平成二十二年東京都議会会議録第十七号

○議長(和田宗春君) 四十三番宇田川聡史君。
   〔四十三番宇田川聡史君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○四十三番(宇田川聡史君) 江戸川区役所の前には、現在の荒川の水位という電光掲示板が設置されておりますが、その水位は通常時でも人の背丈を超えており、これがまさにゼロメートル地帯の実情であり、そこに住む人たちの脅威なのです。
 十月に一都五県の知事が八ッ場ダム建設現場に訪れ、視察と地元住民との意見交換を行いました。私も議員連盟の一人として出席をいたしましたが、現場の声、地元住民の切実な願いは、八ッ場ダムの早期完成なんです。幾度にもわたり議論を重ねてまいりましたが、こうした現場を見れば、ダムは要らない、堤防はむだ遣いなどと軽々に口にできるはずがない。ゼロメートル地帯の住民の命は軽いということなのでしょうか。我々下流に住む者たちの命を守るために苦渋の決断をしていただいた地元住民の皆さんの思いを、なぜ受けとめられないのでしょうか。
 八ッ場ダムの重要性、とりわけ我々の生命と財産を守るための治水の効果を改めて知事にお伺いいたします。
 次に、水道事業について伺います。
 重要なライフラインである都の水道は、三百六十五日二十四時間、安定給水の確保が大前提です。世界的な異常気象は各地で社会に影響を及ぼしており、ことし三月の百年に一度といわれた中国の大干ばつ、オーストラリアでは干ばつが近年頻発しております。
 こうした状況下において、大規模水道施設の一斉更新を目前に控え、首都東京を支えていくためには、需要動向のみならず、安定給水を脅かすさまざまな不安要素を考慮した上で、水源や施設整備に対する新たな考え方を構築することが極めて重要だと考えますが、都の見解を伺います。
 水の安定供給にダムは重要な意義を持っております。都は過去の渇水の経験を踏まえ、長い年月をかけて、地元の理解を得ながら水源確保に努めてまいりました。しかし、主要水源である利根川水系では、平成に入った近年に六回もの渇水がありました。地球温暖化などをかんがみれば、水資源への影響はますます懸念増大、決して万全とはいえません。
 八ッ場ダムは利水においても大きな効果をもたらすものであり、首都東京の安定給水に欠かすことのできない施設です。一日の大臣、知事会談により負担金留保を解除したところですが、国土交通大臣には勇気ある決断、中止の撤回を明確に表明されることをぜひにお願いしたい。利水における八ッ場ダムの意義、必要性について、決意を込めた都の見解をお尋ねいたします。
 次に、指定管理者制度について伺います。
 我が党はこれまで、公の施設の管理運営に係る指定管理者制度や、その中で重要な役割を担う監理団体のあり方について、さまざまな団体との意見交換を重ね、多面的な議論を多くの時間を割いて行ってきました。
 昨年六月に取りまとめた報告書で提言したとおり、監理団体の本来あるべき姿は、公益性の行政と効率性の民間企業の間に立つ一・五セクターともいうべき位置づけがふさわしいと考えます。双方の優位性を発揮し、都政運営の重要なパートナーとして機能させることこそが次世代の都政なのではないでしょうか。
 また、指定管理者制度においても、施設の目的や性格により、最も適した担い手や手法を見きわめ、過去の実績検証を踏まえての見直しも行うべきだと主張してまいりました。
 一方、都においては、我が党の提言を受け、この九月に東京都監理団体方針を策定し、改めて検証するとともに、指定管理者制度についても、その運用のあり方の検証を行ったところであり、この点は評価しております。
 今定例会には、その成果として、指定管理者の選定を新たに特命に変更した防災公園や文化財庭園などにかかわる議案が提案されておりますが、今回の制度の見直しの意義についてお伺いをいたします。
 指定管理者制度は、ともすれば、常々知事が提唱している現場、これを単に切り離すことになりかねません。この現場は、技術やノウハウの継承にはなくてはならないものであり、特に人材育成には欠かせないものです。監理団体と都の人材交流は、都職員のスキルアップに確実につながることだと考えます。
 こうした人材育成には一定の経済的、時間的コストが必要であり、期間の長期化や安定経営に資する制度論も重要であります。今回の見直しは、人材育成の観点からどのような意義があるのかお尋ねをいたします。
 次に、東京港の国際競争力強化について伺います。
