平成二十二年東京都議会会議録第三号

○副議長(鈴木貫太郎君) 六十六番山崎一輝君。
   〔六十六番山崎一輝君登壇〕

○六十六番(山崎一輝君) 初めに、八ッ場ダム事業の必要性についてお伺いをいたします。
 中国では、国力を総動員して、膨大な資金を投入して三峡ダムとそのほかの社会資本整備を実施しております。そのために百二十万人もの移転が行われたそうであります。中国は一党独裁の国であります。ですから、反政府運動や住民の反対運動の報道は日本人には伝えられておりませんが、百二十万人が、電気が足りない、洪水の防御が必要だという、公、つまりおおやけの要請に対して、それに従ったのであります。
 ここで私は、日本の国土の特徴について少し述べます。
 その第一は、日本の国土の主要な部分が四つの島に分かれているという点であります。国民すべての人がひとしく国家の恩恵をあずかるという考えに立てば、四つの島を結ぶために、四国連絡橋のように橋や、青函トンネルのようにトンネルをつくらなければなりません。すべての国民のために公共事業が必要となるのであります。
 しかも、アメリカを超える海岸線を持つということは、実に複雑な国土を管理していかなければならない宿命を背負っているのであります。
 第二は、脊梁山脈の存在であります。北海道から九州に至るまで、二千メートル級の山脈が連なり、いわばエベレスト山脈の頂上が海に突き出しているといってもよいでしょう。
 第三は、平野が小さいということであります。東京に住む我々は、関東平野が広いと思いがちですが、日本でいう大都市、大阪や名古屋、福岡、仙台など、まちに出ればすぐに山並みが目に入ってくるほど、実は日本の平野は小さいということであります。国土地理院のデータでは、日本の低地が一二・七%、台地が一一・九%であり、ドイツやフランス、イギリスと比べ圧倒的に平野部が小さいということであり、日本の国土がいかに急峻であるかがわかると思います。
 第四は、この平野が極めて軟弱な地盤であるということであります。この軟弱な地盤は、この平野が六千年ほど前から、海面が下がることによって河川の土砂が押し流されてつくり出された平野で、地質学的時間でいえば、まだよく締め固まっていない状態といわれております。
 第五は地震。これは、いうまでもありません。世界の地震の二割が日本で起こっております。
 第六は、豪雨の存在であります。地球の降雨量の総平均が八〇〇ミリであるのに対し、日本は一六〇〇ミリから一八〇〇ミリであり、河川は脊梁山脈を両側の斜面のどちらかに流れるかであり、河川は極めて短いのであります。つまり、降った雨はすぐに海に流れてしまう。このため、洪水が起こるときは、一気に大量の水が流れて洪水となるのであります。
 明治時代に、河川改修のため指導に来た外国人技術者は、高い山からすぐに海に流れ込む河川を見て、これは川ではない、滝であるといったそうであります。
 以上、日本の国土の特徴を考えると、日本人は、今日まで国民の生命を守り、産業を興すために、世界に類のない手だてを国土に対して行ってきたのであります。
 我々の先祖は、この国土にあらゆる働きかけをし、安全に安心して暮らせるための努力を積み重ねてきました。
 江戸時代前は、関東平野も大洪水に何度も見舞われてきましたが、徳川家康により、利根川の東遷といわれる大事業を六十年もかけて行いました。それにより、当時の世界的大都市江戸は、大洪水に見舞われることなく栄えたのであります。
 また、甲府を洪水から守った武田信玄の信玄堤があります。伊達政宗は、追波湾において太平洋に流れていた北上川を石巻湾に曲げました。加藤清正は、白川を改修し、城下を水害から守ったといわれております。
 江戸時代に改修された河川は、広島県福山市の芦田川、北九州の遠賀川も、黒田長政が洪水を防ぎ、かんがいのため改修をしております。筑紫次郎で知られる筑後川、大阪の大和川、岡山の旭川、そのほか最上川、阿武隈川、鬼怒川、渡良瀬川、江戸川、多摩川など、約五十以上の我が国を代表する河川が、江戸時代の各大名により、民を守り、国を守るために膨大な資金を投入して大土木事業をなし遂げてきたのであります。
