平成二十二年東京都議会会議録第三号

○議長(田中良君) 三十九番松葉多美子さん。
   〔三十九番松葉多美子君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○三十九番(松葉多美子君) 初めに、女性の健康支援策について質問いたします。
 公明党は昨年、女性特有のがん対策強化を求める都内百二十七万人の署名と十万人のアンケート調査結果とともに、私も当時の舛添厚生労働大臣に直接要望いたしました。
 その結果、平成二十一年度の国の第一次補正予算に、乳がん・子宮頸がん検診の無料クーポン券と検診手帳が対象年齢の方に個別郵送される事業が盛り込まれました。子宮がん征圧をめざす専門家会議議長の野田起一郎近畿大学前学長は、無料クーポン券はがん検診にとって起死回生の妙手であり、久しぶりのホームランだと高く評価しておられます。
 子宮頸がんでいえば、日本は、経済協力開発機構、いわゆるOECD三十カ国中、受診率が最低レベルであります。ある婦人科医院では、この無料クーポン券を契機に特に若い方の受診がふえ、子宮頸がんが見つかった事例もあると語っておられました。
 無料クーポン券は、五歳刻みでの配布となっているため、五年が経過しないとすべての人に行き渡らないことから、最低でも五年間の事業継続が不可欠であります。ところが、国の二十二年度予算案では、女性特有のがん検診推進事業の国庫負担を半分に減らし、残りの半分を地方負担分として押しつけ、地方交付税で措置することになり、何と予算額は三分の一になりました。なぜ民主党政権では女性の命を守る予算を削ったのでしょうか。今年度の事業もまだ終わっておりません。予算を削るなら、きちんとした無料クーポン券の事業の検証をしてから削るべきであります。
 そもそも公立小中学校の耐震化についても、これまで子どもの命を守るために国と地方が協力して取り組んできたにもかかわらず、民主党政権では大幅に予算を減額し、耐震化予算は大幅に不足しております。命を守ると標榜しながら、全くその逆の予算を組んでいる政権について、石原知事の所見を伺います。
 さて、きょう三月三日は桃の節句、ひな祭りです。この三月三日を中心に、一日から八日の国際婦人デーまでの八日間が女性の健康週間です。これは、女性の健康に関する知識の向上、健康課題に対する各種啓発を行うことを目的として二年前にスタートしました。私は、この女性の健康週間が初めてスタートする直前の定例会一般質問で、東京都が区市町村を支援するとともに、積極的に取り組むべきと提案をいたしました。
 ことしは三回目を迎えましたが、女性特有のがんについてさらなる普及啓発を進めるべきと考えます。所見を伺います。
 次に、子宮頸がん対策について具体的に伺います。
 子宮頸がんは、予防ワクチン接種と定期的な検診で、ほぼ一〇〇%予防することができます。ところが、予防できるがんであるにもかかわらず、子宮頸がんは二十代、三十代の若い女性の間で増加しております。年間約一万六千人が発症し、二千五百人を超す方々の大切な命が失われております。
 子宮頸がん予防ワクチンの早期承認を、公明党はいち早く国に求めてまいりました。その結果、昨年十月、臨床試験を経て二価HPVワクチンの使用が承認され、十歳以上の女性に予防接種が可能となりました。
 このワクチンは、子宮頸がんの約七割の原因となっている発がん性HPV16型と18型に有効であり、十二歳の女子にワクチン接種した場合の子宮頸がんの発生率は約七三%減ると推計されています。
 現在、世界では約三十カ国で公費助成による接種が行われており、イギリス、イタリア、ドイツ、オーストラリアなどは全額公費負担、特にイギリスでは、子宮頸がん予防のためのパブリックヘルス教育も行っています。世界の動向を見ても、接種を普及させていくには公費負担と正しい知識の普及啓発が重要となっております。
 都は、きのうの都議会公明党の代表質問に対し、包括補助制度の活用を含めた支援をすることを表明しましたが、これを高く評価いたします。
 今後、子宮頸がん予防ワクチン接種について、一日も早く全区市町村で公費助成できるよう、さらに支援すべきであります。所見を伺います。
 加えて、子宮頸がんは、一次予防であるワクチン接種、二次予防である検診のセットで、ほぼ一〇〇%予防可能となることを普及啓発することが、何より一番のかなめであります。専門家による講演会、セミナーなどを都や区市町村が主体となって積極的に展開すべきであります。所見を伺います。
 次に、乳がん検診について具体的に伺います。
 乳がんによって、毎年一万人以上もの方々がとうとい命を落とされております。そして、四十七都道府県の中で一番乳がんによる死亡率が高いのが、残念ながら東京であります。平成二十年三月に策定された東京都がん対策推進計画では、平成二十四年度までにがん検診の受診率を五〇%にするとしております。
