平成二十二年東京都議会会議録第二号

   午後一時一分開議

○議長(田中良君) これより本日の会議を開きます。

○議長(田中良君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(田中良君) これより質問に入ります。
 百二十三番大沢昇君。
   〔百二十三番大沢昇君登壇〕

○百二十三番(大沢昇君) 私は、都議会民主党を代表して、都政の主要課題について知事並びに関係局長に伺います。
 昨年の都議会議員選挙を経て、第十八期都議会としては初の、そして、三期目を最後の任期とする石原知事にとっては最後の本格予算となるであろう平成二十二年度予算案を審議する都議会を迎えました。
 もとより議院内閣制とは異なり、知事も私たち議員も、それぞれが都民の審判によって選ばれ、都民福祉の向上、民主主義の発展、活力ある東京の実現に努める責務を担っています。石原知事には知事選挙での公約があるのと同様、私たちもまた、昨年の選挙で掲げたマニフェストがあります。このマニフェストに盛られた施策の実現が、都民に対する約束であります。私たちは、この都民との約束を守るため、今後も全力でマニフェスト実現に取り組んでまいります。
 石原知事との間では、互いに取り組める課題もありますが、中には、新銀行東京の問題や築地市場再整備、八ッ場ダムなど見解の異なる課題もあります。これらについても私たちは、異なる意見を問答無用と切り捨てるのではなく、真撃に議論を積み重ね、都民にとってよりよい方向に都政を前進させていきたいと考えます。
 私たちのそうした決意にもかかわらず、提出予定案件もまとまり、施政方針表明を終えた二十六日の記者会見において石原知事は、副知事四人制について意向を示したと報じられています。強いチームをつくるとも述べられたようですが、任期途中の副知事をこれほどかえられた知事も珍しく、かつ、残る任期一年足らずで強いチームをつくることは可能なのでしょうか。
 しかも、本来、知事を内側から支えるべき特別秘書が、各種事業や庁内組織運営に何ら責任を負う立場にないにもかかわらず、副知事然として振る舞っており、そのことが、だれが副知事になっても強いチームにならない最大原因との指摘が、数多く私たちの耳に入ってくるような状況です。知事はどう認識されているのでしょうか。
 さらに、石原知事みずからが、私たちの総会に出席し同意を求めた副知事が一体何をやっているのかも見えません。このような中で、副知事四人制、強いチームについて、まず知事の真意を伺います。
 その上で、提案された各議案については、最終的に、だめなものはだめと決断させていただきますが、それまではともに汗をかくことを誓い、質問に入ります。
 次に、平成二十一年度補正予算案と平成二十二年度予算案、そして「十年後の東京」実行プログラムについて伺います。
 平成二十二年度予算案における都税収入の見込みは、福田総理と石原知事の会談を経て決められた法人事業税の一部国税化の影響もあり、二年で一・一兆円の大幅な減収となりました。月例経済報告では、景気は持ち直しているが、自律性に乏しく、失業率が高水準にあるなど、依然として厳しい状況にあるとして、その先行きは持ち直しの傾向が続くことが期待される一方、下押しリスクの存在にも留意すべきとしています。
 都内経済において、全国地方銀行協会の「地方経済の状況」では、乗用車販売、輸出、生産活動などが持ち直し、公共工事が堅調なものの、個人所得の減少や企業収益の伸び悩みから、個人消費、住宅建設、設備投資が引き続き低調であると評価しています。
 こうした中、都は今後の景気動向と税収見通しをどう見ているのか、所見を伺います。
 都は、二十一年度、企業収益の悪化に伴う五千二百十三億円の税収減を受け、平成十年度、十一年度に匹敵する減収補てん債を発行するとともに、東京都住宅供給公社からの貸付金の繰り上げ償還を受け、財政調整基金を取り崩すなどして、二千十九億円の歳入を確保いたしました。
 歳出では、計画どおり進捗しない事業や予定とした規模に及ばない事業などを精査、減額し、都債の借りかえの抑制をやめるなどして、三千百九十四億円を削減いたしました。こうした歳出削減が都民サービスに支障を来すことは可能な限り避けなければなりません。
 都は、最終補正予算案の編成において留意した点について、所見を伺います。
 また、国の二次補正予算を計上することによって、この補正予算にどのような効果を期待しているのか、所見を伺います。
 アメリカ発金融危機による都民生活や都内中小企業への影響に対して、都は、平成二十年度から二十一年度の期間で、予算規模が約一千七百十三億円の緊急対策を行っております。その中身は、緊急融資制度の拡大や信用保証料補助などの中小企業支援、ネクストジョブ事業や五十万人分の公的雇用を生み出す雇用確保対策、再就職を目指す離職者への緊急無利子融資、小中学校の耐震化など都民の不安にこたえる生活者支援、公共工事の年度内発注量をふやすなど、中小企業活用による都市インフラの整備です。
 都は、その財政機能を発揮し、都民生活や都内経済の安定を図ってきたところですが、これらの緊急対策によって、都民の不安がどのように解消され、企業が下支えされてきたのでしょうか。都の緊急対策の効果について、所見を伺います。
 一般会計は、二十一年度当初予算と比較して五・一%減の六兆二千六百四十億円となりました。規模としては、平成二十年度から二年連続の減となり、石原都政の初年度である平成十一年度当初予算と同レベルの予算案となりました。
 十七の特別会計は、税収減による地方消費税清算会計などの減、償還が減ったことによる公債費会計の減など、六・八%減の三兆九千九百億円となりました。
 十一の公営企業会計は、豊洲新市場の用地取得などによる中央卸売市場会計の増、大江戸線建設の企業債償還増による高速電車事業会計の増などにより、一一・〇%増の二兆一千六百八十三億円となりました。
 そして、全会計の合計は三・二%減の十二兆四千二百二十三億円で、東京の現在と将来に対して都がなすべき役割を積極的に果たしていくこととしています。
 都議会民主党も、今後も引き続き、都民の命と生活を守る都政の前進に努めていく考えですが、石原知事が本予算案において特に重視した点は何か、所見を伺います。
 税収が今後も伸び悩むと予測される中、都は健全な財政運営を行う必要があります。二十二年度の予算編成においては、歳出のさらなる精査や事務事業評価、財政調整基金の慎重な繰り入れなどが行われました。今後は、包括外部監査報告の指摘、意見にもあったような、例えば監理団体の業務や公共事業などにも聖域のない評価を行うことで、事業を効率化し、事業範囲を再構築していくことが大切です。また、基金や都債も有効に活用していく必要があります。
 一方、二十年度から続く緊急対策のように、都民に還元する投資や、経済の構造改革につながる環境整備といった経済政策を実施するなど、予算を最大限確保していくことも大切です。
 これらの都民に対する施策の前進と健全な財政運営に引き続き取り組むことで都民福祉の向上につなげていくことが重要と考えますが、所見を伺います。
 また、中長期的に都政の重要課題に取り組むため、人材や組織の活用にも配慮する必要があり、これらの基本的な考え方についても所見を伺います。
 都が単年度予算の欠陥を補う「十年後の東京」計画を策定してから三年が経過いたしました。オリンピック招致色も一掃され、住みやすい、魅力ある都市東京に向けての取り組みが期待されます。
 昨年十二月、この「十年後の東京」計画に対して都政モニターアンケートが行われ、施策の関心では、一位が震災対策、二位が高齢者への対応、医療の充実の結果となりました。いつか来る震災と東京の現状、少子高齢社会が急速に進む東京、そして医療問題と、都民の関心が高い事項をよく理解できます。
 しかし、建物の耐震化や高齢者施設の整備、待機児童対策など、なかなか進捗しない施策が散見されます。都は実行プログラム二〇一〇を公表しましたが、今後も、都民や区市町村などと共通認識を持つような連携や、違った新たなアプローチ方法などを取り入れ、計画の実現を図っていくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、築地市場について伺います。
 二月十八日、現在地再整備を求める市場関係者を初め、おすし屋さんや料理学校の理事、あるいは築地を愛してやまない人たちが、二十一世紀築地プロジェクトを立ち上げ、現在地再整備の具体案を発表いたしました。
 青果だけを一時仮移転させる案だけでなく、水産、青果の一部をあわせて仮移転させる案や、あるいは、仮移転ではなく、転配送などの物流機能を築地と切り離して移転させる案も示されました。そして、それぞれの案について、具体的なローリング手法や事業費、整備スケジュールも示されるなど、少なくとも検討のたたき台となるには十分な案ではないかと考えます。
 また、都議会民主党のプロジェクトチームは、著名な建築家の方からも別の具体案についてヒアリングしております。
 こうした案をベースに検討を開始するならば、世界から多くのアイデアや具体案が寄せられるものと確信をしています。
 石原知事は、土壌汚染対策の技術会議でも、民間からの英知を募り、最新の技術、工法によって困難な問題を乗り越えようとしました。同様に、私たちも、現在地再整備という困難な課題が解決できないのかどうか、もう一度、多くの英知を集めるなどして、再検討をすべきであると考えます。
 私は、築地市場の現在地再整備の再検討について、石原知事の所見を伺います。
 私たちは、シンポジウムや公開討論会など、都民の声を幅広く聞く場を設けるべきだと主張してまいりました。昨年十二月の私たちの代表質問に対して、東京都は、わかりやすい都民説明会の開催など、都民の一層の理解が得られるよう努力していくと答弁していますが、私たちの主張は、説明するにとどまらず、都民の意見を聞くべきだということです。
 例えば、生活文化スポーツ局の前身である生活文化局では、平成十五年九月十八日に、新銀行はどうあるべきかなどとした新銀行創設のeモニターアンケートを実施しています。新銀行でできて築地市場でできないわけはありません。東京都の実施する世論調査やモニターアンケートにおいて、築地市場の移転に関して都民の意見を聞くべきだと考えますが、所見を伺います。
 また、市場関係団体六団体のうち五・五団体が移転推進派だという話も聞きますが、水産仲卸は現在地再整備という機関決定を変更したわけではありませんし、加えて、青果の仲卸は、業者の数でいえば移転反対の方が多いのではないかともいわれています。築地市場の関係業者は、水産では卸で七社、仲卸で七百六十社、売買参加者で三百二十七社おり、青果では、卸、仲卸、売買参加者で九百社、関連事業者で百六十七社、買い出し人を含めるとさらに多くの業者が関係業者といえるでしょう。
 私は、こうした市場関係業者に対して意向調査を実施し、市場関係業者の本音を把握すべきであると考えますが、所見を伺います。
 次に、平成二十二年度の豊洲関連予算案について伺います。
 予算案は、豊洲関連予算として、用地購入費の一千二百六十億円を初め、土壌汚染対策費や関連工事費などで計一千二百八十一億円が計上されています。しかしながら、現在地再整備ができるのかできないのかの再検討さえされない中では、到底認めることができません。また、用地取得に関しては、汚染原因者である東京ガスの負担さえ明らかではありません。
 私は、東京ガスからの用地購入費を提案するのであれば、まずは、汚染原因者である東京ガスの負担がどうなったのかを明確にすべきであると考えます。昨年二月十九日に当時の副知事が東京ガスに協議を申し入れて一年がたちますが、東京ガスとの協議はどのようになっているのか、いつごろ明確になるのか、所見を伺います。
 次に、環状二号線について伺います。
 環状二号線の中央区晴海四丁目から銀座八丁目までの区間については、そもそも地下方式で整備される計画でしたが、築地市場の移転を前提に地上化に変更されたという経緯は、前回の代表質問でも触れました。
 ところで、今定例会では、この晴海四丁目から銀座八丁目までの区間である晴海五丁目付近の朝潮運河橋梁の工事が提案されています。仮にこの工事を認めると、現在地再整備の再検討の選択肢を狭めるのではないかと懸念するものであります。築地地区の道路構造を地下方式に再変更した場合でも朝潮運河橋梁の工事には影響がないのか、所見を伺います。
 豊洲関連の質問の最後に、土壌のコアサンプルについて伺います。
 この間、経済・港湾委員会では、参考人招致による活発な質疑を通じて、専門家の方々からさまざまな意見を伺ってきました。特に、専門家会議の座長であった平田健正先生からは、これまでの東京都の説明や見解と食い違う発言もありました。詳しくは予算特別委員会に譲りますが、例えば、土壌のコアサンプルの保全と開示について、平田座長は、互いに話し合いの場を持って同じ情報を共有するのが一番の基本で、そういう意味では、十分な説明は必要だし、説得ではなく、相手に理解をしていただく取り組みが必要だと述べています。かたくなに開示を拒んでいる東京都とは大きく認識が違うように思います。
 私は、コアサンプルの廃棄について、裁判で争うのをやめ、その保全と開示に取り組んでいくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、新銀行東京について伺います。
 去る一月二十九日、新銀行東京は、元代表執行役である仁司泰正氏及び元執行役である丹治幹雄氏に対してようやく損害賠償請求訴訟を提起いたしました。まさにようやくといった感があります。
 石原知事は定例の記者会見で、訴訟は結構なこと、厳粛に見守りたいと述べました。しかし、新銀行東京の失敗については、見守るだけではなく、旧経営陣の責任はもとより、設立時における過大なマスタープランを初め、新銀行設立以降も拡大路線を強要し続けた東京都の責任など、徹底的に検証していかなければなりません。
 仁司氏、丹治氏による反論は、いずれ裁判を通じて明らかになってくるものと考えますが、石原知事はこれまで、旧経営陣の責任だということを強弁されてきたわけですから、例えばみずからが証言に臨んだり、東京都に証拠書類を提出させるなどして、真相究明に積極的に協力していくべきであると考えますが、石原知事の所見を伺います。
 また、昨年二月十七日、新銀行東京は、そのほかの取締役七名に対する報酬の自主返納を発表しました。取締役についても善管注意義務違反に基づく責任があるとした上で、その責任については一定の限度があるとして、訴訟によらず自主的に解決する道をまず設けることがふさわしいとの理田によるものです。二月十六日の新銀行特別委員会において、東京都は、全員の返納が終わっていないという報告を受けていると答えていますが、そもそも取締役の人選についても東京都は承知していたはずであり、早期に返納させるべきではないでしょうか。
 新銀行東京の旧経営陣のうち、自主返納を拒んでいる状況について、石原知事はどのように認識しているのか伺います。
 二月十六日の特別委員会の質疑において、東京都は、主要株主の責任として、監視を含めて株主責任はあると答弁しました。その上で、経営に関与する度合いは、経営者、取締役会、株主とは異なり、まずは旧経営陣の責任が追及されるべきとの認識を示しました。まずは旧経営陣ということで、いずれ東京都の責任も明らかにするともとれなくもありませんが、少なくとも東京都には、今回の訴訟の対象となっていない、開業から旧経営陣が善管注意義務違反に問われる間のデフォルトの責任や新銀行東京の過大なインフラの設備投資など、挙げればきりがない多額の損失を招いた責任についても、外部の専門家などを活用し徹底的に検証すべきと考えますが、都の所見を伺います。
 次に、産業振興について伺います。
 昨年末、鳩山政権は、新成長戦略の基本方針を閣議決定し、政治的リーダーシップにより、環境・エネルギー、医療・介護などの健康という日本の強みを生かせる分野で、需要からの経済成長を目指すとしています。
 東京都においても、新規に都市課題解決のための技術戦略プログラムとして、医療、環境や福祉などでの課題を解決するための製品の開発から実用化、販路開拓まで一貫した支援を行うこととしています。
 今後、ロードマップの策定が期待されますが、東京都として、環境・エネルギーあるいは医療・介護などの健康分野で成長産業の支援に何を期待し、どのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
 また、東京には、健康やアニメ産業などに見られるように、一定の地域における産業集積が見られ、これらをネットワーク化するとともに、それに見合った企業や研究機関などの誘致を支援するなどして、地域の特性に合った産業の振興に取り組んでいくべきと考えます。
 例えば、報道機関などを臨海部に誘致し、汐留やお台場などと連携したメディア産業の集積という大胆な構想も、いずれは検討されるべき課題だとは思いますが、当面は、健康や医療・福祉、アニメなど、地域の特性に合った産業の集積に取り組む区市町村に対して積極的に支援するとともに、地域の特性に合った産業の創業を促すためのインキュベーション施設の整備についても積極的に支援するなど、地域における産業集積に積極的に取り組んでいくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、多摩シリコンバレーの形成について伺います。
 二月二十二日、産業サポートスクエア・TAMAの開所式が行われました。平成二十三年度に江東区青海で開設が予定されている区部産業支援拠点とともに、あらゆる企業ニーズに対応できる、頼られる産業支援拠点となることを期待するものです。
 この産業サポートスクエア・TAMAでは、計測・分析器、半導体・電子デバイス、ロボットなどの多摩地域の産業特性に応じた技術支援を行うと聞いていますが、こうした取り組みは、多摩シリコンバレーを形成していく上でも極めて重要であると考えます。
 そこで、多摩シリコンバレーの形成に向けて、この二月に開所した産業サポートスクエア・TAMAはどのような役割を担っていくのか、所見を伺います。
 次に、中小企業融資について伺います。
 明るい兆しが見えつつあるなどとはいえ、海外の下振れ懸念など、今後の社会経済状況が不透明な中で、東京都としても、中小企業の資金需要に適切に対応していかなければなりません。
 私たちは、使われぬ基金を積んだまま放置するのであれば、一時的にでも民間の金融機関に預託金として預け、中小企業の資金需要に役立てるべきと主張するとともに、百年に一度といわれる経済状況の中で、さらなる中小企業の負担軽減を求めてまいりました。
 東京都は、二十二年度予算案における制度融資の規模や中小企業の負担軽減策について十分であると考えているのか、所見を伺います。
 また、昨年九月からスタートした東京都と地域の金融機関とが連携して実施する金融支援については、私たちの要望に沿う形で取扱金融機関も拡大していると、前回の代表質問でも申し上げました。予算案では、この融資規模を百億円上乗せし、六百億円にまで拡大しており、資金繰りに苦しんでいる中小企業を積極的に支援していこうという姿勢がうかがえます。
 そこで、東京都と地域の金融機関とが連携して実施する金融支援に対する評価と今後の取り組みについて、所見を伺います。
 次に、雇用対策について伺います。
 一昨年秋の世界的な金融危機により落ち込んだ景気は、いまだ回復への足取りが重く、雇用情勢も依然として厳しい状況が続いております。都は、今回拡充する基金を有効に活用して、雇用創出事業をさらに積極的に実施し、離職者の方々の当面の雇用の場をしっかりと確保していくべきと考えます。
 また、離職者に対する支援は、雇用の確保のみならず、生活や住居など生活面での支援、さらには職業訓練や就業支援など多様な支援策が用意され、国においても各種の施策が講じられておりますが、その反面、どこでどんな支援が受けられるのかわかりにくい状況も生まれているのも事実であります。
 国は昨年、都や地元自治体の協力により、離職者の相談に一元的に応じるワンストップサービスデーを実施しましたが、都としても、必要な方に必要な支援が届くよう離職者向け広報を一層強化して、的確な情報をいつでも提供できるような方策を検討すべきであります。
 そこで、緊急雇用創出事業の今後の取り組みと離職者向け広報の強化について、あわせてお伺いいたします。
 このような離職者に対する支援とともに、働いている方々への支援も大変重要なことであります。厳しい雇用状況が続く中、給料の未払いが三カ月間続いている、経営悪化を理由にボーナスが支給されない、長年勤めた会社から突然解雇通告を受けたなど、生活基盤を脅かす問題が労働者を直撃しております。これから年度末に向けて、解雇や雇いどめ、退職強要、賃金未払いなどが増加するのではないかと危惧するところであります。
 こうした労働者が置かれた深刻な状況に対して、行政の支援が不可欠であり、都は、相談などの支援を充実強化していくべきであります。
 また、雇用をめぐるトラブルの多くは、労働法令が守られていないことに起因をしております。労働法令の改正が繰り返される中、その内容を正しく理解することが困難な中小企業もあります。このため、都はさまざまな手法を使って企業に対して積極的に法令の周知を図っていくことが重要であると考えます。
 そこで、解雇や賃金不払いなど、こうした厳しい状況に直面している労働者への支援の強化や企業の法令遵守の徹底について都はどのように取り組むのか、所見を伺います。
 次に、環境政策について伺います。
 温室効果ガス排出量削減のため、東京都を低炭素型都市として転換させる必要があることは多くの人が認めるところであり、知事もたびたびこの点について触れられています。そのためにも、環境政策とエネルギー政策の融合が極めて重要と考えます。
 東京は、エネルギー利用の密度が高い、大規模な開発が多い、都市排熱を含めた未利用エネルギーがまだまだ豊富にあるなど、大都市ならではの特性があります。これらの特性を最大限活用するためには、複数のビル、街区単位での効果的なエネルギー融通による効果的な省エネ、省CO2、再生可能エネルギーや未利用エネルギーのさらなる積極活用など、エネルギーの地域での有効利用やネットワーク的利用が極めて重要であると考えますが、所見を伺います。
 このような、東京にふさわしい再生可能エネルギーや未利用エネルギーの活用を強力に推進していくためには、民間事業者による利用促進を図ることはもとより、都内最大の事業者である東京都みずからが、全庁一丸となって再生エネルギーなどの積極的な活用を推し進めるべきであると考えます。既に都は、副知事を筆頭としたカーボンマイナス都市づくり推進本部という全庁横断型の組織のもと、都有施設に再生可能エネルギーなどの導入を図る施策を進めていますが、これまでの取り組み状況と今後の展開について伺います。
 一方、都は昨年四月、住宅用太陽エネルギー利用機器の補助制度を設け、その利用拡大を進めています。こうした身近な再生可能エネルギーを普及していくことは、都が進める気候変動対策として大変有効だと思いますが、住宅だけでなく、産業や業務部門での太陽エネルギー利用機器の普及を拡大していく必要があると考えます。
 そこで、間もなく一年を迎える住宅用太陽エネルギー利用機器補助制度のもたらした効果とともに、さらなる太陽エネルギー利用機器の普及拡大に向けての所見を伺います。
 気候変動の緩和、低炭素社会への転換に向けては、再生可能エネルギーの活用が切り札として考えられます。現在、東京都は、太陽エネルギーや風力など再生可能エネルギーの利用拡大の取り組みを行っておりますが、さらなる再生可能エネルギーの利用拡大を進めるべきと考えます。
 そこで、今後の再生可能エネルギーの利用拡大に向けて、改めて知事の認識を伺います。
 次に、木材の利用について伺います。
 この間、国において、例えば赤松農水大臣が公共建築物に国産木材の使用を義務づける公共建築物木材利用促進法案を通常国会に提出する意向を示し、コンクリートから木へというスローガンを使っているようです。東京都においても、現在、多摩産材の公共利用について、道路のさくや公園のベンチあるいは都営住宅などでの木材利用が進められていますが、温暖化対策などさまざまな社会的要請がある中で、さらに踏み込んだ取り組みが必要であると考えます。
 そのためにも私は、官公庁などの内装材はもとより、リラックス効果などの効用が求められる、例えば学校などの教育施設を初め病院や保育所などの施設では、木材の利用検討を義務づけるなど、木材の公共利用をさらに一歩進めるべきだと考えます。多摩産材の公共利用の拡大について都の所見を伺います。
 また、私の地元江東区には、木場という、まさに江戸時代から東京の木材需要を担ってきたまちがあり、地域の関係者からは、木材利用を大胆に進める上での象徴として、建設が予定されている木場、新木場、臨海部の消防署あるいは消防施設で木材を利用できないかという提案もなされていると聞いています。
 そこで、火に弱いイメージのある木材を、あえて防火を担っている消防庁舎、とりわけ木場、新木場、臨海地域で利用していくことで、木材の公共利用拡大の先駆けとなっていただきたいと考えるところです。木場、新木場、臨海部地域の消防庁舎への木材の利用について所見を伺います。
 温暖化対策が急務となっている中で、カーボンニュートラルなエネルギーである木質バイオマスの活用も強く求められています。東京都では、下水の汚泥を焼却する際に木質バイオマスの活用を図り、都市ガス使用量の削減に取り組んでいますが、大量に発生している間伐材など林地残材については、ほとんど利用されてない状況にあると聞いています。これら利用を進めるに当たっては、大口需要者への供給体制の確立が求められるところですが、公共施設や一般家庭など小口需要者の開拓を進め、すそ野を広げていくことも重要です。
 先日、山形県の村山市で、市庁舎や小中学校などで使う電気の大半を、間伐材などを燃やして発電することで賄うとしたことが報じられていました。東京都においても、多摩産材の木質バイオマスを活用した温暖化対策を進めることで、地域の産業振興に大きく役立つと思われますが、区市町村と連携した木質バイオマスの利用促進に向けて都の所見を伺います。
 次に、交通政策について伺います。
 現在、羽田空港では、再拡張事業がことし十月の供用開始を目指して進められています。供用開始後には、国際定期便については、昼間だけでなく、騒音問題によって成田空港が閉鎖されている二十三時から翌六時の深夜、早朝時間帯においても就航され、成田空港とあわせて首都圏空港一体として国際空港機能の二十四時間化、いわゆるハブ空港化の実現が目指されています。
 しかし、私たちは、空港機能だけが二十四時間化されたのでは都市の交通機能全体としては不十分であり、鉄道やバス、そして機動的なタクシーなどの公共交通機関も、その特性に合わせて連動して二十四時間化に対応すべきではないかと考えます。そもそも、どれだけの需要があるのかどうかを初めとして、さまざまな課題があることは承知をしておりますが、これらの課題を含め、羽田空港のハブ化に伴う深夜、早朝便に対応した空港アクセスについて検討すべきと考えます。新滑走路供用開始後の当面の対応について所見を伺います。
 東京港は、首都圏四千万人の生活と産業を支える国際拠点港であり、コンテナ取扱数は十一年連続して日本一であります。背後圏のインフラも充実しており、既にポストパナマックス船に対応した港湾計画も策定されています。
 知事は、さきの施政方針において、東京港、川崎港、横浜港の三港が一体となって港湾施設の利用コストを低減し、利便性も向上させるとともに、国内各地と有機的に結びつく道路など国内ネットワークを形成することで貨物の集荷を強化し、港湾機能をさらに高めていくことに言及されました。
 国では、港湾整備の選択と集中を図るべく、平成十六年度に、京浜港、阪神港、伊勢湾をスーパー中枢港湾として指定しましたが、昨年十月に、これをさらに絞り込み、国際戦略港湾として育成することを表明しております。私たちは、首都圏のみならず、日本全体の経済を支えるという観点からも、この国際戦略港湾に京浜港が選定されるべきと考えますが、京浜港の国際戦略港湾としての選定に向けた今後の取り組みについて所見を伺います。
 京浜港、羽田空港での国際物流機能の強化とあわせて、首都圏三環状道路など広域的な道路網整備を進め、陸海空による広域物流ネットワークを構築することも重要であると私たちは考えます。
 特に、国際海上物流に使われる貨物用コンテナの大型化が国際的に進む中で、陸揚げ後の国内輸送に対応するための道路網整備のおくれが問題になっています。現在、日本で主力となっている海上コンテナはISO規格の四十フィート背高が主流ですが、日本の最大の貿易相手国であります米国や中国の間では四十五フィートコンテナが急速にふえております。
 しかし、日本の道路では、この四十五フィートコンテナはおろか、現在の四十フィート背高でさえコンテナ物流ネットワークとして十分に機能していないのが現状であります。今後の国際コンテナ物流に対応した道路網整備について所見を伺います。
 東京の地下鉄は都営地下鉄と東京メトロの二つの事業者によって運営されています。
 このため、例えば情報案内がわかりにくくサービス内容が異なるなど、利用者の利便性を損なっている面があります。都営地下鉄では、ICカード乗車券PASMOの導入により乗り継ぎの円滑性が飛躍的に向上しましたが、さらなる地下鉄利用者の利便性向上のため、例えば乗り継ぎ割引制度の拡充や情報案内の統一など、都営地下鉄と東京メトロの地下鉄サービスの一体化をより推進すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、防災対策について伺います。
 さきの施政方針の中で知事は、国の平成二十二年度予算案に関して、苦しい財政をやりくりして取り組んできた区市町村もはしごを外されたとしかいいようがないなどと、公立学校施設の耐震化のための予算を民主党政権が大幅に削ったかのような発言をなされました。
 しかし、これは事実と全く異なります。公立学校施設整備費の総額は、平成二十一年度当初予算の一千五十一億円に対して、二十二年度の概算要求額は三十五億円増額要求しています。これに対する査定の結果、二十二年度予算案は一千三十二億円で、前年度比二%の減額となっておりますが、公立学校施設整備費の概算要求額が査定後減額されたということについては、自民党政権時代とも同じです。また、このうち耐震化関連予算は、平成二十一年度当初予算の七百八十三億円に対して、二十二年度予算案は九百十億円、前年度比一六%増の、耐震化棟数も、二十一年度の約千九百棟から二十二年度は約二千二百棟と、耐震化に重点化されていることは明らかであり、昨年度と比較して耐震化により重点を置いた予算配分になっています。
 知事は、平成二十一年度当初予算の公立学校整備費一千五十一億円に補正予算の二千七百七十八億円を加えた三千八百二十九億円と比較しているのかもしれませんが、これはそもそもその比較の仕方がおかしいとしかいいようがありません。
 また、補正予算に関しては、今月二日の衆議院本会議において鳩山総理大臣は、平成二十二年度予算の早期成立後、その執行状況を踏まえ、二兆円の経済対策枠などの活用を明言し、今後の補正予算の編成の可能性についても触れております。一体どのような根拠に基づき、どのような意図を持ってさきの発言をなされたのか、石原知事の所見を伺います。
 都内における木造住宅密集地域は、現在、約一万六千ヘクタールに及びますが、都の防災都市づくり推進計画では、七千ヘクタールを震災時の甚大な被害が想定される整備地域として指定しています。この選定基準は、地域危険度のうち、建物倒壊危険度が五及び火災危険度が五に相当し、老朽木造建物棟数率が四五%以上の町丁目を含み、平均不燃領域率が六〇%未満である区域とその連担する区域となっております。
 都は、整備地域内における木造住宅の耐震化について助成を行っていますが、私たちはこれまで、対象の拡大に向けた第一段階として、建物倒壊危険度五の地域すべて、もしくは建物倒壊危険度と火災危険度がともに五である地域すべて、制度の適用対象地域として取り扱うよう求めてまいりました。
 地域危険度は、平成十四年公表の第五回地震に関する地域危険度測定調査報告書のデータから、平成二十年公表の第六回地域危険度測定調査結果のデータに更新され、これに合わせて防災都市づくり推進計画もこのほど改定されています。この見直しの結果、建物倒壊危険度と火災危険度がいずれも五である二十五地域のうち、整備地域に指定されなかった地域は一地域だけとなりました。
 一方で、建物倒壊危険度五に該当する地域は八十四地域ありますが、このうち二十三地域が整備地域になっていません。これらの地域も木造住宅の耐震診断、耐震改修助成制度の適用対象地域として取り扱うよう、対象地域を拡大すべきと考えますが、都の所見をお伺いいたします。
 知事は施政方針の中で、民間建築物の耐震化は現在の法律では努力義務にすぎず、その実施が建物所有者にゆだねられていることから、対策の進展に限界があるため、震災時の応急活動に及ぼす影響が大きい建物について、耐震診断の義務化など都独自の規制誘導策の検討を進めるべきと述べられました。検討の対象は緊急輸送道路沿いの耐震化助成に絞られるようですが、耐震化助成制度の利用が進まないのは、基本的には、耐震化にかかる費用の自己負担をどこまで軽減できるかが大きな要因となっているであろうことはおおむね共通をした認識ではないでしょうか。
 この認識は、緊急輸送道路沿いの建物に限らず、木造住宅の場合でも同様であり、そうであるならば、民間建築物全体を検討の対象とすべきと考えます。建築物の耐震化促進に向けた規制誘導策の検討を進めるに当たっての都の基本的な考え方について所見を伺います。
 こうした地震に強いまちづくりを進めると同時に、震災時にどのように行動するのか、特に災害弱者への対応はなかなか実効性のある取り組みが進みにくい課題です。災害時、自力での対応が困難であると考えられる高齢者や障害者など、いわゆる災害弱者を円滑に避難誘導し安全を確保することは、避難をどのように行うのかを想定した計画を立てて備えていくことが欠かせません。