 日本は、豊かになったがゆえに、今日の政治家は近視眼的になり、五十年、百年先の日本国家、そして民族のための政治家としての使命を忘れ、未来、将来の人々に対して余りにも怠慢になっているのではないかと私は考えます。
 このように、当時の日本人が、勇敢に、より安全な国土、より使いやすい国土をつくり出すために挑戦を続けてきたのであります。その治水や新たな開発の成果の上に今日の私たちは暮らして生きているということは忘れてはなりません。
 国家百年の計を見据え、住民の生命や財産を災害から守っていくことは、政治の重要な責務であります。この視点に立ち、利根川の治水対策の面から、八ッ場ダムの必要性について知事のお考えを聞かせてください。
 次に、地下鉄八号線の延伸について伺います。
 東京の目指す都市の姿を示した「十年後の東京」計画では、快適で環境に負荷のかけない都市生活の実現を目指すこととしています。
 鉄道は、環境負荷の少ない交通手段の一つであり、東京における地下鉄などの鉄道整備は、平成十二年の運輸政策審議会答申第十八号に基づき着実に進められていますが、平成二十七年までに整備着手することが適当とされた路線については、残念ながら都内の九路線ですべてが未着手となっております。
 この一つに、私の地元江東区を南北に縦断する地下鉄八号線、東京メトロ有楽町線の豊洲駅から住吉駅間の延伸があります。この路線の整備は、区部東部地域の南北交通の利便向上だけでなく、埼玉、千葉方面からの臨海部へのアクセス改善など、その実現に対する沿線自治体の期待は非常に大きいものです。
 このため、江東区を初めとする沿線三区一市で構成する地下鉄八・十一号線促進連絡協議会では、地下鉄八号線の建設に向けた調査研究などを行い、第一段階として豊洲駅から住吉駅間を事業化するなど、今後の取り組みの方向性を沿線区市で確認したところであります。
 江東区は、協議会における合意を踏まえ、江東区地下鉄八号線建設基金を設置し、平成二十二年度予算案に五億円を積立金として計上いたしました。
 こうした地元区における熱心な取り組みを踏まえ、都も本路線の早期実現に努めていく必要があると考えますが、そこで、都は、この地下鉄八号線豊洲駅から住吉駅間の整備に向けて今後どのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
 次に、水道事業について伺います。
 東京における震災の発生確率が、三十年以内に七〇%という高い数値が公表されています。しかし、断層の位置や予測に必要な詳細情報が十分でないなど、いまだよくわからないというのが実情ではないでしょうか。
 自然現象に対する人間の英知には限界があり、一〇〇%被害を防止することは物理的に不可能です。それでもなお予防対策に最大限の努力を払うことが重要です。
 発災時の水道被害について、都の平均で約三割、私の地元東部地区では特に厳しく、約八割の断水が想定され、都民生活は非常に大きな制約を受けます。
 我が党は、さきの第四回定例会における服部政調会長の代表質問において、耐震継ぎ手管への取りかえを一層推進すべきと提案をし、水道局が本年一月に公表した経営プランの中で新たな施策として明らかにされております。
 耐震継ぎ手化の推進によって都民への影響はどのくらい軽減をされるのか、お伺いをいたします。
 次に、東京の水道管の長さは地球半周以上もあり、耐震継ぎ手管への取りかえは一朝一夕にはいきません。万一の発災時に備えた応急体制を強化することも不可欠です。
 忘れもしないあの阪神・淡路大震災では、全国各地から応急給水の応援が駆けつけました。発災時の速やかな対応は、被災者を大変勇気づけるものと思います。迅速で円滑な応急給水を実施するには、地元の区市町や地域住民との合同訓練を重ね、ほかの自治体と連帯を深めるといった事業の取り組みが必要ではないでしょうか。
