○副議長(鈴木貫太郎君) 五十三番鈴木勝博君。
〔五十三番鈴木勝博君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕
○五十三番(鈴木勝博君) 私からは、東京の最重要課題であります雇用政策、そして産業政策について質問をいたします。
正社員四七・五%、パートタイマー四八・二%、派遣社員六〇・九%、この数字は雇用不安を持っている人の比率です。つまり、現在日本では、正社員であろうと非正社員であろうと、二人に一人が雇用不安を抱えているということです。
私は、民間企業で二十年間、雇用にかかわる仕事をしてきましたが、これほど雇用に不安を感じる人が多い時代を初めて経験しています。終身雇用体制の崩壊、リーマンショックによる不況、そして規制緩和による非正規社員の増大、企業の成果主義の導入など、さまざまな要因があると思います。
この雇用不安を取り除かない限り、個人消費もふえず景気回復はおくれ、また、子どもを安心して産み育てることができず、少子化対策も有効に機能しないということになります。雇用保険や労働派遣法の改正など、国の制度改革を待つ必要がありますけれども、東京で働く者の雇用は東京が守り、都民一人一人の雇用不安を取り除く、都独自の緊急雇用対策が強く求められています。
都は、平成二十二年度の予算編成において、都民の雇用や生活への不安に対応する取り組みが最重要であるといっておきながら、国の緊急雇用対策予算を新たに増額しただけで、東京都独自の緊急雇用対策のために、予算を増額計上していません。職業能力の開発、向上に四十五億円の増額予算となっていますが、そのうちの二十五億円は多摩の職業能力開発センターの改築費用として計上されているもので、緊急雇用対策ではありません。
都は、若年者やミドルの就業支援や生活安定に向けた貸付事業や相談窓口の設置など、さまざまな施策を実施してきましたが、今回の予算編成を見る限り、都独自の緊急雇用対策としては余りにも力不足と思うのですが、都の所見をお伺いします。
また、予算化した、ふるさと雇用再生特別基金事業と緊急雇用創出事業の百七十三億円は、どのような雇用創出事業として利用され、どれくらいの雇用創出効果を見込まれているのか、都の見解をお伺いします。
東京しごとセンターは、都の雇用対策を担う大変重要な拠点となっています。特に再就職をしたい若者やミドルの相談窓口となっており、年間二万人を超える新規利用者が訪れ、再就職やキャリアアップなどのさまざまな雇用相談に対応しています。国のハローワークではできない、キャリアカウンセリング中心のきめ細かなサービスは、東京都独自の雇用対策として大変価値のある施策です。
しかし、三十七万人の失業者を抱える東京では、この程度の規模では明らかに不十分です。緊急雇用対策として都内主要ターミナル駅にしごとセンターを配置し、年間十万人規模の雇用を確保するキャリアカウンセリング体制を整える必要があると考えますが、東京しごとセンターに対する所見をお伺いします。
職業訓練は失業対策のかなめとなる政策です。有効求人倍率が〇・五一と大変厳しい雇用環境の中、企業の求める人材は多様化、専門化し、即戦力となる人材の獲得という企業側のニーズと、求職者の能力に大きなスキルギャップがあることが問題となっています。このギャップを埋めるには、教育訓練以外に方法はありません。職業能力開発センターの重要性はますます高くなっています。
現在の職業能力開発センターでは、一年制の普通科と六カ月の短期科が用意され、機械、電気、印刷、建築関係、介護、事務、被服など、多分野にわたり学ぶことができるようになっています。しかし、卒業後の就職を考えたとき、果たしてこの教育訓練内容と定員数で東京の雇用を守ることができるでしょうか。
建築業界は、公共事業も減り、当然採用を手控えている就職困難業界です。印刷業界も、インターネット社会になり大変厳しい環境に置かれています。こういった社会の変化に合わせて訓練内容も毎年検討していく必要があります。訓練生を就職まで導くことが真の職業訓練であるという意味で、職業能力開発センターの訓練内容の見直しは急務であると考えますが、都の見解を伺います。
また、中央職業能力開発センターの校舎は九階建ての立派なビルですが、訓練生の受け入れ人数は、一年制、短期科合わせて年間約四百八十名です。一般に私立の専門学校の場合、同じ条件の規模と立地であれば、一年制の普通科であれば八百名から千名の生徒を受け入れることが損益分岐点であると聞いています。
私立の専門学校と比較すれば、これだけのスペースをもっと有効活用することは十分可能です。事実、受講したくてもできない生徒があふれているわけですから、都はできるだけ有効にこのセンターを活用する責任があります。活用できないのであれば、民間に委託することも視野に入れて検討すべきであると思いますが、都の職業能力開発センターの事業に対する見解をお伺いします。
