午後五時五十分開議
○副議長(鈴木貫太郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
質問を続行いたします。
百七番東村邦浩君。
〔百七番東村邦浩君登壇〕
○百七番(東村邦浩君) 都議会公明党を代表して、知事並びに教育長、東京都技監、関係局長に質問いたします。
政権交代から一年、政治主導により国を変えるというスローガンに国民は欺かれ、現政権は統治能力のなさを露呈、特に日本の外交、安全保障、まさに危機的状況にあることが多くの国民の周知の事実となりました。
他方、経済政策においても、長引くデフレ状態の中での急激な円高に対し、九月初めに我が党が対策案を発表してから一カ月以上もたってから緊急経済対策を打ち出しました。しかも、その財源となる補正予算案も、臨時国会から一カ月以上経過して提出する始末です。外交、安全保障だけでなく、経済対策においても危機感が全く乏しいとしかいいようがありません。
また、現政権は三段構えの経済対策を掲げておりますが、第一段階の円高、デフレ対策ですら既に行き詰まっており、仮に第二段階の機動的な対策がうまくいったとしても、第三段階の新成長戦略の中身は、医療ツーリズムなどの既にタイなどの諸外国で実施をしている後発的な政策ばかりで、諸外国に太刀打ちできる新経済成長戦略ではありません。
今、手を打たなければならないのは、保育や介護など今後も超過需要が見込まれる分野、さらには都市の集積、コンパクトシティー化などの都市再生、観光など海外需要の拡大が見込まれる分野と日本の技術革新を連動させることであります。
そこで、国がやらないのであれば東京からやるという一貫した姿勢を貫いてきた首都東京の知事として、世界で最先端の技術の導入や快適性、安全性をより高めていくなど、東京をアジアで最も魅力的なハブ地域にしていくべきと考えますが、知事の所見を伺います。
次いで、経済成長戦略について質問します。
これから加速する高齢化社会を考えた場合、それに対応していく新たなシステムの整備が急務であります。そのためには、需要が膨らんでいく医療、介護の分野と、これまで中小企業が培ってきた高い技術力を結びつけていく視点が必要です。
先日視察をした福岡県のある会社では、以前はベルトコンベヤーを製造していましたが、その技術力を生かして新たにロボット産業に参入し、医療、介護、警備、災害レスキューなどの時代が求めるあらゆる分野において次々とロボットを研究開発し、製品化しています。中でも福祉分野においては、従来の後ろ向きで腰をおろす車いすから発想を転換し、前向きで楽に乗車でき、身体障害者や高齢者が介護者の手をかりずに移動できる電動車いすロボットの開発や、ひとり暮らしを見守るための家庭用見守りロボットなど、ロボット技術を活用した取り組みが実用化されていました。
しかし、こうした日本の高いロボット技術について、国を挙げて大きな関心を寄せているのは、新たな産業開発に目を輝かせるアジア諸国と欧米先進国であり、逆に、企業任せでほとんど戦略的な育成、そして支援が及んでいないのが我が国であります。特に現政権になってからは、支援が一段と後退いたしました。
都議会公明党が視察したまさにそのとき、アジアの国家関係者が、その会社が開発した、人と同様に歩行するロボットを買いたいと、商談のために来日していました。このとき、ロボットの開発者たちは私たちに、海外諸国はロボットに組み込まれている日本の高い技術に着目し、それを求めていると訴えておりました。
多くの技術が海外に流出してしまった今、日本において世界の最高水準にあるのはロボット技術であるといわれていますが、このように国外に流出する危機的状況にあります。
本来、こうした新たな成長戦略は、国が積極的に支援をしていかなければなりませんが、国が取り組もうとしない現状を考えると、都が福祉分野などに活用し、あわせて関連産業を育成していくべきであります。
そこで、第一に、ロボット産業に参入を求める複数の中小企業が、得意とする技術を集積し、ロボット研究の第一人者が学長を務める首都大学東京などの学術研究機関と共同して研究開発から製品化するまでのプロジェクトをネットワーク化し、資金面からも支援するとともに、ロボット産業を支援する拠点を都内に設けるなど、総合的に取り組むべきであります。見解を求めます。
第二に、ロボット産業の実用化、普及に向けた環境整備についてであります。
多くの人たちに知ってもらい、理解を深めてもらうためには、先進的な福祉ロボットなどを展示会において情報発信をしたり、都関連施設においてモデル的に使用するなど、販路開拓や量産効果が高まる取り組みを後押しすべきであります。見解を求めます。
第三に、実用化したロボットの、国内はもとより海外への販路開拓についてであります。
海外への輸出については、ロボット製品を単に販売するだけでなく、他の国ではまねができない、日本人の特性である繊細さや気配り、優しさが生かされた福祉ロボットなどを開発し、ロボット産業を成長産業として位置づけ、世界にも通用する東京ブランドとして海外にも売り込んでいけるよう、育成を図っていくべきであります。
東京の将来を支える新たな産業の創出と育成について、知事の所見を伺います。
次に、雇用対策について質問します。
現在、大学生の就職難は深刻化し、大きな社会問題となっています。文部科学省と厚生労働省が先月発表した来春卒業予定である大学生の就職内定率は五七・六%であり、また高校生の就職内定率は、全国で四〇・六%、東京で三三・七%となりました。これは、就職氷河期といわれた平成十五年の内定率を下回っています。さらに、本年十月の有効求人倍率は全国で〇・五六倍、都の有効求人倍率は〇・七倍と公表されました。このように、来春に向けた就職戦線はかつてない厳しい状況に置かれています。
就職氷河期に社会に出た世代は、失われた世代と呼ばれ、今も非正規社員として不安定な働き方を余儀なくされている人が多いといわれています。第二の失われた世代をつくらないためにも、新卒者の就職支援に全力を挙げるべきと考えます。知事の決意を伺います。
現在、都は我が党の主張を受け、東京しごとセンターにおいて、高校生の就職支援も新卒緊急応援窓口で対応したり、交流会を開催したりしています。しかし、今年度の厳しい状況に対応するためには、しごとセンターで待っているだけでは改善しません。一人でも多くの高校生が就職できるよう、しごとセンターが高校の就職担当者と連携をとり合って高卒者向けの求人情報を提供するなどの支援策を行うべきであります。見解を求めます。
有効求人倍率が一・〇を下回る中、従業員三百人以下の中小企業の大学新卒の求人倍率は四・四一倍と高い状況にあります。都内には、すぐれた技術や技能を持ち、採用意欲のある中小企業がたくさんありますが、学生の大企業志向、安定志向が壁となり、人材を確保できないというミスマッチが生じています。
こうしたミスマッチを解消するために、都は、産業交流展の機会をとらえ、東京ビッグサイトで中小企業の合同就職面接会を開催しました。年が明けると、さらに新卒者の就職は厳しくなってきます。そこで、再度、都が音頭をとり、中小企業と新卒者の合同就職面接会を開催すべきであります。そして、その情報を学生に発信していくべきであります。見解を求めます。
また、企業が既卒者に新規採用の門戸を閉ざしているところがいまだ多く、我が党はこれまで、新卒要件を卒業後三年まで緩和すべきと主張してきました。今後、都は、しごとセンターを通じた情報提供や、既卒者を積極的に採用するよう企業に働きかけるなど、既卒者の就職支援を進めるべきであります。見解を求めます。
次に、緊急雇用創出事業について質問します。
総務省が先日発表した労働力調査によれば、働く意欲がある十五歳以上の失業者の完全失業率は五・一%であり、依然として高い水準となっています。国は、公明党の強い推進によって、求職者や失業者の働く場を確保するため、緊急雇用創出事業を創設し、都はこの制度を活用し、二年間着実に事業成果を上げてきました。
しかし、いまだ続く厳しい経済、雇用状況の打開について何ら明るい展望が見えない中、都はこれまで以上に即効性のある緊急雇用創出の拡充に取り組まなければなりません。事業開始から三度目のチャンスとなる来年は、一時的な雇用就業機会を創出することはもとより、基金事業のプラスアルファの効果を最大限に高めていくべきであります。
そこでまず、本事業の成果を検証するとともに、今後は、緊急雇用から正規雇用へと円滑に移行できるよう支援を強化し、安定した雇用に誘導していくべきであります。見解を求めます。
また、緊急雇用創出事業を都の重要課題施策や都民サービスの向上に直結させていく視点も重要です。
例えば、近年、公共施設や高速道路のパーキングエリア、またショッピングセンター、コンビニなどの一般商業施設などに障害者用駐車スペースの整備が進んでいます。しかし、せっかく設置された障害者用駐車スペースに健常者が駐車しているケースも多く、その場所を本当に必要とする車いす使用者などが利用できないという実態があります。
