君
中央卸売市場長岡田  至君
選挙管理委員会事務局長宮川 雄司君
人事委員会事務局長多羅尾光睦君
労働委員会事務局長山本 洋一君
監査事務局長三橋  昇君
収用委員会事務局長藤井 芳弘君
包括外部監査人鈴木 啓之君

二月八日議事日程第一号
第一 第一号議案
平成二十三年度東京都一般会計予算
第二 第二号議案
平成二十三年度東京都特別区財政調整会計予算
第三 第三号議案
平成二十三年度東京都地方消費税清算会計予算
第四 第四号議案
平成二十三年度東京都小笠原諸島生活再建資金会計予算
第五 第五号議案
平成二十三年度東京都母子福祉貸付資金会計予算
第六 第六号議案
平成二十三年度東京都心身障害者扶養年金会計予算
第七 第七号議案
平成二十三年度東京都中小企業設備導入等資金会計予算
第八 第八号議案
平成二十三年度東京都林業・木材産業改善資金助成会計予算
第九 第九号議案
平成二十三年度東京都沿岸漁業改善資金助成会計予算
第十 第十号議案
平成二十三年度東京都と場会計予算
第十一 第十一号議案
平成二十三年度東京都都営住宅等事業会計予算
第十二 第十二号議案
平成二十三年度東京都都営住宅等保証金会計予算
第十三 第十三号議案
平成二十三年度東京都都市開発資金会計予算
第十四 第十四号議案
平成二十三年度東京都用地会計予算
第十五 第十五号議案
平成二十三年度東京都公債費会計予算
第十六 第十六号議案
平成二十三年度東京都多摩ニュータウン事業会計予算
第十七 第十七号議案
平成二十三年度東京都臨海都市基盤整備事業会計予算
第十八 第十八号議案
平成二十三年度東京都病院会計予算
第十九 第十九号議案
平成二十三年度東京都中央卸売市場会計予算
第二十 第二十号議案
平成二十三年度東京都都市再開発事業会計予算
第二十一 第二十一号議案
平成二十三年度東京都臨海地域開発事業会計予算
第二十二 第二十二号議案
平成二十三年度東京都港湾事業会計予算
第二十三 第二十三号議案
平成二十三年度東京都交通事業会計予算
第二十四 第二十四号議案
平成二十三年度東京都高速電車事業会計予算
第二十五 第二十五号議案
平成二十三年度東京都電気事業会計予算
第二十六 第二十六号議案
平成二十三年度東京都水道事業会計予算
第二十七 第二十七号議案
平成二十三年度東京都工業用水道事業会計予算
第二十八 第二十八号議案
平成二十三年度東京都下水道事業会計予算
第二十九 第二十九号議案
東京都知事等の給料等に関する条例の一部を改正する条例
第三十 第三十号議案
東京都知事の給料等の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十一 第三十一号議案
東京都附属機関の構成員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第三十二 第三十二号議案
非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第三十三 第三十三号議案
東京都職員定数条例の一部を改正する条例
第三十四 第三十四号議案
特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十五 第三十五号議案
市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十六 第三十六号議案
都と特別区及び特別区相互間の財政調整に関する条例の一部を改正する条例
第三十七 第三十七号議案
東京都区市町村振興基金条例の一部を改正する条例
第三十八 第三十八号議案
東京都人事委員会委員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第三十九 第三十九号議案
東京都選挙管理委員の報酬及び費用弁償条例の一部を改正する条例
第四十 第四十号議案
東京都監査委員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第四十一 第四十一号議案
東京都議会議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部を改正する条例
第四十二 第四十二号議案
東京都都税条例の一部を改正する条例
第四十三 第四十三号議案
東京都固定資産評価審査委員会の委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第四十四 第四十四号議案
東京都固定資産評価員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第四十五 第四十五号議案
東京都収用委員会委員等の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第四十六 第四十六号議案
東京都新しい公共支援基金条例
第四十七 第四十七号議案
保険業法に基づく特定保険業の認可審査に係る手数料に関する条例
第四十八 第四十八号議案
東京都消費者行政活性化基金条例の一部を改正する条例
第四十九 第四十九号議案
東京文化会館及び東京芸術劇場条例の一部を改正する条例
第五十 第五十号議案
東京都体育施設条例の一部を改正する条例
第五十一 第五十一号議案
東京都教育委員会の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第五十二 第五十二号議案
学校職員の定数に関する条例の一部を改正する条例
第五十三 第五十三号議案
東京都教育委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第五十四 第五十四号議案
都立学校等に勤務する講師の報酬等に関する条例の一部を改正する条例
第五十五 第五十五号議案
都立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第五十六 第五十六号議案
東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
第五十七 第五十七号議案
東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例
第五十八 第五十八号議案
東京都医療施設耐震化臨時特例基金条例の一部を改正する条例
第五十九 第五十九号議案
東京都地域自殺対策緊急強化基金条例の一部を改正する条例
第六十 第六十号議案
東京都介護基盤緊急整備等臨時特例基金条例の一部を改正する条例
第六十一 第六十一号議案
東京都妊婦健康診査支援基金条例の一部を改正する条例
第六十二 第六十二号議案
東京都子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例基金条例
第六十三 第六十三号議案
医学系総合研究所の助成等に関する条例の一部を改正する条例
第六十四 第六十四号議案
心身障害者の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例
第六十五 第六十五号議案
東京都国民健康保険広域化等支援基金条例の一部を改正する条例
第六十六 第六十六号議案
東京都認定こども園の認定基準に関する条例の一部を改正する条例
第六十七 第六十七号議案
東京都児童福祉施設条例の一部を改正する条例
第六十八 第六十八号議案
東京都婦人保護施設条例を廃止する条例
第六十九 第六十九号議案
東京都障害者支援施設等に関する条例の一部を改正する条例
第七十 第七十号議案
東京都身体障害者更生援護施設条例の一部を改正する条例
第七十一 第七十一号議案
東京都立総合精神保健福祉センター及び東京都立精神保健福祉センター条例の一部を改正する条例
第七十二 第七十二号議案
東京都立病院条例の一部を改正する条例
第七十三 第七十三号議案
東京都中山間地域等農業活性化支援基金条例を廃止する条例
第七十四 第七十四号議案
東京都緊急雇用創出事業臨時特例基金条例の一部を改正する条例
第七十五 第七十五号議案
東京都立職業能力開発センター条例の一部を改正する条例
第七十六 第七十六号議案
東京海区漁業調整委員会委員及び東京都内水面漁場管理委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第七十七 第七十七号議案
東京都海上公園条例の一部を改正する条例
第七十八 第七十八号議案
東京都労働委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第七十九 第七十九号議案
都民の健康と安全を確保する環境に関する条例の一部を改正する条例
第八十 第八十号議案
東京都自然公園条例の一部を改正する条例
第八十一 第八十一号議案
東京都立公園条例の一部を改正する条例
第八十二 第八十二号議案
東京都暴力団排除条例
第八十三 第八十三号議案
警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
第八十四 第八十四号議案
東京都公安委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第八十五 第八十五号議案
都立板橋学園特別支援学校(仮称)(二十二)改築工事請負契約
第八十六 第八十六号議案
東京芸術劇場(二十二)改修工事請負契約
第八十七 第八十七号議案
東京消防庁金町消防署庁舎(二十二)新築工事請負契約
第八十八 第八十八号議案
中央環状品川線南品川換気所建築工事請負契約
第八十九 第八十九号議案
東京芸術劇場(二十二)改修電気設備工事請負契約
第九十 第九十号議案
東京芸術劇場(二十二)改修空調設備工事請負契約
第九十一 第九十一号議案
警視庁鮫洲運転免許試験場庁舎棟(二十二)改築空調設備工事請負契約
第九十二 第九十二号議案
白子川地下調節池工事(その五)請負契約
第九十三 第九十三号議案
環二地下トンネル(仮称)築造工事(二十二 一─環二汐留工区)請負契約
第九十四 第九十四号議案
古川地下調節池取水施設工事請負契約
第九十五 第九十五号議案
包括外部監査契約の締結について
第九十六 第九十六号議案
公立大学法人首都大学東京が徴収する料金の上限の認可について
第九十七 第九十七号議案
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター定款の変更について
第九十八 第九十八号議案
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターが徴収する料金の上限の認可について
第九十九 第九十九号議案
平成二十三年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担について
第百 第百号議案
平成二十二年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担の変更について
第百一 第百一号議案
平成二十二年度東京都一般会計補正予算(第二号)
第百二 第百二号議案
平成二十二年度東京都特別区財政調整会計補正予算(第一号)
第百三 第百三号議案
平成二十二年度東京都地方消費税清算会計補正予算(第一号)
第百四 第百四号議案
平成二十二年度東京都母子福祉貸付資金会計補正予算(第一号)
第百五 第百五号議案
平成二十二年度東京都農業改良資金助成会計補正予算(第一号)
第百六 第百六号議案
東京都廃棄物条例の一部を改正する条例

   午後一時開会・開議

〇議長(和田宗春君) ただいまから平成二十三年第一回東京都議会定例会を開会いたします。
 これより本日の会議を開きます。

〇議長(和田宗春君) まず、会議録署名議員の指名を行います。
 会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において
   八番   土屋たかゆき君 及び
   六十八番 高橋 信博君
を指名いたします。

〇議長(和田宗春君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。

〇議事部長(鈴木省五君) 平成二十三年二月一日付東京都告示第百二十五号をもって、知事より、本定例会を招集したとの通知がありました。
 また、同日付で、本定例会に提出するため、議案百六件の送付がありました。
 次に、知事及び監査委員並びに各行政委員会より、平成二十三年中における東京都議会説明員及び説明員の委任について、地方自治法第百二十一条及び会議規則第四十二条の規定に基づき、それぞれ通知がありました。
 次に、包括外部監査人より、平成二十三年二月一日付で、平成二十二年度包括外部監査報告書の提出がありました。
 次に、知事より、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づく専決処分について、報告が二件ありました。
 内容は、訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告について並びに東京都高等学校・大学等進学奨励事業に係る貸付金の償還免除に関する報告についてであります。
 次に、監査委員より、平成二十二年行政監査、平成二十二年工事監査、平成二十二年財政援助団体等監査及び例月出納検査の結果について、それぞれ報告がありました。
(別冊参照)

〇議長(和田宗春君) 次に、文書質問に対する答弁書について申し上げます。
 平成二十二年第四回定例会に提出されました文書質問に対する答弁書は、質問趣意書とともに送付をいたしておきました。ご了承願います。
文書質問趣意書及び答弁書は本号末尾(一六ページ)に掲載〕

〇議長(和田宗春君) 次に、東京都議会海外調査団について申し上げます。
 本議会において、去る平成二十二年十二月十六日から二十五日まで、フライブルグ、マドリード、セビリア、アムステルダム、パリ、ロンドン及びブリュッセルへ海外調査団を派遣いたしました。
 海外調査団を代表いたしまして、報告のため発言の申し出がありますので、これを許します。
 七十一番原田大君。
   〔七十一番原田大君登壇〕

〇七十一番(原田大君) このたび、都議会を代表して都市計画、自転車政策、再生可能エネルギー等について調査を行ってまいりましたので、ご報告いたします。
 本調査は、平成二十二年十二月十六日から二十五日までの日程で行い、オランダのアムステルダム、ベルギーのブリュッセル、ドイツのフライブルグ、スペインのセビリア、イギリスのロンドン、フランスのパリを訪問しました。調査団には、都議会民主党の相川博議員を団長とし、中村明彦議員、いのつめまさみ議員、くまき美奈子議員、しのづか元議員、そして私、原田大の六名が参加いたしました。
 調査当時、現地西ヨーロッパは、折からの大雪で全域にわたって飛行機、高速鉄道、道路交通を含め交通機関が大混乱しておりました。そうした中、我々調査団もその影響を受け、当初予定の視察先のうち、グローニンゲンについては、道路の大渋滞により訪問がかなわず、マドリードについては、搭乗を予定していた飛行機の欠航により現地到着がおくれたため、予定していた調査先を訪問することができませんでしたが、そのほかに関しては、所期の調査目的を達することができました。
 まず、都市計画、自転車政策に関して、アムステルダム、フライブルグ、ロンドン、パリを訪れました。自転車政策に関しては、都民の関心も非常に高く、東京都が昨年十二月に発表した調査結果においても、自転車走行道路の施策に関心があると回答した都民が五八%と、対象の全二十七施策の中で最も多くの回答を集めたところです。
 アムステルダムでは、アムステルダム中央駅のすぐ近くに建設された大規模自転車駐輪場、運河を渡る自転車フェリー、自転車専用道路や専用標識等を現場で視察するとともに、自転車利用の歴史についてのヒアリングを行い、自転車利用者の安全性向上運動が都市計画に生かされたことが、今日の自転車利用者の増加につながっていることなどの説明を受けました。
 フライブルグでは、これまた中央駅に隣接して建設された施設、一階にカーシェアリング基地、二階に自転車駐輪場と専用出入り口、三階にオフィス、そして陸橋上の出口を出るとすぐに路面電車の駅という複合交通施設を視察するとともに、自転車を主要交通手段と位置づける複合交通システムづくりの展望等についてのヒアリングを行いました。
 以上、二都市では、自己所有の自転車の利用が前提となっていますが、ロンドンとパリでは、市内のどこでも借りられ、どこにでも返せるレンタサイクルシステムについて調査を行いました。
 まず、ロンドンでは、市の交通局で、市の総合的な交通政策体系における自転車の位置づけなどについてヒアリングを行うとともに、実際に市内にあるレンタサイクルステーションで、事前登録カードによる利用方法や、クレジットカードを活用した一時利用者のための貸し出し、返却システム等について視察を行いました。
 また、パリでは、市が市内のバス停やタクシー乗り場、また自転車ステーションわきなどに広告を許可することにより、許可を受けた広告代理店がレンタサイクル事業を維持運営しているべリブと呼ばれるシステムについて、視察とヒアリングを行いました。
 公共空間にふさわしいものに広告の内容を限定する一方、ほかのメディアとの連動によってより多くの広告収入を発生させ、低廉な利用料でレンタル自転車を提供することなど、このビジネスモデルの成功の要因についての調査を行いました。
 これら自転車の活用は都市の改造の起爆剤となってきたわけですが、もう一つ、現在進行しているのがエネルギー革命であります。東京都においても地球温暖化を初めとする環境問題には積極的に取り組んでいるところではありますが、ヨーロッパの動向を把握するため、再生可能エネルギー等に関しても調査を行いました。
 まず、ブリュッセルにEUを訪れ、欧州連合の域内排出量取引制度についてヒアリングを行いました。EUではCO2の削減目標を、再生エネルギーの利用率向上及びエネルギー効率向上の数値目標とパッケージ化していますが、それをさらに各国で具体的な行動計画に落とし込んでいく過程や、再生可能エネルギー利用目標達成のための加盟国に対する強制措置などの現在進行中のプロジェクトについてもヒアリングを行いました。
 また、フライブルグでは、最先端の生ごみ発電施設を訪問し、実際のプラントを視察するとともに、発電状況や経済効率等についてのヒアリングを行いました。
 さらに、セビリアでは、郊外の太陽光発電集積地を訪問しました。ここではスペイン政府の主導により、複数の企業がさまざまなタイプの太陽電池パネルを大規模に設置しております。現地では視察とともに発電状況や、ほとんど手間がかからないという維持管理の状況などについてヒアリングを行いました。また、太陽光を集めるために巨大な塔を建て、そこから地上に設置した太陽電池パネルに効率的に太陽光を送る装置などの斬新な構造物についても視察を行いました。
 本日の報告は以上ですが、調査の詳細につきましては、後日、発表いたします報告書をごらんいただきたいと思います。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)

〇議長(和田宗春君) 以上をもって東京都議会海外調査団の報告は終わりました。

〇議長(和田宗春君) 会期についてお諮りいたします。
 今回の定例会の会期は、本日から三月十一日までの三十二日間といたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇議長(和田宗春君) ご異議なしと認めます。よって、会期は三十二日間と決定いたしました。

〇七十四番(伊藤まさき君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 平成二十二年度包括外部監査結果の報告について、地方自治法第二百五十二条の三十四第一項の規定に基づき、包括外部監査人の説明を求めることを望みます。

〇議長(和田宗春君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇議長(和田宗春君) ご異議なしと認めます。
 よって、平成二十二年度包括外部監査結果の報告について、包括外部監査人の説明を求めることに決定いたしました。
 ここで、鈴木啓之包括外部監査人の出席を求めます。
〔包括外部監査人鈴木啓之君入場、着席〕

