○議長(和田宗春君) 九番山内れい子さん。
〔九番山内れい子君登壇〕
○九番(山内れい子君) まず初めに、温暖化対策について伺います。
地球規模でのCO2削減は、二〇一二年の京都議定書の目標年が迫る中で、悲観的な見通しが明らかになってきました。都は、大規模事業所にCO2削減義務を課し、排出量取引制度をつくり、中小規模の事業所の省エネ対策を促進する制度を実施するなど、国をも先導する多様な温暖化対策の取り組みを進めてきており、評価するものです。このような先進的な取り組みを定着させ、CO2削減を着実に実現させるためには、強い決意を持って取り組んでいく必要があると思いますが、知事の決意を伺います。
家庭部門からのCO2排出量は、都全体の約四分の一を占めており、増加傾向にあります。削減対策として、住宅の省エネ改修や太陽エネルギー機器の利用促進への支援が行われており、エコポイント制度なども相まって、省エネ型家電製品への買いかえも進んでいると聞いています。盛んな消費行動も、誘導策が終了すると、一過性のものになってしまうことが懸念されます。こうした家庭でのCO2削減の動きを継続させていくためには、地球温暖化対策への一層の理解を深める普及啓発が重要であると思います。
そこで、地球温暖化対策に関する普及啓発の取り組みについて伺います。
次に、障害者福祉について。
高次脳機能障害は、脳卒中や交通事故などで脳の一部が傷を受け、記憶障害や注意障害などが起こり、日常生活に大きな支障を来します。
都は、今年度、症状に合った専門的なリハビリの普及のためのモデル事業を、区西南部と西多摩の二つの二次保健医療圏で開始しました。
先日、モデル地域になっている世田谷区で、高次脳機能障害のリハビリに長年取り組んでいる長谷川幹先生にお話を伺ったところ、脳の症状は人によってさまざまだが、患者が主体的にリハビリを長期的に続けることで回復する場合もあり、最後まであきらめないことが大切と話されました。そのためには、症状や生活のニーズに合った適切なリハビリを、身近な地域で受けられることが必要です。
モデル事業では、高次脳機能障害に対し、医療と福祉の連携により効果的なリハビリが提供されるための地域の支援体制の充実をどのように進めていくのか、伺います。
高次脳機能障害は、他の障害に比べると身体の障害が見られず、外見上障害が目立たないために、周囲に理解されにくいケースが多く、家族の苦労や不安も大きく、そのような家族の相談に的確に対応できる窓口が身近な地域に必要です。
新宿区は、都の補助事業を活用し、NPOと協働し相談事業を行っています。高次脳機能障害支援の充実は、家族の訴えを聞き、新しい生活に向けて何が必要か、できることから取り組み、サービスを構築していくことが求められています。
そこで、都としても、より多くの区市町村が相談体制の整備を進めるよう、積極的に支援すべきと考えますが、都の見解を伺います。
都議会生活者ネットワーク・みらいでは、先日、日野市にある東電ハミングワーク株式会社を視察しました。平成二十二年六月一日現在の都内の民間企業の障害者雇用率は一・六三%となり、大企業が牽引役となって八年連続して上昇していますが、中小企業では依然として厳しく、全国でも低い状況です。
一方、地域では、障害者も健常者も一緒になって働ける職場を確保するため、従来の補助金に頼るのではなく、市民との協働による社会的事業所などの新たな働き方も始まっています。障害者が働き続けるためには、住みなれた地域に職場があり、障害者も健常者も一緒に働くことができる多様な職場づくりが必要であり、その担い手として、NPO等の多様な主体の存在が欠かせません。近年、地域において、雇用に限定されない多様な働き方を目指す人もふえていることから、こうした方々の主体的な取り組みを都としても積極的に支援していくべきです。
そこで、多様な働き方を広めるための都の取り組みについて伺います。
次に、家庭的保育事業について。
保育待機児について、自治体では考えられる限りのさまざまな手法で、必死に解消に努めています。
待機児童数が都内一多い世田谷区では、改正児童福祉法に家庭的保育事業が位置づけられたことに伴い、認可保育園を運営する社会福祉法人が、家庭的保育のモデル事業にことしの六月から取り組み、マンション一階の四室、別のマンション二室を借り、保育ママ六人を雇用して、三十人の保育を始めました。