 ところが、災害弱者の避難計画策定は、これまでのところ、都内区市町村の三分の一しか済んでいません。区市町村を強力に支援し、早急にすべての区市町村で策定されるようにすべきです。あわせて、計画に実効性を持たせるため、区市町村における主体的取り組みをも支援していくべきと考えますが、都の所見を伺います。
 聴覚障害者にとって、音声による情報を把握することは困難であり、外見上は障害を持っているのかどうかわかりにくいため、周囲の人たちも支援の手を差し出しにくい状況があります。そのため、円滑な避難誘導及び安全を確保できるよう、情報を的確に提供するなど一層の対策が必要です。一つの方策として、公共機関の建物に、光による警報装置や事態の状況を知らせる文字表示装置など、障害者に配慮した避難誘導設備を整備することは、聴覚障害者に災害などの緊急事態発生を知らせ、迅速に避難誘導するため、極めて有効な方策であり、これらを普及させていく上で、都が導入を支援していくことは大変効果的であると考えます。
 そこで、区市町村が公的機関の建物に聴覚障害者に配慮した警報装置や避難誘導設備を設置した場合、都として支援を行うべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、医療施策について伺います。
 まずは東京ルールの検証についてです。
 東京ルールにより、都民にとっては、いわゆるたらい回しや搬送調整に長時間を要する案件をなくし、でき得る限り迅速に診察を受けられることを目指しています。しかし、医療現場にとっては、医師不足などの状況は従来と急には変わらない中での新たな枠組みであります。
 そこで、東京ルール稼働からの実施状況を踏まえ、効果と課題を検証することが必要と考えます。この仕組みをより効果的に運用するため、地域救急医療センターに対するさらなる支援や、医療機関同士の情報共有システムなどベストな環境を提供できるよう、さまざまな方策を真摯に検討していくべきと考えます。所見を伺います。
 長い時間かかって進行してしまった医療崩壊、医師不足はすぐには解決することはできません。そうした中で、国においては、現在、医療の立て直しに向けて診療報酬改定が行われており、チーム医療推進に向けた検討も進められております。
 中でも、医師が担っている業務のうち、医師でなくともできる業務をクラークや看護師などのほかの医療従事者と分担し、負担軽減を図り、医師としての仕事に専念できる体制を構築していくことは非常に重要なテーマです。
 例えば、チーム医療の一員として自立的に動いたり、救急医療におけるトリアージを担うことのできるいわゆるNPや、救急や感染症など各分野ごとに専門性を高めた看護師は、今後ますます医療現場で必要性が高まる人材であります。医師確保、医師の離職防止対策を進めるとともに、次なる施策として、臨床能力の高い医療スタッフを育成、配置することで、病院の医療の質を高め、生産性を高めていくことを都としても支援することが必要と考えます。チーム医療の推進に向け、積極的に検討をすべきであると考えますが、所見を伺います。
 NICUの整備について伺います。
 従来、新生児人口一万人に対して二十一床でしたが、国基準が一万人対二十五から三十床と見直されました。東京都はこれまで、NICUを拡充していくという方針は示していたものの、具体的な目標値を明らかにしておりませんでしたが、国の基準見直しに伴い、ようやく目標を明らかにし、整備を進めることとしました。
 民主党はかねてより、低体重出生児の動向に合わせて目標値を定め、少なくとも一・五倍にすべきと求めてきたところであり、都としても整備目標を従来の一・五倍としたことを歓迎いたします。この目標を達成していくためには、現在の小児科医師不足、病院勤務医師の激務という状況下で、手厚い人員を必要とするNICUへの人員確保が課題となります。都としてどのように取り組むのか、伺います。
 NICUへの長期入院児の中には、GCUやPICUを初めとした後方病床の不足や、小児訪問看護などの在宅医療環境の不備などが理由となっている子どもも多くいるといわれております。また、スムーズな移行を促進するためには、医師、看護師、保護者のコミュニケーションギャップを解消したり、福祉制度や地域医療との連携などのマネジメントを行い、トータルケアの体制を構築していかなければなりません。NICUの長期入院児の退院促進と地域移行支援は、貴重な医療資源の有効活用、健康上課題のある新生児の適切な療育、育成環境確保といった観点から一層推進していかなければなりませんが、都の取り組みを伺います。
 次に、がん対策について伺います。
 がん対策は、まず何といっても早期発見により早期治療につなげることが大切であります。受診率をアップし、目標の五〇%に向けて取り組むとともに、その検診において早期発見につなげるためには、検診医のブラッシュアップが大切であり、全力を挙げることが必要です。
 中でも、民主党は、ワクチンで発症を防ぐことのできる唯一のがんである子宮頸がんワクチンの接種推奨と公費助成を求めてきました。
 子宮頸がんは若年女性に多く発症するがんであり、最近増加傾向にあります。二十二年度予算の復活要望でも、唯一予防できるがんである子宮頸がんワクチンへの公費助成と、その効果や必要性に関する普及啓発を行うための予算を求めました。全国で年間約一万六千人以上が罹患し、約二千五百人が死亡していると推定されていますが、この原因は、女性の七から八割が感染するといわれるヒトパピローマウイルスのうち、子宮頸がん全体の六から七割の原因である種類のウイルスに有効とされています。改めてHPVウイルスワクチンへの助成と接種を推奨するための取り組みを求めるものですが、都の所見を伺います。
 専門的ながん診療機能の充実を図るため、都内には、地域がん診療拠点病院、都道府県認定がん拠点病院が設置されております。都民に安心かつ適正ながん医療を提供することを目的としています。これらの病院は、都内のがん医療水準向上を牽引する役割を果たすものであり、現在の拠点病院十四カ所、認定病院十カ所から大幅な拡充が必要と考えますが、所見を伺います。
 がん専門医の認定が行われ、一定以上の資質を持つ医師が登録、公表されました。ここ数年で、医療の均てん化、すなわち都内全域における質の高いがん医療の提供体制に向け、さまざまな進展が見られています。
 その中で、拠点病院と地域医療機関との連携によるシームレスながん医療、療養等についても体制整備を進めていかなければなりません。医療機関同士の連携ツールとしてクリティカルパスがありますが、がん医療の場合、これに加えて、患者側の説明と納得を求める気持ち、闘病生活への不安にこたえていくためのツールとしても活用できる形で東京都版がん手帳を作成し、活用していくことが求められています。
 都はさきごろ、試行版として東京都地域連携クリティカルパスを作成し、今後、全都展開する予定と聞きますが、どのようなものとし、どのように活用していくのか、所見を伺います。
 平成十八年のがん対策基本法策定時より、どこに住んでいても標準的なあるいは高度ながん医療を受けられるようにする、そして、地域ごとのがんの特性に応じた対策を推進していくために、院内がん登録の標準化と精度向上、さらには地域がん登録を早急に実現することを求めてきました。都は、平成二十五年度以降の地域がん登録を目指しており、地域によって異なるがんの発生動向やその対策を進めることが期待されています。一部自治体では、がん条例を制定し、自治体を挙げての対策に動き出しているようです。都では、院内がん登録のデータ収集を行うとともに、がん登録の普及啓発を行うと聞いています。地域がん登録の実現、院内がん登録の精度向上について都の取り組みを伺います。
 次に、子育て支援について伺います。
 まずは待機児童解消に向けた対策についてです。
 都は、保育サービスの整備計画について前倒しをし、実施してきました。私たちは、さらに保育サービス拡充緊急三カ年事業の期間延長、計画を上回る保育所整備を求めてきました。雇用情勢は改善せず、サラリーマン家庭の所得も減少している中、主婦のパート労働や求職活動に伴い、保育ニーズは引き続き増加し続けており、待機児童数もふえております。そこで、来年度以降の保育サービスの拡充について伺います。
 次に、認証保育所の定員拡大について伺います。
 認証保育所は、直接契約、十三時間以上開所、スポット利用など、都民が抱える多様な保育ニーズに対応する新たな公的保育として定着し、拡大し続けています。しかし、補助単価などの面で課題があり、そのポテンシャルを十分に生かし切れてない部分があったことも事実です。
 すなわち、定員三十一名を超えると急激に補助単価が下がるため、施設面で余裕がありながら、定員を三十名としている施設がありました。待機児童がふえ続ける一方で、このような状況を放置することは得策ではなく、既にある施設を活用し切るための見直しが求められています。都の所見を伺います。
 子どもを持つ親にとっては、やっと保育所に入れたと思っても、病気のときに利用できないという強い不満、悩みがあります。東京都福祉保健基礎調査では、この回答は、平成十四年には二四・六%でしたが、平成十九年度は三四・九%と一〇ポイント上昇しております。
 病児、病後児保育の国補助単価が平成二十一年度に見直され、利用率の高いところは手厚く補助されることになりました。その結果、利用率の低い施設では大変な赤字となり、区市町村によっては独自でカバーしたところもあると聞きます。利用率の高い施設に報いるような仕組みでインセンティブを付与することは必要ですが、もとよりニーズが非常に不安定で、病児、病後児施設数が不足している中では、施設の経営安定化も重要な視点であり、病児、病後児保育の拡充には欠かせません。
 また、利用する保護者からすると、病児を抱えて利用できる施設を探すことも大変な負担であります。サービスコーディネートを積極的に行うことで、こうした保護者の負担も軽減でき、施設利用率のアップにもつながります。病児、病後児保育施設を拡大させていくため、都としても強力に支援すべきですが、都の所見を伺います。
 次に、教育政策について伺います。
 まず初めに、公立、私立高校間の学びの機会均等に関して伺います。
 私たちは、私学助成の拡充で公立と私立高校の授業料格差を縮小し、だれもが教育内容で学校を選び学べるよう、学びの機会均等を促進すべきと考えています。今回の高校実質無償化により、私立高校生に対しても、公立高校の授業料年額に相当する約十二万円の支給と、さらに低所得世帯の生徒に対して約十八万から二十四万円が支給予定であり、より手厚い措置となっています。
 しかしながら、都内私立高校の平均授業料が約四十二万円であることを考えれば、さらなる保護者負担軽減が必要です。この点に関して、都は国の就学支援金制度に合わせて、特別奨学金補助を上乗せするような形で補助を考え、来年度予算に前年度比約十億円増しの約四十三億円を要求しており、このことは評価いたしたいと思いますが、私学に進学を希望する生徒が経済的理由で希望校を断念することのないよう、さらに公私間格差を縮小するべきと考えます。都の所見を伺います。
 次に、高校受験生の塾代サポート支援について伺います。
 高校実質無償化により、高校の教育費用における格差は縮小されます。一方、高校に入学する以前の入試段階で、高校受験生を持つ親の年収と相関した学力格差の問題があります。
 公立中学の三年生を持つ家庭が、二〇〇八年度、学習塾や習い事などに支出した一人当たりの学校外活動費が過去最高の約四十万円に上り、平均を上げているのは富裕層といわれています。所得によって塾に行ける子と行けない子の学力に差ができて、高校受験に影響を及ぼすことは避けなければなりません。
 この点に関し、東京都の低所得者への塾代支援を行うチャレンジ支援貸付事業は、対象の低所得者家庭にとって大変助かるものであり、来年度は補助単価の引き上げも考えているとのことで、評価したい事業です。
 しかしながら、この支援の対象は生活保護水準の一・一倍の低所得家庭に限られています。対象外の家庭でも塾代まで負担することが困難な家庭は多く、今後、補助対象枠を広げていくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、キャリア教育に関して伺います。
 現在の若者の就業状況において、総務省の労働力調査によると、十五歳から三十四歳の非労働力人口で家事も通学もしていない若年無業者の全国人数は、平成二十一年平均で六十三万人と、平成十四年からほぼ横ばいの状態であり、深刻な問題となっています。
 また、若者のパート、アルバイト及び希望者、いわゆるフリーターの人数は、平成二十一年平均で百七十八万人であり、前年比八万人ふえ、六年ぶりの増加で、フリーター問題も一向に改善されている状況にありません。
 このような状況を踏まえますと、経済不況の影響による正規雇用の縮小で、若者の勤労意欲の減退やプロフェッショナルな意識が薄れ、国力の低下を招くおそれがあると考えられます。
 そこで、義務教育の段階から、子どもたちに生きる目標や進路意識を明確にし、社会的、職業的自立に導くキャリア教育を充実していくことが重要と考えますが、東京都においてはキャリア教育をどのように進めてきたのか、伺います。
 また、我々は、キャリア教育の一つとして、ものづくり人材の育成を推進すべきであると考えています。工業高校を初めとする専門高校は、これまで、ものづくり企業に優秀な人材を多数輩出し、我が国の経済成長を支えてきました。
 しかしながら、中小企業において団塊の世代が大量退職し、人材不足が進みますと、我が国の産業に多大なる影響を与えかねません。そのため、すぐれた技術を持つ地元企業が継続的に若者に技術を伝承することが重要ですが、リーマンショックを契機とした世界同時不況の大変厳しい経済環境の中で、そのような人材育成に余裕を持てない企業が多数存在するとも聞いています。
 そこで、即戦力となるものづくり人材の育成のため、都立工業高校において、若者に企業実習の取り組みを今後充実させるべきであると考えますが、所見を伺います。
 次に、青少年育成について伺います。
 現在、携帯電話は多くの子どもたちに普及していますが、保護者の多くがそうした子どもたちの利用状況を把握していないことも明らかになっています。
 そして、子どもたちと保護者に携帯電話やPHSを利用した感想を聞いたところ、友人とのコミュニケーションがふえたなど、よい環境も感じていますが、保護者は暴力的、性的、反社会的な内容を含むサイトにアクセスすることを心配し、子どもたちのインターネット利用に不安を感じてもいます。
 都は今回、状況が深刻化している現状認識から、フィルタリングサービス解除手続の厳格化や推奨制度の創設を行うとしています。
 一方、昨年四月に施行した青少年インターネット環境整備法は、子どもたちがインターネットを適切に活用する能力を育成していく考え方に立っています。私たちも、子どもたちに段階的に有害情報への対応方法を教え、情報を見る目を育てる情報モラル教育、そして情報を使いこなす力を持つ情報リテラシー教育を重視すべきと考えます。子どもたちの情報モラルと情報リテラシーの向上への取り組みについて、都の所見を伺います。
 また、携帯電話を持っている小学六年生の約半数は、保護者から持つように勧められたものです。このうち、携帯電話を利用するに当たってのルールを決めていない家庭が、小学六年生で約二割、中学二年生で約三割となっています。
 都では、平成十九年三月から、ネットなどのトラブルから子どもたちを守るため、親子で家庭のルールをつくるファミリeルール講座の実施をしています。しかし、携帯電話のルールがない、いまだ理解が不十分な家庭がふえているのが現状で、しかも、こうした保護者は講座に出席していません。
 そこで、講座に参加しない、あるいは参加できない保護者に対して、都はどのような取り組みを行い、事態を改善していくのでしょうか、都の所見を伺います。
 そして、青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための青少年インターネット環境整備法の基本理念の一つは、国及び地方公共団体は、民間における自主的かつ主体的な取り組みを尊重していくというものです。そして、有害情報の例示については、第二条の四で示されている三つの情報となっています。
 都は民間における取り組みを尊重する立場ですが、今回の青少年健全育成条例改正案において新たに定義される違法、有害情報に関して、懸念を表明する人たちがおります。「自己若しくは他人の尊厳を傷つけ、違法若しくは有害な行為を行い」の後につけ加えられる「犯罪若しくは被害を誘発することを容易にする情報」とは、どのような情報を想定しているのでしょうか。また、条例の運用によって広く解釈されることはないのでしょうか、都の所見を伺います。
 今回、都内における児童ポルノの根絶の機運醸成を議論するに当たって、私たちは児童買春、児童ポルノ法改正の動向を注目しております。都は、現在も国に青少年を守る施策の実現を提案していますが、要望するに当たっては、国会で議論となった、単純所持の問題で免罪を生むのではないかといった懸念を払拭するための提案を行っていくべきと考えますが、都の所見を伺います。
 一昨年の秋、自分の娘の裸体の写真や動画を携帯電話のインターネットサイトに送信し、販売した母親らが、児童買春、児童ポルノ禁止法違反で宮城県警、警視庁に検挙されました。
 平成二十一年度には、ネットや携帯電話を利用した児童ポルノ事件により、八人が都内で検挙されています。このポルノグラフィーの被写体などを子どもに強要することは、児童虐待の中の性的虐待に当たります。
 ところで、都内の児童相談所で受けた児童虐待の相談、通告の件数は近年ふえ続け、平成二十年度は三千百五十七件と、十年前の四倍強となっております。その中でも、性的虐待の件数は九十五件あったそうですが、性的虐待については、子どもの心に大きな傷を残すと聞いており、性的虐待を受けた児童への対応が重要になります。
 こうした子どもたちの保護、回復、そして保護者に対する指導などについてどのように対応しているのか、都の所見を伺います。
 最後に、オリンピック・パラリンピック招致について伺います。
 先月二十四日、オリンピック・パラリンピック招致活動を取りまとめた招致活動報告書が招致委員会によって公表されました。しかし、日本体育協会会長になった森元総理からの協力要請を初めとして、平成十八年三月当時の主要関係施設検討候補地図、都とロンドン市の政策提携、瑞穂町議会によるオリンピック招致決議の否決、北京オリンピック実地調査によるメディアセンター施設の変更、過去の招致において皇室が関与していないことなど、二〇一六年招致に関して必要な説明が記載されていないことや、コメントなどの掲載が多くないことから、二〇一六年招致の全容を理解するには不十分と考えます。
 また、一九六四年東京大会から四十三年ぶりの招致の取り組みは、順風満帆なものではなく、困難の道のりであり、そうした招致関係者の汗と苦労がうかがえるものとはなっていません。そして、総括が終わらない段階であり、この報告書は日本の再挑戦の海図となり得ないと考えます。都の見解を伺います。
 招致活動を終えて、残された課題の一つが、国際スポーツ界における日本のプレゼンスの向上です。この課題は、招致が始まる前から、スポーツ関係者の間で既に認識されており、IOC委員やJOC国際委員会メンバーなどで構成された国際専門委員会や二十名の海外コンサルタントなどの活用により、その対応が図られてきたはずです。
 そして、リオの招致委員会会長でIOC委員でもあるヌズマン会長がIOC委員たちと関係を構築してきたことが、今回の勝因の一つと記されていますが、そもそも東京は、ロンドン・オリンピック組織委員会から、招致活動は民間主導、IOCは政治家主導による招致活動を嫌うとした提言を受けていたはずです。
 知事は、トップセールスは必ずしも十全に通用しない、手分けしないと厄介だといい切り、ヨーロッパやパンアメリカン、アフリカ地域のオリンピック委員会に欠席をしました。こうした国際招致舞台にトップの不在が続いたことをどう評価するのでしょうか、都の所見を伺います。
 過去の招致活動のノウハウという課題については、昨年十二月の第四回定例会で都議会民主党が、先人の歴史を知らない石原会長がIOC委員たちに支持を求めていたとすればあきれる、そして、JOCの責任とした知事の発言をたしなめました。
 民主党は平成十九年十一月に、国際招致活動においては、過去を学び、IOC委員や他都市の動向を知り、招致活動に生かすべきと質問をいたしました。荒川オリンピック・パラリンピック招致本部長も、それは大変重要である、我々は招致戦略づくりを行っていると述べたため、その後の招致活動に期待していました。そこで、この課題の対応について、都の所見を伺います。
 IOCが実施した東京の世論調査が、他都市と比べて支持が低いことがネガティブなイメージを与えたとした論評がありました。平成十九年十二月、招致委員会の世論調査で、都内での支持が六〇%であったことから、平成二十年度の都の予算算定では、招致における負担は十五億円から百億円に増額されました。招致経費は総計百五十億円で約三倍、都の負担は六・七倍にふえました。オリンピックムーブメント経費も別経費で計上、九十五億円となりました。
 招致経費をめぐっては、招致の失敗後、都議会において議論の俎上に上りました。招致終了後に行われた都と区市町村によるオリンピックムーブメント共同推進事業や学習読本七十七万冊の活用の工夫、IOC総会費用などであり、石原知事も、積極的に招致経費を含めたその実態を都民の目の前に明らかにすると述べるなど、その公表を期待したところです。これら都議会におけるオリンピック招致議論の報告書への反映について、都の所見を伺います。
 招致委員会の今後のあり方についても指摘があるべきでした。かつて都は、東京が民間資金を引き出せる都市であることを誇示していました。それが現在、招致委員会は寄附、協賛金が集まらず、赤字分六億八千七百六十七万円を電通から借り入れることを公表しました。IOC総会の費用の減額交渉を行っていた話が、なぜ借り入れの話になったのか、招致終了後もなぜ組織を存続させるのか、議会に対しても十分な説明が必要であります。
 借り入れを議決する招致委員会理事会は、元都議会議員を初め、財界のトップなどそうそうたるメンバーです。その全理事が共同責任を負うことになるわけで、果たしてどのような返済計画を策定していくのでしょうか。
 そして何より、招致委員会がNPO法人としての目的、招致に失敗したことから、NPO法第三十一条により、所轄庁の認定を得れば、招致委員会は解散せざるを得ないと考えます。
 招致委員会の存続意義と電通からの借入金の経緯、理事会の責任のとり方、そして返済の方法についてどのように聞いているのか、都の所見をお伺いいたします。
 東京招致の責任者である石原知事は、国際招致に関しては、なかなか厄介な、私じゃなしに他の人にいわせると魑魅魍魎の世界ですなとした発言や、情報が入ってこない、総力戦をできなかったうらみはありますと述べるなど、責任を他に転嫁するような発言を続けてきました。
 知事において、二〇一六年招致における総括、戦い抜いての反省と課題はどのようなものなのでしょうか。私が一番汗をかいてきたとも自負している知事に、二〇一六年招致の失敗の総括、そして課題に向けた所見を伺います。
 以上で、都議会民主党を代表しての質問を終えます。
 なお、答弁によっては再質問を留保いたします。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 大沢昇議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、副知事人事についてでありますが、会見で記者から質問があったので答えたまででありますけれども、副知事にはこれまでも適任者を選任し、議会の同意を得て任命し、十二分に補佐してもらってまいりました。
 特に民間から招致いたしました猪瀬副知事には、周産期医療や高齢者の住まいの問題など、役所にはない発想でいろいろアドバイスをいただき、補佐してやってもらっています。
 条例で定めた副知事の枠は四つでありまして、今後とも、都政の発展のためにこの枠を最大限活用していく考えに変わりはありません。現時点では具体案はございませんが、今後必要と判断すれば、手続に沿って議会にお諮りいたします。
 次いで、二十二年度予算についてでありますけれども、今回の予算編成では、大幅な税収減に直面し、今後も厳しい財政環境が想定される中にあって、いかにして現下の閉塞感を打破し、将来を切り開く手だてを講じていくかが大きな課題でありました。このため、みずからを厳しく律した上で、これまで培ってきた財政の対応力を駆使し、東京の現在と将来に対し、都がなすべき役割を積極的に果たすことを基本として予算を編成いたしました。
 これによって、二十二年度予算は、雇用対策や中小企業支援、小児科医療や救急医療体制の充実など、現下の危機に的確に対処するとともに、少子化対策など国を先導する都独自の取り組みや都市インフラの整備など、東京の可能性を引き出す戦略的な投資を行うなど、都民の期待に十分こたえるものになっていると確信しております。
 また、今後に備えて、一兆円を超える基金残高を維持するなど、将来にわたり継続的、安定的に都政の役割を果たし得る強固な財政力を確保しております。
 この予算を原動力として、東京がその底力を遺憾なく発揮し、都民が抱える不安を払拭するとともに、将来に向け新たな活力を創造すべく、積極果敢に都政運営に当たってまいります。
 なお、先ほどの質問の中で、東京が一方的にこうむりました非常に大きな被害であります、法人事業税の分割基準を一方的に政府が変えた措置、あなたのお言葉だと、私と福田総理は同意したとありますが、これは全く事実ではございません。同意するもしないも、そんな権限は東京にないわけで、これは財務省の典型的な場当たりな、一方的な措置として講じられたものであります。
 しかし、これは反論しても反論し切れないし、弁護士にも相談しましたが、訴訟を起こしても必ず負けるということで、負けるのを覚悟でやろうといったら、四千億円を対象に訴訟を起こすと、四億円証紙を張らなくちゃいかぬということで、これはまた非常に損害でありますから、そこで、転んでもただで起きまいと思って、東京にとって絶対に必要な外環道の整備などについての約束をもらいましたが、これは今度の政府でどうなっちゃうかよくわからないんですけれども、いずれにしろ、私と福田総理が合意したということは全く事実誤認でありまして、都政の名誉のためにも申し上げておきます。
 次いで……(発言する者あり)静かに聞きたまえ。築地市場の現在地再整備の再検討についてでありますが、そもそも市場は生鮮食品の流通施設でありまして、そこで営業する多くの市場関係者が納得するものでなければ、どのような再整備案も机上の空論にすぎないと思います。
 現在地再整備については、鈴木都政の時代、平成三年から八年にかけて、六年に及んで四百億の巨費を投じて、仮設工事や、その他の整備費を投じて工事を推進しましたが、営業への深刻な影響などがわかりましたので中断をした事実でございます。
 その経緯について、あなたも、大沢議員も、五年から八年、この議会に在籍しておられたわけでありますから、いかなる理由でこれが中断したかということはご存じだと思います。
 その後もさまざまな案を検討したものの、再整備は実現困難との結論に至って、関係者の大多数が、経済性も考え、最も合理的な選択として最終的に豊洲への移転を合意したものでありまして、この豊洲への移転方針については、民主党はもともと賛成しておりましたね。
 その後に高濃度の土壌汚染が見つかって、民主党も驚いたでしょうけれども、東京都もびっくりしたんです。しかし、各分野の……(発言する者あり)黙って聞きなさいよ。日本人が開発した技術についてやっているんだから。日本人が日本の技術を信じないでどうするんだ。しかし、各分野の最高権威の学者の方々で構成される技術会議で、日本の先端技術を活用し、人が生涯この土地に住み続けても健康への影響はない、そういう土壌汚染対策を取りまとめていただくことができました。
 現在、現地で実験を行い、この対策の有効性を確認しておりますが、私は日本の科学技術は信頼すべきものであり、十分な有効性を持つと確信しております。
 豊洲移転は、この対策の実施により汚染が除去されることが前提であります。したがって、汚染が除去された暁には、もともと賛成していた民主党は移転に反対する理由はないんじゃないんでしょうか。
 ところが、民主党は現在地再整備を再検討すべきと主張しておられます。老朽化が限界に来ている築地市場の現状を踏まえると、与えられた時間は多くありません。先般、わずかな地震で一部が崩落しました。中にアスベストがありました。また、過去に一度否定された現在地再整備についても、早期に業界の合意を得ることは非常に難しいと思います。しかし、民主党に妙案があるというならば、具体的な再整備案を党として責任を持って示していただきたい。その上で議論することはやぶさかではありません。
 ただ、ろくな検証もせずにマニフェストにうたって、あの八ッ場ダムについても同じように大見えを切って、振り上げたこぶしをどこにおろしていいかわからないような、そういう大恥はかかないように気をつけられたらいいと思います。(発言する者あり)余り興奮しないで、冷静に物を考えなさいよ。
 次いで、株式会社新銀行東京の旧経営陣に対する訴訟についてでありますが、新銀行東京は、これまで必要かつ十分な準備を行い、この一月に旧経営陣に対して損害賠償請求訴訟を提起しました。
 経営悪化の原因と責任については、公正かつ中立的な司法の場において明らかにされることが重要であり、この裁判を刮目してまいります。なお、株主として必要な協力は絶対に惜しみません。
 株式会社新銀行東京の旧経営陣の責任についてでありますが、新銀行東京は、外部の専門家に委託して行った調査に基づき、元代表執行役外一名については訴訟を提起しました。また、それ以外の取締役については、社外取締役であったとはいえ、一定の責任があるとして、報酬の自主的な返納を求めております。
 これらはいずれも新銀行東京がみずから主体的に決めたことでありまして、新銀行東京は引き続き、全員の自主返納に向けて取り組んでおりまして、都としては、この銀行の取り組みを見守ってまいります。
 次いで、再生可能エネルギーの利用拡大についてでありますが、化石燃料の多量消費は膨大なエネルギーを生み出し、便利で豊かな生活を実現してきましたが、その一方で、地球環境の限界をはるかに超える二酸化炭素の排出により、深刻な気候変動の危機をもたらしております。
 化石燃料から再生可能なエネルギーへの転換を軸とする低炭素型社会の実現は、気候変動の危機を回避する最大の方策でありまして、多量のエネルギーを消費する都市こそ、再生可能エネルギーの利用拡大を主導すべきものと思っております。
 都はこうした観点から、太陽エネルギーの普及を初めとする先駆的な再生可能エネルギー政策を展開しておりまして、今後とも低炭素型社会への転換を先導してまいります。
 次いで、施政方針の発言についてでありますが、学校施設の耐震化は、子どもの生命を守るための緊急性の高い、極めて重要な事業であります。平成二十二年度当初予算案では、全国の自治体の事業計画の約四割しか計上されておらず、国庫補助を受けて耐震化事業を実施する予定の区市町村は、確実に事業を実施できるのか、不安定な状況に置かれております。このため、施政方針表明において、国政に対し速やかに必要な手だてを講じるように求めたものであります。
 なお、詳細については教育長から答弁いたします。
 次いで、オリンピック・パラリンピック招致についてでありますが、今回の招致活動を振り返りますと、東京はいいチームを組んで戦ったと思います。私自身、先頭に立って、可能な限り数多くのIOC委員と懇談、面会し、東京への招致を訴えました。しかし、残念ながら招致には至りませんでした。
 オリンピック・パラリンピック招致は、さまざまな見えざる力が働く国同士の熾烈な戦いであります。勝者のリオデジャネイロがそうであったように、国やスポーツ界、経済界など各界が総力を結集し、国としての一体感を持って臨んでこそ初めてかち得るものであると改めて思い知らされました。
 また、日本発祥のスポーツである柔道を初め、国際競技連盟における日本人の会長職は、今やゼロであります。そして、彼らが勝手にルールを変える。今日オリンピックで行われている柔道が、あれが果たして本来の柔道でありましょうか。また、聞くところ、東洋人が非常に強いピンポンは、我々の背の低さが利しているということで、一部ではあのピンポン台を数十センチ高くしようという案が提案されたけれども、荻村代表がこれを拒否しました。しかし、もう荻村さんもおられません。
 いずれにしろ、日本のスポーツ界は、おのおのの競技団体を通じてIOCや国際競技連盟の要職に発言力のある強力な人材を送り込み、国際的な影響力を高めていかなければ、招致の獲得は非常に不可能、難しいと思います。
 招致に向けた機運の醸成についても、都民、国民がみずから主体的に招致に賛同し、応援していただくことが大きな力となります。今回のバンクーバー・オリンピックや二年前の北京オリンピックで多くのメダルを獲得した国々と日本では、選手強化にかける費用がけた違いであります。国家としての連帯感を養うためには、スポーツ予算を大幅にふやすことも必要であると思います。日本人選手が活躍すれば、さらに招致に対する機運も盛り上がるでしょう。
 これまでも、都議会を初め多くの方々に支えられて取り組んできましたが、今回の経験や教訓を日本の貴重な財産として確実に引き継ぎ、世界の平和と地球環境の未来のためにも、また、日本の閉塞感を打破し、若者たちに夢と勇気を与えるために、日本が再びいつの日か招致を目指すことを願っております。
 他の質問については、教育長、東京都技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