〇議長(和田宗春君) ただいまご出席いただきました包括外部監査人をご紹介いたします。
 鈴木啓之さんでございます。
   〔包括外部監査人あいさつ〕

〇議長(和田宗春君) 本日は、ご多忙のところ、監査結果報告の説明のためにご出席いただき、まことにありがとうございます。

〇議長(和田宗春君) この際、知事より、平成二十三年度施政方針について発言の申し出がありますので、これを許します。
 知事石原慎太郎君。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 平成二十三年第一回都議会定例会の開会に当たりまして、都政の施政方針を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。
 人類は、資源、化石燃料を多量に消費しながら物質的な繁栄を追い求め、高度な文明社会を築き上げてきました。そうした営みは、深刻な気候の変動を引き起こし、地球にとって耐えがたいものになっております。
 一方では、文明の発展の所産である航空機やIT技術によって、世界が時間的、空間的に極めて狭小となり、人、物、情報の往来が盛んになったことで、豊かさへの願望は巨大なエネルギーとなって世界を覆っております。新興国が力をつけ、長きにわたった欧米による支配は終えんを迎えつつあり、過去の歴史的怨念や宗教対立がテロという形で噴出していることも相まって、世界は混迷の度を深めております。
 我が国は、こうした激しい変化の潮流にさらされており、よろず対米依存できた他力本願な姿勢はもはや通用いたしません。さらに、少子高齢化という人類がかつて経験したことのない深刻な事態にも直面しております。天はみずから助くる者をのみ助くというこの世の公理に従って、みずからの手でみずからの未来をつくり出すことを迫られているわけであります。
 しかし、我が国の政治は、正当な文明観と歴史認識を致命的に欠き、立ちすくんでおります。日本は、先人たちの労苦と英知によって、非白人国家として初めて近代化を遂げ、戦後、歴史上まれな安定した社会を築き上げました。しかし、今日、日本人特有の進取の精神や心意気は忘れ去られ、成功の余禄を食いつぶすことしかできておりません。
 金銭欲、物欲を第一とするせつな的な空気が国じゅうを覆っておりますが、肝心の国政は、国家の将来や日本人としての責任を説くこともなく、財政悪化も顧みず国民におもねるばかりであります。ただ目先のつじつま合わせにきゅうきゅうとしているだけでは、日本は沈むしかありません。
 国政がこうしたていたらくなら、危機が最も先鋭的にあらわれる大都市東京から日本を変えていかなければなりません。都政は現場を踏まえて危機の本質を鋭敏にとらえ、大きな視点に立って困難な課題に果敢に挑んでまいりました。
 ディーゼル車の排出ガス規制を事業者の協力を得て実施し、文明発展のあしき副産物である大気汚染を急速かつ大幅に改善するとともに、環境と調和した二十一世紀型の社会を実現する一歩として、都市では世界で初めて大規模事業所にCO2排出総量の削減義務を課しました。
 我が国の行く末がかかり、将来アジア諸国も直面することになる少子高齢化に対しても、幅広い政策分野に横ぐしを通して社会全体の力を束ね、重層的、複合的な手だてを講じております。
 また、いかなる政策も、健全な財政基盤なしには絵にかいたもちに終わりかねないことから、血を流す徹底した改革を断行し、新しい公会計制度も導入して財政をよみがえらせました。
 複雑な現実と正面から切り結び、都民、国民、議会、行政が現場を踏まえて議論を積み上げながら社会の利害関係の衝突を調整して、二十一世紀にふさわしい成熟を遂げた社会のモデルを体現することこそ、東京の使命であります。
 東京には、数多くの課題に対処して培った経験、技術、人材があります。さらに、都政は韓国やノルウェーの国家予算に匹敵する財政規模を持ち、国家をしのぐ実行力も持っております。これらをてこに東京から海図なき二十一世紀の航路を示すことで、日本を衰亡から救い、世界を変える大きな一石を投じることもできるんです。
 ゆえにも、東京の将来戦略である「十年後の東京」計画の実現を加速すべく、実行プログラムを改定いたしました。都民、国民の不安を払拭するとともに、東京の可能性、潜在力を一段と引き出し、日本の新たな成長につなげるために、平成二十三年度予算を編成しております。
 いつの世も、時代の閉塞を打ち破るのは、意欲にあふれた人材、特に若い力であります。日本の近代化の道のりには、欧米に強い好奇心を抱きつつ、その圧迫から日本を守るために行動した若者の姿がありました。戦後の奇跡的な発展を支えたのは、自分の夢や希望を日本の成長に重ね合わせて、身を粉にして働いた若者であります。
 翻って、昨今の日本を眺めますと、国政の漂流によって社会は停滞し、築き上げてきた繁栄の終わりすら予感されます。若者は、将来への不安から安定、安全志向に流れ、また、身の回りの限られた私事にしか関心を持たない風潮が広がっております。留学に出る者が減りまして、海外勤務を希望しない新入社員がふえているとの指摘もあります。
 世界が激変し、国際競争も厳しさを増す中で、若者が未知を恐れ、その特権である情熱やエネルギーまでを失っては、日本は二度と立ち上がれなくなります。ならばこそ、全国の若者が集まる東京から彼らを刺激して挑戦を引き出し、力強く後押しをしなければなりません。
 日本を代表する国際的大企業も、初めは皆小さなまち工場でありまして、それを世界のひのき舞台に飛躍させたのは若者の熱意であります。日本が世界で存在感を持ち得るのも、独自の技術で不可能を可能にする中小企業があるからでありました。小惑星探査機「はやぶさ」の壮挙はそれを改めて示しました。
 日本の国力の源泉である中小企業には、若い力を強く求めている会社が数多くありますが、学生の目が向きにくく情報発信にも限界があることから、ミスマッチが生じております。そこで、東京の中小企業のオンリーワン技術のすばらしさに若者の目を開かせ、秘めたる可能性を肌で感じさせて、双方を結びつけてまいります。中小企業を集めて学生への企業説明会を開催し、社員の声をじかに聞かせます。また、就職が決まらないまま卒業した若者に、中小企業で数カ月、仕事を経験させ、正規雇用につなげる取り組みをスタートいたします。高校でも、経営者みずからが中小企業の魅力を語る講義を開始し、インターンシップも実施してまいります。
 また、リスクを恐れず果敢に事業を起こさんとする若者も応援しなければなりません。みずみずしい発想を競う学生起業家選手権を開催するほか、TOKYO起業塾では、事業計画づくりなど、さまざまなノウハウを提供し、企業や投資、融資機関などとのネットワークづくりも後押しいたします。都内八カ所に設置したインキュベーション施設でも、アイデアを形にする手助けをいたします。
 非正規雇用を余儀なくされている方々には、東京しごとセンターできめ細かくサポートするほか、職業能力開発センターでの実践的な職業訓練などで再チャレンジを後押しいたします。若い力の可能性が次の日本をつくります。未来ある若者の挑戦を強く応援いたします。
 日本の未来を託す次の世代をたくましく育てるのは大人たちの責任でありますが、我が国の教育制度は極めて画一的で、結果の平等をいたずらに追い求め、若者の可能性をつぶしてきました。ゆとり教育の弊害ゆえ計算も満足にできず、先人の足跡も知らないままではいいはずがありません。教育に求められているのは、一人一人の才能を徹底して鍛えて伸ばすことであります。
 これまでも学力の低下を防ぐべく、都独自の学力調査によって小中学校の授業を改善してまいりました。高校については、学区制を廃止し、校長に学校の魅力を競わせたほか、進学指導重点校やエンカレッジスクールなど、特色ある学校をつくって多様な選択肢を整えました。
 今後も、一人一人が持つ可能性を発揮できるよう、土台となる健全な肉体と困難に耐える脳幹を鍛え、確かな学力を養います。
 全公立学校で授業、休み時間、放課後をフルに活用して、児童生徒が体を動かしスポーツに親しむ時間を大幅にふやし、中学校では武道の必修化を機に我が国の伝統的な考え方を理解させ、礼節を体得させてまいります。
 学力面では、土曜日などを使って授業時間を確保し、基礎学力をさらに向上させるほか、国際化の時代に民族や文化の壁を超えて意思を交わす、言葉の力の養成にも乗り出します。高校生には、我が国の近代化の歴史を学ばせて、日本やふるさとへの誇りと愛着を持たせ、国際社会の一員として活躍する基礎も養ってまいります。
 子どもの健やかな成長のために、社会が総力を挙げる必要があります。昨年開始した少子化打破緊急三カ年事業を強力に前進させてまいります。
 喫緊の課題である待機児童解消に向けては、三カ年で保育サービス利用児童の数を二万二千人増加いたします。同時に、サービスの担い手を着実に確保するため、保育士の資格を眠らせている人材を掘り起こし、就職を支援してまいります。医療面でも、こども救命センターを核とした地域の小児医療ネットワークを充実させ、NICUを平成二十六年度までに三百二十床にまでふやすなど、子どもを産み育てたいと望む家族に勇気を与えてまいります。
 後を絶たない児童虐待事件を何としても防がなければなりません。そこで、専門機関である児童相談所の人員を拡充いたします。また、第一線の窓口である区市町村の子ども家庭支援センターに、新たに配置するコーディネーターを中心として、行政、学校、医療機関が一体となった体制を構築し、家庭にきめ細かく対応してまいります。
 若い世代に明るい展望を持たせるとともに、高齢者の閉塞感を取り除くことも求められております。日本はかつてない速さで高齢化が進んでおり、東京では四年後に六十五歳以上の高齢者が約三百万人に達し、七十五歳以上の単独世帯は四十万を超えると見込まれております。これまで都は、民間企業やNPOなどと力を合わせ、高い地価など大都市特有の悪条件を創意と工夫で乗り越えて介護基盤の整備を進めており、中でも認知症高齢者グループホームの定員を飛躍的に増加させております。
 国は、未曾有の高齢社会を前にして、いかなる社会保障制度で国民を守るのか、一向に示しておりません。しかし、国をただ待つわけにはいきません。高齢者が安心して暮らすための仕組みを東京から時代を先取りして提起していかなければなりません。
 緊急時のサポート機能や介護関連施設等を備えたケアつき住まいを、民の力を生かし、平成二十六年度までに約六千戸整備いたします。地域における相談や見守りの核となるシルバー交番も来年度までに六十カ所設置し、全国トップレベルの集積を誇る訪問介護事業者も生かしつつ、地域で暮らす高齢者を支え孤立を防いでまいります。
 医療面でも施策を加速し、認知症の原因であるアルツハイマー病のワクチン開発では、二年後の臨床実験開始を目指します。健康長寿医療センターも再整備して、平成二十五年度に開設いたします。
 人生の仕上げの最も成熟、充実した時期を、安心を実感しつつ送ることのできる社会を実現してまいりたいと思います。
 障害者への支援も着実に進めていかなければなりません。ハンディキャップを乗り越え、持てる力を十二分に発揮する姿は、人間の持つ真の強さを表象しております。こうした方々のために、生活の拠点となるグループホーム等の定員を十年間で四倍にふやしました。また、官と民が一体となって取り組み、多様な企業が集積する東京の強みによって、障害者雇用はこの三年間で二万人増加いたしました。安心して働けるよう、仕事の上での相談に乗り、日常生活も一体的にサポートする都独自の事業を創設し、ほぼすべての区市で展開しております。
 今後も、施設整備はもとより、雇用のさらなる拡大に向けて、障害者を雇用しようとする中小企業を、よりきめ細かい手だてで支援してまいります。また、学習障害など発達障害のある子どものために、全公立小中学校への特別支援教室設置を目指すほか、幼児期から成人までの一貫した相談体制も構築いたします。駅を初めとする公共空間のバリアフリー化などもあわせて進め、障害者を生活全般にわたって支えてまいります。
 安全と安心を高め、活力ある社会をつくるためにも、経済の成長は欠かせません。一方で、経済と環境との高度の両立が二十一世紀の必須課題でありまして、これに国運を賭しても挑む必要があります。
 世界の経済成長に伴って、資源、食料の需給は今後、逼迫が見込まれます。その多くを海外に依存する日本は、不安定さを増す国際情勢もにらんで、環境技術によって社会のありようを変え、化石燃料から脱却していくとともに、地球温暖化対策も牽引して世界の干ばつや耕地の荒廃を食いとめなければなりません。
 日本にとって地球を守ることは国民を守ることにほかなりませんが、国政では、環境政策の基本を定める地球温暖化対策基本法の成立すらめどが立っておりません。国は、環境と経済をトレードオフでとらえる旧来の発想を脱し切れずに、目先のマイナスを嫌っており、大幅なCO2削減を実現し、環境技術の革新も促す新たな制度づくりに後ろ向きであります。このままでは、国際的なCO2削減の枠組みづくりをリードすることもできず、日本が二十一世紀を生き抜く展望も開けません。
 そうした危機感に立って、東京から環境と経済が両立した低炭素型社会への転換を先導すべく、都のキャップ・アンド・トレード制度の全国展開を目指してまいります。先般、都と連携して制度を導入する埼玉県を初め、全四十七都道府県と全十九政令指定都市の実務者が参加して、地球温暖化対策全国自治体会議を開催いたしました。その多くは、既に大規模事業所のCO2排出量を把握する仕組みを持っておりまして、これに都のノウハウが加われば、実効性の高い削減策が実現可能であります。
 都内では、キャップ・アンド・トレード制度を契機に、民間のオフィスビルで省エネ投資が活発になっております。全国規模で対策が強化されれば、環境産業の国内市場が拡大し、技術も飛躍的に進歩し、日本の経済は大きく変わるに違いありません。
 また、都は、中小規模事業所についても、CO2削減の取り組みを進めておりまして、既に三万の事業所から地球温暖化対策報告書が提出されています。今後、制度を効果的に運用して、中小企業の環境投資を促しつつ、CO2削減のすそ野を大きく拡大してまいります。
 環境と経済の高度な両立に向け、東京から広げた地球温暖化対策の包囲網で、国に政策転換を迫ってまいります。
 近年、アジアの発展は目覚ましいものがありますが、環境と調和した国づくり、都市づくりに協力することは、相手国の発展だけでなく、東京と日本の次なる発展にもつながります。
 一千三百万人の人口を抱える巨大都市東京を清潔で機能的に維持する裏には、戦後の都市問題を克服する過程で磨いてきた世界最高水準の上下水道技術や廃棄物処理技術などがありまして、成長著しいアジア諸国での課題を解決する切り札になります。
 都が触媒となって企業連合も形成するなど、東京のすぐれた技術力を海外展開してまいります。計画策定や実際のインフラ整備に参画することで、現地の環境、水、衛生問題の解決に寄与し、我が国の景気回復と産業力強化にも貢献してまいります。
 東京と日本が世界の中で存在感を発揮し、さらに発展を遂げるためには、独自の技術を開発し、鍛え続けなければなりません。ベンチャー技術大賞を受賞した技術、製品を見ても、まだまだ日本には力があり、すぐれた技術が世に出るのを待っております。技術の揺りかごであり、我が国経済の宝である中小企業をいかに支援していくかが重要であります。
 昨年の夏以降続く円高によって、中小企業は依然として厳しい状況に置かれております。円高対策は本来、国の責務でありますが、現場を預かる都としては事態を座視できません。今年度の緊急円高対策に引き続き、来年度も資金繰り支援に万全を期すことはもとより、下請取引の適正化や経営力強化のための対策を切れ目なく講じてまいります。
 現下の厳しい状況を乗り越えながら、付加価値のより高い製品を生み出していく必要がありまして、それには、今後の成長が期待される分野での技術開発が求められております。
 そこで、中小企業に対して技術開発を促す指針として、技術戦略ロードマップを策定してまいります。今年度の環境分野に引き続いて、来年度は介護や医療など、安全・安心分野で策定し、これに沿って技術、製品の開発や実用化を重点的に支援いたします。
 さらに、海外市場も視野に入れ、中小企業に相談、助言を行う海外販路ナビゲーターを増員し、展示会への出展機会も拡充してまいります。アジア大都市ネットワーク21で培った都市間のパイプもフルに活用し、成長著しいアジア市場への挑戦を後押ししてまいります。
 中小企業の新しい芽を伸ばすために、産業支援拠点も整備しております。本年五月には、その核となる都立産業技術研究センターの新本部を臨海副都心に開設いたします。国際規格に即した製品開発の相談や試験の依頼にワンストップ体制で応じ、精密機器やバイオなどの時代のニーズが高い分野で世界に通用する製品の開発を支援してまいります。
 今後の日本の発展のためには、金の卵を産む鶏である東京の力を一段と高めるインフラ整備が必要不可欠であります。
 改めて申し上げるまでもなく、東京の都市機能を向上させることで経済が活性化され、環境は改善し、国際競争力は高まり、その効果は全国にあまねく還流いたします。財政も強化され、福祉も充実できるのであります。
 しかし、文明工学的視点を欠いた国の政治の怠慢によりまして、国家の屋台骨を支える東京のインフラ整備は大きく立ちおくれ、数十年にわたって渋滞や大気汚染が都民、国民を苦しめ、経済成長の足かせともなってきました。
 それゆえ、就任以来、失われた歳月を取り戻すべく全力を挙げてまいりました。羽田空港の再拡張、国際化によって、国際都市ならば二十四時間運用のハブ空港を持つという世界の常識にようやく追いつくなど、幾つかの成果も上がっておりますが、横田基地の軍民共用化の早期実現を初め、今後も、長期的な視野に立って、戦略的に事業を展開していかなければなりません。来年度予算でも投資的経費を伸ばし、七年連続の増額としております。
 人、物の、あるいは情報の交流が文明、文化を成熟させてきたという歴史の公理を踏まえるならば、首都東京をかなめとする陸海空のネットワークを整備することは、日本のさらなる発展のために不可欠なことはだれの目にも明らかであります。
 東京の環状道路は極めて大きな整備効果が見込まれ、日本全体の交通ネットワーク充実のためにも完成が急がれております。羽田と新宿の所要時間を半減させる中央環状線は、大橋ジャンクションと湾岸線を結ぶ品川線の完成を残すのみであります。品川線の完成により、山手線内側の面積の一・三倍に相当する森林が吸収するCO2も削減されます。平成二十五年度の全線開通に向け、全速力で整備をしてまいります。
 肝心の外環道については、いまだに国の腰が定まっておりません。国には事業の国家的意義を正当に認識し、速やかに工事に着手することは当然のこと、将来にわたって必要な財源を確保するよう強く求めます。
 京浜港を、日本のすぐれた工業製品を輸出し、大消費地である首都圏を支える海の玄関口としてだけでなく、アジアのハブ港にしていくことは、日本の国際競争力の維持向上に直結いたします。
 そこで、来年度には東京港臨海道路を全線開通させ、臨海部と内陸部の人と物の流れを円滑にいたします。また、世界の物流の大動脈である国際基幹航路を維持拡大し、アジア諸港との競争に勝つためにターミナル使用料の低減を図り、川崎市、横浜市と連携して新たな貨物集荷策を展開いたします。
 さらに、今後の貨物取扱量の増大に備えて、平成二十五年度の完成に向け、外貿コンテナターミナルの整備を進めてまいります。
 首都に稠密に張りめぐらされた地下鉄網も、ネットワークを構成する重要な要素であります。東京の地下鉄は、延べ八百六十万人が毎日、通勤通学で使用し、多くの観光客も利用していることから、今般、東京メトロと都営地下鉄の経営一元化の協議を継続しつつ、乗りかえ面や運賃面での利便性を向上させる方策を具体的に検討することで国と合意いたしました。
 また、都は、地下鉄走行中に携帯電話のメールを使用できるよう通信事業者に協力することとし、東京メトロにも呼びかけました。
 今後も、世界に誇る首都の地下鉄にふさわしい姿の実現を目指してまいります。
 災害への備えを固めることは、都民、国民の安全・安心はもとより、国際都市東京の信頼を高めるためにも、ゆるがせにできません。
 近年多発する集中豪雨に対しては、浸水の危険性の高い地域を中心に、迅速かつ集中的に手だてを講じてまいります。
 石神井川と白子川を地下調節池で結んで機動的に水位の調節を行い、銀座など新たな五つの大規模地下街では浸水対策を強化いたします。市街地での被害を防ぐために、雨水をより速やかに排除すべく新たに下水道幹線などを前倒しして整備し、公共施設を活用した一時貯留施設の設置も促進いたします。
 建物の耐震化については、所有者はその耐震性能を確保する社会的責務を負っておりまして、災害時の救助活動の生命線として、また、復興時の大動脈として、特に重要な緊急輸送道路の沿道建物の耐震化は焦眉の課題であります。
 沿道建物の所有者に対し耐震診断を義務づけ、一部の大規模建物等を除き、診断の費用負担をなくす新たな助成制度を創設いたします。全国初の取り組みによって、所有者の自覚と行動を促し、有数の地震国日本で耐震化が足踏みをしている現状を東京から打破してまいりたいと思います。
 震災対策に限らず、災害を防ぐ上では、一人一人がおのれの社会的責任を全うすることが重要であります。この四月から、消防法令に繰り返し違反をしている建物等を公表する制度を開始するに当たり、商店街と協定を結ぶなど連携を強化し、違反建物をなくす地域の自主的な活動を引き出します。災害対策の基本である地域に根差した自助共助の取り組みを普及させてまいります。
 江戸から続く歴史と文化の堆積を誇る東京はたぐいまれなる魅力を放っておりまして、世界の注目を集めております。イギリスの有名な都市専門誌「モノクル」の編集長の言では、大都市東京は世界で最も住みやすいとのことでありましたが、現状に安住することなく、より高い次元で成熟を目指さなければなりません。これは観光振興にもつながります。
 隅田川のにぎわいは、かつての江戸の華として名をはせておりました。こうした歴史の記憶を呼び覚ますべく、官民の垣根を超えて隅田川ルネサンス事業を展開いたします。国の規制に縛られてきた河川敷地にオープンカフェを設置するなど、民の力で魅力のあふれる水辺空間を創出したいと思います。隅田川を愛する地元の方々が四季折々に開催するイベントも応援し、東京ならではの文化として次代に伝えてまいりたいと思います。
 歴史と文化の堆積に、都市ならではの魅力が新たに加わることで、東京の成熟は一段と増すことになります。
 平成十九年にスタートした東京マラソンは、ことしで五回目を迎え、ニューヨークシティーマラソンやロンドンマラソンと肩を並べるまでになりました。今回は、走る楽しみだけではなく社会に直接貢献するという新たな一面を大会に与えるために、チャリティー制度を導入いたしました。集まった寄附は、難病と闘う子どもたちが家族一緒に過ごす時間をふやす活動など、家族、未来、命、夢という四つの分野に使います。
 昨今、都民、国民の間に社会を思う気持ちを積極的に表現したいという機運が高まりつつあります。緑の東京募金では、海の森づくりのために五億円を目標に拠金を募っておりましたが、わずか三年余りで達成の見込みであります。施設の子どもたちに文房具等を贈る動きも自然発生的に起きております。こうした一人一人の志を東京マラソンが集めてつなぐことで、従来はなじみの薄かった寄附文化を我が国に根づかせるよすがとしてまいりたいと思います。
 次に、多摩・島しょ地域について申し上げます。
 多摩地域は、先端産業が集積し、都心へのアクセスのよさに加え、数多くの大学や研究機関も立地しております。日本の高度なものづくりを支える中核拠点として、神奈川から埼玉に至る多摩シリコンバレーを形成していかなければなりません。
 その背骨となる圏央道については、来年度、八王子ジャンクションと八王子南インターチェンジの区間が開通いたします。圏央道にアクセスする新滝山街道や、多摩南北道路のうち府中清瀬線も平成二十四年度に全線開通させ、新事業の創出に結びつく地域内の交流を促進いたします。
 海の森を起点として、街路樹を植え、校庭を芝生化し、公園もふやして、多摩の豊かな自然と結びながら、緑のネットワークを東京全体に広げております。平成二十四年秋には、こうした取り組みにより形成された緑あふれる東京のたたずまいを全国に発信する一大イベントである全国都市緑化フェアを開催いたします。平成二十五年に開催するスポーツ祭東京二〇一三ともあわせて、多摩の歴史や多様な魅力を伝えてまいりたいと思います。
 自然豊かな多摩でも、夏場の暑さは厳しいものがあります。子どもたちが夏場に良好な環境で学べるよう、公立小中学校への冷房設備の導入を支援してまいります。
 東京の島々は、美しい自然に恵まれ、真珠の首飾りにも例えられる東京都のいやしの空間であるだけでなく、海洋大国日本の戦略的要衝でもあります。
 我が国は、陸地面積では世界で六十一番目ながら、領海と排他的経済水域を合わせた広さでは世界第六位となり、排他的経済水域のうち東京が占める割合は四割に達しております。
 そこには豊かな資源が眠っておりまして、中でも東京から二千キロメートル離れた絶海に浮かぶ南鳥島周辺のレアメタル等に注目が今では集まっております。それゆえ、昨年の尖閣諸島をめぐる事態と同じことが、いつ起こってもおかしくはありません。
 これまで東京は、国家的見地から東京の排他的経済水域を守るために、沖ノ鳥島周辺海域での漁業の操業支援や漁場造成などを行ってきました。昨年、国は新たな法律をつくり、南鳥島と沖ノ鳥島の管理強化にようやく着手しましたが、都としても、国に可能な限り協力し、かけがえない豊穣な海を守ってまいりたいと思います。
 また、小笠原の情報格差を是正する海底光ファイバーケーブルの敷設や世界自然遺産登録など、島しょ地域のそれぞれの島の特性を踏まえて振興策を講じてまいります。
 これまで述べてきた政策を実現し、東京がその使命を十全に果たすためには、都政の足腰そのものが強靱である必要があります。
 この十年余りを振り返れば、身を削り歳出を切り詰める努力を積み重ねて財政を健全化し、基金も約一兆円にまで積み上げました。新しい公会計制度の導入により財政の全体像を明らかにして、金利感覚とコスト意識を職員に持たせました。事業評価制度もつくり上げて、自己改革を当然に進める仕組みを都庁組織に組み込んでまいりました。
 平成二十三年度予算編成に当たっても、新しく監理団体や特別会計を対象に加え、事業の成果や決算状況を厳しく分析、検証いたしました。現場、都民への影響、将来への見通しなども総合的に判断した結果、二百十億円の財源を確保し、合わせて八百九十億円の事業費を見直しております。
 今後も、事業の徹底した検証を不断に続けてまいります。また、培ってきた公会計制度のノウハウを惜しみなく全国に提供いたします。
 一方、国の予算は、借金が税収を上回り、国債残高の増加もとどまることを知らず、国際的に見ても極めて深刻な状態にあります。一例を挙げれば、EUは加盟に際し、債務残高がGDP比で六割以下であることを求めておりますが、我が国はGDPの二倍となっております。もし、この日本がヨーロッパに存在する国でEUに入ろうと思ったら、これは拒否されると思います。
 歴代の政権は、皆、行政改革を声高に叫んでも、一向に実のある結果は出しておりません。先般も国債が格下げされ、それに引きずられて都債も格下げされましたが、国からの危機感は全く感じられません。
 都が財政再建団体転落のふちに立った際には、職員定数を二万人削減し、監理団体を半減させ、職員団体ともぎりぎりの交渉をして危機感を共有しながら、他の自治体に先んじて給与をカットいたしました。国も、都と同様の措置を即刻、実行すべきであります。
 財政的に行き詰まる国は、やることをやらずに、暫定措置である法人事業税の一部国税化を、あろうことか継続しました。
 東京は、三百万人の昼間流入人口を抱え、我が国の頭脳部、心臓部を維持発展させています。全国に効果が及ぶインフラを国にかわって整備し、危機に鈍感な国を待つことなく、少子化対策等で区市町村と協力し、先進的な施策を展開してまいりました。国家をも支える政策のための財源を東京から奪うことは、日本の未来を閉ざすことにしかなりません。
 国には、全く道理が通らない法人事業税の暫定措置を一日でも早く撤回することを強く求めます。
 また、国は、補助金の一括交付金化を進めております。制度の最終的形は明らかになっておりませんが、国には、首都東京がその役割を果たすに十分な財源を確実に措置するように求めます。
 かつて毛沢東が「矛盾論」の中で述べたように、目の前の課題を解決するためには、そのさらに背景にある主要矛盾というべき大きな動きを確かにとらえなければなりません。課題の表層に目を奪われ、肝心なことにお茶を濁しているうちに、どんどん坂道を転がり落ちているのが今の日本の姿であります。
 さまざまな要素が層をなして複雑に絡み合う行政を運用するに当たっては、上辺だけの机上の論を幾ら並べたところで、実効性のある施策を導き出せようはずがありません。
 都政においては、都議会の皆様とともに、具体的な問題に正面から対峙する中から、その背後にある根源的な動きをつかみ、目指すべき目標を掲げ、有効な施策を都民、国民に提示し、勇気を持って決断し、実行してまいりました。
 国政がはるか昔に忘れてしまった決意と覚悟を保ち、大きな視点に立ちつつ現場に根差した議論を重ね、日本を変える挑戦を揺るぎなく進めることこそ、首都の政治家たちの責任であります。
 国家的存在である東京を預かる知事として、実効性の高い施策を形にしていくために、皆様と建設的で質の高い議論を交わしていきたいと思います。一層のご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
 なお、本定例会には、都民の安全を脅かす暴力団を社会全体で排除するための東京都暴力団排除条例を初め、これまで申し上げたものも含めて、予算案三十三件、条例案五十七件など、合わせて百六件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。
 以上をもちまして施政方針表明を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