 先週、東京港のコンテナターミナルの現状視察に行ってまいりました。現場の船会社から、コンテナ取扱貨物量は一時的な停滞から抜け出したとはいえ、国際基幹航路の維持拡大のためには、さらなる貨物集荷とコスト削減の取り組みが必要であるとの話がありました。
 釜山や上海などのアジア諸港と比較して割高であるターミナルリース料などの港湾利用コストの低減は、貨物集荷の増加に直接つながる重要な施策です。アジア主要港は、国家戦略的に採算を度外視して大胆に港湾コストの削減を図っており、これに対抗していくためには、東京港埠頭株式会社単独の努力には限界があると思います。こうした港湾利用コストの低減に向けた公的な支援が必要だと考えますが、ご所見を伺います。
 また、貨物集荷等により増加する貨物を適切に処理するためには、既に処理能力が限界に達している東京港全体の抜本的な機能強化が必要不可欠である、私は繰り返し主張してまいりました。
 特に、中央防波堤外側コンテナターミナルの供用開始を契機として、既存ふ頭の再編を進めていくべきである、本年六月の第二回定例会においても、こう申し上げたところです。再編の起点となる中央防波堤外側地区は、既存のふ頭に比べ広い用地を備え、来年度には東京港臨海道路Ⅱ期工事の完成によりアクセスが充実するなど、ポテンシャルの高い地域でのふ頭になる、このことに大いに期待を寄せているところです。
 これを最大限に活用し、中央防波堤外側コンテナターミナルをアジア諸港に対峙できるような高規格ターミナルとして整備していくべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 国は、東京港を含めた京浜港を国際コンテナ戦略港湾に選定いたしました。選定をしたからには、ガントリークレーン整備などに対し積極的な支援を行い、アジア主要港に肩を並べられる東京港を目指し、国際競争力を強化する取り組みを責任を持って進められるよう強く要望しておきます。
 次に、市場についてお尋ねをいたします。
 豊洲新市場への移転については、過日、知事によって大きくかじが切られました。老朽化した築地市場は待ったなしの状況であることは、だれの目にも明らかであり、食の安全・安心確保のためにも、新市場整備に異論を挟む余地はありません。
 知事は、移転を進めるに当たっては、個々の市場業者が抱える課題、不安、心配、こうしたさまざまな声に丁寧に耳を傾け、知恵を絞ることが必要だと述べられ、私も市場業者の要望に対し、十分に配慮した支援策を都の責任としてきちんと果たしていくべきだとの提言を繰り返してまいりました。
 今重要なのは、市場施設計画や支援の具体的内容を丁寧に説明し、意見を伺い、理解を得る努力です。
 都は先日、市場内に豊洲移転サポート相談室を開設いたしましたが、こうした窓口が果たす役割は極めて重要だと考えます。
 しかし、相談をただ待つ、こうした姿勢ではなく、まさに夜討ち朝駆け、ひざ詰めで積極的に市場業者の中に飛び込んでいく気概がなければ、理解や、まして信頼を得ることはできません。この相談室の活用にぜひ気概を持って取り組んでいただきたい。新市場移転を円滑に進めていくためには、市場業者に対するさまざまな支援策が必要不可欠だと考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。
 また、市場業者が現在置かれている厳しい経営環境を見ると、都の支援策を一日も早く明確にすべきであり、市場業者の経営の現状をしっかりと把握した上で、その要望を踏まえての支援が必要となります。現在の経営状況をどう認識されているのでしょうか。どのようなスケジュール感をもって支援の検討をなされているのか、その内容も含め、具体的にご答弁をいただきたいと思います。
 最後に、電気自動車の普及策についてお尋ねいたします。
 電気自動車は、大気汚染対策はもとより、地球温暖化対策としてもその普及が期待されております。ガソリン車に比べ、その走行距離が短いことなどから、すべての代替を図ることは困難ですが、用途に応じた活用は可能だと考えます。
 例えばタクシー。低炭素社会において、マイカーから公共交通機関へのシフトが求められている今日、タクシーは補助的公共交通機関として、高齢者などの交通弱者の移動手段に大いに役立つものです。
 したがって、駅待ちのタクシーを集中的に電気自動車へ転換することは有効な環境交通政策であり、加えて、タクシー利用者は、その静音性能を実感できるなど、電気自動車の一般普及に向けた啓発活動としての効果も期待できるのではないでしょうか。そこで、タクシーへの電気自動車の普及の意義について、都の見解をお伺いいたします。
