平成二十二年東京都議会会議録第十三号

○議長(和田宗春君) 四十七番西崎光子さん。
   〔四十七番西崎光子君登壇〕

○四十七番(西崎光子君) まず初めに、自然との共生について伺います。
 この十月、生物多様性条約第十回締約国会議COP10が名古屋市で開催されます。
 東京都は大都市でありながら、多摩や島しょで多様な自然環境に恵まれており、こうした自然を保全し、共生していくことは、都民全体で取り組むべき課題です。都は子どもたちを巻き込んだ生き物調査を行うなど、さまざまな情報発信をしていますが、一過性のものに終わることなく取り組みを進めていく必要があります。
 そこで、小笠原の自然保護などにも関心の高い石原知事に、東京における多種多様な生き物をはぐくむ自然との共生について、見解を伺います。
 次に、雇用問題についてです。
 これまで、女性が出産を契機に離職することや、子育て世代の男性の労働時間の長さなど、子育てと仕事の両立が困難な状況が続いており、ワークライフバランスを推進し、安心して子育てができる環境整備が求められます。
 この夏、都は、社会全体で生活と仕事のあり方について考え、実践するために、新たに東京しごとの日を設けました。企業などでは、家族を職場に招待し、お互いの理解を深めようと取り組みを進めていますが、当日は夏休み中のお子さんと家族を連れた都庁の職員の姿も見かけられました。このような取り組みを評価するとともに、今後も企業と連携し、広く社会に発信することにより、ワークライフバランス推進に向けた社会的機運を高めていくことが重要です。
 そこで、本年度の取り組みとその成果をどのように社会に発信していくのか、伺います。
 この六月から施行された育児・介護休業法は、父親も子育てができる働き方を実現するために改正されました。男性の育児休業の取得はやや増加しているものの、その取得率は低い水準にあります。幾ら制度があっても、男性が使える制度になるかどうかは、管理職を初め現場の意識や支援体制にかかっており、企業みずからが職場における両立支援のための仕組みづくりや利用促進を図ることが求められます。
 そこで、男性の育児休業の取得実態はどのようになっているのか、また都として男性の育児休業の取得促進に向けどのように取り組んでいくのか、伺います。
 有効求人倍率の低下など、労働市場が停滞する中で、ひとり親家庭を取り巻く雇用環境も厳しさを増しています。子育てをしながら家計を維持していくためには、安定的で長期雇用が可能になる資格の取得は重要です。
 高等技能訓練促進費事業は、都内では、看護師や介護福祉士等の資格修得のため、二年以上養成機関で修業する場合に支給されています。この制度は、母子世帯の母に対する就労支援としては最も効果が上がっており、希望者も多いと聞きました。
 昨年度は、促進費の金額拡大や支給期間の延長により利用しやすくなりましたが、この制度拡充は、安心こども基金がある平成二十三年度までの入学者のみに適用される時限的措置です。
 そこで、高等技能訓練促進費事業の制度拡充を今後も継続して実施するべきと考えますが、都の見解を伺います。
 厳しい経済状況の中、東京都の高等学校卒業者の就職率は、平成二十年度九二・七%から平成二十一年度九一%と、一・四ポイントの減少となりました。生活者ネットワーク・みらいは、これまでも新卒で派遣、フリーターに陥ることを防ぐために、都は新卒時の雇用を確保するとともに、卒業後も切れ目なく相談できるような学校の相談支援の強化を行うべきと主張してきましたが、知事の所信表明で、高校生及び高校を卒業した者を含めた就労支援の方向性が示されたことは歓迎するものです。
 そこで、これを受けとめ、教育委員会としては今後どのような就労支援を行っていくのか、見解を伺います。
 次に、有害物の適正処理についてです。
 現在、特別委員会で審議されている築地市場の再整備の検討の中では、課題の一つにアスベストの問題が挙げられています。参考人招致の中で、そもそもアスベスト問題を再整備の課題とすべきでないこと、また都側が資料として作成したアスベスト残存施設図及び残存量が実態と違っているという指摘がされましたが、都が急遽行ったプレス発表は懸念を払拭するものではありませんでした。市場内には民間所有の大型冷蔵庫、冷凍庫がありますが、そのアスベスト実態も明らかになっていません。改めて市場内のアスベストの実態把握をすべきと考えますが、見解を伺います。