その対策の一つとして、パーキングパーミットという制度が注目されています。この制度は、身体障害や難病、また、高齢で歩行が困難な方に加えて、けが人や妊産婦など一時的に歩行が困難な方に対しても、共通する障害者用駐車場の利用証を交付することで、専用駐車枠を利用できる人を明らかにし、駐車スペースを確保するという制度です。
こうした制度の導入に当たっては、まず、制度を理解し、駐車スペースを提供してくれる協力事業者を拡大し、理解を求めていく専従のスタッフを多数確保しなければなりません。都は、こういったところに緊急雇用創出事業を活用して、障害者用駐車場の適正利用に向けた取り組みを推進すべきであると考えますが、見解を求めます。
次に、障害者の雇用、就労について質問します。
全国には法定雇用率を大きく上回る障害者の雇用を実現し、業績を大幅に伸ばしている中小企業が少なからず存在しています。都議会公明党が視察した名張市と旭川市の企業もその代表例です。
名張市の製造会社は、知的障害者の作業チームが自動車の製品製造の検品作業に従事し、健常者より返品率を減少させ、会社の収益を上げていました。旭川市のリネンサプライの会社では、全社員二百名の約三割を知的障害者が占め、健常者と同じ作業に、同等の作業効率で、同額の作業給を得ながら働いていました。これらの企業の成功の秘訣は、障害福祉に詳しいキーパーソンが、作業工程や人事管理に工夫を凝らし、障害者が働きやすい環境を整えている点にあります。
都が現在行っている障害者の就労支援策として、福祉保健局が各区市町に設置を促進する障害者就労支援センターと、産業労働局が所管するジョブコーチがあります。障害者就労支援センターのコーディネーターは、働く障害者を就労、生活の両面から支援し、産業労働局は、障害者を雇う企業にジョブコーチを派遣しています。
そこで、今後は福祉保健局のコーディネーターと産業労働局のジョブコーチがチームを組んで、障害者の雇用、就労の取り組みを協議、計画し、雇い入れから雇用の継続に至るまで一貫した取り組みを行い、障害者の就労を推進すべきであります。都の見解を伺います。
一方、障害者の就労の安定を図る上では、名張市や旭川市の事例を見ても、働く障害者同士が励まし合い、悩みを相談し合う体制を整えることが効果的です。しかし、大企業であれば自社内での実施も可能ですが、中小企業が多い都内ではさらなる工夫が必要です。
そこで、都は今後、都内の障害者が働く中小企業の違いを超えて、交流、連携し合えるように、障害者就労支援センターなどが拠点となる仕組みを工夫すべきと考えます。都の見解を求めます。
さらに、都は今後、障害者をより多く雇いたいと考える中小企業を都内に具体的にふやしていく取り組みを強化するとともに、合同就職面接会などを実施し、企業と働く意欲を有する障害者とのマッチングの充実に努めるべきと考えます。都の見解を求めます。
次いで、本年六月十八日より施行された改正貸金業法のその後の影響について質問します。
今回の改正により、事業者や消費者の資金繰りは、よくなるどころか悪化の一方をたどっています。他方、一部の弁護士や司法書士は、テレビコマーシャルや電車の車内広告を打ってまでもうけようとしています。一体だれのための改正であったのか、疑問を呈さざるを得ません。
こういった状況をいち早く予測した大阪府は、全国に先駆けて、本年三月に、貸金業利用者のヒアリング調査を実施し、改正貸金業法施行後の八月にも緊急の影響調査を実施しました。その結果、ノンバンクを利用している事業者の二人に一人、消費者の三人に一人が、新規借り入れを断られたり、借入枠を減額されるなどの影響を受けていました。そして、そのうち事業者で七人に一人、消費者で八人に一人は、ヤミ金などで資金調達を実行または検討している実態が明らかになりました。
私も、従来からノンバンクを利用していた事業者を、大阪府が実態調査を委託した調査会社の協力を得てヒアリングしてまいりました。
ある会社では、つなぎ資金でノンバンクを利用していたけれども、法改正による処置ということで、従来から利用しているノンバンク数社から新規融資にストップがかかったとのことでした。その社長は、出資法の上限金利二九・二%を高いという人がいるが、ノンバンクから二九・二%でつなぎ資金として最大五百万円を一カ月借りたが、利息は十二万円ぐらいで、保証協会のつなぎ融資を申し込んで一週間以上待つことを考えると、会社の資金繰りの上からは決して高くないと話してくれました。
その会社は、いいとは思わないが、会社を存続させるためにやむを得ずつなぎ資金として、十日で二割のヤミ金からお金を借りたとのことで、帰り際に、この法律がさらに続くならば会社は半年後に倒産してしまうとまでいわれました。
東京都は、改正貸金業法の施行に伴い、相談窓口を設置しましたが、事業者からの相談は余りないとのことです。しかし、せっぱ詰まってヤミ金からお金を借りてしのいでいる事業者がわざわざ相談に来るとは思えません。待っているだけで本当の実態がつかめるはずはありません。まず、ノンバンクを利用していた事業者のヒアリングを含めた実態把握を行い、それを踏まえて対策を検討すべきであります。都の見解を求めます。
こういった状況を打開しようと、大阪府は、小規模金融特区を国に提案しました。この特区は、返済能力のある人までが一律に借りることができないという改正貸金業法の弊害を解決するために、規制緩和するだけでなく、同時に多重債務問題を解決するための債務整理ができるADRのスキームを大阪府が用意し、このADRのコストを貸金業者が利息の一部から負担金として拠出するという制度であります。こうした小規模金融特区は非常に有効な手段でありますが、国が受け入れない現状を考えると、他の手段による多重債務問題への取り組みが必要となります。
そこで、多重債務者が過払い請求を行うに当たって、一部の弁護士や司法書士の犠牲にならないように、都が金融ADRを活用してこうした問題に対応すべきと考えます。都の見解を求めます。
いわゆる無縁社会によって、孤独死などへの不安が広がり、高齢者が身近な地域で安心して暮らすことのできる、医療、介護、住宅などが連携した施策の充実が求められています。まず、介護保険制度の改正について質問します。
現在、国において、法改正に向けた議論が大詰めを迎えています。中でも、新たに創設される訪問介護と訪問看護が連携した二十四時間地域巡回型訪問サービスが注目を集めています。これは、公明党が新・介護公明ビジョンで提言した二十四時間三百六十五日対応の訪問介護サービスによって進める在宅介護の支援強化にかなうものです。
しかし、新たなサービスであるがゆえに、制度設計や報酬設定がしっかりしていなければ、平成十八年度に創設された夜間対応型訪問介護サービスのように、事業所数が伸びない事態になりかねません。国が創設を予定している二十四時間地域巡回型訪問サービスについて、都は区市町村や介護事業者などの声を踏まえて、国に要望していくべきと考えますが、見解を求めます。
続いて、医療、介護が連携した住宅整備について質問します。
本年十月二十五日に、都の医療・介護連携型高齢者専用賃貸住宅モデル事業の第一号、風のガーデンひのが竣工しました。これは、高齢者専用の賃貸住宅に医療と介護のサービス拠点を併設させたもので、その充実は大きな期待を集めています。
都は平成二十二年度においても、医療・介護連携型高齢者専用賃貸住宅の予算を計上していますが、建設が進まないのが現状です。ネックとなっているのが、用地の確保であります。特に都心部では、高い用地費がそのまま家賃にはね返ってきます。
そこでまず、遊休都有地を減額貸付できるように制度設計をすべきであります。都の見解を求めます。
また、都内には多くの未利用国有地を抱えています。都内の国有地についても、区市町村と協力して活用の有効性を具体的に提示し、国に迫るべきと考えます。同時に、未利用都有地の情報についても積極的に提供すべきです。見解を求めます。
都営住宅や公社住宅の建てかえに際しては、余剰地が創出されます。こういった創出余剰地を活用し、医療、介護などの生活支援サービスつきの高齢者向け賃貸住宅の整備を促進させるべきであります。見解を求めます。
他方、都営住宅における孤独死対策も大切です。これまで我が党が求めてきたコミュニティ支援を具体的に推進するとともに、都は孤独死対策を強化すべきです。特に夜間や休日における問い合わせ電話に対する音声ガイダンスにおいて、高齢者などの安否確認に対応できる案内を新たに設けたり、問い合わせ先の団地内掲示を図るなど、高齢者と離れて暮らす家族の不安や、身近で心を砕く自治会にも配慮すべきであります。コミュニティ支援の具体化の状況とあわせて見解を求めます。
次に、全国に百万人を超えるキャリアがいるといわれるHTLV-1ウイルス対策について質問します。