 都は、電気自動車普及に向けた補助制度を実施してまいりましたが、タクシーへの普及にはこうした費用面の後押しだけでは不十分だと考えます。バッテリー切れの不安解消など、実用面での課題解決とあわせての普及策が必要なのではないでしょうか。都の課題認識と、その課題にどのように対処していかれるのか見解をお伺いし、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 宇田川聡史議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、八ッ場ダムの治水効果についてでありますが、東京の人たちは、かつて数年前の渇水期の取水制限に懲りていまして、八ッ場ダムの東京都にとっての利益というのは、利水というものに絞って考えていますけれども、これは全然違いまして、あなたのお持ちのこれ(資料を示す)江戸川区役所の前に立てられている川の水面の現況の高さが示されていますが、これ、立っている人よりもずうっと高いところにいつも水面がある。これは何も江戸川区だけじゃなしに、これからずうっと川上にさかのぼって埼玉県の周辺の川沿いというのは、非常にこういう状況が続いていて、堤防の決壊こそありませんけれども、高いところの水面からしみてくる水が増水しますと、わきに出てきて、その対処に民間の消防団が奔走しているのが実情であります。
 利根川流域には、群馬県から東京にかけて、あるいは千葉にかけて、洪水時の水位より低くなる市街地が大きく広がっておりまして、本年四月、国の中央防災会議が発表した資料によれば、カスリーン台風時とほぼ同じ箇所で決壊した場合に、江戸川区など区部東部の浸水の深さは二メートルから五メートルに達して、首都圏全体の死者の数は最大で二千六百人、浸水世帯数は約八十六万世帯に及ぶと想定しております。
 国は、甚大な被害想定を国民に公表する一方で、八ッ場ダムの建設を中止しておりますが、これではやっていることがまさにもうちぐはぐであります。
 人口と資産が集中する首都圏において、河川整備だけで想定被害を防ごうとすれば、莫大な時間とコストを要するのは明らかであります。現政権はダムによらない治水を掲げてございますけれども、具体的に何だかさっぱりわからない。こういったセンチメントな美辞麗句だけで政治ができるわけはありません。
 馬淵国交大臣は、今後は中止の方向には言及せずと、一切の予断を持たずに検証を進めると明言しました。繰り返して申しますけれども、前任者に対する心配りもあるんでしょうが、これはまさしく中止の言明を撤回したと私たちは判断しておりますし、このことは、ニュアンスに込められた彼の前任者に対する心配りに私たちそんたくしなくちゃいけませんが、いずれにしろ、八ッ場ダムは、これまで洪水調節機能を持つダムのなかった吾妻川流域に初めて建設される施設であります。これが完成すれば、区部東部を初め首都圏全体の洪水被害の危険性を大きく低減することが可能となります。
 引き続き、他の県知事とも団結して、予定どおり二十七年度までに八ッ場ダムを完成させるよう国に強く求めてまいります。
 もう一つ、市場業者への支援についてでありますが、市場の機能を担っているのは市場業者でありまして、いかに立派な施設をつくっても、その担い手がいなければ市場の機能は成り立ちません。
 移転に当たって大事なことは、市場業者の不安や課題を解消し、安心して移転や事業継続ができるようにすることでありまして、先日、私は、市場業界の方々と直接会ってお話をして、改めてこのことを認識いたしました。
 かつて、大田区の市場が新設されたときも同じことの配慮を都はいたしましたが、個々の市場業者が抱える問題や実態をつぶさに把握して、複合的に発想し、現実に立脚した支援を関係部局が連携して総力を挙げて取り組むことを強く指示いたしました。
 今後、都としては、土壌汚染対策や市場施設の建設に加え、市場業者への効果的な支援を講じることで、首都圏三千三百万人の食の安全・安心を支える豊洲新市場の二十六年度開場を目指して全力を尽くしてまいります。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔水道局長尾崎勝君登壇〕

○水道局長(尾崎勝君) 二点のご質問にお答えします。
 まず、水源や施設整備に関する新たな考え方の構築についてでございますが、将来にわたって安定給水を確保していくためには、渇水に対する安全度や気候変動などのリスク、経済動向や人口動態などを十分考慮することが必要であります。
