○副議長(鈴木貫太郎君) 十七番栗林のり子さん。
〔十七番栗林のり子君登壇〕
○十七番(栗林のり子君) 初めに、幼児教育について伺います。
本年四月より、都教育委員会は、小一問題を予防、解決するため、公明党の提案を受け、教員加配を行い、その効果検証を行うことは高く評価するところであります。このような取り組みとともに、就学前教育、つまり幼児教育の中身の充実も、より重要な時代に入ったといえます。
都はことし三月に、就学前教育プログラムを完成させ、都内すべての保育所、幼稚園に配布し、その内容を周知する説明会も開催したようであります。また、新しい学習指導要領において、言語活動の充実ということに力を入れると聞いております。
我が国には、代々受け継がれてきた美しい日本語があり、童謡や物語などの中に満ちています。それを楽しみながら読むことにより、日本人としての情緒を養い、生き方を学ぶことができてきたのです。しかし、こうした情緒もすっかり薄れ、反対に暴力行為の低年齢化という恐ろしい事態です。
文科省のデータによると、昨年度の全国小中高の暴力行為は、過去最多の六万九百十三件。特に小学校の加害児童が、二〇〇六年と比べ約二倍となっており、教師への乱暴など、個人による衝動的な暴力がふえているのが近年の傾向です。感情のコントロールができない、コミュニケーション能力不足などと、キレる子どもの低年齢化が大きな問題です。
フランスの文豪アンドレ・マルロー氏は、国滅びるときは、その国民がみずからの文化、歴史を忘れるときにほかならないと指摘をしています。こうした日本の文化、歴史に着目をし、私の地元世田谷区では、美しい日本語教育をテーマに教育特区の認定を受け、二〇〇七年四月から、新教科「日本語」の授業を全小中学校で開始しています。これが小学校一、二年生用の教科書用図書です。
鉛筆の持ち方から始まり、日本語の響きやリズムを楽しむ俳句や漢詩、短歌、詩などがおさめられています。私が訪ねたある小学校では、この教材の中にあります宮沢賢治の雨にも負けずを、全員が暗唱に挑戦していました。家に帰ってから練習する子どもに刺激を受け、保護者も暗唱運動に参加し、最後は地域を巻き込んでの運動になっていました。文字どおり、雨にも風にも負けないたくましい心を植えつける第一歩となっています。
幼児期においても、例えば、絵本や民話を通じて感じたことを言葉にあらわし、言葉による伝え合いができるような教育が大切であると考えますが、所見を伺います。
現在、保育所や幼稚園において活用できる就学前教育カリキュラムを作成していると聞いています。このカリキュラムの内容と、今後の普及啓発の取り組みについて伺います。
次に、東京都子ども家庭総合センターについて伺います。
平成二十四年に完成する子ども家庭総合センターは、子どもと家庭を総合的、一体的に支援する拠点として開設される予定であり、福祉保健局所管の児童相談センターと児童会館の一部機能、教育庁所管の教育相談センター、そして警視庁所管の新宿少年センターが集まり、児童虐待、不登校、非行等の問題に取り組むという大変期待される施設です。
平成十五年より、全国に先駆けてこのような取り組みを始めている、福岡市子ども総合相談センターえがお館を先日視察してきました。
複雑多様化してきている相談などに総合的に対応するため、青少年センターには、福岡県警の警察官が配属され、児童相談所には、スクールソーシャルワーカーが配属されていました。同じフロアに各機関が配置されていることから、常に連携をとり、すぐに問題解決に当たることが可能になったとのことです。電話相談も二十四時間対応で行っており、年間約一万件以上の相談が寄せられるそうです。また、女の子専用電話相談も設置されており、思春期の悩みや問題に、女性の相談員が対応するという配慮がされていました。
都においても、東京都子ども家庭総合センター基本構想でうたっているように、深夜も含め、二十四時間三百六十五日、緊急時にも、より迅速な対応ができるよう取り組みを強化すべきと考えますが、見解を伺います。
何といっても、相談が防止のかぎです。居場所をなくした子ども、そして不安を抱える親からのSOSをキャッチできるよう、今後は、相談範囲の拡充や複雑なニーズに多様な支援ができる体制をほかの機関とも連携をし、東京は、児童虐待ゼロを目指すとの決意で構築するよう要望いたします。
次に、結婚活動支援について伺います。
未婚、晩婚化が進んでいるといわれている現在、なぜこれまで結婚しなかったかとのアンケートの問いに、いつもトップに上がるのが、出会いがないからという理由だそうです。しかし、現在は一人でも、いつかは結婚したいと願う独身の割合は約九割に上っています。結婚するための活動を婚活と呼ぶようにもなり、この言葉もすっかり定着してきました。そのようなことが背景に、地方自治体でも出会いの場の提供に一歩踏み出すところがふえてきました。
