○議長(田中良君) 四十二番石森たかゆき君。
〔四十二番石森たかゆき君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
○四十二番(石森たかゆき君) それでは、まず初めに、東京都の産業支援についてお尋ねいたします。
代表質問でも触れられていたように、去る二月二十二日に、昭島市の都立短大跡地に長らく建設が進められてまいりました、多摩地域の産業支援拠点となる産業サポートスクエア・TAMAの開所式典がとり行われました。多摩地域のものづくり産業の活性化を目指して、暫定施設でありました多摩中小企業振興センターと、繊維産業を支援する都立産業技術研究センター八王子支所の機能を統合して、中小企業の経営面、技術面の両面からサポートする新たな産業支援拠点が完成したところであります。受注の大幅な落ち込みによって厳しい経営環境が続いている中小企業にとって、さまざまな支援体制の整ったこの施設の完成は大きな支えになることは間違いないと思います。
一方、国によって一昨年作成されたものづくり白書では、我が国の輸出量に占める工業製品は全体の九割以上となっており、我が国が今後とも安定的な発展を続けるためには、その根幹をなす製造業の競争力を維持強化することが重要で、特に成長著しいアジア諸国との競争が今後一段と厳しくなると予想されることから、ものづくり現場を中心に経営基盤全体の強化が必要だと指摘しております。
しかしながら、都内のものづくり産業の現状はといいますと、国民一人当たりのGDPが世界二位から大きく後退しているのと同様に、事業所数、従業者数、製造品出荷額等がいずれも大きく減少していて、これまで日本の発展の原動力とされてきたものづくり産業が今、最大の危機にあるといっても過言ではないと思います。
国際競争力を高めるためにも、最先端を行く技術開発力をさらに磨きをかけることが重要でありますが、都としては、このたびの産業サポートスクエア・TAMAの開設によってどのような期待をされているのか、開所式にも出席された知事の見解をお聞かせいただきたいと思います。
この産業サポートスクエア・TAMAでは、経営サポート館で経営面の支援を行い、テクノプラザで技術面の支援を実施いたしますが、現下の厳しい経営環境の中で中小零細企業が最も望んでいるのは、新たな受注拡大や販路拡大だと思われます。
そこで、この施設では、こうした要望に対してどのようにこたえていくのか、お尋ねしたいと思います。
また、今、企業が抱えている大きな課題の一つに後継者問題がありますが、東京都の調査では、都内中小製造業の中で、自分の代で廃業するという企業が何と約四分の一を占めておりまして、極めて深刻な実態が明らかになっております。
そこで、多摩地域においても、地域の産業特性を踏まえ、ものづくり産業の技術を将来にわたって支える人材の育成が必要であると考えますが、多摩の産業支援拠点では、人材の育成に向けて具体的にどのような事業展開をされるのか、お聞かせいただきたいと思います。
私は、三年前の一般質問で、ものづくり産業について取り上げた経緯がありますが、当時は産業技術研究所八王子支所の移転統廃合の計画に対し反対する立場で質問いたしまして、先端企業の集積が進んでいる八王子には、広域産業支援拠点としての施設が必要との要望をさせていただきました。その後、八王子支所の跡地については、多摩シリコンバレーの形成に向けて、都域を超えた産学、産産連携を促進する交流拠点の整備が位置づけられました。
八王子市では、この整備計画を起爆剤として、JR八王子駅北口周辺の再開発を計画しておりまして、昨年末より本格的に議論がスタートいたしました。八王子市につきましては、東京の都市づくりビジョンにおいて、多摩自立都市圏の形成を担う核都市の一つとして位置づけられておりますが、都としては、今後まちづくりの観点から、どのように交流拠点を中心とした周辺一帯の整備を進めるおつもりか、お示しいただきたいと思います。
次に、農業振興について伺います。
私の地元八王子の農業は、生産額、農地面積ともに東京都の約一割を占め、野菜を中心に米、果樹、畜産、キノコなど多種多様の農産物を取り扱っておりまして、市場出荷を中心に都民ニーズにしっかりとこたえる農業が行われております。
しかしながら、他の区市と同様に、都市化の進展による営農環境の悪化や農業従事者の高齢化、後継者、担い手不足、さらには、相続税支払いのために農地を手放さざるを得ないなど、農業経営の規模は次第に縮小している状況下にあります。
このような中、平成十九年に大型直売所を兼ね備えた、道の駅八王子滝山が開設して以来、農業者の直接販売が増加し、新たに農業を継ぐ後継者もあらわれるなど、意欲あふれる農業者がふえてまいりました。こうした中、都では、平成二十二年度に八王子市大谷町の都有地を農地として活用する新たなモデル事業をスタートさせますが、その農地活用の具体的な内容についてお聞かせをいただきたいと思います。
