午後三時五分開議
○副議長(鈴木貫太郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
質問を続行いたします。
一番小林健二君。
〔一番小林健二君登壇〕
○一番(小林健二君) 初めに、首都東京の文化財や歴史的建造物の保護とまちづくりについて質問いたします。
東京には、歴史の中で先人がはぐくんできた多様な文化や、重厚な歴史の息吹を感じさせる多数の歴史的建造物が存在しています。こうした歴史的建造物や文化財は、まさに東京を豊かで風格のある都市、魅力あるまちとして再生するための重要な資源であります。
石原知事は、今定例会の施政方針で、都が選定した歴史的建造物の保存や修復を応援し、歴史と文化が薫るまちの顔に育てていくと表明されましたが、私も全く同感であります。
そこで、これまで首都東京の都市再生を本格的に進めてこられた知事の立場から、都市再生と都市の歴史的建造物の保存、活用のあり方について知事のご所見を伺います。
東京には、文化財である建造物は、国指定の国宝が二件、重要文化財が六十七件、登録文化財が二百四十九件あり、都指定では六十件の重要文化財があります。また、都選定の歴史的建造物が七十二件あります。
イギリス、ドイツ、フランスなどのヨーロッパ諸国では、二十世紀初頭より、歴史的建造物とその周辺地域を一体として歴史的環境ととらえております。それは、フランスでは、文化財を中心とする半径五百メートル範囲の開発を規制していることであり、ロンドンでは、まちの象徴であるセントポール大聖堂がどこからでも見えるようにするため、周辺の高さ制限を設けていることなどに象徴されております。
一方、日本では、歴史的建造物、文化財などの保護と周辺地域の開発という点では、さまざまな課題が指摘されております。
例えば、明治から大正にかけて建築された文京区の銅御殿と呼ばれる国の重要文化財とその周辺環境に明らかであります。銅御殿の至近距離では、現在高層マンションの建設が進んでおり、所有者や地域住民の方々が、建設によるビル風の影響や地盤沈下によって銅御殿に重大な損傷が出るのではないかと心配しております。私も現地に足を運び、所有者や関係者の方々より直接危惧するお声をお聞きしてまいりました。
歴史的建造物、文化財の保護と周辺地域の開発という、いわば相入れない二つのものを、東京のまちづくりの中でいかに共存、調和させていくのかが極めて重要な課題であります。
この解決のために、東京都景観条例に基づいて定めた歴史的景観保全の指針をさらに有効に機能させることが大切であると考えております。この指針において、現在適用される建造物は、都選定の歴史的建造物と、文化財のうち特に景観上重要な建造物に適用され、それ以外の文化財が欠落しております。
知事が述べられた歴史と文化が薫るまちの顔に育てていくためには、この指針を有効に活用し、広く文化財を指定することが大切であります。この指針の中に積極的に文化財としての建造物を含め、広く歴史的な景観形成に努めていくべきと考えます。見解を伺います。
次に、けいれん性発声障害について質問いたします。
けいれん性発声障害は、音声障害の一つといわれ、声帯は正常であるにもかかわらず、声を出そうとすると詰まって出ない、途切れ途切れになる、震えるなどの症状があり、原因が不明とされておりますが、一番の問題は、病気への理解、認知度が低いために、患者の方々が大変に苦しみ、つらい思いをしておられることであります。
私も患者さんに直接お会いし、お話を伺いましたが、日常生活でさまざまな誤解を受けていると懸命に訴えておられました。職場で電話で話をする際も、はっきりとした会話ができず、電話相手より、ふざけているのかとどなられたり、小さいお子さんを抱えているお母さんの中には、子どもにうまく話しかけることができず、周囲の人より自分の子どもをしかれないのかと非難を受けた人もいます。
このけいれん性発声障害は、十代の思春期での発症が多いともいわれ、教員や子どもにも理解されていないため、学校現場においてはいじめの原因ともなっています。こうした方々が医療機関を訪ねても、医師の間でも余り知られていない現状で、異常ない、精神的なものではないかと誤診されるケースもあり、けいれん性発声障害と診断されるまで、耳鼻咽喉科や精神科を幾つも転々とした患者さんも多くおります。
現在行われている治療法は、ボツリヌストキシンを注射する治療で、一時的に声をもとに戻すことができます。注射費用は一般的に約三万円ですが、効果が短く、数カ月ごとの注射が必要であるため、経済的負担が問題となっています。また、外科的治療法として、甲状軟骨形成術Ⅱ型、甲状披裂筋摘出術という手術がありますが、この手術を行える医師が限られているのが実情であります。
都議会公明党の要望を受け、都の働きかけにより、耳鼻咽喉科医会学術講演会における医師を対象としたけいれん性発声障害の特別講演が実現し、講演内容が医師会の会報に掲載されることになったと聞いております。このことは普及啓発への一歩として高く評価いたします。
