平成二十二年東京都議会会議録第七号

平成二十二年六月一日(火曜日)
 出席議員 百二十六名
一番小林 健二君
二番加藤 雅之君
三番三宅 正彦君
四番吉住 健一君
五番桜井 浩之君
六番野田かずさ君
七番福士 敬子君
八番土屋たかゆき君
九番山内れい子君
十番くりした善行君
十一番中村ひろし君
十二番西沢けいた君
十三番田中  健君
十四番関口 太一君
十五番畔上三和子君
十六番斉藤やすひろ君
十七番栗林のり子君
十八番遠藤  守君
十九番伊藤 興一君
二十番鈴木 章浩君
二十一番きたしろ勝彦君
二十二番田中たけし君
二十三番鈴木 隆道君
二十四番神林  茂君
二十五番星 ひろ子君
二十六番小山くにひこ君
二十七番柳ヶ瀬裕文君
二十八番淺野 克彦君
二十九番新井ともはる君
三十番佐藤 由美君
三十一番たきぐち学君
三十二番田の上いくこ君
三十三番島田 幸成君
三十四番しのづか元君
三十五番大島よしえ君
三十六番大松あきら君
三十七番上野 和彦君
三十八番吉倉 正美君
三十九番松葉多美子君
四十番早坂 義弘君
四十一番高木 けい君
四十二番石森たかゆき君
四十三番高橋 信博君
四十四番中屋 文孝君
四十五番村上 英子君
四十七番西崎 光子君
四十八番滝沢 景一君
四十九番中谷 祐二君
五十番笹本ひさし君
五十一番山下ようこ君
五十二番神野 吉弘君
五十三番鈴木 勝博君
五十四番興津 秀憲君
五十五番岡田眞理子君
五十六番伊藤 ゆう君
五十七番古館 和憲君
五十八番かち佳代子君
五十九番中山 信行君
六十番高倉 良生君
六十一番橘  正剛君
六十二番谷村 孝彦君
六十三番野上 純子君
六十四番高橋かずみ君
六十五番山加 朱美君
六十六番山崎 一輝君
六十七番菅  東一君
六十八番宇田川聡史君
六十九番山田 忠昭君
七十番林田  武君
七十一番原田  大君
七十二番佐藤 広典君
七十三番尾崎 大介君
七十四番松下 玲子君
七十五番山口  拓君
七十六番伊藤まさき君
七十七番野上ゆきえ君
七十八番西岡真一郎君
七十九番今村 るか君
八十番吉田康一郎君
八十一番たぞえ民夫君
八十二番清水ひで子君
八十三番小磯 善彦君
八十四番長橋 桂一君
八十五番藤井  一君
八十六番ともとし春久君
八十七番三宅 茂樹君
八十八番遠藤  衛君
八十九番吉原  修君
九十番野島 善司君
九十一番鈴木あきまさ君
九十二番三原まさつぐ君
九十三番田島 和明君
九十四番樺山たかし君
九十五番斉藤あつし君
九十六番泉谷つよし君
九十七番くまき美奈子君
九十八番大西さとる君
九十九番増子 博樹君
百番いのつめまさみ君
百一番門脇ふみよし君
百二番小沢 昌也君
百三番花輪ともふみ君
百四番大津 浩子君
百五番大山とも子君
百六番鈴木貫太郎君
百七番東村 邦浩君
百八番中嶋 義雄君
百九番木内 良明君
百十番古賀 俊昭君
百十一番こいそ 明君
百十二番服部ゆくお君
百十三番川井しげお君
百十四番吉野 利明君
百十五番宮崎  章君
百十六番比留間敏夫君
百十七番相川  博君
百十八番石毛しげる君
百十九番大塚たかあき君
百二十番和田 宗春君
百二十一番山下 太郎君
百二十二番酒井 大史君
百二十三番大沢  昇君
百二十四番中村 明彦君
百二十五番馬場 裕子君
百二十六番田中  良君
百二十七番吉田 信夫君

 欠席議員 一名
四十六番 矢島 千秋君

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事佐藤  広君
副知事猪瀬 直樹君
副知事吉川 和夫君
副知事村山 寛司君
教育長大原 正行君
東京都技監都市整備局長兼務河島  均君
知事本局長秋山 俊行君
総務局長中田 清己君
財務局長安藤 立美君
警視総監池田 克彦君
主税局長熊野 順祥君
生活文化スポーツ局長並木 一夫君
環境局長有留 武司君
福祉保健局長杉村 栄一君
産業労働局長前田 信弘君
建設局長村尾 公一君
港湾局長比留間英人君
会計管理局長新田 洋平君
交通局長金子正一郎君
消防総監新井 雄治君
水道局長尾崎  勝君
下水道局長松田 二郎君
青少年・治安対策本部長倉田  潤君
病院経営本部長中井 敬三君
中央卸売市場長岡田  至君
選挙管理委員会事務局長矢口 貴行君
人事委員会事務局長泉本 和秀君
労働委員会事務局長関  敏樹君
監査事務局長三橋  昇君
収用委員会事務局長野口  孝君

六月一日議事日程第一号
第一 第百十六号議案
平成二十二年度東京都一般会計補正予算(第一号)
第二 第百十七号議案
都と特別区及び特別区相互間の財政調整に関する条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例
第三 第百十八号議案
東京都組織条例の一部を改正する条例
第四 第百十九号議案
東京都都税条例の一部を改正する条例
第五 第百二十号議案
東京都教育委員会の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第六 第百二十一号議案
東京都立学校の授業料等徴収条例の一部を改正する条例
第七 第百二十二号議案
東京都女性福祉資金貸付条例の一部を改正する条例
第八 第百二十三号議案
都立大泉高等学校・附属中学校(二十二)改築工事請負契約
第九 第百二十四号議案
東京国際展示場(二十二)会議棟改修工事請負契約
第十 第百二十五号議案
警視庁青梅警察署庁舎(二十二)改築工事請負契約
第十一 第百二十六号議案
東京国際展示場(二十二)ビル管理設備改修工事請負契約
第十二 第百二十七号議案
城山トンネル(仮称)整備工事(西―城山の五)請負契約
第十三 第百二十八号議案
中央環状品川線大井ジャンクション鋼けた製作・架設工事(その二)請負契約
第十四 第百二十九号議案
公立大学法人首都大学東京中期目標について
第十五 第百三十号議案
東京都立東京臨海広域防災公園の指定管理者の指定について
第十六 第百三十一号議案
心臓衝撃装置(自動体外式除細動器)外一種の買入れについて
第十七 第百三十二号議案
東京都後期高齢者医療財政安定化基金条例の一部を改正する条例
第十八 地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した東京都都税条例の一部を改正する条例の報告及び承認について

   午後一時開会・開議

○議長(田中良君) ただいまから平成二十二年第二回東京都議会定例会を開会いたします。
 これより本日の会議を開きます。

○議長(田中良君) まず、会議録署名議員の指名を行います。
 会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において、
   三番   三宅 正彦君 及び
   六十四番 高橋かずみ君
を指名いたします。

○議長(田中良君) この際、謹んでご報告申し上げます。
 名誉都民鈴木俊一氏には、去る五月十四日、また、名誉都民青木半治氏には、五月三十日、逝去されました。まことに哀悼痛惜の念にたえません。
 ここに生前のご功績をたたえるとともに、故人のご冥福をお祈りし、議会として深甚なる弔意を表します。

○議長(田中良君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。

○議事部長(鈴木省五君) 平成二十二年五月二十五日付東京都告示第七百九十六号をもって、知事より、本定例会を招集したとの通知がありました。
 また、同日付で、本定例会に提出するため、議案十七件の送付がありました。
 次に、地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した東京都都税条例の一部を改正する条例の報告及び承認について依頼がありました。
 次に、平成二十二年第一回定例会の会議において同意を得た副知事、固定資産評価審査委員会委員及び公害審査会委員の任命について、発令したとの通知がありました。
 次に、先般の人事異動に伴う東京都議会説明員の変更について、地方自治法第百二十一条及び会議規則第四十二条の規定に基づき通知がありました。
 次に、平成二十一年度東京都一般会計予算外三件の明許繰越について、平成二十一年度東京都一般会計予算外一件の事故繰越について及び平成二十一年度東京都中央卸売市場会計予算外八件の繰り越しについて、それぞれ報告がありました。
 次に、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づき専決処分した訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告がありました。
 次に、監査委員より、例月出納検査の結果について報告がありました。
 また、監査結果に基づき知事等が講じた措置に関する報告がありました。
 次に、包括外部監査の結果に基づき知事が講じた措置の通知内容について、提出がありました。
(別冊参照)

○議長(田中良君) 次に、文書質問に対する答弁書について申し上げます。
 第一回定例会に提出されました文書質問に対する答弁書は、質問趣意書とともに送付いたしておきました。ご了承願います。
文書質問趣意書及び答弁書は本号末尾(七ページ)に掲載〕

○議長(田中良君) 次に、先般、副知事に就任されました方々をご紹介いたします。
 副知事吉川和夫君。
   〔副知事吉川和夫君登壇〕

○副知事(吉川和夫君) 選任の同意をいただき、副知事を拝命いたしました吉川和夫でございます。石原知事のもと、東京のさらなる発展、都民の安心・安全の実現のため、微力ではございますが全力で精進いたしますので、都議会の皆様のご指導、ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

○議長(田中良君) 副知事村山寛司君。
   〔副知事村山寛司君登壇〕

○副知事(村山寛司君) 先般、都議会第一回定例会において選任の同意をいただきまして、副知事を拝命いたしました村山寛司でございます。今後も厳しい財政環境が想定される中にあって、直面する諸課題への対応、将来に向けた東京の都市づくりなど、都がなすべき役割をしっかりと果たすべく、石原知事のもと、全力で取り組んでいく決意でございます。何とぞご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

○議長(田中良君) 以上をもって副知事の紹介は終わりました。

○議長(田中良君) 次に、先般の人事異動に伴い異動のありました説明員の方々をご紹介いたします。
 東京都技監都市整備局長兼務河島均君、知事本局長秋山俊行君、財務局長安藤立美君、生活文化スポーツ局長並木一夫君、福祉保健局長杉村栄一君、建設局長村尾公一君。
   〔理事者あいさつ〕

○議長(田中良君) 以上をもって説明員の紹介は終わりました。

○議長(田中良君) 次に、閉会中の常任委員の所属変更について申し上げます。
 去る四月二十日付をもって、古館和憲君より、総務委員から警察・消防委員へ、吉田信夫君より、警察・消防委員から総務委員へ、それぞれ常任委員の所属変更の申し出がありましたので、委員会条例第五条第三項ただし書きの規定により、議長において、それぞれ同日付をもってこれを許可いたしました。

○議長(田中良君) 次に、閉会中のオリンピック・パラリンピック招致特別委員、株式会社新銀行東京に関する特別委員及び東京都中央卸売市場築地市場の移転・再整備に関する特別委員の辞任及び選任について申し上げます。
 お手元配布の名簿のとおり、各委員よりそれぞれ辞任願が提出されましたので、委員会条例第十一条第一項ただし書きの規定により、議長において、それぞれこれを許可いたしました。
 なお、委員の欠員を補充するため、委員会条例第五条第四項の規定により、議長において、お手元配布の名簿のとおり指名いたしました。

オリンピック・パラリンピック招致特別委員辞任・選任名簿
○辞任
 中嶋 義雄君(公明)
〔以上 平成二十二年四月一日付〕

○選任
 藤井  一君(公明)
〔以上 平成二十二年四月一日付〕

株式会社新銀行東京に関する特別委員辞任・選任名簿
○辞任
 高木 けい君(自民)
〔以上 平成二十二年四月一日付〕
 西岡真一郎君(民主)
〔以上 平成二十二年四月六日付〕

○選任
 鈴木 章浩君(自民)
〔以上 平成二十二年四月一日付〕
 大沢  昇君(民主)
〔以上 平成二十二年四月六日付〕

東京都中央卸売市場築地市場の移転・再整備に関する特別委員辞任・選任名簿
○辞任
 山崎 一輝君(自民) 藤井  一君(公明)
〔以上 平成二十二年四月一日付〕
 大沢  昇君(民主)
〔以上 平成二十二年四月六日付〕

○選任
 高木 けい君(自民) 伊藤 興一君(公明)
〔以上 平成二十二年四月一日付〕
 西岡真一郎君(民主)
〔以上 平成二十二年四月六日付〕

○議長(田中良君) 会期についてお諮りいたします。
 今回の定例会の会期は、本日から六月十六日までの十六日間といたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(田中良君) ご異議なしと認めます。よって、会期は十六日間と決定いたしました。

