平成二十二年東京都議会会議録第四号

○副議長(鈴木貫太郎君) 二十二番田中たけし君。
   〔二十二番田中たけし君登壇〕

○二十二番(田中たけし君) まず初めに、高次脳機能障害についてお伺いいたします。
 人間の言語を理解する、物体を認識する、記憶を保持するなど日常生活に欠かすことのできない基本的な機能を高次脳機能といい、交通事故や脳血管疾患などさまざまな原因で脳が損傷を受けた結果として、言語や記憶などの機能に障害を生じるものが高次脳機能障害であります。外見上わかりにくいため周囲の理解が得られにくく、いまだ社会的認知度も低いことから、他の障害に比べ各種の対応がおくれているのが実情であります。高次脳機能障害の症状は、記憶障害、注意障害、失認症、失語症などさまざまであり、その症状に応じた対応やサービスの普及が求められております。
 東京都では、これまで、高次脳機能障害者の支援拠点機関である心身障害者福祉センターを中心に、さまざまな普及促進に取り組んでいますが、その具体的な取り組みについて、まずお伺いをいたします。
 高次脳機能障害者支援においては、支援拠点機関の専門性を生かした取り組みとあわせて、身近な地域での相談や支援を受けられる体制確保が重要であります。しかし、高次脳機能障害者の専門相談窓口の設置や在宅障害者の交流事業を行うなど、積極的に取り組む区市町村がある一方で、障害者全般に対する相談支援事業の中でのみ対応している区市町村もあるなど、その取り組み状況には地域間の格差が見られます。
 高次脳機能障害者とその家族が身近な地域でひとしく適切な相談や支援が受けられるよう、都として区市町村の取り組みを促すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 次に、東京の国際競争力の強化とまちづくりについてお伺いをいたします。
 まず、空港機能の視点からお伺いをいたします。
 いよいよ十月に羽田空港の第四滑走路が完成し、年間の発着能力が約四十万回になり、国内航空需要を満たすと同時に、国際定期便の受け入れにより、国際競争力の強化につながるものと大いに期待をいたしております。
 しかし、これだけでは決して首都圏の航空需要に対し十分とはいえず、さらなる発着能力の確保が求められております。そのため、国は第五滑走路の可能性も含め容量拡大の可能性を検討しておりますが、平成二十年九月に一部返還された横田空域のさらなる返還が急務であると思っております。
 普天間基地移設問題をめぐり、鳩山政権の優柔不断な対応により日米の信頼関係が揺らいでしまっている中、東京都がより主体的に積極的に対応すべきと考えますが、横田空域返還に向け今後どのように取り組んでいくのか、お伺いをいたします。
 東京の国際競争力の強化や首都圏の航空需要を満たすためには、羽田空港と成田空港は決して対立関係にあってはならず、協調関係になくてはならないと考えます。
 昨年十月より、成田空港の暫定平行滑走路の供用開始による発着能力の増加や、本年七月十七日、日暮里と成田空港をわずか三十六分で結ぶ成田スカイアクセスの開業などは、東京都民の航空需要を満たし、多くの国内外からの観光客を招くこととなり、都としても好機ととらえ、観光振興、にぎわいのあるまちづくりなど、さまざまな施策に生かすべきと考えます。
 特に、日暮里駅周辺は、成田スカイアクセスの開業により新たな世界の玄関口となり、国内外の多くの方々が利用されることが期待され、地元自治体や商店街では、開業イベントの実施や観光客の呼び込み、まちの活性化につなげようと機運が盛り上がっております。都としても積極的に支援すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 羽田空港の機能拡張、成田空港へのアクセスの短縮により、東京を訪れる外国人旅行者が大幅にふえることが見込まれており、都内各地の外国人の関心の高い観光資源に対する取り組みが必要であると考えます。
 現在、世界では日本アニメの人気が非常に高く、フランスで開催された日本のアニメなどを紹介するジャパンエキスポでは、四日間で十六万人もの来場者があり、また、秋葉原や吉祥寺では、アニメ関連店舗や関連施設をめぐる外国人向けウオーキングツアーなども開催されており、国内外で人気の高いアニメは、多くの観光客を集客できる観光資源として活用されております。
