平成二十二年東京都議会会議録第一号

平成二十二年二月二十四日(水曜日)
 出席議員 百二十六名
一番小林 健二君
二番加藤 雅之君
三番三宅 正彦君
四番吉住 健一君
五番桜井 浩之君
六番野田かずさ君
七番福士 敬子君
八番土屋たかゆき君
九番山内れい子君
十番くりした善行君
十一番中村ひろし君
十二番西沢けいた君
十三番田中  健君
十四番関口 太一君
十五番畔上三和子君
十六番斉藤やすひろ君
十七番栗林のり子君
十八番遠藤  守君
十九番伊藤 興一君
二十番鈴木 章浩君
二十一番きたしろ勝彦君
二十二番田中たけし君
二十三番鈴木 隆道君
二十四番神林  茂君
二十五番星 ひろ子君
二十六番小山くにひこ君
二十七番柳ヶ瀬裕文君
二十八番淺野 克彦君
二十九番新井ともはる君
三十番佐藤 由美君
三十一番たきぐち学君
三十二番田の上いくこ君
三十三番島田 幸成君
三十四番しのづか元君
三十五番大島よしえ君
三十六番大松あきら君
三十七番上野 和彦君
三十八番吉倉 正美君
三十九番松葉多美子君
四十番早坂 義弘君
四十一番高木 けい君
四十二番石森たかゆき君
四十三番高橋 信博君
四十四番中屋 文孝君
四十五番村上 英子君
四十七番西崎 光子君
四十八番滝沢 景一君
四十九番中谷 祐二君
五十番笹本ひさし君
五十一番山下ようこ君
五十二番神野 吉弘君
五十三番鈴木 勝博君
五十四番興津 秀憲君
五十五番岡田眞理子君
五十六番伊藤 ゆう君
五十七番古館 和憲君
五十八番かち佳代子君
五十九番中山 信行君
六十番高倉 良生君
六十一番橘  正剛君
六十二番谷村 孝彦君
六十三番野上 純子君
六十四番高橋かずみ君
六十五番山加 朱美君
六十六番山崎 一輝君
六十七番菅  東一君
六十八番宇田川聡史君
六十九番山田 忠昭君
七十番林田  武君
七十一番原田  大君
七十二番佐藤 広典君
七十三番尾崎 大介君
七十四番松下 玲子君
七十五番山口  拓君
七十六番伊藤まさき君
七十七番野上ゆきえ君
七十八番西岡真一郎君
七十九番今村 るか君
八十番吉田康一郎君
八十一番たぞえ民夫君
八十二番清水ひで子君
八十三番小磯 善彦君
八十四番長橋 桂一君
八十五番藤井  一君
八十六番ともとし春久君
八十七番三宅 茂樹君
八十八番遠藤  衛君
八十九番吉原  修君
九十番野島 善司君
九十一番鈴木あきまさ君
九十二番三原まさつぐ君
九十三番田島 和明君
九十四番樺山たかし君
九十五番斉藤あつし君
九十六番泉谷つよし君
九十七番くまき美奈子君
九十八番大西さとる君
九十九番増子 博樹君
百番いのつめまさみ君
百一番門脇ふみよし君
百二番小沢 昌也君
百三番花輪ともふみ君
百四番大津 浩子君
百五番大山とも子君
百六番鈴木貫太郎君
百七番東村 邦浩君
百八番中嶋 義雄君
百九番木内 良明君
百十番古賀 俊昭君
百十一番こいそ 明君
百十二番服部ゆくお君
百十三番川井しげお君
百十四番吉野 利明君
百十五番宮崎  章君
百十六番比留間敏夫君
百十七番相川  博君
百十八番石毛しげる君
百十九番大塚たかあき君
百二十番和田 宗春君
百二十一番山下 太郎君
百二十二番酒井 大史君
百二十三番大沢  昇君
百二十四番中村 明彦君
百二十五番馬場 裕子君
百二十六番田中  良君
百二十七番吉田 信夫君

 欠席議員 一名
四十六番 矢島 千秋君

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事菅原 秀夫君
副知事佐藤  広君
副知事猪瀬 直樹君
教育長大原 正行君
東京都技監建設局長兼務道家 孝行君
知事本局長吉川 和夫君
総務局長中田 清己君
財務局長村山 寛司君
主税局長熊野 順祥君
警視総監池田 克彦君
生活文化スポーツ局長秋山 俊行君
都市整備局長河島  均君
環境局長有留 武司君
福祉保健局長安藤 立美君
産業労働局長前田 信弘君
港湾局長比留間英人君
会計管理局長新田 洋平君
交通局長金子正一郎君
水道局長尾崎  勝君
消防総監新井 雄治君
下水道局長松田 二郎君
青少年・治安対策本部長倉田  潤君
東京オリンピック・パラリンピック招致本部長荒川  満君
病院経営本部長中井 敬三君
中央卸売市場長岡田  至君
選挙管理委員会事務局長矢口 貴行君
人事委員会事務局長泉本 和秀君
労働委員会事務局長関  敏樹君
監査事務局長三橋  昇君
収用委員会事務局長野口  孝君
包括外部監査人鈴木 啓之君

二月二十四日議事日程第一号
第一 第一号議案
平成二十二年度東京都一般会計予算
第二 第二号議案
平成二十二年度東京都特別区財政調整会計予算
第三 第三号議案
平成二十二年度東京都地方消費税清算会計予算
第四 第四号議案
平成二十二年度東京都小笠原諸島生活再建資金会計予算
第五 第五号議案
平成二十二年度東京都母子福祉貸付資金会計予算
第六 第六号議案
平成二十二年度東京都心身障害者扶養年金会計予算
第七 第七号議案
平成二十二年度東京都中小企業設備導入等資金会計予算
第八 第八号議案
平成二十二年度東京都農業改良資金助成会計予算
第九 第九号議案
平成二十二年度東京都林業・木材産業改善資金助成会計予算
第十 第十号議案
平成二十二年度東京都沿岸漁業改善資金助成会計予算
第十一 第十一号議案
平成二十二年度東京都と場会計予算
第十二 第十二号議案
平成二十二年度東京都都営住宅等事業会計予算
第十三 第十三号議案
平成二十二年度東京都都営住宅等保証金会計予算
第十四 第十四号議案
平成二十二年度東京都都市開発資金会計予算
第十五 第十五号議案
平成二十二年度東京都用地会計予算
第十六 第十六号議案
平成二十二年度東京都公債費会計予算
第十七 第十七号議案
平成二十二年度東京都多摩ニュータウン事業会計予算
第十八 第十八号議案
平成二十二年度東京都臨海都市基盤整備事業会計予算
第十九 第十九号議案
平成二十二年度東京都病院会計予算
第二十 第二十号議案
平成二十二年度東京都中央卸売市場会計予算
第二十一 第二十一号議案
平成二十二年度東京都都市再開発事業会計予算
第二十二 第二十二号議案
平成二十二年度東京都臨海地域開発事業会計予算
第二十三 第二十三号議案
平成二十二年度東京都港湾事業会計予算
第二十四 第二十四号議案
平成二十二年度東京都交通事業会計予算
第二十五 第二十五号議案
平成二十二年度東京都高速電車事業会計予算
第二十六 第二十六号議案
平成二十二年度東京都電気事業会計予算
第二十七 第二十七号議案
平成二十二年度東京都水道事業会計予算
第二十八 第二十八号議案
平成二十二年度東京都工業用水道事業会計予算
第二十九 第二十九号議案
平成二十二年度東京都下水道事業会計予算
第三十 第三十号議案
東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例
第三十一 第三十一号議案
特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十二 第三十二号議案
市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十三 第三十三号議案
東京都区市町村振興基金条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例
第三十四 第三十四号議案
東京都区市町村振興基金条例の一部を改正する条例
第三十五 第三十五号議案
都と特別区及び特別区相互間の財政調整に関する条例の一部を改正する条例
第三十六 第三十六号議案
平成二十一年度分の都と特別区及び特別区相互間の財政調整の特例に関する条例
第三十七 第三十七号議案
東京都知事等の給料等に関する条例の一部を改正する条例
第三十八 第三十八号議案
東京都知事の給料等の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十九 第三十九号議案
東京都公営企業の管理者の給料等に関する条例の一部を改正する条例
第四十 第四十号議案
東京都附属機関の構成員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第四十一 第四十一号議案
職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
第四十二 第四十二号議案
職員の育児休業等に関する条例の一部を改正する条例
第四十三 第四十三号議案
職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第四十四 第四十四号議案
東京都職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第四十五 第四十五号議案
職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例
第四十六 第四十六号議案
非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第四十七 第四十七号議案
東京都職員定数条例の一部を改正する条例
第四十八 第四十八号議案
東京都人事委員会委員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第四十九 第四十九号議案
東京都選挙管理委員の報酬及び費用弁償条例の一部を改正する条例
第五十 第五十号議案
東京都選挙管理委員会関係手数料条例の一部を改正する条例
第五十一 第五十一号議案
東京都監査委員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第五十二 第五十二号議案
東京都議会議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部を改正する条例
第五十三 第五十三号議案
東京都都税条例の一部を改正する条例
第五十四 第五十四号議案
東京都固定資産評価審査委員会の委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第五十五 第五十五号議案
東京都固定資産評価員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第五十六 第五十六号議案
東京都収用委員会委員等の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第五十七 第五十七号議案
東京都美術館条例の一部を改正する条例
第五十八 第五十八号議案
東京都写真美術館条例の一部を改正する条例
第五十九 第五十九号議案
学校職員の定数に関する条例の一部を改正する条例
第六十 第六十号議案
学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
第六十一 第六十一号議案
東京都教育委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第六十二 第六十二号議案
東京都教育委員会教育長の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第六十三 第六十三号議案
学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第六十四 第六十四号議案
学校職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第六十五 第六十五号議案
東京都教育委員会職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第六十六 第六十六号議案
都立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第六十七 第六十七号議案
東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
第六十八 第六十八号議案
東京都都市整備局関係手数料条例の一部を改正する条例
第六十九 第六十九号議案
東京都高齢者円滑入居賃貸住宅登録手数料条例の一部を改正する条例
第七十 第七十号議案
東京都福祉保健局関係手数料条例の一部を改正する条例
第七十一 第七十一号議案
東京都原子爆弾被爆者等の援護に関する条例の一部を改正する条例
第七十二 第七十二号議案
心身障害者の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例
第七十三 第七十三号議案
東京都国民健康保険調整交付金条例の一部を改正する条例
第七十四 第七十四号議案
東京都児童福祉施設条例の一部を改正する条例
第七十五 第七十五号議案
東京都身体障害者更生援護施設条例の一部を改正する条例
第七十六 第七十六号議案
東京都知的障害者援護施設条例の一部を改正する条例
第七十七 第七十七号議案
東京都障害者支援施設等に関する条例
第七十八 第七十八号議案
東京都立病院条例の一部を改正する条例
第七十九 第七十九号議案
東京都が東京信用保証協会に対し交付する補助金に係る回収納付金を受け取る権利の放棄に関する条例の一部を改正する条例
第八十 第八十号議案
東京都産業労働局関係手数料条例の一部を改正する条例
第八十一 第八十一号議案
東京海区漁業調整委員会委員及び東京都内水面漁場管理委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第八十二 第八十二号議案
東京都海上公園条例の一部を改正する条例
第八十三 第八十三号議案
東京都営空港条例の一部を改正する条例
第八十四 第八十四号議案
東京都労働委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第八十五 第八十五号議案
東京都駐車場条例の一部を改正する条例
第八十六 第八十六号議案
東京都道路占用料等徴収条例の一部を改正する条例
第八十七 第八十七号議案
東京都霊園条例の一部を改正する条例
第八十八 第八十八号議案
東京都葬儀所条例の一部を改正する条例
第八十九 第八十九号議案
東京都河川流水占用料等徴収条例の一部を改正する条例
第九十 第九十号議案
東京都公営企業職員の給与の種類及び基準に関する条例の一部を改正する条例
第九十一 第九十一号議案
インターネット端末利用営業の規制に関する条例
第九十二 第九十二号議案
警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
第九十三 第九十三号議案
東京都公安委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第九十四 第九十四号議案
警視庁職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第九十五 第九十五号議案
東京消防庁の設置等に関する条例の一部を改正する条例
第九十六 第九十六号議案
東京消防庁職員定数条例の一部を改正する条例
第九十七 第九十七号議案
東京消防庁職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第九十八 第九十八号議案
火災予防条例の一部を改正する条例
第九十九 第九十九号議案
東京都美術館(二十一)改修工事請負契約
第百 第百号議案
東京都子ども家庭総合センター(仮称)(二十一)新築工事請負契約
第百一 第百一号議案
都立江東地区第二養護学校(仮称)(二十一)改築工事請負契約
第百二 第百二号議案
東京都美術館(二十一)改修電気設備工事請負契約
第百三 第百三号議案
東京都美術館(二十一)改修空調設備工事請負契約
第百四 第百四号議案
環二朝潮運河橋りょう(仮称)下部工事(二十一 一―環二築地)請負契約
第百五 第百五号議案
包括外部監査契約の締結について
第百六 第百六号議案
東京都と神奈川県との境界にわたる町田市と相模原市との境界変更について
第百七 第百七号議案
境界変更に伴う財産処分に関する協議について
第百八 第百八号議案
全国自治宝くじ事務協議会への相模原市の加入及びこれに伴う全国自治宝くじ事務協議会規約の一部の変更について
第百九 第百九号議案
土地の買入れについて
第百十 第百十号議案
平成二十二年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担について
第百十一 第百十一号議案
平成二十一年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担の変更について
第百十二 第百十二号議案
平成二十一年度東京都一般会計補正予算(第四号)
第百十三 第百十三号議案
平成二十一年度東京都特別区財政調整会計補正予算(第一号)
第百十四 第百十四号議案
平成二十一年度東京都公債費会計補正予算(第一号)
第百十五 第百十五号議案
東京都緊急雇用創出事業臨時特例基金条例の一部を改正する条例

   午後一時開会・開議

○議長(田中良君) ただいまから平成二十二年第一回東京都議会定例会を開会いたします。
 これより本日の会議を開きます。

○議長(田中良君) まず、議席の変更を行います。
 議席変更の申し出がありますので、会議規則第二条第三項の規定により、お手元配布の議席変更表のとおり、議席の一部を変更いたします。
(別冊参照)

○議長(田中良君) 次に、去る一月二十四日執行されました、島部における東京都議会議員の補欠選挙において当選されました三宅正彦君の議席を、会議規則第二条第二項の規定により、三番に指定いたします。

○議長(田中良君) 次に、会議録署名議員の指名を行います。
 会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において
   五番   桜井 浩之君 及び
   六十七番 菅  東一君
を指名いたします。

○議長(田中良君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。

○議事部長(鈴木省五君) 平成二十二年二月十七日付東京都告示第百五十一号をもって、知事より、本定例会を招集したとの通知がありました。
 また、同日付で、本定例会に提出するため、議案百十五件の送付がありました。
 次に、知事及び監査委員並びに各行政委員会より、平成二十二年中における東京都議会説明員及び説明員の委任について、地方自治法第百二十一条及び会議規則第四十二条の規定に基づき、それぞれ通知がありました。
 次に、包括外部監査人より、平成二十二年二月十六日付で、平成二十一年度包括外部監査報告書の提出がありました。
 次に、知事より、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づく専決処分について、報告が三件ありました。
 内容は、東京都海上公園条例の一部を改正する条例外三件の報告について、訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告について並びに東京都高等学校・大学等進学奨励事業に係る貸付金の償還免除に関する報告についてであります。
 次に、監査委員より、平成二十一年行政監査、平成二十一年工事監査、平成二十一年財政援助団体等監査、例月出納検査及び平成二十二年随時監査の結果について、それぞれ報告がありました。
(別冊参照)

