平成二十二年東京都議会会議録第十三号

○副議長(鈴木貫太郎君) 三十四番しのづか元君。
   〔三十四番しのづか元君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○三十四番(しのづか元君) 私からは、教育行政について、まちづくりについての二点を質問いたします。
 まず、持続可能な社会の担い手をはぐくむ教育についてお伺いいたします。
 東京都教育委員会では、第二次の東京都教育ビジョンを初めとして、将来に向けて目標を持って教育施策を進めています。今後の社会情勢や世界情勢などを踏まえると、どのような人材を育てるかは、国や東京都の将来も左右し得る非常に大きな課題です。
 現在、いじめや不登校、学級崩壊など、学校や家庭が抱える問題や、フリーター、ニート、衝撃的犯罪など、地域や社会の抱える多くの課題があります。それらの原因の一つとして、子どもたちが自然や家族、地域や社会から隔絶され、実体験やさまざまな立場の人たちとのコミュニケーションが不足していることなどが考えられます。
 OECD、経済協力開発機構が行っている国際的な学力調査、PISA調査の結果でも明らかになったように、今、日本の子どもたちの聞く力、考える力、問題解決する力、表現する力、学ぶ意欲などの低下が問題視されています。
 そこでまず、東京都は、子どもを取り巻く社会全体の環境の変化についてどのように認識し取り組みを進めているのか、お伺いいたします。
 現代の社会は、地球規模の環境破壊や貧困、紛争など、持続不可能な問題が山積しています。将来の日本、そして東京の子どもたちには、その延長線上の社会において、みずからの考えを持ち、新しい社会秩序をつくり上げることが求められます。だからこそ、地球的な視野で身近な暮らしを変え、地域づくりに参加する市民を育成する教育が必要だと考えます。その教育が持続可能な社会の担い手をはぐくむ教育です。
 新しい学習指導要領が来年度から小学校で全面実施され、順次、高等学校まで導入されます。校庭の芝生化やエコスクール、CO2の削減など、東京都では先進的な取り組みも行われていますが、こうした学校での取り組みをさまざまな形で地域に広げ、それぞれの状況を踏まえた上で、子どもと大人、地域と行政などがともに取り組む必要があります。
 環境教育や自然保護、国際理解教育や人権やさまざまな文化などに造詣のある地域の人材を学校教育に取り入れ、学校や教員を支援して、実践的に子どもたちが社会に参画できるようにしていくことが必要です。
 具体的な例として、都内のある学校では、この夏、二○五○年の大人づくりをスローガンにして都の緑の東京募金に参加し、地域の人々と協力して、ノリ養殖用のリデュース網を使い、緑のカーテンでゴーヤを栽培し、気温の変化を調査しました。育った苗を地域のひとり暮らしの高齢者に配って安否確認をしたり、実ったゴーヤを地域のレストランに配り、新しいレシピを学校と協力してつくるなど、学校と地域とのパートナーシップの上にこの教育を実践しています。
 この活動を通じて、子どもたちは省エネルギーや環境負荷が少ない生活を工夫したり、高齢者との会話で日ごろの食生活を見直したり、海外の食文化に触れ、その多様性や和食のすばらしさに改めて気づくなど、さまざまな経験や学習の成果を上げていると聞きます。
 ユネスコ憲章の理想を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校としてユネスコスクールがあります。このユネスコスクールは、持続可能な社会の担い手をはぐくむ教育であるESDの推進拠点となっています。改正教育基本法に基づき制定された教育振興基本計画においても、その増加を目指し、支援することが明示されています。
 子どもたちの主体性や自主性、社会参加への意欲など、計算問題や漢字の書き取りなどとは違い、すぐに結果は出にくいものです。しかしながら、社会やグローバルな課題に対して立ち向かっていけるような首都東京の子どもたちを育てていくためには、この持続可能な社会の担い手をはぐくむ教育の推進が重要であると考えます。
 この持続可能な社会の担い手をはぐくむ教育に関して、東京都教育委員会の見解と現状及び今後の取り組みについてお伺いいたします。
 持続可能な社会の担い手をはぐくむ教育の推進は、学校単独で行えるものではありません。学校と地域のかかわりを深め、地域への支援体制を強化することが重要です。既にある学校支援地域本部の取り組みは、この教育を進める上で極めて有効な手段だと考えます。今後の国の施策との関連も含め、東京都として、学校支援地域本部の取り組みをさらに充実させる手段が講じられることを期待します。
 この学校支援地域本部のコーディネーター育成においても、持続可能な社会の担い手をはぐくむ教育の視点を導入することが重要だと考えますが、見解をお伺いいたします。
 大学など高等教育機関は、持続可能な社会の担い手をはぐくむ教育に関するすぐれた教育資源を提供できる能力があります。現在、この教育の推進のために、全国で十一の大学がユネスコスクールとの連携を進めています。