秋田県、群馬県、富山県、奈良県、徳島県、長崎県などや、また都内でも、品川区、文京区など、区市町村の取り組みもふえ関心が高まりつつあります。
このうち品川区では、品川マリッジサポート事業をスタート、定員四十人に百人以上の申し込みがあり、大変好評のようです。年齢的には、三十歳代、四十歳代が多いとのことです。申し込みの主な理由は、区が行うので安心、出会いのきっかけとなるということだそうです。
婚活に自治体が介入するべきではないという反論もあります。しかし、そうはいってはいられません。このままだと、二〇三〇年には、全世帯の三七・四%を単身世帯が占め、五十代、六十代男性の四人に一人がひとり暮らしになるといわれています。単身世帯の増加は、社会に大きな影響を与えることからも対策は重要です。
国の安心こども基金による特別対策事業の中に、少子化対策の一つとして、結婚意欲を持った若者の出会いの場の提供や結婚相談員の配置等が対象事業になっています。今回は、基金の募集期間も短く、利用が間に合わない自治体も多いと聞いています。次年度も引き続き、この安心こども基金事業が予算化されるよう国に要望するとともに、区市町村が取り組む婚活資金をバックアップし、今後は検討会などの設置も要望いたします。
また、未婚の若い世代の中には、乳幼児と接した経験がほとんどなく、子育ての大変さだけが意識されている場合や出産により女性の就労が中断されることから、子育てと仕事の両立は困難と考え、結婚、出産自体に消極的になっている人がいるとも聞きます。次世代育成対策、少子化対策を考えるには、このような結婚前の若い世代の意識を変えていく取り組みも必要と考えますが、見解を伺います。
次に、障害者の就労支援について伺います。
世界的に有名になった盲目のピアニスト辻井伸行さんは、都立久我山青光学園の出身です。障害があっても文化、芸術の世界で才能を伸ばし、活躍し、また、さまざまな職業で能力を発揮できる環境は大変重要です。
今月、障害者雇用・就労推進連携プログラム二〇一〇が策定され、連携プログラムの五十三事業も拡充し、障害者の一般就労に向けた取り組みが前進したことは高く評価するところです。障害があっても、きちんと仕事につき、収入を得て納税者となることを目標にしている方は多くいます。障害者の潜在的な力を引き出し、自立と社会参加を大きく前進させ、活躍の場を拡大していくことは、東京の活力を高めていくことにつながります。
そこでまず、都として、今後の障害者の就労支援への取り組みに向けた知事の決意を伺います。
就職した障害者と雇用主、双方のパイプ役となるのがジョブコーチであります。このジョブコーチの役割が大変重要であります。都の障害者雇用促進策、とりわけジョブコーチ事業についての見解を伺います。
また、福祉的就労で、低い工賃の作業所にも、少しでも工賃アップが図れるよう支援が必要です。都内作業所のすぐれた商品を、展示即売会で広く都民に紹介し、販路を拡大することが必要です。
フランスには、戦争未亡人と障害のある女性で構成された団体があり、器用な手仕事でつくられた刺しゅう入りのテーブルセンターや小物が、有名デザイナーたちの協力で高級ホテルや大使館などで使われるようになったことから、高い値がつき、結果、高級品としてのブランドと、それぞれが高収入を手にするようになるのです。このように、障害者が福祉的就労に従事する作業所の工賃アップを支援する独自の対策も必要と考えますが、見解を伺います。
次に、都民の利便性向上の観点から、都税納付手段の多様化について質問します。
現在、一人が複数のクレジットカードを普通に持ち、さまざまな場面で、カードによる決済を活用しています。ポイントがたまりメリットがある上、自宅でインターネットに接続し、カードの番号を入力するだけで、簡単に買い物や各種支払いができてしまいます。
都は既に、身近なコンビニで都税納付ができるようにするなど、納税者の側に立った取り組みを積極的に進めてきています。今後は、カード決済が普及している状況を踏まえ、クレジットカードによる都税納付を早急に導入することが必要と考えます。
例えば、毎年五月末が納付期限となっている自動車税の課税件数は三百万件に上ります。一件当たり平均四万円になっています。納付期限の直後には、ボーナスの時期があり、クレジットカードによる分割納付が使えれば家計への助けにもなります。クレジットカードを使っての都税納付について、都の具体的な取り組みを明らかにすべきであります。
見解を求め、質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 栗林のり子議員の一般質問にお答えいたします。
障害者の就労についてでありますが、障害者の就労を支援することは、障害者が尊厳を持ってみずからの人生を決定できる足場を築き、一人一人が持つ人間としてのはかり知れぬ可能性を引き出すことになるはずであります。