○議長(田中良君) 次に、新たに当選されました三宅正彦君をご紹介いたします。
 三番三宅正彦君。
   〔三番三宅正彦君登壇〕

○三番(三宅正彦君) このたびの島部選挙区の補欠選挙で選出されました三宅正彦でございます。
 先輩各位のご指導をいただきながら、一生懸命、議会活動に専心をいたしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(田中良君) 以上をもって紹介は終わりました。

○議長(田中良君) 次に、文書質問に対する答弁書について申し上げます。
 平成二十一年第四回定例会に提出されました文書質問に対する答弁書は、質問趣意書とともに送付いたしておきました。ご了承願います。
文書質問趣意書及び答弁書は本号末尾に掲載〕

○議長(田中良君) 次に、警視総監米村敏朗君の退任に伴い、新たに池田克彦君が警視総監に就任いたしましたので、ご紹介いたします。
 警視総監池田克彦君。
   〔警視総監池田克彦君登壇〕

○警視総監(池田克彦君) 去る一月十八日付で警視総監を命ぜられました池田でございます。
 東京都議会の皆様方には、平素から警視庁の運営につきまして格別のご理解とご高配を賜り、心から厚く御礼申し上げます。
 さて、都内の治安情勢につきましては、警視庁の総力を挙げて取り組んでおります。犯罪抑止総合対策の推進や東京都を初めとする関係機関及び都民の皆様方のご協力によりまして、全刑法犯の認知件数が七年連続で減少するなど、着実に回復が図られているところでございます。
 しかしながら、その一方で、振り込め詐欺やひったくりの撲滅に向けた取り組みを初め、重要未解決事件の早期解決、暴力団並びに来日外国人犯罪組織対策、さらには本年十一月に開催予定のAPEC首脳会議に向けた警備諸対策等、さまざまな治安課題が山積しております。
 警視庁といたしましては、今後とも都民の視点に立った警察活動を展開するとともに、組織の総合力を発揮した諸対策を強力に推進することにより、安全・安心なまち東京の実現を図ってまいりたいと考えております。
 都議会の皆様方には、より一層のご指導、ご支援を賜りますようお願い申し上げまして、あいさつとさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

○議長(田中良君) 以上をもって紹介は終わりました。

○議長(田中良君) 次に、閉会中の常任委員の所属変更について申し上げます。
 去る一月二十八日付をもって、吉野利明君より、財政委員から警察・消防委員へ常任委員の所属変更の申し出がありましたので、委員会条例第五条第三項ただし書きの規定により、議長において、同日付をもってこれを許可いたしました。

○議長(田中良君) 次に、閉会中の常任委員の選任について申し上げます。
 委員会条例第五条第四項の規定により、去る一月二十八日付をもって、議長において、新たに当選されました三宅正彦君を財政委員に指名いたしました。

○議長(田中良君) 次に、閉会中のオリンピック・パラリンピック招致特別委員の辞任及び選任について申し上げます。
 去る二月十日付をもって相川博君より、また二月十八日付をもって西崎光子さんより、それぞれ辞任願が提出されましたので、委員会条例第十一条第一項ただし書きの規定により、議長において、それぞれ同日付をもってこれを許可いたしました。
 なお、委員の欠員を補充するため、委員会条例第五条第四項の規定により、議長において、二月十日付をもって原田大君を、また、二月十八日付をもって星ひろ子さんを指名いたしました。

○議長(田中良君) 次に、閉会中の株式会社新銀行東京に関する特別委員の辞任及び選任について申し上げます。
 去る二月十日付をもって、矢島千秋君より辞任願が提出されましたので、委員会条例第十一条第一項ただし書きの規定により、議長において、同日付をもってこれを許可いたしました。
 なお、委員の欠員を補充するため、委員会条例第五条第四項の規定により、議長において、同日付をもって、吉原修君を指名いたしました。

○議長(田中良君) 次に、東京都議会海外調査団について申し上げます。
 本議会において、去る一月三十一日から二月九日まで、ロンドン、ユバスキュラ、ヘルシンキ及びコペンハーゲンへ、また二月三日から九日まで、シンガポール及びシドニーへ、それぞれ海外調査団を派遣いたしました。
 海外調査団を代表いたしまして、それぞれ報告のため発言の申し出がありますので、これを許します。
 百二十五番馬場裕子さん。
   〔百二十五番馬場裕子君登壇〕

○百二十五番(馬場裕子君) 平成二十二年一月三十一日から二月九日まで、都議会民主党は、馬場裕子、大津浩子、大西さとる、岡田眞理子、興津秀憲の五名で海外調査を行いました。
 訪問先はロンドン、ヘルシンキ、コペンハーゲン等で、教育を中心に、交通、消費者施策など、充実した調査、視察をしてまいりました。
 団員五名が同じ研修や経験ができましたことは、五倍の知識と感性を養うことができたと深く感謝しております。詳細は、後日、報告書として提出をさせていただきます。
 まず、フィンランドでは、教員養成大学として有名なユバスキュラ大学、附属小中高校、そして一般の総合学校、教育研究所などを訪問し、PISAにおけるすぐれた結果の理由を検証してまいりました。
 その一つは、教員養成の充実です。教員は、大学修士課程修了が条件であり、中でも大学一年生から始める教育実習に多くの時間がかけられておりました。
 二つ目は、子ども一人一人のニーズに対応した教育です。支援を必要とする子どもには、サポートする大人が必ずつくといった人的支援が確立されております。
 三つ目は、子どもの学習のつまずきに即対応していることです。わからない、できない子どもには、学習が定着するまで教えることが当然として行われており、インクルーシブ教育が実践されていると確信させられました。どの学校も授業中の私語がなく、子どもたちが集中している様子から、この国の教育レベルの高さが認識できました。
 デンマークの教育の特徴は、平等と公正の理念に基づいていることでした。
 教会立の私立校や公立幼稚園・小学校と託児所、障害児施設を視察してまいりました。障害の有無にかかわらず、どの子も平等に学習する権利があることが根づいておりました。自分の進む道は自分で決めるという、自分の能力に合った教育や職業を選ぶ観点を持って成長し、進学率は、普通高校と職業学校の割合が五〇対五〇であるとのことでした。
 職業教育の高さはフィンランドでもデンマークでも同様ですが、ほかにも両国に共通していることでは、九年間の一貫教育カリキュラムと六歳の子どもたちへの就学前教育、プリスクールの充実でした。我が国も、縦割りの教育行政から個の発達を連携して支える仕組みへの変革が急がれます。
 イギリスでは、公立学校と、歴史と伝統を誇る私立全寮制男子校、ハロウ校を訪問いたしました。
 両校に共通していた点は、世界に目を向けた積極的で特徴のある教育観でした。イギリスならではと感じました。今後、都立高校との留学生交換など学校間交流が進むよう、支援してまいります。
 次に、ロンドン及びコペンハーゲンで交通政策調査をいたしました。
 以前は、双方とも中世のまち並みのため、道路拡幅が望めない状況にあり、市内中心部の交通渋滞の解消が大きな課題でありました。そこで、ロンドンは渋滞課金制度を導入し、バス路線の充実などにより、市内中心部に自家用車の流入規制を実施しました。
 一方、コペンハーゲンでは、自転車専用道路の整備など、自動車から自転車に乗りかえることを市民が選択するような施策を採用いたしました。
 さらに、新しくメトロを建設するといった公共交通の充実政策を同時に実施したこと、粘り強く市民への協力を訴えたことなどが成功の秘訣であったと感じられました。
 視察中は、三十年ぶりの積雪とのことでしたが、車道よりも自転車道を先に整備するという方針のおかげで、皆、何事もない様子で自転車をこいでおられました。大都会東京の交通政策、自動車利用からの脱却を進める、大胆できめ細かな施策が必要であると痛感いたしました。
 最後に、消費者行政については、十三世紀から消費者行政の歴史を有する英国の技能省BIS、リッチモンド区等を訪問いたしました。
 技能省は、不正取引からの消費者保護を基本原則として、年末から二年間、新パイロット事業を開始するとのことでした。これは消費者権利に基づき、行政機関が消費者と企業の間に入り自発的賠償金を促して、法廷を通さずに和解に導く実験事業です。ヨーロッパ思想には、消費生活ではすべてに公正、安全性が、教育では平等に同レベル教育を受けられる公平性が根底に流れていることが、よくわかりました。
 朝九時になってもまだ薄暗い、そんな北欧の国々の中で、早朝六時十五分から始まる保育園や、夕食は必ずといってもいいほど家族で一緒にする、読み聞かせをする父親、社会全体で子育てをしている姿、生活スタイルそのものの選択に、国民相互の安全・安心への支え合いと信頼感を強く感じました。
 訪問先すべての方々が、私たちの訪問を真摯に受けとめ、熱心に答えようとしてくださったことに深く感謝し、学ぶことが世界を広げる、そうした教育に参画していくことを心に誓いながら帰路につきました。
 今回の視察を通しまして、さまざまな方々からご厚意を賜りました。この場をおかりして心より御礼を申し上げ、海外調査報告とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(田中良君) 続きまして、四十四番中屋文孝君。
   〔四十四番中屋文孝君登壇〕

○四十四番(中屋文孝君) このたび、都議会を代表いたしまして、都議会自由民主党から、私、中屋文孝を団長として、菅東一議員、石森たかゆき議員、桜井浩之議員、山崎一輝議員の五名で、シドニー港、シンガポール港を二月三日から九日までの七日間にわたり調査してまいりましたので、簡潔にその報告をいたします。
 今回の目的は、民間の活用が進むシドニー港と世界トップクラスのシンガポール港を視察し、東京港の今後の発展に資する施策を調査することなどであります。今日、我が国港湾全体の国際競争力が大きく低下する中で、東京港では、港湾の機能強化を図り、国際基幹航路を維持拡大することが大きな課題となっております。そこで、各港の違いをとらえつつ、それぞれの取り組みを探ってまいりました。
 まず、シドニー港であります。
 シドニー港は、後背地にニュー・サウス・ウェールズ州という大消費地を抱え、産業活動や生活に必要な物資の流通を担っております。東京港と同様に、メーンポートの性格を持っております。
 シドニー港にはボタニー湾とシドニー・ハーバーという二つの地区があり、ボタニー湾では、コンテナ物流が主流となる海運動向に対応して、一九七〇年代からコンテナターミナルを整備し、貿易拡大が図られてきました。
 また、シドニー・ハーバーは市の中心部に近く、港と都市機能とがバランスよく配置されていたのが印象的でございました。フェリーやクルーザーなどが多く活用され、世界遺産のシドニー・オペラハウスなど観光の拠点にもなっており、市民や観光客でとてもにぎわっております。
 物流面では、広大な国土の内陸部に海上コンテナを運ぶ方法として、トラック輸送とともに鉄道が活用されております。現在、約百八十万個のコンテナ貨物のうち約二割が鉄道で輸送されておりますが、将来は、この拡大を目指しているとのことであります。
 また、シドニー港では、州政府の出資する会社が港湾整備を行う一方、用地を船会社や民間のターミナル運営会社に貸し付け、港の運営を行っております。同社は、公共的な役割を果たしつつ利益を上げられるビジネスを目指しており、十年、二十年先を見通した港湾経営を行っているとのことでした。
 次は、シンガポール港についてであります。
 取扱貨物のほとんどは船から船に積みかえる、いわゆるトランシップ貨物であり、シンガポール港は、海上輸送の中継基地としてハブポートの役割を担っております。
 世界で一位、二位を争うコンテナ貨物取扱量を誇る港であり、国際ハブポートとしての優位性は、アジアと欧州を結ぶ海上輸送の拠点に位置しているという立地が、大きいものと考えられます。
 トランシップでは、貨物をいかに速く、効率よく、時間厳守で正確に積み込めるかが、かぎとなっております。具体的には、知事がたびたびお話しされておりますように、ITを活用した荷役の自動化や、港湾利用手続のペーパーレス化、ワンストップ化などのさまざまな利用者サービスが政府出資会社によって実施されております。
 シドニー、シンガポールの両港の調査を通じて、東京港における港湾施策の参考になると考えられる点を幾つか申し述べます。
 第一点は、国内におけるコンテナ輸送の効率化に資するため、物流ネットワークの拡充に向けた取り組みの一つとして、鉄道の活用に積極的に取り組むことであります。鉄道輸送は、トラック輸送と比べて環境に優しく、大量輸送も可能であります。国土の状況は違いますが、東京港への貨物集荷を進める上で、道路、海上輸送網の整備とともに、鉄道輸送の拡充が必要と考えます。
 第二点は、民間の創意工夫を生かした港湾経営についてであります。各港では、企業経営のメリットを生かし、物流動向や荷主などの利用者ニーズに敏速、柔軟に対応する経営を目指しております。今後、海外の事例も参考に、我が国に合った港湾経営のあり方を研究することが必要であります。一例として、民営化した東京港埠頭株式会社のさらなる活用などを検討すべきであります。
 第三点として、都民に親しまれる港づくりについてであります。シドニー港のにぎわいや観光拠点としての魅力を目の当たりにして、改めて東京港を見ますと、臨海副都心など水辺を生かしたまちづくりは適切な方向であったと考えます。今後、臨海副都心を世界の人々があこがれる観光拠点として、また、都民がベイエリアに親しむ場としても、さらに魅力を高めていくべきと考えます。
 報告は以上であります。
 詳細につきましては、現在、報告書として取りまとめているところでありますので、本日は、概要のみ口頭にて報告をさせていただきました。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(田中良君) 以上をもって東京都議会海外調査団の報告は終わりました。

○議長(田中良君) 会期についてお諮りいたします。
 今回の定例会の会期は、本日から三月三十日までの三十五日間といたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(田中良君) ご異議なしと認めます。よって、会期は三十五日間と決定いたしました。

○七十四番(松下玲子君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 平成二十一年度包括外部監査結果の報告について、地方自治法第二百五十二条の三十四第一項の規定に基づき、包括外部監査人の説明を求めることを望みます。

○議長(田中良君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(田中良君) ご異議なしと認めます。よって、平成二十一年度包括外部監査結果の報告について、包括外部監査人の説明を求めることに決定いたしました。
 ここで、鈴木啓之包括外部監査人の出席を求めます。
〔包括外部監査人鈴木啓之君入場、着席〕