 しかしながら、関東圏では玉川大学のみの参加となっていて、東京都でこの取り組みがいま一つ進んでいない原因であるとも考えられます。ぜひともこの教育の推進のために、首都大学東京とユネスコスクールとの連携を進めていただくよう要望いたします。
 また、二○一四年には、ユネスコスクールが推進している持続可能な社会の担い手をはぐくむ教育に関する十年の成果と発展を踏まえた世界的な祭典が日本で開催される見通しであると聞いています。
 宮城県などがその誘致に既に乗り出しているようですが、世界的に注目される次世代育成の好機であり、日本の首都東京の教育水準の高さと先進性を知らしめるいい機会であると考えます。ぜひこの祭典を東京で開催することを強く要望し、次の質問に移ります。
 多摩地域のまちづくりの諸課題についてです。
 多摩の心育成・整備計画の改定版として、昨年八月に多摩の拠点整備基本計画が策定されました。この計画では、以前からの八王子、立川、多摩ニュータウン、青梅、町田の五つの核都市に、生活拠点として新たに七地区が拠点整備地域として加わり、計画的かつ重点的にまちづくりを推進することによって、活力と魅力にあふれ、自立して一層の発展を遂げる多摩地域の実現をうたっています。
 しかしながら、十年前の計画に描かれた五つの核都市の整備状況を見ても明らかなように、依然として計画どおりにはまちづくりが進んでいません。社会経済状況の変化や都市づくりを取り巻く環境など、さまざまな要因はあるものの、東京都として、例えば、以前あった多摩都市整備本部のような組織体制で、集中して各自治体とともに取り組まなければ、この多摩の拠点整備の計画の実現にはなかなかたどり着けないようにも思われます。
 この計画を実行していくに当たって、都市づくりだけではなく、産業や福祉など多岐にわたる政策の推進が求められますが、これらをどのように取りまとめて計画を推進していくのか、所見をお伺いいたします。
 私の生まれた昭和四十一年に開発が始まり、多摩ニュータウンはことしで入居開始から四十年が経過しました。ことしの三月二十八日に、多摩ニュータウンの初期入居地区である諏訪二丁目団地で住民の二十年以上の取り組みの結果、住民の九割以上の合意をもって建てかえ決議が成立しました。ようやくニュータウン再生に向けての、その第一歩を踏み出そうとしています。
 しかし、特にこの諏訪二丁目を含む初期開発地域においては、建てかえによる都市インフラの更新だけではなく、住民の急速な高齢化への対応、そして、これまでの住宅都市から職住近接の複合都市への転換など、困難な課題が山積しています。
 この新たな課題への対応は、とても地域や地元自治体だけの力では解決できません。かつての施行者である東京都としても、都市再生へ向けてのニュータウンの再生ビジョンを地元自治体や国など関係機関と連携して立案、確立していくことが求められます。そのためにも、進行中の事業や未整理の懸案事項に関して、解決能力のある責任所管を明確化し、窓口を一本化するなどの対応が必要だと申し上げておきます。
 このようなニュータウン再生の取り組みを支援していくことは、将来の東京の都市再生や住宅政策を考える上でも重要なモデルケースになり得ると考えます。多摩ニュータウンは今後、都営住宅、公社住宅を含む大規模団地のさらなる更新や、用地買収後四十年間、一向に整備の進まない南多摩尾根幹線の整備、地域の活性化など、あらゆる課題に総合的に取り組んでいかなければなりません。
 多摩ニュータウンの再生、発展に向けて、整備の手法も含めて、今後のまちづくりのあり方を総合的に再検討していく時期に来ていると考えますが、見解をお伺いいたします。
 ことしの十一月に、JR中央線の三鷹から立川の間の立体交差化が実現します。このJR中央線の高架化と同時進行で、JR南武線の第二期の立体交差事業も平成二十二年度完成予定で進められていました。
 しかし、都はこれまで、事業のおくれを心配する、同時に土地区画整理事業を進めている地元市の声にも計画の変更は伝えず、計画をあと一年残した昨年十一月になって、突然五年もの工期延長との見通しを示しました。
 それまでずっと計画どおりで完了見込みという東京都の言葉を信じ続けてきた地元にとってはまさに寝耳に水の出来事で、大きな混乱を招きました。半年、一年ならまだしも、五年もの長期の計画変更への対応がなぜこんなにおくれたのか、疑問でなりません。
 この事業に協力して、仮換地移転を余儀なくされている方も多数います。施行者である東京都として、地元住民はもちろんのこと、関係機関とも十分に意思疎通をして、一日も早い工期短縮に努めるべきです。
 その後、地元住民に対して説明会が開かれましたが、この大幅な工期延長についての対応がおくれたことによって、この先の事業の見通しについても地元の不安は解消されていません。
