平成二十二年東京都議会会議録第十三号

   午後五時十分開議

○議長(和田宗春君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 七十六番松下玲子さん。
   〔七十六番松下玲子君登壇〕

○七十六番(松下玲子君) 保育所入所待機児童数が七月に発表されました。発表データは、保育サービスの中に認証保育所等を含む新定義で過去最高の八千四百三十五人です。しかし、認証保育所は、その設立理念において保育に欠ける要件を求めておらず、実際には待機児童解消の受け皿となり得てはいますが、保育を必要とするすべての人を対象にしており、入所の優先順位も定めていません。今のまま優先順位を定めず、保育を必要とする利用者と施設の自由契約を続けている限り、認証保育所を幾らふやしても待機児童は解消しないと考えます。
 ことしの四月に発表された東京都保育計画には、計画が目指すものとして、保育を必要とする人すべてが必要度に応じてサービスを利用できるよう、保育サービスの拡充に取り組んでいますと示されました。
 では、必要度に応じてとは、どういうことでしょうか。また、認証保育所では、どのように必要度を定め、サービスを利用できるようにしているのか伺います。
 認可保育所のように必要度の基準を定めてサービスを利用するようにしなければ、どんなにサービスを拡充しても充足はしません。私には、現在、認証保育所が必要度の基準を定めているようには思えません。保育計画で保育サービスの拡充を目指すというのであれば、どれくらい必要なのかを明確にすべきです。必要量と整備すべき量とを両方一体で示さずに、必要ならば整備するでは、砂漠に水をまくようなもので、どんなに保育サービスを拡充しても待機児童は解消されません。
 都として、保育の必要量をどのくらいと定め、それをいつまでに整備していくのか伺います。
 私は、認証保育所制度を肯定し、十三時間開所などは評価していますが、早急に待機児童を解消するためには、解消されるまでの間、一部、運用を見直しすべきであると考えます。
 旧定義の待機児童数は公表されてはいませんが、調べたところ一万七千八百四十八人と新定義の二倍以上、驚くべき数です。旧定義と新定義の差の内訳、つまり、認可に申し込み、認可に入れなかった人たちがどうしているのかを分析すると、最も多い数が認証保育所の四千四百四十六人です。
 しかし、認証保育所の定員は約一万七千人のはずです。認可保育園の入所希望をせずに、直接、認証保育所に入所している人が約一万二千人もいる現状です。
 現状を把握するために、認証保育所の利用者の実態や状況について調査を行うべきと考えますが、見解を伺います。
 実態を調査して、短時間利用が可能であれば、新制度の定期利用保育に移行するなど、政策誘導すべきです。もちろん、認可は最初からあきらめてしまい、申し込みをせずにいる人もいるかもしれません。短時間利用している人も、幼稚園のかわりに利用している人も、いろいろな人がいるかもしれませんが、調査をしなければ実態はわかりません。
 認証保育所が、福祉サービスたる保育サービスであり、待機児童が新基準でも八千人を超えた危機的な現状、どこにも入れずに本当に困っている人がいる以上、本当に必要としている人から利用できる仕組みに変えるべきであると私は考えます。
 保育サービス全体で待機児童解消に取り組むのであれば、さきにも述べたとおり、認証保育所の利用者実態調査を行い、定期利用希望者を新たな制度に誘導していく必要があると考えます。認証保育所約一万七千人の定員に対して、実際に待機児童解消としての役割を果たしている数が四千人の現状をかんがみると、待ったなしの待機児童解消には、認可保育園の定員増や分園の設置を進めることが急務と考えます。
 待機児童解消のためにつくられた安心こども基金は今年度末終了予定ですが、次年度以降も継続するよう求めていくべきと考えますが、見解を伺います。
 安心こども基金ではなく待機児童解消基金と名を変えて、より目的を明確にして継続していただくよう求めていただきたいと要望します。
 学童クラブ事業ガイドラインは、平成十八年七月、七万人の児童が通う学童クラブのサービス向上を目指して策定されています。しかし、望ましいサービス水準の提示にとどまっており、強制力はありませんでした。
 今回、利用者のニーズにこたえ、小一の壁を超えるためにも、補助要件に全国に先駆け生活スペースに有効面積一・六五平方メートルを明記したこと、開所時間を午後七時以降までとする新たな都型学童クラブ事業の制度が創設されたことにより、政策誘導型のガイドラインが新たに作成されたとも受け取れると考えます。
 学童クラブでも、保育園同様、待機児童が問題となっていますが、質の確保も、子どもを預ける親たちは当然願っています。施設全体の約七割を占める公設公営は制度対象となっていませんが、小一の壁の解消を目指す都型学童クラブ事業制度の影響は、どのように考えているか見解を伺います。
