平成二十二年東京都議会会議録第九号

   午後五時五十六分開議

○議長(田中良君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 三十番佐藤由美さん。
   〔三十番佐藤由美君登壇〕

○三十番(佐藤由美君) 佐藤由美でございます。発言させていただきます。
 まず初めに、きのう六月八日、市民運動から活動を起こしてきた菅総理のもと、新内閣が発足しました。人を不幸にする要素を最小化する社会に向け、改革が力強く進められていくものと確信しております。
 先月十三日、警察庁発表によると、昨年の自殺者数は全国で三万二千八百四十五人、十二年連続で三万人を超えるという厳しい状況が続いています。
 平成十八年に自殺対策基本法が制定されて取り組みが開始しているにもかかわらず、高どまりしています。うつ病など身体的な原因はもちろんですけれども、それに至るまでの自殺の要因は複合的であり、社会的な構造について注視し、改めて対策を見直すべきと考えます。
 緊急雇用対策の一環として年末年始に実施した、いわゆる公設派遣村では、臨時住宅とともに、就労までに当事者が必要とする心の相談、法律相談など、生活総合相談をワンストップで実施しました。石原都知事は、元日に現場を視察した閣僚について、あの程度の行事に行くべきじゃない、私は行かないと述べました。行事として位置づける認識でよいのでしょうか。
 先週四日付、都は国に対し、実効性あるセーフティーネットの確立に向けた国への緊急提案を出しました。セーフティーネットが脆弱であることが浮き彫りになった今、これを立て直すことは、国、自治体、双方の責務であると考えます。
 就労支援、ホームレス対策、自殺対策といった視点は事業の切り口の問題であって、その人にとっては、仕事がなくなれば家賃が払えなくなる、家がないから仕事も探せなくなる、人との関係も絶たざるを得なくなる、そして精神的に追い詰められ、健康を害する、多重債務を負う、一つの問題から次々に問題が派生をしていき、複合的に問題を抱えています。人が人間らしく生きるために何ができるのか、そうしたことを私たちは考えるべきではないでしょうか。
 社会的に排除されずに生きていける状況、人を中心にしてセーフティーネットにかかわるさまざまな施策、事業が横断的に行われていくべきと考えますが、見解を伺います。
 現在、非正規雇用は全体の三分の一にまで上がり、そして一九九〇年代以降、若年層は労働市場で安定した立場を得られない状況になっています。十五歳のときの暮らし向きが大変苦しいという、極めて人生の初期の段階における不利は、当事者のそれ以後の人生を左右する大きな影響を与えています。
 また、困窮するひとり親家庭では、ダブルワーク、トリプルワークをしても生活を維持していけるかどうかという、そして健康を損なう過酷な状況にあります。
 ワーキングプア、その世帯は全国で一九%、六百七十五万世帯と推定されています。年間所得が三百万円以下、逆に二千万円以上の所得階層が増加する一方で、中間階層は減少しています。相対的貧困率は一五・七%であり、ジニ係数は〇・三二一と上昇しており、所得配分機能は落ちています。
 この現状に対して構造的な転換を図ることが重要です。同時に、今の構造下でも、貧困層が固定化、世代間に連鎖しないように、非正規雇用から正規雇用への転換を後押しする政策が必要です。一定の生活を保障しながら必要な知識、技術を習得し、より良質な就労にアクセスできるよう支援することが重要と考えますが、都の取り組みを伺います。
 また、二〇〇五年のOECDによると、子どもの貧困率について、日本は再分配前所得における貧困率と再分配後の貧困率を比べた場合に、再分配後の方がより高くなるという逆転現象が起きています。保護者の経済状況に左右されずに、子どもの選択の幅を狭めることなく、高等教育や技能習得に向けた進学ができる体制を構築することが不可欠と考えますが、都の取り組みを伺います。
 都立高校には、家庭の経済状態から負担が少ないことを理由に入学する生徒もあります。経済的な格差が受ける教育の格差につながらないために、都立高校の質の向上が不可欠と考えますが、都の取り組みを伺います。
 これからの社会の担い手になる子どもたち一人一人が、社会的自立に向けて必要な基盤、能力を獲得することが必要と考えます。都の高校におけるキャリア教育を初めとする取り組みを伺います。