〇議長(和田宗春君) 知事の発言は終わりました。

〇議長(和田宗春君) 次に、警視総監より、都内の治安状況について発言の申し出がありますので、これを許します。
 警視総監池田克彦君。
   〔警視総監池田克彦君登壇〕

〇警視総監(池田克彦君) 警視庁では、昨年、犯罪抑止総合対策を初めとする各種対策に総力を挙げて取り組み、首都東京の治安維持と都民生活の安全確保に努めてまいりました。
 以下、都内の治安状況と対策についてご報告いたします。
 第一は、犯罪抑止総合対策の推進についてであります。
 昨年の都内における刑法犯認知件数は十九万五千九百七十件と、犯罪抑止総合対策を開始して以来、八年連続して減少しております。また、都民の身近で発生する侵入窃盗、ひったくり等の指定重点犯罪についても一昨年に比べ約八%減少しており、中でも重点的に対策を講じたひったくりが約二一%減少するなど、数値的には着実にその効果があらわれております。
 しかしながら、都民生活に関する世論調査では、都政への要望の第一位が七年連続して治安対策となるなど、いまだ都民の体感治安の十分な改善には至っていないことから、本年も、指定重点犯罪を中心に検挙と防犯の両面から犯罪抑止総合対策を推進してまいります。
 以下、具体的な対策について申し上げます。
 その一は、振り込め詐欺撲滅対策の推進についてであります。
 これまで、組織を挙げた検挙、防犯対策を推進するとともに、東京都、金融機関等と連携を図り、官民一体となった取り組みを行ってまいりましたが、昨年は、認知件数が一昨年と比べ約三二%増加の千七百七十一件、被害総額が約三九%増加の約三十二億五百万円となっております。また、全国規模で見ましても、東京における発生件数は、全体の約二七%、中でも、いわゆるおれおれ詐欺で見ますと約三四%となるなど都内に一極集中しており、厳しい状況が続いております。
 現在、この二月を振り込め詐欺撲滅月間に指定し、都民から寄せられる情報に基づいた現場設定による検挙や突き上げ捜査などを徹底するとともに、振り込め詐欺グループに預貯金口座や携帯電話などの犯行ツールを供給する道具屋の検挙対策を強化しております。また、高齢者を中心とした個別訪問等による注意喚起、金融機関との連携強化など、官民一体となった防犯対策を推進しております。
 三月以降も引き続き、振り込め詐欺の撲滅を図ってまいります。
 その二は、街頭警察活動の強化についてであります。
 不安定な景気や厳しい雇用情勢の影響などにより、都民生活の安全と平穏を脅かすコンビニ強盗やひったくりなどの街頭犯罪、さらには繁華街における無差別殺傷事件等、重大事案の発生が懸念されます。
 こうした情勢を踏まえ、交番における一歩前立番とパトロールによる見せる警戒活動の推進のほか、不審者等に対する職務質問と所持品検査の徹底、事件発生時における初動警察活動の迅速な展開による被疑者の早期検挙など、街頭警察活動の強化を図ってまいりました。
 今後も、積極果敢な街頭警察活動を強力に展開し、都民生活の安全と安心を確保してまいります。
 その三は、重要、特異事件の検挙についてであります。
 昨年は、五件の重要、特異事件について、特別捜査本部を設置して捜査を進めてまいりましたが、重要未解決事件であった池袋本町三丁目アパート内殺人事件など、一昨年以前に特別捜査本部を開設した事件を含め、六件の重要、特異事件を解決いたしました。
 しかしながら、平成七年に発生した八王子市におけるスーパー事務所内けん銃使用強盗殺人事件や、平成十二年に発生した上祖師谷三丁目における一家四人強盗殺人事件等の重要事件は、いまだ解決に至っておりません。
 この種事件の検挙は、都民の体感治安に直結する重要な課題であることから、今後も懸命な捜査を展開して被疑者を検挙してまいります。
 その四は、少年非行総合対策の推進についてであります。
 昨年、検挙、補導した少年は一万一千四百四十五人で、一昨年に比べ一・三%減少しておりますが、ひったくりや路上強盗などの街頭犯罪に占める少年の割合は約四〇%と高い水準で推移し、また、万引きで検挙、補導された少年が一昨年に比べ約八%増加するなど、依然として厳しい状況が続いております。
 こうした情勢を踏まえ、万引き防止対策や少年の立ち直り支援活動を推進するとともに、少年を見守る社会機運の醸成を図り、非行少年を生まない社会づくりの実現に向けた諸対策を展開しております。
 今後も、次世代を担う少年の健全育成に資する少年非行総合対策を推進してまいります。
 その五は、盛り場総合対策の推進についてであります。
 平成十四年から盛り場総合対策を推進しており、悪質な客引き等の検挙のほか、わいせつDVD販売店や売春クラブなどの摘発を通じた廃業等により、盛り場の環境は徐々に改善されつつあります。
 しかしながら、取り締まりを逃れた違法風俗店等が潜在化し、巧妙に違法営業を続ける傾向がうかがわれることから、今後も盛り場の実態に即した取り締まりを強化するとともに、関係機関、団体等と連携して各種対策を推進し、だれもが安心して楽しめる盛り場環境の実現に努めてまいります。
 その六は、犯罪を起こさせない社会づくりの推進についてであります。
 犯罪の未然防止は、犯人の検挙にまさるとも劣らない警察の重要な責務であり、犯罪を起こさせない社会の実現に向けた取り組みの基盤となる規範意識の向上及び地域社会における連帯感やきずなづくりにも取り組んでまいりました。
 一例を挙げますと、初発型の犯罪とされる万引きについて、事件処理を迅速に行うことにより被害者の負担を軽減し、確実な被害の届け出の定着を図っております。これは、小さな犯罪も見逃さない機運を醸成し、万引きをして捕まった者が二度と法を犯すまいと決意するような感銘力のある措置を講ずることにより規範意識の向上につなげる取り組みであります。
 今後も、幅広い年齢層から成るボランティアによる落書きの消去や花壇づくりなどの環境美化活動や街頭防犯カメラの設置など、犯罪を起こさせない社会づくりに向けたさまざまな取り組みを、自治体、学校等と連携を図りながら推進してまいります。
 第二は、総合的な組織犯罪対策の推進についてであります。
 その一は、暴力団総合対策の推進についてであります。
 近年、暴力団は、恐喝、賭博、薬物密売等の資金源獲得活動に加え、企業活動を仮装して、建設業や金融業を初めとするさまざまな事業活動へ進出を図るなど、一般社会における資金獲得活動を活発化させており、特に、経済の中心である東京は、暴力団にとって格好の資金獲得場所となっております。
 こうした中、昨年は、徹底した取り締まりや実態解明を推進し、暴力団員等三千九百六十五人を検挙するとともに、暴力団事務所の撤去活動など各種暴力団排除活動を積極的に行ってまいりました。
 特に、暴力団にさらなる打撃を与えるため、これまでの警察対暴力団から社会対暴力団への転換を図り、社会全体で暴力団を排除することを目的とした東京都暴力団排除条例案を本定例会に提出しているところであります。
 今後も、あらゆる法令を適用した検挙対策を講ずるとともに、情報提供、保護対策等に万全を尽くし、都民が安心して暴力団排除活動に取り組める環境づくりの実現を図ってまいります。
 その二は、国際組織犯罪総合対策の推進についてであります。
 国際組織犯罪情勢は、偽装結婚等の犯罪インフラ事犯が横行し、不法滞在者の定着を助長しているとともに、国際犯罪組織等の人的、資金的供給源にもなっている実態にあり、これに加え、国際的犯罪組織が国内で犯罪に及んだり、犯罪組織の構成員が多国籍化、潜在化するなど、治安に対する新たな脅威となっております。
 昨年は、国際犯罪組織等の実態解明を強化するとともに、犯罪インフラ事犯等の徹底的な取り締まりを推進し、来日外国人犯罪者三千三百二十五人を検挙したほか、東京入国管理局との合同摘発等により、不法滞在者等千二百五十二人を摘発いたしました。
 今後も、関係機関との連携を強化し、国際犯罪組織等の壊滅、不法滞在者の検挙、摘発を推進してまいります。
 その三は、銃器、薬物対策の推進についてであります。
 昨年は、けん銃を使用した郵便局強盗を初め、工事現場に対する連続発砲事件など九件のけん銃発砲事件が発生し、都民に著しい脅威と不安を与えておりますが、このような中、銃器関連情報の収集に努めるとともに、暴力団等への取り締まりを徹底し、八十五丁のけん銃を押収いたしました。
 また、薬物事犯については、近年、社会における薬物乱用のすそ野の広がりが懸念されておりますが、薬物犯罪の多くは暴力団等が深く関与し、その資金源となっていると見られております。
 昨年は、密輸、密売グループの摘発や末端乱用者の取り締まりを推進し、密売人等二千二百九十人を検挙したほか、覚せい剤、大麻等約六十一キログラム、MDMA一万四千四百五十八錠を押収いたしました。また、芸能界、スポーツ界、大学等に対し、薬物乱用根絶に向けた働きかけを行うなど、広報啓発活動も展開いたしました。
 今後も、密輸、密売グループの壊滅、不法所持者や末端乱用者の検挙対策を徹底するとともに、関係機関と協力し、銃器、薬物のない社会の実現を目指し、諸対策を推進してまいります。
 第三は、重大交通事故の防止と安全で快適な交通社会の実現についてであります。
 昨年は、警笛を活用した見せる交通街頭活動を展開したほか、飲酒運転を初めとする悪質性、危険性、迷惑性の高い交通違反の指導取り締まり、高齢者と二輪車及び自転車利用者を重点とした交通安全教育や広報啓発活動などを推進してまいりました。
 その結果、都内の交通事故は、死者数については残念ながら一昨年に比べ十人増加したものの、それでも戦後二番目に少ない二百十五人となったほか、発生件数及び負傷者数については、十年連続で減少となりました。
 しかしながら、依然として悲惨な交通事故が後を絶たないことから、本年は「交通事故連続減少 交通事故死者数チャレンジ・アンダー二〇〇」をスローガンに掲げ、交通事故防止対策に取り組んでまいります。
 また、駐車対策については、昨年十月、荷さばき車両に配意した駐車規制緩和区間をさらに十区間拡充したほか、今月中には、都内四区間において、二十分百円とする短時間利用者のためのパーキングメーターの供用を開始する予定としております。
 今後も、安全で快適な交通社会の実現に努めてまいります。
 第四は、テロ、ゲリラ等の防圧検挙と震災等大規模災害への対応についてであります。
 その一は、各種テロ対策等の推進についてであります。
 極左暴力集団については、組織の維持拡大を目的に、その暴力性や党派性を隠して大衆運動や労働運動への取り組みに重点を置いた活動を展開しておりますが、その暴力革命の方針に変わりはありません。
 昨年は、非公然アジトを摘発するとともに、違法行為に対する取り締まりを行い、極左活動家等十八人を検挙いたしました。
 今後も、極左暴力集団の実態解明と、テロ、ゲリラ等違法行為の防圧検挙に向けた各種対策を強力に推進してまいります。
 右翼については、領土、憲法等、国家の基本的諸問題を運動の重要課題として各種抗議や要請行動などに取り組んでおり、昨年は、APEC首脳会議に伴う外国政府要人来日時を初め、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件等をとらえて抗議行動を活発に展開しましたが、このような中、右翼団体構成員等七十一人を検挙いたしました。
 今後の政治情勢等によっては、抗議行動のさらなる活発化やテロ行為等の不法行為に及ぶことも懸念されることから、今後も悪質な右翼団体に対する積極的な事件化を初めとする多角的な右翼対策を推進してまいります。
 また、APEC警備においては、都民の理解と協力のもと、地域版パートナーシップの取り組み等、官民一体となった日本型テロ対策の展開により、不法行為を完全に封じ込め、所期の目的を達成することできました。
 しかしながら、我が国が国際テロ組織からテロ対象国として名指しされている状況に変わりないことから、今後も地域住民、事業者等との緊密な連携を図り、地域版パートナーシップの恒常的な取り組み、徹底した管内の実態把握等の諸対策を推進し、テロを許さない社会づくりに努めてまいります。
 あわせて、強毒性新型インフルエンザ等の新たな脅威や、北朝鮮情勢にかんがみた武力攻撃事態を初めとする重大突発事案の発生時における危機管理対策の推進を図ってまいります。
 その二は、オウム真理教対策の推進についてであります。
 オウム真理教は、全国十五都道府県に三十一カ所の拠点施設と約千五百人の信者を擁しており、うち都内には五カ所の拠点施設があり、約六百三十人の信者がおります。
 教団は、松本智津夫を絶対視する主流派と松本の影響力の払拭を装う上祐派が対立し、内部分裂状態にありますが、依然として両派とも、地下鉄サリン事件以前に入信した者が多数を占め、松本の強い影響下にあることが認められます。
 今後も、関係機関と連携して教団の実態解明及び警戒活動を継続し、不法行為に対する取り締まりを徹底してまいります。
 その三は、震災を初めとする各種災害警備対策の推進についてであります。
 昨年来、都内においては、震災による大きな被害の発生はないものの、昨年二月の南米チリ大地震に伴う津波では、都内の島部や沿岸を管轄する警察署が警戒活動に従事しました。
 また、近年、局地的集中豪雨による被害が増加傾向にあることから、危険箇所等の情報を関係自治体と共有し、事前対策による被害の軽減を図っております。
 今後も、各種訓練や広報啓発活動を推進し、自主防災組織の育成を図り、災害に強いまち東京の実現に取り組んでまいります。
 第五は、犯罪被害者支援活動の推進についてであります。
 犯罪行為により、精神的、経済的打撃を受けた被害者やその遺族が再び平穏な生活を営むことができるよう、病院への付き添い等を行う初期支援活動、捜査状況等の情報提供を行う被害者連絡活動などの支援活動を行うとともに、診断書料等の公費支出など経済的支援の充実にも努めてまいりました。
 今後も、自治体、関係機関等と連携し、犯罪被害者等の心情に配意した支援活動を推進するとともに、犯罪被害者等の実情を伝える広報啓発活動により、社会全体で犯罪被害者等を支え、思いやる機運の醸成に努めてまいります。
 以上、都内の治安状況について申し上げましたが、現下の厳しい治安情勢に的確に対応していくためには、業務の効率化、合理化等に加え、人的基盤の充実強化が必要であることから、本定例会におきましても、警察官百十七名を増員するための条例改正や必要な予算の確保をお願いしているところであります。
 警視庁といたしましては、今後とも、安全で安心して暮らせるまち東京の実現に向け、全力で努力してまいりますので、東京都議会の皆様には一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、治安状況の報告とさせていただきます。