東京には大学、専門学校を初めさまざまな民間スクールがあります。その数は約二万を超えるともいわれています。これだけの教育機関が集積している大都市は、世界でも東京だけではないでしょうか。東京はあらゆることを学べる大都市でもあるのです。職業訓練に民間委託訓練という制度がありますが、さまざまなジャンルの教育機関と連携をして、多様化するあらゆる仕事に対応できる、都独自の職業訓練システムが求められていると思いますが、都の所見をお伺いします。
ことしの大学新卒者の就職率は、昨年十二月時点で内定率七三%と、過去最悪の就職氷河期となっています。十万人以上の大卒者が、卒業しても就職できないという実態です。日本の大学のあり方そのものについて再検討する必要がありますが、都内でも多くの大卒者が失業者となって社会にあふれ出すことになります。新卒無就業者をニートやフリーターにしないための対策は急務です。
そのためには四月以降も新卒者を受け入れる企業とのマッチングの場の提供を継続する必要があります。
大学の就職課と連携し、就職できなかった学生をしっかりと把握し、職業紹介企業と連動しながら合同企業説明会をぜひとも継続していただきたい。一九九〇年代、バブル崩壊で就職できなかった大卒者が、大量に社会的経済的弱者に追い込まれた過去の過ちを繰り返さないためにも、都は独自の雇用対策を行うべきであると考えますが、見解をお伺いします。
自動車業界の不況のあおりを受けた広島県では、今年度から、就職の決まらなかった四百名の未内定高卒者を対象に、受け入れ企業を探し、インターンシップを導入して、就職できるまで粘り強くフォローすることにしています。都においても、大卒者同様、高卒の未内定者に対して独自の雇用対策をとるべきであると思いますが、所見をお伺いします。
次に、産業政策についてお伺いします。
私は、二つの視点で産業政策を検討すべきであると考えます。
一つは、都内の雇用創出に大きく貢献する内需型の産業成長戦略です。具体的には、医療、介護、飲食関係などの産業があります。医療分野では、医師、看護師、薬剤師、後発医薬品のMR、一般大衆薬の販売登録者など、さまざまな職種の人材が不足しています。介護の分野でも、介護福祉士、介護ヘルパーなどの人材が不足しています。
今や日本の食文化は世界一です。東京の飲食産業は東京の雇用を支える最大のサービス産業にまで成長しました。これらの成長産業をしっかりと支援しながら、人材を確保するための雇用環境、教育システムを整備し、内需を拡大する総合的な施策が都に強く求められています。
産業政策で欠かせないもう一つの視点は、外需型の産業成長戦略です。
鳩山首相が掲げた東アジア共同体構想は、まず経済の分野で実現される必要があります。世界経済は中国を中心にアジアの新興国が牽引しています。日本が景気回復するキーワードは、アジアへの経済外交です。知事がオリンピック招致で実践した東京の外交戦略を、次は東京の景気回復のためにアジアに向けて展開されてはどうでしょうか。
知事が「十年後の東京」への実行プログラム二〇一〇でおっしゃるとおり、東京は、都市として機能性、清潔さ、衣食住、どれをとっても世界を代表する大都市です。都市を支える公共インフラの整備事業においても、水道事業、下水道事業、交通事業、都市開発事業など、東京の公共事業の技術は世界一でもあります。八兆ドル、日本円で七百二十兆円、今後十年間のアジアの公共事業費です。
このマーケットに知事みずから経済外交を展開することで、外需産業を成長させるエンジンとするのはいかがでしょうか。今年度から都が予定している水道事業のアジアでのセールスなどはその足がかりとなるでしょう。
二〇一〇年はアジア大都市ネットワーク21の総会が東京で予定されています。アジアの都市が抱えるさまざまな課題に東京がどう支援できるか、インフラビジネスを含めたプロモーションの場として、アジアへの経済外交をされてはいかがでしょうか、知事の見解をお伺いします。
外需を稼ぐもう一つの戦略は、ただいま高橋議員からありましたように、観光ビジネスです。
平成二十一年の日本への訪日外国人は六百七十九万人、日本の持つ魅力はまだまだ世界に認知されていません。ことし早々の経済特需は確かに中国からの旅行者でした。日本政府観光局の調べでは、中国人の物品購入費は平均七万八千円と、欧米人の約三倍といいます。
観光庁の調べでは、中国では年間四千五百万人の海外旅行者がいますが、日本への旅行者は百万人と、全体のわずか二%にとどまっています。東京のシティーセールスをアジア、特に中国を中心に展開されるべきであると思いますが、今後のアジアにおける観光戦略について、都の見解をお聞かせください。
次に、中小零細企業への産業支援策についてお伺いします。