 また、定時制高校では勤労学生が減少する一方で、中途退学や不登校経験のある生徒などがふえており、その役割が変化しています。都はチャレンジスクールを設置しましたが、中途退学や不登校経験のある生徒の多くがチャレンジスクール以外の定時制高校に入学していることから、子どもが入学したどの高校でも的確に支援を受けられるような環境を整えるべきと考えますが、都の取り組みを伺います。
 次に、犯罪被害者支援について伺います。
 平成十六年に犯罪被害者等基本法が制定され、翌年、犯罪被害者等基本計画が策定されました。居住の安定、保健医療サービス、福祉サービスの提供などが定められています。これらは身近な市区町村でのサービスや社会資源がなくては支援ができません。都の犯罪被害者等支援推進計画でも、市区町村は被害者等への支援にとって重要な役割を担っていることを明記しています。
 しかし、その自治体の職員を東京都の早期援助団体に数カ月派遣をして、犯罪被害者の置かれる精神状況を踏まえて、総合支援窓口を設置の上、一時住宅の確保や日常家事支援などきめ細かな体制を整えている積極的な市区町村と、取り組みを開始していない市区町村とがあります。
 だれしもが被害者になる可能性があります。被害を受けたことにより、社会に包まれるべき被害者がこれまで社会から孤立してきたことは、基本法にも明記されているとおりです。確実に支援につながる体制を構築しなければなりません。被害者等に対する市区町村の支援体制を底上げし、促進すべきと考えますが、都としての取り組みを伺います。
 また、居住の安定を図るために、都は優遇倍率での抽せんを都営住宅にかけているという形での支援をしているという形ですが、抽せんでは、まさに被害によって住まうことができない被害者の居住の安定は確保されないと考えます。
 また、市区町村の公営住宅だけでは住所要件があって、区をまたいで転居することは難しい状況です。都として転居費用などの経済的な支援という形も含めて、被害者の居所の安定に向けた取り組みを進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 また、性犯罪被害に対する治療、カウンセリング、被害届の受理等が一カ所で行える窓口を医療機関などに設けることが望ましいですが、都の見解を伺います。
 さらに、緊急避妊費用や初診料等の公費負担がありますが、このためには証拠保全の技術も必要です。被害直後に警察や支援団体から紹介される産婦人科医に行くことができる場合は格別、そうでない場合にはすべての産婦人科医が証拠保全手続などに精通していない現状で、性犯罪被害者が後から公費負担を申請しようとしても実現できない場合があります。医師に対する制度周知や技術研修が必要と考えますが、見解を伺います。
 次に、一人一人の参加が社会と乖離しないために、都政が社会と乖離しないために必要と考える観点から、住民自治の強化について伺います。
 これまで団体自治の拡充が進められてきたところですが、地方自治権は自己決定権に由来します。今こそ積み残されてきた住民自治の強化に向けて取り組むことが必要と考えます。住民の参画を可能にするためには、情報公開から情報共有へと転換する必要があります。そして、都民の意見を施策に反映させなければなりません。
 現在、計画、制度等の意思決定前における住民参画の手法は、審議会等への付議、公聴会などの実施がありますが、パブリックコメントはだれでも意見を提出できる広く開かれた手法です。現在、四十三道府県でパブリックコメント条例あるいは実施要綱が設けられています。
 さて、東京都情報公開条例三十一条には、計画中間段階に係る案について公表しなければならないと定め、その留意事項に、提出された意見等を考慮するとともに、提出された意見とこれに対する考え方を公にするように努めるとしています。
 都のホームページでは、計画案の策定に当たり意見募集したものが幾つか見られました。しかし、各局によって期間や都民への結果対応はまちまちです。こうした現状も踏まえ、情報公開や広聴制度について、住民の参画という観点から充実強化すべきと考えますが、所見を伺います。
 平成十八年四月に施行された改正行政手続法で、行政運営の適正化を趣旨として、意見公募手続を行わなければならない旨明記されています。こうした仕組みについても都には存在していません。都として行政手続条例を改正するか、もしくは行政手続条例にパブリックコメントの一般規定を盛り込んだ上で、別途パブリックコメントの手続条例を制定し、都民の参画を制度的に保障することが不可欠と考えますが、見解を伺います。