今後は、さらに社会への理解、また、現在行われている治療法の紹介等を普及させていくためにも、医療関係者への啓発の拡大、また教育現場への普及啓発を行っていく必要があります。都は、この病気の原因解明や治療法の確立などを国に要望していくべきと考えます。見解を伺います。
次に、脳脊髄液減少症についてお伺いします。
この病状は、頭痛、目まい、耳鳴り、吐き気等々、いわゆるうつ病の症状などとも似通っています。その治療法であるブラッドパッチ療法については、いまだ保険適用されていないため手術費用が高く、手術できる医師も限られております。全国では、公式ホームページで治療可能な病院の公開が進んでいます。公開していないのは、東京、大阪、香川、北海道を残すのみとなりました。都においても、脳脊髄液減少症の理解と患者支援のための対策を早急に講じるべきであります。
そこで、都はまず情報収集と普及啓発を図るべきです。見解を伺います。
また、学校での体育授業や部活動などでの事故が原因で、児童生徒が脳脊髄液減少症を発症する事例があります。文部科学省は教育委員会に対し脳脊髄液減少症の周知と適切な配慮を求める事務連絡を出し、自治体レベルで教員への脳脊髄液減少症の研修が実施されています。
脳脊髄液減少症患者・家族支援協会は、学校関係者などへの研修で役立つようDVDを制作しております。こうしたDVDなどの補助教材の活用や教員のセミナーの開催、学校関係者の理解啓発を充実していくべきと考えます。見解を伺います。
次に、予防接種支援について質問します。
生後三カ月から五歳ごろまでの年齢に発症が多く見られる細菌性髄膜炎は、小児が罹患すると約七%の人が亡くなり、約四〇%の人が後遺症に苦しんでいるとの報告があります。
この小児の細菌性髄膜炎の原因菌は、インフルエンザ菌b型、Hibと肺炎球菌であります。日本小児感染症学会の医師らの研究において、保育園入園時点で半数の子がインフルエンザ菌、肺炎球菌のいずれも保有していない状況の中、入園数カ月後には、インフルエンザ菌と肺炎球菌の両方を保有している子が八〇%に上るという調査結果が発表されました。これは早期に予防接種することの重要性を明らかにしています。
また、小児用の肺炎球菌ワクチンは、アメリカ、イギリスなど三十五カ国で定期接種化され、九十三カ国でも導入が進む中、実用化されていないのは先進国の中で日本だけでありました。しかし、昨年十月に厚生労働省が承認し、先月二十四日に日本での実用化、販売が開始されました。
小児用肺炎球菌ワクチンの接種費用は一回約一万円前後で、四回接種が標準となっています。全額自己負担となり、子育て世帯にとっての負担は決して軽くはないといえます。
去る二月八日、都議会公明党は、石原知事に対して、肺炎球菌ワクチン接種の推進に関する申し入れを行いました。子どもの命と健康を守っていくためにも、都の速やかな取り組みが必要であります。
予防接種事業の実施主体は区市町村であることから、小児用肺炎球菌ワクチン接種を幼稚園や保育園の入園前に接種することの効果などについて区市町村に周知するべきです。
また、現在都が行っている予防接種支援事業において、細菌性髄膜炎に対するワクチンとして、Hibワクチンは既に対象となっていますが、今回実用化となった小児用肺炎球菌ワクチンも早期に加えるべきであります。あわせて見解を伺います。
また、国に対して小児用肺炎球菌ワクチンの定期接種化を求めていくべきと考えます。見解を伺います。
最後に、都営地下鉄大江戸線延伸について伺います。
平成十二年十二月に全線開業した都営地下鉄大江戸線は、首都圏における新たな交通ネットワークの形成に大きな役割を果たしております。ところが、この大江戸線の通らない練馬区北西部については、依然として極端な交通不便地域となっております。この地域に私も住んでおり、多くの住民の方々より、光が丘から大泉学園町への大江戸線の延伸を望む強い要望をお聞きしております。この延伸は、平成十二年の運輸政策審議会答申で整備着手が適当と位置づけられた路線であり、今後の人口増が見込まれる練馬区北西部にとって必要な路線であります。
そこで、大泉学園町への延伸について早急に整備着手をすべきと考えますが、事業化へ向けた取り組みについて見解を伺います。
また、大泉学園町への延伸に関連して、その導入空間ともなる補助二三〇号線の整備は、練馬区北西部における道路ネットワークを形成するためにも、今、最も整備が必要な道路事業であります。
一日も早い道路網の早期整備を強く要望して、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 小林健二議員の一般質問にお答えします。
都市再生と歴史的建造物の保存、活用のあり方についてでありますが、東京が活力のある都市として一層発展していくためには、都市の再生を積極的に進めながら、歴史と文化を生かした東京ならではの都市づくりを行っていく必要があります。