○議長(田中良君) ただいまご出席いただきました包括外部監査人をご紹介いたします。
 鈴木啓之さんでございます。
   〔包括外部監査人あいさつ〕

○議長(田中良君) 本日は、ご多忙のところ、監査結果報告の説明のためご出席いただき、まことにありがとうございます。

○議長(田中良君) この際、知事より、平成二十二年度施政方針について発言の申し出がありますので、これを許します。
 知事石原慎太郎君。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 平成二十二年第一回都議会定例会の開会に当たりまして、都政の施政方針を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。
 去る十二月十四日、名誉都民である山下八百子さんが逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。
 さて、多くの国民が希望にあふれた新時代となることを期待した二十一世紀は、早くも十年目を迎えました。しかし、かつての期待とは異なり、今、国民は大きな不安感に覆われております。
 これは、サブプライムローン問題に端を発した現下の不況ばかりが原因ではありません。根源的には、日本がどこに進むのかが定かでなく、将来への展望を見出すことができないからなのであります。
 この十年を顧みても、国政は、長期はおろか中期の戦略すら欠いて、政策の優先順位を決めぬまま、場当たりに終始してまいりました。また、我が国は、戦後の長きにわたっていたずらに物質的繁栄を謳歌してこれになれ、心のたがが緩んできております。社会の一員として最低限の義務と責任にすら自覚が薄れた、行政への過剰な期待、モンスターペアレント、モンスターペイシェントに表象される甘えを通り越した横暴までが生まれてきました。しかし、リーダーシップを発揮し、たがを締め直すべき政治は、消費税増税のような痛みを伴う事柄を避けて美辞麗句を並べ、本来は成り立ち得ない高福祉低負担への幻想を振りまくばかりであります。これでは、社会工学上、最も大きな力を託されたはずの政治が、その責務を果たしているとは到底いえません。
 もとより日本は、これまで幾多の試練を乗り越えてきたように、本来すぐれた力を持っております。今に限って停滞しているのは、持てる力を発揮できず不完全燃焼を続けているからにほかなりません。
 国民の不安を真に払拭するのは、政治の甘い約束では決してありません。政治が目指すべき未来図と目標を提示し、それに向けて国民の力を引き出し、大きく束ねることなのであります。
 この十年間、国政の担い手たちが国家の大計を立てぬまま漂流してきたのに対して、都政は、時には苦い薬をも飲みながら、危機に迅速に対処してまいりました。東京という現場にある英知を結集しながら、「十年後の東京」計画で示した未来図の実現を目指し、日本の新たな発展のよすがともなる現実性のある政策を戦略的に展開しております。
 今後も、覚悟を持って冷静に考え、確実に物事を実行するという、国政では失われてしまった心構えを保ちながら、東京を二十一世紀の範となる都市へと進化させてまいります。この国をあるべき航路へと引き戻す羅針盤ともなる気概で力を尽くし、都民、国民の希望を指し示してまいりたいと思います。
 都民、国民の未来への道筋を切り開くためには、国難ともいうべき現下の危機に、正面から立ち向かわなければなりません。我が国経済は、一部に景気持ち直しの動きが見られるものの、引き続くデフレや厳しい雇用情勢など、いまだに行く先は不透明であります。
 東京でも、我が国経済の土台である小零細企業は苦況に置かれ、失業率も高どまりを続けております。現状を座視し、日本のダイナモである東京の経済を毀損させては、この国の再浮上はあり得ません。
 そこで、都市の活動に不可欠な道路の維持補修や施設改修などを景気への即効薬としても積極的に活用し、小零細企業を支え、雇用を創出してまいります。さらに、困難を乗り越えるための手だてを揺るぎなく講じて活路を見出してまいります。
 一昨年以来、小零細企業に対して多岐にわたる支援策を重ねましたが、依然として厳しい経営環境が続いております。このため、来年度も制度融資を積極的に推進し、昨年十月に取り扱いを開始した都独自の新たな融資制度ともあわせて、資金繰りに万全を期してまいります。
 また、危機を乗り越え、その先に新たな発展をつかむためにも、厳しい今こそ企業としての底力を養わなければなりません。都と中小企業振興公社や東京商工会議所などがスクラムを組んで、経営基盤の弱い小零細企業に対して、経営改善から販路開拓までを切れ目なく支援いたします。
 販路開拓に当たり、世界に通用する技術、製品を持ちながらも、情報やノウハウの不足ゆえ、飛躍の絶好の機会が眠るアジア市場への挑戦をちゅうちょしている企業も少なくありません。商社OBが駐在経験などを生かして東京でも現地でも助言を行い、商社の営業網なども活用することで、海外進出を一貫して後押ししてまいります。
 厳しい雇用情勢のもと、就労を目指す方々が一日も早くみずからの能力を発揮できる場を得ることができるよう、強力に支援しなければなりません。
 これまで都は、東京しごとセンターを開設し、情報提供、相談、仕事の紹介をきめ細かく行ってまいりました。
 また、生活に困窮している離職者のためには、区市町村とも連携して生活費の支給と一体となった職業訓練を実施し、訓練終了後には就職もあっせんしております。住居がない方々には住居費の貸し付けを行うなど、実情に即した総合的で一貫した対策を、一昨年から国に先駆けて講じてまいりました。
 来年度も、これまで重ねてきた数々の対策を十二分に機能させつつ、一段と充実させてまいります。雇用調整が及ぶ中高年の再就職を応援するほか、いわゆる就職氷河期世代が正社員になるための支援を拡充いたします。また、就職氷河期の再来ともいえる状況に直面した若者が、社会の入り口で門戸を閉ざされないように、先週開催した学生向けの合同就職面接会を、規模を拡大して実施いたします。
 さらに、現場を知る地方がその役割をより機動的に発揮できるよう、国には、無料職業紹介権限を地方に移し一本化することを求めます。
 少子化もまた、国家の行く末がかかった危機的な事態にあります。
 人口はまさに国力でありまして、その減少は経済のパイを縮小させ、社会保障制度の維持を困難にし、伝統や文化までも失わせます。国家の構造が根本的に揺らぐ人口減少社会に突入し、この国の政治には、局面を大きく転換させる決断が求められております。
 しかし、国が先般発表した子ども・子育てビジョンは、現金給付的な施策が新たに加わったものの、現物給付については既存施策を焼き直したにすぎません。国の省庁の縦割りが随所に顔を出し、現場の創意と工夫を抑えてきた規制も緩和せずに、実行手順も財源確保の見通しも示されておりません。子ども手当に巨額の財源を投じても、出産、子育てを直接支える仕組みが不十分なままでは、子どもを産み育てたいと望む家族に勇気を与えることはできません。
 ならば都は、東京の強みでもある人材、企業、NPOなどの集積を十全に生かして、出産、子育てを確かに支える効果的な施策を展開したいと思います。緊急対策として、三年間で四百七十五億円を投入し、保育、医療はもとより働き方や住宅、これまで別個に展開されてきた施策を束ねて、社会全体で出産、子育てを支える体制へと集中させる新たなモデルビルディングを行い、国に建言いたします。
 保育サービスは、子どもを安心して産み育てる上で重要な支えの一つです。
 都は、高い地価、国の一律の基準といった問題を、認証保育所の創設など独自の施策で乗り越え、過去五年間で一万七千人を超える定員を確保してきました。一方で、経済情勢の悪化などにより、依然、保育サービスの増設は保育ニーズに追いついてはおりません。認証保育所への補助拡充など現時点で可能な手法を総動員し、三年間で、過去五年を上回る二万二千人分のサービスを確保いたします。とりわけ国の制度の不備ゆえ絶対的に不足しているパートタイム労働者や求職者のための短時間保育は、都が独自に拡充いたします。
 また、学童クラブの多くが保育所よりも子どもを預かる時間が短いため、小学校に進学すると保護者が働きにくくなる小一の壁と呼ばれる問題も発生しております。従来の時間を延長し、子どもを預かる都型の学童クラブ制度を創設して、国の制度では充足できない切実なニーズをしっかりと酌み取ってまいります。
 こうした現場でできる施策を迅速に進めながら、国には、時代と乖離した制度、規制を利用者の視点で改めることを強く要求してまいります。
 周産期、小児医療は、産科、小児科医の不足という困難に直面しながらも、医師会や地域の医療機関と手を携え拡充してまいりました。今後も三百六十五日二十四時間の安心を目指し、さらに体制を強化いたします。
 周産期医療では、平成二十六年度末を目標に新生児集中治療管理室、NICUを三百二十床に増床します。小児救急医療でも、小児の特性を踏まえた専門的な治療ができる子ども救命センターを四カ所指定し、センターを拠点に地域の医療機関が相互に協力し合うネットワークを構築いたします。
 国には、こうした医療体制を支える医師の確保、育成を引き続き求めてまいります。
 子育てを支えるサービスを大幅に強化することと並行して、企業や地域などによる子育ての支援の輪を社会の隅々に広げなければなりません。
 長時間労働に加え休暇がとりにくい我が国の企業風土に風穴をあけることなくして、少子化は打破できません。仕事と家庭生活の両立に精力的に取り組む企業が評価され、人材も集まり、経営的にも成功する社会へと、かじを切る必要があります。
 在宅勤務の導入など企業の取り組みを応援し、先進事例を全国に発信いたします。働き方の見直しについて、お題目を唱えるばかりの国には、両立支援にとって実効性のある全国的な仕組みを産業界や労働界と構築していくことを強く求めてまいります。
 地域もまた、家族を支え、子どもをはぐくむ重要な役割があります。かつてこの国に当たり前のようにあった地域のきずなを結び直し、子どもの見守りの核となる人材を育成したいと思います。
 これまで述べてきたことに加えて、子育てに適した民間賃貸住宅の普及や子どもの遊び場づくりにも取り組むなど、政策分野を広く横断して重層的、複合的に施策を展開いたします。安心して子どもを産み、育てることのできる社会への扉を、東京から開いてまいります。
 現下の危機に的確に対処しつつ、都市戦略である「十年後の東京」計画の実現を一段と加速させてまいります。常に十年先を見据えながら、既存の枠組みに横ぐしを通して隘路を打ち破り、五十年先、百年先にもつながる取り組みを進めてまいります。
 地球温暖化による気象の異変は深刻の度を増し、もはや引き返せない事態へと突き進みつつあります。
 しかし、昨年のCOP15でも、先進国と途上国との溝が埋まる気配はありません。さらに、途上国の間では、ツバルのような現に海面上昇の被害を受けて沈没しつつある島国などと、経済発展著しい新興国との対立があらわとなり、CO2削減の国際的な枠組みづくりは混迷をきわめております。
 袋小路に迷い込んだ国際交渉を日本が打開し、世界の新たな枠組みづくりをリードしていくためにも、既に打ち出した高い目標を実現する具体的な対策に一日も早く移らなければなりません。これは、環境産業を世界のいかなる国よりも早く飛躍させることにもなるのです。
 我が国の環境政策を牽引してきた東京は、本年四月から世界初の都市型キャップ・アンド・トレード制度を開始いたします。CO2排出総量削減義務を課せられる大規模事業所には、制度開始を先取りして、照明や空調に先端的な省エネ技術を導入する動きも出ております。こうした削減意欲の盛り上がりを緻密な制度運営によって一層高めてまいります。
 削減義務のない中小規模の事業所には、地球温暖化対策報告書制度を開始し、自主的な対策を促すほか、省エネ設備の導入を省エネ促進・クレジット創出プロジェクトで支援いたします。東京から産業、業務部門のCO2排出量を着実に削減し、国には、全国レベルのキャップ・アンド・トレード制度の早期実現を迫ってまいります。
 同時に、我々の生活様式自体を低炭素型へと転換させなければなりません。
 家庭部門では、住宅用太陽エネルギー利用機器を四万世帯に普及させることに加え、専門家を派遣し、住宅の断熱化や省エネ化をサポートいたします。運輸部門でも、次世代自動車の普及を後押しするとともに、急速充電器をおおむね五キロ圏内に一カ所、民間事業者とも連携して設置し、電気自動車を安心して利用できる環境を整えます。
 都みずからもCO2を積極的に削減いたします。
 四年間で排出量を八・四%削減しましたが、来年度には、下水の汚泥処理に当たって、環境への負荷をこれまでの十分の一に激減させる汚泥ガス化炉を新たに稼働させてまいります。さらに、汚泥を資源に変える汚泥炭化炉の増設にも着手するなど、手綱を引き締め取り組んでまいります。
 CO2の削減で世界の最先端を進むとともに、緑のネットワークを張りめぐらす十年プロジェクトを展開し、東京を環境先進都市へと飛躍させてまいります。
 自分たちの手で緑をふやし、育てようという機運が高まりつつあり、海の森や多摩の森などでボランティアとして年間三万人を超える都民、国民、企業、団体の協力を得ておりまして、緑の東京募金への拠金も六億円に届こうとしております。緑の創出への熱い支持に力を得ながら、校庭の芝生化や街路樹の整備を着実に進め、公園の面積も四年間で日比谷公園七個分増加させております。
 今後は、緑の創出とともに、樹林地や農地など都市に残された貴重な緑を戦略的に保全いたします。緑確保の総合的な方針を策定し、区市町村と合同で選定した三百ヘクタールの緑を、都民、地域、企業などとしっかり手を携えて、確実に将来に引き継いでまいります。武蔵野の面影を残す多摩川沿いのがけに残された緑も、地元自治体と連携して保全いたします。
 東京が真の成熟を遂げるためには、都民が安全に安心して暮らすための仕組みを充実させていかなければなりません。
 世界に類を見ないスピードで高齢化が進む一方で、家庭や地域の支え合いが低下しております。従来の、在宅か施設かという選択肢に加えて、高齢者が日常生活へのサポートを必要とするようになってもなお、地域で安心して暮らし続けられる仕組みを求められております。
 そこで、大都市の実情に応じた施設基準を設けるなど現場に根差したアイデアを駆使して、民間の投資意欲を引き出しながら、新しい高齢者の住まいを実現してまいります。
 緊急時のサポート機能や介護関連施設を備えたケアつき住まいを平成二十六年度までに約六千戸整備することなどに加え、在宅の高齢者を二十四時間体制で支援するシルバー交番も、まずは二十二年度に十五カ所設置いたします。これらを起爆剤に、目配りの行き届いたサービスを備え、高齢者が安心して暮らすことができる住まいの普及に、東京から道筋をつけてまいります。
 阪神・淡路大震災からことしで十五年が経過いたしました。
 建物倒壊等が死因の約九割を占める重い教訓が残されましたが、費用負担の問題などもあり、東京に耐震化すべき建物が依然数多く存在しております。
 そこで、一たび倒壊すれば多大な影響を及ぼす建物にも重点的な対策を講じてまいります。復旧と復興の動脈となる緊急輸送道路の沿道建物について、戸別に訪問して耐震化を働きかけるローラー作戦を、対象地域を拡大して展開いたします。医療活動の拠点となる救急医療機関にも補助金を大幅に増額し、強力に耐震化を後押ししてまいります。あわせて、警察署や消防署といった防災上特に重要な都の建物は、来年度じゅうに耐震化を完了いたします。
 一方で、耐震化は現在の法律では努力義務にすぎず、その実施は建物所有者にゆだねられていることから、対策の進展には限界があるのは否めません。このため、震災時の応急活動に及ぼす影響が大きい建物について、耐震診断の義務化など、一歩踏み込んだ都独自の規制誘導策の検討を開始いたします。災害に強い都市づくりに向けた重い歯車を回し、首都東京の信用を高めてまいりたいと思います。