政府の月例経済報告によると、景気は持ち直してきているが、自律性に乏しく、失業率が高水準にあるなど、依然として厳しい状況にあるとされています。しかし、中小企業景況調査によれば、業況判断DIはマイナス三六・四ポイントと、中小企業においてはとても景気の持ち直しを実感できる状況ではありません。
私の知り合いのほとんどの中小零細企業の経営者は、資金繰りはもちろんだけれども、とにかく仕事が全くないということです。今こそ中小企業を守るため、仕事そのものを生み出すための産業施策が必要です。具体的には、企業に対し国内外の販路の拡大を図ることが有効です。
東京のすぐれた製品、サービスを広く知らしめ、企業同士をマッチングさせる場の提供が必要です。
都は、毎年、産業交流展を開催し、多くの来場者を集め、効果を上げていると伺っています。都内各地で展示、商談会を開催するなど、マッチングの場を提供し、ビジネスチャンスを広げることが重要な施策であると思いますが、所見をお伺いします。
また、外需をうまく取り込んで、この厳しい経済状況下でも順調に業績を伸ばしている中小企業があります。こうした企業にあっては、成長著しいアジアの国々の需要を獲得しているケースが多く見られます。都は、こうした発展著しいアジア地域などを中心に、中小零細企業が海外にも販路を開拓できるように、強力に支援していくべきであると考えますが、見解をお伺いします。
イタリアンレストランを経営する私の知人は、六年前に上海に渡り、今や七店舗までレストランをふやし、五月開催予定の上海万博では二千七百席のレストランを任されたそうです。ベンチャースピリッツで海外へも事業を広げ、成功している中小零細企業は数多くあると思います。都は、成功事例を紹介し、ノウハウを共有する場を提供し、日本の閉塞感を打ち破る企業が東京から世界を目指して進出できるよう、総合的な海外施策を実現することを要望しまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 鈴木勝博議員の一般質問にお答えいたします。
経済を重視したアジアへの都市外交についてでありますが、アジアは米国、EUに並ぶ第三の極として、今後の世界の発展を牽引することは間違いないと思います。
そこで、都内の中小企業のアジア市場への挑戦を後押しするため、これまでも海外の展示会への出展を支援するなど、アジア地域に対して東京の産業や技術を発信してもまいりました。
加えて、先般、私の古い親しい友人であります、マレーシアのマハティール元首相に、彼が首相時代に創設したサイバージャヤのような、ややちょっとマレーシアには重荷の感じがしないでもない先端技術のセンターよりも、日本で非常に苦吟している中小企業、優秀な技術を持っている中小企業を思い切って誘致して、特恵区のようなものをつくり、そこで技術の開発と同時に製品の生産というものを考えたらどうだ、かつて隣のタイ国では、アユタヤ王朝に山田長政がつくった日本人町がありましたが、そういったものを考えたらどうだといいましたら、非常におもしろいことなので積極的に考えようということでありました。
一方で、アジアの今後の発展にとって、水不足、交通渋滞、大気汚染などが大きな足かせとなっております。
こうした諸課題は、首都東京が既に経験したものでありまして、上下水道などのインフラ整備、自動車公害対策などで協力ができると思います。課題を打破したアジアが安定して発展すれば、日本経済にも大きなメリットとなると思います。
今後も、本年東京で開催するアジア大都市ネットワーク21総会など、さまざまな機会をとらえて、東京の産業をPRするとともに、アジア諸都市の発展に役立つ都政の持つノウハウ、人材、情報の提供も行いたいと思っております。日本とアジア諸国がともに利益を得られる、いわばウィン・ウィンの関係を築いていきたいものだと思っています。
他の質問については、産業労働局長から答弁いたします。
〔産業労働局長前田信弘君登壇〕
○産業労働局長(前田信弘君) 雇用、産業政策に係る十一点のご質問にお答えいたします。
まず、今回の予算におきます緊急的な雇用対策についてであります。
これまで都は、国に先駆けて生活給付金つき職業訓練や雇用創出に取り組むなど、雇用情勢を踏まえた対策を適切に実施してまいりました。来年度は、さらに中高年の方々や女性を対象とした再就職支援事業を拡充するなど、都独自の取り組みを強化していくとともに、緊急雇用創出事業についても規模を大きく拡大して実施することとしております。
こうした取り組みを進めるため、平成二十二年度の雇用対策関連予算は、対前年度比七八・三%増の三百六十八億円を計上いたしまして、現下の厳しい雇用情勢に積極的に対応しております。力不足とは考えておりません。
次に、雇用創出事業についてでありますが、緊急雇用創出事業は離職者に対する臨時的なつなぎの雇用を確保するものであり、学校図書のデータベース化や放置自転車対策を初め、多岐にわたる事業を実施いたします。