都はこれまでも、都市再生の機をとらえ、都市づくりの制度を最大限に活用して、歴史的な建造物である、例えば東京丸の内の駅舎や明治生命館などの保存、活用を図ってきました。さらに、丸の内駅舎の復元を契機として、行幸通りなどにおいて歴史的建造物を生かした一体的な景観形成を図ることにより、美しく風格のある首都の顔づくりを進めております。今後とも、こうした取り組みにより、成熟した都市としての多様な魅力を備えた首都東京を実現していきたいと思っております。
しかし大切なことは、東京に住んでいます都民自身が、みずからの都市に存在する、そうした歴史的な建造物の本当の価値について知って、愛着を持つことが絶対に必要だと思います。
昨晩、たまたまテレビで見ましたが、今や国宝になりました姫路の白鷺城を、戦争中、あの市民たちが何とか守ろうということで、自分たちで手づくりをした黒い網をあの大きな城にかけて、爆撃にやってくる敵の飛行機の目をくらまして守ろうとしたというのは、非常に美しい、すばらしい、この問題に関する挿話ではないかと思っております。
他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
〔教育長大原正行君登壇〕
○教育長(大原正行君) 脳脊髄液減少症に関する学校関係者への理解啓発についてでございますが、平成十九年五月三十一日付で文部科学省から、脳脊髄液減少症と呼ばれる疾患への対応について各学校に注意喚起するよう事務連絡がございまして、都教育委員会は、同年六月八日付で都立学校長及び各区市町村教育委員会に対し、周知を図るための通知を発出いたしました。
この疾患に関しましては、医学的に解明が進められている段階でございますけれども、今後、お話のような補助教材を有効に活用するよう学校に働きかけましたり、あるいは健康教育に関する研修を実施したりするなどして、学校関係者の理解啓発を積極的に図ってまいります。
〔都市整備局長河島均君登壇〕
○都市整備局長(河島均君) 歴史的景観保全の指針による景観形成についてお答えいたします。
この指針は、歴史的な建造物を核とした良好な景観形成を図るため、建造物の壁面から百メートルの範囲内を景観への配慮を行う範囲といたしまして、その中で建築などを行う場合の配慮事項を定めたものでございます。
現在、個々の歴史的な建造物ごとに景観への配慮を行う範囲を設定しておりますが、より効果的に景観形成を図るため、複数の歴史的な建造物や、景観形成に資する文化財が一定の地域にまとまって存在するような場合につきましても、その地域全体を景観への配慮を行う範囲とするよう検討していきたいと考えております。
今後とも、関係局との連携を図りながら、良好な歴史的景観の形成に取り組んでまいります。
〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕
○福祉保健局長(安藤立美君) 四点についてお答えを申し上げます。
まず、けいれん性発声障害についてでありますが、この病気は、筋肉の異常な収縮が起こるジストニアの一種で、発声障害を主な症状とする難治性疾患であります。国においては、本年度、ジストニアについての研究班を発足させ、実態解明や診断基準の作成等を目指し、調査研究を開始したところであります。
都は、このような希少で原因不明、治療法が確立していない疾患の治療研究を一層推進するよう、国に対し提案要求してまいります。
次に、脳脊髄液減少症についてでありますが、国においては、都道府県等からの要望を踏まえて平成十九年四月に脳脊髄液減少症に関する研究班を発足させ、三年計画で診断基準の作成や治療法の検討等を行っております。
都としては、この研究班での検討状況や国の動向等について情報収集に努め、適切に対応していきたいと思います。
次に、小児用肺炎球菌ワクチンについてでありますが、小児の細菌性髄膜炎は、インフルエンザ菌b型と肺炎球菌が主な原因菌となっており、Hibワクチンとあわせて小児用肺炎球菌ワクチンを接種することにより、高い予防効果が期待できます。
都としては、今後、ワクチンの有効性等について区市町村に情報提供するとともに、公費によるワクチン接種の助成を行う区市町村に対して、包括補助事業の活用も含め支援を行うことを検討してまいります。
次に、定期接種化に係る国への提案要求についてでありますが、国は、現在行っている予防接種制度の見直しの中で、定期接種の対象となる疾病やワクチンのあり方についても議論が必要であるとしております。
都は、今後、小児用肺炎球菌ワクチンの定期接種化に向けた検討を行うよう、国に対し求めてまいります。
〔交通局長金子正一郎君登壇〕
○交通局長(金子正一郎君) 都営地下鉄大江戸線の大泉学園町への延伸についてお答えいたします。
これまで、運輸政策審議会の答申などを踏まえ、地質調査を実施するなど基礎的な検討を進めてまいりました。事業化に当たりましては、例えば駅やトンネルの構造、需要予測など、ハード、ソフト両面からさらに具体的な検討が必要でございます。
今後とも、土地区画整理事業や街路事業などの進捗状況を踏まえながら、地元区や関係局などと連携して、事業化について採算性も含め引き続き検討を進めてまいります。
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