 今後、新制度の影響や効果を検証していただき、その上で、学童クラブの質を高めるため、小一の壁を克服するための補助事業や政策誘導型の補助要綱も伴うガイドラインを公設公営に対しても作成していただきたいと要望し、次に移ります。
 次に、青少年健全育成について伺います。
 知事所信表明では、子どもたちはインターネット上にはんらんする有害な情報や悪質な性行為を描いた漫画等を容易に手にすることができる現状にあり、これを放置すべきでないことはだれの目にも明らかです、現在、各方面と議論を重ねており、早期に青少年健全育成条例の改正を議会に提案したいと考えておりますと、発言がありました。
 悪質な性行為を描いた漫画等とは、具体的にどのようなものでしょうか。また、これらを容易に手にすることができる現状とは、どういうことを指しているのか伺います。
 知事の発言をそのまま読むと、容易に手にすることができる現状とは、自主規制の対象図書が区分陳列されていないから子どもが容易に手にすることができるという現状なのか、自主規制すべきと思われるものが規制されていない現状が問題なのか、どちらなのかわかりかねます。区分陳列されていないのであれば、するように指導すればよいことであり、まさに知事のいうとおり、各方面と議論を重ねているさなかに、自主規制や不健全図書指定制度の取り組みなど、これまでの取り組みを否定するとも思えるような発言、問題である状況に東京都内じゅうがなっているとも受け取れる発言は、事実とは異なるのではないかと考えます。
 そもそも、何より現状が大問題であるという、都民から声が多数上がっているのでしょうか。図書類の現状を改善すべきという都民からの具体的な意見は、どれくらい寄せられているのか、青少年問題協議会二十八期への諮問から今日までの期間でお答えください。
 青少年健全育成のため、子どものために条例改正を行おうとするのであれば、まず第一に、現状のままでは子どものためにならない、改善すべきだという意見が都民から多く寄せられ、次に、では現状を改善するためには、現行条例の運用で対応するのか、条例を改正しなければできないのかは方法論で意見が分かれるところであるため、各方面と議論を行い、都民にも判断してもらわなければならないと考えます。
 もし仮に、不健全図書指定が減少している現状ではあるが、自主規制の取り組みがなされていないことが問題だと考えるのであれば、健全育成審議会に不健全図書指定の諮問を諮り、もっと審査してもらえばよいのではないでしょうか。
 青少年への性的刺激が著しく高いものに該当すると委員が判断すれば指定は可能であり、現行条例のまま運用することに問題はないはずであると考えますが、いかがですか。
 第一回定例会で議会に提出された青少年健全育成条例改正案は、継続審議を経て第二回定例会で反対多数で否決となりました。
 条例改正案のもととなっている青少年問題協議会の答申案には多くのパブリックコメントも寄せられ、その多くが答申案に反対のものでした。議会の条例改正案の否決、条例改正案に反対であった多数の都民の声、自主規制に取り組んできている業界や作者の声、どこまで真剣に、これらの現状や声に耳を傾けているのか疑問と思われることがあります。
 この間、否決となったはずの青少年健全育成条例改正案や漫画を用いて警察署で警察関係団体を対象に説明会を行っているようですが、説明会の名前と目的、何のために行っているのかお答えください。あわせて、説明会を何回、都内のどの地域で行ったのか伺います。
 漫画を示して説明し、あわせて、否決されたはずの条例改正案を説明するということは、現状が問題で、改善するためには条例改正するしかないという意図を説明しているのではないかと私は考えました。そのように都民に思われても仕方がないと考えます。これでは、余りに偏ってはいないでしょうか。説明会を開くのであれば、もっとオープンな形で、さまざまな意見に耳を傾ける姿勢を持つべきです。
 改正案の審議過程で、総務委員会では参考人招致、質疑も行われました。有識者の方々も、賛成、反対と全く異なる意見をお持ちでした。改正案を再度提出されるのであれば、現在の協議会の委員をかえ、賛否両論、しっかりと議論できる会にかえた上で答申を出し直すところから始めるべきであると考えますが、見解を伺います。
 毎期二年ごとに協議会ができており、第二十八期の任期は間もなく終了します。まさに今、十二月には協議会を再編する時期のはずです。
 青少年の健全な育成はだれもが望むことであり、異論はないと考えますが、目指すべき健全な育成の姿や方法論をめぐって議論が分かれるところです。条例改正なのか、現行条例に基づく自主規制なのか、子どもの育ちという視点と、芸術文化の振興という視点を対立させることなく、どちらも重要なテーマであり、首都東京として、都民とともに考えていかなければならないと考えます。