○教育長(大原正行君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、知事の施政方針についてでございます。
 都と区市町村は、地震防災対策特別措置法に定められた地震防災緊急事業五箇年計画を踏まえ、保護者、地域住民の要望や文部科学省の要請にこたえ、公立小中学校及び幼稚園の耐震化に取り組んでおります。
 昨年八月、文部科学省は、全国の自治体に提出を求めた事業計画をもとに、平成二十二年度予算として五千棟分の概算要求を行いましたが、平成二十二年度当初予算案では、事業計画の約四割に当たる二千二百棟分しか計上されておりません。
 厳しい財政状況の中、区市町村は国庫補助を受けずに耐震化事業を行うことは困難であり、また、国では補正予算の可能性について言及されているものの、詳細が明らかにされていないために、計画どおりの事業を実施できるかどうか、区市町村には不安が広がっております。
 知事の発言は、こうした状況を踏まえ、区市町村の耐震化事業に支障が出ないよう、速やかに必要な手だてを講じることを国に求めたものでございます。
 次に、これまでの東京都におけるキャリア教育の取り組みについてでございます。
 子どもたちが将来において社会的自立、職業的自立を果たしていくためには、小学校、中学校、高等学校等のそれぞれの段階に応じて、児童生徒に望ましい勤労観、職業観を身につけさせる必要がございます。
 現在、小学校では、生活科や社会科において地域のお店や働く人々の職業を調べる活動などを行っており、中学校では、総合的な学習の時間等を活用した職場体験を行うなど、発達段階を踏まえて計画的にキャリア教育を実践しております。都立高校においては、各学校が年間指導計画を作成し、大学への体験入学や企業における就業体験などを取り入れ、教育活動全体を通じてキャリア教育を推進しております。また、都教育委員会は、指導資料集を作成、配布するとともに、職場体験発表会やフォーラム等を開催し、すぐれた実践事例の普及啓発を図ってまいりました。
 今後とも、こうした取り組みを通して、キャリア教育の一層の推進を図ってまいります。
 次に、工業高校における企業実習の取り組みの充実についてでございます。
 お話のとおり、工業高校において即戦力となるものづくり人材を育成することは重要と考えております。
 都教育委員会はこれまで、全国に先駆けて都立六郷工科高校において学校と企業が連携して生徒を育成するデュアルシステムを導入し、企業実習を通じて即戦力となるものづくり人材を育成しており、卒業生の半数以上が協力企業に就職するなど、地域企業の後継者育成として高い評価をいただいております。
 こうした成果を踏まえ、今後、実践的な人材育成が可能なデュアルシステムを他の工業高校へ導入するため、教育課程や実習受け入れの企業開拓等の検討を始めておりまして、企業ニーズや企業集積地等の地域バランスを勘案し、平成二十三年度入学生から順次拡大をしてまいります。
 次に、情報モラルと情報リテラシーの向上への取り組みについてでございます。
 インターネットや電子メールなどを使う際のマナーや相手への配慮などの望ましい態度、いわゆる情報モラルや、情報機器を使いこなして情報を主体的に選択、活用するなどの能力、いわゆる情報リテラシーを育成することは極めて重要でございます。
 都教育委員会はこれまでも、こうした態度や能力の育成のため、教員研修の実施、指導資料の配布、ハイテク犯罪対策シンポジウムの開催などを通して各学校の取り組みを支援してまいりました。
 また、昨年六月から実施した学校非公式サイト等の監視結果によりますと、不用意に自分や他人の個人情報をインターネット上に公開している事例が多いことから、昨年十一月には各学校で適切に指導するよう通知し、注意喚起したところでございます。
 今後とも、子どもたちが被害者にも加害者にもならないように、児童生徒の情報モラルと情報リテラシーの向上に向けた取り組みを一層充実してまいります。
   〔東京都技監道家孝行君登壇〕