 そこで、実際に受診率が五〇%に達した場合、検診体制の整備が間に合うのか、危惧する声もあります。マンモグラフィー機器の整備、読影医師、撮影技師等の実施体制の強化を着実に進めるべきであります。所見を伺います。
 また、都のがん検診の中核施設である多摩がん検診センターでも、乳がん検診の体制強化を進めるべきであります。これまでの受診者数の動向と今後の強化策について伺います。
 さて、欧米諸国と比べ日本では乳がんにかかりやすい年齢が若いという傾向が指摘されております。我が国の乳がんの罹患については、三十代より急増し、四十五歳がピークとなります。乳がん検診は現在、四十歳以上の方のマンモグラフィー検査が基本とされていますが、実は四十歳未満の女性の検診も重要であるとの指摘もあります。
 乳腺が発達している四十歳代以下の女性には、マンモグラフィー検査だけでは限界があり、超音波による検査も有効であるといわれております。現在、厚生労働省がJ─START、乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験を行い、超音波検査の有効性の検証をしております。今後、超音波検査が導入される際には、人材を育成し、適切に配置していくことが重要であります。所見を伺います。
 次に、文化芸術における人材育成について質問いたします。
 私は、平成十七年第四回定例会の一般質問で、新たに開校する都立総合芸術高校にバレエなどの舞踊専門の勉強ができる舞踊科、あるいは舞台芸術科の設置を提案いたしました。諸外国には、国立、公立のバレエ学校で舞踊の総合教育を行っているのに対し、日本には本格的に学ぶ国立、公立の学校がないことから、優秀な人材が海外に流出している実態があるとの訴えがありました。国にできないのであれば、都で世界に通用する専門性の高い文化芸術の教育機関を創設すべきであるとの趣旨から、提案をしたものでした。
 そして、いよいよ都立総合芸術高校が四月に開校となります。現在の芸術高校の音楽科、美術科と同様に、新たに設置される舞台表現科についても高度な専門教育が行われると期待をしております。そのためには、専門性の高い指導者や、学科、専攻によって大きく異なる教育内容に対応する施設整備が重要であります。
 そこで、総合芸術高校の指導体制や施設の整備状況、あわせて今後の目標について伺います。
 世界に誇る文化芸術都市東京の将来を担う人材を育成する都立総合芸術高校に大いに期待をするものです。特に舞台表現科は他に例を見ない学科であり、ことし四月入学の一期生の三年後の進路は大変注目するところであります。現在も、新国立劇場や東京芸術劇場と連携し、教育課程の準備を進めていると聞いておりますが、卒業後においてもさらなる修練の場や活躍の場が必要と考えます。
 都においても、平成二十年度から東京文化発信プロジェクトにおいて、次代の芸術文化を担う人材の育成に取り組み始めております。今後、舞台芸術を担う人材の育成を充実すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、水害対策について伺います。
 善福寺川では、平成十七年九月四日に発生した水害により、杉並区内の二千三百三十七世帯が床上床下浸水するという甚大な被害がありました。その後も、都内で局所的集中豪雨が発生するたびに川の水位が大きく上昇し、周辺住民の方々の安全・安心を脅かしております。現在、河川激甚災害対策特別緊急事業として緊急整備が進んでおりますが、その現状と見通し、整備後の効果について伺います。
 また、激特事業が完了しても、被害の大きかった上流域の整備はまさにこれからであります。上流域における水害の危険性の早期解消に向けた整備についての現在の取り組み状況について伺います。
 最後に、都立和田堀公園整備について伺います。
 私は、これまでも本会議や予算特別委員会で、和田堀公園の済美山運動場について早期に公園化すべきとたびたび主張してきました。今回、この土地をまとめて取得し、整備する都の決断を高く評価するものです。
 非常に貴重なこの大規模な土地を、防災やスポーツの場などに寄与するような形で早期に整備を進めるべきであります。
 所見を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 松葉多美子議員の一般質問にお答えいたします。
 新政権についてでありますが、政治と行政は、幾ら美辞麗句を並べてみても、実行が伴わないと、国民を裏切ることにしかならないと思います。世間でいう、いうとやるとは大違いでは、これは困るわけでありまして、新政権は、命を守るなり地域主権なりを標榜しておりますが、ならばこそ、医療、福祉の予算に限らず、公立小中学校の耐震化といった課題では、現場を預かる区市町村の不安を招かないような万全な手だてを講じるべきだと思います。