また、ふるさと雇用再生特別基金事業は、正社員など安定的な雇用へつなげることを目的とするものであり、地産地消の促進や森林整備などの事業を実施いたします。平成二十二年度はこの二つの事業を合わせまして、本年度の約一万人を大幅に上回る約一万七千人の規模で雇用創出を図ります。
次に、しごとセンターのキャリアカウンセリングの体制等についてでありますが、求人、求職のミスマッチを解消し、求職者を適切な就職に結びつけていくためには、キャリアカウンセリングを行うとともに、これを踏まえた職業紹介を実施することが必要であります。
このため、都では、区部と多摩のしごとセンターにおきまして、カウンセリングから職業紹介までを一貫して実施することにより、厳しい求人動向の中でも、利用者の希望や適性に合った就職を支援しております。
次に、職業能力開発センターにおけます訓練内容の見直しについてであります。
都におきます公共職業訓練は、就業が困難な求職者のセーフティーネットとしての機能を果たすとともに、産業の基盤を支える人材の育成を図ることも目的として実施しております。個々の訓練科目につきましては、求人動向などを踏まえて不断の見直しを行っております。
次に、職業能力開発センターの施設の活用についてでありますが、職業能力開発センターでは従来から、民間が実施していない分野や、民間がやるとしても施設設備に多額の負担が生じる、こういった分野等の職業訓練を実施することといたしまして、その施設等は国の基準に基づきまして整備をしております。
一方で、一度に大量の離職者が発生した場合や、民間を活用した方が技能の早期習得、早期再就職に効果的である場合には、民間教育訓練機関を活用しております。
このように、民間との適切な役割分担のもとで職業能力開発センターの施設を有効活用して訓練を実施しておりまして、この点を度外視して民間との単純な比較をすることは適切ではないと思います。
次に、民間教育訓練機関と連携した職業訓練についてでありますが、ご指摘をいただくまでもなく、都は従来から、大学を初め専門学校や企業等の教育訓練資源を最大限に活用し、委託訓練を実施しております。平成二十二年度においては、民間教育訓練を活用した離職者向け委託訓練を約七千人の規模で実施することとしております。
次に、未内定大卒者の就職支援についてでありますが、新卒者の就職問題の本質的な解決のためには、国が明確な成長戦略のもとに実効性ある経済対策を進めて、雇用を創出することが必要と考えます。
しかしながら、現下の新卒者の厳しい就職環境を看過することはできません。このため、都では、十一月と二月に新規大卒者等を対象とする合同就職面接会を開催し、内定を得られず就職活動を継続している学生さんの支援を実施してまいりました。
さらに、三月中には区部と多摩のしごとセンターに新卒緊急応援窓口を設置することといたしまして、卒業後も就職活動を継続する新卒者に対しまして支援を実施してまいります。
次に、未内定高卒者の就職支援についてでありますが、現下の厳しい雇用情勢のもとで、卒業までに就職が決まらなかった高校生についても、しごとセンターの新卒緊急応援窓口におきまして、一人一人の状況に応じたきめ細かい支援を実施することとしておりまして、未内定高卒者が早期に就職できるよう適切に支援してまいります。
次に、アジアにおける観光戦略についてでありますが、近年、アジアからの外国人旅行者は増加しておりまして、都はこれまでも、中国、韓国、台湾などの東アジアで、旅行事業者、それから一般市民の方々に東京の最新情報を提供するため、旅行博の機会を活用したPRなどを行ってまいりました。
今後とも、旅行商品の造成につながる現地旅行事業者の招聘、また現地の旅行雑誌への東京観光情報の掲載など、中国を初めとしたアジア地域における旅行者誘致に積極的に取り組んでまいります。
次に、中小企業のビジネスチャンスの拡大についてであります。
中小企業が商談会等を通じて取引先を開拓していくことは重要、そのように認識しております。都は毎年、産業交流展を開催いたしまして、すぐれた技術、製品を広く紹介するとともに、中小企業の交流の場を提供することで取引の創出につなげてまいりました。
また、平成二十年度からは、より広域的な受発注取引を目的とした八都県市合同商談会を開催しております。さらに、今年度は、都内中小企業支援機関などと連携した商談会を開催し、中小企業の受注開拓を支援しております。
最後に、中小企業の海外販路開拓への支援についてでありますが、都はこれまでも、ベトナムを中心として中小企業の海外事業展開を支援してまいりました。来年度からは、成長著しいアジア市場を目指す中小企業を後押しするため、商材の目ききや各種助言を行う専門家を配置することといたしました。商社のネットワークなども活用しながら、中小企業のアジアにおける販路開拓をきめ細かく支援してまいります。
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