 また、子どもの育ちを考える上では、青少年の定義が十八歳未満と広く、ゼロ歳から十七歳までの子どもが一くくりであることには違和感を覚えます。子どもの年齢に応じた多方面からの取り組みが必要であると考えます。
 実際に都が、この間二回行っている関係者との意見交換会でも、出版業界は区分陳列のためのさらに詳しいレーティングができるか検討に入ったと報告があったようです。業界や保護者、教育関係者との意見交換は重要であり、今後も続けていただきたいと思いますが、意見交換会の目的と、会で出た意見を今後どのように活用しようとしているのか伺います。
 条例改正案を今後再提出するお考えであるならば、各方面から出た意見に耳を傾け、反映させていくべきであると述べ、最後に、外かく環状道路地上部街路、外環ノ2について伺います。
 これまでも何度も質疑を行っていますが、いまだに外環ノ2の必要性を検討するための基礎的なデータは提示されていない現状です。しかも、そもそも外環ノ2に関する都の方針は、現在策定中のはずです。
 三月の予算の質疑で、将来に向けて地域の望ましいまちづくりを進めるためには、生活道路への通過交通が流入することや、延焼遮断帯が未形成であるなどの問題を解決することが必要であり、外環ノ2を廃止する場合には、外環ノ2が果たす役割の代替機能が確保されることが必要であるとの考えが示されました。
 これは、あくまで都の方針ではないかと私は意見を述べましたが、まず、そもそも将来に向けて地域の望ましいまちづくりを進めるためには、外環ノ2のみならず、周辺の概成の都市計画道路をどうするのか、地域を総合的にとらえる必要があるはずです。
 外環ノ2から一キロ以内に未完成の都市計画道路が南北に一本、拡幅をしていない東西道路が二本あります。これらの武蔵野市内における未着手の都市計画道路は、どのように扱っているのか伺います。
 また、外環ノ2についての交通量の調査中とのことでしたが、データは一体いつ公表となるのか、また、その際に、概成の都市計画道路の将来推計はどう扱っているのか伺います。
 地域の望ましいまちづくりを進めるために、武蔵野市域では東京都主催の話し合いの会も開催されており、話し合いの会の意見を踏まえ、外環ノ2の検討を行い、都市計画に関する都の方針を取りまとめていくと予算で答弁いただいていますが、一方では、都市計画をつかさどる立場から単純に廃止できないとも答弁があり、矛盾を感じます。
 都の方針は、まだ決まってないはずでありますが、改めて外環ノ2に対する都の方針を伺います。
 地元では、外環ノ2の話し合いの会の開催について、広報が不十分ではないかという意見があります。例えばコミセン便りという広報紙に掲載したいと思っても、開催日程が直前にならないと決まらない、まだ公表できないなどの理由で掲載に間に合わない等、沿線の住民に周知を行うことが難しく、住民の努力によってポスティングを行っているのが現状です。
 こういった現状を都はどう考えているのか、これから他の地域でも開催の予定のようですが、話し合いの会の広報をもっと積極的に行うべきと考えますが、見解を伺い、答弁によっては再質問を留保して質問を終わります。(拍手)
   〔東京都技監河島均君登壇〕

○東京都技監(河島均君) 松下玲子議員の一般質問にお答えいたします。
 四点のご質問がございました。
 まず、武蔵野市における外環ノ2周辺の都市計画道路についてでございますが、お話の南北に計画されている武蔵野三・四・一三号線は、現道がない都市計画道路でございまして、東西に計画されている武蔵野三・四・一一号線、通称女子大通りなど二路線は、八メートル以上の現道がある都市計画道路、いわゆる概成の道路であり、いずれの路線も優先的に整備する路線には選定されてございません。
 都は、平成二十一年四月に公表した対応の方針におきまして、外環ノ2の検討に際し、女子大通りなどの拡幅を含め、周辺道路の整備のあり方について検討することとしております。
 次に、外環ノ2に関する交通量の調査についてでございますが、外環ノ2の必要性やあり方などにつきましては、環境、防災、交通、暮らしの四つの視点で検討を進めることとしております。
 このため、沿線地域の現道の交通量や狭隘道路の状況などの現況を把握するとともに、外環ノ2が整備された場合の周辺道路への影響などについて調査を実施し、現在、最終的な取りまとめを行っております。
 また、概成している都市計画道路につきましては、現況幅員の場合と拡幅整備された場合の二つのケースを想定して検討しております。
 こうした調査の結果につきましては、取りまとめができ次第、公表してまいります。
 次に、外環ノ2に対する都の方針についてでございますが、外環ノ2は、昭和四十一年に、目白通りから東八道路までの区間が外環の地上部街路として都市計画決定された道路でございます。