 新政権は、マニフェストで大きなふろしきを広げたものの、財政の現実に直面して、まあ、大分苦労しているようでありますが、政策の優先度、費用対効果を見きわめて、国民と国家の利益を損なうことのないように政策を選択すべきだと思います。
 今回の新政権が、従来、国政を実質牛耳ってきた官僚に勝手なことをさせないというのは、私も大変結構だと思いますが、しかし、それは、役人のいうことを一切聞かないということではないと思います。役人は、彼らが自負しているコンティニュイティー、コンシステンシー、つまり継続性、一貫性ということでの積み上げてきた経験と知識は持っていますから、こういったものをなぜ活用しないのかと思いますけれども、いろいろ東京都も問題を構えている役所と、旧知の者たちが次官にもなっている人が幾つかいますが、話をしてみても、とにかく建言をしようと思っても、大臣に会えないと。せいぜい課長ぐらいしか、政務官に会うだけで、大事な問題についての意思の疎通ができないということをいっておりました。
 例えば、これから先、国のどこかに大きな騒擾事件が起こったり、あるいは外国から巧妙な侵犯が行われたときに、こういったものを預かる警察なり自衛隊、国軍に、そういったものを持っている情報を全然しんしゃくせずに、政治家が物を決められるんでしょうかね。
 私は、そういう点で現政権の今の姿勢を見ていますと、結果としては、過去に官僚が蓄積してきた経験というものが生かされず、非常にむだな遠回りが多いんじゃないかという気がして、これはいつか、とにかく知っている閣僚にも建言しようと思っていますが、まあ、国民も同じような危惧を抱いているんじゃないかという気がいたします。
 他の質問については、教育長、東京都技監及び関係局長が答弁いたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

○教育長(大原正行君) 総合芸術高校の指導体制と施設の整備状況及び今後の目標についてお答え申し上げます。
 総合芸術高校は、音楽、美術、演劇、舞踊など芸術に関する幅広い教育を行う学校であり、生徒に専攻分野における高度な技術、知識を習得させるために、専門科目の授業は各学科各専攻、さらには生徒が個々に選択する領域別に展開されるため、指導内容は専門性が非常に高く、指導者も高度な技術を要求されます。
 そのため、新たに設置する舞台表現科の指導者につきましても、劇団の演出家や俳優及びバレエ団の講師やダンサーなど、各分野において現役として活躍している専門家を講師として依頼しているところでございます。
 また、施設整備につきましても、多様な専門科目の授業展開が可能な演習室や音楽ホールなどを備えた新校舎を、平成二十三年度の完成に向けまして、新宿区内の旧小石川工業高校跡地において現在、建築中でございます。
 このように充実した教育条件のもと、総合芸術高校は、芸術分野に関する唯一の都立の専門高校として、高度な技術、知識の習得を目指すとともに、豊かな教養と広い視野を持ち東京の文化振興を支える人材の育成に取り組んでまいります。
   〔東京都技監道家孝行君登壇〕

○東京都技監(道家孝行君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、善福寺川における河川激甚災害対策特別緊急事業についてでございます。
 この事業は、杉並区内の環七通りから和田堀第六調節池までの約二キロメートルの区間で、既存調節池の貯留能力の倍増、済美橋など二カ所の橋梁のかけかえ及び護岸三百九十メートルを整備し、大規模な水害を発生させました平成十七年九月の豪雨と同規模の豪雨に備えるものでございます。
 今年度中にすべての工事を完了させ、善福寺川における一時間五〇ミリの降雨に対応する治水安全度は、平成二十一年度末で六五%と、五年間で一二ポイント向上いたします。
 また、地元住民の意見を反映し、公園の敷地を活用した緩やかな傾斜の親水護岸や、既存の石積みを再利用した護岸の整備など、良好な景観の創出にも努めております。
 次に、激特事業区間より上流域の整備についてでありますが、河川の整備に当たりましては、下流から順次拡幅を行うのが原則でございますが、完成までに長期間を要することから、調節池の設置について検討を進めてまいりました。
 その結果、杉並区の都立善福寺川緑地内に、現在の公園機能を確保しつつ、治水効果が発揮できる地下調節池を整備することといたしました。
 貯留量は約三万五千立方メートルを予定しておりまして、平成二十二年度は、基本設計や水理実験を行い、調節池本体の形状や構造などを検討いたします。
 この調節池の完成によりまして、洪水の取水が可能となり、下流の未整備区間の治水安全度が向上するとともに、調節池上流側の護岸の拡幅に着手できることから、整備のスピードアップが図られます。
 今後とも財源確保に努め、水害の軽減を目指し、善福寺川の整備に積極的に取り組んでまいります。
