平成二十二年東京都議会会議録第九号

○議長(田中良君) 三十八番吉倉正美君。
   〔三十八番吉倉正美君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○三十八番(吉倉正美君) 初めに、東京の中小零細企業に対する振興策について伺います。
 世界経済が急速に悪化する中、外需に依存している我が国の実体経済は、大きな打撃を受けております。一部では、景気の底打ちも近いとの見方も出ておりますが、中小零細企業の現場では、景気回復など、ほとんど実感できないのが現実であります。
 特に製造業では、機械類は使用されないまま放置され、せっかくの技術力を生かす場もなく、このままでは廃業しなければならないとの悲痛な声が上がっております。
 こうしたときこそ政治が強力なリーダーシップを発揮し、厳しい局面の打開をすべきでありますけれども、失政を繰り返す現政権には、たとえ看板を変えても期待ができないことは明白であります。
 国が機能不全に陥っている状況の中、都が国に先駆けて、東京から中小零細企業の成長戦略を果敢に打ち出すべきであります。すなわち、中小零細企業みずからが、すぐれた技術を存分に発揮することで競争力ある製品を生み出していく。そうした取り組みを都が強力に支援していくことが極めて重要であります。
 そこで、東京の産業を振興させ、発展させるための方策について、知事の所見を伺います。
 厳しい経済情勢を反映し、中小零細企業の方々より寄せられる相談の多くは、親企業との不適正な取引であります。仕事が減少する中で、ようやく受注した仕事は、納期は短く、コストも安い。しかし、家族全員で必死に取り組む中、突然、親企業より、規格変更を理由に、一方的に仕事が打ち切られる。予定していた収入が途切れ、途方に暮れているとの切実な声がありました。
 下請でも四次、五次に当たる会社では、収入が一定しないため、従業員も雇えず、家族だけで仕事をこなしております。また、親企業との契約も無理を強いられることも多く、弱い立場の実態がなかなか表に出ない状況が続いております。
 都は、このような不適正な取引に苦しむ中小零細企業の現状を正確に認識すべきであり、取引の適正化への役割を積極的に果たすべきであります。見解を求めます。
 中小零細企業が経営基盤の安定強化を図り、より一層の成長を果たしていくためには、発注元の親事業者と下請中小零細事業者との間に適正な取引が行われることが必要であります。
 この両者が共通の認識を持って適正取引を実現していくために最も必要なことは、都が仲介役を果たし、親事業者と下請事業者がより平等な立場で契約を結べるような場を提供していくことであります。見解を求めます。
 次に、鉄道駅のバリアフリー対策について伺います。
 駅のバリアフリー化は、高齢者や障害者を含むすべての人が利用しやすいユニバーサルデザインの観点から、社会的要請が強い取り組みであります。
 国においては、平成十八年度に、いわゆるバリアフリー新法を制定し、平成二十二年までに、乗降客五千人以上のすべての駅にエレベーター等を整備することとしております。ことしは、この整備目標の最終年となりますが、JR及び私鉄における平成二十年度末時点でのエレベーター等の整備率は約八六%であり、達成に向けて最終段階に入っております。
 ただ、残された未整備駅については、駅舎やホームが狭隘であることや設置のスペースを確保できないことなどが課題となり、整備が進んでいないのが現状であります。しかし、こうした未整備駅こそ、都が積極的に整備に関与していくべきであります。見解を求めます。
 今月六日、JR鶯谷駅で全盲の男性がホームから転落する事故がありました。幸い救助されましたが、このような事故を未然に防ぐためには、ホーム上の安全対策が必要であり、ホームからの転落防止対策としての可動式ホームさくの整備は極めて効果的であります。
 東京都盲人福祉協会副会長の時任基清さんは、ひとり歩きの盲人の九八%がホームからの転落を経験していると語り、駅のホームは、盲人にとって欄干のない橋のようなものだと、その危険性を指摘しております。可動式ホームさくについては、設置されたホームでは一件の転落事故も発生していないと、その必要性を強調しておりました。
 現在、都営地下鉄を初め、東京メトロなどの地下鉄には可動式ホームさくの整備が進められておりますが、JRなどの鉄道には、国や都の支援スキームがないため、ほとんど整備は進んでおりません。今回ようやくJR東日本では、山手線の恵比寿駅、目黒駅に可動式ホームさくの整備を自主的に始めておりますが、しかし、一日当たり約三百五十万人の乗降客を数える新宿駅や、過去に転落による死亡事故が発生した新大久保駅など、緊急性、必要性の高いJR山手線の駅がまだ未整備のままであります。