 ところで、公立小中学校の耐震化は、中国・四川大震災を教訓とし、子どもの命を守り、地域の非難場所を確保するため、国と地方が協力して進めてまいりました。
 しかし、国は、来年度の予算案に、全国の自治体が実施を予定している事業全体に比して、大幅に不足する予算しか計上しておりません。いつ来てもおかしくない直下型地震のリスクにさらされた首都東京の知事としては看過できず、苦しい財政をやりくりして取り組んできた区市町村もはしごを外されたとしかいいようがありません。現在、来年度予算が国会で審議中ですが、国政は、地方の事業実施に支障が出ないよう、速やかに必要な手だてを講じることを強く求めます。
 豊かで便利な社会ゆえに発生する新しい種類の犯罪や災害にも迅速に対応し、都民の身近な不安を解消していかなければなりません。
 都内でも広く普及しているインターネットカフェ等では、その匿名性から、ハイテク犯罪などが頻発しております。全国に先駆けて、入店時に本人確認を義務づけることで、犯罪防止につなげてまいります。
 また、これらの店舗は狭い空間に個室が多数つくられた複雑な構造ゆえ、一度火災が発生すれば被害が想像以上に拡大いたします。この種の店舗には、避難確保対策の強化を義務づけ、利用者の安全を高めてまいります。
 この国の活路を開くには、首都東京の社会資本整備は必須であります。
 都市の機能や利便性を向上させるだけでなく、経済を活性化させ、国際競争力を高め、その効果は全国にあまねく還流いたします。
 羽田空港は、従来の自治体の枠組みを超えて国に無利子貸付を行うなど、再拡張、国際化のために重ねてきた努力がようやく実を結び、十月に新滑走路と国際線ターミナルが完成し、宿願である大幅な容量拡大が成就いたします。
 既に、年間約六万回の国際線定期便の就航が決定しております。アジア諸都市だけではなく、北米、欧州へも飛び立つことができる二十四時間利用可能な国際空港となります。
 今後も、羽田空港の昼間の国際線発着を拡大し、生まれ変わった羽田空港がさらに高い次元で日本と世界をつなぐ役割を果たすことを目指してまいります。
 道路についても、中央環状新宿線が、来月、いよいよ全線開通いたします。
 首都高のピーク時の渋滞の長さを半減させ、そのCO2削減効果は、山手線内側の半分の面積に相当する森林が吸収する量に匹敵します。
 今後とも、東京と日本の持つ可能性、潜在力をさらに引き出すために、幹線道路ネットワークの整備やあかずの踏切を解消する連続立体交差事業などを、一段と促進しなければなりません。
 中でも、文明工学的見識を欠いた国を動かして、事業再開を認めさせた外環道については、先月より測量、地質調査などが始まり、長い間とまっていた時計の針がようやく動き始めました。今後、着工に必要となるジャンクション部の用地取得を国と連携して重点的に進め、一日も早い完成を目指してまいります。
 あわせて、道路ネットワークをより有効に機能させるために、最先端の情報通信技術を活用した信号制御システムを構築いたします。
 緊急車両について、現場や病院までの走行時間の短縮を図って、都民の安全と安心を高めるほか、空港と主要駅、ホテルとを結ぶ直行バスの所要時間も短縮して、利便性を向上させてまいります。
 一方で、国は、来年度の全国の道路関係予算を大幅に削っております。そうした中にあっても、国には、東京の道路整備の効果と重要性を冷静に評価し、必要な財源を確実に東京に配分するよう強く求めます。
 港も、都市の活力を伸張させる役割を十全に果たさなければなりません。
 川崎市、横浜市と取り組む京浜三港の連携について、今月、将来像とそれに向けた戦略を示す京浜港共同ビジョンを策定しました。
 今後、このビジョンに基づき、三港が一体となって港湾施設の利便コストを低減し、利便性も向上させるとともに、国内各地と有機的に結びつく道路などの国内輸送ネットワークを形成することで、貨物の集荷を強化し、港湾機能をさらに高めてまいります。首都圏はもとより我が国の経済を支え、アジア諸港との熾烈な競争に勝ち抜いてまいります。
 東京は、豊穣な歴史や多様な文化、多彩な食文化など魅力に満ちあふれております。
 これに磨きをかけることは、首都としての風格を増すだけではなく、観光振興にもつながり日本全体の発展に大きく寄与いたします。
 そこで、東洋のベニスともたたえられた水の都であった歴史の記憶を呼び覚まし、江戸の暮らしに楽しみと潤いをもたらした隅田川のにぎわいを取り戻す、隅田川ルネサンス事業を展開いたします。川面を臨むカフェや憩いの場となるテラスなどを整備し、四季折々のイベントを盛り上げるほか、水上から東京を楽しむ新しい舟運ルートを開発して、水と緑の都市文化を再生し、未来に引き継いでまいります。
 都内各所に数多く存在し、過去の時代の息吹を今に伝える建造物もまた、かけがえのない財産であります。都が選定した歴史的建造物の保存や修復を応援し、歴史と文化が薫るまちの顔に育ててまいります。
 歴史と文化の堆積を持つ東京に、都市としてのさらなる奥深さを加える新しい魅力も次々と生まれております。
 ことしも四日後に迫った東京マラソンは、早くも世界最高位、ゴールドラベルの大会にまで成長し、日本を代表する国際イベントとして定着いたしました。大会を機にランニング熱が高まるなど、スポーツのすそ野を大きく広げております。
 ことしは、家族とのきずなを再認識し、すがすがしい達成感を親子で味わう東京マラソンファミリーランも実施いたします。沿道の東京大マラソン祭りも一段と盛り上げ、スポーツとまちが融合した、これまでにない都市文化にまで高めてまいりたいと思います。
 東京は、新しい文化や刺激に満ちあふれている一方で、有害な情報もはんらんしております。
 そうした中で、東京と日本の次代を担う子どもたちが健やかに育つ環境を整えることは、我々大人の当然の責務であります。子どもが人生を生き抜いていく力の土台は体力にあり、健全な肉体を育て、脳幹を鍛えることで、みずからを律する強い心も養われます。
 東京の子どもの体力は、残念ながら全国平均を大きく下回っていることから、昨年、子どもの体力向上推進本部を設置し、対策に乗り出しました。来月には区市町村対抗の東京駅伝を初めて開催し、二千人を超える中学生がたすきと友情のリレーを競います。さらに、オリンピアン、パラリンピアンを初めすぐれたアスリートを学校に派遣して、技術はもとより努力の大切さも教えて、精神面の成長を促すなど多様な施策を講じてまいります。
 体力と同時に、学力も徹底して鍛えなくてはなりません。
 中でも、文章を読んで内容を把握することや、情報を整理して判断することなど、物事を読み解く力は、単に知識を吸収するだけでなく、感性を磨き論理性を養うこととも密接に関連いたします。来年度、読み解く力に関する調査をすべての公立の小中学校で実施し、これを踏まえて指導内容を改善してまいります。
 子どもの学力向上のためには、現場の担い手である教員を実情に即して効果的に配置することも不可欠であります。いわゆる小一問題、中一ギャップに対処するために、来年度から両学年に教員を重点的に配置いたします。さらに、外部人材を活用して、公立小中学校で土曜日に補習を実施するほか、都立高校での進学指導も大幅に強化いたします。
 若者たちは、現代につながる我が国の歴史を十分に知らないまま大人になっております。
 歴史をひもとけば、江戸時代は、商品経済が発達し、五街道が整備され、寺子屋などの教育システムが整うなど、世界に誇るべき社会が江戸を中心に形成されておりました。また、ライプニッツやニュートンに先んじて微分積分といった高等数学を考えついた関孝和など、すぐれた才能が開花しました。江戸期に成熟された独特の感性や高い文化、教育水準は、その後の時代に大きな財産として受け継がれ、急速な近代化を遂げ、敗戦の焦土から立ち直り、経済大国に発展する原動力となりました。
 こうした江戸期から現代に至る近代化の歴史を学ぶことで、若者たちが日本人としての自信と誇りを持つとともに、国際社会の一員として活躍する基礎をもつくるために、平成二十四年度より、全都立高校で日本史を必須化いたします。
 今日、インターネットや携帯電話によって、あらゆる情報を便利に入手できるようになりました。
 一方で、犯罪にもつながりかねない有害な情報から青少年を守らなくてはなりません。携帯電話の有害情報遮断機能が安易に解除されないように手続を厳格化するほか、子どもの年齢に応じた機能に限定された携帯電話を、都が推奨する制度も創設いたします。
 また、児童ポルノのはんらんを初めとする青少年をみだりに性の対象として扱う風潮を見逃してはなりません。これらは、自分の利益のみに拘泥し、社会的存在としての自覚を欠く一部の大人がもたらした害悪でしかありません。児童ポルノを根絶するなど、都と都民の責務を条例で定め、このおぞましい状況に東京から決別してまいります。
 次に、多摩・島しょ地域について申し上げます。
 多摩地域は、電子機器、精密機器などの最先端技術やものづくり産業が集積し、大学、研究機関も数多く存在します。こうした多摩の優位性を最大限生かすべく、一昨日、産業サポートスクエア・TAMAを開設いたしました。中小企業の新技術、新製品の開発や新事業の創出を支援するなど、今後、多摩地域を我が国の産業の将来を支える一大集積地として発展させてまいります。農林総合研究センターや平成二十三年度開設予定の多摩職業能力開発センターと一体となって、総合的に産業を振興してまいります。
 医療面でも、多摩総合医療センター、小児総合医療センターを来月一日に開設いたします。
 多摩における救急医療体制を強化するため、都内最大規模の総合周産期母子医療センターを設置し、日本初の小児専門ERを開設いたします。がん医療も充実させるなど、日本有数の診療基盤を持つ両センターが一体となって、小児から成人までの多様な疾患に対し、総合的な医療を提供してまいります。地域の医療機関とともに緊密に連携しながら、多摩の安全・安心の拠点として機能させてまいります。
 東京国体は、本年夏、開催が正式に決定される予定であります。
 平成二十五年に向けて準備を一層加速しなくてはなりません。多数のトップアスリートの参加を得、障害者スポーツ大会と連携し、人と環境に優しい国体の実現に向けた施設のユニバーサルデザイン化の推進や、再生可能エネルギーの導入などにも取り組んでまいります。東京ならではの工夫を凝らし、大会を成功に導いてまいります。
 三宅島は、平成十二年の大噴火からことしで十年が経過いたします。
 約四年半の全島避難生活を経て、復興に向けて歩み出し、生活基盤は着実に回復しております。しかし、島の再生のかぎを握る観光の立て直しはまだまだ道半ばでありまして、観光客数は噴火前の半数程度にとまっております。
 そこで、ことしのバイクイベントでは、噴出した溶岩流の跡など、三宅島ならではの自然を背景にした手に汗握るオフロードレースを新たに実施いたします。三宅島の魅力をより広く伝え、より多くの方々に島を訪れていただけるよう、引き続き強力に後押しをしてまいります。
 危機を突破し、その先に二十一世紀にふさわしく成熟を遂げた社会をつくり上げるに当たり、都政はその実行力を問われております。
 平成二十二年度の東京都当初予算案は、巨額の税収減に直面し、今後も厳しい財政環境が見込まれる中で、東京の現在と将来に対し都がなすべき役割を積極的に果たすべく編成いたしました。
 国のような借金への安易な依存を厳に戒め、基金残高一兆円を維持しながらも、「十年後の東京」への実行プログラム二〇一〇のための経費五千九百九十九億円全額を計上し、投資的経費も四・七%伸ばす積極予算としました。これができたのは、都議会の皆様の協力も得て財政再建に努力してきたからにほかなりません。
 さらに、このたびの予算編成でも、新しい公会計制度によって作成した財務諸表を活用して事務事業評価を緻密に行い、これまで以上に厳しく検証することで、約二百億円のむだをあぶり出して削減し、より費用対効果の高い施策を練り上げました。
 今後も、複式簿記・発生主義をてこに、職員の金利感覚やコスト意識を高め、お役所仕事を払拭するなど、行財政運営のレベルアップを追求してまいります。
 複式簿記・発生主義会計をめぐっては、大阪府の強い要請も受けまして、職員を派遣し、都の手法、ノウハウを積極的に提供してまいりました。
 今後は、大阪府と共同プロジェクトを立ち上げ、公会計制度のあるべき姿を全国に発信しながら、導入に意欲的な自治体を支援するとともに、国に対して、国際会計基準に準拠した合理的な会計基準の策定を求めてまいります。太政官制度以来続く官の姿を変え、総合的な財務情報に基づく自律的な行財政運営をこの国に根づかせるべく、取り組んでまいります。
 都の健全な行財政運営と対照的に、国の来年度予算案は、借金が税収を上回る異常な状態となっております。とはいえ、法人事業税の暫定措置を継続したことは断じて許せません。これは国会でも、かつて野党時代の民主党の議員諸君が強く反対してくれたものであります。税の原則にもとり、地方分権にも逆行する法人事業税の暫定措置は直ちに撤廃するよう、強く強く求めてまいります。
 次に、築地市場の豊洲移転について申し上げます。
 築地市場は老朽化が激しく、わずかな地震の揺れでも屋根の一部が落下する事故まで最近発生しております。震災に遭えば、機能麻痺により都民生活に甚大な影響を与えることは必至であります。我々に与えられた時間は余り多くありません。
 もとより豊洲への市場移転は、移転地の土壌汚染の除去が前提であります。世界に誇る日本の先端技術を活用した汚染対策の実験結果を踏まえ、魚や野菜などの生鮮食料品を取り扱う市場用地として、都民、国民や市場関係者が安心できる十全な対策を着実に講じます。平成二十六年度の開場に向けて、豊洲新市場を、時代のニーズにこたえ、将来にわたり都民の食生活を支えていく新しい基幹市場として整備してまいりたいと思います。
 次に、二〇一六年のオリンピック・パラリンピック競技大会招致活動報告書について申し上げます。
 これは、今回の招致活動にかかわった招致委員会関係者と都のメンバーが、広範多岐にわたった活動を詳細に記録し、活動を総括して得た課題や教訓をまとめ、日本の再挑戦の海図ともすべく作成いたしました.
 本報告書によって、招致活動に対する都民、国民の皆様、都議会の皆様、スポーツ界、経済界、政府関係者の理解が改めて深まるとともに、我が国へのオリンピック・パラリンピック招致に新たな一歩が踏み出されることを心から願っております。
 二十一世紀に入り、世界が時間的、空間的にますます狭小となるにつれ、かつてなかった摩擦が各地で生まれております。
 また、近い将来、みずからの文明発展が招いた化石エネルギーの不足や気象の異変による食料危機により、国家が争い、人類の生存も脅かされる事態すら到来しかねません。
 文明発展の皮肉ともいえる激しい地殻変動に臨んで、その場しのぎ、先送りをなお続ければ、日本には衰退の道しかありません。今こそ、危機の本質に本気でメスを入れ、みずからの未来はみずからの手でつくり出すべく、政治を本来の姿へと蘇生させなければならないと思います。
 いうまでもなく、都政は、政治本来の姿を追い求めてまいりました。
 今後も、日々生きた現実に直面し、課題の解決を迫られている日本の頭脳部、心臓部から、東京しかなし得ない斬新で実効性の高い政策の実現を通じて、政治と行政のあるべき姿を体現してまいります。そして、都議会の皆様とも、ともに東京と日本の将来を深く考え、合理的で建設的な議論を真摯に交わして、この国を牽引する施策を確かな形にしてまいりたいと思います。
 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、予算案三十二件、条例案七十件など合わせて百十五件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。
 以上をもちまして施政方針表明を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(田中良君) 以上をもって知事の発言は終わりました。