 そこで、このJR南武線連続立体交差事業について、改めて計画がおくれたそもそもの理由と原因、その後の関係機関との協議の内容、工期短縮の見通しについてお伺いいたします。
 多摩地域はもちろんのこと、都内では多くの未利用となっている都有地があります。都有財産は最大限活用することが必要です。未利用になっている場合は、その土地の管理に多額の経費がかかっています。
 例えば、その未利用地を地元自治体と連携して暫定的に市民農園化するなどの活用を進めてはどうでしょうか。そうすることによって東京の緑政策が広がり、結果的にその手数料収入で財政的にも寄与することになります。
 このように住民ニーズを踏まえた未利用の都有地の暫定活用などを積極的に進め、少しでも有効活用を図るべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 まちづくりを進めるために、都市計画を目的に課税されているのが都市計画税です。都市計画税は、地方税法によって、都市計画区域内の土地や建物に市町村が条例で課税できることになっています。東京都では、多摩地区が市町村の課税、東京二十三区においては東京都が都税として課税し、交付金として特別区に配分されています。
 大正八年に制定されたこの都市計画税が最後に見直されたのは昭和三十一年で、実に半世紀を過ぎ、当時と今とでは社会環境が大きく変化しています。都市計画から都市再生へ、スクラップ・アンド・ビルドからストックマネジメントへと考え方が変わってきている今日において、依然として下水道や道路など都市インフラの更新には、この都市計画税の使途としては充てられないことになっています。例えば、都市更新税など新たな課税も考えられますが、これ以上の住民負担は考えにくいと思います。
 都市化が進み、これから先、多くの都市インフラの更新期を迎える東京都として、市町村とともに、この都市計画税の運用面での見直しを国に対して働きかけていくべきと考えます。
 見解をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔教育長大原正行君登壇〕

○教育長(大原正行君) しのづか元議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、子どもを取り巻く社会環境の変化への認識と取り組みについてでございます。
 少子高齢化、情報化の一層の進展、グローバル化、地球環境問題の深刻化など、子どもを取り巻く社会環境にさまざまな変化が生じており、こうした社会の変化に主体的に対応し、日本の未来を担う子どもたちを育成する教育を推進することが重要であると認識しております。
 こうした認識に立ち、都教育委員会は、平成二十年五月に東京都教育ビジョン(第二次)を策定し、家庭や地域の教育力の向上を支援する、教育の質の向上・教育環境の整備を推進する、子ども・若者の未来を応援するという三つの視点に基づいて施策の展開を図っております。
 具体的には、家庭の教育力の向上、確かな学力の定着と伸長、子どもの心と体の健やかな成長、子どもの社会的な自立への支援、首都東京、国際社会で活躍する日本人の育成などの取り組みを着実に進めているところでございます。
 次に、地球的な視野で社会の担い手をはぐくむ教育についてでございますが、国際理解や環境等にかかわる地球規模の諸問題に対応する教育は、我が国の教育振興基本計画を初め、来年度から全面実施となる新学習指導要領にも盛り込まれておりますが、東京都においては、既に東京都教育ビジョン(第二次)にその重要性を示しているところでございます。
 こうしたことから、現在、都内の公立小中高等学校等におきましては、東京都教育ビジョン(第二次)を踏まえ、社会科や理科、総合的な学習の時間や特別活動を中心として、さまざまな取り組みを行っているところでございます。
 お話のユネスコスクールは、平成二十二年三月現在、全国に百三十六校、都内には十三校ございまして、そのネットワークを活用した教育に取り組んでおります。
 都教育委員会は、本年八月、日本ユネスコ国内委員会との共催により、教員研修を実施いたしました。また、今後は、十月に開催予定のユネスコスクール全国大会について、小中高等学校等の校長会や区市町村教育委員会に周知をしてまいります。
 次に、学校支援地域本部のコーディネーターの育成についてでございます。
 これからの学校教育においては、学校と地域との連携により、教育活動を活性化させていくことが重要でございます。
 そのため、都教育委員会では、地域住民がボランティアとして学校の教育活動を支援することを目的に、区市町村における学校支援地域本部の設置を促進いたしますとともに、その中核を担うコーディネーターの養成研修を実施しております。
 この養成研修におきましては、環境教育等の充実の観点が盛り込まれております新学習指導要領を研修プログラムとして取り上げているところでございます。