○議長(田中良君) この際、知事より発言の申し出がありますので、これを許します。
 知事石原慎太郎君。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 平成二十二年第二回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。
 去る五月十四日、元東京都知事、名誉都民の鈴木俊一さんが逝去されました。また、五月三十日には、名誉都民である青木半治さんが逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。
 さて、我が国はグローバルな競争の波に洗われ、国家の構造が根本から揺らぐ人口減少社会に突入するなど歴史的な岐路に立たされております。活路を見出すためには、日本のあるべき理念を掲げて国家のグランドデザインやアイデンティティーをみずからの手で確立しなければなりません。それゆえ、政治は国家官僚の支配から脱して本来の責任を果たし、役割を終えた社会システムを抜本的に改良することを求められております。国際競争を勝ち抜くために我が国を新しい成長へと導き、同時に危機に瀕した財政を再建することも焦眉の課題であります。
 このような状況にあって、昨年九月に発足した政権は、複雑な連立方程式をいかに苦しくとも解いていく気迫に欠け、行政組織を使いこなすこともできず迷走しております。
 首都を預かる知事としても政権に期待し、それゆえ幾つかの建言もいたしました。しかし、政権が標榜する地域主権は、国と地方の役割分担に関する根本的な発想を欠いて霞が関の抵抗を抑え切れず、国が地方を縛ってきた義務づけ、枠づけの見直しも不十分な内容にとどまっております。コンクリートではなく人間を大事にすると主張する一方で、八ッ場ダムの建設の中止を表明した根拠をいまだに示さないのは、国民の安全・安心を守るべき政治として責任ある姿勢とはいえません。外環道のような費用対効果、経済効果の高い社会資本整備を遅滞させ、他方で経済への還流が定かでない歳出を増大させては、我が国経済の再生も国家財政の再建もあり得ません。
 国政では、正当な歴史観、文明観という背骨を欠いた、情緒的、感傷的な言葉だけが幅をきかせております。鳩山首相自身、国を守る意識と能力を致命的に欠き、日本列島は日本人だけの所有物ではないと公言する始末であります。国家を背負う気概を置き去りにした政治には、難局にあって歴史の裁きに耐えられる決断を下すことは到底できません。このままでは日本は衰微するしかなく、既に国威は低下しつつあり、国際社会において、日本を無視し切り捨てるジャパンディッシングなる侮蔑的な言葉さえ生まれております。
 漂流する政治に国民は失望し、将来への展望を見出せないまま自信を喪失しております。そして、社会のせつな的で利己的な風潮にさらに拍車がかかることになっております。
 我が国は、戦後の長きにわたる平和がもたらした物質的繁栄になれ、心のたががいささか緩んできております。目先の欲望成就だけを願い、増税を含めていかなる負担や責任の増大をも拒む風潮に対して、肝心の政治は、道理をもって国家の将来や日本人としてのありようを説こうとしません。相変わらず痛みに目を背け、成り立ち得ない高福祉、低負担への幻想を断ち切れずにいます。
 我々は価値の混乱の大きな渦に巻き込まれ、世代を超えて持ち続けるべき垂直な価値の基軸は根底から揺らいでおります。
 国政の混乱と社会の混迷を見るにつけても、日本はどうなってしまうだろうかという思いを禁じ得ません。
 もとより日本への愛着を持ち、子どもや孫たちへの責任を果たさんとするならば、このまま座してこの国の死を待つわけにはいきません。
 我が国は長い歴史の中で固有の文化、感性などを培い、その時代時代において国家、民族として進むべき方向を見定め発展してまいりました。今日の停滞にあってなお、東京の実力は国際的に極めて高く、日本全体もまた豊かな可能性、潜在力をいまだ持っております。
 本来持つ力を国家の大計に組み込むとともに、現在蔓延している拝金主義、欲望至上主義と引きかえに失ってきたものを取り戻すならば、日本は必ず力強く再生するに違いありません。ゆえにも、東京から目指すべき方向を提起し、国政を先導してまいります。日本が未来に向かって発展しつつある確かな手ごたえを、いま一度取り戻してまいりたいと思います。
 日本は、資源や食料の多くを海外に頼っております。それゆえ、化石燃料への依存から脱却して地球温暖化を食いとめ、気象の異変による干ばつや海面上昇を防ぐために世界をリードすることは、未来に向けて国民と国土を守ることそのものであります。我が国は、環境と調和した社会を全力で造形しなければなりません。
 東京は、地球に多大な負荷をかけている大都市としてみずから率先して変革を遂げるために、本年四月一日からキャップ・アンド・トレード制度を開始いたしました。これを契機に、企業がオフィスビル等に対する省エネ投資へと大きく動き出しております。今後も、制度を効果的に運用するとともに、中小企業への省エネ設備導入を支援し、住宅にも太陽エネルギー利用機器の普及を進めてまいります。都も下水道事業などで最新の技術を積極的に導入するなど、環境技術を都市の隅々に行き渡らせ、環境産業の成長も促してまいります。
 また、キャップ・アンド・トレード制度により創出された自然エネルギー需要にこたえるため、風力発電等の開発で北海道や東北四県と連携しております。海洋エネルギーの利用に先鞭をつけるべく、波力発電の可能性も国にかわって示し、今後、大島周辺の海域での民間企業等による実証実験に向け協力してまいります。このような都市活動と地方の自然エネルギーを結んだ経済循環をつくり出し、地域を活性化する新しいモデルを示してまいります。
 環境との調和を軸とした日本の未来像を、東京から一つずつ確かな形にしてまいります。その取り組みは、今月開催するICAP東京会議で世界に披瀝いたします。
 現在、CO2削減の国際的合意に向けた展望は一向に開けておりません。しかし、世界に先駆け低炭素社会に転換し、そこで培った技術、ノウハウによって文明社会の新しい秩序づくりを牽引してこそ、日本は国際社会で敬意を払われながら繁栄もできるのです。
 肝心の国政は、さまざまな利害の対立や意見の相違を乗り越えるリーダーシップが発揮されておらず、国会で審議中の地球温暖化対策基本法案からは、具体的な政策の道筋は一向に見えてきません。いかに国際社会の動向が不透明だからといって国の腰が定まらなければ、CO2削減に向けた国民の協力を求めることも、民間の投資意欲を引き出すこともできません。国には、排出総量を確実に削減できる全国規模のキャップ・アンド・トレード制度の創設など効果的な施策によって、環境問題への対処を社会の発展につなげていくよう強く求めてまいります。
 我が国の強みの最たるものは技術とそれを実用化する能力であり、これを一段と伸ばすことが今後の日本の発展の重要なかぎになります。
 東京には、東京都ベンチャー技術大賞で脚光を浴びた途上国でも大いに力を発揮する流水式小水力発電システムなど、斬新な技術や製品が数多く存在しており、それを世に送り出す小零細企業は、日本の可能性そのものであります。景気に持ち直しの動きが見られる中、欧州で発生した新たな危機が世界を巻き込んだ混乱になることを警戒しながらも、企業の新しい成長機会を果敢に見出していかなければなりません。
 その一環として、首都大学東京や都立産業技術研究センター等の力を結集し、環境、医療、福祉などの成長が期待される分野において、技術開発から実用化までの道筋を明らかにした技術戦略ロードマップを策定いたします。ロードマップに沿った企業の取り組みを支援することで、その潜在力を引き出し、新事業の創出に結実させてまいります。
 民間航空機もまた、新興国の発展などに伴い、今後二十年間で約二万六千機、三百兆円の市場規模ともいわれる有望な分野であります。技術力や品質管理能力にたけた東京の小零細企業は、航空機部品の製造でみずからの強みを十二分に生かすことができます。
 現在、都は参入意欲を持つ企業の受注体制や技術力強化のために、企業をグループ化するなど、計画的に取り組んでおります。来週開幕する世界有数のベルリン国際航空宇宙展でも企業と製品を売り込むなど、参入拡大を強く支援してまいります。
 国際競争においては、核となる技術はもとより、維持管理や運営の手法などとも合わせた総合力も重要であります。とりわけ、膨大な需要が見込まれる水ビジネスでは、その優劣が問われます。
 東京の水道事業は世界で最も進んだ浄水技術を持ち、漏水率三%、料金徴収率九九・九%など、ハードもソフトも世界のトップクラスにあります。下水道事業も、汚水処理技術の高さと発生する汚泥を資源やエネルギーに再生する先進的、複合的な技術を誇っております。
 民間企業とチームを組み、すぐれた技術、ノウハウを武器にして、世界の上下水道事業に参画すれば、安全な水を得られないために地球上で年間百五十万人ともいわれる子どもが命を落とす状況を改善するなど、国際社会に大きく貢献し、東京と日本の経済も活性化いたします。
 既に、東京水道の実力が評価され、オーストラリアでコンサルティング業務を手がけることになりました。今後、各国のニーズや事業に係るリスクなどを十分に把握しつつ、海外での事業展開のための戦略と戦術を練り上げてまいります。
 東京の活力の土台にあるのが首都としての高度な集中、集積であります。数多くの企業、大学、研究機関の密接な連携とそれを支える機能的な都市インフラがあってこそ、世界に挑戦できる新しい技術やすぐれたノウハウが生まれるのであります。
 国においては、都が持っている用途地域に関する都市計画の決定権を区市町村へ移譲する動きがありますが、日本の成長エンジンである首都の活力を維持向上させるには、広域的な視点からの一体的な都市づくりが不可欠であります。これまで都は、区市町村と連携して首都全体のバランスを考慮しながら都市計画を決定してきており、十分に機能しております。大都市東京の実情に即した対応を国に求めてまいります。
 国民が自信を失い、夢や希望を抱きにくくなっているのは、豊かさを極めながらも、みずからがよって立つ価値の基軸や新しい目標を見出せずにいることにも原因があります。
 こうした状況に風穴をあける起爆剤となるのがスポーツであります。子どもたちの気力や体力の低下が顕著になっておりますが、スポーツに打ち込むことを通じて、他者との相克にも耐え得る肉体と精神が鍛えられ、友情やフェアプレーの精神など一生を支える心の糧も得られます。
 また、急速に高齢化が進む中、スポーツを通じて健やかな生活を手に入れ社会とのきずなを再生すれば、夢や希望を持って人生を送ることにつながります。スポーツの振興は、教育や医療、高齢者・障害者福祉などのさまざまな分野の政策と相乗効果を発揮しながら、多岐にわたる問題に直面する現代社会を大きく変えます。
 さらに、すぐれたアスリートが国の代表として世界のひのき舞台で活躍するならば、国家への愛着を呼び覚まし、国民を一つに結びます。
 二〇一六年のオリンピック・パラリンピック招致活動を通じて、都民、国民のスポーツへの関心はかつてなく高まり、スポーツ界とこれまでにない関係を築くなど、さまざまなスポーツの苗を植えることができました。
 その苗を大きく育てるためには、ハードとソフトの両面から施策を総合的に展開していかなければなりません。平成二十五年に東京国体と全国障害者スポーツ大会を一体として開催するための準備が本年夏から本格化することにも合わせて、スポーツに関する所管部門を一元化したスポーツ振興局を国に先んじて設置いたします。新組織を核に、スポーツ界や関係団体、区市町村、地域などとスクラムを組みながら、年齢、性別、ハンディキャップの有無を問わず、地域でスポーツに親しみ、すぐれたアスリートも輩出する環境を整えてまいりたいと思います。
 同時に、近年のスポーツの盛り上がりを力強く牽引してきた東京マラソンの運営主体を法人化いたします。機動的な運営を実現して、親子のきずなを深めるファミリーランや社会貢献のよすがとなるチャリティーなどの多彩な企画を充実し、名実ともに世界最高峰の大会へと進化させてまいりたいと思います。
 また、今月に策定する総合的な子どもの基礎体力向上方策に基づき、全公立小中学校で実効性のある取り組みを展開いたします。
 スポーツ振興のあるべき姿を東京から提示しながら、国を先導するスポーツ都市東京の実現に邁進してまいります。
 次を担う世代をいかに育てるかが、東京と日本の行く末を決定づけるといっても過言ではありません。スポーツにより心と体を鍛えることと合わせて、独自の感性や発想を伸ばしてまいりたいと思います。
 人間は、書籍を読むことを通じて自分で考える力を養ってきましたが、現在、若者の生活の中で読書の占める割合が著しく低下しております。また、通信手段やIT技術の進歩は、瞬時に世界じゅうとアクセスすることを可能にしましたが、多くの若者がはんらんする情報におぼれ、その分析、判断も他人の情報に頼るようになりました。そのために、物事を深く思索できなくなり、主体的な価値判断に自信が持てなくなっております。
 こうした背景を持ついわゆる活字離れについて、専門家の英知も集めながらその本質を解明し、若者が人生を生きていくための根源的な力を養う手だてを講じてまいります。
 学生の個性や独創性を呼び覚まし、若い可能性を真に育てる新しい大学のモデルを東京から誕生させるべく、平成十七年に首都大学東京を開学いたしました。既存の学問体系にとらわれず学部を再編し、現場体験型のインターンシップを導入して学生の視野を広げるなど、新しい教育を実践してまいりました。
 この間、少子化の急速な進展や国境を越えた大学間競争の激化など、取り巻く状況は一段と厳しさを増しております。世界じゅうから学生を集めるなどグローバル化に対応した運営がますます重要になっており、そうした観点に立って第二期中期目標を本定例会に提案しております。
 従来の先進的な取り組みを継承しつつ、世界諸都市の教育研究機関と連携を強化し、共同研究や人材交流を積極的に進めてまいります。大都市に共通する課題に関する国際研究拠点になるとともに、世界をまたにかけ活躍できる有為な人材を育成してまいります。
 東京と日本を将来へとつなぐためには、少子高齢化という我が国の構造的な変化を乗り越えていく必要があります。
 子育ての安心を高める保育サービスの拡充については、本年四月から開始した三カ年にわたる少子化打破緊急対策事業の中でも、集中的な取り組みを行っております。さらにその先をもにらみ、潜在的なニーズも考慮して、今後五年間で保育サービスの利用児童数を三万五千人増加いたします。
 安心して子どもを産み育てるために必要な医療の確保には、地域における医療機関相互の密接な連携は不可欠であります。昨年から都立墨東病院の救急体制を強化するため、産科当直等を地域の医療機関が支援する体制をとっております。これに加えて、都立大塚病院を核に、妊婦の状態や疾患に応じて地域の医療機関が役割を分担し、連携して診療に当たる大塚モデルを構築して、先月十日より運用を開始いたしました。この夏にはこども救命センターを指定し、センターを拠点として地域における小児医療のネットワークを形成していくなど、今後もより充実した医療体制づくりを進めてまいります。
 また、仕事と家庭生活を両立できる社会の実現に向け、柔軟な勤務体制づくりなど、企業から働き方の改革のモデルとなる取り組みを公募しており、今後選定を進め、支援を行ってまいります。
 これらの取り組みを初めとして、次代を担う子どもたちが健やかに育つ環境をつくり出しながら、同時に高齢者のための住まいの確保や施設の整備も着実に進めるなど、高齢者の安全と安心を確保してまいります。
 都民の日々の暮らしを揺るぎなく支えるさまざまな仕組みを整えて、少子高齢時代にふさわしく都市をさらに成熟させてまいりたいと思います。
 次に、新銀行東京について申し上げます。
 新銀行東京は、平成二十一年度決算において、通期で開業以来初の黒字となりました。小零細企業へのきめの細かい対応など、懸命な努力のたまものと考えております。
 都は、新銀行東京が引き続き再建を進め、小零細企業支援という設立目的を十分に果たせるよう、今後とも支援してまいります。
 我々が暮らす社会を成り立たせているのは、長い長い歴史の堆積と世代を超えた垂直の価値観であります。これを守り、新しい歴史に加えて次の時代へと引き継ぐのは、今を生きる者の責務であり、いつしか大きく外れてしまった我が国の航路を正していかなければなりません。
 今必要なのは、国政が窮地にある国家の現実を直視し、決意と覚悟を持って行動することであります。また、かつて福沢諭吉が、立国は私なり、公にあらずと喝破したように、国民の国を思う意思の積み重ねによって確固たる民意が形づくられることであり、歴史的な岐路に立つ日本は眠りから脱すべきなのであります。
 日本が覚せいするためにも、東京から引き続き強いメッセージを発信し、必要な手だても尽くしてまいります。東京の強みを伸ばし、弱みを打破して、世界の範となる都市へ進化させることで、日本の未来図を示すべく、全力で都政運営に当たってまいります。
 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、予算案一件、条例案七件、合わせて十八件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。
 以上をもちまして所信表明を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(田中良君) 以上をもって知事の発言は終わりました。