 外環本線を地下化する方針が出された後、都は、外環ノ2の今後の取り扱いについて、三つの方向で検討することを基本的な考え方として示しております。
 第一の方向は、現在の都市計画の区域を活用して緑豊かな道路として整備する、第二の方向は、都市計画の区域を縮小して車道と歩道を整備する、第三の方向は、代替機能を確保して都市計画を廃止するというものでございます。
 この基本的な考え方をもとにして、沿線の区市ごとに、外環ノ2の必要性やあり方などについて広く意見を聞くため、現在、武蔵野市、練馬区で話し合いを進めております。
 今後、話し合いの場における意見などを踏まえ、外環ノ2の検討を進め、都市計画に関する都の方針を取りまとめてまいります。
 最後に、話し合いの会の広報についてでございますが、話し合いの会の開催に当たっては、構成員に対して、おおむね三週間前に日程等を通知し、さらに、都及び市のホームページでも同様の内容を公表しております。
 また、住民に対しては、会の構成員と周知の方法について意見交換を行った上で、市の広報紙への掲載や、外環ノ2に関係するコミュニティセンターの窓口に開催案内のチラシを置くなど、広く周知を図っております。
 今後とも、話し合いの会や地元区市の意見を踏まえ、適切な周知に努めてまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

○福祉保健局長(杉村栄一君) 五点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、保育サービスの必要度についてでございますが、利用者の保育ニーズは、保護者の就労形態や就労時間、家庭環境、周囲からの援助の有無などにより多様でございます。必要度とは、利用者が保育所に求めるこうしたさまざまなニーズのことを意味しております。
 認証保育所におきましては、利用者のニーズに的確にこたえるため、認可保育所のように保育に欠ける要件などの入所基準は定めず、利用者と事業者との直接契約を導入し、利用者本位のサービスを提供いたしております。
 次に、保育サービスの必要量についてでございますが、東京都保育計画では、平成二十二年度から二十六年度までの今後五カ年間で、保育サービス利用児童数を三万五千人ふやし、さらに、国の新待機児童ゼロ作戦の最終年度である平成二十九年度までに、就学前児童の保育サービス利用率を四四%程度まで引き上げることにしております。
 この目標は、就学前児童を持つ家庭約五万世帯を対象に、各区市町村が実施いたしました保育サービスに関するニーズ調査の結果に基づき、潜在需要も考慮した上で設定したものでございます。
 次に、認証保育所の利用者に関する調査についてでございますが、認証保育所は、認可保育所とは異なり、保護者の就労の有無等にかかわりなく、子育てに困難を抱える人など、広く保育を必要とする人が利用可能なサービスを提供するものでございます。この認証保育所制度の基本的なコンセプトは今後も変える考えはなく、現時点で利用者の就労等の状況調査を実施する予定はございません。
 次に、安心こども基金についてでございますが、平成二十三年度以降の基金の取り扱いにつきましては、九月十日に閣議決定されました新成長戦略実現に向けた三段構えの経済対策の中で、基金による事業実施期限の延長等を検討すると示されておりますが、国からいまだ具体的な方針が出されておりません。
 保育所整備については、現在、基金を財源とした補助制度となっており、都は、国に対しまして早急に方針を示すとともに、必要な財源を確保するよう提案要求を行っております。
 最後に、都型学童クラブ事業についてでございますが、この事業は、保護者の時間延長ニーズに対応し、午後七時以降までの開所とあわせ、指導員に保育士等の有資格者を配置することなどを義務づけ、その運営に係る経費を都独自に補助する事業でございます。
 本事業の創設によりまして、サービス向上に積極的に取り組む民間事業者が参入することで、区市町村が直接設置運営する学童クラブのサービス向上を促す効果もあると考えております。
   〔青少年・治安対策本部長倉田潤君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(倉田潤君) 六点のご質問にお答えをいたします。
 まず、知事所信表明中の悪質な性行為を描いた漫画等などについてでありますが、悪質な性行為を描いた漫画等とは、例えば、子どもに対する強姦や近親相姦など、著しく反社会的な性行為を不当に賛美、誇張するように描いた漫画やアニメーションといったもののことでございます。
 また、これらを容易に手にすることができる現状とは、これらの漫画のうち、著しく性的感情を刺激するという不健全図書指定基準や十八禁マークをつけるべき表示図書の基準に該当しないものは、現在の条例のもとでは、成人コーナーに区分陳列を義務づけられていないため、一般書棚で売られ、子どもが容易に購入できる状況にあるということであります。このような状況は、現に都の担当職員が不健全指定の候補図書を都内各地の書店で購入する際に、毎月多くの書店において確認をしております。