この対策は、第三回定例会代表質問でも取り上げましたが、十月六日に厚生労働省から、妊婦健診において抗体検査を実施する通知が各自治体になされました。抗体検査は、母体がウイルスを持っているかどうかを検査するものです。このウイルスの主な感染経路は母乳であるため、検査結果をもとに的確な情報提供と授乳指導を行うことで、感染予防が可能になります。
また、ウイルスを持っているとされた方々は、ATLという重篤な白血病や、HAMという脊髄疾患を発症する可能性があります。そうした不安に対処するため、抗体検査とセットで、きめ細やかな相談やケア体制を整えることが極めて重要であります。
我が党の質問を受けて、都は既に母子健康手帳交付時にHTLV-1に関する情報提供をするなどの区市町村の取り組みを支援することを明らかにしています。今後さらに、抗体検査の実施に向けた相談、ケア体制の整備や、医療、母子保健関係者への情報提供など、必要な取り組みを早期に進めるべきと考えますが、見解を求めます。
このウイルスは九州地方に多いといわれていましたが、現在では全国に拡散しており、都における実態把握も必要であります。このウイルスによって発症するATLという白血病の治療法はまだ確立されていないことから、今後は感染者対策として、診療拠点病院の整備や治療薬の研究促進など、疾病対策を含めた総合対策を進めていくべきであります。都の見解を求めます。
次に、自殺対策について質問いたします。
警察庁によれば、平成二十一年に自殺した人は三万二千八百四十五人と、過去五番目に多く、十二年連続で三万人を超え、自殺対策は待ったなしの状況にあります。
この自殺の原因として最も多いのがうつ病とされており、都議会公明党は、先日、自殺対策について先進的な取り組みを行っている鹿児島県を視察してまいりました。鹿児島県では、自殺対策としてのうつ病対策を強化しており、その中で認知行動療法を活用した取り組みを進めています。自殺やうつ病の相談を受ける相談員が研修を受講し、ノウハウを学ぶなど、自殺対策として認知行動療法を位置づけているのが特徴です。
取り組みを進めた結果、受講前はうつ病患者への接し方がよくわからなかった相談員も、研修後には適切な対応ができるようになり、特定健診時のスクリーニングにおいて成果が出るようになったとのことです。その結果、県の自殺率は大幅に改善したとのことであります。
都としても、保健師や自殺相談の相談員等に研修を実施し、認知行動療法のスキルを学習することにより、相談者への対応力を強化すべきと考えます。見解を求めます。
また、都は、この四月から自殺相談ダイヤルを開設しました。開設当初は相談件数が余り多くなかったようですが、夏以降、相談件数も徐々にふえていると聞いております。自殺死亡者のうち七割の方は、死亡する直前にいずれかの相談機関に行っていたことがわかっており、自殺に関する相談支援体制の充実が求められております。
都では、ことしの自殺対策強化月間において、自殺相談ダイヤルの相談時間を九月六日から一週間に限って延長しましたが、今後、年間を通して相談時間を延長するなど、相談体制の充実を図るべきです。見解を求めます。
次に、教育環境の整備について質問します。
桐生市で発生した小学六年生の女子児童の自殺は、まさに衝撃的事件でありました。報道によれば、自殺した児童の学級は長らく崩壊状態にあり、女子児童はひとりで給食をとる異様な日々の窮状を、担任以外の教員に対しても泣きながら訴えていたそうです。さまざまにSOSが発信されていたにもかかわらず、なぜいじめ解消などの抜本的対策が講じられなかったのか、この点が問題です。
いじめに起因する自殺は、ここ数年、各地で散見され、後を絶たず、どの地域においても発生し得ると考えるべきです。こうしたいじめの発生を訴える声などを学校が適切に対処できていない場合、都教育委員会はSOSを適切に感知し、学校に対して問題解決に必要な支援を講じる体制を整備すべきであります。見解を求めます。
いじめだけでなく、不登校や保健室通学する児童生徒の心のケアに取り組むのがスクールカウンセラーです。その配置、活用が国の委託事業から補助事業へと変更され、国費も減る中、都は我が党の要請を受け、都内公立中学校への全校配置を実現いたしました。しかし、いまだに小学校や高等学校での活用は一部にとどまっています。
都は今後、小学校や高等学校へのスクールカウンセラーの配置を拡大すべきであります。見解を求めます。
また、児童生徒が抱える問題は、虐待や家庭機能の崩壊など、学校外の出来事に起因する場合もあります。スクールソーシャルワーカーは、教育分野だけでなく、社会福祉などにも精通した人材として、学校外の機関と連携して問題の解決に当たります。都内でも、保護者の窮状にまで適切に対処し、評価されています。
児童生徒が抱える問題はより複雑化してきており、スクールソーシャルワーカーの必要性はますます高まってきております。都はこれまでの成果を踏まえ、スクールソーシャルワーカーについても、一層配置の拡大を図るべきと考えますが、見解を求めます。
次に、少人数指導の教員加配について質問します。
国の定数改善のもとで実施されてきた少人数指導など、習熟度に配慮した手厚い指導体制は、都内の公立小中学校の学力向上に貢献し、地域、保護者からも歓迎されています。ところが、三十五人学級への移行を理由に、二十三年度はこの少人数指導の教員加配がなくなり、学校経営のめどが立たなくなるとの不安の声が広がっています。
少人数指導は効果の高い学力向上策であり、都はこの少人数指導の教員加配を守るため、区市町村と協力し、国に強く制度の維持充実を要望すべきと考えます。見解を求めます。
次に、学校の冷房化について質問します。
ことしの夏は記録的な猛暑、冷房のない教室はまさに蒸しぶろ状態で、教育効果にも重大な影響が出ました。特に多摩地域の公立小中学校では、市町村の財政難から冷房化が進まず、都議会公明党は、九月十四日に都知事あてに申し入れを行い、第三回定例会においても取り上げ、都は調査の分析結果や市町村の動向も踏まえ、検討するとしました。その後、市町村からは、都からの財政支援を求める要望書や意見書が提出されました。
こういった状況を踏まえ、緊急の課題である小中学校の冷房化を推進するために、都として市町村への財政支援を直ちに実施すべきと考えます。見解を求めます。
一方、都立高校の普通教室の冷房化は一〇〇%完了していますが、特別教室は部分導入にとどまっています。保護者が文化祭で理科教室や調理室を訪れた際、その暑さに驚いたという話もお聞きしました。特別教室は、補習や部活動でも使用します。暑さが注意力の散漫を招き、重大事故を引き起こしかねません。
都立高校の特別教室も、原則として冷房化すべきと考えますが、見解を求めます。
次に、新銀行東京について質問します。
十一月十九日に新銀行東京の中間決算が発表され、当期利益は四・九億円の黒字となりました。再建計画では、今年度の当期利益はプラス・マイナス・ゼロとのことでありましたが、中間決算ではこれを上回る業績を上げています。中小企業向け貸出残高についても、全国の銀行が前年同期と比べ横ばいとなる中、新銀行東京は二〇%増となっており、リーマンショック以来の厳しい経済金融情勢の中で、中小企業支援にも配慮しながら、着実な再建を進めております。
今後も企業価値を高める努力をするとともに、情勢の変化に応じた適切なリスク管理を行うなど、より一層着実な経営に努める必要があります。そうした点を踏まえ、本業の収支である実質業務純益の黒字化を含めた平成二十二年度の業績見通しについて、都の見解を求めます。
再建計画について、都議会公明党は、単年度黒字化した後には追加出資四百億を回収または保全することを繰り返し主張してまいりました。明年は再建計画の最終年度を迎えますが、本業の収支である実質業務純益の黒字化を達成し、企業価値を高めた後には、新銀行東京の役割を見きわめつつ、事業譲渡または業務提携への具体的な取り組みを進め、追加出資を回収もしくは保全していくべきであります。知事の見解を伺います。
次に、外郭団体改革について質問します。
都では、本年九月に東京都監理団体活用方針を策定し、監理団体をこれまで以上に活用していくことといたしました。都議会公明党でも、外郭団体改革推進プロジェクトチームを立ち上げ、さらなる改革を推進していくため、各所管局へのヒアリングなどを通じ、公益法人制度改革や指定管理者制度などについても検討を重ねているところであります。
そのような中、都は、制度導入後五年間の実績を踏まえ、百六十八施設の性格、位置づけを検証し、三十三施設については、公募から監理団体への特命に変更しました。これは、防災対策や文化財の継承、一体性のあるまちづくりなど、都の重要な政策と密接に関係する施設について、公的性格を持つ監理団体が蓄積してきた行政ノウハウや、施設運営にかかわる技術、知識の有効な活用を図るために必要な措置であることは、理解できるものであります。