○東京都技監(道家孝行君) 環状第二号線の整備についてお答えいたします。
 現在、未整備となっております豊洲から虎ノ門までの区間において事業中であります。
 この区間の整備は、臨海部と都心部との連絡強化や地域交通の円滑化を図るとともに、緑豊かな都市空間ネットワークを形成する上でも極めて重要であります。
 このうち晴海四丁目から銀座八丁目までの区間については、平成十三年の第七次東京都卸売市場整備計画により市場の豊洲移転が決まったことに伴い、築地、勝どき、晴海地区間の連絡強化、勝どき地区における避難経路の拡充など、道路機能や防災性の向上を図るため、平成十九年十月、地下式から地表式及びかさ上げ式に都市計画変更を行い、事業を進めております。
 一方、臨海副都心や晴海、勝どき地区などで新たなまちづくりが進んでおります。これらの地区を結ぶ主要な道路は、現在、晴海通りだけであり、開発に伴い発生する交通需要に対応するためにも、環状第二号線の早期整備が必要であります。
 晴海地区と勝どき地区をつなぐ朝潮運河橋梁の整備は、周辺のまちづくりにとって必要不可欠なことから、早急に整備を進めてまいります。
 お話のように、仮に築地地区の道路構造が変更になった場合でも、朝潮運河橋梁に影響はありませんが、勝どき地区でさらなる用地取得が必要となるなど、現計画をもとに進められてきた周辺の開発に影響を与えます。さらに、都市計画変更や環境影響評価の手続に時間を要し、完成が大幅におくれることなどから、道路構造の変更は極めて困難であります。
 今後とも、環状第二号線の平成二十七年度全線開通を目指し、整備に取り組んでまいります。
   〔主税局長熊野順祥君登壇〕