 応急給水体制をより一層充実させる取り組みについて、見解を伺います。
 次に、浸水対策について伺います。
 都内では、毎年のように浸水が発生し、繰り返し被害が発生しているところもあることから、下水道局では、できるところからできるだけの対策を行い、浸水被害を軽減させる方針の雨水整備クイックプランによって浸水対策を進めてきました。
 そこで、改めてクイックプランによる取り組みと成果についてお伺いいたします。
 これまで効果的な対策を進めてきた下水道局の努力は評価をしております。しかし、クイックプランによる対策は、限られた財源の中でとられた暫定的な対策にあり、大規模な災害の備えとしては限界があるのではないでしょうか。
 下水道幹線やポンプ所など基幹施設の整備をするなど、抜本策を講じなければならないと考えます。特に私の地元は低地帯であり、一たび浸水が発生すれば大規模な災害にもなりかねないという心配をしており、以前から計画している江東幹線、江東ポンプ所の整備を心待ちにしております。
 先月発表された経営計画二〇一〇では、浸水対策は事業の大きな柱の一つに位置づけられていますが、下水道局は今後の浸水対策にどのように取り組むのか、江東区内の対策を含めお伺いし、一期生は一期生らしく謙虚な気持ちを持って質問をいたしました。
 終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 山崎一輝議員の一般質問にお答えいたします。
 治水面からの八ッ場ダムの必要性についてでありますが、文明の発生以来、水はまさに政の根幹でありまして、これを治めていくことは、国や自治体の重要な責務であります。
 おっしゃるとおり、我が国は急峻な山々が連なり、平野部が非常に限られております。国土の一割は洪水時の河川水位よりも低い沖積平野でありまして、こうした狭い地域に人口の五割、資産の四分の三が集中しています。
 とりわけ利根川の下流域には、人口が密集する市街地が広がっていまして、政治経済等の中枢機能が集積した首都東京が控えています。
 徳川幕府の開闢以来、利根川では、連綿と治水対策がとられてきた歴史があります。為政者がなすべきことは、長期的な視点に立った将来を見据えた取り組みであると思います。
 利根川の治水計画は、二百年に一回という確率の規模の大洪水が発生しても、下流域ではんらんさせず、安全に河口まで流すことを目標としています。八ッ場ダムは、この治水計画の一翼を担う極めて重要な施設でありまして、利根川上流のダム群の中でも最大の洪水調整能力が期待されております。
 堤防を超えるような大洪水でなくても、河川の水位が高くなりますと、埼玉県がしばしば経験しておりますように、水は堤防の下の砂質層を通って外側に浸水してきまして、堤防の崩壊を引き起こしかねない、大惨事になりかねない危惧を持っています。このような漏水は、平成十年以降、二十八カ所も発生しています。八ッ場ダムが完成すれば、利根川の全域にわたって水位を下げる効果が発揮されます。
 小沢ダムとかいわれている岩手県の胆沢ダムはどうかわかりませんが、ダム建設には当然、水没する現地での強い反対があります。現に、今や東京の不可欠な水がめとなりました小河内ダムも、計画されているときは大反対をこうむりました。しかし、一たん完成した後も、人々は非常に皮肉にうまいことをいいましたが、小河内を読むと、しょうがないと読めますから、しょうがないダムだと呼んでおりましたが、その翌年に干ばつが起きまして、その水がめで東京は救われたわけであります。
 引き続き、関係県の知事とも一致団結して、国に対して一刻も早くダムを完成させるよう強く要請してまいります。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔都市整備局長河島均君登壇〕