〇議長(和田宗春君) 警視総監の発言は終わりました。

〇議長(和田宗春君) 次に、監査委員より、監査結果の報告について発言の申し出がありますので、これを許します。
 監査委員大塚たかあき君。
   〔百三番大塚たかあき君登壇〕

〇百三番(大塚たかあき君) 監査委員を代表いたしまして、過去一年間に実施した監査の結果についてご報告申し上げます。
 監査委員の役割は、都の行財政が公正かつ効率的に運営されるよう厳格な監査を実施することにあります。年間を通じて、定例監査、行政監査、工事監査、財政援助団体等監査、決算審査、住民監査請求など多岐にわたる監査を実施しております。
 この一年間は、五百九十八カ所で監査を実施し、問題点の指摘は百五十一件、指摘した金額は、明示されているものだけを見ても約二億二千万円であります。
 初めに、定例監査から申し上げます。
 定例監査は、都の行財政全般を対象とした最も基本的な監査です。本庁のすべての部と事業所の約四割、合計で四百四十五カ所を対象として、事務事業が適正適切に行われているかについて、監査を実施いたしました。
 監査の結果、物品購入などの契約手続について、契約を締結しないまま物品を納品させるなど、本来、事前に行うべき契約手続を事後に行っていた事例が複数認められました。
 また、情報通信ネットワークに必要な機器について、必要以上に性能が高い機器を借り入れていたほか、必要のない予備の機器を百十五台借り入れた事例や、各区市町村シルバー人材センターへの運転資金貸付事業について、事業開始以来、貸付実績が全くないまま漫然と事業を継続していた事例などが認められました。
 このため、不適正経理の改善や適切な機器の選定のほか、事業の適切な見直しなどを求めました。
 次に、行政監査について申し上げます。
 行政監査は、都の特定の事務や事業を対象として、経済的、効率的、効果的に行われているかという観点を主眼として行う監査であります。
 今回は、債権管理をテーマに選定し、各局が所管する債権について横断的に監査を実施しました。
 都が保有する債権は都民の貴重な財産であり、その適切な管理は極めて重要であります。監査の実施に当たりましては、このような問題意識のもと、債権ごとに検証方法を定めた上で、各種の使用料や貸付金に係る収入管理や滞納整理が適切に行われているか検証いたしました。
 監査の結果、督促状を発布していないものや、催告書等による、納付に向けた債務者との交渉が行われていないなど、不適切な事例が多数認められました。また、債務者の状況に応じた措置が速やかに行われていない事例も認められました。
 このため、督促及び催告などの徴収努力を公平かつ効果的に行うとともに、債務者の状況に応じた回収可能性を判断し、悪質な者に対しては、強制執行や訴訟などの法的措置をとるよう求めました。
 次に、工事監査について申し上げます。
 工事監査は、全局における百万円以上の工事を対象として、その約一割、千五百四十一件について実施いたしました。
 指摘した内容を見ますと、展示物制作の単価を誤って七倍にするなど、工事費の単純な積算誤りが相当数認められました。このため、実効性のあるチェック体制の整備強化、職場研修の充実などにより、初歩的な間違いの防止を図るよう求めました。
 また、今回、重点監査事項として、工事の施工管理が適切に行われているかを検証いたしました。その結果、車道の転落防止さくを固定するために使用するアンカーボルトが設計どおりに施工されておらず、安全が十分に確保できていない事例などが認められました。
 これらは、工事監督の経験不足などにより発生したものであることから、安全性の確保や技術力の向上のため、若手職員等へのさらなる支援体制の整備を図るなど、組織を挙げた対応に取り組むよう求めました。
 次に、都の補助金交付団体や出資団体に対する監査について申し上げます。
 監査を実施したのは、補助金交付団体等百三十七団体及び出資団体十団体であります。
 その結果、補助金交付団体等への監査では、社会福祉法人に対し、施設利用者数の算定誤りなどによる補助金の過大交付の事例が多数認められたことから、過大に交付された補助金の返還などを求めました。
 出資団体への監査では、物品購入契約について、業者からの請求書に日付が記載されていないにもかかわらず、契約代金を支出しているなど、不適正な事例が多数認められました。
 また、道路の補修工事契約について、夜間の工事から昼間の工事への設計変更が必要であるにもかかわらず、これを行っていなかった事例が認められました。
 このため、契約事務の改善や適正な設計変更手続などを行うよう求めました。
 次に、決算審査について申し上げます。
 平成二十一年度決算について、主に法令等に基づき適正に執行されているかという合規性の観点から監査を行い、決算計数を確認するとともに、予算執行や資金管理、財産管理の面から検証しました。
 その結果、財産に関する調書において、土地で約四百十二万平方メートル、出資による権利で約三十二億円の登載の誤りがあり、現在高の把握を適正に行うよう求めました。
 次に、監査結果に対する改善状況について申し上げます。
 監査は、指摘した問題点が改善されて初めてその目的を達成します。このため、年に二回、指摘の改善状況について報告を求め、その改善を促しています。過去三年間に行った指摘について見ると、これまでに約八八%が措置済みとなるなど、着実に改善されております。
 改善の効果として、例えば、出資団体への特命随意契約を競争入札に改めた事例では、従来の契約金額に比べ、一千万円以上契約金額が低くなりました。
 このほか、都民からの住民監査請求が十一件あり、その処理を行いました。
 以上、この一年間に実施した監査について述べてまいりました。監査の結果、総じていえることは、組織内部のチェック体制が十分に機能していないために、誤りが見過ごされていることです。また、安易に前例が踏襲されるなど、コスト意識や問題意識を持って職務を見直していない事例も少なくありません。
 管理者の皆様には、職場のさまざまな課題に即応できる高度な知識や能力を備え、都民サービスをさらに向上させる気概にあふれた職員の育成に努められるよう望みます。
 昨今の経済状況の中で、ここ数年、都税収入は大幅に減少しており、都財政は当面、大きな好転を期待できない状況にあることから、財政運営は一層厳しくなることが予想されます。このため、今まで以上にむだを排し、効率的、効果的に事業を推進していかねばなりません。
 私ども五名の監査委員は、都政が公正かつ効率的に運営されるよう、これからも監査委員の使命を全力で果たしていく決意であることを申し上げ、報告を終わります。(拍手)

〇議長(和田宗春君) 監査委員の発言は終わりました。

〇議長(和田宗春君) 次に、包括外部監査人より、平成二十二年度包括外部監査結果の報告について説明を求めます。
 包括外部監査人鈴木啓之さん。
   〔包括外部監査人鈴木啓之君登壇〕

〇包括外部監査人(鈴木啓之君) 平成二十二年度の包括外部監査人の鈴木啓之と申します。
 平成二十二年度の包括外部監査は、都立病院及び財団法人東京都保健医療公社病院の財務事務の執行と経営管理について、補助者十二名とともに監査を行い、二十三件の指摘事項と四十八件の意見を監査報告書に記載いたしました。
 本日は、その主な事項についてご説明申し上げます。
 平成二十一年度の都立病院への繰入金は約四百六十一億円、公社病院への運営費補助金は約百二十七億円、合計では約五百八十八億円となっています。この繰入金や運営費補助金は、平成十九年度より三年連続増加し、平成二十一年度では、前年度比較で約七十一億円増加しています。
 このうち、都立病院に対する繰入金については、都立病院改革マスタープランで各病院の役割が位置づけられてから九年が過ぎ、その間、医療環境、医療課題が大きく変化しています。
 そこで、都がなすべき行政的医療についても定期的に見直し、かつ、診療報酬の動向や不採算部分の分析を通じて、繰入基準も同時に見直す仕組みの構築が必要であるとしました。また、医師、施設等の有限な医療資源や都民の税金の有効活用の視点から、医療機能の集約化や病院ごとの繰り入れ対象医療を定める工夫が必要であるとしました。
 さらに、繰入金の算出方法については、医師が繰り入れ対象となる疾患以外の患者の診療を行っている場合の繰入金の算出方法や収支差額を精算払いする現行方式を改め、病院の経営の自主性を高めていく算出方法を検討することが必要であるとしました。また、公社病院においては、行政的医療の一部が補助金の対象となっていないこと等を含めて、運営費補助金交付要綱の見直しが必要であるとしました。
 次に、診療費に関する未収金の残高管理についてです。
 病院の収益は、個人に請求する医業収益と、主に社会保険や国民健康保険などの基金等に請求する医業収益があります。
 このうち、まず、個人へ請求分の未収金についてです。
 患者の診療費を収納する際に入力する医事会計システムと会計処理を行うための財務会計システムの未収金額は、本来一致すべきですが一致していません。両システムの未収金残高を一致させるように修正すべきであるとしました。
 また、都立病院の個人の過年度未収金残高は、毎年度約一〇%近く増加し、平成二十一年度末では約九億八千二百万円となっています。回収業務の手続が病院間で不統一かつ不十分であったため、具体的基準を明示して手続を統一し、回収業務を徹底することが必要であるとしました。
 特に、平成二十年度と二十一年度は不納欠損処理していません。その中には、既に自己破産している者や居所不明の者など、不納欠損処理すべきものが含まれています。私債権である医業収益については、東京都債権管理条例に基づいて不納欠損処理を行うとのことですが、先ほどのような案件については、早急に不能欠損の手続を進めていくべきものと考えます。
 次に、基金等へ請求分の未収金であります。
 基金等に係る会計上の医業収益は、その月の診療分の合計額である調定金額により計上していますが、実際の基金等への毎月の請求金額等と一致しません。このため、不一致の原因を十分に調査した上で、調定額の修正を行う必要があるとしました。
 さらに、基金等への請求額と実際の入金額との間に生じている不一致の調査も不十分であり、平成二十一年度末では、都立病院で約五億三千万円程度、公社病院で約五千九百万円程度の不一致が生じています。早急に不一致の原因を精査して、本来あるべき金額に修正すべきとしました。
 また、未請求のレセプトの管理が不十分であるため、請求業務の重要性を徹底させ、適時に請求できるようにする必要があるとしました。
 患者さんを診療して、その治療費を請求し、収入するという一連の手続の中で、請求額と実際に会計処理をする金額が一致していない。請求額と現金の入金額が不一致のままとなっている。長期間請求していない未収金がある。督促や不納欠損処理が行われていないケースがある。このように、不適切、不十分な事務処理が散見されていたため、収入確保等の観点から、早期に改善に取り組むべきものとして、その多くを指摘事項としました。
 次に、契約方法の見直しと財産管理についてです。
 委託費を含む経費は、医業費用の約二五%を占めます。借り上げ職員住宅に空き家の状態で賃借料を払っている事例や、院内保育室の運営に当たり、実際の保育人数よりも、かなり多い定員数で委託契約をしている事例がありました。経費のむだ遣いです。契約の改善が必要であるとしました。
 また、ある病院の主要な業務委託契約を六年間分調査しましたが、都の契約事務規則に基づいて入札手続を行っているものの、六年間の業者変更は一社もなく、一社入札や、一社以外のすべての業者が入札を辞退するなど、十分な競争性を発揮できていないものが多く、また、継続契約の案件については、毎年の予定価格の見直しなどについて改善の余地がありました。民間の市場動向や前年度の契約実績等を参考にしつつ、契約金額を低減させる方策を検討する必要があるとしました。
 また、材料費についても、棚卸しを含めて在庫管理方法を改善すること、医薬品や診療材料の購入方法の工夫や、後発医薬品の導入率を高めて材料費の低減を図る必要があるとしました。
 また、固定資産の管理においても、重要機器たる固定資産の除却処理漏れが散見され、固定資産台帳の修正を要求しました。
 次に、電子カルテを初めとしたシステム管理についてです。
 情報セキュリティーの取り組みについては、診療収入等を管理する医事会計システムのアクセス権について、システムを使用する個人別のIDやパスワードが設定されていない病院があり、セキュリティー対策が著しく不十分であり、不正操作を未然に防ぐために、早急にシステム改善することが必要であるとしました。
 また、電子カルテについては、公社病院において機能不足、ふぐあいが発生し、おさまることなく現在に至っており、システムを当初の計画どおり導入できない病院があります。電子カルテシステムは業務の効率化のために不可欠であり、早期に導入する必要があり、また、次期電子カルテシステムの導入に当たっては、病院業務の標準化が必要であるとしました。
 次に、病院の目標管理とモチベーションの向上についてです。
 病院経営の目標管理が不十分です。自己収支比率その他の経営指標を適切に設定して経営改善に取り組むとともに、目標達成のためには、経営指標を各病院の部門別指標にまで展開して管理していくことを徹底させていく必要があるとしました。
 さらに、それを達成するには、職員のモチベーションを高めて病院経営を改善していくことが必要です。そのためには、職員の満足度の低い病院、低い項目については十分な対応策が必要であるとし、都立病院、公社病院のいずれにおいても、職員満足度調査結果の集計、分析方法について改善が必要であるとしました。
 以上が主な指摘事項及び意見であります。
 以上をもちまして、平成二十二年度の包括外部監査結果のご説明といたします。ありがとうございました。(拍手)

〇議長(和田宗春君) 包括外部監査人の説明は終わりました。

〇七十四番(伊藤まさき君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会し、明九日から十四日まで六日間、議案調査のため休会されることを望みます。

〇議長(和田宗春君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇議長(和田宗春君) ご異議なしと認めます。よって、本日の会議はこれをもって散会し、明九日から十四日まで六日間、議案調査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は、二月十五日午後一時に開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後二時三十七分散会


文書質問趣意書及び答弁書

二二財主議第五一八号
平成二十三年一月三十一日
東京都知事 石原慎太郎
東京都議会議長 和田 宗春殿
文書質問に対する答弁書の送付について
 平成二十二年第四回東京都議会定例会における左記議員の文書質問に対する答弁書を別紙のとおり送付します。
     記
小山くにひこ議員
中村ひろし議員
田の上いくこ議員
大島よしえ議員
清水ひで子議員
花輪ともふみ議員
大山とも子議員

平成22年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  小山くにひこ

質問事項
一 都立霊園と東京都公園協会について

一 都立霊園と東京都公園協会について
今日、少子化や高齢化など、社会情勢の変化により、都民のお墓に対する意識と需要に大きな変化が生じてきている。墓地需要の高まりや、人々の墓地に対する考え方が多様化する中で、公平かつ公正な都民益に資する都立霊園のあり方があらためて求められている。そのような状況において、都立霊園が平成18年に東京都公園協会に指定管理され、指定管理の5年の期間を終える。今定例会に再度、指定管理の議案が提出されている中で、都立霊園の意義やあり方等について、あらためて伺う。
1 都立霊園のあり方について、都の見解を伺う。
2 各都立霊園の現状と課題について伺う。
3 都立霊園を東京都公園協会に指定管理させる理由と見解について伺う。
4 東京都公園協会が行う販売がもたらす都立霊園近辺の民間業者への影響に対する認識と対応について伺う。
5 都立霊園内に存在する休憩所の詳細と歴史的経緯について伺う。
6 都立霊園内に存在する休憩所が代々相続され、既得権益化することに対する見解と対応について伺う。