○主税局長(熊野順祥君) 今後の景気動向と都税収入の見通しについてお答え申し上げます。
 我が国経済は、景気に持ち直しの動きは見られるものの、その足取りは緩やかであり、雇用、所得の改善が著しくおくれているなど、本格的な回復に至るまでにはなお相当の時間を要するものと考えております。
 こうした状況に加え、海外景気の下振れ、デフレによる需要低迷、雇用情勢の一層の悪化などのリスクが存在すること、さらには、この間の企業の繰越欠損金による税収減や、税の原則をゆがめ、地方分権に逆行する法人事業税の一部国税化による影響なども考慮すれば、都税収入は当面厳しい状況が続くものと認識しております。
   〔財務局長村山寛司君登壇〕

○財務局長(村山寛司君) 四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、最終補正予算の編成における留意点でございますが、今回の補正予算の一つの柱は、急激な企業収益の悪化に伴い、都税収入等が当初予算に比べて約一割、五千二百億円も大幅に減収となるという事態に対しまして、都民サービスに支障を生じさせないことを前提に、どう対応するかという点でございました。
 そのため、歳入歳出の両面にわたって、全庁を挙げて徹底した洗い直しを行ったわけでございますが、その際、まず歳出面では、給与費の不用額や契約差金など都民サービスには直接影響を及ぼさない経費や、事業の進捗状況から今年度は不用となることが明らかな経費などについて、精査の上、減額いたしました。
 また、歳入面では、東京都住宅供給公社からの貸付金の繰り上げ返済を受けるなどにより新たな収入確保を行うとともに、財政の健全性を損なわない範囲で減収補てん債を発行し、それでもなお不足する額につきましては、財政調整基金の活用により必要な財源を確保いたしました。
 このような取り組みを通じて、都税収入の大幅な減収が生じる中にあっても、都民サービスを低下させることなく予算上の対応を行うことができたものでございます。
 次に、国の二次補正予算に関連する都の対応についてでございますが、今回の最終補正予算のもう一つの柱は、国の補正予算に関連して、区市町村の事業計画などに基づき、都民の安全・安心にかかわる事業など必要な事項について、所要の経費を計上することでございました。
 具体的には、子育て支援や雇用創出のための基金の拡充を行うとともに、インフラ整備事業の実施、新型インフルエンザ対策など、現時点で実施可能な事業について必要な予算を計上しております。
 これらの措置を講ずることは、都がこれまで独自に実施してきた取り組みと相まって、都民生活の安全・安心に資する効果があるものと期待しております。
 次に、平成二十年秋以来、都が実施してきた緊急対策についてでございますが、当時、アメリカ発の金融危機が世界規模の不況へと発展する中にあって、東京においては、金融機関の貸し渋りや中小企業の倒産の増加、さらには新型インフルエンザの大流行への不安の広がりなど、都民生活は危機的状況に至りました。こうした状況に一刻も早く具体的な手だてを講じ、都民の不安を払拭すべく、東京都は二度にわたり都独自の緊急対策を実施したものでございます。
 具体的には、中小企業制度融資の融資目標額の引き上げ、いわゆるゼロ都債の活用による公共工事の端境期の解消、抗インフルエンザ薬の備蓄増強や小中学校等の耐震化対策等の公共事業など、いずれも現場感覚を生かした事業であり、予算規模は合わせて千七百十三億円でございます。
 これらの各施策の実施により、平成二十年度に中小企業制度融資として実施した経営支援融資は、経営緊急分を含め、全体で前年度の六倍を超える一兆円規模に達しております。また、平成二十一年一月から三月に発注された道路の維持工事の実績は、前年同期のおおむね三倍の百五十億円程度の規模となっております。これらの施策はいずれも、中小企業を下支えする上で大きな役割を果たしたと考えております。
 また、東京においては、抗インフルエンザ薬の先行備蓄や医療体制の整備などにより、いち早く新型インフルエンザ流行発生時の対応体制が整備されました。また、小中学校等の耐震化事業への独自補助により、二十一年度中に耐震化率が九割近くに達する見込みでございます。これらは、広範な都民に大きな安心を与えるものとなっております。
 このように、平成二十年度以降都が実施してきた緊急対策は、危機的状況の中において、都民の不安を払拭する上で大きな効果があったものと考えております。
 最後に、都民施策の充実と健全な財政運営についてでございますが、二十二年度予算が、大幅な税収減の中にあっても、今日都がなすべき役割を果たすことができたのは、都がこれまで堅実な財政運営に継続的に取り組み、財政の対応力を培ってきたからでございます。
 景気の低迷が長引くことも想定される中、都民のためになすべき施策を今後とも着実に実行していくためには、それを支えるに足る財政の健全性を堅持していくことが不可欠でございます。
 そのため、歳入歳出両面にわたる徹底した洗い直しや事務事業評価の取り組みの強化など、みずからを律する取り組みを通じて財政の対応力を一層高め、その上で都債や基金を計画的に活用することにより、将来にわたって強固な財政力を確保してまいります。事務事業評価制度におきましては、監理団体等を通じて実施している都の事業も対象としてまいります。
 今後とも、都民福祉の向上を支えるにふさわしい財政基盤の構築に向け、堅実な財政運営に引き続き取り組んでまいりたい。
   〔総務局長中田清己君登壇〕