○七十四番(松下玲子君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会し、明二日から七日まで六日間、議案調査のため休会されることを望みます。

○議長(田中良君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(田中良君) ご異議なしと認めます。よって、本日の会議はこれをもって散会し、明二日から七日まで六日間、議案調査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は、六月八日午後一時に開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後一時三十二分散会


文書質問趣意書及び答弁書

二二財主議第六六号
平成二十二年五月二十四日
東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 田中  良殿
文書質問に対する答弁書の送付について
 平成二十二年第一回東京都議会定例会における左記議員の文書質問に対する答弁書を別紙のとおり送付します。
     記
畔上三和子議員
田の上いくこ議員
大島よしえ議員
古館和憲議員

平成22年第一回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  畔上三和子

質問事項
一 築地市場の豊洲移転用地での土壌汚染対策について
二 定時制高校の2次募集について

一 築地市場の豊洲移転用地での土壌汚染対策について
最初に、築地中央卸売市場の豊洲移転予定地の購入に関する基本原則についてです。
周知の通りこの土地は、東京ガス株式会社の操業に伴って発生した深刻な化学汚染が知られています。今回のこの土地を購入するための予算案が提案されたのに伴い、汚染浄化費用と実施責任の所在に関して、その原則となるべき事項について質問します。
1 環境汚染の浄化については、一般的に汚染者負担の原則によることが基本とされています。それに従うならば、予定地の浄化は東京ガス株式会社が主体的に実施し、都は汚染物質が完全に除去されたことを確認してから、はじめて売買契約を結ぶべきものと判断されます。今回、この原則を曲げて、あえて都の予算と責任において、土壌の浄化にとりくむのはなぜですか。
東京ガス株式会社はかつて、場内での生物処理、加熱処理、場外での加熱処理、セメントリサイクル処理、洗浄処理など29万平方メートルの土壌汚染対策を行い、2006年3月から2007年4月にかけて汚染拡散防止措置完了届けを東京都に出し、東京都はこの汚染拡散防止計画で処理後の土壌は、環境基準以下であることが確認されているとの認識にたっています。しかし、2007年5月からの専門家会議が行った各種の土壌汚染調査によれば、各所から環境基準を上回る土壌汚染濃度が出ています。
2 東京ガス株式会社の土壌汚染対策が成功したということを東京は繰り返し明らかにしていますが、その後の専門家会議の土壌汚染調査で高濃度の汚染が判明しました。この関係について、どういう根拠で、どのような判断をされていますか。
3 2月16日の参考人質疑では畑氏は「土壌が再汚染された」という見解を示してしましたが、これについては、どのような判断をされますか。また、その具体的な根拠も示してください。
4 東京ガス株式会社操業時の地盤面より上部の盛土については、これまで土壌汚染調査はおこなわれていません。この盛土の量、その内埋め戻しに活用する量について、それぞれ、どのような試算をされていますか。埋め戻しするにあたって、これまでの盛土についてどのような土壌汚染調査をされますか。されない場合は、その理由と、汚染されていないことを担保する根拠を示してください。
5 その他の埋め戻しに使う土ですが、他の公共工事で発生する土砂、購入土について、その搬入元、搬入量、経費について示してください。
次に、豊洲移転予定地の土壌汚染対策についてです。
専門家会議がAP2メートル以下の処理土壌として算定した42万平方メートルについて、技術会議の提言では、環境確保条例117条の調査により未汚染箇所を特定できたからとして浄化対象になる土壌を22万平方メートルに削減しました。しかし、詳細調査で深度方向まで有害物質の土壌溶出量が確認された点は、4122地点のうち411地点、117条調査地点を加えても1400地点で、全体の3分の2地点の汚染状況は把握されないまま対策が取られることになります。
もともと「汚染がない」という判断は、一定の条件の下で汚染が検出されていないことを意味するものに過ぎず、精度を上げれば、新たな汚染が見いだされることは当然です。これまでの調査では、汚染土壌の性質やサンプリングーの記載が粗雑であり、データの推計学的処理も行われていないなど、十分な精度で検証されるとは到底言えません。
6 これまでの調査結果から、豊洲には小規模・高濃度の汚染スポットが散在するという特徴が明らかですから、小規模・高濃度汚染スポットが多く残されたままになる可能性が十分あります。このことについて、どのような認識をお持ちですか。その根拠についても、合わせて示してください。
これまでの調査によると、「不透水層」の上端である調査最下点でも環境基準を超える汚染が明らかになっています。
7 東京都は、「不透水層」付近まで汚染が達している場合は、「底面管理」をおこなうとしています。これまでの専門家会議の調査結果から、都が「底面管理」の必要性があるとしている地点のすべての地点名を示してください。
8 その「底面管理」する判断基準についてですが、これまで行った調査結果は「不透水層」の上端である調査最下点までしかわかりません。より深部の地点での土壌汚染調査が必要となるわけですが、より深部の土壌に環境基準を超える汚染があるかないかを、どのようにして確認し、どのように汚染土壌を除去していくのですか。
9 技術会議の提言では、「底面管理」についての経費について記述がありませんが、どの程度を見積もっているのですか。
次に、地下水管理についてです。
都は、地下水管理について「地下水位の高低差や地下水の流れの影響を受けない」など、豊洲の地下水の実態について非常に単純化して、対策を取ろうとしています。このままでは、地下水管理は失敗に終わる危険性が極めて高いものになります。
なぜなら、地下水の浄化について、2月18日の参考人質疑で専門家の畑氏は「プールのようなものではまったく現場はない」「フラットじゃないところで地下水を一定に管理することは非常に難しい」「土壌中の水分を絞り出すことは非常に難しい」と発言しているからです。汚染を残したままの封じ込め対策では、地下水管理は長期にわたることも、専門家が指摘しています。
事実、市場当局から「微生物処理成功事例」としてわが党に提供された土木学会誌に紹介されている「石炭ガス製造工場跡地における土壌汚染状況と対策方法の一事例」については、名古屋市当局に確認しましたが、汚染物質を残しているため、3年たっても地下水は浄化されていませんでした。
豊洲の地下水管理が成功するかどうか、今おこなっている「適用実験」で実証し、その客観的データを都民に明らかにすることが重要になります。具体的には、各地点の地層、地下水の存在量、水位、地下水の流れを揚水実験や圧入実験で把握すると同時に、揚水・圧入の様子をデータとして把握して、公表すれば済むことです。ところが、今回の「適用実験」の仕様書を見ると、都は地下水管理について、浄化できるかどうかの実験にとどめるものになっています。
豊洲では、各地層が複雑に入り乱れ、各地層ごとの透水係数が異なり、そのうえ最上部のYc層部分は一様に連続しているわけではありません。したがって、地下水の水頭レベルは、不均一になることは明らかです。
これでは、実際に徐染工事としての揚水作業を始めても都がこれまで示してきたモデルでは検証不可能になる恐れがあります。
10 技術会議提言の揚水ポンプの位置と台数で、敷地全域にわたり地下水をくみ上げ、浄化が可能であるとする証拠を、具体的データで示してください。
11 揚水井戸、貯水槽の配置図と、平常時、異常気象時ごとに、それぞれの負荷量、水位を記載して、示してください。
12 地下水の遮水壁について、道路側には鋼管矢板、護岸側のソイルセメントと遮水材を組み合わせた新構造の遮水壁とのことですが、国内での施工例、研究論文を示してください。
13 震災時についての遮水壁への影響をどのように検証していますか。震災時でも問題が起きないとするなら、そのデータなど具体的な根拠を示してください。
2007年6月の経済港湾委員会では新市場建設調整担当部長が「豊洲の新市場予定地は埋立地であるということから、地盤対策が重要であるということは十分認識してございます」と答弁しています。
14 豊洲の地盤沈下が起きることは、これまでの調査で明らかになっています。その上、土壌汚染対策として強制的に地下水を吸い上げるわけですから、さらに地盤沈下の危険があります。それぞれ、どのような地盤沈下対策をとるのですか。その予算見積もりも合わせて示してください。
土壌汚染の封じ込め対策をする以上、液状化対策にも、その配慮が必要です。
技術会議の提言では「砂杭締め固め工法」「格子状固化工法」で経費45億円と示されているだけです。
技術会議の安田氏は、2月16日の参考人質疑で、格子状固化方式については「セメント系の固化材等を用いまして格子状に地盤を固化することによりまして地震時の地盤の剪断変形を抑え、液状化の発生を防止する」と紹介しました。
その他、「砂杭締め固め工法」「格子状固化工法」の具体的な方法については、「築地場の移転整備 疑問解消BOOK」の13頁でイメージ図で紹介されている程度です。
15 液状化する土壌の判定する資料として、これまで明らかになっている資料は、2006年におこなった8本のボーリング調査による地盤解析報告書によるものですが、3街区の液状化の可能性についての判定の検討結果を示してください。
16 液状化する土壌は、すべて改良するのですか。それとも一部で残すこともあるのですか。残す場合には、噴砂、地割れなどで、汚染土壌が地表に出る可能性があるわけですが、それに対してどのような検証をした上で、どのような対策をとるのですか。その根拠も合わせて示してください。
17 表層の液状化対策方式は、専門家会議の時は全面固化方式を提言していますが、技術会議は格子状方式を提言しています。この変更について、どのような検証がされていますか。
18 安田氏は、参考人質疑で、技術会議提言よりも、液状化対策の材料について、より具体的な説明をしましたが、技術会議の経費45億円の根拠があるはずです。専門家も、技術会議の提言には具体性がなく、これでは対策効果の検証ができないと言っています。都は、技術会議提言について、その具体的な内容を示して、多くの専門家の検証に耐えるかどうかを確認する必要があると思いますが、いかがですか。
液状化対策として「セメント系の固化剤」を用いることについては、1月19日の参考人質疑にたった平田氏は「ベンゼン汚染があるところでは、基本的にコンクリートで固めるというふうな対策はできない」「環境上許されていない」との発言をしています。
19 技術会議のやろうとしているセメント系固化剤をもちいた「格子状固化工法」は、この点については、どのような検討をして提言されたものですか。土壌汚染対策工程と液状化対策工程、地下水管理システム作成工程とはどのような関係になっていますか。それぞれの根拠資料も示してください。
二 定時制高校の2次募集について
定時制高校は、働きながら学ぶ生徒やさまざまな事情のある生徒を受け入れ、高校進学を保障する場となっています。特に3月末に実施される2次募集は、高校進学を希望する生徒にとって新年度を迎える前の最後の砦です。ところが25日に発表された都立高校の定時制2次募集の応募状況は、募集が1,230人なのに対し、応募は1,541人で、311人も募集を上回っています。倍率は1.25倍です。
日本共産党はこの間、定時制への応募が高倍率になる学校や地域が生まれていることを繰り返し指摘し、募集を増やすよう求めてきました。今年は全日制も含め、これまでにもまして厳しい事態となることが予想され、2月には、募集枠の拡大や経済的支援の充実を求める緊急申し入れも行いました。
しかし都教委は、全体として枠は用意されている、2次募集が不合格でも4月以降の3次募集4次募集があるといい、募集増などの対策をとらずにきました。しかし今回とうとう2次募集の倍率が1倍を超え、3次4次募集もほとんどないと予想されます。子どもたちの進学の願いをかなえることのできない事態となってしまったのです。さらにまだ通信制があると言うかもしれませんが、毎日学校に通って勉強し高校生活を送りたい生徒に対し、通信制があるからよいというのは通用しません。
1 希望者全員の高校進学を保障することは東京都の重要な課題だと思いますが、いかがですか。
2 今春の定時制高校の2次募集の応募倍率が全体で1倍を超え、多くの不合格者を出さざるをえなくなっている事態をどう考えているのですか。
3 今春については、緊急に学級増を行ってでも、2次募集の追加合格や3次4次の募集を行い、希望する生徒を受け入れることを求めますが、いかがですか。
こうした定時制への希望が増えている背景には、1つは「子どもの貧困」といわれる子育て世代の経済状況の悪化があります。同時に、都教委が「都立高校改革」により、定時制高校を統廃合してほぼ半分に減らしてしまったことも見過ごせません。特に多摩地域では夜間定時制が少なく、通学可能な場所に入れる学校がないとの声が上がっています。例えば八王子市では、4校あった夜間定時制高校が、昼夜間定時制高校である八王子拓真高校1校に統廃合されました。八王子拓真高校は1次も2次も応募倍率2倍から3倍の狭き門で、しかもこの学校に不合格だったとしても近くに行ける定時制高校はないのです。
また都教委は統廃合計画をつくった時、これまでだったら夜間定時制に入れた子どもたちが入れなくなるのではないかという都民の心配に対し、新しくつくる昼夜間定時制には、統廃合する夜間定時制に在籍する生徒数と同じだけの定員を確保すると説明してきました。しかし、その昼夜間定時制の定員を全日制の計画進学率の枠に含め、試験の日程も全日制と同じにしているために、事実上、定時制の定員枠がせまくなっていることも重大な問題です。
4 定時制の新設や閉課程校の募集再開、既存校の学級増などを行い、定時制の募集を増やすことを求めます。いかがですか。
定時制希望者のなかには、本当は全日制を希望していても、近くに行ける高校がない、私立高校の高額な学費負担が難しいなどの事情から、定時制に進まざるを得ない生徒がいます。全日制高校の計画進学率は96%ですが、実績進学率は91.4%(09年度)と4.6%も下回り、しかもここ数年低下傾向にあります。
計画進学率や公立私立の高校の受け入れ分担などを話し合う公私連絡協議会では、「実績進学率を向上させるため、実効ある対策を協議する」との申し合わせが毎年行われていますが、進展が見えてこないことや、公私連絡協議会が都と私立学校の経営者の協議の場であることから、もっと当事者である生徒や保護者の意向をくみ上げる場をつくってほしいとの声があがっています。
5 公私連絡協議会では、「実績進学率を向上させるため、実効ある対策を協議する」ために、どのようなメンバーで、いつ、何回、協議会等をもち、どのような話し合いを行ってきたのかを教えてください。また今後の予定を教えてください。
6 全日制高校の実績進学率を向上させるために、当事者である生徒や保護者をはじめとする都民参加で議論を行い、実効ある対策を検討したらいかがですか。