 最後に、和田堀公園の整備についてでございますが、和田堀公園は、善福寺川に沿って豊かな緑を形成し、散策やスポーツの場として親しまれている公園であるとともに、災害時の大規模救出救助活動拠点としての役割を担っております。
 このため、企業所有の運動場については、災害時の活動拠点としての整備効果が早期に発現されるよう、平成二十一年度中に五ヘクタールの用地を一括取得する予定でございます。
 今後、老朽化した既存の施設を撤去し、大型車両が進入可能な入り口や園路を整備するとともに、ヘリコプターが離着陸できるフィールドを有する四百メートルトラックを整備いたします。
 あわせて、桜などの樹林を生かすとともに、遊具広場など新たな整備をいたします。平成二十二年度から工事に着手し、二十三年度末の完成を目指し、整備に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 五点についてお答えを申し上げます。
 まず、女性の健康週間についてであります。
 都は、この週間に合わせて、女性のがん検診受診促進の取り組みを行うこととしております。今年度は、区市町村や都内の大学などに普及啓発ポスターを配布するとともに、交通広告や街頭キャンペーンを実施しております。また、若い女性を主な読者層とする無料情報誌に、子宮頸がんに関する特集記事を掲載し、子宮頸がんの罹患率が高い二十歳代、三十歳代を対象として、重点的に普及啓発を行います。
 引き続き、女性の健康週間を中心に、女性のがんについての普及啓発を実施してまいります。
 次に、子宮頸がん予防ワクチン接種への支援についてでありますが、今後、区市町村を対象とした説明会を速やかに開催し、ワクチン接種の有効性や重要性等について情報提供を行うなど、区市町村の取り組みの推進に努めてまいります。
 次に、都民等への普及啓発についてでありますが、都はこれまで、子宮がん検診の重要性やワクチンの効果について、ホームページやリーフレット等を活用しながら情報提供を行ってまいりました。
 今後、区市町村と連携し、都民や医療従事者を対象とした講演会を開催して、ワクチンの接種と検診をあわせて実施することにより、子宮頸がんの死亡率の減少が期待されることなどにつきまして、積極的に普及啓発を実施してまいります。
 次に、乳がん検診の実施体制についてでありますが、区市町村や職域の乳がん検診を受託する医療機関に対しまして、今年度はマンモグラフィー機器二十五台の整備費補助を実施し、来年度につきましても二十台の補助を予定しております。また、マンモグラフィー検診に従事する医師と放射線技師を対象とする研修を引き続き行います。
 こうした取り組みにより、精度が高い検診が実施されるよう、体制を確保してまいります。
 最後に、超音波による乳がん検診についてでありますが、お話にありましたように、現在、国の研究班が検診の有効性について大規模な調査を実施しております。今後、調査結果に基づき、国において乳がん検診の実施方法等が検討される予定であると聞いております。
 都は、国から示される方針等を踏まえて、適切に対応してまいります。
   〔病院経営本部長中井敬三君登壇〕

○病院経営本部長(中井敬三君) 多摩がん検診センターにおける乳がん検診の動向と今後の取り組みについてお答えいたします。
 多摩がん検診センターにおける乳がん一次検診の受診者数は、平成十八年度の三千八百五十一人に対し、二十年度は五千三十八人と、この三年間で千百八十七人、率にして約三一%増加しております。
 こうした受診者の増加傾向は、平成二十一年度においても引き続き継続していることから、来年度中に新たに乳がん検診車を一台配備するとともに、マンモグラフィー機器も一台更新するなど、設備面の充実を図ってまいります。
 今後も、多摩がん検診センターの中核的役割を踏まえ、がん検診の需要に積極的にこたえてまいります。
   〔生活文化スポーツ局長秋山俊行君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(秋山俊行君) 舞台芸術における人材育成についてお答えを申し上げます。
 本物の舞台芸術に触れたり、本格的な舞台で成果を発表する機会を設けることは、若手の人材育成策として有効でありますことから、都は、東京文化発信プロジェクトにおきまして、さまざまな取り組みを進めているところでございます。
 具体的に申し上げますと、東京文化会館では、青少年のための舞台芸術体験プログラムといたしまして、青少年にパリ・オペラ座バレエなど、トップレベルの公演のリハーサルを公開しております。
 また、東京芸術劇場を中心といたしまして開催する国際演劇フェスティバルでは、演劇を学ぶ学生による創作作品の公演の場や、学生と若手演劇人との交流の場を設けているところでございます。
 今後、お話の総合芸術高校の開校も踏まえまして、都立文化施設を活用しながら、大学等との連携、交流をさらに深め、舞台芸術における人材の育成策の充実に努めてまいります。