 そこで、一刻も早く転落防止の抜本的対策である可動式ホームさくの整備に取り組むべきであります。見解を伺います。
 ところで、現在、都では駅のエレベーター整備を福祉保健局、自由通路整備による駅の改良や地下鉄駅のバリアフリー化を都市整備局が所管しております。両局が連携して取り組むことは当然でありますが、駅のバリアフリー化をより強力に推進するためには、両局の施策を統合し、効果的、効率的に進めるべきであります。このことを強く要望しておきたいと思います。
 次に、使い捨てライターによる事故防止について質問します。
 最近、子どもの使い捨てライターの火遊びが原因と見られる火災で、幼い命が犠牲になる悲劇が相次いでおります。
 ことし二月に、東京練馬区のアパートで発生した火災では、二歳と三歳の幼児が死亡。出火元と見られる和室の押し入れ付近からライター五、六個が見つかり、原因は幼児の火遊びと見られております。ライターの火遊びによる火災で子どもが犠牲になるケースは、このほか、北海道や宮城、川崎などでも相次いで発生しております。この悲惨な事故を防げない原因の一つは、使い捨てライターなどに安全規制がなく、幼児でも簡単に着火できることにあります。
 国内で一年間に約六億個流通しているライターの九割は使い捨て型で、八割が輸入品だといわれております。
 このため、都は昨年、法律による規制を国に要望し、その結果、国では現在、子どもが簡単に着火できるライターの製造、販売の禁止に向けて法令改正の作業を進めており、来年夏には規制が実施される予定と聞いております。都のいち早く鳴らした警鐘と、国会における公明党の主張が大きな力となって、子どもたちの安全のための着実な一歩を踏み出したものと考えております。
 今後、緊急に求められるのは、現在流通している六億個を超える使い捨てライターの危険性の注意喚起であり、各家庭にある使い捨てライターを安全装置つきライターに買いかえを促す告知であります。
 そこで、第一に、今年度の都の広報キャンペーンの重点テーマに、使い捨てライターの注意喚起の告知を当てはめ、あらゆる広報媒体を活用して、啓発活動を強化すべきであります。
 第二に、子どものライター火遊びをなくすために、幼稚園や保育園の場で、火遊びや火災の恐ろしさを学べる安全教育を進めるべきであります。それぞれ見解を求めます。
 また、安全装置つきライターが販売されても、家庭内に使い捨てライターが残されている限り、子どもたちへの危険はなくなりません。そこで、今後、販売禁止となる使い捨てライターについて、回収する仕組みを検討すべきであります。見解を求めます。
 最後に、私の地元の飯田橋駅と飯田橋交差点の歩道橋について伺います。
 飯田橋駅は、JR中央線など五つの鉄道が交わる交通結節点であり、千代田区、新宿区、文京区の三区の区境に位置し、駅東口にある飯田橋交差点は、外堀通り、目白通り、大久保通りが交差する交通の要衝であります。
 飯田橋は、江戸文化を色濃く残す東京名所の地域にもかかわらず、三区にまたがることから多くの未解決の問題を抱えております。
 その第一は、飯田橋歩道橋の揺れと幅員の狭さに加えて、歩道橋の経年劣化による危険性が心配されるということ、第二は、JR飯田橋駅が湾曲しているため、ホームと電車のすき間が著しく大きくあいており、落下事故の危険性が高いということ、第三は、飯田橋駅ガード下の歩道が狭くて暗く、危険だということであります。
 こうした点について、私は昨年、環境・建設委員会でも改善整備に向けた指摘をいたしましたが、問題解決の一番の方法は、飯田橋駅と飯田橋交差点を歩行者デッキによって一体的に整備を進めることであります。立川駅や町田駅では、駅と周辺の建物が歩行者デッキで効率的に接続されるなど、駅前広場が整備されております。
 この歩行者デッキこそ駅と交差点を結ぶ一体的整備の核となるものと考えますが、計画のためには何が課題となるのか、見解を求めます。
 さらに、飯田橋地域は三区にまたがることから、それぞれが取り組むまちづくりを、広域的な立場から総合的に事業を推進できる都がイニシアチブをとって前へ進め、JR東日本などの鉄道事業者との調整もリーダーシップを持って行うべきであります。
 そこで、飯田橋駅と歩行者デッキの一体的整備の実現に向けた都の取り組みについて伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 吉倉正美議員の一般質問にお答えいたします。
 東京の産業を発展させる方策についてでありますが、東京には他の追随を許さないすぐれた技術を持つ小零細企業が数多く集中、集積しておりまして、東京のみならず我が国の産業力の源泉となっております。