平成22年第一回都議会定例会
畔上三和子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 築地市場の豊洲移転用地での土壌汚染対策について
1 豊洲移転予定地の浄化は東京ガス株式会社が主体的に実施し、都は汚染物質の除去確認後に売買契約を結ぶべきだが、なぜ都の予算と責任において土壌の浄化を行うのか見解を伺う。

回答
新市場予定地における土壌汚染については、東京ガス株式会社が、平成10年から14年にかけて調査を行い、平成14年及び17年に環境確保条例に基づき処理計画を提出し、対策を行った後、平成19年にすべての完了届の提出を終え、条例に基づく手続を完了しています。
一方、その後の都の土壌汚染調査によって、新市場予定地には、ベンゼンやシアン化合物などの都市ガス製造の操業に伴う汚染物質の存在が確認されました。
この調査結果を踏まえ、都は、新市場予定地が生鮮食料品を扱う市場用地という観点から、安全をより一層確保するため、法令が求める以上の手厚い土壌汚染対策を自ら行うこととしています。
なお、都は、東京ガス株式会社に対して、都が実施する土壌汚染対策の経費の一部負担について、既に協議の申入れを行っており、今後、同社との協議を終えた上で用地を購入していきます。

質問事項
一の2 都は、東京ガス株式会社の土壌汚染対策が成功したと繰り返し明らかにしているが、その後の専門家会議の土壌汚染調査で高濃度の汚染が判明したことについて、どういう根拠で、どのような判断をしているのか伺う。

回答
東京ガス株式会社は、当時の指針や条例に基づき、土壌について、30メートルメッシュで、地下3メートルまでの深さを基本として調査を行い、ベンゼンについて、20メートルメッシュで、表層土壌ガス調査などを行った上で、土壌汚染対策を実施しています。
これに対し、専門家会議の提言に基づき行った調査は、敷地全域を土壌汚染対策法が定める最小調査区画である10メートルメッシュに区分した上で、ガス工場操業時の地盤面近くの土壌を採取するとともに、これまでの科学的知見から汚染物質が、程度の差はあれ地下水に溶け出すことから、地下水もあわせて採取し分析しています。これらの調査の結果、土壌又は地下水から環境基準を超える汚染物質が検出された場合は、土壌ボーリング調査することで、敷地全域の汚染状況を確実に把握しています。
このように、都が行った調査は、東京ガス株式会社が行った調査とは、方法が異なることから、汚染物質の存在が確認されたものです。

質問事項
一の3 2月18日の参考人質疑で専門家の畑氏が「土壌が再汚染された」という見解を示したことについて、どのような判断をしているのか、また、その具体的な根拠について伺う。

回答
新市場予定地では、深さ方向の土壌ボーリング調査で、地下水が汚染されているにも関わらず、ガス工場操業時の地盤面から不透水層上端まで、土壌が全く汚染されていない地点があることから、汚染地下水があっても土壌が汚染されるとは限らないと専門家会議委員から意見をいただいており、都も同様の見解です。
都の土壌汚染対策は、土壌、地下水中の汚染物質をすべて、除去、浄化することから、土壌の再汚染は、起こらないと考えています。

質問事項
一の4 東京ガス株式会社操業時の地盤面より上部の盛土の量及びその内埋め戻しに活用する量についてどのような試算をしているか、また、埋め戻しをするにあたり、これまでの盛土についてどのような土壌汚染調査をするのか伺う。

回答
ガス工場操業時の地盤面より上部の盛土の量については、詳細調査の中で10メートルメッシュの調査地点ごとに、現地盤面の標高を測量により把握しており、これに面積を掛け、土量を算出しています。これらの盛土については、基本的に、一時仮置きをし、再度、盛土として利用することにしています。
盛土部の土壌汚染調査については、詳細調査の結果、土壌または地下水からガス工場操業に由来する環境基準を超える汚染物質が検出された場合に、盛土がある地点において、絞込調査等で、ガス工場操業時の地盤面から50センチメートル上の部分の土壌を採取、分析しています。
この絞込調査等の結果、汚染物質が検出された地点については、対策時に、盛土の汚染状況を確認しながら、汚染物質を処理していきます。

質問事項
一の5 埋め戻しに使う土として、他の公共工事で発生する土砂、購入土について、その搬入元、搬入量、経費について伺う。

回答
汚染土壌を掘削した後の埋戻しについては、汚染物質を除去し無害となった土壌、他の公共工事から発生する土砂及び購入土を使用することとしています。
このうち、他の公共工事から発生する土砂及び購入土の搬入元、搬入量、経費については、それぞれ工事発注時に明らかになります。

質問事項
一の6 これまでの調査結果から、豊洲には小規模・高濃度の汚染スポットが散在するという特徴が明らかであり、それらが多く残されたままになる可能性があるが、このことについての認識とその根拠について伺う。

回答
豊洲新市場予定地における土壌汚染対策の検討に際し、まず平面方向の汚染状況を把握するため、敷地全域を土壌汚染対策法が定める最小調査区画である10メートルメッシュで区分した4,122地点で、東京ガス株式会社の工場操業時の地盤面から深さ50センチメートルの土壌及び地下水を採取し分析する、詳細調査を実施しました。
この手法は、専門家会議が科学的知見から定めたもので、汚染物質が地表から地下へ浸透していくことから、ガス工場操業時の地盤面付近の土壌を調査するとともに、汚染物質が程度の差はあれ、地下水に溶け出すことから、地下水中の汚染物質を調査することで、汚染が把握できることによるものです。
さらに、深さ方向の汚染状況を把握するため、詳細調査で汚染物質が検出された1,475地点で、ガス工場操業時の地盤面から不透水層上端まで、深さ方向に1メートル間隔で土壌を採取し分析する絞込調査及び環境確保条例に基づく調査を実施しています。
これら都が実施した調査により、敷地全域について、平面方向、深さ方向とも汚染状況を確実に把握しています。
この調査結果に基づき、豊洲新市場予定地の土壌汚染対策として、土壌、地下水中の汚染物質をすべて、除去、浄化することから、汚染物質が残ることはないと考えています。

質問事項
一の7 都は、「不透水層」付近まで汚染が達している場合は、「底面管理」を行うとしている。これまでの専門家会議の調査結果から都が「底面管理」の必要性があるとしているすべての地点名について伺う。

回答
深さ方向の土壌ボーリング調査の結果、不透水層が確認されていない2地点や、2深度で汚染がないことを確認できていない地点などについては、対策時に、深さに関わりなく、汚染物質が2メートル続けて検出されなくなるまで、土壌中の汚染物質を確認し除去していく、「底面管理」を行っていくこととしています。
このような地点は、これまでの調査結果から、約380箇所あると認識しています。

質問事項
一の8 「底面管理」する判断基準について、これまでの調査結果は「不透水層」の上端である調査最下点までしかわからない。より深部の地点での土壌汚染調査が必要だが、どのようにして確認し、汚染土壌を除去するのか伺う。

回答
深さ方向の土壌ボーリング調査の結果、不透水層の上端付近で、2深度で汚染がないことを確認できていない地点については、対策工事に際して、まず、当該地点の周囲を止水矢板で囲み、汚染の拡散を防止したうえで、確認されている汚染土壌及び地下水をすべて除去します。
次に、汚染土壌を除去した底面から、1メートル単位で汚染物質の有無をボーリングにより確認し、汚染が検出されれば除去するという手順を、汚染物質が2メートル続けて検出されなくなるまで続けていきます。

質問事項
一の9 「底面管理」の経費の見積もりについて伺う。

回答
豊洲新市場予定地での不透水層は、これまで行った地質調査や土質試験の結果、土壌の特性から、極めて水を通しにくく、敷地全体としてみた場合、汚染の可能性は低いと考えています。
このようなことから、底面管理の経費は、不透水層上端付近から汚染物質が検出されている地点については、不透水層内が1深度汚染されているものと想定し、対策土量を算出した上で見積もっています。

質問事項
一の10 技術会議提言の揚水ポンプの位置と台数で、敷地全域にわたり地下水をくみ上げ、浄化が可能とする根拠について伺う。

回答
技術会議の提言では、地下水の汲み上げについて、周辺区域からの水分の浸み込みを確実に遮断するために、各街区の周囲に遮水壁を設置した上で、新市場予定地付近の過去32年間の1日当たりの平均降雨量に基づき、降雨により道路などから地下に浸透する水量の割合と敷地面積から地下への浸透量を算定し、地下水位を一定に維持するために必要な揚水量を定めた上で、ポンプ1台の揚水能力から、必要な台数を求め、将来の市場施設の配置などから井戸の設置位置を定めています。
汲み上げた地下水は、処理施設で浄化した後、下水道へ放流することにしており、処理施設の貯留槽の容量は、水質分析に要する期間である1週間分の降雨による地下への浸透量とその汲み上げ水量の貯留を考慮して定めています。

質問事項
一の11 揚水井戸、貯水槽の配置図と、平常時、異常気象時ごとに、それぞれの負荷量、水位について伺う。

回答
揚水井戸、貯水槽の設置数や容量などの計画に際して、集中豪雨や台風などの異常気象時を除く平常時においては、過去32年間の1日あたりの平均降雨量のデータから、地下への雨水浸透量を算定し、地下水位を管理水位A.P.プラス2メートルとするよう、必要な揚水井戸数や貯水槽の容量を定めています。
また、集中豪雨や台風時への対応については、過去10年間の1時間当たり最大降雨量が50ミリメートルを超過する降雨の実績データなどから、地下への雨水浸透量を算定し、これを地下に一時貯留できる措置として、日常維持していく地下水位を、管理水位A.P.プラス2メートルから20センチメートル下げることにしています。
なお、揚水井戸、貯水槽の配置図については、ホームページの技術会議資料の中に掲載しています。

質問事項
一の12 地下水の遮水壁について、道路側には鋼管矢板の遮水壁を、護岸側にはソイルセメントと遮水材を組み合わせた新構造の遮水壁を設置するとのことだが、国内での施行例、研究論文について伺う。

回答
豊洲新市場予定地で採用する遮水壁のうち、鋼管矢板の遮水壁については、都の中央防波堤外側処分場や山口県の東見初処分場などの海面廃棄処分場をはじめ、国内で多数の実績があり、研究論文も土木学会などで発表されています。
また、新構造の遮水壁についても、国土交通省の鶴見川遊水地や市川市の防災公園などで汚染土壌の封じ込め対策として採用されている実績があり、研究論文も地盤工学研究会などで発表されています。

