○議長(田中良君) 二番加藤雅之君。
〔二番加藤雅之君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
○二番(加藤雅之君) 初めに、資源リサイクルと産業振興について質問します。
資源に乏しい我が国は、資源価格の変動が経済や都民生活に大きな影響を与えるため、資源そのものをリサイクルして有効に利用することがより一層求められています。
公明党青年局が、携帯電話の回収やリサイクルに対する取り組みの強化を求める署名運動を全国で展開し推進した、国の携帯電話回収促進実証事業「たんすケータイあつめタイ」では、二月二十一日時点で約四十七万五千台の使用済み携帯電話が回収されました。
都においても、都議会公明党の提唱を受け、都庁、区役所、地下鉄、大学などで携帯電話の回収を進めてきました。今後、より一層のレアメタル回収拡大を図るために、さらなる回収拠点の拡大、個人情報漏えい対策の強化、回収促進を促す方策を充実させることが必要です。これまでの成果について明らかにしていただきたいと思います。
現状では、レアメタルリサイクルの回収コストの低減が大きな課題であるため、効率的な収集、技術開発資金援助など、先駆的なリサイクルシステムの構築に向け、都は積極的に取り組むべきと考えますが、見解を求めます。
都市で大量に廃棄されるパソコンや携帯電話など電子機器の中に、希少価値の高い資源が鉱山のように眠っており、このような都市鉱山を持つ東京は、実は世界有数の資源大国であるという発想から、資源リサイクル産業も東京における有望な産業分野の一つといえます。
こうした東京が抱える都市課題や東京が持つ強みの中に、東京の将来を支える成長産業の芽があると考えます。今後成長が期待される産業の育成に向け、積極的に支援策を打ち出していくことが重要であると考えますが、知事の所見を伺います。
次に、臓器移植について伺います。
昨年夏、臓器移植法が改正され、日本移植学会では、本年七月の施行によって、現行の十倍近い、年間七十例ほどの脳死移植ができるようになると見ております。
現在は、国の通知に基づき臓器移植コーディネーターが各県に配置され、関係機関と連携しながら臓器提供の意思がある脳死者のご家族に対して、心のケアや諸手続のサポートなど、きめ細かな対応をしております。
しかし、主治医等の協力があるといっても、一人のコーディネーターが都内全域をカバーしており、また、近年、海外渡航による臓器移植を制限する国際的な動きも相まって、現行の一人体制では十分なケアは望めません。今後、都としてもコーディネーターの増員を図るべきと考えますが、見解を求めます。
次に、がん検診について伺います。
胃がんや大腸がんなどは検診により早期に発見され、適切な治療を受ければ完治することも多く、がん検診を定期的に受診することが重要です。
都民ががん検診を受ける機会としては職場の検診を挙げる人が多いことから、職域における受診率向上を図ることは非常に重要であります。
我が党の提案により、平成二十二年度予算案には、職域におけるがん検診推進をサポートしていく事業が盛り込まれました。この事業の取り組みについて見解を求めます。
さらに、がん対策を推進するためには、検診受診率の向上と高度医療の提供などとあわせ、がんの実態把握が不可欠であり、こうしたデータを収集するのががん登録であります。
がん登録には、病院が行う院内がん登録と、都道府県が行う地域がん登録の二つがありますが、現在、都では、がん拠点病院と認定病院において院内がん登録を行っていますが、地域がん登録は実施していません。
また、都内には、拠点病院、認定病院以外にもがん診療を行っている医療機関が多数あり、これらの医療機関に院内がん登録をどう普及し、地域がん登録へとつなげていくかが大きな課題となっています。
都は、平成二十二年度予算で、拠点病院等におけるがん登録データの収集分析を行うがん登録センターを設置するとしております。このセンターについては、都議会公明党が主張してきた地域がん登録実施の足がかりとなるものであります。
そこで、同センターの役割、機能について伺うとともに、センター設置を契機に、がん登録の普及啓発、院内がん登録を実施する医療機関の拡大に一層努め、地域がん登録につなげるべきと考えます。それぞれ答弁を求めます。