このため、「十年後の東京」計画では、三万人以上の雇用創出という目標を打ち出し、福祉保健、教育、労働の各分野が連携し、企業などの協力も得て、障害者の自立に向けた多角的な取り組みを進めております。
現在、厳しい経済状況にもかかわらず、障害者の雇用数は着実に伸びております。今後とも、多様な企業が集中、集積する東京の持つ強みを生かしながら、障害者の就労支援の充実強化を図り、障害者が地域で自立して暮らせる社会を実現していきたいと思っております。
なお、私、この問題については、かつて公明党の中嶋幹事長から、福島智さんという、余りご存じの方はないと思いますが、あるすばらしい人物を紹介され、この人は今、東大の先端技術の関係の研究所の教授をしておりますが、小学校のころからこの人は、片方の目ずつ、要するに失明して、さらに高校に入って、また片方の耳ずつ、要するに聴力を失って、完全に全盲全ろうになる。これはヘレン・ケラーのように、生まれつき熱病で、その記憶のなかったころに全ろう全盲になるのとは違って、きちっとした意識を持ちながら、そういう過酷な人生を経て、最後は、結局周りの人たちが理解してサポートしたために、かつての都立大学に初めて、全ろう全盲の人を迎える制度ができまして、受験も許されて、そして、それを卒業したあと、お母さんが、指で点字を打つ指点字という方法を瞬間的に子どものために思いついて、それが今全国に普遍しているわけですけれども。そして金沢の大学の教授になり、そしてその実績を認められて、東大の研究所に呼ばれて、准教授から教授になった。これは本当にすばらしい事例だと思います。
この人のおかげで、東京都思いつきまして、台東区に、まだまだ隠れてたくさんやれるはずの全ろう全盲の方々に、互いにコミュニケートして、行政もそういったものを大変手厚く、何というか、導く手当てをする。そして、人生の機会を与えるそのよすがになればいいと思ってセンターをつくりました。まだまだこれビビッドには活躍しておりませんが、しかし、とにかくこの全ろう全盲の方々、非常に悲惨な人生を送っている方々が、どこにどれだけいるかというのはまだ全国に把握できない。とにかく東京でも千数百人の方がいらっしゃる。こういった方が、やっぱりどれだけ人間としての可能性を示すことができるかと、この福島さんは示されたわけでありまして、私は最近、小説に仕立てて書いたのですが、これは本当に、周りが理解をしサポートすれば、とんでもない才能が、実は、障害者の中に埋蔵されていることを見事に明かした人物だと思います。
他の質問については、教育庁、関係局長から答弁いたします。
〔教育長大原正行君登壇〕
○教育長(大原正行君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
まず、幼児期における言葉の教育についてでございます。
近年、幼児については、他者とのかかわりが苦手である、自分で自分の感情を抑制できないなどの課題が指摘されていることから、経験したことや考えたことなどを、幼児が自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、言葉による伝え合いができるようにしていくことが重要でございます。
こうしたことから、都教育委員会は、昨年度、就学前教育に関する研究開発委員会を設置し、絵本や物語、詩などをもとに、自分の思いや考えを言葉で伝え合うなど、幼児の表現する力を養うための指導事例を作成して、保育所や幼稚園、小学校などを対象に説明会を行い、その趣旨の徹底を図ってまいりました。
また、乳幼児期における絵本の読み聞かせの重要性を示した保護者向け資料「乳幼児期を大切に」を作成し、乳幼児健診などの機会をとらえて、乳幼児の保護者に配布してまいりました。
今後とも、都教育委員会は、関係局及び区市町村教育委員会と連携し、幼児期の言葉による伝え合いを大切にした教育を推進してまいります。
次に、就学前教育カリキュラムについてでございます。
都教育委員会は、ゼロ歳児から五歳児の子どもの発達や学びの連続性を踏まえ、各年齢に応じた保育、教育の内容や方法などを示す就学前教育カリキュラムを、今年度開発しております。
具体的には、例えば、あいさつをする、決まりを守るといった、社会生活における望ましい生活習慣や態度、感じたことや考えたことを言葉で表現する力、身近な環境に対する探究心や豊かな感性など、保育所や幼稚園において、小学校生活の基礎となる力を幼児が身につけるためのカリキュラムでございます。
今後、平成二十三年三月に、都内のすべての国公私立の保育所や幼稚園及び公立小学校を対象に、就学前教育カリキュラムについての説明会を、関係局と連携して実施するとともに、来年度には、本カリキュラムを活用した保育所や幼稚園における取り組み事例に関するシンポジウムを開催いたしまして、全都にその成果を広げてまいります。
〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕
○福祉保健局長(杉村栄一君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
まず、仮称でございますが、子ども家庭総合センターにおきます緊急時等の対応の強化についてでございますが、都では、児童虐待に迅速に対応するため、児童相談センターに、土日祝日も相談窓口を設けまして、三百六十五日、切れ目のない相談体制を確保いたしております。また、夜間に緊急の対応を要する虐待通告などがあった場合は、児童相談センターから所管の児童相談所職員に連絡し対応することといたしております。
子ども家庭総合センター(仮称)における具体的な対応策は、現在検討中でございますが、緊急時に、より迅速な対応ができますよう取り組みを強化してまいります。
次に、結婚前の若い世代への取り組みについてでございますが、結婚や出産は、個人の価値観や人生観に深くかかわるものでございますが、結婚や出産を望む人たちが安心して家庭を築き、子どもを育てることができる環境を整えることは、社会全体で取り組むべき重要な課題でございます。そのため、都では、少子化打破緊急対策といたしまして、保育、医療、教育はもとより、働き方の見直しや住宅など、各分野にわたりまして、子育ての不安を解消するための具体的対策に総合的に取り組んでおります。
また、子育て応援とうきょう会議では、大学生等がワークライフバランスについて考える活動などを行っておりまして、こうした取り組みを通じて、若い世代が、結婚や子育てへの理解を深めることを支援してまいります。
最後に、作業所の工賃アップについてでございますが、作業所で働く障害者の工賃を引き上げるためには、作業所の意識改革や経営努力を促すとともに、意欲のある作業所の取り組みを支援する必要がございます。そのため、都は、平成二十一年度に東京都工賃アップ推進プロジェクトを策定いたしまして、生産性の向上に取り組む作業所の設備整備に対し補助を行いますとともに、販路拡大のために、複数の作業所による共同受注等を進める区市町村の取り組みを、包括補助事業を通じて支援をしてきました。
今年度は、作業所の製品の展示即売会を初めて開催をいたしまして、実践的な展示販売の経験を通して、作業所の利用者や職員の意識改革を図りますとともに、新たな購買層の開拓を目指し、多くの都民や企業に製品の魅力をアピールしてまいります。
今後とも、区市町村と連携をしながら、こうした取り組みを進めまして、作業所の工賃アップを支援してまいります。
〔産業労働局長前田信弘君登壇〕
○産業労働局長(前田信弘君) 障害者雇用促進に向けた取り組みについてのご質問にお答えいたします。
都は、障害者雇用を促進するため、普及啓発に加え、賃金の一部を補てんする助成金の支給による中小企業への支援や、障害者の職業能力を高めるための職業訓練等の施策を実施しております。
ご指摘の東京ジョブコーチ支援事業は、この障害者雇用促進の一環として、平成二十年度より開始したものでございます。
この事業は、研修により専門の知識を身につけたジョブコーチが、障害者を雇用する企業に出向き、障害者の職場への適応及び定着を支援するものであり、利用企業からは、障害者個々人の得意、不得意を見きわめた助言をもらえたなどの評価をいただいております。
今年度は、ジョブコーチの人員を、昨年度の五割増しとなる六十人としたほか、新たに進行管理や困難事例への対応を行う統括コーディネーターを三名配置いたしまして、実施体制を充実させました。今後とも、ジョブコーチ事業を初めとした各種の施策を着実に実施し、障害者の雇用促進に努めてまいります。
〔主税局長荒川満君登壇〕
○主税局長(荒川満君) クレジットカードによる納税についてお答えいたします。
クレジットカードは、現在、都民生活に広く普及しており、これを都税の納付に導入することは、都民の利便性を高めるとともに、納税率の向上に資するものであると考えております。
しかし一方で、導入に当たっては、都や納税者が負担する手数料について、コンビニや金融機関などを利用した他の納付手段との均衡を図ることが必要であるなどの課題がございまして、これまで検討を重ねてまいりました。
その結果、都や納税者に新たな手数料負担が生じるものの、双方に大きなメリットがあることを踏まえ、税額が比較的少額であり、手数料が余り高くなく、かつ、納税件数が多く都民の暮らしに身近な税目となっている自動車税を対象に、平成二十三年度から導入したいと考えており、現在、詳細を詰めております。これからも納税者の利便性の向上に努めてまいります。
○副議長(鈴木貫太郎君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩をいたします。
午後七時二分休憩
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