○総務局長(中田清己君) 人材や組織の活用についてお答え申し上げます。
 急激な社会情勢の変化が続く中、職員の育成と活用、柔軟な組織体制の構築は、重要な課題となってきております。
 都の職員は、柔軟な発想力、果断な行動力、斬新な企画力を持ち、都政を支える気概と首都東京の現場を担うプロフェッショナリティーを備えなければならないと考えております。
 都は、こうした認識に立ちまして、平成十八年三月に策定いたしました東京都人材育成基本方針に基づきまして、海外研修やeラーニング導入等の職員研修の充実、職員の強みを引き出し、能力を活用する配置管理の実施など、さまざまな取り組みを行っております。あわせまして、中長期的な課題や新たな政策課題に対して、機動的かつ総合的に対応できる執行体制を整備しております。
 都財政は厳しい状況を迎えておりますが、今後とも粘り強く職員の育成を継続し、都政を支えるプロとしての人材の育成と活用により、重要課題に迅速かつ的確に対応できる執行体制を構築してまいります。
   〔知事本局長吉川和夫君登壇〕

○知事本局長(吉川和夫君) 「十年後の東京」計画の実現についてでございますが、これまで都は、「十年後の東京」計画で掲げた目標を実現するため、三カ年の到達目標と年次計画を明示した実行プログラムを毎年度改定してまいりました。
 改定に当たりましては、すべての施策の進捗状況や効果を検証し、真に実効性が上がるよう再構築してきておりまして、今回の実行プログラム二〇一〇では、建築物の耐震化を促進するための規制誘導策の検討や都独自の保育サービスの拡充策など、社会情勢などの変化も踏まえた新たな施策を盛り込んでおります。
 また、都民や区市町村の意見や要望を施策に反映するため、計画に関する世論調査や都政モニターアンケートを実施するとともに、区市町村への意向調査やヒアリングを実施しております。今年度は、特に緑化の推進、道路等の整備などについて区市町村から数多くの提案、要望が寄せられまして、その中から新たな事業も生まれました。
 こうした工夫を今後も行うとともに、都民や企業など幅広い意見に耳を傾け、連携を一層強化しながら、「十年後の東京」計画で掲げた目標の実現に向けた取り組みを着実に進めてまいります。
   〔生活文化スポーツ局長秋山俊行君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(秋山俊行君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、世論調査やモニターアンケートについてでございますが、東京都が実施いたします世論調査やモニターアンケートは、都政の課題につきまして、統計的手法やインターネットにより都民の皆様のご意見、ご要望を把握し、都政に反映させるために行っているものでございます。
 実施に当たりましては、毎年度定期的に行っているものを除きまして、事業を直接実施している各局の要望に基づき、テーマを選定しております。
 次に、高校における授業料の公私格差についてでございますが、都ではこれまでも、公私格差の是正を図る観点から、私立高校への基幹的補助でございます経常費補助を通して授業料の抑制を図りますとともに、特別奨学金制度を実施してきたところでございます。
 この特別奨学金制度は、一定所得以下の保護者を対象に、所得に応じて授業料の一部を補助するものでございまして、所得制限を設けずに私立高校生全員を対象として支給する国の就学支援金制度とは、その考え方、内容ともに異なるものでございます。
 今回、都の特別奨学金に加えまして国の新たな制度が実施されますと、一部では私立高校の平均授業料を上回る補助額となることから、これまでの都の考え方を変えずに、既存の財源の範囲内で補助額を調整するなど、都の制度の組みかえを実施いたします。その結果、来年度予算案では、生活保護世帯につきまして都内の平均授業料を全額カバーできるなど、補助対象となる全所得階層で保護者負担額の軽減が図られることから、限られた都の財源を効果的、効率的に活用できるものと考えております。
 なお、予算が前年度より約十億円ふえておりますのは、昨今の社会経済状況を踏まえて、経済的理由によりまして就学困難な生徒が増加すると見込んだためでございまして、国の就学支援金への上乗せを行ったものではございません。
 都といたしましては、都内高校生の約六割が通学する私立学校が公教育に果たしている役割は重要であるというふうに認識しておりまして、保護者負担の軽減だけでなく、経常費補助などを通じて学校経営の安定化を図ることも重要だというふうに考えております。
 今後とも、基幹的補助である経常費補助を初めとして、特別奨学金や育英資金などの幅広い施策を総合的に活用し、公私格差の是正も含め、私学振興に努めてまいります。
   〔中央卸売市場長岡田至君登壇〕

○中央卸売市場長(岡田至君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、市場関係業者に対する意向調査についてです。
 築地市場の豊洲への移転は、現在地再整備の検討が手詰まりとなる中、業界団体との協議において最終的に意見集約されたものであり、その後も、基本構想から施設計画に至る各段階において、業界団体と幾度となく協議を重ね、その意向を反映し、取りまとめてまいりました。
 築地市場の六つの業界団体のうち、水産仲卸業者の組合は移転の可否について意見が分かれておりますが、それ以外の五団体は豊洲への早期移転を切実に希望しております。
 さきの参考人招致において、業界団体の代表が、新市場の実現に希望を託し、計画推進に一致協力し、準備を進めてきた、業界の多くが意見を一つにしていると述べるとともに、先月、現在地再整備の主張は築地市場を再びあの泥沼に陥れるものであり、容認できない、現在地再整備の議論に立ち戻ることなく、豊洲新市場の建設の一日も早い実現を強く望むとする内容の声明が、水産の卸、青果の卸、仲卸、関連事業者及び買い出し人など、業界団体の大多数から都議会に提出されました。
 都としましては、業界団体の大多数が移転整備の意思を明らかにしており、それはそれぞれの団体を構成する組合員の総意と考えていることから、個々の市場関係業者に対しまして、改めて意向調査を実施し、移転の是非を問う考えはございません。
 次に、土壌汚染対策経費の負担に関する東京ガス株式会社との協議についてです。
 これまで東京ガス株式会社は、都との合意に基づき、豊洲新市場予定地におきまして土壌汚染対策を実施し、平成十九年に環境確保条例上の手続を完了しております。
 一方、平成二十年に専門家会議の提言に基づき都が行った詳細な土壌汚染調査によりまして、都市ガス製造の操業に由来する高濃度の汚染物質の存在が確認されたことを受けまして、昨年二月、副知事から同社に対し、都が実施する土壌汚染対策の経費の一部負担につきまして、協議の申し入れを行いました。この間、都からは、詳細調査の結果や昨年九月に公表いたしました環境確保条例第百十七条に基づく調査結果などにつきまして説明を行っております。
 今後も、都が実施いたします土壌汚染対策の詳細な内容や、現在豊洲予定地で行っております実験の結果などについて説明を行い、これらを踏まえ、さらに協議を進めてまいります。都といたしましては、今後、東京ガス株式会社との協議を終えた上で、用地を購入してまいります。
 最後に、土壌のコアサンプルの保全と開示についてであります。
 土壌コアサンプルは、汚染物質を分析するとともに、土質や地層の状況を確認するために採取しているものでございます。
 コアサンプルから得られた分析結果、ボーリング柱状図につきましては、ホームページ上で公表するなど、情報の共有化を図っております。
 また、ホームページを見た都民からの調査内容や分析結果に対する問い合わせに対しましても、十分に理解していただけるよう、丁寧にわかりやすく説明しております。
 先日の参考人招致におきまして、専門家会議の座長は、コアサンプルは、チェックを行い、試料を採取した段階で役割は終えており、汚染物質を含んでいるため、早く適切に処理すべきである、また、コアサンプルを廃棄するに当たっては、十分な説明を行い、理解をいただく取り組みが必要であると述べております。この見解は、都の認識やこれまでの取り組みと変わらないと考えております。
 こうしたことから、コアサンプルの保全と開示は必要ないと考えておりますが、係争中であるため、引き続き一定期間保管してまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

○産業労働局長(前田信弘君) 九点のご質問にお答えいたします。
 まず、新銀行東京の経営悪化の責任についてでありますが、新銀行東京は、既に外部の専門家に委託し、不良債権の問題のほか、システムの関連を含め、さまざまな調査分析を十分に行い、その結果を踏まえて、このたび旧経営陣に対し訴訟を提起したものでございます。
 新銀行東京の経営悪化の原因と責任については、今後、司法の場で明らかになることが重要であり、改めて都が外部の専門家などにより検証を行う必要はないと考えております。
 次に、成長産業の支援に向けた取り組みについてでありますが、環境、医療、福祉などの成長分野で活用の期待できる中小企業の製品開発や事業化を支援していくことは、東京の産業の発展につながるのみならず、中小企業のすぐれた技術の力で、大都市東京が抱える課題を解決することにも寄与するものと認識しております。
 このため、来年度から実施する、都市課題解決のための技術戦略プログラムでは、都政の現場の声などを集約し、開発テーマや目標を定め、これに沿った中小企業等の新製品、新技術の開発及び事業化を支援してまいります。
 次に、地域における産業集積への支援についてでありますが、「十年後の東京」計画で示した創造的都市型産業の集積を促進していくためには、都が実施いたします広域的視点に立った施策とともに、地域の産業特性や立地環境等を生かした区市町村の主体的な取り組みが重要であります。
 このため、都は、平成二十年度から創造的都市型産業集積創出助成事業を開始いたしまして、都の基本方針に沿って、企業誘致や産学公連携を推進する区市町村を重点的に支援しております。
 また、これまでも、区市町村が行うインキュベーション施設の整備を支援することで、地域の特色に合う産業の新たな担い手の創出を促してきております。
 今後とも、都と区市町村が重層的に支援を行うことで、地域における新産業の集積と創出を図ってまいります。
 次に、産業サポートスクエア・TAMAについてでありますが、都は、先端技術を有する企業や大学、研究機関が多数集積する多摩地域の高いポテンシャルを生かし、研究開発の促進や新産業、新技術の創出を図るとともに、広域的な産学公連携を活発化させる中核拠点として、新たな産業支援拠点の整備を進めてまいりました。
 先週、この産業支援拠点として開設いたしました産業サポートスクエア・TAMAにおきましては、多摩地域の産業特性に応じた、技術、経営の両面からの支援や、産学公連携のコーディネート機能、インキュベーション機能などを発揮し、中小企業を強力に支援してまいります。
 こうした取り組みを展開することで、多摩シリコンバレーの形成を目指してまいります。
 次に、中小企業の資金需要への対応等についてでありますが、都は、制度融資の目標額の設定に当たりましては、利用実績はもとより、各種の景況調査や、信用保証協会及び金融機関などとの意見交換を踏まえて、都内中小企業の生産、売り上げや資金繰り等の動向をとらえ、資金需要の的確な把握に努めております。
 したがいまして、平成二十二年度の融資目標額は適正なものと考えております。
 また、制度融資の最優遇金利は、金融機関が最も信用力のある企業に適用する貸出金利であります短期プライムレートとほぼ同水準まで引き下げられております。
 加えて、平成二十年度から、経営支援融資等において、小規模企業者に対し、保証料の二分の一を補助するという過去最高水準となる都独自の対応を行っております。
 来年度予算案におきましても、これらの措置の継続を盛り込んだところでございまして、都は他の道府県と比べても格段に手厚い措置を講じております。現下の厳しい経済情勢のもと、引き続き都内中小企業の負担の軽減を図ってまいります。
 次に、都と地域の金融機関が連携して実施する金融支援についてでありますが、都内中小企業は依然として厳しい経営環境に直面しており、緊急保証制度によりましても資金調達が困難な企業が存在しております。
 こうした中にあって、この支援策は、高い技術力やすぐれたビジネスプラン等を持ち、この難局さえ乗り切れれば将来的に展望が開ける企業を見出し、資金面から支援していくことを目的に創設したものでございます。
 現在、取扱金融機関を十三まで順次拡大し、当面の事業継続に必要な運転資金等の確保に困窮する企業の資金需要にこたえてまいりました。
 引き続き、取扱金融機関の拡大を図るとともに、来年度の融資規模を拡大し、利用促進を図ってまいります。
 次に、緊急雇用創出事業の今後の取り組みと離職者向け広報の強化についてであります。
 都は本年度、区市町村と協力して緊急雇用創出事業に積極的に取り組んでおります。
 しかしながら、雇用情勢は依然として厳しいことから、本年度最終補正予算におきまして緊急雇用創出事業臨時特例基金をさらに拡充することといたしました。平成二十二年度は、この基金を最大限に活用して、本年度を上回る雇用の創出を図ってまいります。
 また、離職された方々の生活や就業に関する支援策については、国の取り組みを含め、求人情報紙への広告、コンビニエンスストアを活用したパンフレットの配布など、必要とする方々の目に触れやすい方法により、通年で広報を実施してまいります。
 次に、労働者への支援の強化と企業の法令遵守の徹底についてでありますが、都では、都内六カ所の労働相談情報センターにおきまして、労働相談を通じて、厳しい状況に直面している労働者に対する支援を行っております。
 相談件数は、ここ数年、五万件を超え、その内容を見ますと、雇用情勢を反映して、解雇や賃金不払い等の深刻な相談が増加しております。センターでは状況に応じて特別相談会を実施してきておりまして、年度末を迎え、雇いどめなどの増加が懸念されますことから、この九日と十日にも特別相談会を開催することとしております。
 また、雇用をめぐるトラブルの未然防止には、事業主が労働関係法令を遵守することが重要であり、このため、センターの職員が企業を直接訪問し、労働法令を周知するとともに助言を行っております。さらに、セミナーの開催や啓発資料を発行しているほか、来年度は使用者向けe─ラーニングを開始いたします。
 今後とも、労働相談の充実を図るとともに、労働法令等の積極的な普及啓発に努めてまいります。
 最後に、多摩産材の公共利用の拡大についてであります。
 多摩産材の利用拡大は、東京の林業を振興し、伐採、利用、植栽、保育という森林の循環を再生する重要な取り組みであります。また、地球温暖化防止にも貢献するものであります。
 このため、都は、平成十八年に多摩産材利用推進方針を策定し、みずから全庁的に公共施設などでの利用拡大を図っております。その結果、平成二十年度の都におきます利用実績は、方針策定前の平成十七年度に比べ約一・八倍にふえ、標準的な杉の木で約二万本に相当する約一千八百立方メートルとなっております。
 さらに、「十年後の東京」への実行プログラム二〇一〇におきましても、都立学校の書架や都立施設の内装等に多摩産材の利用を拡大することとしております。
 今後とも、都みずから多摩産材の一層の利用拡大に努めるとともに、区市町村に対しても引き続き働きかけるなど、多摩産材の公共利用の拡大に取り組んでまいります。
   〔環境局長有留武司君登壇〕