次に、MTBI、軽度外傷性脳損傷についてです。
これは、脳の情報伝達を担う軸索といわれる神経線維が、交通事故や転倒などで頭部に衝撃を受けて損傷し起きる疾患です。これに詳しい茨城県湖南病院石橋徹院長らが、WHOの基準に照らして国内で初めて調べたところ、二十都道府県で百六十二人の患者がいることがわかりました。WHOによれば、世界で毎年一千万人が外傷性脳損傷にかかり、十万人当たりの発生頻度は百五十人から三百人。その九割が軽度外傷性脳損傷です。静かなる流行病ともいわれています。
問題は、てんかん発作や排尿・排便障害、においや味がわからないなどといった症状が事故後すぐに出ず、数カ月たってから出ることがあり、しかも、CTやMRIに異常が映らないため、障害と事故との因果関係が認められず、補償が受けられない点です。
先日、患者の会の方々とお会いしたとき、WHOの勧告や欧米での対策が進んでいることなどを国に説明しましたが、理解を得られず、苦しい胸のうちを吐露されておりました。
日本においては、軽度外傷性脳損傷という疾患概念が確立していないため、対策が進まず、苦しんでいる方がたくさんいます。この病気についての研究が推進されるよう、都からも国に対して強く働きかけていただくことを要望します。
最後に、観光振興について伺います。
東京都は、「十年後の東京」で、年間一千万人の外国人旅行者が訪れる観光都市を目指しています。統計によると、平成二十年には五百三十四万人と目標の半分程度であり、達成に向かって新たな観光スポットが期待されるところです。
そうした中、我が墨田区に建設中の東京スカイツリーが、平成二十四年の開業に向けて建設が進んでおります。世界一を目指し、武蔵国にかけて六百三十四メートルの電波塔となります。現在、三百四メートルを突破し、晴れた日には高尾山からも望めるようです。
約百二十年の歴史を持つパリのエッフェル塔は一八八九年に完成。フランス革命百周年の意義が込められ、パリ万国博覧会の目玉となりました。
地元では、都がこのほど、官民一体となって、水の都江戸のにぎわいを取り戻そうとする取り組みを含め、さまざまな振興策を検討しているところです。
その一つに、知事の陣頭指揮でゴールドラベルを取得するまでに成長した東京マラソンをスカイツリー周辺に招致しようと、市民運動団体、招致する会が各町会と協力して署名運動を行い、一万六千余名の署名を墨田区長とともに都に提出しました。東京マラソンに関する基本合意には、都内観光名所をめぐり、かつ、記録をねらえる魅力あるコースを設定するとあり、大いに期待しているところであります。
こうしたスカイツリーを東京の新たな観光スポットとして活用し、地元と連携した観光振興を図るべきと考えますが、見解を求めます。
外国人観光客にとっての日本の魅力、見どころの一つとして挙げられるのが、江戸文化に象徴される伝統工芸です。墨田区を初め周辺区には、伝統工芸品を見学、体験できる工房が数多く点在し、人気があります。
そこで、今まで都が実証実験を行ってきたユビキタス技術を活用し、移動案内や情報提供をこうした施設に利用すれば、言葉の障壁を超えて一層理解され、東京のすばらしさを一段と世界に発信することになります。こうした観光に早期に活用できるよう取り組むべきと考えます。見解を求めます。
スカイツリーの建設地である押上・業平橋地区は、都営浅草線など鉄道四線が交わる交通結節点であり、特に押上駅は、成田や羽田からもアクセス便利な立地です。このため、多くの観光客が訪れ、地元の活性化や振興に寄与するものと考えています。
そこで、都も他の鉄道会社と連携して、完成を記念した企画乗車券を発行するなどにより、乗客誘致を積極的に進め、あわせて、都営地下鉄の乗車率アップを図るべきと考えますが、見解を求めます。
一方、車のアクセスも観光にとっては重要です。特に、都道放射第三二号線の押上駅付近から明治通りまでの区間は、墨田区北部とタワー建設地を結ぶ重要な幹線道路です。また、都道四ツ目通りと直結し、ターミナル駅の錦糸町駅にもつながっている路線です。