○都市整備局長(河島均君) 地下鉄八号線の豊洲駅から住吉駅間の整備についてお答えいたします。
 お話のとおり、沿線区市で構成する協議会では、昨年七月、これまでの調査検討の結果を踏まえまして、今後の取り組みの方向性について確認しております。また、地元江東区では、平成二十二年度予算案に建設基金の創設を盛り込むなど、意欲的に取り組んでいると承知しております。
 一方、本路線の実現には、多額の事業費の確保や事業主体の確立、事業スキームの検討などの課題がございますので、都といたしましては、引き続きこれらの課題につきまして関係者とともに検討してまいりたいと考えております。
   〔水道局長尾崎勝君登壇〕

○水道局長(尾崎勝君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、耐震継ぎ手管への取り組みの推進による震災時の影響の軽減についてでございますが、今回策定した東京水道経営プラン二〇一〇では、震災対策の重要性が増していることを踏まえ、水道管路の耐震継ぎ手化緊急十カ年事業として、管路の取りかえを大幅に前倒しして実施することといたしました。
 首都直下型地震による被害想定や管路の布設年次等を総合的に勘案し、計画的に管路の取りかえを進めていくことにより、平成二十年度末現在二四%の耐震継ぎ手率が、平成三十一年度末には四八%に向上し、平常給水への復旧日数が三十日以内から二十日以内へと大幅に短縮できます。
 また、水道管路の被害箇所の減少により、他のライフラインの復旧活動や、道路陥没、建物への浸水などの二次被害抑制にも効果が期待できます。
 こうしたことから、都市活動への影響や都民生活への負担を大幅に軽減できるものと考えております。
 次に、応急給水体制の一層の充実についてでございますが、水道局では、発災時に区市町と協力し、定められた役割分担に基づき、給水拠点や避難場所などにおきまして迅速かつ円滑な応急給水を実施できるよう、平常時から繰り返し訓練を行っております。
 しかし、大震災ともなれば、想定を超えた事態も起こり得ることから、応急給水を行うに当たっては地域の方々などの協力が不可欠であります。このため、区市町に働きかけて、自治会や町会などと連携した応急給水訓練を行うほか、水道局OB職員などボランティアの充実を図ってまいります。
 また、政令指定都市間では、震災などの被災時に備え相互応援協定を締結しておりますが、その実効性をより高めるため、東京が被災した場合の応援幹事都市となる横浜市、仙台市との共同訓練を新たに東京で実施することに向け、両都市と検討を行ってまいります。
 今後とも、都民の安心を高めるため、震災対策の強化に全力で取り組んでまいります。
   〔下水道局長松田二郎君登壇〕

○下水道局長(松田二郎君) 浸水対策についての二つのご質問にお答えをいたします。
 まず、雨水整備クイックプランによる取り組みと成果についてでございますが、これまで浸水被害の状況に応じて、既存施設の改良や施設の部分的な先行整備などの工夫により、被害の早期軽減を図ってまいりました。
 具体的には、既存施設の改良として、区部の百四十八カ所において、下水道管の枝線を相互につないで、それぞれの地域の下水の流れを円滑にしたり、雨水ますを増設して雨水を取り込みやすくするなどの対策を平成十九年度までにすべての箇所で完了させております。
 また、東陽地区や古石場地区など江東区内の四地区を含む四十二地区を選定しまして、下水道幹線の一部を先行的に整備して、雨水を暫定的に貯留するなどの対策を実施し、今年度末までに三十九地区で完了いたします。
 対策が完了した地区では、被害の大幅な軽減が図られております。
 次に、浸水対策の今後の取り組みについてでございますが、このたび策定をした経営計画二〇一〇では、抜本的な対策を実施するため、浸水の危険性が高い地区として選定した二十の対策促進地区において、下水道幹線やポンプ所などの基幹施設の整備を推進していくこととしております。
 江東区内では、大島地区と木場・東雲地区を対策促進地区に選定をしております。
 大島地区につきましては、約五百五十ヘクタールの雨水排除能力を増強する、深さ約五十メートルに及ぶ小松川第二ポンプ所の工事を鋭意進めております。
 木場・東雲地区では、口径最大約六メートル、延長約五キロメートルに及ぶ江東幹線と地下四十メートルを超える深さの江東ポンプ所を整備し、この地区の約五百ヘクタールの雨水の排除能力を大幅に増強することとしております。
 現在設計を行っておりまして、江東幹線は平成二十二年度中に、江東ポンプ所は平成二十三年度中には着手する予定でございます。
 いずれも地下深く大規模な施設で、整備には長期間を要しますが、一刻も早い完成を目指して、全力を挙げて取り組んでまいります。

○七十四番(松下玲子君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会されることを望みます。

○副議長(鈴木貫太郎君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○副議長(鈴木貫太郎君) ご異議なしと認め、さよう決定いたします。
 なお、明日は、午後一時より会議を開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後八時五十三分散会