平成二十二年東京都議会会議録第九号

○議長(田中良君) 六十七番菅東一君。
   〔六十七番菅東一君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○六十七番(菅東一君) それでは、観光振興についてお尋ねをいたします。
 都では、「十年後の東京」計画を策定し、東京の魅力、文化を世界に発信しつつ、年間一千万人の外国人旅行者が訪れる世界有数の観光都市づくりを、国に先駆けて積極的に進めております。
 国の新成長戦略では、観光は日本の成長を支える有力な産業分野と位置づけたところですが、欧州を初めアジア各国でも観光振興に力を入れており、残念ながら日本は競争に乗りおくれつつあります。
 海外からの訪問客は近年増加傾向にありましたが、世界的な景況の悪化や新型インフルエンザの影響から、平成二十一年は、平成二十年の八百三十五万人から六百七十九万人へと大きく減少しております。
 こうした中、国会においても、観光産業振興に向け、四月に、都選出の下村衆議院議員ら超党派の国会議員約七十人で構成する国際観光産業振興議員連盟、いわゆるカジノ議連が結成されました。現時点でカジノを設置する地域は未定でありますが、今後早ければ秋の臨時国会に、議員立法でカジノ法案を提出、成立を目指す動きがあります。また、各県の知事なども積極的に検討を始めるなど、カジノを取り巻く社会情勢は大きく変化しております。
 カジノは、新たな観光資源の一つであるとともに、新たな雇用の促進や産業振興にも大きな効果が期待でき、私も、東京にカジノを誘致すべきと考える一人であります。また、長引く景気の停滞による閉塞感を打破していくためにも、我が国の成長エンジンである首都東京が全国に先駆けて積極的にカジノ誘致を進めるべきであると考えますが、所見を伺います。
 次に、私は、平成十九年の第三回定例会において、地球温暖化対策について質問し、その中で、地球温暖化対策と経済活性化の両立の重要性について指摘いたしました。
 この四月から都は、世界初の都市型キャップ・アンド・トレードを開始しましたが、これにより、規制対象となる大規模事業者を初めとする民間企業の省エネ投資が新たな需要を生み、停滞している我が国の経済によい刺激を与えることが期待されます。
 しかしながら、都内の経済を支える中小零細事業者の環境対策については、厳しい経済状況の中にあって、残念ながらいまだ低調のままであります。都も中小規模事業所に対する補助金を今年度新たに開始しますが、この新規事業は、クレジットという形で、温暖化対策と経済活性化の両立するモデルを示すことで、中小規模事業所の省エネ投資の起爆剤になるものと思います。
 しかし、都内七十万にも及ぶ中小零細事業者をカバーすることは、物理的にも、マンパワーの面からも限界があります。こうした意味からも、私は、区市町村の温暖化対策におけるきめ細かな取り組みに対する期待は極めて大きいと考えます。
 私の地元板橋にも中小零細事業者が多く集積しており、板橋区では、中小事業所の省エネルギー化の推進の取り組みを積極的に進めているところであります。また、板橋区議会自民党でもPTを立ち上げ、地域の発想から温暖化対策の政策提言を行っております。
 都が推し進める温暖化対策を都内全域に広げていくためには、中小企業や家庭における対策の一層の充実が必要であります。そのためには、都と区市町村とが密接に連携することで、中小零細事業者の温暖化対策など、地域に根差した取り組みが進められると思いますが、知事の所見を伺います。
 次に、若者の就職支援について伺います。
 先日、厚生労働省が発表した、この春の新卒者の就職率は、大学が九一・八%、高校が九三・九%にとどまり、内定取り消しが問題となるなど、厳しかった昨年度の結果をさらに下回るものでありました。大学については、過去二番目に悪い数字だということであり、就職留年する学生も珍しくないと聞き及んでおります。まさに就職氷河期に逆戻りともいえる状況であります。
 一方、新卒者の問題にとどまらず、三十四歳までの若年層の失業率が他の年齢層と比べても高い水準にあることや、パート、派遣、契約社員等の非正規雇用で働く人の割合が高いなど、若者の雇用には大きな課題があることも見逃せません。