ところが、朝夕の交通渋滞は慢性化しており、また、歩道は狭く、電柱が林立し、安全で快適な歩行空間を確保するためにも早期整備が必要です。放射第三二号線の事業化に向けた取り組みを最後に伺って、質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 加藤雅之議員の一般質問にお答えいたします。
成長産業の育成に向けた支援策についてでありますが、東京の産業力を一層強化していくためには、将来を見据えた成長産業の育成を図っていく必要があります。
東京には、高度な技術力、多様な産業の集積、洗練された巨大なマーケットなどの潜在能力がありまして、こうした中から、環境、健康、ロボットなど、今後成長が期待される産業が生まれてきております。これらの育成に向け、新事業の創出を促進していくことが必要であると思います。
このため、これまでも、製品開発への支援や産学公に金融機関を加えたネットワークの構築に取り組んでまいりました。
加えて、また、日本の独自の有力産業でもありますアニメの奨励のために、新規にフェアをビッグサイトで数年前から始めました。
また、従来行われていた、その年に新規に成功した企業の表彰ではなくて、新しい製品、さらには新しい産業につながり得るだろう新しい技術を開発した、その技術の開発当事者を専門家に選別していただきまして、年間十を表彰することにしました。
さらには、今後、区部と多摩の産業支援拠点における企業の製品開発力の向上に向け支援を強化するとともに、環境分野などにおける実用可能性の高い技術開発プロジェクトへの支援を新たに行うなど、成長産業の育成に積極的に取り組んでいきたいと思っております。
他の質問については、技監及び関係局長から答弁いたします。
〔東京都技監道家孝行君登壇〕
○東京都技監(道家孝行君) 放射第三二号線の事業化に向けた取り組みについてお答えをいたします。
本路線は、江東区塩浜から墨田区京島に至る延長六・三キロメートルの都市計画道路で、このうち四・九キロメートルが完成または概成、江東区内の〇・五キロメートルが事業中でございます。
未整備区間であります押上駅付近から明治通りまでの八百六十メーターにつきましては、現道の幅員が十一メートルと狭く、交通の円滑化や防災性の向上を図るため、区部における第三次事業化計画の優先整備路線に位置づけております。
また、安全で快適な歩行空間の確保や良好な都市景観を形成する上でも、早期整備が必要でございます。
このため、現在、道路の幅員構成などについて検討を進めており、引き続き、早期の事業化に向けて取り組んでまいります。
〔環境局長有留武司君登壇〕
○環境局長(有留武司君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、レアメタルリサイクルのこれまでの取り組みの成果についてでありますが、天然資源に依存せず、国内でレアメタルをリサイクルすることは、循環型社会に向けた重要な取り組みであります。
そのため、都は、昨年度、大都市の自治体としては全国で初めて携帯電話の回収実験を行いまして、広く都民のレアメタルリサイクルへの参加を呼びかけました。
また、昨年十一月から、江東区と八王子市とともに、携帯電話以外にも対象を広げまして、使用済み小型家電の回収モデル事業を実施しております。
このモデル事業では、区市の特色を生かしながら、公共施設や駅、大学などの、都民が多く集まる場所約百二十カ所に回収ボックスを設置しまして、三カ月で約九千五百台を回収するなど、成果を上げております。
次に、今後の取り組みについてでありますが、レアメタルリサイクルの実現に当たりましては、お話のように、効率的な収集システムや、回収の促進策及びリサイクル技術の確立など、幾つかの課題があります。
一方、レアメタルを含む小型家電が都内には多く集積し、国内最大のいわゆる都市鉱山を形成しております。
また、スーパーエコタウン内に先進的な電子機器リサイクルビジネスが展開されるなど、レアメタルリサイクルに有利な環境も整ってきております。
都は、江東区、八王子市でのモデル事業や国の実証事業の結果などを踏まえまして、事業者や国及び区市町村と連携し、東京における効果的なリサイクルシステムの実現に向け、今後とも積極的に取り組んでまいります。
〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕
○福祉保健局長(安藤立美君) 三点についてお答えを申し上げます。
まず、臓器移植についてでありますが、都では、移植を推進するため、コーディネーターを医療機関に配置し、都民等への普及啓発を行うほか、臓器提供者が発生した場合に、意思確認や家族に対する詳細な説明を行っております。
本年七月の改正臓器移植法施行後は、臓器提供者が増加することや、小児からも提供が可能となることなどに伴い、コーディネーターの業務が増大することが見込まれております。
今後、貴重な臓器提供の機会を着実に移植につなげることができるよう、コーディネーターの増員を図ってまいります。
次に、職域におけるがん検診についてでありますが、企業と連携して受診促進の取り組みを進めるため、都は来年度、東京都がん検診推進サポーター事業を創設することといたしました。
この事業では、がん検診に積極的な企業を公募し、都とともに受診率向上に取り組むサポーター企業として認定をいたします。都とサポーター企業が協働して、従業員に対する検診受診率向上策や普及啓発活動を行うことなどにより、都民の受診率五〇%の目標達成を目指してまいります。
最後に、がん登録センターについてでありますが、同センターは、都におけるがん登録の拠点として、各病院の院内がん登録データを一元的に収集し、がんの治療実績等について分析、評価を行うとともに、登録データの精度向上を図るための研修を実施いたします。
また、診療機能の向上につながるなどの、がん登録の有効性を紹介し、院内がん登録を実施する医療機関の拡大に努めてまいります。
こうした取り組みにより、院内がん登録の充実を図り、将来の地域がん登録の実現につなげてまいります。
〔産業労働局長前田信弘君登壇〕
○産業労働局長(前田信弘君) スカイツリーの開業を踏まえた観光振興に係るご質問にお答えいたします。
スカイツリーは、新たな観光資源として、東京全体の観光振興に寄与するものと認識しております。
都は既に、海外における観光プロモーションを初めとするさまざまな機会に、スカイツリーを新たな観光スポットとして紹介してまいりました。また、地元墨田区では、多言語標記による観光案内標識の増設に加え、伝統文化や隅田川などの資源を生かして回遊性を生み出そうとする取り組みが考えられております。
こうした地元区や周辺地域の取り組みと連携いたしまして、スカイツリーの開業に合わせた観光振興を推進してまいります。
〔都市整備局長河島均君登壇〕
○都市整備局長(河島均君) ユビキタス技術の観光への活用についてお答えいたします。
お話のように、ユビキタス技術は観光振興に大いに役立つものと考えております。
既に都では、都庁展望室や浜離宮恩賜庭園等の個別の施設におきまして、日本語、英語、中国語などで、音声や映像を用いた観光案内を実施しております。
一方、まち中での活用につきましては、利用者の目的が多岐にわたるため、地域の歴史や観光情報、店舗の紹介等、さまざまなニーズにこたえるサービスの提供が求められることとなります。
このため、都は、現在銀座等で実施中の実証実験を通しまして、機器の操作性の向上や提供情報の充実等を図るとともに、地元の商店街や民間企業等が主体的にシステムを運営するための仕組みにつきましても、国や関係者と連携して検討を進めております。
こうした取り組みにより、ユビキタス技術の観光への活用につきまして新たな可能性を広げてまいります。
〔交通局長金子正一郎君登壇〕
○交通局長(金子正一郎君) 東京スカイツリー完成時の対応についてお答えをいたします。
現在建設中の東京スカイツリーが完成しますと、東京の新名所として多くの方が訪れることになると思います。
東京スカイツリーの最寄り駅である押上駅は、成田と羽田の両空港に直接アクセスできるため、国内にとどまらず海外からの観光客も呼び寄せることが可能であり、都営地下鉄にとっても乗客増の好機となります。
この機会を逃すことなく、他の鉄道会社と連携し、ご指摘の企画乗車券の発売を含めPRを積極的に展開し、押上への集客を図るとともに、あわせて、都内の回遊ルートを検討し、都営地下鉄全体の乗客誘致にもつなげてまいります。
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