質問事項
一の13 震災時の遮水壁への影響をどのように検証しているのか、また、震災時でも問題が起きないとするなら、その具体的根拠について伺う。

回答
土木工事で広く利用されている、社団法人日本道路協会が編集、発行している道路土工カルバート工指針によると、遮水壁などの地中に設置する地中構造物は、「地震に際して周辺の地盤の変形に追従し、一体となって挙動する」と示されており、地震による影響は小さいと考えています。

質問事項
一の14 豊洲に地盤沈下が起こることは、これまでの調査で明らかになっている上、土壌汚染対策として強制的に地下水を吸い上げると、さらに地盤沈下の危険があるが、それぞれの地盤沈下対策について、予算見積りも合わせて伺う。

回答
新市場予定地の盛土による地盤沈下への影響については、平成18年度に、調査、推計しています。
解析の結果、平成14年から18年にかけて盛土を行った5、7街区では、地盤沈下の現象はほとんど見られず、土質は安定しています。
また、今後、2.5メートルの盛土を行う6街区では、推定最終沈下量は58.9センチメートルとなっていますが、盛土を施工してから2年間で最終沈下量の約94パーセントが沈下し、ほぼ終息すると分析しています。
こうした分析結果から、土壌汚染対策工事により、盛土を行ってから市場建物の建築工事が完了するまでに2年以上の期間があるため、沈下には十分な時間が確保でき、市場の整備にあたって地盤沈下の影響はないと考えています。
対策経費算定に際しては、予測される沈下の分の土を余分に盛る対策を講じることとしており、この費用を見積もっています。
地下水の汲み上げによる地盤沈下について、地下水の汲み上げに際しては、街区周辺に遮水壁を設置し、汚染箇所ごとに鋼矢板で囲むことにより、水の浸み出しを防ぐことで、地下水位低下による新市場予定地周辺地域や、敷地全域への影響を防ぐことにしています。
こうした措置を講じたうえで、汚染土壌掘削については、地下水を汲み上げ、土壌掘削した後、ただちに埋戻し、清浄水を注入します。また汚染地下水浄化については、地下水位を一定に保った上で、水の汲み上げ、注入を繰り返すことから、地下水汲み上げによる地盤沈下は、ほとんど生じないと考えています。
したがって、経費についても、特別考慮する必要はないと考えています。

質問事項
一の15 これまで明らかになっている液状化する土壌の判定をする資料は、2006年に行った8本のボーリング調査による地盤解析報告書によるものだが、3街区の液状化の可能性についての判定の検討結果について伺う。

回答
平成18年度に行った液状化に関する分析結果は、5街区、6街区、7街区に共通した特性として、砂質土で構成されている地層では、一部を除いて液状化する、あるいは液状化する可能性が大きいと予測しています。また、中間土と呼ばれる砂質シルトが主体の地層や粘性土で構成されている地層では、液状化しないと予測しています。
技術会議では、こうした分析結果に基づき、液状化防止のために砂質土層が厚い6街区及び7街区では、このような場合に、一般的に用いられる、地盤中に砂杭を打設する工法を採用しています。一方、5街区では、砂質土層が薄く表層にあるため、締固めによる液状化防止の効果が発揮されにくいことから、固化材を用いて地盤を格子状に固める工法を採用しています。

質問事項
一の16 液状化する土壌は全て改良するのか、又は一部で残すこともあるのか伺う。残す場合には、噴砂、地割れなどで汚染土壌が地表に出る可能性があるが、それに対してどのような検証及び対策をとるのか伺う。

回答
新市場予定地の液状化対策については、建物部分以外となる場内通路、駐車場、緑地となる区域について、砂質土、粘性土の区別をせず、砕石層を設置する位置から不透水層の上端までの間の土壌を対象に実施します。
残る建物部分については、建物自体を基礎杭により支持した上で、建物外壁から内側の一定範囲を、建物部分以外と同様の液状化対策を実施するとともに、建物底面を厚いコンクリート版で覆います。
こうした措置をとることで、仮に液状化現象が生じても、地表に土壌や地下水が噴出することはないと考えています。

質問事項
一の17 表層の液状化方式対策について、専門家会議では全面固化方式を提言し、技術会議では格子状方式を提言している。この変更について、どのような検証をしているのか伺う。

回答
専門家会議では、都が土壌汚染対策を実施するに際し、確実に液状化対策が可能な工法を選定していくことを前提に、土壌汚染対策を提言しています。
技術会議は、この液状化対策について、震災時に地盤がゆるみ、その結果、地下水や液状化した砂が地上に噴出することがないよう、各街区の土質特性に応じた工法を具体的に提言しています。
5街区では、地震時に液状化の可能性が高い砂質土層が薄く表層にあるため、セメント系固化剤等を用いて、地盤を格子状に固めて、地盤の変形を抑止する格子状固化工法を採用しています。
この格子状固化工法は、阪神・淡路大震災においても液状化が発生しなかったことが確認されているなど、地盤全体をセメントで固めるという全面固化工法と比べて同等の実効性があり、施工性や経済性にも優れるものであります。

質問事項
一の18 都は、技術会議提言について、その具体的な内容を示して、多くの専門家の検証に耐えるかの確認をする必要があると考えるが、見解を伺う。

回答
技術会議では、技術・工法の選定に際し、汚染土壌対策や液状化対策など工種ごとに、専門家が、提出された科学的根拠、実証データ、施工実績などにより検証を加え、実効性に優れた技術・工法を具体的に定め、提言しています。
なお、公募のあった技術・工法で評価の高いものについては、その概要をホームページで公開しており、その内容について容易に確認できます。

質問事項
一の19 技術会議の行おうとしているセメント系固化剤を用いた「格子状固化工法」は、ベンゼン汚染対策において、どのような検討をしたのか、また同工法は、土壌汚染対策工程、液状化対策工程、地下水管理システム作成工程とはどのような関係になっているのか伺う。

回答
土壌汚染対策法では、ベンゼンなどの揮発性のある有機化合物を封じ込めや不溶化などの措置としてコンクリートで固める対策が、認められていません。
技術会議では、こうしたことを視野に入れ、工事手順を定めており、土壌、地下水中のベンゼンなどの汚染物質を除去、浄化した上で、液状化対策を行うことにしています。
液状化対策を実施した後に、地下水の上昇を防ぐ砕石層の設置や、地下水位を計測していく井戸など、地下水管理に必要な施設などを整備していきます。

質問事項
二 定時制高校の2次募集について
1 希望者全員の定時制高校進学を保障することは都の重要な課題だが、見解を伺う。

回答
高等学校への進学を希望する意欲と熱意のある生徒を一人でも多く受け入れることは、都民の期待に応えることと考えています。

質問事項
二の2 今春の定時制高校の2次募集の応募倍率が全体で1倍を超え、多くの不合格者が出ている事態について、どう考えるか見解を伺う。

回答
「高等学校定時制課程の入学者選抜について」(平成22年3月10日付21文科初第698号文部科学大臣政務官名通知)により、都道府県においては可能な範囲内において、弾力的な取扱を検討するよう通知がありました。
これまで合格者数は、入学手続辞退者数を見込んで決定していましたが、今年度は、「高等学校定時制課程の入学者選抜について」(平成22年3月26日付21教学高第2292号)により学校に通知し、中途退学者数及び原級留置者数等を考慮した上、教育環境に支障のない範囲において、合格者数を弾力的に決定し、意欲と熱意のある生徒を一人でも多く受け入れるよう努めています。

質問事項
二の3 今春については、緊急に学級増を行ってでも、2次募集の追加合格や3次4次の募集を行い、希望する生徒を受け入れるべきと考えるが、見解を伺う。

回答
高等学校定時制課程第二次募集の結果、定員に満たなかった高校について、第三次募集として65名の募集を行いました。
さらに、教員体制等の都立高校の教育資源を最大限に有効活用し、300名の追加募集を行いました。

質問事項
二の4 定時制の新設や閉課程校の募集再開、既存校の学級増などを行い、定時制の募集を増やすべきと考えるが、見解を伺う。

回答
定時制課程の新設、閉課程校の募集再開については考えていません。

質問事項
二の5 公私連絡協議会は、実績進学率向上対策の協議について、どのようなメンバーで、いつ、何回の協議会等を持ち、どのような話し合いを行ってきたのか伺う。また、今後の予定について伺う。

回答
「東京都と東京私立中学高等学校協会との連絡協議会」(「公私連絡協議会」)の本会議は、知事部局職員2人、教育委員会職員6人、東京私立中学高等学校協会が指定する者7人で構成され、また、専門委員会の委員は、知事部局職員2人、教育委員会職員5人、東京私立中学高等学校協会の代表5人で構成されています。
第三次中期計画及び平成22年度就学計画の策定に当たり、平成21年3月以降、専門委員会を4回(3月、5月、6月、8月)、本会議を1回(8月)それぞれ開催し、計画進学率及び公私分担割合について協議を行っています。この中で実績進学率向上のための対策について協議しています。
今後も、概ね同様のスケジュールで協議を行っていきます。

質問事項
二の6 全日制高校の実績進学率を向上させるために、当事者である生徒や保護者をはじめとする都民参加型で議論を行い、実効ある対策を検討すべきと考えるが、見解を伺う。

回答
東京都中学校長会が毎年12月に都内公立中学校3年生を対象として「志望予定調査」を実施し、生徒及び保護者の進路希望を把握しています。公私連絡協議会において、「志望予定調査」を踏まえ実績進学率の向上のための対策を協議していることから、生徒や保護者を公私連絡協議会の委員に加えることは考えていません。

平成22年第一回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  田の上いくこ

質問事項
一 江戸川区の小学生が死亡した児童虐待について
二 特別支援学校のスクールバスについて

一 江戸川区の小学生が死亡した児童虐待について
江戸川区立松本小学校に通う一年生が両親の虐待を受け1月24日に死亡した事件を鑑み、今後の児童虐待の対応のあり方について伺います。一部報道によると、虐待は2年以上続いていたとされ、痛ましい結果となりました。昨年9月に歯科医から子ども家庭支援センターにあざの発見を連絡してからの「見守り」について、また関係各所の対応について、課題は多いと考えます。文部科学省と厚生労働省は3月24日、虐待が疑われる児童、生徒の出欠状況を、学校側が市町村や児童相談所に定期報告するとした情報提供の指針を策定し、全国の自治体に通知しました。各所の役割分担も明確にしていかなくてはなりません。我が党の柳ヶ瀬議員が定例会で一般質問をしていますので、重複しない部分のみ質問いたします。
1 平成7年10月より住民が身近なところで相談でき、適切な援助やサービスが受けられるようにと「子ども家庭支援センター」が設置されました。2007年に都内の児童相談所間で不統一だったケース移管や情報提供の手続きについて、共通の東京ルールを策定し、実施を徹底するとされています。今回の事件では、「見守り」案件として江戸川区のセンターから児童相談所へ情報提供されたとなっています。区のセンターからは電話と文書の情報提供であり、援助要請ではなかったとのことですが、児童相談所の関わり方についてのご見解をお聞かせください。
2 児童相談所もたくさんの案件を抱えています。また江戸川区の子ども家庭支援センターも当時200件程度の案件を抱えていました。江戸川区は子どもが年々増え、人口も増加しております。今後の児童相談所の適切な配置を再考し、都内の児童相談所の数を増やすことも視野に入れるべきだと考えますが、いかがでしょうか?もしくは、子ども家庭支援センターがもっと積極的に動けるように児童相談所と同様の権限をセンターに付加していくなどの機能強化も考えられますが、ご所見を伺います。
3 平成17年の「子ども家庭支援センター ガイドライン」によると、子ども家庭支援センターの職員は、経験として「福祉事務所におけるケースワーク業務」「保健所・保健センターにおける相談業務」「児童相談機関における相談業務」などが挙げられ、また資格として「社会福祉士」「臨床心理士等心理学専攻者」「保健師」「児童の処遇若しくは児童の相談業務の経験が豊富な者」などとなっています。しかしながら、上記は必須事項ではなく、こういった経験等を有する職員の配置が望まれるとなっています。今回の事件でも両親から学校にクレームがあったなど、親子関係の虐待は、親権を盾に親から訴えられる恐れがあり、一般的な知識だけだと問題に立ち入ることが躊躇されます。虐待は命に関わる大変なことであり、「疑い」であっても初期段階からの対処を誤ると手遅れになります。児童虐待の知識のある専門性の高い職員が配置されているべきだったと考えます。今年度からは、児童相談の専門職である児童福祉司任用資格者の増配置への支援やその育成研修を実施しているとのことです。都としての支援体制を強化し、今後のセンター職員の条件に必須事項を加えるなど改善に向けてのお考えはありますか?
4 今回のケースでは、他にも要注意児童を抱えていた学校の事情も伺えました。子どもが悩んでいることを言いたくても教師が忙しく、相談のタイミングが見つからないといったこともあると思います。スクールカウンセラーは教員や保護者からも積極的に配置してほしいという要望が多くあります。都教育委員会では、スクールカウンセラーの事業の成果をどのように認識していますか?
5 平成18年1月に子ども家庭総合センターの基本構想(24年度から)が発表されています。児童相談所の強化が書かれていますが、今回の事例を経ての具体的な働きが期待できるのでしょうか?
二 特別支援学校のスクールバスについて
東京都特別支援教育における第二次実施計画によると、平成26年度からは、江戸川区内の小学校、中学校が現在の江戸川特別支援学校の位置する場所に仮称「江戸川地区特別支援学校」として統合される予定です。
スクールバスは、そもそも一人通学を推進することを基本とし、高等部の生徒においては一人通学が原則となっていますが、障害が重度であり一人通学が困難な場合など、一人通学が可能になる時期まで乗車することができるとされています。高等部卒業の社会参加・自立に必要な能力を身につけるという趣旨は理解できますが、ひとり通学には保護者の不安がたくさんあるようです。電車が通常運行しているときはいいですが、万が一事故があったときなど、たとえば「手前の駅で降りる」ということが果たしてできるでしょうか。携帯電話を持たせることから訓練しなくてはなりません。不測の事態に生徒が対応できるようになるためには、時間と努力が必要だと思います。
1 特別支援教育とは本来、児童・生徒の一人ひとりの能力を最大限に伸長するための多様な教育を展開することでありました。障害者の一生は当然に学校教育の期間だけでなく、ゆりかごから墓場までというように、生まれてから死ぬまで一貫した支援が必要となります。小学校だけ、中学校だけ教育をすればよいのではなく、その教育があるから次の段階でこう活きるといった形に連続していかなくてはなりません。一人ひとりの個に合わせた教育を行うために、「自立」にも障害の度合いなどにより個々の段階があるのではないでしょうか。生徒によっては、一人通学が難しいケースもあると考えられますが、今度「江戸川地区特別支援学校(仮)」が設置された後の高等部の通学についてはどういう工夫をしていくのでしょうか?
2 今までスクールバスの使用を認められていた生徒の中にも、努力すれば一人通学ができるようになる場合もあると考えます。しかしながら、一人通学に慣れるための十分な期間がほしいという声がありますが、指導から実践までについての期間をどのようにお考えでしょうか?高校生は基本的にひとり通学ということがはじめからわかっているのであれば、高等部から始めなくても、中学時から訓練をしていくこともできると考えますが、早めの対策についてご見解をお聞かせください。
3 今後障害児は増えていくと予測されます。小学校・中学校に入学する生徒が増えれば、当然に高等部に進学する生徒も増えていきます。22年度は自閉症の生徒のクラスを別に編成すると聞いていますが、重度の生徒が増えていった場合の通学の対応も課題として捉えるべきではないかと考えます。寄宿舎も廃止になる方向の中、重度の子どもたち、障害を重複している子どもたちの通学の課題についてご見解をお聞かせください。