○議長(田中良君) 次に、警視総監より、都内の治安状況について発言の申し出がありますので、これを許します。
 警視総監池田克彦君。
   〔警視総監池田克彦君登壇〕

○警視総監(池田克彦君) 警視庁では、昨年、安全・安心なまち東京の実現を基本方針として、犯罪抑止総合対策を初めとする各種対策に組織の総力を挙げて取り組み、首都東京の治安維持と都民生活の安全確保に努めてまいりました。
 以下、都内の治安状況と対策についてご報告いたします。
 第一は、犯罪抑止総合対策の推進についてであります。
 昨年の都内における刑法犯の認知件数は、戦後最悪を記録した平成十四年から七年連続して減少し、二十万五千七百八件となりました。これは、日本が世界で最も安全だといわれていた昭和四十年代の水準に達するものであり、数値的には治安は回復したといえる状況にあります。
 しかしながら、振り込め詐欺やひったくりの被害の発生等により、都民が治安の回復を十分に実感できる状況には至っていないことから、本年も引き続き、都民が身近に不安を感じる犯罪に重点を置き、検挙と防犯の両面から諸対策を強力に推進してまいりたいと考えております。
 以下、その具体的な対策について申し上げます。
 その一は、振り込め詐欺の撲滅に向けた検挙、防犯対策の推進についてであります。
 昨年は、振り込め詐欺の撲滅に向け、東京都を初めとする行政機関や金融機関等との連携を図りながら、官民一体の総合的な取り組みを推進してまいりました。とりわけ、二月及び十月十五日から一カ月の二回にわたり実施した振り込め詐欺撲滅月間では、都内約一万一千カ所の全ATMに対する集中警戒、広報啓発活動及び専従班を設けての検挙対策等を強力に推進いたしました。
 その結果、認知件数は千三百四十四件で前年の約三分の一と大幅に減少する一方、検挙件数は一・五倍に増加するなどの成果を上げることができました。
 しかし、今なお高齢者を初めとする都民が被害に遭い、かけがえのない財産を奪われている現状にあることから、昨年同様、今月を振り込め詐欺撲滅月間に指定し、全庁を挙げて諸対策を強力に推進しているところであります。
 今後も、関係機関等との連携を図り、官民一体となった総合的な取り組みを推進するとともに、振り込め詐欺本犯はもとより、振り込め詐欺を助長する犯罪の検挙も図り、その撲滅に努めてまいります。
 その二は、街頭警察活動の強化についてであります。
 昨年は、長引く不況や雇用環境の悪化等を背景に、コンビニ強盗やひったくりなど、都民の日常生活を脅かす犯罪が増加いたしました。
 こうした情勢を踏まえ、警視庁では、交番における一歩前立番を励行するほか、多くの制服警察官を街頭に配置して、不審者に対する職務質問や所持品検査を徹底するとともに、事件発生時においては速やかに捜査体制を確立し、組織を挙げた検挙対策に努めてまいりました。
 今後も、積極果敢な街頭警察活動を強力に展開し、都民生活の安全・安心を確保してまいります。
 その三は、重要、特異事件の検挙についてであります。
 昨年、特別捜査本部を設置して捜査した重要、特異事件は九件でありますが、そのうち、中央大学理工学部教授殺人事件など五件を解決いたしました。
 一方、平成七年七月に発生した八王子市におけるスーパー事務所内けん銃使用強盗殺人事件や、平成十二年に発生した上祖師谷三丁目における一家四人強盗殺人事件等の重要事件は、いまだ解決に至っておりません。
 この種事件の検挙は、都民の体感治安に直結する重要な課題であるところから、引き続き懸命な捜査を展開して被疑者を検挙してまいります。
 その四は、銃器、薬物対策の推進についてであります。
 都内におけるけん銃発砲事件は、平成十四年以降減少傾向にあるものの、昨年も九件発生しており、このような銃器情勢が都民の生活に著しい脅威と不安を与えております。こうした情勢を踏まえ、昨年は、銃器関連情報の収集に努めるとともに、暴力団等への取り締まりを強力に推進し、けん銃七十丁を押収いたしました。
 次に、薬物事犯については、芸能人等が相次いで検挙されたほか、大学生等の若者の間において大麻の乱用の拡大が懸念されるなど、深刻な社会問題となっております。昨年は、密輸、密売グループの摘発や末端乱用者の取り締まりを徹底し、密売人等二千六百四十八人を検挙したほか、覚せい剤、大麻等約百十四キログラム、MDMA等錠剤型合成麻薬約一万四千七百錠を押収いたしました。
 今後も、薬物事犯の取り締まりを徹底するとともに、東京都等の関係機関と協力して、薬物の社会的な害悪について積極的な広報啓発活動に努めてまいります。
 その五は、盛り場総合対策の推進についてであります。
 警視庁では、盛り場が安全で安心して楽しめるものとなるよう、歌舞伎町、池袋、六本木及び渋谷の四地区を中心とした盛り場総合対策を推進してまいりました。そして、昨年は、違法性風俗店やカジノ店、わいせつDVD販売店など約二百店舗を摘発いたしました。
 このような取り組みにより、都内の盛り場は安全なものへと着実に改善されつつありますが、その一方で、盛り場等にあるインターネットカフェ等においては、インターネットの匿名性を悪用したハイテク犯罪が後を絶たず、また、密室性の高い個室を備えた店舗では、青少年の健全育成を害する事案等も発生しているなどの憂慮すべき状況にあります。
 こうしたことから、インターネットカフェ等を安全に安心して利用できる環境を保持するため、営業者に顧客の本人確認を義務づけることなどを内容とするインターネット端末利用営業の規制に関する条例案を今定例会に提出しているところであります。
 今後も、盛り場の状況をさらに改善することを目指し、関係行政機関や商店街振興組合等と連携して環境浄化対策を推進してまいります。
 その六は、社会における規範意識向上に向けた万引き対策、景観対策の推進についてであります。
 都内における刑法犯認知件数が七年連続で減少する一方で、万引きの認知件数は平成十五年から増加し、平成十八年からは約一万八千件の高どまりで推移しております。
 万引きは初発型の犯罪であり、これを放置すると犯罪が繰り返され、かつ、エスカレートしていく傾向があることから、万引きを許さない社会づくりを目指し、万引き防止のためのアクションプログラムを策定し、現在、関係行政機関、小売店舗、学校等と連携した総合的な取り組みを推進しているところであります。
 また、地域住民がみずから行う落書きの消去や清掃活動等の環境浄化活動を支援することを通じて、地域の防犯力の向上を促すとともに、都民を対象として、みんなでまちを守ろうという意識の向上や地域のきずなづくりを目的とした取り組みも行っているところであります。
 今後も、関係機関や地域住民と手を携えながら、規範意識の向上に向けた取り組みを促進し、社会全体で治安の確保に努めたいと考えております。
 第二は、暴力団総合対策及び来日外国人犯罪組織等に対する取り締まりの推進についてであります。
 六代目山口組は、都内への勢力拡大を図っており、利権をめぐり在京暴力団との間で対立が続いております。また、近年、暴力団は、恐喝や賭博等の従来型の資金獲得活動に加え、企業活動を仮装して建設業、不動産業等への進出を図るなど、一般社会での資金獲得活動を活発化させており、その態様も潜在化、巧妙化する傾向を強めております。
 こうした中、昨年は、暴力団員等四千七百四人を検挙したほか、関係機関、団体と連携して各種暴力団排除活動を積極的に推進いたしました。
 引き続き、組織実態の解明とあらゆる法令を適用した取り締まりを徹底するとともに、官民一体となった暴力団排除活動を展開するなど、暴力団総合対策を強力に推進してまいります。
 一方、来日外国人犯罪組織等は、離合集散を繰り返しながら、強盗等の凶悪犯罪を初め、薬物の密輸、密売やカード偽造等の犯罪に関与しており、一部では暴力団と結託している状況も確認されております。また、偽装結婚や各種証明書偽造等の犯罪インフラ事犯は、来日外国人犯罪組織の人的、資金的供給源となっております。
 昨年は、来日外国人犯罪者三千六百三十七人を検挙したほか、東京入国管理局との合同摘発等により不法滞在者等二千八十三人を摘発しておりますが、今後も、来日外国人犯罪組織等の実態解明に努めるとともに、犯罪インフラ事犯の取り締まりを徹底し、犯罪組織の壊滅及び不法滞在者の検挙、摘発等を推進してまいります。
 第三は、テロ、ゲリラの防圧検挙と震災等大規模災害に対する迅速的確な対応についてであります。
 その一は、APEC首脳会議に向けた警備諸対策の推進についてであります。
 世界各地では依然として国際テロが頻発しており、昨年末には、米国における航空機内自爆テロ未遂事件が発生するなどしております。
 こうした中、本年十一月には、神奈川県横浜市において米国、ロシア、中国、韓国など二十一の国と地域の首脳が一堂に会するAPEC首脳会議が開催される予定であり、今後、同会議開催に向けたテロの脅威が一段と高まることが懸念されます。
 一方、国内の勢力については、極左暴力集団がAPEC首脳会議の開催に反対して闘争に取り組む姿勢を明らかにしており、今後、テロ、ゲリラ事案の敢行に加え、反グローバリズムを掲げる過激な勢力と連携した抗議行動が懸念されます。また、右翼は、抗議の対象となり得る各国首脳の来日をとらえ、領土問題等を直接訴える絶好の機会として、開催地での抗議、要請行動や都内の関係国大使館等に対する抗議行動に出ることが予想されます。
 警視庁では、こうしたテロの脅威や不法行為から都民、国民を守るため、関連情報の収集、分析、徹底した管内の実態把握、重要施設、公共交通機関等に対する警戒を強化するとともに、地域住民や事業者等と連携し、テロを許さない社会づくりを推進することにより、APEC警備の万全を期してまいります。
 その二は、オウム真理教対策についてであります。
 オウム真理教は、全国十五都道府県に三十一カ所の拠点施設と約千五百人の信者を擁しており、うち都内には五カ所の拠点施設と約六百三十人の信者がおります。
 教団は、松本智津夫を絶対視する主流派との対立を機に、松本の影響力の払拭を装う上祐派が新団体ひかりの輪を設立するなど内部分裂状態にありますが、依然として両派とも地下鉄サリン事件以前に入信した者が多数を占め、松本智津夫の強い影響下にあると認められます。
 今後も、教団に対する警戒活動を継続し、不法行為に対する取り締まりを徹底してまいります。
 その三は、震災等大規模災害に対する迅速的確な対応についてであります。
 昨年は、九月にインドネシア・スマトラ南部地震が発生し、警視庁からも国際警察緊急援助隊が現地に派遣となり、救出救助活動に当たりました。
 昨年来、都内では大規模災害の発生はありませんが、その発生に備えて初動措置対応訓練や救出救助訓練等を反復、継続するとともに、防災啓発活動や合同訓練を実施して地域住民の自主防災意識の向上を図り、災害に強い地域社会の実現に努めてまいります。
 その四は、新型インフルエンザ対策の推進についてであります。
 新型インフルエンザについては、世界各地で感染が広がり、都内においても若年層で集団感染や死亡者が出るなど、感染拡大の影響は甚大なものとなっております。
 警視庁では、国内発生直後から警視庁新型インフルエンザ緊急対策本部を設置し、東京都を初めとする行政機関や医療機関等と連携しながら諸対策を推進しており、現在も継続中であります。
 また、強毒性の新型インフルエンザが発生した場合においても都内の治安維持に支障を来すことがないよう、昨年十二月に警視庁インフルエンザ業務継続計画を策定し、危機管理対策の補強にも努めております。
 引き続き、関係機関との連携強化に努めながら、新型インフルエンザ対策に万全を期してまいります。
 第四は、重大交通事故の防止と安全で快適な交通社会の実現についてであります。
 昨年は、交通事故死者を前年を下回る二百十七人以下とすることを目指し、高齢者と二輪車を重点とした交通安全教育や広報啓発活動、悪質、危険性、迷惑性の高い交通違反の指導取り締まり等を強力に推進してまいりました。
 その結果、都内の交通事故は、発生件数、死者数、負傷者数のいずれも前年に比べて減少し、とりわけ死者数については二百五人と戦後最少を記録するなど、大きな成果をおさめることができました。
 しかしながら、今なお多くのとうとい命が失われていることから、本年は、交通死亡事故死者数の連続減少はもとより、交通事故そのものの減少を目指した諸対策を推進しているところであります。また、渋滞緩和対策や高齢運転者等専用駐車区間の設置など、安全で快適な交通社会の実現に向けた交通対策を推進してまいります。
 第五は、少年非行総合対策等の推進についてであります。
 平成十六年以降減少傾向にあった非行少年の検挙、補導人員は、昨年増加に転じ、前年に比べて約一一%の増加となる一万一千五百九十人でした。また、ひったくり、路上強盗等の街頭犯罪に占める少年の割合は約四〇%と高い水準で推移しております。さらに、重大な犯罪の入り口ともいえる万引きで検挙、補導された少年は、前年に比べて約三八%増加しており、中でも中学生による万引きは約五三%も増加しております。
 警視庁では、こうした厳しい少年非行の現状を踏まえ、万引きは犯罪であるとの明確なメッセージの発信、関係者による感銘力のある措置、家庭におけるきずなづくりなど、少年の規範意識の向上に資する取り組みを推進しております。
 今後も、次世代を担う少年を健全に育成するという観点から、少年非行防止対策を一層推進してまいります。
 次に、子どもや女性の安全確保のための取り組みについてでありますが、昨年四月に発足した子ども・女性安全対策専従班を中心に、誘拐や強制わいせつなど性犯罪の前兆となる可能性の高い声かけやつきまとい等の事案の発生状況を分析し、先制的な検挙予防活動を行うことにより、子どもや女性が巻き込まれやすい性犯罪被害の未然防止に努めてまいります。
 第六は、犯罪被害者支援活動の推進についてであります。
 犯罪による被害者やその遺族などは、犯罪行為による直接的な被害にとどまらず、精神面や経済面でも大きな打撃を受けております。
 このようなことから、被害者等が再び平穏な生活を営むことができるよう、刑事手続の説明や病院への付き添いなどを行う初期支援活動、捜査状況等の情報提供を行う被害者連絡活動などの支援活動を行うとともに、診断書料等の公費支出など経済的支援の充実にも努めてまいりました。
 今後も、各自治体、関係機関等と緊密な連携を図りながら、犯罪被害者の心情に配意した支援活動を推進し、社会全体で犯罪被害者を支え、思いやる機運が醸成されるよう努めてまいります。
 以上、都内の治安状況等について申し上げましたが、数値的に回復したとはいえ、依然として厳しい現下の治安情勢に的確に対応していくためには、業務の効率化、合理化等に加え、人的基盤の充実強化が必要であります。こうしたことから、昨年に続き、今定例会において警察官百十名を増員するための条例の改正や必要な予算の確保をお願いしているところであります。
 警視庁といたしましては、今後とも、安全・安心なまち東京の実現に向け、全力を尽くしてまいりますので、東京都議会の皆様には一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、治安状況報告とさせていただきます。