 先週六月四日、「新しい公共」円卓会議では、支え合いと活気ある社会をつくるために、さまざまな当事者の自発的な協働の場を新しい公共とし、官が独占してきた領域を開き、公共を現代にふさわしい形で再編集し、国民が決める社会をつくると宣言しました。その実現には、公共への政府のかかわり方、政府と国民の関係のあり方を大胆に見直すことが必要としています。
 現在、環境や福祉、国際協力など、多様な分野で市民活動が活発に行われています。市民団体と都の関係は行政の効率化の流れの中で、公共サービスの代理人、下請という位置づけで業務委託される傾向が強い現状があります。
 しかしながら、こうしたボランタリー組織は、社会のニーズにきめ細かにこたえる活動を通じて制度や政策の問題点を把握しています。都政にはこうした団体の知見が欠かせません。今こそ協働を進め、公共サービスを提供する単なる代理人ではなく、政策形成過程への参画など、都との関係の再編成が必要です。
 また、こうしたNPOや市民活動団体の多くは財政が厳しく、また人が常勤で活動を支え、発展させることが困難な状況です。社会に不可欠なこうした活動を支え、公共の舞台づくりを進めることが必要ですが、都の取り組みを伺います。
 また、他の自治体では寄附金を活用したさまざまな財政上の支援策を講じています。都としてもNPOの寄附金に対する税制優遇措置を充実させることが必要と考えますが、所見を伺います。
 最後に、三件目に経済産業振興について伺います。
 葛飾区では、東京理科大学を誘致し、平成二十五年四月の開学に向けて準備を進めているところです。大学は地域の拠点として、経済の活性化、まちづくり、教育と幅広い可能性が期待されているところです。
 中でも、葛飾区は金属加工業など製造業を中心とする企業が集積し、東京を代表する工業集積地域です。産学連携が進み、大学の先端また独創的な研究成果と、区の中にある高い技術力を持つ中小企業が結びつくことで、共同で新製品、新技術開発などを行うなど、産業活性化に大きく寄与することが期待されています。
 現在、葛飾区では、地域産業活性化特別委員会が設置され、大学と地域との連携構築を丁寧に支援しているところですが、東京都としてこうした地域での取り組みを後押しし、一層促進させるべきと考えますが、所見を伺います。
 先日、この東京理科大の研究室の一つに伺いました。この研究室では、生活支援、社会福祉を目的とした実用的ロボットシステムの開発、画像処理技術、ロボット知能の多角的な基礎研究をメーンテーマに掲げています。
 例えば、現在数多くの高齢者が、食べ物の飲み込みが困難になる嚥下障害を抱えている中で、その嚥下障害が起きる構造を解明する研究や、身体的に喪失した機能を補う器具の考案、マッスルスーツという、介護する人の腰へかかる負担を軽減させる器具の開発などに取り組まれていました。
 昨年十二月、閣議決定された新成長戦略では、グリーンイノベーション、ライフイノベーション、環境エネルギー分野あるいは医療、介護分野の革新を掲げています。また、都の「十年後の東京」計画でも、東京のポテンシャルを活用した成長が見込まれ、新しい技術や発想により社会的課題の解決や豊かな都市生活を実現する産業を創造的都市型産業と位置づけ、戦略的、重点的に育成していくとしていますが、都としてこのような社会的課題の解決につながるような中小企業の研究開発や事業化への支援について、どう取り組んでいくか伺います。
 最後に、我が国では資源エネルギーが乏しいことは周知のとおりです。昨今、エネルギーや金属資源などが世界的に逼迫しつつあります。我が国では、ものづくりに不可欠なレアメタル等の資源の大半を政情不安な国からの輸入に頼っています。こうした資源を安定的に調達するため、深鉱開発、リサイクル、備蓄といった施策と並んで、代替材料の開発は極めて重要です。
 国際都市であり首都である東京は、産業育成はもちろんのこと、資源エネルギー安全保障も視野に入れた上で、こうした領域における技術研究開発への助成を行うことも重要なことではないかと提言を申し上げまして、私からの質疑を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔教育長大原正行君登壇〕