平成22年第一回都議会定例会
田の上いくこ議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 江戸川区の小学生が死亡した児童虐待について
1 区の子供家庭支援センターからは電話と文書の情報提供であり、援助要請ではなかったとのことだが、児童相談所のかかわり方について、見解を伺う。

回答
都は、児童相談所と区市町村との間で、虐待相談に関する情報の交換を円滑に行うための基本的なルールを決めています。ルールには、区市町村が受け付けたケースで、区市町村がそのまま主担当になる場合の「情報提供」と「援助要請」、児童相談所にケースを移管する「送致」等があります。
今回の事案では、区の子供家庭支援センターから、児童相談所による緊急一時保護や早急な対応の必要がない、センターが担当するケースとして報告がありました。この報告を受け、児童相談所においても緊急の検討会議を開催し、区が主担当となるケースと判断しました。

質問事項
一の2 児童相談所の数を増やすべきと考えるが、見解を伺う。
また、子供家庭支援センターが積極的に動けるよう児童相談所と同様の権限を付加していくなどの機能強化も考えられるが、所見を伺う。

回答
平成17年4月の児童福祉法の改正により、区市町村が児童家庭相談の第一義的窓口と位置づけられ、児童相談所は専門的立場から区市町村への援助及び助言も行うこととなりました。
平成20年度には、区市町村が民生・児童委員や学校、児童相談所などで構成する「要保護児童対策地域協議会」を設置することが努力義務化され、その協議会の中核としての役割を区市町村の子供家庭支援センターが担っています。
協議会は関係機関等に対し、資料又は情報の提供などを求めることができることになっています。なお、区市町村が児童相談所の権限である児童の一時保護や立入調査などを行うためには、児童福祉法の改正が必要です。
都は引き続き、区市町村における要保護児童対策地域協議会のネットワークを活用した児童虐待防止の体制の充実を支援していきます。

質問事項
一の3 子供家庭支援センターへの支援体制を強化し、センター職員の条件に必須項目を加えるなどの改善に向けた考えを伺う。

回答
都はこれまで、児童虐待に対応する地域の総合的な拠点として、先駆型子供家庭支援センターの設置を進め、現在、49区市町に設置されています。先駆型子供家庭支援センターには、虐待対策ワーカーの配置を条件としています。
平成20年度からは、弁護士や精神科医などをスーパーバイザーとして活用する「区市町村相談対応力強化事業」を行うとともに、平成21年度からは、児童相談の専門職である児童福祉司任用資格者の増配置を促進する「専門性強化事業」や、その育成研修を実施しています。
これらの事業を通じ、センターの対応力強化を図っています。

質問事項
一の4 都教委では、スクールカウンセラーの事業の成果をどう認識しているか伺う。

回答
児童虐待の未然防止や早期発見のために、児童・生徒一人一人の状況を日常的に把握することや、児童・生徒及び保護者からの相談に応じることは、極めて重要なことであると認識しています。
都教育委員会が配置しているスクールカウンセラーは、いじめや不登校等の未然防止や改善及びその解決等を目的としていますが、その配置によって、「校内の教育相談体制が構築され、配慮の必要な子供への対応ができるようになった。」「スクールカウンセラーからの助言等により教員の教育相談技術が向上した。」「保護者への対応が充実し、学校に対する安心感が生まれた。」「外部関係機関との連携を図ることができた。」などの報告を受けています。このことから、都教育委員会では、スクールカウンセラーの配置は、学校内の教育相談体制等の充実に効果を上げていると認識しています。

質問事項
一の5 子ども家庭総合センター基本構想に児童相談所の強化が書かれているが、今回の事例を経ての具体的な働きがあるのか伺う。

回答
子ども家庭総合センター(仮称)では、児童虐待や非行など、複雑・困難な相談に対して、児童相談センター、教育相談センター、新宿少年センターが総合的・一体的に相談・支援を行っていきます。
3機関が連携強化を図ることで、子供に関する様々な相談に対してワンストップの対応が可能となること、各機関の専門性を活かして多面的な角度から援助方針を検討し、迅速に支援を実施できることなどのメリットが生まれると考えています。

質問事項
二 特別支援学校のスクールバスについて
1 江戸川地区特別支援学校設置後、高等部の生徒の通学について、どのような工夫を行っていくのか、伺う。

回答
都立特別支援学校に通う児童・生徒の通学は将来の生活自立に備えて、可能な限り一人通学が望ましいと考えています。このため、知的障害特別支援学校では、小学部、中学部の児童・生徒については、障害が重度である等やむを得ない理由により一人通学が困難な場合については、スクールバスによる通学とし、高等部の生徒については、一人通学を原則としています。
江戸川地区特別支援学校(仮称)設置に伴う知的障害特別支援学校高等部の生徒の通学についても、一人通学を原則と考えていますが、一人通学が困難な生徒が在籍していることから、生徒一人一人の障害の程度や状態等を勘案し、保護者とも相談をしながら、その対応策について検討していきます。

質問事項
二の2 一人通学の指導から実践までの期間について、どのように考えているか。また、中学時からの訓練等、早めの対策についての所見を伺う。

回答
知的障害特別支援学校においては、可能な限り早期から一人通学を推進するためにも小学部の段階から、交通ルールや公共交通機関の利用の仕方などを身につける指導を、児童・生徒の障害の程度も踏まえながら、個別指導計画に基づき計画的、継続的に実施しています。
今後とも、児童・生徒の自立や社会参加に向けた一人通学について、可能な限り早い時期からの指導に努めていきます。

質問事項
二の3 寄宿舎も廃止の方向にあるなか、重度の子どもたちや複数の障害を持っている子どもたちの通学についての所見を伺う。

回答
都立特別支援学校に通う児童・生徒は可能な限り一人通学をすることを基本としていますが、重度・重複の障害などのために一人通学が困難な児童・生徒については、スクールバスを運行することにより、通学手段を確保しています。
平成16年度、19年度に策定した東京都特別支援教育推進計画第一次・第二次実施計画では、乗車時間が90分以上のスクールバス路線の解消を図っています。また、肢体不自由特別支援学校においては、スクールバス利用の乗車時間を平成27年度までに平均60分程度とすることを目標に、スクールバスの増車やコースの見直しを行っています。以上のように、特別支援学校の規模と配置の適正化に取り組むことにより、児童・生徒の通学負担の軽減に努めています。

平成22年第一回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  大島よしえ

質問事項
一 木造住宅の耐震補強について

一 木造住宅の耐震補強について
木造住宅の耐震補強についてうかがいます。
阪神淡路大震災の犠牲者の大半は、木造住宅の倒壊による圧死・窒息でした。中途直下地震による東京の被害想定報告書では、東京湾北部地震マグニチュード7.3が冬の朝5時に起こった場合、建物倒壊による死者は3060人とされているのですから、東京都が「耐震改修促進計画」でかかげている、2015年度までに住宅の耐震化率を90%に引き上げるという目標はなんとしても達成しなければなりません。しかし、都のおこなっている木造耐震改修助成の実績は毎年50件前後にとどまり、耐震改修促進事業の執行率も5.2%にとどまっています。これでは、目標達成にはほど遠いと言わざるを得ません。
1 耐震診断・改修をすすめることによる効果は、地震から都民の命を守るだけにとどまりません。都内でも進んでいる自治体の一つである足立区では、区民にとって身近な中小の工務店の方を診断士として養成・登録し、区民の耐震診断にまわってもらっています。このため、区民にとっては、詐欺の心配にあうこともなく、改修工事に進めることができ、また、そこでできた人間関係から、「(バリアフリーのための)手すりをつけることになった」「ドアの立て付けを直してもらった」など、ちょっとした修繕のお願いもできるようになって、業者にとっては、新たな仕事が広がっています。
2009年の新規住宅着工件数が前年比3割減になるなど、都内の建設業者は、長引く不況に苦しんでいます。耐震診断・改修を進めることは、建設業者の仕事確保という景気対策、地域の高齢者・障害者などの安全と安心を広げるという福祉的効果など、二重三重の効果があると考えますが、都の認識をうかがいます。
2 木造住宅の耐震診断・改修を、高齢者や障害者のためのバリアフリー工事をすすめる福祉施策、建設業者の仕事確保のための景気対策とあわせ、相乗的な効果をあげるため、都市整備局、産業労働局、福祉保健局などが協議する場を設けるなど、総合的な取り組みすすめるべきだと考えますが、いかがですか。
3 昨年3月に都市整備局が発行した「住宅リフォームガイド」では、「リフォーム工事とあわせて次のような性能を高める工事をすれば、費用の面だけではなく工事施工の点からも効率的です」として、耐震化、バリアフリー、省エネをあげています。区市町村が実施しているリフォーム助成、バリアフリー助成などと耐震化がセットですすむような制度について検討すべきだと考えますが、いかがですか。
また、助成制度についても、木造住宅のリフォームと耐震改修、バリアフリー化、省エネ化を一体的に進める上で使いやすいものへ、拡充や改善をすることが必要だと思いますが、どうですか。
4 耐震改修の実績を大幅にふやすために、提案します。
区市町村の実施している耐震改修助成では、その区市町村全域が助成対象になっているものが大半です。一方、都の木造住宅の耐震改修の助成対象地域は、7000ヘクタール、都内の23区の面積比で11%に限定されています。このため、2008年度におこなった区市町村の木造耐震改修助成(総合評価1.0以上に引き上げるもの)のうち、都の助成が利用されたのは13%にすぎません。
日本共産党都議団では、都内の区市町村にアンケートをおこないました。そのなかで、都への要望では、「東京都が助成する地域対象の拡大」をあげた自治体が36にのぼり、ダントツ一位でした。具体的記述では、「都の助成対象を全域にしてほしい」という声が圧倒的でした。この区市町村からの要望をどう受け止めますか。
5 全国一の改修実績をあげている静岡県では、県内すべての地域の木造住宅を助成対象にして、まず県が一件当たり30万円を、高齢者には40万円を助成しているのです。そのうえに、それぞれの市で5万から40万円の上乗せするという仕組みをとっています。県が主導することによって、静岡県での木造耐震改修助成の件数は、毎年1500件を超えています。東京都の年間助成件数の実に30倍です。
東京都でも助成対象地域を、木造密集地域の整備地域に限定せず、都内全域に助成対象地域を拡大すべきだと思いますが、いかがですか。
6 命を守ることを最優先にする立場から、都が耐震シェルターへの助成をはじめたことはおおいに歓迎します。耐震シェルター助成の対象は、木造密集住宅の整備地域に限定していません。なぜ、このような違いがうまれるのですか。
7 足立区や墨田区では、ひと部屋耐震改修や2階建てのうち1階だけの改修など、総合評定1.0にいたらないまでも、少しでも耐震性が向上する耐震改修にたいしても助成をおこなう簡易改修助成をおこなっています。区の担当者は、「2階に多少問題があっても、1階だけもてば命は助かる。簡易改修だと90万円前後と負担が軽いので、これを選ぶ家が非常に多い」「とくにうちの区は(収入の少ない)高齢の方が多いので、現実的な選択だと思う」「シェルターは部屋の中にさらに部屋をつくるようになってしまうので、部屋が狭くなるという弱点があるうえ、いつも、その部屋にいられるわけではない」と話しています。
耐震改修をすすめるには、「まずは命を守りたい」「経済的な負担の少ないやり方にしたい」「自分の部屋はいまのまま使いたい」など、都民の願いと実情にそくして、活用しやすい柔軟なしくみをつくることが大事です。
ひと部屋改修など部分改修にも助成をおこなうべきではありませんか。
総合評定1.0以上にならないまでも、少しでも耐震性を高める工事にたいしても助成すべきではないですか。
総合評定1.0以上に一度にならなくても、何回かに分けて、改修を進め、1.0以上にする場合にでも、助成すべきではありませんか。
それぞれお答え願います。
8 今年度の都の事務事業評価でも、耐震改修促進事業の実績があがらない理由として、都市整備局も、建物所有者の耐震化に対する意識の低さとともに、「耐震化に係る費用負担の不安などを原因として、所有者が耐震化に踏み切れない現状がある」ことをあげています。また、3月18日の都市整備委員会でも、木造住宅の耐震改修が進まない理由について、耐震化に取り組むか否かは所有者の意思にゆだねられていることと同時に、耐震改修に際し、自己負担が発生し、改修の方法によっては多額の経費がかかり、工事にかかる費用面の資金繰りが困難であると答弁された。であるなら、「費用負担への不安」「費用面の資金繰りの困難」にこたえるため、都としてどのような対策を考えていますか。
9 「費用への不安」「資金繰りの困難」にこたえるために以下のことを提案するものです。
都の改修助成では、改修工事のモデルケースを150万円としており、その半分の75万円のうち、国が45%の33万円、都が27.5%の21万円、区市町村が27.5%の21万円を負担するとして、都の助成の上限額を21万円にしています。しかし、実際には、200万円を超えるケースも少なくありません。150万円以下の工事でも、都民の負担は75万円と重いものです。都の助成の上限額、助成割合を引き上げるべきではありませんか。
都内の区市町村や他県でもおこなわれているように、経済的な力の弱い高齢者世帯、障害者世帯、非課税世帯に対して、助成額の上乗せをすべきではありませんか。
それぞれお答え願います。
10 耐震シェルターや防災ベッドにたいしての都の助成割合は設置費用の4分の1以内ですが、1世帯あたりの限度額は7万5千円としています。つまり、設置費用のモデル額を30万円としているのです。しかし、都が補助対象として指定している耐震シェルターで、設置費用が30万円以下の設備は「一部屋型 木造耐震シェルター」25万円、「ベッド型 防災ベッドBB-202」21万円ぐらいで、他は30万円以上、なかには、耐震シェルター鋼耐震が143万円から、耐震シェルター「レスキュールーム」277万円などと30万円を大幅に超えているものもあり、実情とあっていません。都が補助対象を限定して指定しているのですから、都が費用を4分の1負担するためには、費用額にふさわしく上限額をひきあげるのが当然ではありませんか。