 私の地元品川区では、ゴジラが初めて日本に上陸したのが八ツ山橋付近であることから、ゴジラ上陸等の地に等身大モニュメントを建て、地域の活性化につなげようとする機運が高まっております。将来的には、アニメだけではなく、実写版キャラクターも東京の貴重な観光資源としてさらに活用できる可能性を持っております。
 都では、まずアニメ関連のイベントや施設を積極的に海外へPRするなど、観光都市東京の国際競争力を高めるために、アニメを観光資源として一層活用する取り組みが必要と考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 続いて、港湾機能に関してお伺いをいたします。
 釜山港などアジア諸港が躍進する中、首都圏の産業活動と住民生活を支える京浜港の国際競争力の強化は喫緊の課題であります。
 こうした中、京浜三港は先月、今後の京浜港の進むべき方向性を示す京浜港共同ビジョンを策定し、港湾間競争に打ち勝つため、多様な取り組みをできるものから着実に実施していくとともに、コンテナ船の大型化にも対応した貨物集荷を進め、利用者から選択される港湾づくりを目指すこととなりました。
 一方、京浜三港が連携し、コンテナターミナルにいかに大量の貨物をおろしたとしても、ターミナルから荷主に迅速かつ円滑に届けられなくてはなりません。私の地元、大井ふ頭では、以前より、季節や特定時間等にターミナルでの貨物の搬出入が集中し、コンテナの積み込みのため待機している車両による渋滞が発生し、周辺地区の交通や環境にも影響を及ぼしております。
 京浜港の国際競争力の強化に向け、さらには渋滞解消の視点からも、コンテナターミナルにおいて貨物を迅速に搬出入させる取り組みが重要であると考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 次に、政権交代に伴う石原知事の都政運営についてお伺いをいたします。
 昨年八月の衆議院選挙の結果、これまで続いていた自民党政権から民主党政権へと政権交代がなされました。自民党は、政権与党としての責任ある立場から、財源をしっかりと確保し、将来への負担を極力最小限に抑える中でのさまざまな公約を掲げ、衆議院選に臨みました。一方民主党は、財源確保に対する甘い認識のもと、子ども手当の支給、高速道路の無料化、高校授業料の無料化等々、国民へ耳ざわりのいい政策を殊さらに強調し、衆議院選に勝利し、政権交代がなされました。
 その結果行われましたのが、首都圏住民の生命、財産を守るため、治水、利水効果のある八ッ場ダム建設の凍結、都心部の交通渋滞の解消のために必要な外かく環状道路建設の凍結、普天間基地移設問題の対応の悪さから日米の信頼関係が崩れ、横田基地及び横田空域の返還の立ちおくれの懸念も生じております。
 また、災害発生時の地域住民の避難場所としても活用する小中学校の校舎の耐震化も立ちおくれ、地球温暖化対策が求められる中、環境政策に逆行する道路特定財源の暫定税率廃止が決定され、かと思えば、財源不足から税率水準が維持されるというていたらくであり、外交、防衛上、また主権国家としての立場が危機にさらされてしまう、憲法違反ともいわれている外国人参政権の付与、庶民迎合も甚だしいばらまき政策の子ども手当の実施に伴う突然の地方自治体への財政負担の強要等々が行われようとし、東京都政や東京都民への不利益がもたらされようとしております。
 石原知事は、平成十一年、東京から日本を変えるとして都知事選に臨みました。平成七年、国会議員の議員辞職を表明されましたが、当時の秘書たちは、みずからが失業状態になってしまうにもかかわらず、だれ一人として不満をいう者は当然おらず、むしろ、石原さんらしい行動であり、石原さんの次なる行動に大いに期待を膨らませておりました。
 そして、都知事選への出馬表明がなされ、まさにこのときを待ち望んでいたという思いを強くいたしました。私も自民党の一員ではありますが、国益よりも省益を優先する官僚支配による自民党政権下の官僚統制国家を変えていくことを大いに期待いたしました。