他方、三十三施設以外の施設においては、公募に当たって、長年、施設の管理運営を担ってきた監理団体と新規参入を目指す民間を競わすことになったわけですが、これまでの管理実績がある監理団体に優位性があり、結果として競争性が働かないおそれがあります。今後の個々の施設特性を定義づけした上で、公募すべき施設の管理運営については、より一層の競争性を高め、民間が参入しやすい仕組みを検討すべきであります。都の見解を求めます。
また、今回、監理団体に特命となった施設については、監理団体が政策目的の実現に向けた機能を着実に発揮しているのか、また適切に運営を行っているのかを、毎年度、しっかりと検証していく新たな視点が必要であると思います。見解を求めます。
また、もう一つの外郭団体である報告団体については、第三回定例会で我が党の代表質問に対し、年内を目途に、すべての報告団体について事業内容や都との関連性を精査し、位置づけを明確にした上で、その類型化に取り組むと答弁しております。報告団体について、着実に改革を進めていくことを改めて要望しておきます。
次に、東京の治水対策について質問します。
昨年九月の政権交代によって突如打ち出された八ッ場ダム建設中止の表明以来、ダムにかわる治水対策や中止に伴う地域住民の生活再建策が何ら示されることなく、関係する一都五県と地元は、政府の身勝手さと無策に翻弄され続けております。
ところが、生活再建事業が停滞していることについて、馬淵国土交通大臣は、一都五県からの直轄事業負担金及び利水者負担金の支払いを留保されていると、責任があたかも関係都県にあるかのような国会答弁を行っております。一方的にダム建設を中止しておきながら、ダム建設を前提に支出する負担金を一都五県に求めること自体、矛盾しております。
こうした状況の中で、十二月一日に馬淵大臣と一都五県の知事が会談し、席上、関係知事側から、今年度の負担金支払いの留保を解除する方針を示したと聞いております。しかし、負担金の支出はダム本体の建設が前提であり、当初の計画どおり建設するのかどうか、政府の対応を十分見きわめて判断すべきと考えます。石原知事の見解を伺います。
また、馬淵大臣は、八ッ場ダム建設の是非について再検証を行い、来年秋までに判断するとの方針を示しておりますが、再度の検証にさらに一年も費やす必然性は全くありません。ダム本体の建設を早急に決断するよう、政府に強く求めるべきであります。都の見解を求めます。
一方、先般の行政刷新会議の事業仕分けで、スーパー堤防事業が一たん廃止と判定されました。仕分け人は、二百年に一度の水害を防ぐのに四百年かかるのでは本末転倒と批判しましたが、これはまさに詭弁であります。四百年とは、全国六河川、延長八百七十二キロメートルすべてが完成する年数であります。整備において河川ごとに優先順位があるのは当然であり、すべての河川が完成するまで効果が発揮されないものではありません。
例えば、最も優先度の高いゼロメートル地帯の江戸川、荒川計画延長は約五十二キロ、全体の六%に当たり、数十年の整備年数で極めて大きな事業効果を発揮できます。洪水や高潮の甚大被害をこうむってきたゼロメートル地帯の実態を直視せず、廃止するということは、まさに東部低地帯に住む約百五十万人の命を危険にさらすことになります。
そこで、都は、都民の命を守る洪水、地震、高潮対策の推進のために、国に対してゼロメートル地帯のスーパー堤防事業の存続を強く求めるべきであります。また、都が独自に実施している隅田川などのスーパー堤防についても、計画どおり推進すべきであります。あわせて見解を求めます。
最後に、小笠原航空路開設に向けた取り組みについて質問します。
先月、都議会公明党は、航空路開設に向け、現地に調査団を派遣し、村民の方々の意向を聞き、意見交換を行ってまいりました。東京から一千キロ離れ、隔絶した離島である小笠原にとって、交通アクセスこそ生命線であり、昭和四十三年の返還以来、航空路開設は村民の悲願であるとの熱い思いを伺ってまいりました。
現在、都は、航空路協議会を設置し、先月まで五回開催して、空港整備に必要な手続であるPI実施計画書の策定や、候補地の絞り込みなどを行ってきました。しかしながら、空港建設や最新の技術開発の動向などの課題については慎重に検討を進めていくとしています。
航空路の早期開設を願う村民の中には、過去、平成八年の兄島案、平成十三年の時雨山案のとんざで、行政への不信感を強くしています。島民生活の安定のためには、小笠原航空路はぜひとも必要です。早期に課題を整理し、専門家の知見を聞くなどして航空路案を取りまとめ、航空路の開設に向けた取り組みを促進すべきであります。
都の見解を求め、私の代表質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 東村邦浩議員の代表質問にお答えいたします。
まず、東京をアジアで最も魅力的な都市としていくことについてでありますが、東京はこれまでも日本の頭脳部、心臓部として、我が国を牽引してきました。その東京をより高い次元で発展させるために、環境、福祉、安全、観光など、多岐にわたり先進的な施策を展開しているつもりでございます。
都市インフラの整備にしても、羽田のD滑走路を建設することでの国際的なハブ化や、環状道路では、文明工学的な視点を致命的に欠いた国を動かしてきたつもりであります。失態を重ねる現行の国政に対して、国民はあきらめすら感じるようになっておりますが、迷走する国政に羅針盤を示すこともまた、首都東京の役割であると思います。
東京には、豊穣な歴史と文化に加えて、技術や人材といった日本の強みが大都市という現場によって鍛えられ、磨かれ、集中集積をしております。天はみずから助くる者のみ助くという人間社会の歴史の公理に従いまして、みずからの強みを信じ、武器にもするならば、東京はおのずと二十一世紀にふさわしい成熟を遂げることができると思います。
ご質問にもあるように、アジアで最も魅力的な都市として世界の範となるに違いないと思います。東京が率先して変革を遂げることで、我が国の航路も切り開いていきたいと思っております。
それにしても、東京をアジアのハブにしたいとは思いますが、国そのものがもう少しやはり強い自己主張をしないと、その努力も生きてこないんじゃないかと思います。
次いで、東京の新たな産業の創出と育成についてでありますが、東京の産業力を強化していくためには、将来を見据えて、東京ならではの成長産業の育成を図っていく必要があります。
東京には高度な技術力、多様な産業の集積、洗練された大きなマーケットなどの潜在能力がありまして、こうした中から、ロボットを初め、環境、健康など、今後成長が期待される産業分野での新たな取り組みが活発に行われてきております。これらの中から、他の追随を許さない画期的な技術の創出を促進していくことが必要であると思います。
都はこれまでも、新規性の高い製品開発への支援や、産学公に金融機関を加えたネットワークの構築によりまして、将来性の高い技術の開発を支援してきました。また、先進的で高度な技術を有する企業をベンチャー技術大賞によって表彰しまして、国内外に広く紹介するとともに、成長著しいアジア市場における都内中小企業のすぐれた製品の販路開拓を支援しております。
今後とも、成長産業の育成に積極的に取り組み、東京の産業を一層開発させていきたいと思います。
例えば、先般、二年ぐらい前でしょうか、ベンチャー技術大賞を受けましたどこかの企業が開発した、川の上に浮かべて、このテーブルより小さい箱で、それが発電機になっていまして、川の流れを活用して、一種の水車みたいな発電をするわけですが、これは日本のような国では用途はありませんけれども、水の流れがあっても電気が来ていない途上国には非常に有効だと思うんです。日本の政府はそれを相手にしませんでしたが、先般、東芝の西田会長と会食しましたとき、その話をしましたら、東芝というのはウェスティングハウスを買収して、今世界で、とにかく最も力のある、原子力発電に関する企業ですけれども、その会長が非常に関心を示しまして、つまり自分のところは原発も外国に売りはするけれども、そういったものもぜひ扱いたいということで、早速その設計図を届けました。
いずれにしろ、そういったものが、国が無為にほうっておくままに海外に流出して、国の利益として還元されないというのも残念なことであります。そういうものを見て、東京は東京なりの努力をしていきたいと思っております。
次いで、新卒者の就職支援についてでありますが、長引く景気低迷の中に、新卒者の就職環境は非常に厳しい状況にありますが、これから社会に出ようとする意欲のある若者が門戸を閉ざされるようなことはあってはならないと思います。
新卒者の雇用確保のためには経済の成長が不可欠でありまして、一義的には国の責任でありますが、この問題に対して国が適切な対応をし切れないならば、若者本人にとって不幸なだけではなく、社会的にも大きな損失となります。
こういう中で、都はこれまで、就職先が決まっていない学生向けの合同面接会や、東京しごとセンターでのきめの細かい支援など、対策を強化してまいりました。