 いつ起きても不思議ではない首都直下型地震の東京の被害想定が報告されていますが、都民の台所である市場の安全確保は重要です。公共施設であり、食品を扱う市場のアスベスト対策が移転を見越して足踏みしているとすれば、あってはならないことです。
 都はこれまでも、食品を扱い、多くの市場関係者が働く場であることを考慮して、リスクコミュニケーションに基づく除去工事が進められてきたと伺いましたが、移転か再整備かにかかわらず、一刻も早く計画的に除去対策を進め、都民の不安を解消する必要があると考えますが、見解を伺います。
 埼玉の市民団体の調査で、埼玉県、東京都、神奈川県などの百三十三カ所で、道路工事を初めとする公共工事や駐車場などにアスベストを含む再生砕石が使われていることが報道されました。
 豊洲予定地では、盛り土についても汚染が問題になっていますが、アスベストについても、工事の際に仮設用の通路や一時的な作業帯などで地盤を固めるためにまかれた採石にアスベストが混入した再生砕石がまじっている疑いを払拭できません。アスベストの含有についても調査を求めるものですが、見解を伺います。
 ことし九月、足立清掃工場を初めとして、二十三区の四清掃工場で相次いで排ガス中に高濃度の水銀が観測され、焼却炉が停止しました。一方、昨年十二月には、稲城、狛江、府中、国立の四市で構成している多摩川衛生組合で、水銀を含む蛍光灯と乾電池を、効率化と経費削減のためという名目で焼却実験をしたことが、地域の生活者ネットワークの調査で明らかになりました。こうした事態を受けとめ、東京都は有害物質である水銀を含む廃棄物についてどのように認識し、どのように処理すべきと考えているのか伺います。
 一般廃棄物に含まれる水銀については、法令に基づく処理基準や都条例はなく、二十三区の清掃工場の排ガス中の維持管理項目として、自主基準値を設定しているだけです。
 私たちの生活では、電池や蛍光灯、エアゾール缶等に水銀などの有害な金属やさまざまな化学物質が使われています。このような家庭用品は、廃棄時点での安全かつ効率的な管理システムをつくり、できるだけリサイクルし、焼却しないことが重要です。一般廃棄物の処理は区市町村の責務とはいえ、製造事業者による回収、再資源化等の仕組みづくりは、区市町村単位では限界があります。広域自治体としての東京都の責務はどのように考えるのか、伺います。
 最後に、介護保険制度の改正について伺います。
 生活者ネットワークは、介護保険に関して地域で調査を行いましたが、地域包括支援センターの機能拡充や強化を求める意見が多く寄せられました。
 地域包括支援センターは、住みなれた地域で暮らし続けるための拠点としてその機能が期待されてきました。しかし現実は、予防プラン作成に追われ、本来事業である総合相談、権利擁護への取り組みはやっと着手されたばかりで、地域のネットワークづくりはまだ今後の課題です。在宅高齢者が今後ますます増加する中で、地域包括支援センターの機能強化は重要な課題と考えますが、介護保険制度改正に向けて都の見解をお聞きし、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 西崎光子議員の一般質問にお答えいたします。
 東京における自然との共生についてでありますが、いかなる地域であろうと、人間は自然との共生なくしては存在し得ません。東京には、島しょや奥多摩のように……(発言する者あり)うるせえな。東京には、島しょや奥多摩のように動植物豊かな大自然がある一方、都心の公園や緑地にも、野鳥や昆虫などの生き物が生息するなど、多彩な自然があります。しかし、文明の進展は、それを明らかに破壊しつつあると思います。
 昭和三十年代、私がまだ若いころ、東京湾で大型のヨットのレースをやっているころには、東京湾には小さな鯨がいました。しかし、それも淘汰されていきましたが、都はこれまでも、世界に類のない小笠原の貴重な自然環境の保全、多摩の森林再生と里山の保全、また海の森の創出、街路樹の倍増、校庭の芝生化など、東京の多彩な自然を守り、新たに創出するための取り組みを進めております。
 今後とも、人間と自然とが共生し続けられる東京を目指して、これを将来の世代に伝えていきたいと思います。
 他の質問については、教育長、東京都技監及び関係局長から答弁します。
   〔教育長大原正行君登壇〕