 こうした状況を放置するならば、次代を担う若者の経済的な自立や職業能力形成の機会が失われることになります。また、安定した職につけないことにより、結婚したくともできない、子どもを持ちたくても踏み切れない若者もふえているといわれ、少子化の加速につながることが懸念されます。
 このように、若者の雇用の問題は社会にとっても大きな損失につながり、我が国の将来を揺るがすような重大事と考えますが、都のこの問題に対する認識と基本的な考え方について伺います。
 若者が職業経験を積み、その能力を磨くべき貴重な時期に、安定した就業機会に恵まれないのは本当に不幸なことであり、しごとセンターにおいては、若者の目線に立ってさらにしっかりとした取り組みを進めてもらいたいと考えます。
 また、私が重要と考えることは、若者自身が主体的、積極的に就職活動に取り組む意欲を持つことであります。特に、職業や働くことの意義について考え、就労意欲を高めるとともに、やりたいことや適性をみずから見きわめることが最も大切だと考えます。こうした意識づけ、動機づけをしっかりと行うことで、希望や能力に応じた就職を実現するとともに、せっかく就職したのにすぐ離職してしまうというようなことも防ぐことができるのではないでしょうか。
 都は、しごとセンターの開設以来五年以上にわたり、若者向け就職支援サービスの充実を図ってきたと思いますが、真に若者のためになる就職支援策という観点から、具体的にどのような取り組みを進めているのか伺います。
 冒頭でも新卒者の就職率に触れましたが、昨年来、新卒者の就職環境は非常に悪化しております。来年度の企業の採用動向も引き続き厳しさが見込まれており、こうした状況が続けば、第二のロストジェネレーションを生み出しかねないのではないかと強い危機感を感じるところであります。
 都では、こうした厳しい状況を受け、昨年度の後半二回にわたり、大規模な新規学卒者対象の合同就職面接会を開催していますが、二月の面接会には二千四百人を超える学生が集まったと聞いております。卒業が間近に迫った時期にもかかわらず、そんなに多くの新卒者の就職が決まっていないということが事態の深刻さをあらわしております。
 しごとセンターにおいては、こうした二十二年三月卒業者の厳しい就職状況を踏まえて、対策を強化したと聞いています。その具体的な取り組み状況について伺います。
 次に、地上デジタル放送への完全移行に向けた取り組みについて伺います。
 平成二十三年七月の地上デジタル放送への完全移行まで、残すところ一年余りとなりました。テレビは、教養、娯楽のみならず、報道や災害情報の提供などについても、都民生活に必要不可欠な存在となっております。アナログ放送からデジタル放送への切りかえという国の電波政策の都合により、テレビを視聴できなくなる都民が生じるようなことはあってはならないと考えます。
 私は、昨年の第一回定例会の一般質問においてこの問題を取り上げ、正確な情報や各種の支援策が都民に広く円滑に行き渡るよう、とりわけ高齢者などの社会的弱者へのきめ細かな情報提供の必要性などを指摘したところであります。その後、テレビのスポット放映などで都民の認知度も高まり、エコポイントの追い風も受けて、地デジ対応テレビの普及もかなり進んできております。
 地デジへの完全移行の円滑な実施に向けた対策は、本来、国と放送事業者の責任で行われるべきものでありますが、都民生活に密着した問題でもあることから、まず、都としてこの問題にこれまでどのように取り組んできたか伺います。
 先ごろ発表された国の調査によりますと、本年三月時点で、地デジ対応テレビの受信機の普及率は、東京では八四・五%となっており、全国平均の八三・八%を上回っております。しかしながら、地デジ放送を見るためには、テレビの買いかえだけではなく、アンテナの取りかえも必要であり、資材の不足もあって、アパート、マンションなど集合住宅のアンテナの改修がまだまだ進んでいないと聞いております。
 そこで、こうした集合住宅への対策を初めとして、都民が安心して地デジ放送を見られるようにするため、残る一年間で一層の取り組みが必要と考えます。今後の課題と対応について所見を伺います。
 次に、大山地区のまちづくりと都市基盤整備についてお聞きいたします。
 都は、先月策定した東京における市街地整備の実施方針において、当地区を、道路整備と沿道まちづくりを一体的に進め、防災性の向上を図る検討地区として位置づけました。