中小企業は、学生の目にとまりにくい存在でありますけれども、ものづくりの魅力にあふれておりまして、例えば経団連の調査などによりますと、これは企業によってでありますけれども、その初任給の格差というのはだんだん、ほとんど見劣りしないというところまで来ているわけでありまして、企業によりますけれども、今後とも、人材確保に悩む中小企業と新卒者を結びつける取り組みを強化するなど、新卒者の就職支援を進めてまいります。
次いで、新銀行東京の今後についてでありますが、新銀行東京は、今回の中間決算においても引き続き黒字を計上するなど、再建は着実に進んでおりまして、純資産も、追加出資の四百億円を百億円以上上回る水準を確保しております。今後とも黒字決算を継続していけば、信用度も上がりまして、現に預金もふえておりますし、その結果、セカンドステージが必ず開かれていくものと思います。
こうした展開の前提となるものとして、新銀行東京は、現在、実質業務純益の黒字化に向けて懸命に努力をしております。新銀行東京がその企業価値を高め、着実に再建を果たすよう、都は全力を挙げて支援していきたいと思っております。
次いで、八ッ場ダム建設事業の負担金についてでありますが、八ッ場ダムは、繰り返すまでもなく、首都圏の治水、利水にとって必要不可欠な施設であります。しかし、事業主体である国は、政権交代後、全く理由も示さずにダムの建設の中止を揚言しました。その後、検証するといいながら、何もせずに時間をかけるばかりで、一向に完成の見通しを明らかにしないために、一都五県は今年度の負担金支払いを留保しました。
先日、関係県の知事とともに、国交大臣と会いまして、ダム本体の早期完成を求めて、検証は来年秋よりも最大限早く、かつ我々が納得のできる結論を出すように強く申し入れました。大臣は、中止の方向性には言及せず、一切の予断を待たずに検証を進めるとともに、一刻も早く結論を得られるように努めると明言しました。私たちは、これは前任者に対する配慮もあるでしょうけれども、これは建設中止を撤回したと、要するに、白紙に戻って物を考えるというスタートに立ち直したと理解しております。
この発言は、中止の言明の撤回と解釈しておりますし、それゆえに、今年度の生活再建に係る負担金は、群馬県の地元住民の厳しい状況も踏まえまして、支払うことにしましたが、この支払いはあくまでもダム本体の完成を前提とするいわば前払いでありまして、前金を払って品物が来なければ、当然、前金は戻してもらう。これは裁判ざたになりましょうけれども、弁護士とも相談しておりますが、必ず我々が勝つはずだと思います。
ゆえにも、絶対にあってはならない、万が一、あとわずかで完成するダムを中止するなどという場合はそういうことになると思いますし、そういうことに必ずなりますし、その限りで国の責任を徹底的に追及するわけであります。
引き続き、関係県の知事と一致団結しまして、予定どおり平成二十七年度までに八ッ場ダムを完成するよう、国に強く求めていきます。
東京の場合には利水あるいは治水の問題もありますが、現にゼロメートル地帯がありますし、埼玉県のごときはかなり長い距離にわたって、つまり川の水面が渇水時でもなお、住民の住んでいる地面よりも低いという状況が続いているわけでありまして、そういうことを国も強く認識して、冷静な検証をして、事業に取り組んでもらいたいと思っております。
なお、他の質問については、教育長、技監及び関係局長から答弁します。
〔教育長大原正行君登壇〕
○教育長(大原正行君) 六点のご質問にお答えいたします。
まず、児童生徒等からのいじめ等の訴えを把握して対応するための取り組みについてでございます。
学校は、児童生徒や保護者からのさまざまな悩みや相談を受けとめるよう努めておりますが、他の機関に相談したいと願う児童生徒や保護者もおりますことから、直接、他の相談機関等に相談できるシステムを構築することは必要なことであると認識しております。
こうした認識に立って、都教育委員会では、平成十九年二月から二十四時間対応の東京都いじめ相談ホットラインを開設し、安心して学校以外の機関に相談できるよう、その電話番号を記したカードを児童生徒に配布し、周知しているところでございます。
また、寄せられた相談につきましては、その緊急性や内容に応じて、区市町村教育委員会を経由して学校に情報提供するとともに、その対応が適切に行われているか把握し、問題解決に向けた支援を行ってまいりました。
今後とも、都教育委員会は、こうした相談機関について各学校に周知を図るなど、児童生徒やその保護者が気軽に相談できる環境を整えてまいります。
また、学校の問題解決の取り組み状況の一層の把握に努め、必要に応じてアドバイザリースタッフ等を派遣するなど、学校の迅速かつ適切な対応が行われるよう支援してまいります。
次に、スクールカウンセラーについてでございます。
スクールカウンセラーは、児童生徒の不安や悩みへのカウンセリング、子育てに関する保護者への助言、援助、また、学校における相談体制を充実させる上で、極めて重要な役割を果たすものであると認識しております。
これまで、スクールカウンセラーの配置につきましては、お話がございましたように、平成十五年度に全公立中学校に配置したのを初め、都立高等学校及び小学校への配置の拡大を図ってきているところでございまして、こうした取り組みにより、配慮の必要な児童生徒とその保護者への対応が充実し、学校に対する信頼感が高まるなど、配置校における教育相談体制等の充実に効果を上げております。
スクールカウンセラーの配置拡大につきましては、現在、国は平成二十三年度予算概算要求において、小学校については拡大する方向で検討していると聞いておりまして、今後、都教育委員会としては、こうした国の動向を注視しつつ、充実に向けて検討してまいります。
次に、スクールソーシャルワーカーについてでございます。
児童生徒の健全育成上の問題の背景には、家庭環境が影響している場合もございますことから、福祉分野における専門性などを生かし、関係機関等とのネットワークを活用して、児童生徒の問題の解決に向けた支援を行いますスクールソーシャルワーカーの果たす役割は大きいものと認識しております。スクールソーシャルワーカーの配置地区では、児童虐待が疑われるケースを児童相談所による対応につなげた事例などがございまして、大きな成果を上げております。
こうしたことを踏まえまして、今年度、都教育委員会としては、関係機関と連携して課題解決が図られた事例などをリーフレットにまとめるなどいたしまして、広く全都に普及啓発を図っていく予定でございます。
お話のスクールソーシャルワーカー配置の拡大につきましては、国は平成二十三年度予算概算要求において、配置地区を拡大する方向で検討していると聞いておりまして、今後、都教育委員会としては、こうした国の動向を注視しつつ、充実に向けて検討してまいります。
次に、少人数指導のための教員加配に関する国への要望についてでございます。
基礎学力の向上を目指し、きめ細かな指導を行っていくためには、教科等の特性に応じた多様な集団を編成できる少人数指導が有効であり、このための教員加配は不可欠であると認識しております。したがって、現在措置されている少人数指導加配の定数を三十五人学級実現のための原資に転用することのないよう、今般、国に対して重点要望を行ったところでございます。
今後とも、区市町村と協力し、少人数指導加配の維持充実を強く要望してまいります。
次に、公立小中学校の冷房化についてでございます。
学校の施設設備の整備は学校の設置者が行うこととなっており、公立小中学校の冷房化については、設置者である区市町村の権限と責任において行うことが原則でございます。
ことしの記録的猛暑により、冷房化という緊急の課題が生じ、各区市町村は限られた財源の中で、その対応に苦慮しております。市長会や町村会、市議会などからも普通教室冷房化について要望があったところでございまして、夏季における良好な教育環境が早期に確保されるよう、学校設置者に対する新たな財政支援策の検討を早急に進めてまいります。
最後に、都立高等学校の特別教室の冷房化についてでございます。
都教育委員会は、都立高校の暑さ対策に加えまして、生徒の学力向上を目指した夏期の補習、講習を充実させるために、平成十九年度に全都立高校の普通教室等の冷房化を実施いたしました。また、特別教室につきましては、防音性が求められる音楽室、視聴覚教室や、OA機器を設置しているパソコン室、LL室などについて、これまで計画的に冷房化を行ってまいりました。
理科系教室や家庭科室などその他の特別教室については、普通教室と比較し利用率が低いこと、また冷房化済みの他の教室で授業を行うこともある程度可能なことから、原則として冷房化しておりませんが、教室の配置や周辺環境など配慮すべき事情がある場合には、今後とも冷房化の必要性を個別に判断し、適切に対応してまいります。
〔東京都技監河島均君登壇〕