 小零細企業がいまだ厳しい経営環境を乗り越えて、将来にわたって発展していくには、高度な技術とそれを実用化する力を最大限に発揮し、新たな事業に結実させていくことが極めて重要であります。
 これまでも都は、ベンチャー技術大賞などにより、先進的で高度な技術を有する企業を積極的に支援してまいりました。特にベンチャー技術大賞受賞企業のすぐれた技術については、外国語の冊子にもまとめまして、海外に対して広く紹介をしております。
 非常に多岐にわたる新しい技術が開発されておりますが、これは日本では有効でなくても、途上国の国情によっては非常に有効な技術というか発明がたくさんございます。
 例えば、川の表流というものを利用して、川の流れの表につなぐことで、この机の半分ぐらいのものでも川の流れを利用して発電をして、大体東京の一つの家庭がテレビや電気掃除機、あるいは冷蔵庫といったものに使う電力というものを賄えるような、そういった非常にコンパクトな発電機の発明がございますが、これは日本では余り有効性はございませんけれども、川の流れがあって電力のない途上国などでは非常に有効なものだと思います。
 あるいは、その他、日本のような先進国でぜいたくな食べ物を知っている人たちに多い、糖尿病の足が腐ってくるような、そういう患者さんの足を防ぐために、たった二人の研究所が開発しているような特殊な技術がございますが、こういったものは水もろくに飲めない、ご飯もよく食べられない途上国では必要ないことでありましょうけれども、いずれにしろ、非常に多岐にわたる発想というものがいろんな技術になってあらわれていまして、これを本来なら国がまとめてセールスにかけるということが必要だと思いますけど、残念ながらやってまいりませんでした。
 これを東京都がかわりにやろうと思ってやってまいりましたが、さらに首都大学東京や都立産業技術研究センターなどの英知を結集しまして、環境など成長が期待されている分野において技術戦略ロードマップを策定し、技術開発から実用化までの道筋を示すとともに、これに沿った小零細企業の取り組みを支援していきたいと思います。
 今後とも、懸命に努力をする小零細企業の技術開発を全力で支援しまして、東京の産業をより一層発展させていきたいと思っております。
 他の質問については、技監並びに関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監河島均君登壇〕

○東京都技監(河島均君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、駅舎やホームが狭隘な駅におけるバリアフリー化についてでございますが、これらの駅では既存の駅施設内でエレベーター等を整備することが困難であるため、駅舎の橋上化を初めとした大規模な駅改良や、駅周辺整備と一体となった対策などが必要でございます。
 都はこれまでも、JR御茶ノ水駅などにおきまして周辺のまちづくりを契機に、駅前広場や自由通路整備とあわせたエレベーター等の整備に対し技術的支援を行うなど、駅のバリアフリー化を推進してまいりました。今後ともだれもが安心で快適に移動できる都市を目指して、関係機関と連携しながら駅のバリアフリー化に積極的に取り組んでまいります。
 次に、鉄道駅における可動式ホームさくの整備についてでございますが、可動式ホームさくは、ホームからの転落や列車との接触などの事故防止に有効な鉄道の安全対策施設であるとともに、高齢者や障害者等の移動の安全性の確保に資する施設であると認識しております。
 既存駅への設置に当たりましては、車両扉の位置の異なる列車への対応、ホーム幅の減少、停車時間の増大による輸送力の低下などのさまざまな課題があり、可動式ホームさくの整備が進んでいないのが現状でございます。
 駅のホームにおける安全対策は、鉄道事業者がみずからの責任で取り組むことを基本としつつ、都におきましても、だれもが安全に安心して鉄道を利用できるよう、可動式ホームさく等の課題を整理し、整備促進に向けた検討を行ってまいります。
 次に、歩行者デッキを計画するに当たっての課題についてでございますが、お話のあった立川駅周辺の歩行者デッキは、ターミナル機能の強化と回遊性のあるまちづくりを目的とした土地区画整理事業等で、また、町田駅周辺の歩行者デッキは、小田急線とJR線の両駅間の連絡強化等を目的とした市街地再開発事業で、いずれも地元市が行うまちづくりの一環として円滑な歩行者ネットワークの形成を図るために整備されたものでございます。
 こうした事例に見られるように、歩行者デッキの計画を進めるに当たっては、まず地元自治体が綿密な検討を行い、まちづくり計画における位置づけや必要性を明確にすることが課題となります。