平成22年第一回都議会定例会
大島よしえ議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 木造住宅の耐震補強について
1 耐震診断・改修を進めることは、建設業者の仕事確保という景気対策、地域の高齢者・障害者などの安全と安心を広げるという福祉的効果など、二重三重の効果があると考えるが、都の認識を伺う。

回答
木造住宅の耐震診断及び耐震改修を促進するための取組は、景気対策や高齢者等への対応を主眼としたものではなく、都民の生命・財産の保護及び地域の被害の軽減を図ることを目的としています。
住宅の耐震化は、自助・共助・公助の原則を踏まえ、まず建物所有者が自らの問題であり、かつ、地域の問題であることを認識し、主体的に取り組むことが不可欠です。
このため、都では、耐震化に向けた建物所有者の積極的な行動を促すための普及啓発をはじめ、各種施策に取り組んでいます。

質問事項
一の2 木造住宅の耐震診断・改修については、相乗的な効果をあげるため、都市整備局、産業労働局、福祉保健局などが協議する場を設けるなど、総合的な取組を進めるべきと考えるが、見解を伺う。

回答
木造住宅の耐震化は、「10年後の東京」計画の重要施策のひとつであり、既に「『10年後の東京』を目指した建物の耐震化推進会議」を設置し、関係各局の密接な連携により耐震化を推進しています。

質問事項
一の3 区市町村のリフォーム助成、バリアフリー助成などと耐震化がセットで進む制度について検討するとともに、助成制度も、木造住宅のリフォームと耐震改修、バリアフリー化、省エネ化を一体的に進める上で使いやすいものへと拡充・改善すべきだが、所見を伺う。

回答
住宅のリフォームは、建物所有者等が個人の事情に応じて行うべきものですが、バリアフリー工事と耐震改修をあわせて実施することで、費用や工事施工の面で効率的に工事を進めることができると考えています。
そこで、都では、既に公表している「住宅リフォームガイド」等により、リフォームの機会にあわせた耐震改修の実施についてPRしており、今後とも、区市町村や関係団体等と連携し、普及啓発に努めていきます。

質問事項
一の4 我が党のアンケートでは、東京都が耐震改修の助成をする地域対象の拡大を都に求める自治体が36にのぼり、都の助成対象を全域にしてほしいとの声が圧倒的であった。こうした区市町村の要望をどう受け止めるか、所見を伺う。

回答
都の木造住宅耐震化助成は、特に老朽化した木造建築物が集積した区域が連担するなど、震災時に大きな被害が想定される整備地域を対象としています。
この地域では、震災時に住宅が倒壊した場合、道路閉塞や出火により、避難・応急活動が妨げられるとともに、大規模な市街地火災につながるおそれがあるため、公的助成を行っています。
都としては、財源を効率的、効果的に活用する観点から、今後とも重点的に取り組む必要のある整備地域に的を絞って、木造住宅の耐震化助成を行っていきます。

質問事項
一の5 県内すべての地域の木造住宅を助成対象にしている静岡県では、木造耐震改修助成の件数は都の30倍である。都も助成対象地域を木造密集地域の整備地域に限定せず、都内全域に拡大すべきだが、所見を伺う。

回答
都の木造住宅耐震化助成は、特に老朽化した木造建築物が集積した区域が連担するなど、震災時に大きな被害が想定される整備地域を対象としています。
この地域では、震災時に住宅が倒壊した場合、道路閉塞や出火により、避難・応急活動が妨げられるとともに、大規模な市街地火災につながるおそれがあるため、公的助成を行っています。
助成対象地域を整備地域外に拡大すると、限られた財源が薄く広く分散されることになるため、都としては、財源を効率的、効果的に活用する観点から、今後とも重点的に取り組む必要のある整備地域に的を絞って、木造住宅の耐震化助成を行っていきます。

質問事項
一の6 都が耐震シェルターへの助成を始めたことはおおいに歓迎するが、助成対象を木造密集住宅の整備地域に限定していない。このような違いが生まれた理由について伺う。

回答
都は、阪神淡路大震災等で、多数の高齢者等が犠牲になっていることを踏まえ、住宅の倒壊から高齢者や障害者等の生命を守るために、緊急に対応すべき施策として、耐震シェルター及び防災ベッドの設置費用助成を実施しています。
一方、特に老朽化した木造建築物が集積した区域が連担する、防災都市づくり推進計画に定める整備地域では、震災時に住宅が倒壊した場合、道路閉塞や出火により避難・応急活動などが妨げられるとともに、大規模な市街地火災につながることから、木造住宅に対する公的助成を行っています。

質問事項
一の7 耐震改修を進めるには、ひと部屋改修などの部分改修や少しでも耐震性を高める工事に対しても助成すべきではないか。また、何回かに分けて改修を進める場合にも助成すべきではないか、それぞれ見解を伺う。

回答
ひと部屋改修や単に何回かに分けて行う改修への助成については、住宅の耐震性能が十分に向上するとは限らず、地震発生時に倒壊し、道路閉塞を引き起こす可能性があることから、助成対象として適切でないと考えます。
一方、建物の倒壊による道路閉塞の防止や、建物全体の耐震性が将来的に確保されることを前提とした、段階的な改修に対する助成については、既に検討を開始しています。

質問事項
一の8 木造住宅の耐震改修が進まない理由として挙げられている「費用負担への不安」や「資金繰りの困難」にこたえるため、都としてどのような対策を考えているのか伺う。

回答
住宅の耐震化は、自助・共助・公助の原則を踏まえ、まず建物所有者が自らの問題であり、かつ、地域の問題であることを認識し、主体的に取り組むことが不可欠です。
しかし、特に老朽化した木造建築物が集積した区域が連担する、防災都市づくり推進計画に定める整備地域では、震災時に住宅が倒壊した場合、道路閉塞や出火により避難・応急活動などが妨げられるとともに、大規模な市街地火災につながることから公的助成を行っています。
また、23区内では、昭和57年1月1日以前からある家屋で、平成27年12月31日までに、耐震改修工事等を行った住宅について、固定資産税・都市計画税の減免措置を実施しており、建物所有者の負担の軽減を図っています。

質問事項
一の9 都の改修助成の上限額、助成割合を引き上げるべきではないか。また、経済的な力の弱い高齢者世帯、障害者世帯、非課税世帯に対して、助成額を上乗せすべきではないか、それぞれ見解を伺う。

回答
住宅の耐震化は、自助・共助・公助の原則を踏まえ、まず建物所有者が自らの問題であり、かつ、地域の問題であることを認識し、主体的に取り組むことが不可欠です。
しかし、特に老朽化した木造建築物が集積した区域が連担する、防災都市づくり推進計画に定める整備地域では、震災時に住宅が倒壊した場合、道路閉塞や出火により避難・応急活動などが妨げられるとともに、大規模な市街地火災につながることから公的助成を行っています。
また、阪神淡路大震災等で、多数の高齢者等が犠牲になっていることを踏まえ、住宅の倒壊から高齢者や障害者等の生命を守るために、緊急に対応すべき施策として、耐震シェルター及び防災ベッドの設置費用助成を実施しています。
都としては、耐震化に向けた建物所有者の意識を高め、積極的な行動を促すことが重要と考えており、普及啓発にさらに取り組むとともに、各種施策を着実に実施していきます。従って、ご指摘のような助成額や助成割合の引き上げは考えていません。

質問事項
一の10 耐震シェルターや防災ベッドに対する都の助成において、設置費用のモデル額は30万円だが、都が補助対象に指定している耐震シェルターで、30万円以下の設備はごくわずかである。助成の上限額をひきあげるべきだが、見解を伺う。

回答
住宅の耐震化は、自助・共助・公助の原則を踏まえ、まず建物所有者が自らの問題であり、かつ、地域の問題であることを認識し、主体的に取り組むことが不可欠です。
都は、阪神淡路大震災等で、多数の高齢者等が犠牲になっていることを踏まえ、住宅の倒壊から高齢者や障害者等の生命を守るために、緊急に対応すべき施策として、耐震シェルター及び防災ベッドの設置費用助成を実施しています。
都の事業で紹介している耐震シェルター等は、ベッドを囲う簡易な装置から部屋全体を補強する構造まで幅広い内容になっています。都では、生命を守るために最低限必要な機能を有していることを前提に助成額を設定しているものであり、上限額を引き上げる考えはありません。