平成22年第四回都議会定例会
小山くにひこ議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 都立霊園と東京都公園協会について
1 都立霊園のあり方について、都の見解を伺う。

回答
都立霊園は、明治7年に、我が国最初の公営墓地として開設された青山霊園や谷中霊園などを有する、歴史ある霊園で、都民共有の財産です。都は、時代や都民意識の変化に応じた様々なニーズに応え、多くの都民が安心して利用できる墓地の供給に努めています。また、管理運営においては、公共性・公平性の観点から利用の適正化を図り、都民の福祉の増進に寄与しています。

質問事項
一の2 各都立霊園の現状と課題について伺う。

回答
都民の墓地需要は依然として高く、墓地の在り方への要望が多様化しています。
都は、都民の墓地需要に応えるため、既存霊園の限られた空間を有効に活用し、需要の高い一般墓地を供給するとともに、将来の管理・承継の心配のない合葬式墓地や樹林・樹木墓地など、新しい形式の墓地の供給に取り組んでいます。
また、都立8霊園では、利用者に対して統一的で安定したサービスに努めるとともに、快適な緑のオープンスペースを提供しています。
なお、各霊園に共通する管理運営上の課題としては、墓参者が多い時期に発生するごみの処理や、樹木の適正な管理などがあり、適切に対応しています。

質問事項
一の3 各都立霊園を東京都公園協会に指定管理させる理由と見解について伺う。

回答
都立霊園は、無宗教・無宗派の霊園として、明治時代から都民の墓地需要に応えてきた極めて公共性の高い施設であり、永続性、非営利性が求められます。都民に対しては、統一的で安定したサービスを提供することが重要であり、また、施設変更や無縁改葬など霊園間の事務処理も必要なため、8霊園を一体的に管理する必要があります。
霊園事業は、霊園再生計画事業や樹林墓地など新形式墓地の整備、供給計画に基づく公募など、都の政策との連動性が極めて高く、また、東京都霊園条例に基づく専門性の高い事務処理が求められます。
以上の条件に合致する団体は、行政の支援・補完機能を有し、情報管理に信頼のおける東京都監理団体であり、現在の指定管理者である公益財団法人東京都公園協会をおいて他にはありません。

質問事項
一の4 東京都公園協会が行う販売がもたらす都立霊園近辺の民間業者への影響に対する認識と対応について伺う。

回答
都立霊園内で、許可なく物品販売を行うことは条例で禁止されており、販売にはあらかじめ許可を必要とします。墓参者の声を受けて、多磨霊園と小平霊園で公園協会が行っている臨時売店は、民間業者への影響を考慮し、墓参者がピークに達する春秋のお彼岸中のそれぞれ3日間に限り、軽食と飲み物に限定して販売を行っています。今後とも、墓参者のニーズ等を把握し、臨時売店の実施主体も含め実施方法を検討していきます。

質問事項
一の5 都立霊園内に存在する休憩所等の詳細と歴史的経緯について伺う。

回答
都立霊園内の休憩所は、墓参者に対するサービスを提供する施設であり、現在、5霊園で合計12か所あります。具体的には、青山霊園に3か所、谷中霊園に3か所、雑司ケ谷霊園に3か所、染井霊園に2か所、多磨霊園に1か所あります。
区部霊園の休憩所は、霊園が開設された明治初期から昭和初期にかけて、東京市の使用許可を受けて出店し、今日に至っています。多磨霊園の休憩所は、大正12年の霊園開設時に東京市が公募し、営業を開始したものです。

質問事項
一の6 都立霊園内に存在する休憩所が代々相続され、既得権益化することに対する見解と対応について伺う。

回答
現在ある休憩所は、古くから墓参に必要な生花、線香等の販売を行い、墓参者を接遇するための施設として存在し、東京都霊園条例に基づき、墓地としての用途や目的を妨げない限度において、例外的にその土地の使用を許可し、承継については限定的に認めています。
休憩所については、都立霊園としての公共性・公平性に鑑みつつ、過去からの経緯等も踏まえながら、その取扱いについて慎重に対処していきます。

平成22年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  中村ひろし

質問事項
一 鉄道駅ホームの安全柵の設置について

一 鉄道駅ホームの安全柵の設置について
鉄道駅ホームにおいては、狭いホームの近くを猛スピードで電車が通過し、日々都民の生命と安全が脅かされている。注意して歩けばよいという問題ではなく、押されれば本人の責任もなく悲惨な事故に巻き込まれてしまう。とりわけ目の不自由な方からは転落が本当に怖いという声もある。また、多くの乗客が事故などにより多大な時間を浪費させられ、場合によっては長時間電車の中に閉じ込められることもある。
地方と違い、首都東京は過密なダイヤの中で、ホームに人があふれ、危険度は高いため、国以上の規制と安全基準があってもよいと考えられる。都営地下鉄に設置の動きがあるのは評価するが、JRや私鉄では各駅停車だけではなく猛スピードで通過する列車がある。都では公益的な判断から、震災時の緊急輸送道路沿いの建築物については、私有財産であるにも関わらず沿道を防ぐ影響から耐震診断を義務化し、それに合わせて耐震診断を行うに際して補助金を出し施策を進めている。こうしたことは鉄道にもあてはまるのではないか。必要に応じて都独自の施策を求めるものである。
鉄道事業者としても安全対策に取り組んでいるとは思うが、私自身、乗客の一人として脅威に感じ、また、多くの方から怖いとの声を聞くことがある。乗客がそのように感じているのであれば、鉄道事業者がいくら対策をしていると言ってもまだまだ不十分と言わざるを得ない。
すみやかに鉄道駅ホームに安全柵が設置され、日々危険な状況にさらされる都民の生命と安全が守られるよう、東京都としても施策を行うことを求めて以下の質問を行う。
1 東京都内にある駅の数と可動式ホーム柵が設けられている駅の数は何駅か。また、ホームからの転落事故等に伴う事故件数、そのうち、けが人の件数、死亡者の件数は何人か。
2 鉄道のホームにおいては、事業者として乗客の安全に取り組むことは当然である。東京都道で橋に柵がない場所で通行人が転落したら都の責任になるのではないのか。現在、狭いホームのすぐ脇を猛スピードで列車が運行されているが可動式ホーム柵等設置に対する事業者の対応について、東京都の認識を問う。
3 ホームからの転落事故が起きた場合、鉄道事業者は官庁への報告義務があるか。死亡事故などの重大事故以外にも、ホームから線路に人が入った場合はよく電車が止まるが、月次報告でよいが東京都に報告させ施策に活かすことが必要だと思うが所見を問う。
4 自動開閉柵に費用と時間がかかるのは理解できるが、暫定的でもいいので扉以外の部分に固定柵を設けることなら容易にできる。応急措置として設置を事業者に働きかけるべきではないかと思う。固定柵の都内における設置状況と課題を伺う。
5 JR及び私鉄においては、みずから取り組むことが基本で、働きかけをする、との答弁にとどまっている。現在、駅のバリアフリーについては法制化されている。特に視覚障がいの方は転落の危険におびえている。バリアフリー以前の問題として安全の法制度化を進めるべきではないか。交通基本法も検討されているが、ホームからの転落に対する安全確保について、事業者の取り組みを促進させるよう国に対してはたらきかけをしてはどうかと思うが所見を伺う。また、都においては福祉のまちづくり条例において転落防止のためのホーム柵の設置が努力義務として定められているが、目標年次を定め具体的に設置が進むよう取り組むべきではないかと考えるが所見を問う。
6 山手線も整備を促進すべく恵比寿駅に設置がされ始めた。車両によってドアの位置が違うため柵の設置が難しいという路線もある中で、車両のドアの位置を統一するために車両を変えるとう点で、評価できる。法制化により安全対策を責務とするが、同時に鉄道事業者への補助制度を設けることで促進につながるが所見を問う。平成23年度から25年度で「ホーム柵等整備促進事業」が計画され、来年度6千4百万円予算要求されているが内容を伺う。
7 JR中央線は特急が車両の長さが違うのでなかなかできないようだが、山手線では車両を変えることも検討されている。しかし山手線と違い、特急や特別快速が猛スピードで通過する中央線等においては、その対策と言う点でも取り組むよう最優先にはたらきかける必要があると思うが所見を問う。
8 道路を建設する際、渋滞解消で経済効果を出して整備を促進している。柵をつくったから経済効果があるわけではないが、事故のたびに時間を失う都民にとっては安全対策は十分に経済効果があると言える。都は道路整備については渋滞による経済効果をよく言うが、鉄道においても事故による都民の損失は膨大である。こうした視点で、対策を早急に進めるべきである。昨今、駅のホームに駅員がいないことが多い。また、都営地下鉄へのホームドア・ホーム柵の設置は進めているが、私鉄やJRでは特急通過などで地下鉄よりも危険な駅は多い。駅の安全対策を真剣に考える必要があるが所見を問う。

平成22年第四回都議会定例会
中村ひろし議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 鉄道駅ホームの安全柵の設置について
1 都内にある駅の数と可動式ホーム柵が設けられている駅の数及びホームからの転落事故等に伴う事故件数と、そのうちのけが人の件数、死亡者の件数は何人か、併せて伺う。

回答
平成21年度末現在、可動式ホーム柵又はホームドアは、都内748駅のうち153駅に設置されています。
国土交通省の調査によると、平成21年度、都内において、ホームからの転落等により列車と接触し死傷した事故は自殺者を除き95件あり、そのうち負傷者は73人、死亡者は22人です。

質問事項
一の2 現在、狭いホームのすぐ脇を猛スピードで列車が運行されているが、可動式ホーム柵等設置に対する事業者の対応について、都の認識を伺う。

回答
可動式ホーム柵等は、ホームからの転落や列車との接触などの事故防止に有効な施設ですが、既存駅への設置に当たっては、車両扉の位置の異なる列車への対応や、ホーム幅の減少、停車時間の増大による輸送力の低下、更には膨大な投資費用などの様々な課題があり、事業者による可動式ホーム柵等の整備が進んでいない状況にあると認識しています。

質問事項
一の3 ホームからの転落事故が起きた場合、鉄道事業者は官庁への報告義務があるか伺う。また、重大事故以外でも都に報告させ、施策に活かすことが必要と考えるが所見を伺う。

回答
列車と接触したことにより、死亡又は負傷した事故について、鉄道事業者は、鉄道事業法第19条に基づく鉄道事故等報告規則により、定期的に国土交通省地方運輸局長へ報告する義務があり、そのうち特に身体障害者に係るものなどについては、速やかに報告する義務が課せられています。しかしながら、列車との接触がない場合については、事故としての報告義務はありません。
都としては、引き続き、ホームでの安全性向上を図るために、必要に応じて、適宜、国や鉄道事業者から転落事故等の情報を聴取し、適切に対応していきます。

質問事項
一の4 固定柵の都内における設置状況と課題について伺う。

回答
平成21年度末現在、都内において、東京急行電鉄多摩川線、同社池上線など6路線25駅に固定柵が設置されています。
固定柵の設置に当たっては、車両扉の位置の異なる列車への対応、ホーム幅の減少に加え、開口部からの転落を防止できないことや、乗降の視認を妨げ、出発直前の安全確認に支障を及ぼす恐れがあることなどの課題があります。

質問事項
一の5 ホームからの転落に対する安全確保について、事業者の取組を促進させるよう国に対して働きかけるべきと考えるが、所見を伺う。また、都の福祉のまちづくり条例においてホーム柵設置が努力義務とされており、目標年次を定めホーム柵設置が具体的に進むよう取り組むべきと考えるが、併せて所見を伺う。

回答
国においては、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」に基づいて平成18年に定められた「移動等円滑化の促進に関する基本方針」について、現在、改定を進めており、平成22年12月に、改定案を公表し、これに対するパブリックコメントを実施しました。
この改定案によれば、可動式ホーム柵等については、転落を防止するための設備として非常に効果が高く、その整備を進めていくことが望ましいが、技術的困難さや投資費用等の課題があるため、これらを総合的に勘案した上で、平成32年度までに、可能な限り設置することとしています。
引き続き、都としては、こうした国の動きを踏まえつつ、可動式ホーム柵等の整備促進に取り組んでいきます。

質問事項
一の6 安全対策の法制化と同時に鉄道事業者への補助制度を設けることでホーム柵の設置促進につながると考えるが、所見を伺う。また、平成23年から25年度で計画されている「ホーム柵等整備促進事業」の内容について伺う。

回答
鉄道事業法第18条の2では、「鉄道事業者は、輸送の安全の確保が最も重要であることを自覚し、絶えず輸送の安全性の向上に努めなければならない」と規定されています。
可動式ホーム柵は、ホームからの転落や列車との接触などの事故防止に有効な鉄道の安全対策施設であるとともに、高齢者や障害者等の移動の安全性の確保に資する施設であると認識しています。
こうしたことから、駅のホームにおける安全対策は鉄道事業者が自ら取り組むことを基本としつつ、都においても、整備に慎重な鉄道事業者の積極的な取組を促すため、来年度からホーム柵等の整備促進に向けた試行的事業を行い、課題を検討することとしています。

質問事項
一の7 特急や特別快速が猛スピードで通過するJR中央線等においては、ホーム柵設置を最優先に働きかける必要があると考えるが、所見を伺う。

回答
可動式ホーム柵等の設置に当たっては、通過列車の状況や、乗降客数、ホームの混雑度、事故件数、周辺の福祉施設数等を総合的に勘案し、必要性の高い駅から設置するよう鉄道事業者に働きかけていきます。

質問事項
一の8 私鉄やJRでは特急通過などで地下鉄よりも危険な駅は多く、経済効果の観点からも対策を早急に進めるべきである。駅の安全対策を真剣に考える必要があると考えるが、所見を伺う。

回答
つくばエクスプレスや東京メトロ副都心線などの新規開業路線の駅においては、安全対策のため、可動式ホーム柵の整備を行っています。
一方、既存駅においては、車両扉の位置の異なる列車への対応や、ホーム幅の減少、停車時間の増大による輸送力の低下、更には膨大な投資費用などの様々な課題があり、整備が進んでいない状況にあります。
こうしたことから、整備に慎重な鉄道事業者の積極的な取組を促すため、駅のホームにおける安全対策は鉄道事業者が自ら取り組むことを基本としつつ、都においても、来年度からホーム柵等の整備促進に向けた試行的事業を行い、課題を検討していきます。さらに、鉄道事業者に対しても、必要性の高い駅からホーム柵整備を進めていくよう働きかけていきます。

平成22年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  田の上いくこ

質問事項
一 バス事業における「はとバス」への委託について

一 バス事業における「はとバス」への委託について
東京都交通局のバス事業では、路線において42%、車両においては16%を「株式会社はとバス」に業務委託しています。平成15年度に杉並支所で始まった業務委託は、当初451,207,200円だったものが年々営業所ならびに路線を増やし、平成21年度には5支所、39系統、230両に増え、契約金額は3,085,988,560円となっています。決算審議や事務事業質疑を通して、監理団体などのチェックを重ねてきましたが、不十分な情報公開やOB就職の実態、契約の仕方などの改善が求められてきました。この「はとバス」の場合は、監理団体ではありませんが、契約が毎年増えていながら、特命随意契約が続いていることに対して、交通局の明確な説明責任が求められると考えます。
1 平成15年に「株式会社はとバス」に特命随意契約で業務委託を開始した理由をお聞かせください。また、その後業務委託量が毎年増えているにもかかわらず特命随意契約が続いている理由をお聞かせください。
2 予算の削減など業務委託によって得られる効果をどのように認識されていますか?
3 委託の範囲は、一般バス路線の長さまたは使用車両数の2分の1以内であること、例外的に3分の2まで拡大可能とされています。今後もさらに「はとバス」への委託を増やしていく予定はあるのでしょうか?
4 交通局のOBが「はとバス」の代表取締役はじめ重要な役職に再就職していますが、現在交通局のOBは「はとバス」の管理職に何人いるのでしょうか?
5 「株式会社はとバス」への東京都の資本参加状況をおしえてください。
6 「株式会社はとバス」を監理団体にするつもりはないのでしょうか?また、その理由をおしえてください。
7 不採算路線であっても公共交通として使命を果たさなければいけません。今後高齢化が進む中で、交通不便地域の移動需要がますます高まっていきます。その中で、公が行わなければならない業務と民間でもできる業務をどのように理解されていますか?