○教育長(大原正行君) 佐藤由美議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、都立高校の質の向上についてでございます。
 都立高校の生徒が自分の希望や適性などに合った教育を受け、その個性を豊かに伸ばすことができるよう、都教育委員会は都立高校改革推進計画に基づき、学校選択の拡大や入学者選抜方法の多様化を進めるとともに、中高一貫教育校やチャレンジスクールなどの新しいタイプの高校の設置、また進学指導重点校やエンカレッジスクールの指定など、特色ある学校づくりを行い、都立高校の個性化、特色化に努めてまいりました。
 これにより、都立高校では大学進学実績の向上、中途退学者の減少、卒業時に進路が決定していない生徒の減少など、着実な成果があらわれています。
 今後も生徒、保護者の期待にこたえる都立高校づくりが必要不可欠であることから、これまでの都立高校改革推進計画に基づく施策の成果検証を現在進めているところでありまして、その結果を踏まえ、さらなる質の向上に取り組んでまいります。
 次に、キャリア教育の推進についてでございます。
 生徒が将来にわたる生き方を考え、主体的に進路を選択していく能力と、望ましい勤労観や職業観を身につけることは重要でございます。
 都教育委員会は、平成十八年度から、専門高校だけでなく、普通高校などすべての都立高校に対し、キャリア教育の年間指導計画を作成し、卒業生などによる進路講演会や大学への体験入学、企業におけるインターンシップ等をこの計画に位置づけるなど、教育活動全体を通じてキャリア教育に取り組むよう指導してまいりました。
 また、キャリア教育の指導資料集の作成、配布及びキャリア教育実践連絡協議会やフォーラム等の実施を通して、すぐれた実践事例の普及啓発を図るなど、都立高校におけるキャリア教育の推進に努めてまいったところでございます。
 次に、中途退学や不登校経験のある生徒に対する教育についてでございます。
 都教育委員会は、都立高校改革推進計画に基づき、チャレンジスクール五校、チャレンジ枠を持った昼夜間定時制高校一校を設置しており、中途退学や不登校経験のある生徒、その保護者などから大きな期待が寄せられております。
 また、既設の夜間定時制高校では、中途退学や不登校経験のある生徒を初め、多様な課題を抱えた生徒が在籍しておりますことから、個々の状況に応じたきめ細かな指導を実施するとともに、チャレンジスクールと同様、少人数指導による丁寧な学習指導や、三年間で卒業を可能とする取り組みなどを進めております。
 今後も社会状況や都民ニーズの変化を踏まえ、夜間定時制高校においても引き続き生徒の課題に適切に対応してまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

○福祉保健局長(杉村栄一君) 二点のご質問についてお答え申し上げます。
 まず、離職等により生活に困窮する方に対するセーフティーネットの横断的な取り組みについてでございますが、実効性あるセーフティーネットの確立は国の責任で実施すべきであり、これまで二度にわたり、都は国に緊急提案を行ってまいりました。国は本年五月、生活福祉・就労支援協議会を開催いたしまして、雇用部門と福祉部門の連携を図るための取り組みを始めたところであります。
 都は、国に先駆けまして、平成二十年度から区市町村や福祉、就労などの関係機関と連携をした取り組みを進めており、職業訓練や必要な資金の貸し付け等を行う生活安定化総合対策を実施いたしております。今後とも国に対しまして必要な提案を行うとともに、区市町村など関係機関との一層の連携強化に努めてまいります。
 次に、低所得世帯の子どもを支援する取り組みについてでございますが、都は、平成二十年度からチャレンジ支援貸付事業を実施いたしまして、将来の自立に向け意欲的に取り組む子どもたちを支援いたしております。
 この事業は、中学三年生、高校三年生がいる低所得世帯を対象といたしまして、学習塾等の受講料や大学等の受験料を無利子で貸し付けるものでございまして、高校、大学等に入学した場合には、その返済を免除しております。
 また、今年度から中学三年生の学習塾等の受講料にかかわります貸付限度額を引き上げるとともに、新たに高校受験料も対象とするなど、支援を拡充しているところでございます。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