○教育長(大原正行君) 都立高校生への就労支援についてお答え申し上げます。
 厳しい雇用情勢の中、就職を希望するすべての生徒の進路実現を図るために必要な支援を行うことは、喫緊の課題であると認識しております。
 こうしたことから、都教育委員会は各学校に対して、就職を希望する生徒を対象に、面接指導や小論文指導などの就職指導を行いますとともに、産業労働局が実施する高校生向けの求職活動支援セミナーや、厚生労働省が実施する就職ガイダンスなど、就労支援の取り組みを活用するよう指導してまいりました。
 今後ともこれらの取り組みを一層充実させ、就職を希望する生徒の支援に努めますとともに、希望していながら就職できずに卒業した生徒に対しても、引き続き、きめ細かく相談等に応じるよう、学校を指導してまいります。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

○東京都技監(河島均君) 豊洲地区の再生砕石についてでございます。
 ただいまのご質問の中で、何を根拠に豊洲においてアスベストが混入した再生砕石がまじっている疑いがあるとおっしゃるのか、よくわからないのでありますが、現在、新聞報道などで問題となっている再生砕石は、材料となるコンクリート塊と、本来使用してはならないアスベストを含むスレート材等がまぜられ、つくられたものであります。
 他方、豊洲地区の仮設用の通路等に使用している再生砕石は、事業地内の建物を除却した後の基礎部分等のコンクリートを現場内に設置した専用の破砕機により破砕したものでありまして、アスベストを含むものではありません。
 こうしたことから、お話のような調査を行う必要はございません。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

○産業労働局長(前田信弘君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京しごとの日の取り組みとその成果の発信についてでありますが、本事業は、少子化打破緊急対策の一環として、企業や個人を初め、社会全体で仕事と生活の調和を図るワークライフバランスについて考え、実践するきっかけとなるよう、今回新たに実施したものでございます。
 本年度は八月六日を東京しごとの日とし、都庁舎において、セミナーやパネルディスカッション、企業の取り組みの紹介等を内容とするイベントを開催し、五千人を超える来場者がありました。また、約五十の企業、団体及び都庁において、八月六日を中心に、従業員の家族の職場訪問を受け入れるファミリーデーを実施し、従業員とその家族を合わせ約八千人のご参加をいただいております。
 参加企業からは、従業員に大事な家庭があることを再認識し、仕事と生活が両立しやすい職場づくりの契機となったという意見が多く寄せられ、社員からも、自身のワークライフバランスについて改めて考えたとの声が聞かれました。
 これらの内容と成果については、都のホームページで公表しているほか、新聞への広告掲載や、来年二月に開催いたしますワークライフバランスフェスタなど、さまざまな機会を活用し、広く社会に発信してまいります。
 次に、男性の育児休業取得の実態と促進に向けた取り組みについてでありますが、国の平成二十年度の調査によれば、育児休業制度を利用したいと思う男性の割合は三割強となっております。一方、育児休業の取得率は対象者の約一・二%であり、取得期間は一月未満が半数以上となっております。
 これについて、国のレポートでは、制度を利用したいと思っているものの、実際には利用していない男性が少なからずいると、このように指摘しております。
 こうしたことの背景には、育児休業中の賃金保障の低さや育児休業者の代替要員確保の困難さなどがあると考えられます。
 このため、都は平成十八年度から、雇用保険法に基づく育児休業給付の支給率の引き上げについて国に提案要求を行ってきております。また、平成十九年度には、企業における育児休業者の代替要員確保を支援するため、男性、女性ともに対象とした育児休業応援助成金を創設いたしました。加えて、平成二十年度から、両立支援に関するすぐれた取り組みを行っている中小企業を東京ワークライフバランス企業として認定し、その事例を広く紹介しておりまして、その中で、男性の育児休業や子育て参加に関する具体的取り組み事例も発信しております。
 今後とも、こうした施策によって希望する男性の育児休業取得が進むよう努めてまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