○東京都技監(河島均君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、都営住宅などの用地を活用した高齢者向け賃貸住宅の整備促進についてでございますが、高齢化が急速に進行する中、住宅のハードと生活支援サービス等のソフトを組み合わせながら、高齢者が安心して暮らせる住まいを実現していくことが重要でございます。
都では、区市町村と連携し、こうした住宅の整備促進に努めておりますが、用地の確保が課題の一つとなっております。これまでも、都営住宅の建てかえにより生み出された用地を活用し、高齢者在宅サービスセンターなどの福祉施設の整備を促進してまいりましたが、本年九月に策定した高齢者の居住安定確保プランにおきましては、新たに都営住宅などの用地を活用し、高齢者向け賃貸住宅等を整備することとしております。
今後、都営住宅や公社住宅の建てかえにより創出した用地を活用し、地元区市や関係局とも連携しながら、多様な主体による生活支援サービスつきの高齢者向け住宅などの整備を促進し、高齢者の居住の安定確保に取り組んでまいります。
次に、都営住宅における夜間などの問い合わせへの対応と、コミュニティ機能の支援についてでございますが、夜間や休日の問い合わせにつきましては、現在、漏水などの緊急修繕が必要な場合に電話での受け付けを行っております。近年、都営住宅において単身の高齢世帯が増加していることから、今後は、家族などからの高齢入居者に関する緊急を要する問い合わせにも対応する必要があると考えております。
このため、夜間や休日の電話問い合わせの音声アナウンスを、これまでの修繕に加えて、こうした高齢入居者に関する問い合わせにも対応できるようにして、現地での確認が迅速に行えるようにしてまいります。さらに、自治会などにもわかりやすいよう、問い合わせ先を団地内に掲示するなどして、二十四時間三百六十五日を通じた適切な対応を行ってまいります。
また、コミュニティ機能の支援につきましては、触れ合いの場づくりや防災活動など、自治会によるコミュニティの活性化に向けた具体案の作成に都が協力するほか、住宅使用料とともに、共用部分の電気料金などを都が直接徴収することにより、自治会の事務負担の軽減を図る支援策の試行を来年度から予定しております。このため、先月から試行の対象となる団地の募集を開始しており、年度内には対象団地を選定してまいります。
最後に、八ッ場ダム本体の建設についてでございますが、国は昨年、一方的に八ッ場ダムの建設を中止し、その後、事業の検証方法を決めるのにことしの九月までかけ、結論を出す時期は来年秋としました。しかし、ご指摘のとおり、既に約八割まで工事が進捗しておりまして、残りわずかで完成する事業の検証にさらに一年近く費やすことは余りに遅過ぎます。
ただいま知事からの答弁にもございましたとおり、先日、一都五県知事が国土交通大臣に強く申し入れたところ、大臣は、来年秋にこだわることなく、一刻も早く結論を得られるように努めると述べております。
こうしたことから、今後、国は一日も早く一都五県が納得できる検証の結論を出し、そして直ちに本体工事に着工すべきであります。
都は引き続き関係五県と連携し、予定どおり八ッ場ダムを完成させるよう、国に強く求めてまいります。
〔産業労働局長前田信弘君登壇〕
○産業労働局長(前田信弘君) 十点のご質問にお答えいたします。
まず、ロボット産業の総合的な支援についてでありますが、ロボット産業は高い成長性と経済波及効果が期待できるため、東京都産業振興指針の中でも、都として戦略的に育成することとしております。
都では昨年、多摩シリコンバレー形成の核となる産業分野の振興の取り組みであります都市機能活用型産業振興プロジェクト推進事業におけます三本柱の一つとして、ロボット産業推進機構を立ち上げました。この推進機構には、現在、多摩地域を中心に、大手企業、中小企業、首都大学東京を初めとする大学、金融機関など百四十五団体が参加し、これら団体間の人材交流や連携を促進するセミナーやイベントのほか、具体的な共同開発に向け、ロボットを組み込んだ健康福祉分野でのビジネスモデルの検討などを行っており、今後ともこうした取り組みを着実に積み重ねてまいります。
また、ロボット技術の開発促進に向け、新製品・新技術開発助成事業等により、技術開発に必要な資金の確保をサポートするとともに、産業技術研究センターにおいて、来年五月、江東区青海に開設します新本部と多摩テクノプラザを拠点として、ロボット技術の中核をなしますメカトロニクスに関する効果的な技術支援を行ってまいります。
これらの取り組みを総合的に実施することで、ロボット産業の研究開発を着実に支援してまいります。
次に、ロボットの実用化と普及に向けた環境整備についてでありますが、ロボット技術のPRについては、産業交流展におきまして、昨年度は全国新エネルギー及びロボット技術・製品展示ゾーンを設け、全国の二十一の事業者の先進的なロボット技術を紹介いたしました。また、今年度は、ロボット産業推進機構のPRを行うブースを設置し、ロボットの展示や実演を行うとともに、同推進機構に参加する企業のロボット技術をわかりやすく紹介する冊子を作成し、配布いたしました。今後も積極的にロボット技術のPRを行ってまいります。
さらに、開発した製品の普及支援について、中小企業の新製品のうち新規性の高いものを認定するとともに、その一部を購入し、使用結果を評価することで販路開拓につなげます東京都トライアル発注認定事業を活用し、都の施設への試験的な導入を積極的に検討してまいります。このような取り組みにより、ロボット産業の発展を着実に支援してまいります。
次に、高校生に対する就職支援の強化についてであります。
高校生の就職活動支援は、学校現場がハローワークと連携して行うことが基本でありますが、高校生の就職状況は依然として厳しく、さらなる支援が必要と認識しております。
このため、六月に教育庁、学校関係者等と産業労働局で構成されます、高校生の就職支援に関する検討部会を新たに設置いたしまして、学校現場に対する支援策について検討いたしました。この検討結果を踏まえ、学校現場と密接に連携して、しごとセンターの模擬面接セミナー等の周知を図り、希望する生徒がサービスを利用しやすいようにする取り組みも開始しております。
また、卒業までの就職活動を緊急に支援するため、昨年度よりも時期を前倒ししまして、来年一月に、飯田橋のしごとセンターとしごとセンター多摩に、新卒特別応援窓口を開設いたします。その窓口には、国の協力を得て、学生専門の相談員であるジョブサポーターを配置し、高校新卒者向けの求人情報提供も新たに実施いたします。こうした取り組みを着実に進め、高校新卒者が早期に就職できるよう支援してまいります。
次に、中小企業と新卒者のミスマッチ解消に向けた取り組みについてであります。
すぐれた業績を上げ、人材を求める中小企業は多数存在いたしますが、ご指摘のとおり、学生の大企業志向などにより、就職に当たってミスマッチが生じております。
このため、新規学卒者等向けの合同就職面接会を実施し、多くの中小企業と新卒者が面接する機会を提供しており、去る十一月の開催に続き、来年二月には東京国際フォーラムで実施することといたしまして、現在準備を進めております。
また、東京しごとセンターでは、中小企業についての理解を深める企業研究セミナーや、企業の採用担当者との交流会のほか、企業で就業体験を行うインターンシップなどを実施しております。これらに加え、今年度は新たに、企業が自社の特徴や職場の魅力を新卒者等に直接アピールし、交流を図る企業説明会を実施したところでありまして、来年二月にも再度開催いたします。
また、都では、中小企業の魅力を学生に伝えるための取り組みとして、企業の現場を訪問する仕事体験ツアーを実施しているほか、去る十一月の産業交流展にあわせて開催したものづくり就職フェアでは、学生が出展企業の実情を知る魅力体験ツアー等を実施いたしました。
今後とも多様なマッチングの機会を設けるとともに、人材を求める都内中小企業の情報を新卒者等に伝えることにより、就職につなげてまいります。
次に、既卒者の就職支援についてでありますが、現行の雇用慣行のもとでは、既卒者の新卒採用枠への応募機会は限定されておりまして、卒業後の正社員就職が困難な状況にありますことから、国は十一月に雇用対策法に基づく青少年雇用機会確保指針を改正し、学校卒業後三年以内の既卒者の新卒採用枠での応募受け付けを事業主の努力義務といたしました。
これを受け、都は都内の四経済団体に要請を行い、既卒者の応募受け付けにつき積極的な対応を依頼しております。
また、十一月に開催した新規学卒者等向けの合同就職面接会には、既卒者も約四百名が参加しており、来年二月に実施します合同就職面接会におきましても、しごとセンターを通じた情報提供や広報の充実等により、既卒者の参加を促進してまいります。
さらに、来年一月からしごとセンターに開設します新卒特別応援窓口では、学校卒業後三年以内の既卒者も新たに利用対象と位置づけ、一人一人の状況に応じたきめ細かい支援を行うとともに、国の既卒者トライアル雇用制度等も活用するなど支援を強化いたします。