この大谷町の都有地は、過去に三宅島げんき農場、あるいは農業に興味がある方の研修農場としてその一部が利用されてきた経緯がありますが、未利用の都有地を農地として活用することは、都市の貴重な緑地空間が確保されるのと同時に、都内産の農産物が生産されるというメリットもありますし、都としては草刈りなどの維持管理費の節約にもつながります。
都市農地が減少する中、東京の農業を振興する上でも大変有効な試みだと思いますが、事業を成功させるには、地元農業者を初め関係機関との十分な調整が必要となります。その点について、今後、都としてはどのように進めていくのか、お聞かせいただきたいと思います。
続きまして、東京の自然と緑の創出について伺います。
明治の森高尾国定公園にある高尾山につきましては、豊かな自然に触れ合えるオアシスとして、一千三百万人の都民に愛されるだけでなく、フランスのミシュラン社発行の日本版旅行ガイドブックで、三つ星観光地の一つとして高い評価を得たこともあり、国内外から三百万人もの方々が訪れる、国際的にも広く知られる観光地となっております。
地元では、ミシュラン社の評価を受けて、世界に冠たる高尾の自然をスローガンに、昨年九月には英語版高尾山ガイドマップを作成し、本年一月には英語ボランティアガイド養成講座を開設するなどの取り組みを開始いたしました。
高尾山の魅力をより高めるためには、訪れる方々が安全で快適に過ごしながら自然を満喫できるようにしていくことが必要となりますが、東京都としてはどのように取り組んでいるのか、お尋ねいたします。
地元八王子市と観光協会では、外国人観光客の増加に伴い、昨年十一月、高尾山を訪れた外国人観光客を対象にアンケート調査を実施したところ、トイレが少ないことが不満の一つに挙げられていました。地元でも、新緑や紅葉などの行楽シーズンには、仮設トイレを設置するなどの努力をしておりますが、それでも山頂のトイレでは長蛇の列ができるなど、慢性的なトイレ不足の状況で、これまでにも来訪者から多くの苦情が寄せられていた現状にあります。
こうしたことから、ことし一月には、八王子観光協会、八王子商工会議所、そして地元商店会などの連名のもと、高尾山のトイレ対策に対しての緊急要望書が知事あてに提出されました。
都民や国内外の多くの観光客により一層愛される高尾山を目指して、下水道管の延伸など、常設トイレをふやすための具体的な取り組みを一刻も早く行うべきと考えますが、所見を伺います。
次に、高尾山の山頂から眺望できる東京の市街地における緑の創出についてお尋ねいたします。
これまで都は、環境先進都市東京の実現に向けて緑の東京十年プロジェクトを展開し、緑の創出に力を入れてまいりました。昨年は自然保護条例を改正して緑化率を引き上げ、あるいは都市開発諸制度を活用した緑化の推進といったさまざまな施策を展開するなど、市街地を中心とした緑の創出にも精力的に取り組んでおりまして、一定の評価をするところであります。
一方で、ビルの建設や市街地開発をする民間の事業者の中には、緑化基準を大きく上回る緑化を進めている方々も存在いたします。例えば、ビルの屋上庭園を一般に開放して都民が緑と触れ合える場を提供したり、四季折々の花や落葉樹などを効果的に取り入れて季節の彩りを強く感じる空間を演出したり、市街地における緑の質の向上に精力的に取り組んでいる事業者もおります。都は、今後、民間事業者のそのような自主的な取り組みに対しても、もっと目を向けていく必要があると思います。
今後、市街地でさらなる緑化を進めていくためには、単に規制的な手法で緑を確保するにとどまらず、みずから率先し、創意工夫を凝らして、より質の高い緑の創出に向け努力をしている人たちが評価される仕組みづくりが必要と考えますが、見解をお伺いいたします。
続いて、東京国体についてでありますが、平成二十五年開催まで残すところ三年余りとなりまして、いよいよ本年夏には、その開催が正式に決定されることになります。開催中は、全国各地から選手や役員、観客を迎え、多摩地域を中心に熱戦が繰り広げられることになりますが、私の地元八王子市でも、サッカーや体操、高校野球など六競技が予定されておりまして、開催に向けた取り組みや競技への期待も高まりつつあります。
そのような状況の中で、開会式や閉会式、陸上競技などの会場となる味の素スタジアムの大改修が予定されていると聞いております。緑多い武蔵野にふさわしく、環境にも十分配慮し、全国にアピールできる東京ならではのスタジアムに整備することが必要だと思います。