従来の保育ママの課題であった密室性や保育の質の確保、保育者の休暇の保障、定員が埋まらないことによる収入の不安定さなどを改善し、預ける側も、預けられる側も、安心して保育できるようになったと聞きます。
一方、この間、同一建物で複数の保育ママが事業を行うことへのオーナーや近隣住人の理解、都市部の実情に合わせた家賃補助、専任支援員の確保など、新たな課題も明らかになっており、こうした問題を解決しながら、さらに事業を推進していく必要があります。
家庭的保育事業は、待機児童の大半を占める三歳未満の子どもを対象としており、今後、待機児童の解消を図る上では、こうした小規模で家庭的な保育を拡充していくことも有効です。
都は、家庭的保育事業について、どのように取り組み、区市町村を支援しているのか、伺います。
最後に、都立高校における日本史必修化について。
知事は今議会の所信表明で、今の若者は先人の足跡を知らず、豊穣さや便利さにおぼれて、しんが虚弱であり、他者との摩擦、相克への耐性不足で議論ができないと現代若者観を示し、若者たちを目覚めさせるためにも、日本の近代史を必須化していくことを表明されました。
日本史必修化に向けて、東京都教育委員会は、教科書に準拠した「江戸から東京へ」という教本を作成していると聞きました。江戸の経済、まちづくり、文化、教育を客観的な事実として学ぶことは否定しませんが、歴史に刻まれている戦争や人権問題などについては、その方面の多くの識者だけでなく、それぞれの当事者の生きてきたあかしによって事実のとらえ方はさまざまです。
生活者ネットワーク・みらいは、国と国の友好関係を築き、将来の平和を構築するために歴史を学ぶということは価値があり、開かれた議論を行うことが重要と考えます。開発を進めている独自教科書について、進捗状況や策定委員や監修者等が全く明らかにされていないことは問題であり、開かれた進め方をしていくべきです。
作成に当たってのスケジュール、完成するまでにどのような形でさまざまな意見を聴取していくのか、ご所見を伺い、質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 山内れい子議員の一般質問にお答えいたします。
地球温暖化対策についてでありますが、世界のあちこちで、これほど歴然とした温暖化現象が起こっていますけれども、人間は、何となくもうそれになれてしまって、だんだんこの問題に対する危機感が薄れていっている現況だと思います。
現政府も、先代の鳩山首相は、CO2の二五%削減という非常に雄々しい宣言をしましたが、具体的な施策は一向に打たれておりませんし、政府の取り組みは、地球の未来に対する危機感がいささか欠落しているような気がしてなりません。
地球温暖化は、一刻の猶予も許されない状況にありまして、目に見えにくいことですけれども、やはりじりじりじりじり、事は悪い形で進行していると思います。ともかく、いろんな権限を持っている国の政府が、はっきりとした危機意識を持ってこれに対処し、地方の政府もそれに従うというのが理想の形でありますが、どうもやっぱり主客転倒した形で、非常に歯がゆい思いをしております。
都が本年四月から開始した世界初の都市型のキャップ・アンド・トレード制度は、国内のみならず、海外の多くの国家政府、地方政府からも、他に例のない先駆的で大胆な施策として注目も集め、いろいろ問い合わせもございます。
こうした都の施策に呼応して、大幅なCO2削減の取り組みを開始している東京の企業との協働によりまして、低炭素型都市への転換をいち早く実現していくことで、歩みの遅い国の取り組みを先導していきたいものだと思っております。
他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。
〔教育長大原正行君登壇〕
○教育長(大原正行君) 都立高校における日本史必修化についてのご質問にお答え申し上げます。
東京都独自科目「江戸から東京へ」の教科書の作成に当たりましては、本年三月に日本史必修化検討委員会を立ち上げまして、これまで四回の検討委員会、六回の作業部会を開き、検討を重ねてまいりました。
教科書「江戸から東京へ」につきましては、高等学校学習指導要領地理歴史科の目標を踏まえまして、事実の正確な理解に導くために、相異なる価値観や対立する立場の一方に偏らないよう、客観的かつ公正な記述に留意する必要がございます。このため、高い専門性を持ち、豊富な授業経験を有する都立高校の日本史等の教員七名が執筆したものに、日本史と歴史教育に造詣が深い有識者である三名の検討委員等の意見を加えながら、本年度末の発行を目途に作成中でございます。