○産業労働局長(前田信弘君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、所得が低く不安定な生活を送る方々に対する就労支援の取り組みについてでありますが、都は平成二十年度から、低所得の状態にある方々に対し、生活費を支給しながら職業訓練を行い、安定した就職につなげる就職チャレンジ支援事業を実施しており、パートタイマーやアルバイトといった非正規雇用で働く方々などが利用していらっしゃいます。
 本事業では、就職チャレンジ支援相談室においてキャリアカウンセリングを行い、一人一人の適性や希望を踏まえて、知識や技能を習得する職業訓練を実施するとともに、就職のためのセミナーや面接会、職業紹介などの支援を行っております。事業開始から本年五月末までに相談室に登録された方は約五千二百人で、このうち職業訓練受講者は約三千六百人でございます。
 このような都の先駆的な取り組みに続き、国も昨年七月から同様の緊急人材育成支援事業を開始しております。こうした取り組みにより、低所得の状態にある方々に対して、安定した就職に向け的確に支援してまいります。
 次に、産学公連携への支援についてでありますが、新産業、新技術の創出につながる研究開発を促進する上で、産学公の連携を進めることは有意義であります。
 このため、都は、都立産業技術研究センターに産学公連携コーディネーターを配置し、中小企業と大学による共同研究や共同開発などを推進するとともに、地域の産業特性を生かし、産学公連携などに取り組む区市町村に対しては、創造的都市型産業集積創出助成事業によりまして支援しております。今後とも、こうした取り組みにより、産学公連携を促進させてまいります。
 次に、社会的課題の解決につながる中小企業の研究開発等への支援についてであります。
 環境、医療、福祉などの成長分野で活用の期待できる中小企業の製品開発や事業化を支援していくことは、中小企業のすぐれた力で大都市東京が抱える課題を解決することに寄与するのみならず、東京の産業の発展にもつながるものと認識しております。
 このため、今年度から実施する都市課題解決のための技術戦略プログラムでは、まずは環境分野において、首都大学東京等の知見などを集約し、大都市の抱える課題の解決に資する開発テーマや目標を定めたロードマップを策定いたしまして、これに沿った中小企業の新製品、新技術の開発及び事業化を重点的に支援してまいります。
   〔総務局長中田清己君登壇〕

○総務局長(中田清己君) 五点のご質問にお答えします。
 まず、区市町村による犯罪被害者等支援の取り組みの促進についてでございますが、犯罪被害者等への支援が、被害者等により身近な区市町村で進められていくことは重要であると認識しております。
 このため、都は、従来から区市町村に対しまして、区長会や市長会の場などを通じまして、支援担当窓口の開設を強く働きかけてまいりました。この二年間で支援担当窓口を設置した区市町村は全区市町村の三分の二にまで拡大しております。
 今年度は、さらに一部の区市における職員の人材育成に向けた先進的取り組みの事例など、具体的な支援のためのノウハウや情報を提供するため、全区市町村で構成します東京都区市町村犯罪被害者等支援連絡会を設置し、すべての区市町村で犯罪被害者等に対する支援を受けられるよう努力してまいります。
 次に、犯罪被害者等のための居住支援についてでございますが、自宅が犯罪事件の現場となったことなどによりまして、転居を余儀なくされた犯罪被害者等に対しまして、一時的な居住先の確保などの支援は大変重要であると考えております。
 都では、犯罪被害者等の被害直後における早期立ち直りのため、一時居所の提供を行うほか、長期的な支援として都営住宅の入居において優遇抽せんを行っておりますが、今後はさらに区市町村が管理する公営住宅の提供につきまして、都から区市町村に協力を求めるなど、より一層安定的な住居の確保に努めてまいります。
 なお、転居費用等の経済的支援についてでございますが、都における既存の生活資金の貸付制度や、他の支援機関によるさまざまな貸付制度があり、今後ともこうした制度に関する情報の提供に努めてまいります。
 次に、性犯罪被害者の支援のための窓口についてでございますが、性犯罪被害者を対象とする窓口を設置することは、利用者が性犯罪被害者と特定されるおそれがあるなど、プライバシー保護等の観点から慎重に対応すべきであると認識しております。