○議長(田中良君) 以上をもって警視総監の発言は終わりました。

○議長(田中良君) 次に、監査委員より、監査結果の報告について発言の申し出がありますので、これを許します。
 監査委員相川博君。
   〔百十七番相川博君登壇〕

○百十七番(相川博君) 監査委員を代表して、過去一年間に実施した監査の結果についてご報告申し上げます。
 監査委員の役割は、都の行財政が公正かつ効率的に運営されるよう監査することであります。年間を通じて、定例監査、行政監査、工事監査、財政援助団体等監査、決算審査、住民監査請求など多岐にわたる監査を実施しております。また、新公会計制度に基づいて作成された東京都財務諸表監査の実施を始めて三年目を迎えました。
 この一年間は、七百十七カ所で監査を実施し、問題点の指摘は三百二十三件、金額は指摘の中で明示されているものだけを見ても約四億九千万円であります。
 初めに、定例監査から申し上げます。
 定例監査は、都の行財政全般を対象とした最も基本的な監査であります。本庁のすべての部と事業所の約半数、計四百八十四カ所を対象として、事務事業が適正に行われているかについて、監査を実施いたしました。
 今回は、消耗品等の購入契約を重点項目として監査を行った結果、物品を納入させた後に契約関係書類を作成して代金を支払っているものなど、適正な契約手続を行っていないものが十三件認められました。
 このような事務処理が継続して行われることは、事故発生のおそれが危惧され、ひいては都民の信頼をも損ないかねないものであります。契約事務手続の再確認やチェック体制の強化、研修の実施などを通じて、適宜適切な対策を講じるよう求めました。
 その他、パソコンのリース契約に関する事例など、合計百十二件の指摘を行い、改善を求めました。
 次に、行政監査について申し上げます。
 行政監査は、都の特定の事務や事業を対象として、経済的、効率的、効果的に行われているかという観点を主眼として行う監査であります。
 今回は、都立学校の経営、水道事業における監理団体への業務委託及び東京港臨海地域における公の施設の管理運営の三点について監査を実施いたしました。その結果、あわせて百十六件に及ぶ問題点が認められましたので、指摘をしております。
 まず、都立学校の経営については、学校経営上の問題点を明らかにすること等を目的として、今回初めて私費に係る事務処理が適切であるかについて監査を行ったほか、転学や中途退学の状況を把握し、対策を効果的に行っているか、図書館など学校施設の管理運営は適切か、以上の三点にわたり監査を実施いたしました。
 その結果、それぞれについて改善を要する点が認められたため、学校長のリーダーシップのもと、学校を挙げて改善に向けた取り組みを行うとともに、本庁の適切な指導やシステム改善を行うことを求めました。
 次に、水道事業における監理団体への業務委託についてでございます。
 水道局では、局と監理団体との協働による一体的事業運営体制を構築しているところであります。
 そこで、今回、委託業務の執行状況や局の指導監督の状況について検証したところ、料金徴収事務や給水装置の工事に関する不適正な事例など、改善を要するさまざまな事例が認められました。
 そのため、業務執行の適正化を図ることはもとより、業務に当たる監理団体の管理部門及び局による十分な指導監督を求めました。
 次に、東京港臨海地域における公の施設の管理運営については、海上公園など臨海地域の公の施設への指定管理者制度の導入効果などについて検証いたしました。
 その結果、実施結果の検証が不十分である事例や、施設管理や利用料金、委託料等について改善を要する事例が認められたため、指定管理者及び局に対して、適切な施設管理や利用者の立場に立った施設の利用促進に向けて、その改善に取り組んでいくよう求めました。
 次に、工事監査について申し上げます。
 工事監査は、全局における百万円以上の工事を対象として、その約一割、千七百十六件について実施いたしました。
 街路整備工事などにおける、合計で約七千九百四十三万円の過大積算や、設計、施工等の指摘について、技術力の確保やチェック体制の強化を求めました。
 また、今回、工事の円滑な履行に向けて、安全への取り組みを重点監査事項として検証した結果、設計や施工に当たり、安全措置が講じられていない事例などが認められたため、関係法令の遵守の徹底、請負者に対する指導監督の強化等を求めました。
 次に、都の出資団体や補助金交付団体に対する監査について申し上げます。
 監査を実施したのは、出資団体十五団体及び補助金交付団体百六十三団体であります。
 出資団体に対する監査では、都と団体の間で財産の帰属について、取り扱いを適正に行うよう求めるなどの指摘を行いました。
 また、補助金交付団体である私立学校や社会福祉施設に対し、過大に交付された補助金の返還を求めました。
 次に、決算審査について申し上げます。
 平成二十年度決算について、主に法令等に基づき適正に執行されているかという合規性の観点から監査を行い、決算計数を確認するとともに、予算執行や資金管理、財産管理の面から検証いたしました。その結果、財産に関する調書において、建物で約一万四千平方メートル、土地で約三千八百平方メートルの登載の誤りがあり、現在高の把握を適正に行うよう求めました。
 次に、随時監査について申し上げます。
 東京オリンピック・パラリンピック招致活動に係る経費の使途について、都民の高い関心を考慮し、定例の監査の実施とは別に、招致本部の事業と特定非営利活動法人である招致委員会における都補助金に係る事業を対象として監査を実施いたしました。
 着眼点ごとに定めた監査手続に従い実施した結果、おおむね適正に執行されていることが認められました。しかしながら、熾烈な国際競争を勝ち抜くという特別の事情があったことは認められるものの、結果的に高額な特命随意契約の相手方が特定の業者に集中している状況となっており、事業者の選定に当たっては、契約の公正性、競争性及び経済性を確保するという観点から、事業者の選定方法等について、より一層慎重に検討することを求めたところでございます。
 最後に、監査結果に対する改善状況について申し上げます。
 これまで述べてきた監査は、指摘した問題点が改善されて初めて目的を達成いたします。このため、各局には、指摘を受けてどのように改善したかの報告を求めています。過去三年間に行った指摘等八百五十七件については、これまでに約八五%が改善されていることを申し上げておきます。
 このほかに、都民からの請求に基づき監査を行う住民監査請求が三十二件あり、その処理を行いました。
 以上、この一年間に実施した監査について述べてまいりました。監査の結果、総じていえることは、組織内部のチェック体制が十分に機能していないために、事務処理の誤りが発生しても見過ごされていた事例が多いことであります。また、安易に前例が踏襲されるなど、問題意識を持って職務を見直していない事例も見受けられました。
 管理者の皆様には、職場のさまざまな課題に即応できる高度な知識や能力を備え、都民サービスをさらに向上させる気概にあふれた職員の育成に努められるよう望むところであります。
 さて、昨今の経済状況の中で、都税収入は大幅に減少しており、今後も厳しい財政環境が想定されております。今まで以上にむだを排し、効率的、効果的に事業を推進していかなければなりません。
 私ども五名の監査委員は、都政が公正かつ効率的に運営されるよう、これからも監査委員の使命を全力で果たしていく決意であることを申し上げ、報告を終わります。(拍手)

○議長(田中良君) 以上をもって監査委員の発言は終わりました。

○議長(田中良君) 次に、包括外部監査人より、平成二十一年度包括外部監査結果の報告について説明を求めます。
 包括外部監査人鈴木啓之さん。
   〔包括外部監査人鈴木啓之君登壇〕

○包括外部監査人(鈴木啓之君) 平成二十一年度の包括外部監査人の鈴木啓之と申します。
 包括外部監査は平成十一年度から始まり、二十一年度で既に十一年目に当たります。東京都の包括外部監査の最大の特徴は、監査終了後、監査人によって指摘事項等の改善状況をフォローしていることにあります。したがって、監査結果は確実に有効活用され、監査人としては社会性の高い非常にやりがいのある監査となっております。
 さて、平成二十一年度は、財団法人東京都道路整備保全公社――以下公社といいます――と財団法人東京都公園協会――以下協会といいます――の受託業務と、これに関連する建設局の事業の管理運営について、補助者八名とともに監査を行い、十件の指摘事項と三十四件の意見を監査報告書に記載いたしました。
 本日は、その主な事項についてご説明申し上げます。
 さて、公社は東京都駐車場の指定管理者であり、また地下道路施設の管理業務を受託していますが、選定時に提出された事業計画書の金額より大きく異なった金額で契約等を締結しており、金額の変更について特に説明の記載もありませんでした。契約等の締結手続の透明性の向上のために、記載事項の改善を要求しました。
 板橋四ツ又駐車場の委託業務五千万円においては、平成十八年度から二十年度まで毎年六千五百万円、差し引き千五百万円過大の予算が計上されていました。経費削減が求められる現状の財政状況において、不適切であるとしました。
 平成二十年度の無電柱化の委託業務は、公社の事務所の借り増し家賃の補てんで増額となりましたが、相当高い家賃の負担であり、経済性の観点から検討が不十分であるとしました。
 公社の高架下駐車場は、占用料が二分の一に減免されています。平成二十年度では、公社は二億五千七百万円の占用料を都に支払っていますが、高架下駐車場では二億四千九百万円の当期利益、本社費等控除前の粗利益では五億五千七百万円を出しています。高架下駐車場への民間業者の参入を促す工夫と占用料の減免の見直しを検討すべきであるとしました。
 平成二十年度における公社の総資産は二百億円あり、正味財産は百二十三億円あります。このうち現金預金及び特定資産の合計は百二十一億円あります。特定資産のうち約三十億円については、それぞれの使用目的は定められているものの、今後の公益認定次第の部分もあり、必ずしもすべてについて将来の具体的な使途が定められておらず、駐車場の運営等で得た利益を毎年積み立てている状態となっています。都と協議の上、適切に使用する必要があります。
 次に、協会であります。
 協会が都から受けた委託業務の再委託契約は、随意契約が極めて多く、また特命随意契約を継続しているものの中には、既に特命の意義の乏しいものがありました。協会は、競争入札による経済性の視点を加え、再委託費の節減に努める必要があるとしました。
 建設局と協会との間の特命随意契約には、調節池の管理業務、防災船着場等の管理業務及び水上バスの保守管理業務の三つの業務を一つの契約にまとめているものがあります。異なる複数の業務を一括して委託することは、契約の透明性を欠く行為であり、異なる業務間での予算の流用を可能とすることから、この契約は個々の業務ごとに分割すべきであるとしました。
 協会の水上バス事業は、都が保有する三隻の水上バスを運航しているものですが、都が負担している費用と合算すると、全体ではかなりの赤字です。しかも多くの航路が民間と競合しています。改めて事業のあり方を検討すべきものとしました。
 協会は、平成二十年度の土砂災害の警戒区域等の指定にかかわる都の補助業務の委託事業で、五千八百万円の事業収益で千五百万円の正味財産の増加、余剰が出るとなっています。しかし、当該業務は、本来、都が直接実施するべき事務であり、行政の立場で公平性及び公正さを確保しつつ履行されるべき業務であることから、協会に特命随意契約とされています。多額の余剰が出ないように、適切に対応すべきであるとしました。
 以上が主な監査意見であり、これをもちまして、平成二十一年度の包括外部監査の監査結果の説明といたします。(拍手)

○議長(田中良君) 以上をもって包括外部監査人の説明は終わりました。

○七十四番(松下玲子君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会し、明二十五日から三月一日まで五日間、議案調査のため休会されることを望みます。

○議長(田中良君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(田中良君) ご異議なしと認めます。よって、本日の会議はこれをもって散会し、明二十五日から三月一日まで五日間、議案調査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は、三月二日午後一時に開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後二時五十分散会


文書質問趣意書及び答弁書

二一財主議第四九二号
平成二十二年二月十六日
東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 田中  良殿
文書質問に対する答弁書の送付について
 平成二十一年第四回東京都議会定例会における左記議員の文書質問に対する答弁書を別紙のとおり送付します。
     記
中村ひろし議員
柳ヶ瀬裕文議員
大島よしえ議員
斉藤あつし議員
清水ひで子議員
石毛しげる議員
和田宗春議員

平成21年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  中村ひろし

質問事項
一 中国残留邦人問題について

一 中国残留邦人問題について
 「中国残留邦人」は、先の大戦において国策により満州(現在の中国東北地方)に送られ、終戦の混乱の中で中国に遺棄され、その後何十年も帰国ができなかった日本人及びその家族のこと(以下、中国帰国者と呼ぶ)である。日本に帰国したのちも言葉や習慣の違いから生活が困窮する人が多く、長く苦難の時代が続いた。2008年4月より、いわゆる中国残留邦人支援法の改正法が本格施行されるに伴い、自治体における新たな支援策が始まり、東京都および東京都内の各自治体においても徐々に整備が整いつつある。しかし、戦後60年以上を経過し、高齢化が進んだこと、それに伴い本人だけではなく家族にも多くの問題が発生していることを鑑みると、より一層の支援体制を整え、地域でより良い生活ができるよう積極的な施策が必要である。そうした立場から以下の質問をする。
1 中国残留邦人問題は、国の責任において早急に解決に向けて取り組む問題であるが、東京都内にも多くの方が居住し、自治体としての責務も法律に明記されている。日本語教育、就労、雇用、住宅、二世・三世の教育、医療、介護、その他多岐に渡る課題がある。東京都は中国残留邦人問題についてどのような課題があると認識しているのかを伺う。
2 いわゆる中国残留邦人支援法の改正法が本格施行されて2年弱経過した。新たにどのような施策を行い、それによりどのような効果が出たか、また、どのような課題があると認識するか伺う。
3 新たに市区町村に設置された「支援・相談員」について、その役割は大変重要であり、言語だけではなく問題の背景を含めて研修を行い、さらなる質の向上が求められる。また、そのためには報酬を含めて十分な待遇を保証することが質の確保に必要である。以上を踏まえ、「支援・相談員」の設置についての現状と課題、またさらなる質の向上について所見を伺う。
4 法改正で新たに地域生活支援事業も開始されたが、すべての市区町村で行われているわけではない。高齢となる帰国者は日本語教育も必要であるが当事者相互の交流の場である「居場所づくり」も必要であり、国の地域生活支援プログラム実施要領には明確な記載はないが、柔軟な対応の中で一部の市区町村では取り組みが行われている。今後、市区町村の取り組みがさらに促進されるよう、東京都としても情報提供を含めた積極的な支援を行う必要があると考える。地域生活支援事業のこれまでの取り組みと課題、今後の取り組みについて伺う。
5 高齢化した中国残留邦人にとっては医療や介護についての不安が大きい。今後、中国語が通じる医療機関、介護施設などの設置や情報提供、また、関係する従事者の育成を図る必要があると考えるが、所見を伺う。
6 中国残留邦人問題は中国における家族の別離から始まった問題であり、日本に帰国した後、二世と同居ができないことは人道上も大きな問題がある。国は、二世の収入認定の基準を緩和したが、周知が十分にされていない。さらなる周知が必要であり、さらには、収入の多寡によらず一世と同居できる制度とするよう国に求めることが必要となる。見解を伺う。
7 多くの二世・三世は日本語を学ぶ機会や職業訓練を受ける機会がほとんどなかったため、生活に困窮する人が多くいるが、国の対応の遅れにより問題が家族に拡大したものである。日本語教育、就労支援、生活保護の適用などにおいても十分に配慮することはもちろんのこと、二世、三世支援のプログラムを都において作成するとともにその開発・作成を国に求めることが必要となる。二世・三世の現状の課題と取り組みについての見解を問う。
8 自治体ではこれまで中国残留邦人については生活保護制度を通して認識されていたにすぎなかった。しかし、改正支援法の施行により、各市区町村でも対象者の現状が認識されるようになった。そのため生活実態の調査について、本人だけでなく、本人を通じて二世、三世などの現状の調査も可能となる。施策を検討するためには実態の調査をする必要があると考えるが見解を問う。また、二世、三世について、国の援護対象となる同伴家族だけではなく、実際に困窮している呼び寄せ家族についても自治体としては実態を把握することが必要であると考えるが、見解を問う。
9 公営住宅については、中国残留邦人等支援法で、その居住のために特別の配慮をするものとされている。中国残留邦人等はすでに高齢化しており、できるだけ早期に、住み慣れた地域で、良好な住環境を整える必要があると考える。都営住宅の入居に関して見解を問う。
10 新たな支援策について、よりよい運用にするために、当事者の声が反映されるシステムを設ける必要がある。「中国帰国者生活支援検討委員会」等を設置し、当事者及びボランティアとの定期的継続的協議の場を設け、実効ある運用に努める必要があると考えるが、見解を伺う。
11 学校教育においては、中国帰国者の家族で学齢期にある児童・生徒の受け入れ態勢を明らかにするとともに、担当教員や通訳員・学習支援員などの配置をし、円滑な適応がなされるよう配慮される必要がある。各教育機関に在籍する中国帰国者の家族の正確な把握に努め、特別な手だての事業の策定・継続・充実に努める必要があるが、見解を問う。
12 雇用、住宅、就労、医療、教育などの諸課題がある中、全庁横断的な取り組みを行い、支援計画やプログラムの策定などが必要と考える。本当に帰ってきて良かったと思える地域をつくるために、今後の取り組みについての見解を伺う。

平成21年第四回都議会定例会
中村ひろし議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 中国残留邦人問題について
1 中国残留邦人問題は、国が取り組む問題であるが、自治体の責務も法律に明記されている。都は、中国残留邦人問題についてどのような課題があると認識しているか、見解を伺う。

回答
 都は、従来から永住帰国した中国残留邦人等の地域社会における早期の自立の促進及び生活の安定を図るため、様々な支援に積極的に取り組んでいます。
 中国残留邦人等の方々が重ねてこられた御苦労を思えば、祖国で心安らかな老後の日々を送っていただくため、支援給付事業等による経済的支援とともに、地域における生活支援も大切な事業であると認識しています。
 中国残留邦人等が抱えている問題としては、
1 高齢化が進んでおり、医療等のニーズが一層高くなっていること。
2 年齢を重ねてから帰国したため、日本語習得が不十分であり、医療機関等で病状をうまく伝えられないこと。
3 地域住民との交流が進まないこと。
などがあると考えています。
 なお、支援給付事業については、国家責任による補償事業の性格から、基本的には国の責任で行うべきものと考えます。