作成した教科書につきましては、平成二十三年四月から日本史必修化協力校等におきまして、実際に一年間の授業で活用してもらい、教員、生徒、保護者の意見を聞くとともに、都教育委員会のホームページに掲載するなどして、広く都民からも意見を聴取してまいります。
都教育委員会は、こうした意見を参考にするとともに、学習指導要領にのっとり、必要があれば改訂するなど、平成二十四年度からの本格実施に対応してまいります。
〔環境局長大野輝之君登壇〕
○環境局長(大野輝之君) 地球温暖化対策の普及啓発についてでございますが、家庭部門のCO2削減を効果的に進めるためには、都民一人一人の意識の醸成が重要でございまして、都民に身近な区市町村の取り組みの強化が不可欠でございます。
このため、都では、区市町村が主体となって実施をいたします、先駆性があり波及効果が期待できる地球温暖化対策事業に対しまして、補助制度を設け支援をしてきております。この補助制度を活用することによりまして、住民や事業者が省エネ対策の実践を宣言し、さらに地域全体の行動として広げていく取り組みなど、特色ある事業が開始されております。
今後とも、こうした取り組みを通じまして、地球温暖化対策の普及啓発を推進してまいります。
〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕
○福祉保健局長(杉村栄一君) 三点のご質問についてお答え申し上げます。
まず、高次脳機能障害者支援のモデル事業についてでありますが、都は今年度から、二つの二次保健医療圏で高次脳機能障害に対応したリハビリテーションの普及モデル事業を実施しております。
この事業では、高次脳機能障害者のリハビリテーションを担う中核病院が、専門スタッフを配置し、地域の福祉サービス事業所等に対する技術的助言などを実施するほか、医療と福祉の連携強化のための連絡会や症例検討会を行っております。
こうした取り組みにより、リハビリテーション技術の普及や人材育成を進めるとともに、関係機関の連携を促進し、地域における高次脳機能障害者に対する支援体制の充実を目指してまいります。
次に、高次脳機能障害者の相談支援についてでありますが、高次脳機能障害者やその家族を支援していくためには、身近な地域で相談できる体制を整備することが重要であります。
このため、都は、平成十九年度から区市町村高次脳機能障害者支援促進事業を開始し、相談支援等を行う区市町村への財政支援を実施してまいりました。
また、心身障害者福祉センターにおいて、従来から行っている専門相談に加え、平成二十一年度から、当事者及び家族が相談員となるピアカウンセリング事業を実施しており、同様の取り組みを行う区市町村についても、包括補助事業により支援を行っております。
今後とも、こうした取り組みを強化し、区市町村における相談体制の整備を促進してまいります。
最後に、家庭的保育事業についてでございますが、本事業は、家庭的な雰囲気のもと、少人数の乳幼児に対し、同一の保育者によるきめ細かな個別保育を提供するものでありまして、本年九月現在、約千九百人の乳幼児が利用いたしております。
この事業のさらなる推進に当たっては、基本的に自宅などで一人で保育を行うという事業の性格を踏まえまして、より安定した保育を確保し、安心して利用できる環境の整備を支援する必要がございます。
このため、今年度から、保育者の休暇取得時に代替の保育の場を確保することへの支援や、複数の保育者が共同して保育を行うモデル事業を開始いたしました。
都は、今後とも、こうした取り組みにより、区市町村が家庭的保育事業を推進できるよう支援を行ってまいります。
〔産業労働局長前田信弘君登壇〕
○産業労働局長(前田信弘君) 多様な働き方の支援についてのご質問にお答えいたします。
NPO、ボランティア、起業、創業など、都民の働き方は多様化してきております。
このため、都はこれまでも、東京しごとセンターにおいて、多様な働き方セミナーやNPO等での就業体験の場の提供等を行うとともに、雇用以外のさまざまな働き方についての専門相談窓口を設置し、アドバイザーが相談や情報提供に応じております。
引き続き、これらの事業を通じ、多様な働き方を目指す人の主体的な取り組みを支援してまいります。
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