 現在、都は医療機関や警察などからの連絡を受けまして、都の総合相談窓口を設置している社団法人被害者支援都民センターの相談員が被害者に付き添うなどの対応を行っております。
 都としては、性犯罪被害者に対する支援をより充実させるため、窓口のあり方を含め、引き続き関係機関と協議してまいります。
 次に、性犯罪被害者に対する支援に関する医療関係者への啓発等についてでございますが、医療関係者が、犯罪被害者等が置かれている状況を正しく理解し、早期に被害から回復するための支援の取り組みを進めることは重要でございます。
 都はこれまでも、犯罪被害者等支援に対する知識の付与や具体的な対応方法等を記載した医療機関向け犯罪被害者支援マニュアルを作成し、医療機関へ配布してまいりました。
 今後も関係機関や団体等と協議し、医療関係者に対するより一層の啓発に取り組むとともに、事件の捜査や医療費の公費負担に必要な証拠保全等に関する技術的向上策、こういったことに関しましても検討してまいります。
 最後に、行政手続法に基づくパブリックコメントについてでございますが、この制度は、行政機関が規則等を定めようとする際、事前に広く住民から意見を募り、その意見を考慮することで行政運営の公正さの確保と透明性の向上を図り、住民の権利利益の保護に役立てるものでございます。
 地方公共団体における制度化につきましては、行政手続法でいわゆる努力義務とされておりまして、直接適用されるものではございませんが、対象となる規則、審査基準、処分基準、行政指導指針の現状を十分把握した上で、今後検討すべき課題の一つと考えております。
   〔生活文化スポーツ局長並木一夫君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(並木一夫君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、情報公開や広聴制度についてでございますが、都は都民に対する説明責任を果たし、公正で透明な行政を目指すため、公文書の開示や都政情報の公表、提供を通じて情報公開を推進し、都民による都政への参加を進めております。
 また、広聴事業では、広く都政全般について都民から寄せられた幅広い意見、要望を集約し、施策へ反映しております。今後とも、都政情報の公表や提供のほか、都民生活や都政の課題に関する世論調査、迅速に実施できるインターネット都政モニターによる意見聴取など、情報公開や広聴事業の充実に取り組んでまいります。
 次に、行政と市民活動との協働の推進でございますが、都は、行政とNPO法人との協働、市民の参加の促進を図る観点から、都のホームページで都や区市町村における協働の状況、NPO法人の概要や活動などの情報を提供するとともに、毎年、都や区市町村の職員を対象に協働に関する公開講座を実施しております。
 また、東京ボランティア・市民活動センターにおきまして、市民や活動団体に対する相談、ボランティアリーダーの育成を行っております。今後とも、情報提供や人材の育成などに努め、多様な市民団体との協働を着実に推進してまいります。
   〔主税局長熊野順祥君登壇〕

○主税局長(熊野順祥君) NPOへの寄附金に対する税制優遇措置についてお答え申し上げます。
 NPO法人のうち、国税庁が一定の要件のもとで認定する、いわゆる認定NPO法人への寄附金につきましては、所得税等の税制優遇措置が講じられておりますが、その認定数は、全NPO法人約四万団体に対し、百数十団体にとどまっております。このため、現在、政府税制調査会におきまして、認定基準の見直しなど、NPO法人への寄附金に対する税制優遇措置の拡充が検討されております。
 ただ、申し上げるまでもなく、一口にNPO法人といっても、その活動内容は千差万別であり、行政との協働が可能であるものからそうでないものまで、さまざまな団体が存在することから、都といたしましては、過度な要件緩和を行うことは、税の公平性や他の公益法人等とのバランスを損なうおそれがあるなど、幾つかの課題があると考えております。今後、国における検討状況やこれらの課題を踏まえ、適切に対応してまいります。

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