○福祉保健局長(杉村栄一君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、高等技能訓練促進費等事業の制度拡充についてでございますが、本事業は、母子家庭の母が看護師や保育士など、経済的に自立に効果的な資格を取得するため、訓練を受けている期間において訓練促進費を支給する事業であり、昨年度、促進費の増額や支給期間の延長が行われました。
 この制度拡充は平成二十三年度までの時限措置となっていることから、都は、他の自治体と連携し、平成二十四年度以降も制度拡充を継続するよう、国に要望いたしております。
 次に、地域包括支援センターの機能強化についてでございますが、地域包括支援センターは、高齢者や家族からの相談に応じるとともに、医療や介護などのサービスが適切に提供されるよう、関係者の連絡調整を行う機関でございます。しかしながら、要支援者に対する介護予防ケアプランの作成など、一部の業務に多くの時間を割かれ、高齢者の実態把握や地域のネットワークづくりなどの役割を十分に果たせておりません。
 介護予防ケアプランの作成につきましては、外部への委託が認められているものの、委託件数が制限されているため、業務負担の軽減につながらない状況にございます。そのため、都は、センターが地域の拠点として機能を発揮できますよう、この制限の撤廃を国に緊急提言を行っております。
   〔中央卸売市場長岡田至君登壇〕

○中央卸売市場長(岡田至君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、築地市場のアスベストの実態把握についてでございます。
 築地市場では、昭和六十三年度以降、都が定めたアスベストに関する対応方針に基づき、都有施設を対象として、室内外に直接露出している吹きつけアスベスト等の有無を調査し、除去が必要なものは既に処理してまいりました。また、市場関係業者が所有する大型冷蔵庫などにつきましても、都の施設と並行いたしまして、直接露出している吹きつけアスベスト等の有無を調査いたしましたが、これまで発見されておりません。
 現在、都は、大気中のアスベスト濃度の測定による監視を行っておりますが、これを継続するとともに、今後は、場内施設について、都と市場関係業者が協力して、アスベスト含有建材の劣化状況等を随時点検することで、実態把握に努めてまいります。
 次に、築地市場のアスベスト対策についてです。
 築地市場では、都の対応方針に基づき、室内外に露出している吹きつけアスベスト等を、市場関係業者の協力を得ながら、これまでに約三万二千平米、除去してまいりました。現在、場内に残されておりますアスベストは、状態が安定しているものや密閉されたもので、空中に飛散する危険性が低いため、都の対応方針から、直ちに除去を要しないとされてございます。また、場内では、大気中のアスベスト濃度の測定を定期的に実施しており、飛散していないことを確認しております。
 一方、築地市場で営業しながら残されたアスベストを除去する場合は、その分布範囲が広く、業務に密接な区域にあるため、工事によりまして、売り場や通路等が大幅に分断されるほか、店舗や駐車場等の仮移転先が確保できなくなるなど、市場業務に重大な支障が生じます。したがいまして、残されたアスベストの除去につきましても、都の対応方針に基づき、施設が撤去される新市場建設の際に除去することが、市場業務への影響や市場関係業者にかける負担が最も少なくなるため合理的であります。
 なお、新市場建設による施設撤去の前でありましても、アスベストを含む建材に劣化等が生じ飛散のおそれがある場合や、施設の改修等を行う際にアスベストが確認された場合は、これまでどおり市場関係業者の協力を得ながら、必要な箇所のアスベストの除去等を行ってまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

○環境局長(大野輝之君) 廃棄物処理に関する二点のご質問でございます。
 まず、水銀を含む廃棄物の処理についてでございますが、水銀は有害物質であり、大気中への放出を防ぐため、焼却処理は適切ではございません。各区市町村におきましても、水銀を含む蛍光管、血圧計、体温計は、有害ごみまたは不燃ごみとして処理し、焼却を行わないよう、ルールを定めております。
 都は、区市町村と連携し、都民や事業者に対し、改めて水銀を含むごみの正しい出し方を周知するなど、清掃工場への不適正な搬入の防止に努めてまいります。
 次に、製造事業者による回収等の仕組みづくりについてでございますが、有害物も含め、廃棄物につきましては、製品の生産、使用、廃棄までを一貫したサイクルとしてとらえ、拡大生産者責任の考え方に基づく対策を進めることが重要でございます。このため、都はこれまでも、国や関係業界に働きかけ、環境に配慮した製品開発や、製造事業者等による自己回収を推進してまいりました。
 今後とも、一般廃棄物の処理を担う区市町村と連携し、品目に応じた適正なリサイクルを推進してまいります。

○議長(和田宗春君) 以上をもって質問は終わりました。