平成22年第四回都議会定例会
田の上いくこ議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 バス事業における「はとバス」への委託について
1 平成15年に「株式会社はとバス」に特命随意契約で業務委託を開始した理由を伺う。また、その後業務委託量が毎年増えているにもかかわらず特命随意契約が続いている理由を伺う。

回答
株式会社はとバスを特命随意契約の相手方としている理由は、まず、一般乗合旅客自動車運送事業の許可を受けている事業者であり、バス事業のノウハウがあること、次に、定期観光事業を主に行っている事業者であり、当局路線バス事業と競合しないこと、また、都の出資会社であり、事業実施に当たって綿密な調整・協議を行えることです。

質問事項
一の2 予算の削減など業務委託によって得られる効果をどのように認識しているのか伺う。

回答
株式会社はとバスへの委託による経費削減効果は、平成21年度決算をもとに算出すると、約13億4千万円となります。

質問事項
一の3 委託の範囲は、一般バス路線の長さまたは使用車両数の2分の1以内であること、例外的に3分の2まで拡大可能とされているが、今後もさらに「はとバス」への委託を増やしていく予定はあるのか伺う。

回答
株式会社はとバスへの委託は、サービス水準を維持しながら経営の効率化を図る上で有効な手法の一つとして実施しています。
今後とも、都営バスを取り巻く事業環境を踏まえ、適切に対応していきます。

質問事項
一の4 交通局OBが「はとバス」の代表取締役はじめ重要な役職に再就職しているが、現在交通局のOBは「はとバス」の管理職に何人いるのか伺う。

回答
平成22年11月末現在、株式会社はとバスの役員2名と管理職3名が、交通局の退職者です。

質問事項
一の5 「はとバス」への都の資本参加状況について伺う。

回答
都は、平成22年11月末現在、株式会社はとバスの株式を3,414,150株保有しており、その出資比率は、37.9%となっています。

質問事項
一の6 「はとバス」を監理団体にするつもりはないのか、その理由と併せて見解を伺う。

回答
株式会社はとバスは、設立目的が都の事業の支援・補完ではないこと、都の職員の派遣もないこと、都からの委託料が同社の収入に占める割合は、平成21年度で約20%に過ぎないことから、監理団体になっていません。
株式会社はとバスについては、今後とも、こうした考えに基づき、対応していきます。

質問事項
一の7 今後高齢化が進む中で、交通不便地域の移動需要がますます高まっていくが、その中で、公が行わなければならない業務と民間でもできる業務をどのように理解しているのか伺う。

回答
公共交通は、公営企業と民間企業で担っている分野であり、公営企業は、独立採算制のもと、経済性を十分に発揮して、経営の一層の効率化に取り組むとともに、良質なサービスを提供し、公共の福祉を増進していく必要があると考えています。

平成22年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  大島よしえ

質問事項
一 都市づくりのあり方について
二 都営住宅について

一 都市づくりのあり方について
石原知事は、就任以来、「国際都市間競争に勝つために、国際ビジネスセンターとして再生する」「東京が繁栄すれば日本は再生する」と言って、内外の大企業を東京に集中させるための規制緩和と、基盤整備を最重点にとりくんできました。その結果、投資型経費は毎年バブル前の2倍、1兆円規模を投入してきました。
日本の売上高トップ100の企業のうち、9割の本社機能を集中させ、高さ100メートルをこえる巨大な超高層ビルを220棟も乱立させました。さらに、オリンピック招致の名で環状高速道路を一気に3本もつくる、1メートル1億円も外環道建設にかける、船舶の大型化に対応するコンテナターミナルの整備を強引に進めるなど、こんな極端な一極集中政策をとっている国は、世界では他にはありません。
超高層ビルと人口、自動車などの集中によって、今、東京の都市機能はパンク寸前におかれています。このまま東京集中策を進めれば、都市に住む人々を追い出し、東京が巨大な金融などのビジネス都市に変貌することは明らかではないですか。
1 いったい、いつまでこのようなやり方で税金の過剰投資を続けるのですか。間違った予算の使い方を見直すべきです。見解を伺います。
2 東京に投資を集中すれば、日本の経済が良くなるなどと言う傲慢で間違った考えを改めるべきです。過度な集中による事務所コストや生活コストの増大、生活環境の悪化を防ぐことはできません。東京では超高層ビルの多くが、長周期地震動による大きな揺れや破壊力、活断層型の直下型地震を想定せずにつくられています。超過密の通勤電車などもふくめ、災害危険度は増大する一方です。一極集中による大都市の深刻な環境悪化などのリスクをどのように解決しようとしているのか伺います。
これらのビルの乱立は、地球温暖化やヒートアイランド現象という2つの温暖化を劇的に加速させ、都市型災害のリスクを増大させるものになっています。
都心への過度な自動車の集中も深刻で、虎ノ門・六本木地区の再開発など港区だけで2万台を超え、環状六号線内ではNO2の環境基準達成率は33%にしかすぎません。
3 都内の大気汚染による気管支ぜんそく認定患者は8万人を超え、大気汚染がもたらす深刻な事態で、どうして世界で最も環境負荷の少ない都市と言えるのですか。
4 5月7日行なわれた定例記者会見で石原知事は「東京に人口を含めて集中しているけど、これ以上進むことは私は歓迎しませんし、日本にとっても、東京にとってもいいことじゃない」という認識を示しました。この発言と現在都が進めている一極集中をめざす都市づくりとは、矛盾すると思うがどうか。
二 都営住宅について
長引く不況の中で、派遣切りや、雇止めにより、仕事や、住まいを失った方たちに、年末・年始にかけて2009年は「年越し派遣村」が、2010年は「公設派遣村」といわれた「年末年始の生活総合相談」が実施されました。職を失うと同時に住まいも失うという深刻な住宅事情が明らかになりました。
1 住宅マスタープランの基本方向には「住宅に困窮する都民の居住の安定確保」が掲げられ、「都民のニーズにこたえることのできる効果的な住宅政策を展開する」とかかれています。離職者に対する都営住宅の提供は、あき家住宅への応募倍率が高いため単に離職者という理由だけでは提供困難と言うことですが、宿泊所や、一時保護所などの施設も不足している中で、建替え予定の都営住宅で募集停止しているあき家住宅をこうした施設の代替として一時的な入居施設として活用することはできないか。
2 「離職に伴い住宅を喪失した者」を対象として、東京都が独自に設けている特定目的公営住宅制度を実施できないか。
2000年度から都営住宅の新規建設が行なわれなくなったため、現在建設されているのは、建替え住宅だけです。建替え後に建設される住宅は、一人暮らし、2人暮らしの高齢者が多い入居者の現状を反映して、1DK(32平方メートル),2DK(34平方メートルから37平方メートル)等が中心の型別供給が行なわれています。そのため、子育て世代向けの住宅供給はきわめて限定されたものになっています。
3 1DKの部屋では、高齢者の介護ベッドを置くとその周りに家具などを置くことも出来ないし、介護や、看護に子どもたちが来ようとしても泊ることもできない。もちろん車いすで生活するのも難しいという状況になっています。東京都は、2010年までに誘導居住面積水準(単身者で40平方メートル)を全世帯の50%という目標を掲げています。都営住宅の居住面積も引き上げていく考えはないか。
4 同規模の面積であっても、建替え後の住宅の間取りが、「ダイニングにテーブルを置くと車椅子での回転ができず通れなくなった」「ふすまで仕切られた2部屋だったのに、建替え後は、別々の2部屋になってしまった」など、使い勝手が悪いと苦情も多い。建替え後の間取りについて設計の段階で居住者の意見を取り入れることはできないのか。
5 団地全体が高齢化して、自治会活動も思うようにいかず、コミュニティの育成が難しくなっています。このような団地を東京都がつくっていることも問題です。将来の団地全体の活性化を視野に入れて、3DK、4DKの戸数を増やし、子育て世代が入居できるようにすることが必要ではないいか。
6 高齢者の新たなすまい「東京モデル」の整備のなかで、シルバー交番(仮称)の設置が予算化されています。墨田区では高齢者見守り相談室を都営文花1丁目団地の1階に設け、包括支援センターと連携して効果をあげています。板橋区のUR高島平団地では、「高島平再生プロジェクト」(みらいネット 高島平)が取り組まれ、大学が学生に家賃補助して、大東文化大の学生が高島平団地に住んで、ボランティア活動として、コミュニティカフェ・グリーンを運営し、地域の方々と大学生や教職員との出会いの場として団地居住者や、地域の方々からたいへん喜ばれています。少子高齢化の進む都営住宅や、公社住宅でもこうした活動の場を提供するなど、高齢化対策に積極的に取り組む考えはないか。
7 高齢化が進む中で都営住宅へのエレベーター設置の要求も多い。今年度から設置基準が緩和され歓迎されていますが、設置基準に合っていても、その住棟の住民の全員同意が必要で、一人の反対者がいても設置できないのが現状です。住棟の共益費や、電気代、家賃の引き上げなどが伴うからといいますが、都営住宅の建替えのときにも、全員の同意を必要としているのか。
 また、既存住宅でのエレベーター設置の住民合意については、その理由によって柔軟に判断する必要があるのではないか。

平成22年第四回都議会定例会
大島よしえ議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 都市づくりのあり方について
1 間違った予算の使い方を見直すべきと考えるが、見解を伺う。

回答
東京外かく環状道路をはじめとする都市インフラの整備は、渋滞の解消など都民の利便性の向上だけでなく、国際競争力を高め、東京の活力を維持する上で不可欠な取組であることから、着実に進めていく必要があるものと考えています。
都は、これまでも、こうした取組に加え、雇用や生活への不安に対応する取組など、都民にとって必要な施策に対して的確に財源を振り向けており、都民の期待に十分応えているものと考えています。
今後とも、引き続き、都政に課せられた使命をしっかりと果たしていきます。

質問事項
一の2 東京への投資の過度な集中による生活環境の悪化や、災害危険度は増大する一方である。一極集中による大都市の深刻な環境悪化などのリスクをどのように解決しようとしているのか伺う。

回答
東京が今後とも都市としての繁栄を続け、そこで暮らす人々が豊かで安定・充実した生活ができるようにするためには、都市づくりを通じて、業務機能の質的高度化や、商業、文化、交流などの多様な機能をコンパクトで高密度に集積させて都市活力の向上を図るとともに、インフラ整備などにより、低炭素型都市への転換や、安全・安心の確保に、積極的に取り組む必要があります。
そのため、都は、三環状道路などの骨格的な道路ネットワークの形成を推進し、都心に集中する通過交通を減少させて渋滞を緩和することにより、CO2の排出量を削減するなど、環境負荷の低減を図っています。
さらに、都心部を中心に都市再生を推進し、都市開発等の機会をとらえた最先端の省エネ技術の導入や、地区・街区単位におけるエネルギーの効率的利用を促進するとともに、街区の再編や老朽建築物の更新などにより、都市の防災性を大きく向上させています。
今後とも、こうした取組を通じ、国際競争力の維持向上とともに、都市全体の環境負荷の低減や、安全・安心にも配慮した都市づくりを進めていきます。

質問事項
一の3 都内の大気汚染による気管支ぜんそく認定患者は8万人を超え、大気汚染がもたらす深刻な事態で、どうして世界で最も環境負荷の少ない都市と言えるのか、所見を伺う。

回答
東京の大気環境は、ディーゼル車の走行規制や工場等の固定発生源に対する規制などにより、浮遊粒子状物質については3年連続で全測定局において環境基準を達成し、二酸化窒素については、一般環境大気測定局では4年連続で環境基準達成、自動車排出ガス測定局を含めても約95%の測定局で環境基準を達成するなど、劇的に改善しています。
今後も、世界で最も環境負荷の少ない都市を目指し、更なる良好な大気環境の実現に取り組んでいきます。

質問事項
一の4 5月7日の「東京に人口を含めて集中しているけれど、これ以上進むことは私は歓迎しませんし、日本にとってもいいことじゃない」という知事の発言と、現在都が進めている一極集中を目指す都市づくりとは矛盾すると考えるが、見解を伺う。

回答
東京は、東京圏全体で首都機能を担い、圏域内の3,400万人を超える人口や諸機能と密接なかかわりを持ちながら、活発な都市活動を展開しています。
こうした状況を踏まえ、都は、「東京の都市づくりビジョン」に基づき、広域的な視点に立って、多様な機能を集約させた拠点の形成や、拠点間の連携を強化する広域交通インフラの整備などによる「環状メガロポリス構造」の実現に取り組むとともに、都心部だけではなく、多摩においても核都市を中心に、自立した圏域の形成を図ってきました。
また、より身近な圏域においても、区部、多摩を通じて、既存の都市インフラを生かしつつ、駅など生活圏の中心となる地域に、都市機能を一層集約した生活拠点の整備を進めています。
このような都市づくりは、人口等の一極集中を意図するものではなく、これからの東京が人口減少局面へと転じ、社会の高齢化が進む状況においても、都市機能の集約的な再配置等を通じて、高齢者を含めて誰もが暮らしやすい、コンパクトな市街地の形成を目指すものです。

質問事項
二 都営住宅について
1 建替え予定の都営住宅で募集停止しているあき家住宅を、離職者に対する宿泊所や一時保護所などの施設の代替として一時的な入居施設として活用することはできないか。

回答
建替えを行うため、居住者の退去後、入居を取りやめている住宅については、大規模な修繕なしに活用できるものはほとんどありません。したがって、宿泊所や一時保護所などの施設の代替として活用することは極めて困難です。

質問事項
二の2 「離職に伴い住宅を喪失した者」を対象として、東京都が独自に設けている特定目的公営住宅制度を実施できないか。

回答
都営住宅は、応募倍率が高く、恒常的な空き家がないことに加え、高齢者や障害者などの入居希望者も多数います。
特定目的公営住宅制度は、路上生活者自立支援センターの退所者で自立の見込みがある場合など、一定の条件に該当する世帯を優先的に入居させるものであり、単に離職者という理由だけで、都営住宅に優先的に入居させることは極めて困難です。

質問事項
二の3 1DKの部屋では、高齢者の介護ベッドを置くとその周りに家具などを置くことも出来ない等の状況になっている。都は、2010年までに誘導居住面積水準(単身者で40平方メートル)を全世帯の50%という目標を掲げているが、都営住宅の居住面積も引き上げていく考えはないか。

回答
建替えで供給する住戸の面積については、都営住宅が都民共有の住宅セーフティネットであることから、入居対象世帯の人員に応じた最低居住面積水準を確保するとともに、バリアフリーなどを考慮して設定しており、1DKについて40平方メートルに拡大することは考えていません。

質問事項
二の4 同規模の面積であっても、建替え後の間取りの使い勝手が悪いという苦情も多い。建替え後の間取りについて、設計の段階で居住者の意見を取り入れることはできないのか。

回答
都営住宅の建替えに当たっては、居住者の世帯構成に応じて基準を設け、適切な間取りの住宅を供給しています。
この基準については、都において、費用対効果を勘案しながら、住みやすい間取りとなるよう設定するとともに、適宜、見直しを行っています。

質問事項
二の5 団地全体が高齢化し、コミュニティの育成が難しくなっている。将来の団地全体の活性化を視野に入れて、3DK、4DKの戸数を増やし、子育て世代が入居できるようにすることが必要ではないか。

回答
都営住宅の建替えに当たっては、従前居住者の世帯構成に応じた住宅を適切に確保する観点に立って基準を設け、それぞれに対応する規模の住宅を供給しています。
子育て世帯に対しては、既に、若年ファミリーや多子世帯向けに、期限付き入居を実施しているほか、優遇抽選やポイント方式により、入居機会の拡大を図っています。

質問事項
二の6 少子高齢化の進む都営住宅や公社住宅で、高齢者見守り相談室や、大学生のボランティア等に活動の場を提供するなど、高齢者対策に積極的に取り組む考えはないか。

回答
見守りなど高齢者を地域で支える施策は、地域福祉の担い手である区市町村が主体となって実施すべきものと考えています。
都営住宅等においては、地元区市と連携し、地域のコミュニティ活動の拠点となる集会所、高齢者在宅サービスセンター、広場や公園などを整備しています。

質問事項
二の7 高齢化が進む中で、都営住宅へのエレベーター設置の要求も多い。都営住宅の建替えのときにも、全員の同意を必要としているのか。また、既存住宅でのエレベーター設置の住民合意については、その理由によって柔軟に判断する必要があるのではないか。

回答
既設都営住宅においては、既にお住まいの居住者に、エレベーターの設置後、使用料の改定、保守の費用や電気代の負担が発生するため、全員の同意を求めています。
また、都営住宅の建替えに際しても、エレベーターの設置に伴う費用負担などの入居条件を説明しており、建替え後の住宅には、この条件を理解した上で居住者が入居しています。

平成22年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  清水ひで子

質問事項
一 生産緑地に関する制度の創設について

一 生産緑地に関する制度の創設について
都市の農業と農地の保全を実効あるものにするためには、都として、都市の農地が果たしている、緑の環境や酸素の供給、防災機能など、都市生活に欠かせない多面的な役割を重視し、農家へ何らかの支援をすることが必要です。
わが党は、これまで2008年第1回定例会、および第3回定例会、今年第2回定例会とくり返し、生産緑地の減少を防止する支援制度を提案してきました。
今年の第2回定例会では、農業者からの生産緑地の買い取り申請数にたいして、自治体が買い取ったものが5%に満たないというわが党の独自調査結果も例示し、地元自治体と連携して生産緑地を買い取る制度をつくって、公立の農業公園というようなものをつくるよう提案しました。
1 生産緑地の買取申出のあった場合、公共施設の設置が予定されている場合の区市町村など当該公共施設の事業者が、国や都の各種補助制度を活用すること、および区部における都市計画交付金制度にもとづく支援など、既存の補助制度の活用を都はすすめていますが、その制度の有効性、限界性についてどのように認識していますか。
2 わが党は、生産緑地の買い取り申請がされた場合の各種の補助制度をつくるよう要望してきましたが、都は今年度「緑確保の総合的な方針」をつくりました。その中で、「農の風景育成地区」制度を創設し、地域に比較的まとまった農地や屋敷林が残っている場合などを対象として、保全していくとしています。
今後、この仕組みはどのような検討を進め、具体化していきますか。
3 こうした仕組みづくりは、区市町村、農業者、農業関係者等と連携して取り組むことも重要だと思いますがいかがですか。周知状況はどうですか。
4 今年度、市長会からは、買い取り申請があった「土地を買い取ることは、市の財政にとって容易なことではない」ため「生産緑地地区の買い取り申し出があった場合、市が公共用地として速やかに買い取ることができるよう」財政支援措置制度の創設を要望しています。
都市の緑を保全していく上で、市町村会の要望に答えることは重要だと思います。この制度については、今後、何らかの具体化を検討しているものはありますか。

平成22年第四回都議会定例会
清水ひで子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 生産緑地に関する制度の創設について
1 生産緑地の買取申出があった場合で、公共施設の設置が予定されている場合、都は、当該公共施設の事業者が既存の補助制度を活用することをすすめているが、その制度の有効性、限界性についてどのように認識しているか伺う。

回答
公共施設の設置が予定されている生産緑地について、買取りの申出があったときは、当該公共施設の事業者である区市などが、事業化の見通しを考慮し、必要と判断する場合、当該生産緑地を取得しています。
その際、公共施設整備のための既存の補助制度は、区市などの財政負担を軽減するものであることから、生産緑地の買取りを進める上で有効であると考えます。

質問事項
一の2 都は、「緑確保の総合的な方針」において「農の風景育成地区」制度を創設し、地域の比較的まとまった農地や屋敷林を保全していくとしているが、今後この仕組みについてどのような検討を進め、具体化していくか伺う。

回答
「農の風景育成地区」制度については、区市町村や関係局などとも連携しながら、年度内の具体化に向け、都市計画手法の活用などについて検討を進めていきます。

質問事項
一の3 こうした仕組みづくりは区市町村、農業者、農業関係者等と連携して取り組むことが重要と考えるが、所見を伺う。また、その周知状況についても併せて伺う。

回答
「農の風景育成地区」制度の創設に向け、既に区市町村等と検討を開始しており、今後、農業関係者などとも協議していくこととしています。
都は、これまでも関係機関とともに、都市農業の振興や農地の保全に取り組んできており、本制度の創設についても同様に対応していきます。

質問事項
一の4 今年度、市長会は生産緑地地区の買い取り申し出があった場合、市が公共用地として速やかに買い取ることができるよう、財政支援措置制度の創設を要望しているが、何らかの具体化を検討しているものはあるか伺う。

回答
買取りの申出があった生産緑地について、公園や道路などの公共施設が予定されている場合には、区市など当該公共施設の事業者が、国や都の各種補助制度を活用して買取りすべきものと考えます。
なお、公共施設が予定されていない生産緑地の買取りについては、生産緑地法第11条に基づき、区市長の責任で対応することとなっており、都が支援することは考えていません。