質問事項
一の2 いわゆる中国残留邦人支援法の改正法の本格施行から2年弱経過したが、これまでの施策、効果及び課題について伺う。

回答
 いわゆる中国残留邦人等支援法による新たな支援策では、老齢基礎年金の満額支給と、それを補完する生活支援給付による経済的支援を拡充するとともに、支援給付の実施機関に、中国残留邦人等に理解が深く、中国語等ができる支援・相談員を配置しています。また、地域で実施する交流事業への支援、通訳の派遣等を行う地域生活支援事業も併せて開始されました。
 新たな支援策により、経済的には老後生活の安定への配慮がなされたと考えられますが、言葉の問題や地域住民との交流が進まないなどの課題もあり、都と区市町村とが連携して地域の日本語教室や交流事業等に気軽に参加できる仕組みを整え、社会的自立を促していくことが重要と考えます。

質問事項
一の3 市区町村に設置された「支援・相談員」は、質の確保が求められている。「支援・相談員」設置についての現状と課題、更なる質の向上について所見を伺う。

回答
 中国残留邦人等の置かれた状況に配慮し、きめ細かく支援していくためには、支援・相談員の資質及び能力の向上が重要です。
 都は、平成20年度から、中国残留邦人等への理解を深め、業務に当たっての基礎的な知識、心構え等を身に付けさせることを目的に、支援・相談員を対象に随時研修等を行い、資質及び能力の向上に努めています。

質問事項
一の4 法改正により地域生活支援事業が開始されたが、全市区町村での実施に至っていない。高齢の帰国者相互の交流の場である「居場所づくり」が求められており、今後の市区町村での取組促進のために、都の積極的な支援が必要である。同事業のこれまでの取組と課題、今後の取組について伺う。

回答
 地域生活支援事業は、中国残留邦人等の自立を支援するため、地域における支援ネットワークの構築、日本語学習者への支援、通訳の派遣等を行うことにより、地域の一員として普通の暮らしを送れるよう支援する事業であり、都内では、18区15市が実施しています。
 この事業の実施主体は、原則として区市町村とされており、特に帰国者が多く居住する区市町村に主体的な取組を広げていくことが課題となっています。
 都としても、区市町村に対して、支援連絡会や研修の実施などを通じ、取組の拡充に向けた働きかけや支援を行っています。

質問事項
一の5 中国残留邦人の高齢化に当たり、今後、中国語が通じる医療機関や介護施設などの設置や情報提供、関係する従事者の育成を図るべきだが、所見を伺う。

回答
 中国残留邦人等が高齢化し、医療機関や介護施設を利用する機会が多くなっているため、日本語の習得が十分でない中国残留邦人等に対しては、都又は区市町村が、自立支援通訳員を派遣して対応しています。
 自立支援通訳員の資質及び能力の向上を図るため、都は、平成20年度から都内全域の自立支援通訳員等を対象に、特に医療機関を受診する際の対応や心構え等についての研修を実施しています。
 なお、医療機関については、既に東京都医療機関案内サービス「ひまわり」で、中国語等による電話相談を行っているほか、中国語等で対応可能な医療機関をインターネットで検索できるサービスを行っています。

質問事項
一の6 中国残留邦人が日本に帰国した後、二世と同居できないのは人道的に問題である。国による二世の収入認定基準の緩和は、周知が十分されていない。更なる周知と、収入の多寡によらず一世と同居できる制度とするよう、国に求めるべきだが、見解を伺う。

回答
 平成21年6月から、親子の同居を希望する支援給付受給世帯が二世との同居を実現し、老後の生活を安定させるため、同居する二世の収入の認定方法について配慮がなされました。
 支援給付の実施機関に対しては、6月に説明会を実施し、適切な事務処理を行うよう指導してきましたが、制度の趣旨が十分に理解され、運用に遺漏がないよう、取扱いについて、引き続き周知を図っていきます。

質問事項
一の7 二世・三世について、日本語教育、就労支援、生活保護の適用等の配慮を始めとした支援のプログラムを都において作成し、その開発・作成を国に求めることが必要である。二世・三世の現状の課題と取組について、見解を伺う。

回答
 二世等にとって、社会的、経済的自立を図る上で、日本語習得や就労が課題となっています。
 中国残留邦人等と同伴帰国した二世等については、地域生活支援プログラム事業の中で、日本語教室等の紹介や就労支援等が受けられることとなっています。
 また、国が定める地域生活支援プログラム事業実施要領で掲げられた支援メニューについては、例示されたもののほか、中国残留邦人等のニーズに応じて地元自治体が独自に作成することができます。

質問事項
一の8 改正支援法の施行により、本人だけでなく二世・三世の生活実態の調査が可能となるが、施策を検討するために実態調査をするべきである。二世・三世については、国の援護対象の同伴家族だけでなく、実際に困窮する呼び寄せ家族についても実態を把握するべきだが、併せて見解を伺う。

回答
 現在、国において、各種支援策をよりきめ細かく実施していく参考とするため、いわゆる呼び寄せ家族も含めた中国残留邦人等の生活実態・状況を調査しています。

質問事項
一の9 中国残留邦人等は既に高齢化しており、できるだけ早期に、住み慣れた地域で、良好な住環境を整える必要があるが、都営住宅の入居に関して、見解を問う。

回答
 中国残留邦人等に対しては、既に都営住宅条例において、居住の安定について特別の配慮が必要であると認める者として、都営住宅の特別割当を行っています。
 また、都内の広範囲にわたり実施している都営住宅の一般募集においても、中国残留邦人等支援給付受給者に対して、7倍の倍率優遇等を行っています。
 今後も、これらの優遇措置について、的確に運用してまいります。

質問事項
一の10 新たな支援策のよりよい運用とするために、「中国帰国者生活支援検討委員会」等を設置し、当事者及びボランティアとの定期的継続的協議の場を設け、実効ある運用に努めるべきだが見解を伺う。

回答
 都では、区市町村との支援連絡会で当事者のお話を伺う機会を設けているほか、ボランティアとの意見交換も必要に応じて行っています。
 今後とも、必要に応じて随時対応していきたいと考えます。

質問事項
一の11 学校教育においては、各教育機関に在籍する中国帰国者の家族の正確な把握に努め、特別な手立ての事業の策定・継続・充実に努めるべきだが、見解を伺う。

回答
 都教育委員会は、海外帰国児童・生徒、中国引揚児童・生徒、在日外国人児童・生徒等で公立小・中学校に就学している者のうち、日本語能力が十分でない児童・生徒に対して、通常の教科についての学習理解及び生活習慣の習得を容易にし、教育効果の向上を図るため、都独自に日本語学級の制度を設け、特別に日本語習得のための授業を行っています。
 この日本語学級は、対象となる児童・生徒が10人以上通級することとなる場合、学級を設置することができ、学級数に1を加えた教員を配置しています。
 また、学齢を超過した義務教育未修了者で日本語能力が十分でない者に対しては、働きながら学べるよう、夜間学級として、この日本語学級を設置しています。
 日本語学級の設置に至らない場合でも、対象となる児童・生徒が5人以上在籍する学校には、毎年度予算の範囲内で、国の制度である日本語指導教員を配置しています。
 なお、都立高校の入学者選抜においては、4校で中国等からの引揚生徒に対する募集枠を設けており、平成21年度入学者選抜では、募集枠24名に対して13名が受検しました。また、外国籍を有し、入国後の在日期間が原則として3年以内の生徒が都立高校共通問題を使用する都立高校を受検する場合には、ひらがなのルビを振った問題で受検できるようにしています。

質問事項
一の12 雇用、住宅、就労、医療、教育などの諸問題がある中、全庁横断的な取組を行い、支援計画やプログラムを策定することが必要と考える。今後の取組についての見解を伺う。

回答
 都においては、従前から中国残留邦人等の地域社会における早期の自立の促進及び生活の安定を図るため、都営住宅の特別割当や都立高等学校における引揚生徒を対象とした入学者選抜の実施、都立職業能力開発センターの入校案内などの支援を、関係各局の連携のもと行っています。
 今後とも、中国残留邦人等の置かれた状況に配慮し、適切に対応していきます。

平成21年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  柳ヶ瀬裕文

質問事項
一 医療の安全確保について

一 医療の安全確保について
 医療法第25条第1項に基づく立ち入り検査について、東京都では都内の全病院を対象とした定例的な検査と様々な情報を根拠として臨時に実施する検査を実施している。そこで以下質問する。
1 法では都道府県知事が「必要があると認めるときは」立ち入り検査が実施ができると規定されているが、東京都はこの立ち入り検査の必要性をどのような基準で判断しているのか。また東京都はマスメディアにおける報道などを広く収集し、医療の安全確保という役割を果たすため、積極的に立ち入り検査を実施することが望まれるが所見を問う。
2 臨時に実施した立ち入り検査について、その事案及び指導内容を公開していないのはなぜか。またその結果を広く公開し再発防止に役立てるべきだと考えるが所見を問う。

平成21年第四回都議会定例会
柳ヶ瀬裕文議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 医療の安全確保について
1 医療法による病院への知事の立入検査について、都では検査の必要性をどのような基準で判断しているのか。また、都は報道などを広く収集し、医療の安全確保の役割を果たすため、積極的に立入検査を実施するべきだが、所見を伺う。

回答
 都は、都内すべての病院を対象に、病院が、医療法及び関係法令により規定された人員及び構造設備を有し、かつ、適正な管理を行っているか否かについて、定期的に立入検査を実施しています。
 また、法令違反が疑われる場合や、医療を安全に提供する上で管理上重大な問題があることが疑われる場合には、臨時の立入検査を実施しています。

質問事項
一の2 臨時に実施した立入検査について、その事案及び指導内容を公開していないのはなぜか。またその結果を広く公開し再発防止に役立てるべきだが、所見を伺う。

回答
 個別の病院の立入検査の結果は、病院の適正な運営を図る目的で、改善が必要な点を指摘し、当該病院へ通知を行っていますが、公表については、当該病院の事業運営に支障をきたすおそれがあるため、原則として行っていません。
 しかし、被害の拡大防止や他の病院の類似事例の発生防止を図る必要がある場合などには、立入検査の結果をその都度公表しています。
 また、定例の立入検査の全体的な状況や、他の病院への警鐘となるような事例については、取りまとめの上、公表しています。
今後とも、病院においてより安全に医療が提供されるよう、積極的に医療安全対策の推進に資する情報提供を行っていきます。

平成21年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  大島よしえ

質問事項
一 区東北部医療圏におけるがん診療体制の拡充強化について
二 都営住宅の諸課題について

一 区東北部医療圏におけるがん診療体制の拡充強化について
 厚生労働省は、地域におけるがん診療の中心的な役割を担う「地域がん診療連携拠点病院」を二次医療圏に1カ所程度整備する方針をかかげています。また、都は08年から5カ年計画である「東京都がん対策推進計画」で、「地域拠点病院が二次保健医療圏におけるがん医療の中心として、地域のがん医療水準の向上に向けた取組を行い、認定病院は地域拠点病院の取組に協力」するとして、都内12カ所の「地域がん診療連携拠点病院」を整備し、加えて都独自の「東京都認定がん診療病院」を10カ所認定しています。
 さらに「東京都がん対策推進計画」では、すべての「地域がん診療連携拠点病院」および「東京都認定がん診療病院」で、手術、抗がん剤による化学療法、放射線療法を効果的にくみあわせた治療をおこなっていく、「すべての拠点病院及び認定病院において、放射線治療を実施」するとし、施設・設備への財政支援を実施しています。
ところが、区東北部医療圏( 飾区、足立区、荒川区)には、区東部医療圏(江東区、墨田区、江戸川区)とともに、「地域がん診療連携拠点病院」も「東京都認定がん診療病院」も、1カ所もありません。しかも、 飾区にある慈恵医大青戸病院は、がんの放射線治療を現在おこなっており、多くの地域住民の頼みの綱となっていますが、老朽化にともなう病院の建て替え後は、放射線治療から撤退する方針をあきらかにしています。このままでは、 飾区内で放射線治療を行なう病院がなくなり、区東北部医療圏のがん診療体制はいっそう後退することになってしまいます。そこで伺います。
1 「東京都がん対策推進計画」の期間内(2012年度まで)に、どうやって区東北部医療圏に「地域がん診療連携拠点病院」を整備するのか、具体的方針をあきらかにしていただきたい。
 治療の経過で毎日通院しなければならない患者にとって放射線治療は、精神的にも、経済的にも、体力的にも大変つらいものがあります。 飾区に住む自営業の方は「パートさんを頼んでも青戸だから治療に行けた。本院になったら仕事を辞めなければならない」といい、40代の女性は「電車で本院に通院する途中、抗がん剤の影響でトイレに駆け込まなければならない事がたびたびあり、おむつをして通院せざるをえず、本当につらい」と訴えています。がん患者にとって、身近なところにがん放射線治療をおこなう医療機関があってこそ安心して治療を続けることができます。
2 慈恵医大青戸病院における放射線治療の存続をねがう住民の声は、大きくひろがっています。この願いの重さ、切実さを都はどのように受け止めていますか。
3 「東京都がん対策推進計画」を実現するため、慈恵医大青戸病院にたいし、「地域がん診療連携拠点病院」をめざした建て替え計画に見直して、放射線治療についても継続して実施するよう、都として要請すべきではないか。見解を伺います。
4 また、区東北部医療圏における放射線治療の体制をどう充実させるのか、都として具体策を講じる必要があると思うがどうか。お答えください。
5 東京都保健医療公社が運営する「東部地域病院」のがん診療体制を、抜本的に拡充強化することも重要だと思いますが認識と対応を伺います。
二 都営住宅の諸課題について
公営住宅法第1条には、「国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して、低廉な家賃で賃貸する」と書かれています。
 ところが、石原知事のもとで最初に編成した2000年度予算から、新規の都営住宅建設は見送られ1戸も建設されていません。また、以前は建替える場合は戸数を増やすこともしていましたが、現在は従前戸数以下に抑えたり、廃止したりして供給戸数を抑制しています。しかも、建替え後に建設される住宅は、入居者の世帯人数に合わせるといって1DK、2DKの小規模住宅の型別供給が中心で、子育て世代向けの住宅供給はきわめて限定されたものになっています。
 住宅困窮者に対して住宅セーフティネットの中核となる公営住宅を提供し、安心して暮らせる環境をつくることこそ自治体の役割です。石原都政の都営住宅建設からの後退は、厳しい経済状況が続き、都民の暮らしも雇用も脅かされるもとで、安い家賃で住みよい住宅に住みつづけたいという多くの都民の願いに逆行し、自治体の役割を放棄するものです。
 12月2日には、多くの都民が都営住宅に関する様々な要求を持ち寄って都に要請しましたが、都の姿勢は参加者の願いには程遠いものでした。こうした都民の願いを実現するために、以下質問します。
1 石原知事は、都内の住宅の数が世帯数を1割以上上回っているからと、都営住宅の新規建設を見送っていきましたが、低所得者に供給される良質で低廉な家賃の住宅が、どれくらいあると把握しているのか。
2 また、都も認めているように、入居を希望する都民が多数いるため、空き家住宅への応募倍率が上がっています。都営住宅の新規建設を再開すべきです。答弁を求めます。
 05年12月、国土交通省住宅局長名で「公営住宅管理の適正な執行」という通知が出され、07年12月には公営住宅法施行令が改正されました。都は、これに基づき07年8月から入居者の使用承継許可の範囲も原則配偶者のみとし、09年4月から入居収入基準を政令月収20万円から15万8000円に引き下げました。
 入居収入基準の引き下げにより、都は来年4月から据え置いていた家賃の大幅な値上げが行なわれる予定です。また、入居収入基準を少しでも超えた居住者は、収入超過者として家賃が大幅に値上げされ、明渡し努力義務まで生じるようになります。
3 大都市東京の場合、物価も高く、低家賃の住宅を確保することは困難です。これらの制度を元に戻すこと、少なくとも全国一律の基準を見直し、東京に見合った基準にするよう国に求めるべきです。
4 リーマンショックによる世界同時不況といわれる経済状況の悪化もあり、都は、今年4月からの都営住宅の家賃引き上げを1年間延期しました。しかし、今年の経済状況が好転したわけでなく、都民生活はさらなる厳しい状況に追い込まれています。わが党も要求した公社住宅の家賃引き上げ中止について、住宅供給公社は半年間の値上げ延期を決めました。低所得者層が居住する都営住宅において、来年4月からの家賃値上げはやめるべきです。答弁を求めます。
 都営住宅の使用承継制度の見直しが、深刻な事態を引き起こしています。
 がん末期の両親をみとるために同居した娘が、両親が次々と亡くなって、葬儀が終わった途端に退去が言い渡され、収入も少ない中で「都営住宅を追い出されたら暮らしていけない。悲しみを2倍3倍にする仕打ちを受けている」また、「同じ団地に住んでいた人が、親が亡くなったら近くの公園でホームレスになっていた」など、不安が訴えられています。都の資料でも、2007年8月25日以降、今年9月7日までに使用承継が認められなかった件数は、2361件、26.8%に及びます。
5 都民が、安心して住み続けられるよう使用承継制度は少なくても元の1親等に戻すべきです。答弁を求めます。また、介護同居の場合についても、親亡き後の生活が確立するまでの間、継続使用を認めるよう改善することを求めます。
6 都は、使用承継を例外的に認める範囲を、高齢者、障害者、病弱者に限って決めています。とくに病弱者については、難病患者、原爆被爆者、公害病認定患者を除き、都立病院、東京都保健医療公社病院の医師の診断者が必要とされていることが、承継手続きの際の障害となっています。です。普段から患者を診察しているかかりつけ医の診断書でも認めてほしいとの声が多数寄せられています。医者の資格に優劣があるわけでないのに、患者の病状を最もよく把握しているかかりつけ医の診断書が認められない理由は何か。
7 都営住宅居住者の高齢化が問題となっています。都の資料でも、名義人の年齢が、65歳以上の世帯は、56.6%となっており、建て替え住宅などでも、居住者の世帯構成によって、1DK、2DKの住戸が増え、若年ファミリー世帯などが入居できる居住面積の住戸の確保が難しくなっています。高齢化に対応し、ソーシャルミックスを促進するために、若年ファミリー世帯や、3世代ファミリー世帯などが入居できる間取りの供給を進めるべきと思うがどうか。答弁を求めます。
8 バリアフリー社会を実現するうえで、すべての都営住宅にエレベーターを設置することも急がれています。現在の設置基準は、4、5階建て、廊下型24戸以上の住宅とされていますが、いわゆる店舗付き住宅で、店舗に違法建築などがある場合、それが障害となりエレベーター設置が困難になっている棟があります。東京都が、この障害を取り除き、1日も早く設置できるようにすることが求められています。この問題をどのように解決しようとしているのかお聞かせください。
9 また、現在のエレベーター設置基準を下回っている住宅でも1日も早い設置を望む声は大変大きなものがあります。「いつまで待てばいいのか」という要望にどのようにこたえていくのか。計画も含め、おおよその時期を明確にしていただきたい。