○環境局長(有留武司君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、エネルギーの有効利用の取り組みについてでございますが、都は、気候変動対策強化のため、延べ面積五万平方メートルを超える規模の開発を対象に、地域におけるエネルギー有効利用計画制度を創設し、本年一月に施行いたしました。
 この制度では、開発の企画構想段階で事業者にエネルギー有効利用計画書の作成を求め、省エネルギー性能目標値の設定を義務づけております。また、その際に、事業者には、太陽光、太陽熱、近隣の清掃工場の廃熱等の利用設備や地域冷暖房の導入検討を義務づけております。
 さらに、既存の地域冷暖房施設についても、毎年度の実績報告の中でエネルギー効率の評価を行い、効率化を促すこととしております。
 新たに開始したこの制度を活用することによりまして、今後、地域におけるエネルギーの有効利用を促進してまいります。
 次に、都有施設への再生可能エネルギー等の導入に係る取り組み状況と今後の展開についてでございます。
 都はこれまで、都営住宅や浄水場など、数多くの都有施設に太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーの導入を進めるとともに、廃棄物埋立処分場から発生するメタンガスによる発電など、未利用エネルギーの活用にも取り組んでおります。
 今後は、味の素スタジアムへの太陽光発電の導入や、メタンガス発電の取り組みを拡大するほか、講習会などを通じまして、都庁における省エネ・再エネ設備の導入ノウハウを区市町村職員に広めることなどにより、再生可能エネルギー利用を一層拡大してまいります。
 次に、太陽エネルギー機器の普及拡大についてでございますが、都が先進的に補助事業の創設を打ち出し、国や他の自治体もこれに続いたことから、今日では全国的に太陽光発電市場が活性化しております。
 補助事業の開始により、国全体では導入ペースが従来の二倍強になっているのに対しまして、独自の補助事業を行う都ではおよそ五倍の伸びを示しており、都施策の効果は極めて高いものとなっております。
 今後、さらなる普及拡大に向けまして、大規模建築物における再生可能エネルギー導入検討の義務づけ、大規模事業所における総量削減義務の履行手段としての活用、また、省エネ促進税制など、新たな施策を活用し、太陽エネルギー機器の一層の普及拡大を図ってまいります。
 最後に、区市町村と連携した木質バイオマスの利用促進についてでございます。
 都は今年度、地球温暖化対策等推進のための区市町村補助制度を活用しまして、バイオマスボイラーの導入など、多摩産の木質バイオマスの利用拡大に向けた檜原村や奥多摩町の取り組みを支援しております。
 平成二十二年度からは、木質バイオマスの利用を家庭や中小企業などにも普及させるため、区市町村が行う木質バイオマスを利用した暖房機器への補助について、新たに支援する予定でございます。
   〔消防総監新井雄治君登壇〕

○消防総監(新井雄治君) 消防庁舎への木材利用についてでありますが、防災対策上特に重要な建築物として耐震性や耐火性の強化が求められております消防庁舎には、主要な構造部に木材を用いることは困難でございますが、木場地域においては、その特性を踏まえ、庁舎の内装の一部などへの木材の利用について検討してまいりたいと考えております。
 今後とも、住民から親しまれるとともに、防災拠点として地域の安心・安全を一層高められるような消防庁舎の建設に努めてまいります。
   〔都市整備局長河島均君登壇〕

○都市整備局長(河島均君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、羽田空港の深夜、早朝便に対応した空港アクセスについてでございますが、二十四時間利用が可能となる羽田空港では、再拡張後、深夜、早朝時間帯に多くの国際定期便が就航し、利用者が飛躍的にふえることが見込まれるため、これに対応した公共交通手段を確保することが重要であります。
 このため、本年十月の供用開始時に、京浜急行及び東京モノレールの新駅が開設予定でございますが、このほかにも、バスを含む公共交通の運行時間帯の拡大や本数の増加などについて、国が中心となり、都や交通事業者なども参画して、検討、調整を進めております。
 供用開始に向けて、深夜、早朝便に対応した使いやすい公共交通手段を確保するなど、空港アクセスの充実に取り組んでまいります。
 次に、国際コンテナ物流に対応した道路網整備についてでございますが、今日、貨物用コンテナの大型化が進む中、東京の物流機能を高めるためには、貨物用コンテナの陸上輸送に対応した、高速道路を中心とする道路網の整備が重要であります。
 現在、外環や中央環状線等に一部未整備の区間があるため、東京港を使用する大型コンテナ車の大半が環状七号線や環状八号線等の一般道路に集中し、効率的な輸送を妨げるとともに、沿道環境に負荷を与えております。
 このため、三環状道路の完成や国道三五七号の整備促進、高速へのアクセス道路の整備などにより、大型コンテナ車が円滑に走行できる道路網の整備を推進してまいります。
 次に、木造住宅耐震化助成制度についてでございますが、この制度は、防災都市づくり推進計画に定める、特に老朽化した木造建築物が集積した区域が連担するなど、震災時に大きな被害が想定される整備地域を対象としております。
 このような地域では、震災時に住宅が倒壊した場合、道路閉塞や出火により、避難、応急活動が妨げられるとともに、大規模な市街地火災につながるおそれがあるため、耐震診断や耐震改修などに対する公的助成を行っております。
 都としては、財源を効率的、効果的に活用する観点から、今後とも重点的に取り組む必要のある整備地域に的を絞って木造住宅の耐震化助成を行ってまいります。
 なお、耐震化助成の対象である整備地域につきましては、本年一月に改定した防災都市づくり推進計画におきまして、最新の地域危険度調査の結果等を踏まえ、約七千ヘクタールに拡大いたしました。
 最後に、耐震化促進に向けた規制誘導策の検討を始めるに当たっての基本的な考え方でございますが、緊急輸送道路は、発災時の広域的な救援、救護活動を支えるとともに、復旧、復興のための動脈ともなるものでございまして、建物倒壊による道路閉塞を防ぐことは、多くの都民の生命、財産を守るため、極めて重要であります。
 都は、沿道の建物所有者の耐震化に向けた具体的な行動を促すため、耐震診断費用の五分の四を補助する助成事業や低利融資制度など、他の地域に比べ手厚い支援を実施しております。
 さらに、一千棟を超える緊急輸送道路沿道の対象建物に対し、地元自治体とともに戸別訪問等を行い、所有者に直接、耐震化の早期実施を働きかけてまいりました。
 しかし、多くの所有者は、耐震化の必要性を認識している一方で、具体的な行動を起こすまでには至っておりません。
 耐震化への取り組みは、建物所有者の意思にゆだねられていることから、所有者の行動を促すためには、これまでより一歩踏み込んだ仕組みが必要であると考えております。
 そこで、耐震診断の義務化など、新たな規制誘導策の検討を開始し、緊急輸送道路沿道の建物の耐震化を一層促進してまいります。
   〔港湾局長比留間英人君登壇〕

○港湾局長(比留間英人君) 京浜港の国際戦略港湾選定の取り組みについてでございます。
 京浜港は、コンテナ貨物取扱量が我が国最大の港であり、アジア諸港の躍進が著しい中にあって、三港が連携し、国際競争力の強化を図っているところでございます。
 先月、今後の施策の方向性を示す京浜港共同ビジョンを川崎市、横浜市と連携して作成したところであり、港湾利用コストの低減や地方港との連携による国内貨物の集荷など、施策の実現に向け、着実に取り組んでまいります。
 今後、このビジョンに基づき、国際戦略港湾の選定に京浜港として応募いたしますが、京浜港は当然選定されるべき港であると考えておりまして、この指定を受け、激化するアジア諸港との競争の中で、京浜港の存在を確固たるものにすべく、全力で取り組んでまいります。
   〔交通局長金子正一郎君登壇〕

○交通局長(金子正一郎君) 地下鉄サービスの一体化についてお答えをいたします。
 交通局では、これまで、東京メトロと共同で、お客様の利便性向上のため、サービスの一体化に取り組んでまいりました。
 運賃については、普通券及び定期券の乗り継ぎ割引を実施し、普通券については、順次割引額を拡大しております。また、共通一日乗車券やICカードPASMOの導入などにより、乗り継ぎの円滑性の向上に努めてまいりました。
 情報案内については、共同で駅ナンバリングを導入するとともに、東京メトロと統一したデザインのホーム案内板を設置しております。
 乗り継ぎ割引をさらに拡充することにつきましては、経営に与える影響が大きいことから、慎重に検討する必要があると考えておりますが、情報案内の統一に向けて、現在行っております統一したデザインの駅案内サインへの改良を計画的に進めていくなど、今後とも東京メトロと共同して、利便性を高め、使いやすい地下鉄の実現に努めてまいります。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) まず、防災対策に関しまして、災害時要援護者の避難計画策定等への支援について申し上げます。
 各区市町村では、国の通知に基づき、平成二十一年度中を目途に、災害時要援護者対策の取り組み方針を明らかにした全体計画の策定に取り組んでおります。
 平成二十一年十一月一日現在、都内区市町村の三七%が策定済みであり、六三%が策定中でございます。
 都としましては、区市町村に対して、災害時要援護者への災害対策推進のための独自の指針を示すとともに、避難計画策定の手順を紹介した事例集の作成や、福祉、防災担当者向け研修などを通じ、働きかけを行ってまいりました。
 また、要援護者の名簿作成など、区市町村の主体的な取り組みにつきましては、包括補助制度により支援をしてございます。
 次に、聴覚障害者のための緊急時避難誘導設備についてでありますが、聴覚障害者への緊急時の情報支援については、昨年改正いたしました東京都福祉のまちづくり条例に基づく施設整備マニュアルにより、光や文字等による情報伝達設備の整備を促すとともに、都の指針に基づき、災害時のための情報伝達手段の整備に関する区市町村の取り組みを促進しております。
 区市町村における聴覚障害者に配慮した情報支援の取り組みをさらに促進するために、公的機関の建物への警報装置や避難誘導設備の設置について、包括補助制度を活用した支援を検討してまいります。
 次に、医療政策について、まず、救急医療の東京ルールについてでありますが、昨年八月末の運用開始以来、東京ルールとしての事案は、本年二月末までに五千五百五十六件となっております。地域の救急医療機関相互の協力連携や、コーディネーターによる地域を超えた調整により、救急患者は確実に受け入れられており、東京ルールの仕組みは定着をしてきていると考えております。
 来年度は、東京ルールの中心となる地域救急医療センターに対し、診療体制のさらなる強化を図るため、医師確保について、より一層の支援を行います。
 また、都内すべての救急医療機関の診療情報について、リアルタイムでの表示をしている東京消防庁の救急医療情報システムを、昨年四月に、地域の医療機関が相互に診療体制を参照できるように改善をしております。
 こうした取り組みにより、東京ルールの円滑な運用を図るとともに、実績を踏まえた検証を進め、救急医療体制の一層の充実に努めてまいります。
 次いで、チーム医療についてでありますが、質の高い医療を実現するためには、多種多様な医療スタッフが専門性を発揮し、チームとして互いに連携、補完し合って医療を提供していることが重要であり、医師不足の状況にあっては、その推進は急務であります。
 都はこれまでも、医師勤務環境改善事業などを通じて、助産師外来や医療クラークなどの配置を促進してまいりました。
 現在、東京都地域医療対策協議会において、医療スタッフの役割分担や連携など、チーム医療のあり方について検討を行っており、今後、国の状況も踏まえつつ、さらに議論を深めてまいります。
 次いで、NICUへの人材確保についてでありますが、産科、新生児科の医師の確保が厳しい状況にある中、NICUの整備を進めるためには、都としても即効性のある対策に取り組む必要があります。
 このため、NICUを有する周産期母子医療センターにおいて、必要な医師を確保し、安定的な運営が図れるよう、運営費補助による支援を格段に充実させることといたしました。
 加えて、周産期医療等に従事する意思を有する医学生に対して、平成二十一年度から奨学金を貸与しており、中長期的な視点からの医師の養成にも着実に取り組んでおります。
 次に、NICUの長期入院児に対する取り組みでありますが、都は、NICUから在宅療養へ円滑な移行を支援するモデル事業を、区東部地域において、都立墨東病院を中心に来年度から実施いたします。
 この事業は、コーディネーターを配置し、入院中から在宅への移行に向けた支援を行うとともに、退院後は、訪問診療や訪問看護等の各種サービスを提供するほか、家族間の交流会を開催するなど、在宅療養に必要な支援を行い、その効果を検証するものであります。
 モデル事業を通じて、NICUからの円滑な退院に必要な支援の仕組みを築いてまいります。
 次に、がん対策について、まず子宮頸がんについてでありますが、子宮頸がんは、その原因であるヒトパピローマウイルスのワクチン接種と、がん検診の受診をあわせて促進することにより、死亡率の減少が期待できます。
 このため、ワクチンの接種について、公費による助成を行う区市町村に対して、包括補助事業の活用も含め、都として支援を行うことを検討してまいります。
 あわせて、区市町村と連携して、ワクチン接種の有効性等について普及啓発に努めてまいります。
 次に、がん診療連携拠点病院等についてでありますが、都では現在、拠点病院十四カ所が指定されており、都独自の認定病院については十カ所認定をしております。
 平成二十二年度の拠点病院の指定更新に当たりまして、二病院を追加で国に推薦し、その結果、十六病院すべての指定が了承されました。また、認定病院についても、十六カ所に拡大する予定であります。
 次に、地域連携クリティカルパスについてでありますが、都は、すべての拠点病院、認定病院や東京都医師会の協力のもと、都内共通の地域連携クリティカルパス、東京都医療連携手帳の整備を進めております。
 手帳には、診療計画や診療記録などが記載され、患者が診察や検査など医療機関を受診する際に提示することで、専門医とかかりつけ医が情報共有でき、より適切な診療が可能となります。
 また、患者自身も、今後の診療計画を知ることで安心して治療に臨むことができます。
 手帳を普及させることにより、切れ目のないがん医療の提供を推進するとともに、がん患者の療養生活の質の向上を図ってまいります。
 次に、がん登録についてでありますが、都では、拠点病院及び認定病院におきまして院内がん登録を実施しており、今年度、実務者連絡会を設置し、レベルアップを図る研修を実施するなど、精度向上に努めております。
 また、院内がん登録を進め、将来的な地域がん登録につなげるため、本年一月、東京都がん登録推進検討会を立ち上げました。
 来年度は、がん登録センターを創設し、拠点病院等における登録データの収集、分析を行うなど、都におけるがん登録の推進を図ってまいります。
 続きまして、子育て支援について、まず保育サービスの拡充についてでありますが、都は平成二十年度から保育サービス拡充緊急三カ年事業に取り組み、保育ニーズの増大に対応してまいりました。
 来年度以降は、少子化打破緊急対策事業の実施期間であります平成二十四年度までの三年間で、保育サービスの利用児童数を二万二千人ふやすこととしております。
 パートタイム労働者向け保育サービスの拡大などの新たな取り組みを行い、引き続き、保育サービスの拡充に積極的に取り組んでまいります。
 続きまして、認証保育所の定員拡充についてでありますが、待機児童の解消に向けては、新規施設の設置だけではなく、既存施設の定員規模の拡充は有効な方策でございます。
 このため、来年度から、認証保育所の運営費補助単価の最も高い適用区分を、従来の定員三十人までから四十人までに広げることで、既存施設の定員拡充や規模の大きい認証保育所の設置を促進してまいります。
 次に、病児、病後児保育施設への都支援についてでありますが、病児、病後児保育事業は、本年度、これまでの定額補助からサービス提供実績に応じた補助となり、利用者ニーズへの積極的な対応を促す仕組みに改善をされました。
 また、都は、病児、病後児保育施設が、地域の子育て支援施設等に、病気の子どものケアに関する普及啓発を図る事業や、子どもの症状に応じて保育と送迎を組み合わせる等の事業を行う場合に独自の補助を行っております。
 今後とも、区市町村と連携して、施設の積極的な取り組みを促進し、病児、病後児保育施設の拡充に取り組んでまいります。
 次に、チャレンジ支援貸付事業の所得要件についてでありますけれども、本事業は、低所得世帯の子どもを支援するため、学習塾等の受講などに必要な資金を貸し付ける事業であり、賃貸住宅へ入居している方の所得につきましては、一定額を限度に家賃を収入から減額して算定するなど、利用者の生活実態により即した運用を行っております。
 また、国の来年度予算案には、子ども手当の創設や公立高校の授業料無償化など、子育てに関する新たな支援策が盛り込まれているところであり、本事業の所得要件のさらなる緩和については、慎重に対応すべきと考えております。
 最後になりますが、虐待を受けた児童への支援等についてであります。
 児童相談所は、児童虐待の通告に基づき、迅速に児童の安全を確認し、必要な場合には親から分離して一時保護を行います。
 性的虐待に限らず、虐待を受けた児童に対しましては、児童精神科医や心理職などによる心のケアを行い、児童の心身の回復に努めているところであります。
 また、保護者に対しましては、精神科医等からの面接指導やグループカウンセリングなどにより、みずからの問題に向き合えるよう指導し、家族関係の改善に向けて継続的な支援を行っております。
   〔青少年・治安対策本部長倉田潤君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(倉田潤君) 三点のご質問についてお答えいたします。
 まず、家庭内のルールづくりを促進するための講座に参加できない保護者等に対する取り組みでありますが、都は、携帯電話やインターネット等の利用に関する家庭内でのルールづくりを促進するため、ファミリeルール講座を実施しております。
 保護者の受講機会の増加を図るため、来年度は、その実施規模の拡大や、就労等により平日の参加が困難な保護者に配慮した夜間、休日における受講機会の拡大などに取り組むこととしております。
 さらに、同講座への自発的参加が期待できない保護者層が存在することにかんがみ、携帯電話等事業者に、青少年が使用する携帯電話の契約時における、インターネット利用に伴う危険性等の説明を促すなど、広く保護者一般に対する啓発機会の拡大を図ることとしております。
 次に、青少年健全育成条例改正案における「犯罪若しくは被害を誘発することを容易にする情報」についてでありますが、この情報の典型例としては、犯罪の具体的な実行の呼びかけや、いわゆる援助交際の相手を求める書き込みを想定しております。
 また、いわゆる青少年インターネット環境整備法における青少年有害情報の定義、これは、インターネットを利用して公衆の閲覧に供されている情報であって青少年の健全な育成を著しく阻害するものでありますが、この解釈を拡大するものではなく、その個別具体的な判断は、法と同様、事業者の判断にゆだねられているものであります。
 なお、この情報に係る規定は、法施行後も、フィルタリングにより除外されていないサイトを通じて青少年が犯罪被害に遭う事例が見られることを踏まえ、関係事業者に対し、青少年の被害防止に向けたフィルタリングの実効性確保に関する一層の取り組みを促すために置くものであります。
 次に、児童ポルノの単純所持の禁止に関する国への要請についてでありますが、第二十八期青少年問題協議会の答申においては、頒布や販売等の目的以外でのいわゆる単純所持について、処罰化の対象となる行為等の検討に当たっては、意図せざる所持が処罰の対象とならないよう配慮することは当然などとした上で、都において国に対し処罰化の実現に向けた迅速な取り組みを要望すべき旨が示されております。
 児童ポルノの単純所持に限らず、免罪の絶無を期すべきことは当然であり、都としては、答申を踏まえ、国において処罰の対象となる行為等の定義について十分に検討するなど、免罪の防止にも留意した上で、児童ポルノの根絶に向け、単純所持の処罰化を早期に実現するよう、国に対して求めてまいります。
   〔東京オリンピック・パラリンピック   招致本部長荒川満君登壇〕