 次に、図書類の現状改善に関する都民の意見についてでありますが、まず、青少年問題協議会におきまして、都民から公募した委員を含め、青少年問題について幅広い見識と関心を有する委員の方々が議論を重ね、児童を性的対象とする図書類等についての現状を改善すべきという答申がまとめられたことを重く受けとめております。
 また、悪質な性行為を描いた漫画等のうち、実際に青少年が閲覧、購入できる現物を見た都民の方々からは、一様に、このような漫画等を青少年が容易に見ることができる現状は改善する必要がある旨のご意見やご感想をいただいております。
 このほか、第一回定例会に提出した青少年健全育成条例の改正案の審議の過程におきまして、保護者等から、子どもを取り巻く図書類の現状の改善を求める四万四千名を超える署名が、都議会議長あてに提出されたものと承知をしております。
 なお、条例に基づく知事への申し出として青少年健全育成審議会に報告した、青少年の健全な成長を阻害するおそれのある図書類に関する都民の申し出の数は、お尋ねの第二十八期青少年問題協議会への諮問が行われた平成二十年十二月から平成二十二年八月までの間で、合計で五十二件、一月平均では二・五件でございます。
 次に、現行の不健全図書指定基準での対応の可能性についてでありますが、現行条例の基準は、閲覧する子どもの性的感情の刺激度合いに着目するものであります。他方、例えば子どもに対する強姦や近親相姦などの著しく反社会的な性行為を不当に賛美、誇張するような漫画等は、そのような性行為が社会的に許容されていると子どもに誤解させるおそれがあります。
 しかし、そのような漫画等は、必ずしも性的感情を刺激する度合いが強いとは限りません。そのため、そのような漫画等については、性的感情の刺激度合いに着目した現行基準とは別に、反社会的な性行為に着目した新たな条例上の基準を設けることにより、現行条例では対応できないものについても区分陳列の対象とすることが適切であると考えています。
 次に、都民への説明についてでありますが、子どもに対する強姦や近親相姦などの著しく反社会的な性行為を不当に賛美、誇張するように描いた漫画等を、子どもでも容易に購入できる現状があることについて、家庭や地域でも知っていただいた上で、子どもの教育や見守りに取り組んでいただくことが重要であると考えています。
 また、議会においても、そうした家庭や地域での取り組みの重要性について、ご指摘をいただいております。
 こうしたことを踏まえ、保護者や青少年の健全育成、子どもの見守りに携わっている方々に対し、都の職員が、漫画等の現物を示して説明することができる機会があるときは、その機会をとらえて、青少年を取り巻く現状を正しく理解していただくよう努めているものであり、都が特別に説明を行うための会を開催しているわけではございません。
 なお、その際に、それまでの都の取り組みの経緯として、条例改正案を提出したことについて触れることもございます。これまで、都の職員が、都の施設や都内各地域の区市の施設、警察署等において、漫画等の現物を示しながら現状をご説明したケースは延べ約六十回であり、今後ともさまざまな機会をとらえて実施してまいります。
 次に、青少年問題協議会への再諮問についてでありますが、第二十八期青少年問題協議会による、メディア社会が広がる中での青少年の健全育成についての答申は、さまざまな分野の有識者委員が、関係者からのヒアリング等も行いながら、一年以上かけて議論し、取りまとめていただいたものであります。
 都は、この答申を踏まえ、さまざまな検討を加えた上で、責任を持って条例改正案を策定し、本年の第一回定例会に提出したものでございます。
 都議会におきましては、第一回定例会閉会中の総務委員会における継続審査及び第二回定例会を通じ、参考人からの意見聴取も含め、長期にわたり多角的な議論を行っていただいたところでございます。
 このような経緯にかんがみれば、改正案の再提出につきましては、早期に子どもを取り巻く現状の改善を図るためにも、議会での議論や関係者の意見を踏まえて、建設的にその案を得るべき時期に至っていると考えております。したがって、青少年問題協議会への再度の諮問は考えておりません。
 最後に、青少年健全育成のための図書類の販売等のあり方に関する関係者意見交換会についてでありますが、その目的は、青少年健全育成の観点に立った図書類の適切な販売等のあり方について、創作、出版等関係者及び青少年健全育成関係者が、漫画等の出版及び自主規制等の現状を踏まえ、忌憚のない意見交換を行うことであります。
 このような意見交換を通じ、それぞれの立場で、青少年の健全育成への取り組みをさらに進めていただくことを期待しているものでございます。