現在、FC東京や東京ヴェルディのホームスタジアムとしてJリーグ等の試合が行われている中、どのような改修となるのか、また、環境面でどのような対策を行うのか、最後にお伺いして質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 石森たかゆき議員の一般質問にお答えいたします。
中小企業支援についてでありますが、東京には高度で多様な技術を有する小零細企業が集積しておりまして、我が国の産業力の源泉となっております。特に多摩地域には、先端的な技術を持つ企業が数多く存在しております。
しかし、こうした企業がよき発想でいい着想をしても、技術や経営の適切な支援がなければ、新たな事業としては結実していきません。このため、先週開設した産業サポートスクエア・TAMAには、多摩地域の産業特性に応じた最新鋭の機器を配置するとともに、技術と経営の両面から支援を行う十分な体制を整備しました。
今後、この施設が存分に活用され、小零細企業の中から、我が国の産業を牽引する企業が、あるいは製品が輩出されることを期待しております。
他の質問については、関係局長から答弁いたします。
〔産業労働局長前田信弘君登壇〕
○産業労働局長(前田信弘君) 四点のご質問にお答えいたします。
まず、人材育成に向けた具体的な取り組みについてであります。
多摩地域の産業力を維持発展させていくためには、中小企業のすぐれた技術を承継し、活用できる人材を育成することが重要であります。
このため、産業サポートスクエア・TAMAにございます東京都立産業技術研究センターでは、新たな研究開発機器等を活用して、実習形式の技術セミナーや中小企業のニーズに合わせたオーダーメードセミナーを強化し、多摩地域の産業特性に応じたエレクトロニクス、精密機械などの分野を担う高度な技術者や、企業の要望に即した人材を育成してまいります。
また、繊維産業は多摩地域における重要な産業であることから、企画から試作までの繊維製品開発をトータルに支援できる一連の機器を整備したところであります。こうした機器を活用し、繊維関連産業の人材育成にも取り組んでまいります。
さらに、平成二十三年度に、同スクエア内に移転、開設予定の多摩職業能力開発センターにおきまして、在職者の能力開発への支援や求職者向け職業訓練を実施していきます。
これら産業支援機関の集積と連携を生かして、幅広く中小企業の人材育成を支援してまいります。
次に、産業サポートスクエア・TAMAにおけます中小企業への受注拡大等の支援についてであります。
都内中小企業が現下の厳しい経済環境を打開していくためには、ご指摘のとおり、受注拡大や販路拡大を図ることが重要であります。このため、同スクエア内にある東京都中小企業振興公社では、引き続き多摩地域の企業を巡回いたしまして、受発注のあっせんを行うとともに、施設の開設に合わせて立ち上げましたウエブサイトを活用し、多摩地域に集積する中小企業のすぐれた技術や製品の情報を国内外へ発信してまいります。
さらに、地元の商工団体等と共同で展示会を開催し、中小企業のすぐれた製品開発力や加工技術等を紹介してまいります。
こうした取り組みにより、新たな受注拡大や販路拡大に向けた中小企業の要望に積極的にこたえてまいります。
次に、八王子市大谷町の都有地の農地活用の内容についてであります。
輸入食品の農薬混入事件などを契機といたしまして、都民の食に対する安全・安心と地産地消への期待がかつてないほど高まっていると思います。
こうした都民のニーズにこたえる取り組みといたしまして、都は来年度から、食の安全・安心地産地消拡大事業、これを実施することといたしました。この事業では、お話の八王子市大谷町の未利用の都有地約八ヘクタールを農地として活用し、農業者の方々に環境保全型農業に取り組んでいただきます。生産された安全・安心な農産物は、農地が少ない区部の学校給食用に供給する考えでございます。
本事業により、多摩地域から区部の学校への都内産農産物の流通ルートを構築いたしまして、さらには都内農家を巻き込んだ地産地消の取り組みへと発展させ、東京の農業の振興を図るとともに、安全・安心な都内産農産物の地産地消を拡大してまいります。
次に、大谷町都有地の農地活用の進め方についてであります。
学校給食用に新鮮で安全・安心な農産物を大量に生産し、出荷するためには、農業者を初めとする農業関係団体の協力が不可欠でございます。このため、農場を運営する農業者の選定を含めまして、本事業の実施に際しては、地元市や農業委員会、JA東京中央会、農協等の意見を参考に進める予定であります。
また、区部の学校へ農産物を円滑に供給するために、都内流通業者や学校関係者に対して協力を要請してまいります。