○東京オリンピック・パラリンピック招致本部長(荒川満君) 五点の質問にお答えいたします。
 まず、招致活動報告書についてでございますが、この報告書は、平成十七年に知事が正式に都議会に招致を表明した時点をスタートに、昨年のIOC総会までの四年にわたる活動を記録したものでございます。質問でご指摘のあった点につきましても、可能な限り記載をしております。
 具体的に申し上げますと、まず、メーンスタジアム等の主要施設に関しましては、平成十八年四月に公表いたしました当初の配置計画図も含めて、検討、決定過程を記載しております。
 また、ロンドン市との政策提携は、オリンピック招致に直接関係はございませんが、報告書では、知事のロンドン市及びロンドン・オリンピック組織委員会訪問時に、招致活動について情報交換したことを記載しております。
 また、瑞穂町の招致決議に関しましては、決議をいただいている旨を記載しております。
 また、メディアセンターに関しましては、北京オリンピック時の視察の成果を立候補ファイルの作成に生かしたこと並びに立候補ファイルでの予定地変更とその理由を、それぞれ記載をしております。
 また、皇室の関与に関しては、宮内庁長官の見解などを含め、経過を記載しております。
 このほか、会場建設や運営に関する詳細な計画や膨大な保証書を初めとしたIOCの多大な要求への対応、各界の総力を挙げた評価委員会の受け入れ、IOC総会などについては、関係者の努力や試行錯誤の過程が読み取れるよう、可能な限り詳しく記載いたしました。
 そして、それを踏まえて、招致活動の成果と課題を分析して、今後に向けての提言を記述しております。
 このように、この報告書は、招致活動を従来になく詳細に記録し、分析、検証、総括したものでございまして、将来に引き継がれ、日本の再挑戦の際の海図となることを期待するものでございます。
 次に、国際プロモーション活動についてでございますが、東京は、すべての主要な国際スポーツ大会や国際スポーツ会議を最大限に活用して、招致委員会幹部がチームプレーにより直接プロモーション活動を展開し、約百人に及ぶすべてのIOC委員と接点を持つようにいたしました。
 その中で、キーマンである知事には、IOC委員に東京の開催計画や都市の魅力を効果的に訴えるため、国際舞台での活動を戦略的に行ってもらうことが作戦でありました。
 具体的には、招致過程において最も重要なIOC主催の公式行事に一番の重点を置きまして、まず、昨年四月の評価委員会対応を皮切りに、六月のローザンヌでのテクニカルプレゼンテーション、そして十月のコペンハーゲンでのIOC総会において、知事みずから先頭に立って、プレゼンテーションのほか、IOC委員との個別面会を積極的に実施いたしました。
 また、八月の世界陸上ベルリン大会では、ベルリン市から姉妹友好都市の首長として招待されたという機会を最大限に活用しまして、知事は多くのIOC委員に東京招致を訴えました。
 一方、大陸別のオリンピック委員会の総会については、いずれもIOC主催ではなく、また、主な出席者は、IOC委員というよりは各国のオリンピック委員会メンバーであるため、これに対しては、国際スポーツ界に精通した招致委員会幹部が分担してプレゼンテーションに対応いたしました。
 そのうち、シンガポールでのアジア・オリンピック評議会総会については、日本がアジアの一員であり、アハマド会長による東京招致への支持表明が期待できたことから、特に知事が出席してプロモーション活動を行ったものでございます。
 次に、過去の招致活動のノウハウについてでございます。
 以前ご答弁申し上げたとおり、招致活動は、過去の経験や他都市の動向の分析が重要であり、このことは十分認識しておりました。
 そこで、大阪や長野などの過去の報告書を入手して分析しますとともに、国内、海外における開催都市、立候補都市の招致関係者とも直接面会するなどして、その後の招致活動に役立てるように努めました。
 そこでは、開催計画の内容、国による財政保証、評価委員会視察時における交通渋滞への対応などの課題を把握することができました。
 しかしながら、IOCからのさまざまな要求事項や国際競技連盟との調整事項、IOC委員に対するプロモーション活動の方法などが記録として整理していなかったため、東京の招致活動に役立てるのに必ずしも十分ではなかったのが実情でございます。
 そのため、本報告書においては、今回の貴重な経験や課題を将来にしっかりと継承するため、可能な限り記載して残すことといたしました。
 なお、IOC委員や他都市の動向の把握につきましても、知事を初め国際招致チームが国際競技大会や国際スポーツ会議に参加してIOC委員と個別面会し、また、在外公館や専門コンサルタントを通じて情報収集、分析を行い、実際の戦略づくりに生かしております。
 次に、これまでの都議会における議論の報告書への反映についてでございますが、可能な限り項目を立てて反映させております。
 まず、区市町村との共同事業は、招致機運の醸成とともに、招致にかかわらずスポーツへの関心を高め、オリンピズムの普及啓発を図ることを目的として実施してまいりました。
 このうち、開催都市決定後に実施した一事業については、オリンピズムの普及という目的を最大限に達成するため、地元自治体の意向を踏まえ、その地域最大のイベントと時期を合わせて実施したものでございます。
 報告書には、この一事業を含め、共同推進事業の実績や経費、参加者から寄せられた感動の声などについて記載をいたしております。
 また、オリンピック学習読本については、平成二十年九月から順次配布いたしまして、平成二十一年、翌年には、学習指導要領にオリンピック教育が取り入れられましたことに合わせて、すべての都内公立小、中、高等学校を初め、多くの学校に配布しており、また、活用されている旨を記載しております。
 加えて、IOC総会の経費につきましても、項目別に金額の内訳を明らかにするとともに、項目に沿って実施した事業内容を説明しております。
 このように、招致推進活動経費の全体を示すなど、都議会での議論を踏まえて招致活動報告書を作成しております。
 最後に、招致委員会の借入金についてであります。
 招致委員会は、当初、民間から五十億円の資金を調達することを目標としておりましたが、百年に一度の世界的な金融危機と、それに伴う景気後退の影響を受け、民間からの寄附金、協賛金収入が当初の目標に到達しなかったため、経費の圧縮を図るとともに、値引きなどの協力を受けた上で、なお不足する六億九千万円の資金を株式会社電通から借り入れることとしました。
 今後、招致委員会は、報告書にも記載してありますように、蓄積された多くの財産を活用しまして、東京、日本のスポーツ振興のための民間ベースによる事業を行っていくことを現在検討しており、こうした活動に賛同する企業、団体からの寄附金収入や事業収入により借入金を返済していく予定でございます。
 最終的な法人の意思は、今後開催される招致委員会理事会の中で決定される予定でございます。
 なお、借入金返済のために東京都が公費の投入を行うことはございません。
   〔百二十三番大沢昇君登壇〕

○百二十三番(大沢昇君) それでは、再質問をさせていただきます。
 築地市場の移転問題について、石原知事は、民主党に妙案があるのであれば、党として責任を持って出すべきだと答えましたが、全くの筋違いだと思います。
 私たち議会の役割の一つとして、都民の声を伝え、それを実現させることだと認識をしています。都民の声を無視し、移転を前提に既成事実を積み重ねている執行機関こそ批判されるべきであります。
 民主党は、かねてより、関係団体の合意を得るべく、執行機関に再三取り組みを求めてきましたが、いまだに六団体の合意は得られておりません。
 また、答弁で、過去に一度否定された現在地再整備について、早期に業界の合意を得ることは困難といっていますが、しかし、移転合意派の方々の多くは、現在地再整備は無理とのかたくなな都の姿勢が一方的に伝えられているからではないのでしょうか。
 加えて、大家である東京都がいっているのだからやむを得ないと、市場関係者からの声も聞かれます。
 知事の答弁で、私も当時議会に身を置いていたのだから認識しているといわれましたが、当初、市場関係者の声の大多数は、築地での営業継続を望んでいたと記憶をしています。
 石原知事もびっくりしたというように、高濃度の土壌汚染が見つかった段階で、改めて現在地再整備ができないかどうかを再検討するべきだったのではないでしょうか。
 既に二十一世紀築地プロジェクトを初め民間建築家からも、具体的かつ実現可能であると思われる案が示されており、今後も、こうした案が提案されることが予想されます。
 また、答弁での、どのような再整備案も机上の空論との答弁は聞き流すことができません。発言の撤回を求めます。
 専門家会議や技術会議でも見られたように、在野には多くのアイデア、技術があふれています。改めて現在地再整備の再検討について、石原知事の見解を伺います。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 政治家にとって確かに選挙というのは大事なものでしょうが、選挙のための公約かマニフェストか知りませんが、そういった余り論拠もなしにとにかく、八ッ場もそのいい例ですけれども、打ち出したマニフェストの言葉にがんじがらめにならない方がいい。迷惑するのは都民ですよ。
 あなたは、こういうプロジェクトに関して、事実というものの堆積というものを踏まえて物をいえとおっしゃったけれども、まさにそうじゃないですか。四百億という巨費を投じて、あそこでとにかくやろうと思って失敗したんだ。完全にこれはむだをしたんですよ。それを踏まえて、共産党はどうだったか知りませんけど、民主党も含めて、とにかく豊洲に移そうという合意をしたんだ。ところが、そこへとんでもない物質が出てきたんで、みんなびっくりした。
 だけど、これは何とかなるか、ならないかということで、日本の最高権威の学者たちを集めて検証してもらって、できますと、既にもう成功した事例もあるから、事例を踏まえて、とにかく例があるということじゃ事は済まないでしょうから、とにかくその方法を使ってもう一回豊洲で実験をしてみようと。六月にその結果が出るんですよ。出たら、それを踏まえて飛び越しゃいいじゃないですか。

○議長(田中良君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時三十八分休憩