 当地区の東武東上線大山駅周辺には、都内有数の商店街があり、毎日大変なにぎわいを見せておりますが、地上を走る鉄道により、まちの一体感が損なわれていることや、駅周辺にはあかずの踏切が多数あること及び駅前広場もないため、地域住民やこの駅を利用している通勤通学の方々は、日々の生活で大変不便な思いをしています。
 また、まちづくりを進める上で大きな役割を果たす補助二六号線は、板橋区内では東武東上線の東側は整備済みでありますが、川越街道の西側についても現在事業中であることから、東武東上線と川越街道の間だけが未整備となり、整備方針も明確になっておりません。
 私は、この地域の発展のために、まちづくりと補助第二六号線の整備及び二六号線と鉄道の立体化を総合的に取り組むべきと考えております。
 そこで、大山地区のまちづくりと都市基盤整備に対する都の所見を伺って、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 菅東一議員の一般質問にお答えいたします。
 地域における地球温暖化対策についてでありますが、気候変動の危機を回避するには、低炭素社会への転換が不可欠でありまして、こうした認識のもとに都は、世界初の都市型キャップ・アンド・トレードの導入など、先駆的な施策に取り組んでおります。
 温暖化対策をさらに強化していくためには、区市町村が展開している施策とも連携し、都民一人一人や地域の中小零細企業者にも取り組みを拡大していくことが必要であります。要するに、きめの細かい積み上げが絶対に必要だと思います。
 このため、都は昨年度、区市町村への温暖化対策に係る財政支援を開始し、さらに今年度は、より活用しやすいように制度の拡充にも努めております。
 今後、区市町村との連携もこれまで以上に強化することによりまして、地域における取り組みを推進し、地球温暖化対策をより広範なものとしていきたいと思っております。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

○東京都技監(河島均君) 大山地区のまちづくりと都市基盤整備についてのご質問にお答えいたします。
 板橋区の大山地区は、駅周辺にまとまった規模の商業集積が見られ、文化や医療などの公共施設もあることから、今後、これらを生かして、安全で活力とにぎわいのあるまちを目指すべき地区と認識しております。
 この地区のまちづくりの課題といたしましては、踏切対策基本方針で鉄道立体化の検討対象区間とされた東武東上線の踏切解消、都市計画道路の優先整備路線に位置づけられた補助第二六号線の整備、この計画路線が横断する商店街の再編整備などが挙げられます。
 こうした課題を解決するには、まず、地元において、まちの将来像が共有されていることが必要でございます。このため、昨年六月、板橋区によって地域住民による協議会が発足し、現在、同協議会において、将来のまちづくりについて検討が行われております。
 都は、こうした地元の取り組みを勘案しながら、補助第二六号線の整備と沿道のまちづくりを一体的に進める方策や、二六号線と鉄道の立体化のあり方について、地元区と連携して検討を進めてまいります。
   〔知事本局長秋山俊行君登壇〕

○知事本局長(秋山俊行君) カジノの誘致についてでございますが、カジノは、広く日本全体の観光資源となるとともに、経済波及効果や雇用創出効果が期待できるものでございまして、多くの国で開設され、広く認知されたものとなっております。
 一方、我が国では、刑法で規制をされておりまして、カジノを実現するためには、何よりもまず国が法整備を行うことが必要になっております。そのため、都はこれまでも国に対しまして、必要な法整備を行うこと、また、地域の実情に即した運営が可能な仕組みとするなど、地方自治体の意向を十分踏まえることを提案要求してきているところでございます。
 今後も、ただいまお話のございました国会などの動きを注視しながら、引き続き国に対して働きかけをしてまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

○産業労働局長(前田信弘君) 雇用対策にかかわる三点のご質問にお答えいたします。
 まず、若年者雇用に関する認識と支援の基本的な考え方についてであります。
 ご指摘のとおり、若年者を取り巻く雇用環境は、他の年齢層と比べて高い水準にある失業率や新卒者の就職率の低下等、厳しい状況にございます。将来的に労働力人口の減少が見込まれる中で、こうした状況を放置すれば、若年者自身の職業的自立、キャリア形成に支障が生じることはもとより、産業や社会の活力低下につながりかねない重大な問題だと認識しております。