 子どもの主体性や自主性、社会参加の意欲などをはぐくむためには、地域の人材を活用した多様な体験活動など幅広い教育活動が行われることが重要であるために、各学校における実践事例を取り上げるなど、コーディネーターの養成研修の充実に引き続き努めてまいります。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

○東京都技監(河島均君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、多摩の拠点整備基本計画の推進についてでございますが、本計画は広域的な拠点である核都市に加え、より身近な生活拠点についても整備の方針と具体的なプロジェクトを示し、これにかかわる各主体が個別の事業計画等を策定する際の基本的な指針となるものでございます。
 計画の推進に当たりましては、何よりも地元市町の積極的な取り組みが重要でございますが、都も広域的な都市基盤の整備等を行うとともに、地元市町などが主体となるまちづくりに対しまして、計画段階や事業実施段階において、今後とも技術的支援などを積極的に行ってまいります。
 また、庁内関係局、地元市などで構成する核都市や生活拠点の整備に係る連絡会議を設置しておりまして、こうした場を活用して、拠点整備に係る各主体の連携協力を図りながら、引き続き本計画に即したまちづくりを推進してまいります。
 これらの取り組みにより、これからも活力と魅力にあふれ、自立して一層の発展を遂げる多摩地域の実現を目指してまいります。
 次に、多摩ニュータウンの再生についてでございますが、多摩ニュータウンは昭和四十一年の事業開始以降、住宅のほか、業務、商業、文化施設の充実など多様な機能を備えた先導的なまちづくりが進められてまいりました。
 その一方で、入居開始から約四十年が経過し、この間、高齢化への対応や地域の活性化など、さまざまな課題が顕在化していると認識しております。
 都としては、東京の都市づくりビジョンや、多摩の拠点整備基本計画を踏まえ、地元市などとの適切な役割分担を基本に、相互に連携を図りながら、時代の変化により生じたまちづくりに関する課題に引き続き取り組んでまいります。
   〔建設局長村尾公一君登壇〕

○建設局長(村尾公一君) JR南武線連続立体交差事業についてでございますが、本事業は、稲田堤駅から府中本町駅間を高架化し、鶴川街道など十五カ所の踏切を除却することで交通渋滞や地域分断が解消される極めて効果の高い事業であります。
 このうち、稲田堤駅から矢野口駅付近までの区間については、平成十七年十月に高架化を完了させ、八カ所の踏切を除却いたしました。
 また、矢野口駅付近から府中本町駅までの区間については、現在、高架橋工事を進めております。
 本区間については、用地取得の難航による工事着手のおくれ、列車運行の安全管理強化による作業時間の制限、土地区画整理区域内のため搬入路が限られ、作業効率が低下したことなどから事業期間の見直しが必要となり、本格的な高架橋工事に先立ち、昨年十一月に平成二十七年度までの工期延伸を明らかにいたしました。
 現在、工程調整会議などを通じ、稲城市やJR東日本と連携し、工期短縮についての具体策を検討しております。
 これらの内容につきましては、これまでも議会などあらゆる機会をとらえてご説明してまいりました。引き続き、地元の理解と協力を得ながら、本事業の推進に努めてまいります。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

○財務局長(安藤立美君) 都有地の有効活用についてお答え申し上げます。
 都の財産は、都民から負託された貴重な財産でありますことから、これを最大限有効活用していく必要がございます。
 これまでも、当面利用予定のない都有地につきましては、地元自治体や民間事業者への貸し付けにより、暫定活用を推進してまいりました。
 地元自治体の行政施策に連動させて都有地を活用することは、都民サービス等の向上にもつながりますので、今後とも、地元自治体から事業内容や使用期間を明確にして暫定活用の申し出があった場合には、その使用方法について十分に協議するなど、連携を図りながら都有財産の有効活用を推進してまいります。
   〔主税局長荒川満君登壇〕

○主税局長(荒川満君) 都市計画税についてでございますが、都市計画税は、都市計画の重要性にかんがみ設けられた都及び市町村が課することのできる目的税であり、現在の地方税法では、都市計画事業及び土地区画整理事業の費用に充てることとし、それ以外の費用には充てることができないとされております。
 今後、都市インフラについては、新たな整備に加え、更新も重要になってくることはご指摘のとおりでございます。
 しかしながら、税制度面から見れば、都市計画税を都市計画事業以外の手法による更新事業の費用に充てることができるよう、税の設置目的を超えて運用面で対応することは困難であり、さらに、法そのものの改正を行うべきかどうかについても、これからの都市づくりと費用負担のあり方などを踏まえて判断されるべきものと考えます。