平成22年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  花輪ともふみ

質問事項
一 水需要予測及び八ッ場ダムの必要性について

一 水需要予測及び八ッ場ダムの必要性について
1 6月の都議会本会議で東京都水道の水需要予測実施を求める請願が可決された。この請願に基づいて水道局は水需要予測を実施することになったのか。その経過を答えられたい。
2 水道局が平成15年12月に行った水需要の予測と実績の乖離は凄まじく、一日最大配水量では100万立方メートル/日以上の差が生じており、この乖離は今後ますます拡大していく傾向を示している。前回の予測から7年間も経過したのであるから、実績を踏まえて予測のやり直しを行うべきと考えられるが、ここのことについて見解を述べられたい。
3 水需要予測に関する調査研究の平成17年度から平成21年度における報告書の内容を検討してみた。これらの報告書は生活用水、都市活動用水、工場用水に分けて、将来の使用水量を予測している。この三つの用途の合計が一日平均使用水量となる。これは一日平均の有収水量、すなわち、料金徴収水量を意味する。
 これを有収率で割ると、一日平均配水量が求められ、更にそれを負荷率で割ると、一日最大配水量が求められる。そのように理解してよいか、うかがう。
4 水需要予測の有収率と負荷率をどのように設定するかによって将来の一日最大配水量の値が変わってくる。2003年12月予測では計画有収率として94%、負荷率は過去15年間、すなわち、1986年度から2000年度までの最小値として81%が用いられた。そのように理解してよいか、うかがう。
5 現時点で予測を行う場合、有収率は最近の実績値を使うべきであるので、95%程度となる。また、負荷率は過去15年間として1994年から2008年度の最小値をとると、83.7%となる。そのように理解してよいか、うかがう。
6 平成17年度から21年度までの調査研究のうち、平成17年度は前回の予測の延長線上にあるような予測を行っており、また、平成21年度は後で述べるように理解しがたい予測をしているので、それらを除き、18年度から20年度までのそれぞれの一日平均使用水量の予測は、いずれも将来値が前回の予測よりかなり小さくなっている。このことについて見解を述べられたい。
7 このグラフから、先に述べた有収率95%、負荷率83.7%を用いて、一日最大配水量の将来値を求めると、前回の予測では2013年度に1日あたり600万立法メートルまで増えることになっていたが、18年度の予測では2025年度1日あたり529万立法メートル、19年度の予測では1日あたり507万立法メートル、20年度の予測では1日あたり545万立法メートルである。いずれも前回の予測と同様に重回帰式による予測である。その予測手法にまだ改善の余地があると思われるが、それでも前回の予測と比べれば、1日あたり55万立法メートルから93万立法メートルも小さくなっている。
このことについて見解を述べられたい。
8 一方、東京都水道が八ッ場ダムに予定している水利権は通年が毎秒5.22立法メートル、冬季手当が0.559立法メートルで、合計5.779立法メートルである。東京都が用いている利用量率93.4%を使って、一日あたりの配水量に換算すると、約47万立法メートルである。ということは平成18年度から20年度の調査研究の結果に基づいて、水需要予測をやり直せば、将来の水需要は八ッ場ダムの予定水利権を大きく上回る下方修正が行われることになる。このことについて見解を述べられたい。
9 水需要予測のやり直しを行えば、東京都水道の予測でも大幅な下方修正が必至となり、八ッ場ダムは不要という結果が想定されるが、都としての見解はいかがか。
10 なお、平成21年度の予測は理解しがたいものになっている。平成18年度から20年度の予測ではいずれも将来の水需要は横這いが続くか、または漸減していくことになっているのに、21年度の予測では一日最大配水量は増加し続けている。それにより、2020年度は前回の予測による将来値に近い数字になっている。これは1日あたり600万立法メートル程度の将来需要を出すために意図的に行われた予測である疑いが濃い。
21年度から突然傾向が変わったことについての見解をうかがう。
11 以上のとおり、東京都が平成18年度から20年度にかけて調査研究として行った水需要予測でも、一日最大配水量が1日あたり55万立法メートル以上も下方修正されており、水需要予測のやり直しをきちんと行えば、八ッ場ダムによる新規水利権は不要ということになると考えるが局の見解をうかがう。

平成22年第四回都議会定例会
花輪ともふみ議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 水需要予測及び八ッ場ダムの必要性について
1 6月都議会において東京都水道の水需要予測を求める請願が可決されたが、これに基づき水道局は水需要予測を実施することになったのか、その経過について伺う。

回答
都は、これまでも長期構想により、将来の人口や経済成長率等の基礎指標が示された場合など、必要に応じて、水道需要予測の見直しを適宜適切に実施しています。
現時点では、予測の基礎となる一日平均使用水量は、その約7割を占める生活用水が長期的に増加傾向にあり、計画値と実績値との間に大きなかい離が生じていません。
一方、水道は、水源、浄水、送配水等の水道施設が密接に関係して、ライフラインとして機能していることから、将来にわたって首都東京の安定給水を確保するためには、水源確保、施設整備、水道需要等の総合的視点から、将来起こり得るリスクに十分対応できる水道システムを構築していく必要があります。
都の膨大な水道施設は、間もなく一斉に更新時期を迎えることなどから、これを契機に水道システム全体の安全度などを考慮した需要と供給の在り方を十分踏まえて、将来の東京にふさわしい水道施設に再構築するための基本構想を策定していきます。

質問事項
一の2 前回の水需要予測から7年間も経過したのであるから、実績を踏まえて予測のやり直しを行うべきと考えるが、見解を伺う。

回答
都は、これまでも長期構想により、将来の人口や経済成長率等の基礎指標が示された場合など、必要に応じて、水道需要予測の見直しを適宜適切に実施しています。
現時点では、予測の基礎となる一日平均使用水量は、その約7割を占める生活用水が長期的に増加傾向にあり、計画値と実績値との間に大きなかい離が生じていません。
今後とも、これまでと同様に、水道需要予測の見直しを適宜適切に実施していきます。

質問事項
一の3 生活用水、都市活動用水、工場用水それぞれの使用水量の合計が一日平均使用水量、すなわち料金徴収水量であり、これを有収率で割ると一日平均配水量となり、更にそれを負荷率で割ると一日最大配水量が求められる。そのように理解してよいか伺う。

回答
都の現行水道需要予測では、生活用水、都市活動用水、工場用水の用途別使用水量の実績値を基に、関連する社会経済指標を用いて、統計的手法等により用途別の将来の使用水量を推計し、これらを合算して、全体の一日平均使用水量の予測値としています。
その上で、一日平均使用水量の予測値を計画有収率で除して計画一日平均配水量を求め、更に計画負荷率で割り返すことにより計画一日最大配水量を算出しています。

質問事項
一の4 水需要予測の有収率と負荷率の設定によって将来の一日最大配水量が変化するが、2003年12月予測では計画有収率として94%、負荷率は1986年度から2000年度まで過去15年間の最小値として81%が用いられたと理解してよいか伺う。

回答
都では、将来にわたる安定給水を確保していく観点及び過去の実績から、計画有収率と計画負荷率を設定しています。
現行の水道需要予測における計画有収率については、漏水防止対策の推進による漏水率の低減等を踏まえ、94%と設定しています。
年間の一日最大配水量と一日平均配水量の比である負荷率は、気象条件や曜日、渇水の影響など様々な要因により変動するものであり、予測する性質のものではないことから、水道需要予測における実績期間とした15年間(昭和61年度から平成12年度まで)の最小値である81%を計画負荷率に設定しています。

質問事項
一の5 現時点で予測を行う場合、有収率は最近の実績値を使うべきであることから95%程度、負荷率は83.7%(1994年度から2008年度の最小値)となるが、このように理解してよいか伺う。

回答
都の現行水道需要予測では、昭和61年度から平成12年度までを実績期間としており、漏水防止対策等の施策の反映や、安定給水確保の観点から計画値を設定しています。
現在、都では、平成6年度(1994年度)から平成20年度(2008年度)までを実績期間とした水道需要予測を行っていないことから、この期間を対象として設定した計画負荷率や計画有収率はありません。
現時点で、水道需要予測を行うとすれば、計画有収率や計画負荷率について、将来にわたる安定給水を確保していく観点及び過去の実績を踏まえて、十分検討した上で設定する必要があります。

質問事項
一の6 水需要予測に関する調査研究において、平成18年度から20年度までのそれぞれの一日平均使用水量の予測は、いずれも将来値が前回の予測よりかなり小さくなっているが、このことについて見解を伺う。

回答
都の現行水道需要予測では、昭和61年度から平成12年度までを実績期間としており、漏水防止対策等の施策の反映や安定給水確保の観点から計画値を設定しています。
一方、水道需要予測に関する調査研究委託は、予測の基礎となる一日平均使用水量の予測値について、現行の予測手法や新たな手法の検討を多方面から行うものです。
そのため、各年度の水道需要予測に関する調査研究委託においては、設定条件や手法により、様々な数字が算出されています。
平成18年度から平成20年度までの各年度に実施した水道需要予測に関する調査研究委託における一日平均使用水量の算出値は、都の現行水道需要予測で推計した一日平均使用水量の予測値よりも値が小さく出ていますが、平成21年度に実施した同委託における算出値は、大きな値となっています。
このように、設定条件や手法により、様々な数字が算出されています。

質問事項
一の7 先に述べた有収率95%、負荷率83.7%を用いて一日最大配水量の将来値を求めると、前回予測と比べ、18年度から20年度の予測は55万立方メートルから93万立方メートル/日も小さくなっているが、このことについて見解を伺う。

回答
都の現行水道需要予測では、昭和61年度から平成12年度までを実績期間としており、漏水防止対策等の施策の反映や安定給水確保の観点から計画値を設定しています。
一方、水道需要予測に関する調査研究委託は、予測の基礎となる一日平均使用水量の予測値について、現行の予測手法や新たな手法の検討を多方面から行うものです。
そのため、各年度の水道需要予測に関する調査研究委託においては、設定条件や手法により、様々な数字が算出されています。
平成18年度から平成20年度までの各年度に実施した水道需要予測に関する調査研究委託における一日平均使用水量の算出値は、都の現行水道需要予測で推計した一日平均使用水量の予測値よりも値が小さく出ていますが、平成21年度に実施した同委託における算出値は、大きな値となっています。
このように、設定条件や手法により、様々な数字が算出されています。

質問事項
一の8 平成18年度から20年度の調査研究の結果に基づいて水需要予測をやり直せば、将来の水需要は八ッ場ダムの予定水利権を大きく上回る下方修正が行われることになるが、このことについて見解を伺う。

回答
現在、都は日量630万立方メートルの水源を確保していますが、この中には、課題を抱える水源が、日量82万立方メートル含まれています。
また、都の水源の約8割を占める利根川・荒川水系の水資源開発は、5年に1回程度の割合で発生する渇水に対応することを目標としており、10年に1回としている淀川水系などの全国の主要水系や、50年に1回や既往最大の渇水を目標としている諸外国の主要都市と比べて、渇水に対する安全度が低い計画となっています。
加えて、近年の少雨化傾向により、ダムなどの供給能力が、当初計画よりも既に約2割低下しているなど、都の水源は極めてぜい弱な状況にあります。
さらに、国等の予測によれば、気候変動の影響により、自然のダムと言われている利根川上流域の積雪量は、100年後、現在の3分の1まで減少するとされています。
こうしたことから、首都東京の安定給水のためには、水源の確保が極めて重要であり、八ッ場ダムは必要不可欠です。
水道需要予測に関する調査研究委託は、予測の基礎となる一日平均使用水量の予測値について、現行の予測手法や新たな手法の検討を多方面から行うものです。
そのため、各年度の水道需要予測に関する調査研究委託においては、設定条件や手法により、様々な数字が算出されています。
平成18年度から平成20年度までの各年度に実施した水道需要予測に関する調査研究委託における一日平均使用水量の算出値は、都の現行水道需要予測で推計した一日平均使用水量の予測値よりも値が小さく出ていますが、平成21年度に実施した同委託における算出値は、大きな値となっています。
このように、設定条件や手法により、様々な数字が算出されています。

質問事項
一の9 水需要予測のやり直しを行えば、東京都水道の予測でも大幅な下方修正が必至となり、八ッ場ダムは不要との結果が想定されるが、見解を伺う。

回答
都は、これまでも長期構想により、将来の人口や経済成長率等の基礎指標が示された場合など、必要に応じて、水道需要予測の見直しを適宜適切に実施しています。
現時点では、予測の基礎となる一日平均使用水量は、その約7割を占める生活用水が長期的に増加傾向にあり、計画値と実績値との間に大きなかい離が生じていません。
一方、現在、都は日量630万立方メートルの水源を確保していますが、この中には、課題を抱える水源が、日量82万立方メートル含まれています。
また、都の水源の約8割を占める利根川・荒川水系の水資源開発は、5年に1回程度の割合で発生する渇水に対応することを目標としており、10年に1回としている淀川水系などの全国の主要水系や、50年に1回や既往最大の渇水を目標としている諸外国の主要都市と比べて、渇水に対する安全度が低い計画となっています。
加えて、近年の少雨化傾向により、ダムなどの供給能力が、当初計画よりも既に約2割低下しているなど、都の水源は極めてぜい弱な状況にあります。
さらに、国等の予測によれば、気候変動の影響により、自然のダムと言われている利根川上流域の積雪量は、100年後、現在の3分の1まで減少するとされています。
こうしたことから、首都東京の安定給水のためには、水源の確保が極めて重要であり、八ッ場ダムは必要不可欠です。

質問事項
一の10 平成21年度の予測は、必要な将来需要を出すために意図的に行われた予測である疑いが濃い。平成18年度から20年度の予測と異なり、21年度から突然予測の傾向が変わったことについての見解を伺う。

回答
都の現行水道需要予測では、昭和61年度から平成12年度までを実績期間としており、漏水防止対策等の施策の反映や安定給水確保の観点から計画値を設定しています。
一方、水道需要予測に関する調査研究委託は、予測の基礎となる一日平均使用水量の予測値について、現行の予測手法や新たな手法の検討を多方面から行うものです。
そのため、各年度の水道需要予測に関する調査研究委託においては、設定条件や手法により、様々な数字が算出されています。
平成21年度に実施した水道需要予測に関する調査研究委託における一日平均使用水量の算出値は、都の現行水道需要予測で推計した一日平均使用水量の予測値よりも値が大きく出ていますが、平成18年度から平成20年度までの各年度に実施した同委託における算出値は、小さな値となっています。
このように、設定条件や手法により、様々な数字が算出されています。

質問事項
一の11 水需要予測のやり直しをきちんと行えば、八ッ場ダムの新規水利権は不要になると考えるが、見解を伺う。

回答
都は、これまでも長期構想により、将来の人口や経済成長率等の基礎指標が示された場合など、必要に応じて、水道需要予測の見直しを適宜適切に実施しています。
今後とも、これまでと同様に、水道需要予測の見直しを適宜適切に実施していきますが、現時点では、予測の基礎となる一日平均使用水量は、その約7割を占める生活用水が長期的に増加傾向にあり、計画値と実績値との間に大きなかい離が生じていません。
一方、現在、都は日量630万立方メートルの水源を確保していますが、この中には、課題を抱える水源が、日量82万立方メートル含まれています。
また、都の水源の約8割を占める利根川・荒川水系の水資源開発は、5年に1回程度の割合で発生する渇水に対応することを目標としており、10年に1回としている淀川水系などの全国の主要水系や、50年に1回や既往最大の渇水を目標としている諸外国の主要都市と比べて、渇水に対する安全度が低い計画となっています。
加えて、近年の少雨化傾向により、ダムなどの供給能力が、当初計画よりも既に約2割低下しているなど、都の水源は極めてぜい弱な状況にあります。
さらに、国等の予測によれば、気候変動の影響により、自然のダムと言われている利根川上流域の積雪量は、100年後、現在の3分の1まで減少するとされています。
こうしたことから、首都東京の安定給水のためには、水源の確保が極めて重要であり、八ッ場ダムは必要不可欠です。