なお、農地と農業用施設の整備につきましては、来年度に設計と工事を実施いたしまして、平成二十三年度から農産物を生産、出荷する計画であります。
今後、関係者との協力、調整を進めまして、事業の着実な実施に向けて取り組んでまいります。
〔都市整備局長河島均君登壇〕
○都市整備局長(河島均君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、産業交流拠点周辺のまちづくりについてでございます。
産業交流拠点の立地が予定されております八王子駅前旭町・明神町地区のまちづくりは、昨年策定いたしました多摩の拠点整備基本計画において、核都市八王子の中心市街地における重要な整備プロジェクトとして位置づけられております。このため、都は、地元市とともに、当該地区を対象とするまちづくりの調査を実施し、駅前地区にふさわしい業務機能の拡充、集客力のある商業機能の立地誘導、歩行者空間の確保などについて検討しております。
引き続き、関係局や地元市と連携して調査を進め、産業交流拠点を中心として多摩シリコンバレーの一翼を担うとともに、核都市の顔となる市街地の形成に向けて取り組んでまいります。
次に、味の素スタジアムの改修内容と環境対策についてでございますが、東京国体開催に向け、現在サッカー場などとして使用されているスタジアムを陸上競技も実施できるよう、九レーンの四百メートルトラックや走り幅跳び、砲丸投げなどの施設を整備し、あわせて、老朽化している大型映像装置の更新等を行ってまいります。
味の素スタジアムは、Jリーグや大規模なコンサートなどを開催しており、改修は、スタジアム運営に配慮して平成二十二年度及び二十三年度のJリーグのオフシーズンを中心に行う予定でございます。
また、人と環境に優しい国体の実現に向け、施設のユニバーサルデザイン化を進めるとともに、二百五十キロワットの大規模な太陽光発電をスタンド屋根などに設置いたしまして、Jリーグ年間使用電力量の約三割を賄う予定でございます。さらに、スタジアム本体の壁面緑化やミストによる冷却などの環境対策を行ってまいります。
東京国体のメーン会場として、さらには、サッカーに加え陸上競技の国際大会も開催可能なスタジアムとして、環境先進都市東京にふさわしい施設整備に全力で取り組んでまいります。
〔環境局長有留武司君登壇〕
○環境局長(有留武司君) 三点のご質問にお答えいたします。
まず、高尾山の安全で快適な利用についてでありますが、高尾山は豊かな自然や美しい景色が楽しめるなど、多くの人々に親しまれておりまして、高尾山の魅力を高めるためには、自然を守りながら安全で快適な利用を確保することが必要でございます。
都はこれまで、自然を守る取り組みとして、東京都レンジャーによる巡回や観光客への誘導啓発、ビジターセンターにおける展示解説などを実施してまいりました。さらに、いわゆるミシュラン効果による来訪者の増加に対応して、地元関係者と都で構成する連絡会のもとで、春の連休や秋の紅葉シーズンの混雑時に狭い歩道を一方通行にするとともに、案内板や歩道の標識に英語を表記するなどの外国人向けサービスの向上に取り組んでおります。
今後とも、都レンジャーの活動などにより自然公園の保全を図るとともに、地元関係者と連携して来訪者のニーズの把握に努め、高尾山の魅力を高める取り組みを積極的に推進してまいります。
次に、高尾山のトイレについてでありますが、春と秋の行楽シーズンを中心に、年間を通じて多くの人々が高尾山を訪れ、山頂のトイレが混雑していることから、トイレの増設は必要と認識しております。
山頂では、地形的に新たな浄化槽の設置スペースが確保できず、現行方式での増設は困難でございます。
トイレの増設には、下水道管を一キロメートル以上延長する必要があるため、都は、平成二十二年度に、自然の保全を図りながら下水道管を敷設するための調査を実施いたします。
訪れた人に高尾山の自然を満喫していただけますよう、都として、山頂のトイレの増設に向けて努力してまいります。
最後に、市街地の緑についてでありますが、豊かな都市環境の創出に当たりましては、緑の量に加えまして、その質を高めていくことが必要であり、お話のような民間事業者が率先して緑化に取り組む仕組みづくりが重要でございます。
そこで、都は、緑の量、景観、生物の生育環境、周辺との緑の連続性などの視点から、優良な緑化に取り組んでいる民間事業者を表彰する制度を創設しまして、平成二十二年度から開始いたします。さらに、表彰された優良な事例につきましては、これを広く公表することにより、緑化に向けた民間事業者の一層の創意工夫や自主的な取り組みを促し、東京全体でより質の高い緑化を推進してまいります。
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