 この問題の本質的解決のためには、国が明確な成長戦略のもと、実効性ある経済対策を進め、雇用の創出につなげていくことが不可欠でありますが、現下の情勢を踏まえ、都としても可能な限りの対応をする必要がございます。
 このため、都は、新卒未就職者や就業経験の少ない若年者の雇用ミスマッチを解消し、正規雇用などの安定的な雇用につなげるため、職業意識の醸成や就労意欲の喚起を図るとともに、本人の希望や適性を踏まえた多様なサービスを提供するなど、きめ細かい支援を実施することとしております。
 次に、若年者向け就職支援の具体的な取り組みについてであります。
 若年者については、就業経験や社会経験が少ない方が多いことから、面接対策や職業紹介等に加えまして、一人一人の状況に応じたサービスを行うことが重要であります。
 このため、都は、しごとセンターにおきまして、個別担当制によるきめ細かいキャリアカウンセリング、就職に必要な基礎能力を養う少人数のグループワーク、企業での職場体験、企業の採用担当者との交流など、支援内容の工夫や充実を図り、若年者への就職支援を強化してまいりました。
 こうした取り組みによりまして、しごとセンターの開設以来、これまで約四万三千人の若年者を支援し、約一万五千人の就職を実現しております。今後とも、実効性ある若年者の就職支援に取り組んでまいります。
 最後に、しごとセンターにおける新卒者対策の具体的な取り組みについてでありますが、新卒者の厳しい就職状況を受け、ことしの三月十五日に、飯田橋と多摩のしごとセンターに新卒緊急応援窓口を設置し、卒業後も就職活動を継続する未就職者に対する緊急支援を開始いたしました。
 具体的には、個別カウンセリングや職業紹介を行うほか、各種グループワークやセミナーについて、新卒未就職者の受講特別枠を設定し、受け入れを図っております。加えて、就職活動の基本を再度確認したいという学生さんを対象とした就活応援講座等を実施しております。これら窓口の利用者は、開設以来五月の末日までに、大学や短大の卒業者を中心に約四百人に上っております。
 こうした実績を踏まえ、今後とも、新規学卒者に対するきめ細かな支援を実施してまいります。
   〔総務局長中田清己君登壇〕

○総務局長(中田清己君) 地上デジタル放送に関します二点のご質問にお答えします。
 まず、地上デジタル放送への完全移行に向けたこれまでの取り組みについてでございますが、都は、さまざまな機会をとらえまして、国に対し、説明、相談体制の強化や支援策の充実などを要求し、テレビ受信者支援センターによるきめ細かな説明会の開催や、外出が困難な高齢者などへの戸別訪問、各種の助成制度の創設、拡充などが実現いたしました。
 これに加えまして、「広報東京都」や都のホームページなどを通じまして、地デジ放送視聴のために必要な対応や、相談窓口、支援制度等につきまして、広く都民へ周知を図っております。
 さらに、地デジ移行に係ります都と区市町村の連絡会議に、国や放送事業者、家電販売事業者などの参画を得まして東京地区連絡会議へと発展改組し、本年三月には、東京の地域特性を踏まえました行動計画を策定し、現在、これに基づきまして、関係機関が協力連携し、円滑な移行に向けました多様な取り組みを展開しております。
 次に、地上デジタル放送への完全移行に向けた今後の課題と対応についてでございますが、都内では、受信機器の普及率は全国平均を上回って順調に推移している一方、都市部の特徴として、ご指摘の集合住宅やビル陰等による受信障害対策の共聴施設が多く、それらのデジタル化対応がおくれていることから、今後、重点的な取り組みが必要と認識しております。
 このため、引き続き関係機関が連携し、集合住宅のオーナーや受信障害の原因者等を対象とした情報提供、訪問調査、専門家による相談などの取り組みを強化するほか、今後、国へさらなる対策の充実を働きかけるとともに、都みずからも、テレビ、ラジオを含むさまざまな媒体を活用しまして、関係者への一層の周知に努めるなど、都民がテレビを見られない事態が生ずることのないよう、適切に対応してまいります。

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