平成22年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  大山とも子

質問事項
一 高齢者施設整備の促進と通所事業所での宿泊事業について

一 高齢者施設整備の促進と通所事業所での宿泊事業について
夫を介護していた妻が入院することになり、介護されていた夫は認知症もありひとりにしておくわけにいかないので、預ける所を探しましたが、特養ホームも老人保健施設もいっぱい、ショートステイも何カ月も待たなければ利用できません。藁にもすがる思いで、デイサービスの事業所で宿泊もさせるところに入所することになりました。その方はそのデイサービスでの宿泊中に救急搬送された病院で、足のスネに骨がみえるほどの傷があることがわかりましたが、職員は知らない、記録もないということでした。家族からの苦情の申し立てをうけた東京都国民健康保険団体連合会(国保連)は、調査の結果、「清水の郷デイサービス十条」に対し介護保険法の規定にもとづく「指導・助言」を文書で行いました。「指導・助言」の指摘事項は、同事業所には、下肢の傷の有無について記録がなく、事業所としてどのような健康管理等を行っていたのか確認できなかった。いつ誰にどのような説明をして重要事項説明書等の交付を行い、いつ契約に至ったのか確認できなかった。国保連に対し同事業所は、「通所介護計画をいつ誰がどのように作成し交付したのかなどについては不明」と回答した。など、重大な内容でした。通常なら郵送する「指導・助言」の指摘事項ですが、国保連はわざわざ東京都を訪れ、説明しています。
1 私たちが訪問した「清水の郷デイサービス十条」では、10畳ほどの部屋に男女混合で多い時には6人、布団やベッドやソファーで宿泊していることがわかりました。プライバシーも何もないなかで、2年以上宿泊している方もいました。
デイサービスで宿泊させるところはここだけではありません。私たち都議団は、主にはチェーン展開している事業所を訪問しました。どこも民家を小規模デイサービスとして使用し、10人程度の利用者が、10畳から12畳程度の居間で昼間はデイサービスで過ごし、その同じ部屋でソファーベッドや簡易ベッドを使って、やはり男女混合で宿泊していました。四六時中人と一緒で、プライバシーも何もない中で過ごすので、利用者はストレスがたまると話してくれた管理者もいました。高齢者がこのようなところで暮らさざるを得ないことを、どう認識していますか。
私たちは、1952か所のデイサービス事業所すべてに、自主事業での宿泊に関してアンケートを実施しました。反響は大きく、返信してくれたのは526事業所に上ります。212事業所からの返信には、様々な意見が書き込まれ、関心の高さがうかがわれます。宿泊を行っている37事業所からも返信があり、この調査とインターネットなどで確認できた数を合わせると都内で少なくても140カ所以上の通所事業所で宿泊を実施していることがわかりました。
2 通所介護事業所での宿泊事業がひろがっている背景には、都内4万3千人をこえている特別養護老人ホーム待機者、予約がとれない、緊急時に利用できないショートステイなどの、深刻な実態があります。多くの要介護高齢者と家族が困り果て、通所介護事業所の宿泊事業にたよらざるをえないのです。
問題の根本的打開のためには、特別養護老人ホームや認知症高齢者グループホーム、ショートステイなどの大幅増設を緊急にすすめることが必要だと考えますが、都の認識はどうですか。
3 特別養護老人ホームの待機者を早期に解消するため、用地費助成再開などにより、大幅増設をすすめることが必要です。また、個室利用料助成の実施や従来型の多床室整備も促進するなど、特別養護老人ホームの利用料の負担軽減も求められています。
4 ショートステイを宿泊サービスの中心にすえ、整備を促進し、予約がとれない、緊急時に対応できないような事態を早期に打開することが必要です。通所介護事業所での宿泊は、ショートステイを併設した通所介護事業所の整備を基本にすべきです。
5 また、認知症グループホームの整備を促進するとともに、低料金で入れるよう、利用料や家賃への助成の実施が求められています。ショートステイを併設したグループホームの整備も重要です。
6 都が実施した小規模多機能施設の実態調査(2008年6月発表)で、運営費の支援等がないと整備がひろがらないことが明らかになっているのに、必要な対策がとられていません。都内で小規模多機能施設の運営がなりたつよう、都として財政支援し、整備を促進する必要があります。また1泊4千円から6千円もかかる小規模多機能施設の利用料助成の実施も求められています。
7 24時間の訪問看護・介護の整備や、通所介護(デイサービス)の時間延長をすすめるなど、在宅ケアへの支援を抜本的に強化することも重要です。
  以上の点について答弁願います。
厚生労働省が「地域密着型(介護予防)サービスの実施に関するQ&A」で、都道府県や区市町村が宿泊事業の内容を十分確認し、指導するよう求めているにもかかわらず、東京都は、実施している事業所の数も、実施内容も把握していません。しかも10月28日の厚生委員会で福祉保健局は、事業者への調査・指導は保険者(区市町村)の役割だとし、都として調査も指導もする考えがないことを表明しています。通所介護事業所の事業者指定は、東京都の権限です。東京都が開設申請の審査を行い、都知事が指定通知書を発行しています。事業者指定権者としての東京都の責任が問われています。
通書事業所へのアンケート結果の内容については、すでに発表しましたが、多く寄せられたのは、安全確保や職員体制など、宿泊事業への疑問や心配の声が一番多く寄せられました。はっきり宿泊付きデイサービスに反対の立場を表明した意見が10件ありました。十分な検討や議論を求めるもの、施設や職員などについての基準の整備などを求める意見、「家族の介護負担軽減」など宿泊事業を評価する意見、実施を希望する意見などです。同時に、事故の心配やプライバシーがないこと、「利益」に着目して始める所への危惧など、実施されている宿泊事業への不安の声も多く出されました。
実施している事業所からも率直な意見が寄せられました。チェーン展開しているところからもニーズが高いから実施しているが、「経営的に厳しい」「経営的には成り立たない」「事故等の危険性を検討すべき」、夜勤がひとりのため「医療的問題があった場合、困る。」など、切実です。同時に、経済的問題がデイサービスでの宿泊希望を増やしている実態もありました。2年を超える長期滞在者をはじめ数カ月の滞在者も宿泊費が安くなるほど増えます。
私たちは、全国の道府県がデイサービスでの宿泊事業についてどのように対応しているかについても調査し、全道府県から回答を得ました。通所事業所の宿泊事業について、7県が独自の基準をもっていました。事業所数や実施内容等の実態について2県は実態を把握しており、15県は一部把握していました。13県は「都道府県も立ち入り検査をする必要がある」と回答し、「保険者が対応すればよい」のみを選んだ県はひとつもありませんでした。
厚労省もデイサービスでの宿泊について、ただちに否定されるものではないが、宿泊が常態化しているような場合には、都道府県、市区町村で居宅サービスの理念に沿っているか十分に確認し、適宜、適正なサービスがはかられるよう、指導を行ってほしいと述べています。
東京都は、宿泊事業を行っている通所事業者の数も実施内容も把握しておらず、サービス内容に問題があれば保険者が指導・是正すべきと厚生委員会で答弁していますが、他県と比べても東京都の姿勢はあまりにも無責任と言わざるを得ません。
8 国の「Q&A」では、「デイサービス事業所に宿泊することが常態化している場合には、当該高齢者に対する介護サービス提供のあり方として、現在受けているサービスが適当か否かをあらためて検討することが必要である」「そのような場合には、都道府県・市(区)町村におかれては、当該サービス提供の実態が、居宅サービスの理念に沿っているものかどうか、十分に確認いただき、適宜、適正なサービス提供がはかられるよう指導を行われたい」としています。
少なくとも、この国の「Q&A」にそった実態把握を緊急に行うことが必要です。
通所事業所を指定しているのは東京都なのですから、指定権者の責任を果たすべきです。都として通所介護事業所で実施されている宿泊事業の実態調査をただちにおこない、実施施設数や実施内容等を把握することが第一にやらなければならない仕事ですが、どうですか。
9 実態調査、緊急点検の結果、問題があれば、保険者(区市町村)とも連携して、指導、是正すべきは当然です。
10 職員の勤務実態についても把握して、労働基準監督署とも連携し、労働基準法等にそった働き方になるよう徹底することも必要です。
私たちが実施した全道府県調査の結果、明らかになったように、兵庫県をはじめ7県が、すでに独自基準をつくっています。
連泊の制限や、プライバシーの確保、防火・防災対策、職員体制、施設面積などについて、都独自の基準・ガイドラインを定めることは、現状を改善するうえでは欠かすことができません。
11 国の「Q&A」にとどまらず、利用者が安心して安全に利用できるよう、また職員の加重負担にならないよう、都独自の基準・ガイドラインを定めることが必要です。施設面や運営面で最低の基準を定めることは基本です。プライバシーの確保、施設面積、防火・防災対策、職員体制、連泊の禁止など、都独自の基準・ガイドラインを定めることを求めます。
12 また、都として継続的に実態を把握し必要な対応ができるよう、通所介護事業所で自主事業として宿泊事業を実施する場合は、東京都に届け出る制度を実施する必要があります。新規開設する事業者の場合、事業者指定の申請時に届け出てもらうようにすれば、難しいことではありません。
13 私たちが実施した全事業所アンケートにも、多様な意見がよせられました。事業者の現場の声を大事にするとともに、介護保険の保険者(区市町村)や都民も参加した検討会を設置し、規制と誘導の両面から、通所介護事業所での宿泊事業への対応策を検討し、具体化をはかることが必要です。事業者・保険者・都民参加の「通所介護事業所での宿泊事業のあり方検討会(仮称)」を設置し、規制と誘導の両面から対応策を検討することを求めます。
以上述べてきたように、高齢者が安心して暮らせるような事態にはなっていません。現行の介護保険のもとで、こんな状態に高齢者を追い込んでいるのに、政府はさらに介護保険を改悪しようとしています。要支援者を介護保険サービスの対象から外す、年間所得200万円以上の人の利用料を2割に倍増、施設の居住費を軽減する給付の支給要件に資産や家族の負担能力を追加、施設の相部屋の居住費を月5000円値上げ、ケアプランを有料化(要介護者は月1000円、要支援者は月500円)など、とんでもない改悪です。
14 知事は、介護保険について高齢者やその家族、事業者の実態により即した制度・サービスになるよう要求してまいります。などと所信表明で述べていますが、今、知事が介護保険に関して国にものをいうなら、改悪はやめ、必要とするすべての方々にサービスを提供できるよう、圧倒的に国庫を投入するよう求めることです。
15 介護人材の確保も重要です。介護福祉士の養成校は民間任せになっているため、つぎつぎ養成からを手を引いています。介護職が生活でき生きがいをもって仕事ができるよう、介護関係で働く方々の給与アップをはじめ圧倒的に待遇改善を行うことです。国に要望するとともに、都としても人件費補助を実施することを求めます。

平成22年第四回都議会定例会
大山とも子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 高齢者施設整備の促進と通所事業所での宿泊事業について
1 デイサービスで宿泊をさせている事業所では、昼間と同じ部屋で男女混合で宿泊していた。高齢者が四六時中人と一緒でプライバシーもないところで暮らさざるを得ないことをどう認識するか、見解を伺う。

回答
通所介護事業所等における自主事業での宿泊サービスについて、介護保険法に定めはありませんが、同法第1条にあるとおり、高齢者の尊厳を尊重する必要があると認識しています。
そのため、都は、平成21年に区市町村に対して、「宿泊が常態化している場合には、当該高齢者に対する介護サービス提供のあり方として、現在受けているサービスが適当か否かをあらためて検討することが必要であり、当該サービス提供の実態が、居宅サービスの理念に沿っているものかどうか十分に確認いただき、適宜、適正なサービス提供がはかられるよう指導を行われたい」とする通知を発出しています。また、適切なケアマネジメントの観点からの対応と安全管理対策についても助言しています。

質問事項
一の2 通所介護事業所での宿泊事業が広がっている問題の根本解決のためには、特別養護老人ホームや認知症高齢者グループホーム、ショートステイなどの大幅増設を緊急に進めるべきだが、見解を伺う。

回答
特別養護老人ホームや認知症高齢者グループホーム等については、都独自に様々な支援策を講じ、東京都高齢者保健福祉計画等に基づいて、整備を着実に進めています。
特別養護老人ホームについては、平成20年度から高齢者人口に対して整備状況が十分でない地域の補助単価を、最高1.5倍に加算しています。
認知症高齢者グループホームについては、平成20年度から、事業者の参入を更に促進するため、民間企業や土地所有者に対する補助額を増額し、また、高齢者人口に対して整備状況が十分でない地域の補助単価を1.5倍に加算しています。
ショートステイについては、特別養護老人ホームの整備に当たり定員の1割以上の併設を義務付け、補助を行っており、今年度からは、整備費補助の対象を、単独で整備する場合や有料老人ホームなどに併設する場合にも拡大しています。

質問事項
一の3 特別養護老人ホームの待機者を早期に解消するため、用地費助成再開などによる大幅増設や、個室利用料助成の実施や従来型の多床室整備の促進など、特別養護老人ホームの利用料の負担軽減も求められているが、見解を伺う。

回答
特別養護老人ホームの用地取得費助成については、国の規制緩和により、民有地の貸付けや定期借地権制度の活用による整備が可能となるとともに、用地取得費に対する融資制度が充実されるなど、状況が大きく変化したことから、平成20年度着工分をもって終了したものであり、復活することは考えていません。
また、特別養護老人ホームの個室利用料助成の実施や従来型の多床室整備の促進については、国に対し、低所得者もユニット型特別養護老人ホームを低廉な居住費負担で利用できる仕組みを構築するよう、既に緊急提言を行っています。加えて、今年度から、高齢者の多様なニーズへの対応や低所得者の負担軽減等のため、新設の場合にもプライバシーへの配慮等を条件に、多床室が施設定員の3割以内であれば、整備費補助を行っています。
さらに、特別養護老人ホームの利用料の負担軽減については、国制度を都独自に拡大して既に実施しており、新たな負担軽減策を行う考えはありません。

質問事項
一の4 ショートステイを宿泊サービスの中心にすえ、整備を促進し、予約が取れない、緊急時に対応できないような事態を早期に打開することが必要である。通所介護事業所での宿泊は、ショートステイを併設した通所介護事業所の整備を基本にすべきだが、見解を伺う。

回答
ショートステイについては、特別養護老人ホームの整備に当たり定員の1割以上の併設を義務付け、補助を行っています。さらに、今年度からは、整備を一層促進するため、整備費補助の対象を、単独で整備する場合や有料老人ホームや通所介護事業所などに併設する場合にも拡大しています。

質問事項
一の5 認知症グループホームの整備を促進するとともに、低料金で入れるよう、利用料や家賃への助成の実施が求められている。ショートステイを併設したグループホームの整備も重要だが、見解を伺う。

回答
認知症高齢者グループホームについては、高齢者人口に対して整備状況が十分でない地域の補助単価を1.5倍に加算するなど、整備の促進に努めています。
ショートステイについては、特別養護老人ホームの整備に当たり定員の1割以上の併設を義務付け、補助を行ってきました。今年度からは、整備費補助の対象を、単独で整備する場合や有料老人ホームなどに併設する場合にも拡大しています。
なお、認知症高齢者グループホームの利用料や家賃への助成については、介護保険制度の制度設計を担う国において検討されるべきものです。

質問事項
一の6 都内で小規模多機能施設の運営がなりたつよう、都として財政支援し、整備を促進する必要がある。また1泊4千円から6千円もかかる小規模多機能施設の利用料助成の実施も求められるが、見解を伺う。

回答
地域密着型サービスである小規模多機能型居宅介護事業所は、地域の実情に応じて、区市町村が独自に高い介護報酬の設定が行える仕組みとなっています。
また、平成21年度の介護報酬改定により、事業開始後一定の期間は、登録者数が定員の8割に満たない事業所に対し、介護報酬を加算する制度が創設されました。
このように、小規模多機能型居宅介護事業所に対する介護報酬については、安定した運営を確保するための一定の措置が講じられており、都独自の運営費補助は考えていません。
また、都は、国制度である社会福祉法人等による利用者負担額軽減の仕組みをもとに、都独自に事業主体を拡大しており、新たな負担軽減策を行う考えはありません。

質問事項
一の7 24時間の訪問看護・介護の整備や、通所介護の時間延長をすすめるなど、在宅ケアへの支援を抜本的に強化することも重要だが、見解を伺う。

回答
都は、平成21年度から認知症対応型通所介護事業所において、早朝と夜間の利用時間の延長及び宿泊サービスを提供するモデル事業を実施しており、これを踏まえ、認知症対応型通所介護の延長デイサービスと宿泊サービスの提供が実施できるよう、既に国に緊急提言しています。
なお、24時間訪問看護・介護について、国の社会保障審議会介護保険部会は、平成22年11月30日に出された、介護保険制度の見直しに関する意見の中で、訪問介護と訪問看護の連携により、定期的な巡回訪問に加え、利用者からの通報に応じて必要な対応を行う「24時間対応の定期巡回・随時対応サービス」を新たに創設すべきとしています。

質問事項
一の8 指定権者としての責任を果たすべく、都は、通所介護事業所で実施されている宿泊事業の実態調査をただちにおこない、実施施設数や実施内容等を把握することを第一に行うべきだが、見解を伺う。

回答
都は、区市町村に対し、宿泊サービスを実施している通所介護事業所について、計画的に運営確認や指導及び監査を行うとともに、自主事業での宿泊サービスについても把握に努めるよう助言しており、必要に応じて現地に同行しています。
なお、区市町村が行う指導及び監査に対して、実地指導の手引を作成するなどの技術的な支援を行っています。

質問事項
一の9 実態調査、緊急点検の結果、問題があれば、保険者(区市町村)とも連携して、指導、是正すべきだが、見解を伺う。

回答
都は、区市町村に対し、宿泊サービスを実施している通所介護事業所について、計画的に運営確認や指導及び監査を行うとともに、自主事業での宿泊サービスについても把握に努めるよう助言しており、必要に応じて現地に同行しています。
なお、区市町村が行う指導及び監査に対して、実地指導の手引を作成するなどの技術的な支援を行っています。

質問事項
一の10 連泊の制限や、プライバシーの確保、防火・防災対策、職員体制、施設面積などについて都独自の基準・ガイドラインを定めることは、現状を改善するうえで欠かせないが、見解を伺う。

回答
通所介護事業所については、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年3月31日付厚生省令第37号)」第7章において、従業者の員数、設備及び備品等、非常災害対策などの基準が定められています。
通所介護事業所で実施する宿泊サービスについては、介護保険法に定めがありませんが、都は区市町村に対し、計画的に運営確認や指導及び監査を行うとともに、自主事業での宿泊サービスについても把握に努めるよう助言しており、必要に応じて現地に同行しています。

質問事項
一の11 プライバシーの確保、施設面積、防火・防災対策、職員体制、連泊の禁止など、都独自の基準・ガイドラインを定めるべきだが、見解を伺う。

回答
通所介護事業所については、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年3月31日付厚生省令第37号)」第7章において、従業者の員数、設備及び備品等、非常災害対策などの基準が定められています。
通所介護事業所で実施する宿泊サービスについては、介護保険法に定めがありませんが、都は区市町村に対し、計画的に運営確認や指導及び監査を行うとともに、自主事業での宿泊サービスについても把握に努めるよう助言しており、必要に応じて現地に同行しています。

質問事項
一の12 通所介護事業所で自主事業として宿泊事業を実施する場合は、都に届け出る制度を実施する必要があるが、見解を伺う。

回答
通所介護事業所の開設に当たっては、介護保険法施行規則第119条により、事業所の名称及び所在地等を記載した申請書、定款、事業所の平面図及び設備の概要、運営規定、利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要、当該申請に係る資産の状況、誓約書、役員名簿等を都道府県知事に提出することと定められています。
通所介護事業所で実施する宿泊サービスについては、介護保険法に定めがありませんが、都は区市町村に対し、計画的に運営確認や指導及び監査を行うとともに、自主事業での宿泊サービスについても把握に努めるよう助言しています。

質問事項
一の13 事業者・保険者・都民参加の「通所介護事業所での宿泊事業のあり方検討会(仮称)」を設置し、規制と誘導の両面から対応策を検討すべきだが、見解を伺う。

回答
都は、平成20年度から事業者や区市町村、都民等で構成される「東京の地域ケアを推進する会議」を設置し、認知症高齢者の在宅生活を支援するための様々な方策について検討しています。平成21年度には、この会議の意見を踏まえ、認知症対応型通所介護事業所においてスプリンクラーの設置など安全管理対策を講じた上で、早朝と夜間の利用時間の延長及び宿泊サービスを提供するモデル事業を開始しています。
また、平成22年9月には、この事業の利用状況等の検証を踏まえ、認知症対応型通所介護の延長デイサービスと宿泊サービスの提供が実施できるよう、国に緊急提言しています。

質問事項
一の14 知事が介護保険に関し国にものをいうのであれば、改悪はやめて必要とするすべての人にサービスを提供できるよう、圧倒的に国庫を投入するよう求めるべきだが、見解を伺う。

回答
介護保険法第5条は、国の役割として、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるよう、サービス提供体制の確保に関する施策等の措置を講じなければならないと定めています。
公費負担のあり方については、世代間の負担の公平性や負担と給付のバランスなどを考慮し、将来にわたって持続可能な制度となるよう、国の責任において検討すべきと考えます。

質問事項
一の15 介護職が生活でき生きがいをもって仕事ができるよう、介護関係者の給与アップをはじめ圧倒的に待遇改善を行うことを国に要望するとともに、都としても人件費補助の実施を求めるが、見解を伺う。

回答
介護保険事業が安定的に運営できるための望ましい介護報酬の設定は、国の責任で行うべきものです。
都は、国に対し、介護報酬を大都市の実態に合わせて抜本的に見直すことを緊急提言しており、独自に人件費補助を行う考えはありません。

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