 さらに、建物や駅との接続方法等、具体的な整備計画の技術的な検証を行うことや、整備手法、整備主体等、実現可能な事業スキームを関係者と十分な協議、調整を行い作成することなどの課題があると考えております。
 最後に、飯田橋駅と歩行者デッキの一体的整備についてでございますが、本地域は鉄道五路線が結節し、幹線道路三路線が交差する交通の要衝であり、こうした特性を生かした再開発事業等の動きが見られる地域でございます。
 お話の一体的整備の実現に向けては、本地域が三区の区域界にあることから、まず地元の三区が協力して駅周辺地域のまちづくりの方向性を定め、その上で駅前広場などの基盤整備のあり方を検討する必要があります。
 このため、都と地元三区が駅周辺の開発動向を見ながら、まちづくりの課題を共有し、基盤整備のあり方を議論する場として、本年二月、行政間の連絡調整会議を設置いたしました。
 今後も、都は広域的な観点から、連絡調整会議の場などを通じ、地元区や関係事業者が行うまちづくりの取り組みに対し、さまざまな技術的支援を行ってまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

○産業労働局長(前田信弘君) 中小企業対策に係る二点のご質問にお答えいたします。
 まず、中小企業の取引適正化についてでありますが、下請代金の支払い遅延や減額要求など、下請に係る不適正な取引は中小企業の経営に影響を及ぼすなど切実な問題であると認識しております。
 このため、都は、下請法の講習会や下請センター東京の相談員の企業巡回などにより、下請法や裁判外紛争解決手続、いわゆるADRの周知を図るとともに、法令に抵触する事案には調停や公正取引委員会等への通知等の対応を行っております。また、昨年度には相談員を増員いたしまして、下請取引の適正化に、より一層努めているところでございます。
 さらに昨年六月には、親企業団体の協議会と下請企業団体の協議会の両者の合同会議を開催し、都を含めた三者で下請取引の適正化に向けた共同宣言を行い、取引の改善に努めていくことといたしました。今年度も引き続き相互協力が進むよう、両協議会の合同会議を開催いたします。
 今後とも下請法やADRの普及に取り組み、下請取引の適正化を推進してまいります。
 次に、親事業者と下請事業者の共通の認識による取引の適正化についてであります。
 現下の厳しい経済状況を乗り切っていくためには、親企業と下請企業の双方が適正な取引が必要であるという認識を共有することは極めて重要であります。
 都は、昨年六月に開催された合同会議の場で、親企業と下請企業が協力することの意義を強く訴えまして、両者が同じ考え方を持つように働きかけを行い、その内容を共同宣言として取りまとめました。
 この共同宣言の内容を具体化するため、都では発注をする親企業と下請の中小企業を対象として、下請法等に精通した取引適正化相談員を配置した新たな商談会を今月下旬にも全国に先駆けて開催いたします。
 今後も親企業と下請企業の協力関係の構築を図り、下請取引の適正化を実現するため、着実に取り組んでまいります。
   〔生活文化スポーツ局長並木一夫君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(並木一夫君) 使い捨てライターに関する注意喚起についてでございますが、都はこれまで、子どもの保護者向けに約七十万部のリーフレットを配布するなど、使い捨てライター事故防止のための注意喚起を行ってまいりました。
 今後は、新たな法規制の内容やライターの安全な取り扱いについて幅広く都民に伝えていくとともに、子どもたちに火の怖さを教える取り組みを進めることが重要と考えております。
 このため、社会全体で子どもたちを守るためにも、ご指摘の今年度の東京都の重点広報テーマの一環といたしまして、テレビ、ラジオ、「広報東京都」等も活用した広報キャンペーンを展開してまいります。
 また、消防庁と連携をし、幼稚園や保育園に通います子どもたちに、マスコット人形などを使用した幼児向けの教材を用い火の危険性をわかりやすく教えるなど、事故の未然防止にも取り組んでまいります。
   〔環境局長有留武司君登壇〕

○環境局長(有留武司君) 使い捨てライターの回収についてでありますが、現在、区市町村において不燃ごみや有害ごみとして収集し、破砕処理しております。
 今後、子どもが簡単に着火できるライターの販売禁止に伴い、使い捨てライターの廃棄がふえることが考えられます。
 このため、都は、国に対して使い捨てライターの安全な廃棄の方法について、広く普及啓発を行うよう働きかけるとともに、関係業界や区市町村と連携しまして、適正な回収や処理が実施できるよう積極的に取り組んでまいります。

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