 一方、浄水場などの主要な水道施設は、間もなく一斉に更新時期を迎えます。このため、これを契機に、水道事業に大きな影響を及ぼすと想定されるリスク等について、より広範に調査分析を行い、これらに十分対応できるよう、水道システム全体の安全度を考慮し、東京の発展を支え続ける水道に再構築していく必要があります。
 こうしたことから、将来の水道需要及び水源確保、施設整備のあり方を踏まえた、水道施設の再構築に向けた基本構想などを平成二十三年度中に策定し、都民にわかりやすく提示してまいります。
 次に、利水における八ッ場ダムの必要性についてでございますが、現在、都は日量六百三十万立方メートルの水源を確保しておりますが、この中には、取水の安定性を欠く課題を抱える水源が日量八十二万立方メートル含まれております。
 また、都の水源の約八割を占める利根川・荒川水系の水資源開発は、五年に一回程度の割合で発生する渇水に対応することを目標としており、十年に一回としている淀川水系などの全国の主要水系や、五十年に一回としているロンドン、既往最大の渇水を目標としているニューヨークなど、諸外国の主要都市と比べて渇水に対する安全度が低い計画となっております。
 加えて、近年の少雨化傾向により、ダムなどの供給能力が当初計画よりも既に約二割低下しているなど、都の水源は極めて脆弱な状況にあります。
 さらに、国等の予測によれば、気候変動の影響により、自然のダムといわれている利根川上流域の積雪量は、百年後、現在の三分の一まで減少するとされています。
 こうしたことから、首都東京の安定給水のためには、水源の確保が極めて重要であり、八ッ場ダムは必要不可欠であります。
 今後も関係自治体等と連携を密にし、八ッ場ダムの早期完成に向けて全力で取り組み、水道事業者としての責務を果たしてまいります。
   〔総務局長比留間英人君登壇〕

○総務局長(比留間英人君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、指定管理者制度見直しの意義についてでございます。
 都は、今回指定更新の時期を迎える百六十八施設について、制度導入から五年間の実績を踏まえ、施設の位置づけや性格を改めて検証をいたしました。
 その結果、本来の利用目的に加えて、防災対策や文化財の継承、一体性のあるまちづくりなど、都の重要な政策と密接な関連のある特定の施設では、都の意向を反映できる公的性格を持つ団体による管理が政策実現の観点から必要であることが明らかになりました。
 一方、監理団体は、長年にわたりこれらの特定の施設を都と一体となって管理してきており、都が保有してきた技術、ノウハウを着実に継承するなど、高い管理能力を有していることから、監理団体を特命で選定するなどの制度運用の見直しを行ったところです。
 今回の見直しは、公の施設の位置づけを都の政策との関連性から整理し、重要な政策目的を実現するために、都政を支えるパートナーである監理団体を活用することで、行政の責任を確保しつつ、都民サービスの向上を図ることとしたものでございます。
 次に、人材育成の観点からの指定管理者選定の見直しの意義についてでございます。
 今回の見直しにより、監理団体においては、長期的視野に立った管理運営のもと、防災公園や文化財庭園、一体性のあるまちづくりなど、さまざまな分野で都が培ってきた技術やノウハウの継承が可能となる。また、団体の職員を都の関連部署へ派遣し、行政実務を経験させることにより、幅広い視野を養うとともに、企画管理能力を習得するなど、今後の団体運営を担う人材を計画的に育成できます。
 一方、都においても、職員を団体に派遣し、事業実施の最前線における業務経験を積ませることにより、実務に不可欠な現場感覚が涵養され、利用者の具体的な声や実際の施設管理のノウハウを施策立案等の業務に役立てることができます。
 こうした取り組みを通して、都と監理団体の双方が、長期的な視点から都政の現場に根差した人材を育成できると考えております。
   〔港湾局長中井敬三君登壇〕

○港湾局長(中井敬三君) 東京港の国際競争力強化に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、港湾利用コストの低減に向けた公的な支援についてでありますが、都はこれまで、東京港の国際競争力強化に向け、東京港埠頭株式会社と連携して、取扱貨物量に応じてリース料を割り引くインセンティブ制度を導入するなど、ターミナルリース料の低減に取り組んでまいりました。