平成22年第一回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  古館和憲

質問事項
一 「島しょ振興」に向けたいっそうの施策展開について

一 「島しょ振興」に向けたいっそうの施策展開について
離島のガソリン、軽油等の価格はもともと本土に比べ、割高です。特に東京都のガソリン価格は全国離島のベストテンに入っているという異常な状態が続いています。
1 離島ガソリン、軽油等を海上貨物運賃補助対象品目に加えるなど、東京都独自の実効ある値下げ対策を具体化していただきたいがどうか。
島しょ漁業において資源の枯渇は深刻な事態となっています。その大きな原因の一つが、巻き網操業にあります。また、操業マナーの悪さも指摘されており、他県船の夜間操業規制を含め、適切な対策が求められている。
2 〔1〕東京都として巻き網試験操業の実態調査を行うこと、〔2〕巻き網操業の全面禁止に向けた実効ある対策を具体化すること、〔3〕他県船によるキンメ漁などの夜間操業の規制、密漁の取締りを強化することを求めます。それぞれ伺います。
農漁業生産物の細胞を壊さず冷凍するCAS冷凍法は、鮮度を落とさず都内市場に搬入できるなど、島しょの農漁業生産物の販売を可能とし、島民の強い要望でもあります。
3 島しょの農漁業生産物の販路拡大に効果的であり、その導入に対しての農漁業生産物の販路拡大に向けたCAS(キャス)冷凍法の導入補助金を創設していただきたいと思うがどうか。
4 有害鳥獣すなわち、野生の猿、鹿、山羊、リスなどによる農産物被害の防止対策は切実である。防止対策支援事業を拡充適切な対応策をおこなうことを求めるが、どうか。
5 人口透析治療が、すでに導入されている町村医療機関への専門医の派遣と、新たな導入に向けた町村への支援、さらに「導入できない」村で島外治療を受けている患者への生活支援など、きめ細やかな対応を具体化することが強く求められているが、どうか。
6 島しょと本土を結ぶ海路・空路の運賃の高さは、住民の足としてはもちろん、観光をはじめとする産業振興の障壁となっている。国に対して、離島航路補助の拡充を求めるとともに、船賃・航空運賃の値下げに向けた実効ある支援策をおこなうことを求めるが、どうか。
7 島しょ町村ですすめている「管理型最終処分場整備事業」等については、施設整備、運営経費のほか、中間処理施設の整備およびその維持管理費、輸送費など、膨大な経費を必要としており、すでに供用開始している大島、現在整備中の八丈などへの補助制度の継続とともに、今後すすめていく自治体に対して財政支援を行っていただきたいが、どうか。
8 平成23年7月に、一斉デジタル放送に切り替わる予定だが、住民にとっては施設改修等の負担の増大が見込まれている。受信不可能となる自治体、住民に対して、都として財政支援を行うことを求めるが、どうか。
三宅島の復興支援について
いま、島しょでは、老若男女を問わず仕事がなく生活に不安を抱えている人が多くにのぼっています。とりわけ、三宅島は「高濃度地区」の家屋での傷みの進行。漁業にでようと思うがガソリン代が高い。農作物もカラスなどの被害にあっているなどの実態も聞いています。
いま、東京都がやるべきことは、三宅島民の切実多様な要求にしっかりと耳を傾け、それを実現するための施策展開こそが必要になっている。
9 『漁』を営んでいる島民からは、火山灰が海中に入りこみ、トコブシ・天草・魚類等に打撃的な影響を与えており、資源保護に向けた河川の末端処理の作業を一刻も早く進めてほしいとの声がある。都としてこの声にどう応えていこうとしているのか、明らかにしていただきたい。
10 大久保浜の海中の砂や砂利の移動を止めるための工事を急いでほしい、大崎線の「波返し」かさ上げ工事を早期に実施してほしい、などの声があがっているが、こうした声を東京都として認識しているのか。都として、これらの願いにどう応えていこうとしているのか。
11 島内経済回復のため、国と協力し公的就労を確保する手立てを早急に取ることが重要だと考えるが、こうした取り組みについてどうか、明らかにしていただきたい。
12 また、高濃度地区の家屋は、長期化しているため傷みがひどくなってきており、その維持に向けた再度の支援が不可欠ではないか。都として今後どのような対応策、支援策を考えているのか。
13 住宅再建支援について、限度額の引き上げや対象期間を国並みに延長すること、また、住宅再建のための10年間据え置き、長期返済の無利子貸し付けを行うことが必要と考えるが、どうか。
14 三池地区の防潮堤のかさ上げ、ならびに同地区周辺のがけ崩れ対策が急がれているときいているが、どのような対策をとるのか。
15 定期航路船が常時就航できるように伊賀谷港を整備することを求めるが、どうか。
16 島民が抱えている債務の償還期限の延長、利子補給の延長を関係機関に働きかけること。
17 わが党は、自然環境に悪影響を及ぼすバイクフェスタについては、中止を求め続けている。東京都の三宅島への支援は、以上述べた生活再建での対応策こそ緊急重要な解決すべき課題だと確信している。見解を求める。

平成22年第一回都議会定例会
古館和憲議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 「島しょ振興」に向けたいっそうの施策展開について
1 離島ガソリン、軽油等を海上貨物運賃補助対象品目に加えるなど、都独自の実効ある値下げ対策を具体化すべきだが、見解を伺う。

回答
海上貨物運賃補助の対象品目は、島民の日常生活に不可欠な品や、島の産業を支える特産品の中から、補助制度の効果が高く、かつその効果が幅広く島民に還元される品を、地元町村など関係者と調整のうえ、指定しているものです。
ガソリン、軽油等の本土との価格差が生じる主な要因は、貨物運賃よりも、島ごとの需要量の多寡、輸送形態の違いにより生じており、プロパンガス等、価格差の大半が貨物運賃による品とは異なります。したがって、貨物運賃補助の効果は小さいと見込まれることや、より生活に必要とされる他の品を優先すべきことから、新たにガソリン、軽油等を対象品目に加えることは考えていません。
なお、平成19年には、島の特産品の価格競争力を高めるため、魚介類を新たに指定し、平成20年には、補助率30%だったものを50%に引き上げるなど、常に地元町村等の意向を踏まえながら制度の改善に努めています。

質問事項
一の2 〔1〕東京都として巻き網試験操業の実態調査の実施、〔2〕巻き網操業の全面禁止に向けた実効ある対策の具体化、〔3〕他県船によるキンメ漁などの夜間操業の規制、密漁の取締りの強化について、見解を伺う。

回答
〔1〕 まき網漁業の試験操業は、昭和40年代から八丈島南西海域に試験操業区が設定されていましたが、平成10年に廃止され、現在、試験操業は行われていません。
〔2〕 大中型まき網漁業は、漁業法第52条の規定に基づき、政令で大臣指定漁業に定められています。
〔3〕 キンメダイの一本釣り漁業については、漁業関係法令による制限がないことから夜間操業の規制を行うことはできません。
また、漁業関係法令に抵触する操業については、水産庁や海上保安庁、近隣県とも連携を図り、船舶や航空機による取締りを実施しています。

質問事項
一の3 島しょの農漁業生産物の販路拡大に効果的なCAS(キャス)冷凍法の導入に対して導入補助金を創設していただきたいが、その所見を伺う。

回答
冷凍・冷蔵施設等の整備に関しては、費用対効果を十分に検証したうえで対応しています。
CAS冷凍法に関しては、現状ではコスト面等に課題があることから導入は考えていません。

質問事項
一の4 有害鳥獣すなわち、野生の猿、鹿、山羊、リスなどによる農作物被害防止対策支援事業を拡充するなど、適切な対応策をおこなうべきだが、見解を伺う。

回答
島しょ地域の獣害対策については、既に獣害対策基本計画に基づき、町村が行う有害獣の生息状況調査や捕獲などに対して支援を実施しています。

質問事項
一の5 人工透析治療が、すでに導入されている町村医療機関への専門医の派遣と、新たな導入に向けた町村への支援、さらに「導入できない」村で島外治療を受けている患者への生活支援など、きめ細やかな対応を具体化することが強く求められているが、見解を伺う。

回答
都は、島しょ地域の透析医療体制確保のための支援を行っており、現在、4町村で人工透析治療を実施しています。

質問事項
一の6 国に対して、離島航路補助の拡充を求めるとともに、船賃・航空運賃の値下げに向けた実効ある支援策を行うべきだが、見解を伺う。

回答
都は、航路補助については、国の補助額の算定方式が、運航経費が割高となる夜間航行の必要な東京の離島航路の実態を考慮していないなど、不十分なものであることから、制度の改善を要求する一方、国の制度の欠陥を補い、実際の事業者の損失額と国の補助額との差額を補填する、都独自の手厚い支援を行っています。また、航空路補助については、都は国と協調し運航費や航空機等購入費の補助を行う一方、都独自に保安検査業務に要する費用を補助しています。
なお、これら離島航路・航空路の維持・存続を図るための支援策は、運賃を抑制する効果も挙げているものと認識しています。

質問事項
一の7 「管理型最終処分場整備事業」等については、施設整備、運営経費のほか、中間処理施設の整備およびその維持管理費、輸送費など、膨大な経費を必要としており、すでに供用開始している大島、現在整備中の八丈などへの補助制度の継続とともに、今後すすめていく自治体に対して財政支援をすべきだが、見解を伺う。

回答
東京都では、従前から、島しょ地域の町村や一部事務組合が行う廃棄物処理施設整備に対して補助金を交付し、島しょ地域における廃棄物の適正な処理を促進しています。

質問事項
一の8 平成23年7月に、一斉デジタル放送に切り替わる予定だが、住民にとっては施設改修等の負担の増が見込まれている。受信不可能となる自治体、住民に対して、都として財政支援を行うことを求めるが、見解を伺う。

回答
平成23年7月の地上デジタル放送への完全移行に向け、島しょ地域においてテレビが視聴できない事態が生じないよう、国及び放送事業者によりデジタル中継局の整備が進められており、中継局による対応が困難な小笠原村については、都として海底光ケーブルの整備を進めています。
また、経済的弱者に対するデジタルチューナーの無償給付をはじめ、共聴施設のデジタル化改修に対する助成制度など、国において各種の支援策が実施されており、都は、区市町村等とも連携してこうした支援策の利用促進に努めています。
以上のとおり、必要な対策はすでに講じられており、都として新たな財政支援を行うことは考えていません。

質問事項
一の9 『漁』を営んでいる島民からは、火山灰が海中に入りこみ、トコブシ・天草・魚類等に打撃的な影響を与えており、資源保護に向けた河川の末端処理の作業を一刻も早く進めてほしいとの声がある。都としてこの声にどう応えていこうとしているのか、明らかにしていただきたい。

回答
これまで都は、泥流対策として、流出してくる火山灰や土砂などを貯める砂防えん堤の整備、堆積物の除去などの砂防事業を実施してきました。
今後も、砂防事業を着実に実施し、土砂流出の防止に努めていきます。

質問事項
一の10 大久保浜の海中の砂や砂利の移動を止めるための工事や、大崎線の「波返し」かさ上げ工事の早期実施等の声があがっているが、こうした声を都として認識しているのか、これらの願いにどう応えていくのか、見解を伺う。

回答
海岸管理者として現場の状況を把握していますが、現在の大久保港海岸では、砂や砂利の著しい移動は見受けられません。また、村や東京都町村会から大久保港海岸に関する要望は受けていません。
なお、村道・大崎線について地元から要望のある箇所は、海岸保全区域外にあり、道路管理者である村が対応するものと考えています。

質問事項
一の11 三宅島内経済回復のため、国と協力し公的就労を確保する手立てを早急に取ることが重要だと考えるが、こうした取り組みについての見解を伺う。

回答
既に、国の交付金を活用した基金により、臨時的な雇用を生み出す「緊急雇用創出事業」、及び、継続的な雇用に繋げる「ふるさと雇用再生特別基金事業」を実施しており、島しょ地域においても活用が可能となっています。

質問事項
一の12 高濃度地区の家屋は、長期化しているため傷みがひどくなってきており、その維持に向けた再度の支援が不可欠ではないか。都として今後どのような対応策、支援策を考えているのか、見解を伺う。

回答
三宅島島民の生活再建については、都はこれまで、三宅村との役割分担を図りながら、「東京都三宅島災害被災者帰島生活再建支援制度」等を活用し、支援を実施してきました。
こうした中で、高濃度地区内の家屋の劣化保全等については、現在三宅村が、「高濃度地区内における被災住宅劣化保全支援金」を設け、居住できない高濃度地区内の家屋の補修・修繕のための支援を実施しています。
したがって、都としては、高濃度地区内の家屋の劣化保全に向けた再度の支援等について実施することは考えていません。

質問事項
一の13 住宅再建支援について、限度額の引上げや対象期間を国並みに延長すること、また、住宅再建のための10年間据置き、長期返済の無利子貸付けを行うことが必要と考えるが、見解を伺う。

回答
都は、平成16年度から三宅村民の帰島に際し、引っ越し経費等を支給する国の「被災者生活再建支援制度」とあわせ、住宅の新築、修繕等に要する経費を支給する「三宅島帰島生活再建支援制度」を実施しています。
平成22年度においても、国制度と同様に引き続き支援を実施します。
ご提案の、当制度の限度額の引上げや、無利子貸付けなどを新たに実施する考えはありません。

質問事項
一の14 三池地区の防潮堤のかさ上げ、ならびに同地区周辺のがけ崩れ対策が急がれているときいているが、どのような対策をとるのか、見解を伺う。

回答(港湾局)
三池地区の防潮堤については、平成17年度にかさ上げ工事が完了しており、津波や高潮に対する安全性は確保されています。

回答(産業労働局)
三宅島三池地区の治山事業については、平成20年度より事業を開始し、保安林指定の地主承諾が得られた区域から順次、法枠工や谷止工を実施しています。

質問事項
一の15 定期船航路が常時就航できるように伊ヶ谷漁港を整備することを求めるが、見解を伺う。

回答
三宅島では、定期船が常時就航する港として、三池港、阿古漁港の整備を推進しています。
伊ヶ谷漁港は、噴火等の災害時に島民が避難に利用できるよう、大型船が接岸することを想定した岸壁の整備を完了しており、災害時でなくとも、気象海象の影響により、定期船が三池、阿古の両港に着けないが、伊ヶ谷漁港に着岸できる場合には、すでに利用できるようになっています。
また、伊ヶ谷漁港については、東京都町村会からの避難港としての整備促進要望を受け、波浪の影響をさらに軽減するよう、岸壁から防波堤を延長するなどの方策を検討しています。

質問事項
一の16 島民が抱えている債務の償還期限の延長、利子補給の延長を関係機関に働きかけることを求めるが、見解を伺う。

回答
都は、平成17年2月の三宅島災害における避難指示解除から平成19年3月末までを貸付申請期限とする国の貸付金「災害援護資金」に対して都独自の上乗せを行うとともに、これら貸付金に係る利息分に対する補助を実施しています。
ご提案の災害援護資金貸付の償還期限、利子補給については、延長する考えはありません。

質問事項
一の17 わが党は、自然環境に影響を及ぼすバイクフェスタについては、中止を求め続けている。東京都の三宅島への支援は、生活再建での対応策こそ緊急重要な解決すべき課題だと確信するが、見解を伺う。

回答
三宅島では、観光客数が噴火前の半数程度に止まっており、その回復が大きな課題です。
このため、村では、観光振興の起爆剤として、3年前から三宅島モーターサイクルフェスティバルを開催しており、現在、島の観光イベントの中でも最も多くの来島者を集め、観光振興策の核となっています。
都としては、引き続きこうした村の取組を積極的に支援することが、村民の生活再建にとって重要であると考えています。

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