 そして、都知事就任後、ディーゼル車両への規制により東京の空気をきれいにし、地球温暖化対策では国のはるか先を行き、大規模事業者へCO2排出削減の義務化、排出権取引制度の導入などを実行に移し、また、国に先駆け、複式簿記・発生主義会計の考え方を取り入れた新しい公会計制度を導入いたしました。銀行税も国を動かし、法人事業税の一部に外形標準課税を導入することにつながり、都税収入の確保にも尽力されてまいりました。
 待機児童の解消に向けた認証保育所の創設や、羽田空港の再拡張、横田空域の一部返還等も、本来国が行わなくてはならない事業に対し、石原知事が積極的に取り組み、成果を上げてきている事業であり、まさに東京から日本を変えてきた石原都政の大きな成果であります。
 私は、今回の政権交代により、東京都政や東京都民への多くの不利益がもたらされようとし、国政が混迷している今こそ、引き続き東京から日本を変える石原知事の行動が期待されているものと強く確信をいたします。
 ぜひとも、石原知事には、引き続き東京から日本を変えるためご尽力いただきたいと思っております。政権交代後の都政運営に当たる石原知事のご決意を改めてお伺いし、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 田中たけし議員の一般質問にお答えいたします。
 都政運営に当たる決意についてでありますが、繰り返していってきたことでありますけど、日本の心臓部であり頭脳部でありますこの東京には、それゆえに大都市の宿命として日々さまざまな変化が及び、それが発生させる新しい難問が現出してまいります。こういう問題はイデオロギーを超えて、あくまでも合理的に、都民の利益のために冷静に合理的に解決していかなければならないと思っております。
 知事に就任以来、都議会の皆様の協力を得ながら、東京が倒れれば日本が倒れるとの危機感にのっとって財政の再建もしてまいりましたし、この国を牽引する施策も提言し、実現もしてまいりました。
 確かに幾つかの成果も上げてきましたが、もはや引き返せないところまで来た地球の温暖化や急速に進む少子化など、東京と日本は複合的な危機にさらされておりまして、取り組むべき課題はまだまだ山積しております。しかし、肝心の国政は、この国を一体どこに導こうとしているのかどうも判然としません。ゆえにも、眼前の危機に迅速に対処し、十年先に実を結び、五十年先、百年先にもつながっていく政策についても、東京から日本の未来を切り開いていく気概でこれをステディーに進めてまいりたいと思っております。
 もとより国には、首都を預かる知事としていうべきことはいい、求めることは強く求めてまいります。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 二点についてお答えを申し上げます。
 まず、高次脳機能障害者支援の取り組みについてでありますが、都は、支援拠点機関であります心身障害者福祉センターに支援コーディネーターを配置し、医療や福祉サービスの利用等に関する専門的な相談や、区市町村等の相談支援従事者を養成する人材育成研修などを行っております。また、二次保健医療圏ごとに医療機関、区市町村、保健所等との連絡会を設置し、地域における支援ネットワークの整備を進めております。さらに、都民を対象にした障害特性を理解するための冊子や、相談支援従事者向けのハンドブックを発行するなど、高次脳機能障害者に対する支援の普及促進に努めております。
 次に、区市町村における取り組みの促進についてでありますが、高次脳機能障害者を支援していくためには、身近な地域で相談や支援を受けられる体制を確保することが重要でございます。
 このため、都は、平成十九年度から区市町村高次脳機能障害者支援促進事業を開始し、相談支援や普及啓発等を行う区市町村に対する財政支援を行っております。本事業に取り組む区市町村は当初二区でありましたが、さまざまな機会をとらえて働きかけた結果、二十一年度は十四区市と着実に増加しており、二十二年度は二十四区市での実施を予定しております。
 今後とも、先駆的な取り組み事例を紹介するなど、高次脳機能障害者支援の充実に向けた区市町村の取り組みを促進してまいります。
   〔都市整備局長河島均君登壇〕