 しかし、釜山港などのアジア諸港と比較した場合、東京港のターミナルリース料はいまだに高い水準にあり、これに対抗するためには、東京港埠頭株式会社の経営努力はもとよりですが、議員ご指摘のとおり、これに加えた公的な支援が必要であります。
 このため、国に対して、東京港埠頭株式会社に対する税制優遇措置の拡充や、直轄工事における国費負担の拡大などを要求するとともに、都としてもガントリークレーン整備に対する支援制度など、ターミナルリース料原価の圧縮に向けた対策を早期に具体化してまいります。
 次に、コンテナターミナル整備についてでありますが、近年、釜山港等のアジア諸港では、戦略的な貨物集荷を進めており、これに応じた港湾整備が急速に進められております。
 こうした中、都でも東京港の機能強化を図るため、港湾計画において中央防波堤外側地区に最大水深十六・五メートル連続三バースのターミナルを計画し、現在、二バースの整備を実施しております。
 ターミナルの規模は、奥行き五百メートル、一バース当たりの面積が既存の約一・四倍確保するなど、国際コンテナ港湾にふさわしい高規格なターミナルになる予定でございます。
 さらに、最新鋭のガントリークレーンの導入や、情報通信技術を活用したゲート処理の円滑化など、ターミナル処理能力の向上に向けた取り組みも進めてまいります。
 このような施策を総合的に推進し、東京港の国際競争力を高めていくことで、釜山港などアジア諸港に対峙する日本のハブポートを目指してまいります。
   〔中央卸売市場長岡田至君登壇〕

○中央卸売市場長(岡田至君) 市場業者の経営状況の認識と支援の検討についてお答えいたします。
 本年一月から実施した個別面談におきましては、取引先の倒産による顧客の減少や売り上げの低下など、経営悪化の状況を訴える声が多くを占めております。さらに、財務検査、経営改善指導などで把握した状況も加味いたしますと、これまで築地市場の発展に寄与してきた市場業者の経営は、総じて厳しい状況にあると認識しております。
 こうした状況を踏まえ、現在、支援の基本的な考え方を検討中であり、遅くとも来年一月末までに提示してまいります。提示に当たりましては、支援の内容につきましても可能な限り明らかにしたいと考えております。
 さらに、この基本的な考え方を説明会などを開催して多くの市場業者に周知し、丁寧に説明した上で、再度、意見交換や個別面談を実施し、これらを通じて把握した意見、要望等をできる限り反映した効果的な支援策につなげてまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

○環境局長(大野輝之君) 電気自動車の普及に関します二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、タクシーへの電気自動車普及の意義についてでございますが、都内のタクシーの年間走行距離は、一般的な自家用乗用車と比べますと十倍程度と長くなっております。このため、電気自動車への代替が進めば、CO2の削減など環境への負荷低減に大きな効果がございまして、タクシーへの電気自動車の普及は望ましいことと認識しております。
 また、今後、電気自動車をマイカーなどへも幅広く普及させるためには、都民が実際に電気自動車に乗車し、そのメリットを実感する機会をふやすことが重要でございます。
 この観点から、都は今年度、立川合同庁舎で電気自動車のカーシェアリング事業を実施し、都民の乗車機会の拡充に努めておりますが、タクシーでの電気自動車普及にも、同様の都民への啓発効果という意義があるものと考えております。
 次に、普及に当たっての課題についてでございますが、タクシーの車両は、乗務員の交代制によりまして終日運用されております。都内の場合には、一日の走行距離が一般に二百キロメートルを超えております。これに対しまして、現在の電気自動車の走行距離は、長いもので、カタログ値でも二百キロメートル程度でございまして、エアコンを使用する実際の走行時にはさらに短くなります。
 したがいまして、都内のタクシーへ電気自動車を導入するためには、走行可能距離の制約への対応や、長時間の車両の運用と充電時間の確保の両立などの課題がございます。
 しかしながら、駅待ちタクシーなど、短距離中心の車両への導入や、乗務員の休憩に合わせて急速充電を行うなど、運用上の工夫によりまして、現在の電気自動車でも十分にタクシーとしての実用性を発揮することは可能と考えられます。
 このため、タクシーへの電気自動車の普及に向けましては、都内タクシーの営業実態を把握しながら、実用可能な車両の用途や運用形態を早急に検証することが必要であると認識しております。