今後とも、厳しい状況に置かれている既卒者の正規雇用での早期就職を支援してまいります。
次に、雇用創出事業における成果と正規雇用化への支援の強化についてであります。
都は、失業者の増大に対応して、短期的なつなぎの雇用の場を提供する緊急雇用創出事業を実施し、区市町村と連携しながら、平成二十一年度までに、福祉や環境を初めとした多様な分野において約一万一千人の雇用創出など、着実な成果を上げてまいりました。
正規雇用を拡大していくためには経済の活性化が最も重要でありますが、本事業における雇用期間が最長一年間でありますことから、雇用期間が終了した方を、正規雇用など次の仕事へつなげる取り組みも必要であります。
このため、緊急雇用創出事業に従事する方に対して、都の就業支援策をまとめたパンフレットを定期的に配布し、東京しごとセンターで実施しているキャリアカウンセリングや就職支援セミナー、就職面接会等の積極的な活用を勧めるなど、正規雇用化に向けたきめ細かい支援を実施しております。
また、ふるさと雇用再生特別基金事業では、失業者を正社員として受け入れた事業主に対し、採用一時金を支給しております。加えて、緊急雇用創出事業においては、本事業での雇用期間終了後に、引き続き当該企業等に正社員として雇用された事例も見られることから、今後、本事業を受託する企業等の参考になるよう、「TOKYOはたらくネット」を通じて、こうした事例について情報を発信してまいります。
今後ともこうした取り組みを通じ、雇用創出事業に従事した方々の正規雇用化を支援してまいります。
次に、東京ジョブコーチと障害者就労支援センターのコーディネーターとの連携についてであります。
東京ジョブコーチは、企業や就労支援機関等の要請に基づいて事業場に赴き、個々の企業の実情に応じて職場環境の調整や作業能力向上に係る助言等の支援を実施しております。
一方、障害者就労支援センターのコーディネーターは、障害者の方に寄り添った生活面を含めた支援を実施しております。
現在も、ジョブコーチは必要に応じ、障害者就労支援センターのコーディネーター等と連携して企業現場での支援を実施しておりますが、今後、こうした連携を一層密にし、個々の障害者及び企業の実情に応じた雇用管理の改善を進めまして、生活面から就労定着までの効果的な支援につなげる必要がございます。このため、コーディネーター等を所管する地域の就労支援機関とジョブコーチを所管いたします東京しごと財団との間で、それぞれの取り組みについて情報交換を進めるなど、両者が一体となって連携できるよう取り組んでまいります。
次に、中小企業における障害者雇用の促進についてであります。
障害者雇用促進法の改正によりまして、障害者雇用納付金制度の対象が中小企業にも拡大する中で、早期に都内中小企業に対し障害者雇用の促進について働きかけていく必要がございます。
このため、都は障害特性や雇用に当たって留意するポイント、各種制度等をまとめた、障害者雇用促進ハンドブックを作成し、配布するほか、関係局と連携した企業向け普及啓発セミナーを実施するとともに、東京しごと財団においても中小企業を対象としたセミナーを実施するなど、障害者雇用について理解を促しております。
また、中小企業と障害者とのマッチングにつきましては、東京しごと財団を通じて、地域の就労支援機関や東京障害者職業能力開発校等と連携し、企業と障害者との出会いの場であります企業合同説明会を実施しております。
今後は、中小企業を対象としたセミナー等において周知を進めるなど、中小企業の参加拡大に努めてまいります。これらの取り組みを通じて、中小企業におけます障害者雇用を促進してまいります。
次に、改正貸金業法の事業者に対する影響の把握と対応についてでございます。
本年十一月、日本貸金業協会は、六月の法改正により、個人事業者の四分の三が希望どおりの借り入れが困難となっており、そのうちの約六割は事業資金の補てんを必要としているといった内容の調査結果を取りまとめております。
都も、貸金業に関する苦情や相談を通じまして、こうした実態を把握しておりますが、個人事業者につきましては、事業計画書等を提出することにより返済能力が確認されれば、改正法の総量規制の例外として借り入れを行うことが可能となることから、事業計画書等の作成に当たっての助言を含め、資金調達や経営に関する相談を行っております。
引き続き、国や関係団体の調査の活用や相談事例の蓄積を行うことに加え、今後は日本貸金業協会等と連携して、資金需要者の声を直接聞くなど、改正貸金業法の影響について、より一層の把握に努めてまいります。
最後に、新銀行東京に関するお尋ねでありますが、新銀行東京は懸命に再建を進めており、その結果、平成二十二年度中間決算において、当期利益は四・九億円となり、平成二十一年度通期に引き続き黒字を計上いたしました。
また、新銀行東京は、本中間決算にあわせて、二十二年度通期の業績見通しについて、当期利益を五億円の黒字と公表しております。実質業務純益については、今年度末に月次で均衡、来年度には黒字化を目指すとしておりまして、これまでの経営努力を続けることにより、これらの目標の達成は可能であると考えております。
しかし、ご指摘のとおり、新銀行東京は再建に向け重要な時期に差しかかっており、都としては、予断を許さない現在の経済、金融情勢の中にあっては、なお一層慎重なかじ取りが必要と考えております。新銀行東京がその企業価値を高め、着実に再建を果たしていくよう、都として引き続き経営の監視と支援に努めてまいります。
〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕
○福祉保健局長(杉村栄一君) 九点のご質問についてお答えを申し上げます。
まず、障害者用駐車場の適正利用についてでありますが、障害者や高齢者などが駐車場を利用しやすくするためには、福祉のまちづくり条例で定める基準に沿った整備とあわせ、その適正利用を図るための取り組みが必要であります。そのため、都は多様な広報媒体を活用し、普及啓発を行うとともに、今年度から内部障害者や歩行が困難な方なども駐車できる思いやり駐車区画の整備を、区市町村包括補助事業により支援をしております。
お話のパーキングパーミットを大都市部で導入するには、対象者の多さや駐車区画の不足などさまざまな課題がありますが、障害者用駐車施設の適正利用のための有効な方策の一つであると考えております。
このため、都は今年度の緊急雇用創出事業を活用して、障害者用駐車施設の利用実態調査を実施し、課題を整理することといたしております。この調査結果も踏まえ、障害者用駐車施設の適正利用に係る仕組みづくりについて検討してまいります。
次に、働く障害者が交流する仕組みについてでありますが、障害者が意欲を持って働き続けるためには、お話のように、互いに相談し、励まし合える場を提供することが有効であります。都が設置を促進している区市町村障害者就労支援センターにおいても、勤務後の居場所づくりやレクリエーションの企画、長期勤続者を対象とした表彰式の開催など、さまざまな企業で働く障害者の交流を支援する独自の取り組みがなされており、就労継続への意欲の喚起につながっていると聞いております。
都は、こうした支援を一層充実するよう、担当者連絡会やセンター職員に対する研修などを通じて、区市町村に働きかけ、就労支援センターを中核とした障害者の交流を積極的に進めてまいります。
次に、二十四時間地域巡回型訪問サービスについてでありますが、これは、介護保険制度の見直しに伴いまして、現在、国において議論されているサービスであり、訪問介護と訪問看護の連携により、定期的な巡回訪問に加え、利用者からの通報に応じて必要な対応を行うものであります。この仕組みにより、介護サービスと看護サービスの一体的な提供が促進され、重度の要介護者などが在宅生活を継続できるようになると見込まれております。
現時点では、制度の詳細が明らかになっておりませんが、都は今後、国の制度設計の状況を注視しながら、介護現場の実情が十分に反映されるよう、具体的な提案要求を行ってまいります。
次に、都有地の貸し付けについてでありますが、お話の医療・介護連携型高齢者専用賃貸住宅モデル事業は、高齢者専用賃貸住宅に医療や介護の事業所を併設し、入居者に対してサービスを提供する住宅であり、高齢者の住まいのあり方を検証するために、平成二十一年度から二十三年度までの事業として創設をしたものでございます。この事業におきましては、併設する医療事業所や介護事業所の整備、緊急時対応や生活相談等基本サービスを行うためのスペースの設置などに対してのみ、整備費を補助しております。
一方、都有地を事業者に貸し付ける都有地活用による地域の福祉インフラ整備事業では、その貸付対象を介護保険法など法に基づくサービスとしております。
民間事業者が整備する高齢者専用賃貸住宅の都有地活用につきましては、現行の法制度や住宅施策との整合性を図る必要があることから、モデル事業を検証しながら、今後十分な検討を行ってまいります。