○都市整備局長(河島均君) 横田空域の返還についてお答えいたします。
 在日米軍が管制をする横田空域は、一都八県にわたる広大なエリアに広がっておりまして、民間航空機の運航の支障となっております。
 一昨年九月に再編実施のための日米ロードマップに基づいて空域の一部が返還されましたが、これにより飛行時間の短縮や燃料削減などにつながる効率的な飛行ルートの設定が行われるとともに、羽田の再拡張後の容量増加にも対応する管制が可能となりました。
 さらに、横田空域の全面返還が実現すれば、首都圏空域を再編成して、我が国が一体的に管制業務を行うことにより、羽田の発着便はもとより、この空域におけるより合理的な航空路の設定ができるようになります。
 国は、ロードマップで合意した日米両政府による横田空域全体のあり得べき返還に必要な条件の検討を今年度中に行うとしております。
 都は引き続き国に対して、横田空域及び管制業務の早期全面返還の実現を米政権に強く働きかけることや、同空域を活用した合理的な航空路を設定することを強く求めてまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

○産業労働局長(前田信弘君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、まちの活性化への支援についてでありますが、交通インフラの整備を契機として、地元の自治体や商店街が節目節目に各種イベントを行うことは、商店街の売り上げの拡大といった経済的効果のみならず、地域コミュニティの維持発展や地域のイメージアップにつながるという波及効果もあります。
 都は、これまでも新・元気を出せ商店街事業により、こうしたイベントや活性化事業を積極的に支援し、商店街のにぎわいの創出を図ってまいりました。
 お話の成田スカイアクセスの開業と連動した日暮里駅周辺の活性化につきましては、今後、地元自治体や商店街の意向を聞きながら、多面的な支援を検討してまいります。
 次に、アニメの観光資源としての活用についてであります。
 アニメは世界に誇る日本の文化であり、各国で高い人気を博している東京の重要な観光資源であります。
 これまで都は、東京国際アニメフェアなどによりまして、アニメに関する情報発信を行うとともに、国の内外から集客を図ってまいりました。アニメの世界を身近に感じることができる作品ゆかりの地、あるいはアニメの制作過程を紹介する施設などは、ファンにとりまして東京を訪れたくなる魅力的な観光資源でございますが、まだ十分に知られていない状況にあります。
 このため、都では、地域のさまざまなアニメ関連施設やイベントなど、観光に活用できる資源の調査を行い、得られた情報をもとに多言語によるパンフレットを作成し、海外のイベントなどを通じて広く情報を発信してまいります。また、地域などとの連携により観光ルート化を図るなど、アニメの観光資源としての活用を一層推進してまいります。
   〔港湾局長比留間英人君登壇〕

○港湾局長(比留間英人君) コンテナターミナルにおいて貨物を迅速に搬出入させる取り組みについてでございます。
 港湾の国際競争力強化に向けて、貨物集荷に努めるとともに、ターミナルにおける貨物の搬出入を短時間に行うための取り組みを推進することは重要であり、渋滞解消は大きな課題であると認識をしております。
 ターミナルにおいては、翌朝の配達に備えて午後から夕方にかけて貨物引き取りのトラックが集中するため、渋滞が著しい状況にございます。このため、都は、これまでも周辺道路にコンテナ車専用レーンを設置するなど、混雑の緩和に努めてまいりました。
 現在、大井ふ頭の周辺に保管場所を設置し、午前中に輸入貨物をその場所に移動し、夕方にはトラックがターミナルに入場することなく貨物を引き取れる仕組みを運送事業者と共同で構築し、ターミナル周辺の混雑緩和が図れるよう実証実験を開始したところでございます。さらには、大井ふ頭近隣で新たな埋め立てを行い、コンテナを保管するバンプールなどを整備することにより、集中するトラック動線の分散を図ってまいります。
 今後とも、多様な手法により、渋滞解消を初め物流の円滑化を図り、京浜港の国際競争力の強化に取り組んでまいります。