次に、未利用の都有地や国有地の活用についてでありますが、都は、介護保険施設などの施設整備のため、福祉インフラ整備事業により、事業者に対し未利用の都有地を減額して貸し付けを行っております。また、国有地についても、定期借地権に基づく貸付制度が開始されましたが、事業者が介護保険施設などの整備に活用しやすくなるよう、貸付料の減額について、国に対して提案要求を行っております。
都は、今後とも地元区市町村の利用意向を十分に踏まえ、利用可能な都有地に関する情報をより迅速に区市町村に提供するとともに、国有地の一層の活用促進に向けて積極的な情報提供を行うよう、国に強く働きかけてまいります。
次に、HTLV-1に関する二点のご質問にお答えをいたします。
まず、抗体検査についてでありますが、国は抗体検査を妊婦健康診査の標準的な検査項目に追加するとともに、公費負担の対象としましたが、検査の実施に当たっては、母子感染等に関する母子保健や、医療の関係者への正しい知識の普及や、検査で感染が判明した妊婦に対する心身のケアなどの課題がございます。
都は現在、区市町村や医師会等関係機関を委員とする検討会を設置し、開始時期を初め、検査に当たっての留意点や相談、ケア体制の整備などについて検討を進めております。
今後、検討結果を踏まえ、年内にも区市町村に情報提供を行いますとともに、今年度中に母子保健や医療の関係者等に対して研修を行うなど、検査の実施に向けた必要な取り組みを進めてまいります。
次に、HTLV-1ウイルスの総合対策についてでありますが、このウイルスは、発症した場合、お話のATLやHAMといった重篤な症状を引き起こすものの、いまだ有効な治療法が確立されておりません。
このため、国は効果的な予防方策等の検討を行うHTLV-1特命チームを本年九月に設置をいたしました。現在、特命チームを中心に、患者や専門家を交え、正しい知識と理解の普及、予防、治療の研究開発、相談、診療体制などの総合的な対策について検討が進められております。
都としても、特命チームの検討状況を初め、国の動向を注視するとともに、医師会等関係機関の意見も聞きながら適切に対応してまいります。
次に、自殺対策に関する二点のご質問にお答えいたします。
まず、認知行動療法の活用についてでありますが、認知行動療法は精神疾患に対する有効な治療法の一つであり、相談機関の担当者がこの療法の考え方を習得することで、精神疾患を持つ相談者により適切に対応できることが期待されております。
都では、認知行動療法に関する知識や活用方法等について、区市町村や保健所の保健師に対する研修の中で取り上げるとともに、企業の人事担当者などを対象としたシンポジウムでも紹介をしております。
今後、認知行動療法について、保健師に対する研修等を一層充実するとともに、新たに自殺相談ダイヤルの相談員への研修カリキュラムに加えるなど、相談担当者の対応力の向上を図ってまいります。
最後に、自殺に関する相談体制についてでありますが、自殺の背景には、経済、生活問題、健康問題など、さまざまな要因が複合的に絡み合っていることから、相談に当たっては、一人一人が抱えている問題にきめ細かく対応する必要がございます。
このため、都は、本年四月に自殺に関する総合相談窓口として自殺相談ダイヤルを設置し、相談者の悩みに応じて適切な機関へつなぐことにより、問題の解決が図れるよう支援を行っております。
お話のとおり、自殺相談ダイヤルの相談件数は増加しており、開設当初に比べて、一月当たりの相談件数は約三倍となっております。こうした状況を踏まえ、今後、自殺に関する相談支援体制の拡充に向けて検討を進めてまいります。
〔生活文化局長並木一夫君登壇〕
○生活文化局長(並木一夫君) 多重債務にかかわる金融ADRの活用についてでございますが、都はこれまで、消費生活総合センターにおいて多重債務相談を行い、法的手続が必要な場合には法律専門窓口に確実につなぐなど、対応してまいりました。
本年十月から、金融分野における裁判外紛争解決手続を行う、いわゆる金融ADRがスタートし、銀行や保険などの業種ごとに、国の指定を受けた紛争解決機関が、消費者と金融機関とのトラブルについて、低廉な費用で迅速に解決する制度が整えられました。
このため、都は引き続き、消費生活総合センターにおきまして、多重債務問題の解決に向け適切に対応していくとともに、今後、過払い金返還請求などの紛争につきましては、相談の内容に応じまして、貸金業務を取り扱う金融ADR機関を紹介するなど、積極的に連携を図ってまいります。
〔総務局長比留間英人君登壇〕
○総務局長(比留間英人君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、公募による指定管理者選定の競争性確保についてでございます。
今回の選定に当たりましては、制度導入後の実績と検証を踏まえ、都の重要な施策と密接に関連する施設については、公募によらず特命により監理団体を管理者として選定できることとしました。一方、公募による選定を行う施設においては、包括外部監査の指摘などを踏まえ、競争性を確保するため、複数の施設をグループとして選定する場合の規模の見直しや、公募期間を適切に確保するなど、運用の見直しを行いました。
今後とも都の政策との連動性など、施設の特性を踏まえつつ、公募により選定を行う場合には、地理的条件や管理コストなどを考慮したグループ規模の検証を行うなど、指定管理者選定のあり方について継続的に検討し、適宜必要な見直しを進めてまいります。
次に、今回監理団体に特命した施設の検証でございます。
政策との連動性が高い施設の管理運営に当たっては、その特性を十分に踏まえ、新たな視点に基づく評価を行うことが必要と認識しております。
例えば、文化財庭園における次世代継承に向けた人づくりや、防災公園における発災時の迅速かつ機動的な初動体制の構築など、政策目的の実現のため管理者が取り組むべき事項を新たに評価項目として設定をいたします。さらに、これまでの単年度ごとの評価にとどまらず、指定期間全体の事業計画における進捗度を評価し、その結果を次年度以降の施設運営に反映するなどの手法を導入いたします。
こうした取り組みを通じて、特命選定を受けた監理団体がその役割を十全に発揮しているかを検証し、都民に対する説明責任を果たしてまいります。
最後に、小笠原航空路の開設に向けた取り組みについてでございます。
小笠原諸島への交通アクセスの改善は、島民生活の安定と産業振興を図る上で極めて重要でございます。
一方、航空路の開設には、自然環境への影響、費用対効果、運航採算性、安全性の確保など多くの課題があります。そのため、現在、航空路開設に必要な手続であるPIの実施に向け、都と小笠原村で構成する小笠原航空路協議会において課題の検討を行っており、先月開催した協議会では、気象・海象観測調査結果をもとに、空港整備に与える影響について議論をいたしました。
今後とも、小笠原特有の動植物への影響や、最新の航空機材の技術開発動向などについて、専門家の知見も活用し、積極的に課題を整理していくことが重要であると考えております。
引き続き、自然環境との調和に十分配慮した航空路の開設について検討を進めてまいります。
〔建設局長村尾公一君登壇〕
○建設局長(村尾公一君) スーパー堤防についてでございますが、スーパー堤防には、都が実施するものと、国の直轄事業がございます。国の事業は、直轄河川において、計画を超える洪水に対しても、水流により堤防本体が壊れることがないよう、河川の背後に奥行き最大三百メートル程度の堤防を整備するものであり、現在、都内では荒川、江戸川、多摩川で事業中でありますが、本年十月の事業仕分けにおいて、一たん廃止との判断を受けました。
都としては、スーパー堤防は水害から都民を守り、東京の都市づくりを進めていく上で極めて重要な事業と認識しており、十一月に国土交通省に対し事業の継続を強く申し入れたところでございます。
お話の四百年というのは、全国のスーパー堤防の完成までの期間を単純に試算したものであります。堤防事業は、河川ごとにその整備効果を考慮する必要があると考えておりまして、特に東部低地帯は、過去にたびたび水害に見舞われ、安全性の確保が強く求められていることから、重点的に整備を進める必要があり、今後とも引き続き事業推進を求めてまいります。
一方、都のスーパー堤防は、隅田川や中川などの既に高潮防潮堤の高さが確保されている河川において、防潮堤の耐震対策に加え、良好な景観の形成、親水性の向上を目的とし、民間開発などと一体的に整備するもので、奥行き最大六十メートル程度の盛り土を行うものでございます。例えば、隅田川では、市街地整備事業を実施した大川端や白鬚西地区など、既に堤防延長の約三割の区間が完成しております。
引き続き、都はこの事業を着実に実施し、安全でにぎわいのある東京の都市づくりを進めてまいります。
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