平成21年第四回都議会定例会
大島よしえ議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 区東北部医療圏におけるがん診療体制の拡充強化について
1 「東京都がん対策推進計画」の期間内(2012年度まで)に、区東北部医療圏内に「地域がん診療連携拠点病院」をどう整備するのか、具体的方針を伺う。

回答
 「東京都がん対策推進計画」でお示ししているとおり、日本医科大学付属病院が区東北部医療圏を担当する地域がん診療連携拠点病院として指定されており、高度ながん医療の提供、医療機関への研修実施、圏域内の医療連携など積極的な取組を行っています。

質問事項
一の2 慈恵医大青戸病院における放射線治療の存続を願う住民の声をどのように受け止めるか、見解を伺う。

回答
 東京慈恵会医科大学附属青戸病院が放射線治療を廃止することについては、おおむね住民の理解が得られていると聞いています。
 区東北部医療圏においては、日本医科大学付属病院が地域がん診療連携拠点病院として高度な放射線治療を行っており、引き続き、地域の医療機関と連携しながら適切ながん医療を提供していきます。

質問事項
一の3 「東京都がん対策推進計画」を実現するため、慈恵医大青戸病院に対し、「地域がん診療連携拠点病院」を目指した建て替え計画に見直して、放射線治療についても継続して実施するよう、都として要請すべきだが、見解を伺う。

回答
 東京慈恵会医科大学附属青戸病院では、今後は放射線治療の取扱いを廃止し、本院の東京慈恵会医科大学附属病院に高度な放射線治療を集約化すると聞いており、都としての要請は考えていません。

質問事項
一の4 区東北部医療圏における放射線治療の体制をどう充実させるのか、都として具体策を講じる必要があると考えるが、見解を伺う。

回答
 区東北部医療圏においては、日本医科大学付属病院が地域がん診療連携拠点病院として高度な放射線治療を行っており、引き続き、地域の医療機関と連携しながら適切ながん医療を提供していきます。

質問事項
一の5 東京都保健医療公社が運営する「東部地域病院」のがん診療体制を、抜本的に強化することも重要だと考えるが、認識と対応を伺う。

回答
 東部地域病院におけるがん患者数は、ワンデイ調査によると、入院患者の約3割と、他の疾患よりも多い状況にあり、これまでも、MRIやCTなどの機器を活用した画像診断や手術療法など、がん医療の充実に努めてきました。
 今後とも、他の医療機関との役割分担と連携のもと、適切な医療提供を行っていきます。

質問事項
二 都営住宅の諸課題について
1 知事は、都内の住宅の数が世帯数を1割以上上回っているからと、都営住宅の新規建設を見送ってきたが、低所得者に供給される良質で低廉な家賃の住宅がどれくらいあると把握しているのか伺う。

回答
 平成18年の住生活基本計画(全国計画)においては、住宅単体のみならず居住環境を含む住生活全般の「質」の向上を図る観点から、住宅の安全性や耐震性などに関する「住宅性能水準」、安全・安心や美しさ・豊かさ等に関する地域の「居住環境水準」及び住宅規模に関する「居住面積水準」が設定されています。これらの水準のうち、例えば、健康で文化的な住生活の基礎として必要不可欠な住宅の面積である最低居住面積水準(単身者は25平方メートル、二人世帯は30平方メートル)を上回る都内の借家は、単身者については約210万戸あり、二人世帯については約160万戸あると推計されます。
 また、低廉な家賃で供給される公営住宅における一般世帯の家賃算定基礎額の上限に相当する月額5万円未満の借家は、都内に約70万戸あり、高齢者・障害者等の世帯の家賃算定基礎額の上限に相当する月額7万円未満の借家は、都内に約130万戸あると推計されます。

質問事項
二の2 都も認めているように、入居を希望する都民が多数いるため、空き家住宅への応募倍率が上がっている。都営住宅の新規建設を再開すべきだが、見解を伺う。

回答
 既に都内の住宅の数が世帯数を1割以上上回っており、さらに将来の人口減少社会の到来が見込まれていることなどを踏まえ、都営住宅については、新規の建設を行わずに、ストックを活用して、公平かつ的確に供給していきます。

質問事項
二の3 東京は物価も高く、低家賃の住宅の確保は困難である。都営住宅の入居収入基準を元に戻すこと、少なくとも全国一律の基準を見直し、東京に見合った基準にするよう国に求めるべきだが、見解を伺う。

回答
 平成21年4月施行の改正公営住宅法施行令による入居収入基準の改正は、公営住宅を住宅困窮者に公平かつ的確に供給するためのものであり、東京都住宅マスタープランの内容とも整合することから、見直しを行う考えはありません。

質問事項
二の4 経済状況の悪化により、都民生活は更なる厳しい状況に追い込まれている。低所得者が居住する都営住宅において、来年4月からの家賃値上げはやめるべきだが、見解を伺う。

回答
 公営住宅法施行令改正に伴う都営住宅の使用料改正については、引上げを1年間延ばすとともに、5年間で段階的に引上げを実施する国の経過措置を講じてもなお負担の変化が大きい、収入区分が2段階上昇する世帯において、この期間を7年間とする措置を既に講じており、適切と考えています。

質問事項
二の5 都民が安心して住み続けられるよう、使用承継制度は元の一親等に戻すべきだが、見解を伺う。また介護同居の場合についても、親亡き後の生活が確立するまでの間、継続使用を認める改善をすべきだが、見解を伺う。

回答
 都営住宅における使用承継の範囲は、入居者、非入居者間の公平性を確保する観点から、高齢者、障害者など居住の安定を図る必要のある者への一層の配慮を加えた上で、承継の厳格化を求める国の通知や東京都住宅政策審議会の答申も踏まえ、原則として配偶者に限ることとしたものであり、元に戻すことは考えていません。
 なお、使用承継の対象とならない方には、6か月の猶予期間を設けるとともに、賃貸住宅の募集情報の提供、区市町村の窓口を紹介するなど、きめ細かい対応に努めています。

質問事項
二の6 使用承継を病弱者に例外的に認める際の診断書について、患者の病状を最も把握しているかかりつけ医の診断書が認められない理由を伺う。

回答
 使用承継は、原則として配偶者に限り認められる中で、病弱者の使用承継については、難病や公害病認定患者など、特別な事情があると判断される場合に認められるものです。
 難病患者や公害病認定患者等以外の病弱者の使用承継については、病名だけでは、使用承継の対象者である特別な事情にあるかどうか判断できないことから、都が設置した都立病院、又は都が中心となり設立した東京都保健医療公社が設置した病院の医師に的確に診ていただき、その医師の診断書を踏まえ行っています。

質問事項
二の7 高齢化に対応し、若年ファミリー世帯や三世代ファミリー世帯などが入居できる間取りの供給を進めるべきだが、見解を伺う。

回答
 都営住宅の建替えに当たっては、居住者の世帯人数により基準を設け、住みやすい間取りとなるよう、工夫しながら住宅を供給しています。
 基準の設定に当たっては、都営住宅は都民共有のセーフティーネットであることから、最低居住面積水準を確保するとともにバリアフリーを考慮した面積としており、適切なものと考えています。
 なお、建替えで建設する2人世帯用住宅については、高齢者や若年ファミリー世帯など多様な世帯が活用できるよう、平成20年に間取りの見直しを行いました。

質問事項
二の8 店舗付住宅の店舗に違法建築がある場合、エレベーター設置が困難になる問題について、どのように解決しようとしているのか伺う。

回答
 都営住宅の下層部分にある併存店舗に建築基準法の確認を受けていない増築がなされている場合は、所管の建築指導部局と連携し、当該店舗の所有者に対して、是正への協力を求めています。エレベーター設置の際は、計画通知を提出し、建築基準法に適合していることの確認を受ける必要があるため、是正が行われない限りエレベーター設置は困難です。

質問事項
二の9 エレベーター設置基準を下回っている住宅における設置計画、設置の時期について伺う。

回答
 既設の都営住宅へのエレベーター設置基準は、費用対効果などを勘案して定めたものであり、現時点で設置基準を下回る小規模な住棟にエレベーターを設置する考えはありません。

平成21年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  斉藤あつし

質問事項
一 都営住宅の入居者の駐車場利用料について

一 都営住宅の入居者の駐車場利用料について
 都営住宅の駐車場については前回の文書質問にて活用の現状をお答えいただきました。その答弁を受けて伺います。
1 現在ある駐車場45,616区画中8,741区画が未契約であるとのことだが、契約数36,875区画のうち、都営住宅外の地域住民と契約している区画数は?
2 都営住宅外の地域住民とは東京都民であるという認識でよいか?
3 地域住民が新規に借りたいとの意思がある場合に申し込みに必要な条件、および必要提出書類等は何か?
4 駐車場の金額設定について、現地を確認し不動産業者等から賃料を聞き取り、その平均額を駐車料金としているとのことであるが、地域によって民間駐車場の賃料は異なってくるため、都営住宅ごとに賃料も変わってくる。全都営住宅の駐車料金のなかで最低金額と最高金額はいくらで、そこはどこか?また、全体の金額の傾向(どの金額帯が多いのか等)は?
5 都営住宅住民の住宅賃料は所得に応じた賃料になっていたはずだが、それに伴って駐車場の賃料については所得割になっていないようだがその理由について伺う。
6 未契約駐車場を地域開放する場合に、地域の民間駐車場の平均金額を賃料としているが、都営住宅住民と申し込みのあった地域住民の両者とも所得によって賃料を算定する必要があると考えるが見解は?もちろんこの場合は健康上等の理由で車両の必要性が認められる場合などの条件が伴うことは理解した上でである。
7 都営住宅そのものは東京都の施設であることからも都民に対しての公平性という観点から6の質問となるわけであるが、都営住宅は低所得者の方の住宅というのが現在の在り方である。国内をはじめ世界的にも経済が芳しくない状況において、円高によるデフレ状態が続いている現状でさえ、高齢者をはじめとする低所得の方々の生活は苦しくなっている状況である。そんな中での結果的な駐車賃料の値上げが行われた明確な理由を求む。
8 また、最近の住宅家賃の動向についても伺う。

平成21年第四回都議会定例会
斉藤あつし議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 都営住宅の入居者の駐車場利用料について
1 現在ある駐車場45,616区画中8,741区画が未契約であるとのことだが、契約数36,875区画のうち、都営住宅外の地域住民と契約している区画数を伺う。

回答
 平成21年3月末現在、都営住宅等の使用者及び同居者以外の方の契約区画数は、312区画です。

質問事項
一の2 都営住宅外の地域住民とは東京都民であるという認識でよいか伺う。

回答
 平成21年3月末現在の利用者は、すべて都民又は都内の事業者です。

質問事項
一の3 地域住民が新規に借りたいとの意思がある場合に、申込みに必要な条件及び必要提出書類等は何か伺う。

回答
 都営住宅駐車場の地域住民への開放は、恒常的に空きがあり近隣住民等から利用希望がある場合に、公有財産の有効活用を図るため、入居者の利用に支障がない範囲で実施しています。
 利用者の資格は、東京都営住宅条例第84条第3項及び同条例施行規則第61条に基づき、当該駐車場から2キロメートル以内の住民又は事業者の方などとなっています。
 また、申込みの際に提出いただく書類は、駐車場利用申込書のほか、住民票又は運転免許証の写し、法人登記簿謄本、自動車検査証の写しなどです。

質問事項
一の4 全都営住宅の駐車料金の最低金額と最高金額の金額と場所を伺う。また、多い金額帯など、全体の金額の傾向について伺う。

回答
 平成21年3月末現在、都営住宅の駐車料金のうち、最も低いのは町田市内の住宅の月額5,000円、最も高いのは千代田区内の住宅の月額43,000円です。
 全体の駐車料金の平均額は約11,500円で、月額10,000円未満の駐車場が約5割を占めており、最も多い金額帯は8,000円です。

質問事項
一の5 都営住宅の住宅賃料は所得に応じたものとなっているが、駐車場は所得割になっていないようである。理由を伺う。

回答
 都営住宅は、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸する住宅であることから、その家賃は、公営住宅法及び同法施行令により、居住者の収入を基本とする応能応益家賃制度を採用しています。
 一方、都営住宅の駐車場は同法上、共同施設に位置付けられることから、応能応益家賃制度は当てはまりません。このため、駐車場の料金については、公有財産は適正な対価なくして貸し付けてはならないという地方自治法の原則を踏まえ、東京都営住宅条例第89条第3項に基づき、近傍の民間駐車場の賃料を考慮して定めています。

質問事項
一の6 未契約駐車場を地域開放する際は、都営住宅住民、地域住民の両者とも所得によって賃料を算定すべきだが見解を伺う。

回答
 都営住宅の駐車料金は、利用者が当該都営住宅の居住者であるか否かにかかわらず、東京都営住宅条例第89条第3項に基づき、近傍の民間駐車場の賃料を考慮して定めています。

質問事項
一の7 高齢者を始めとする低所得者の方々の生活が苦しくなっている状況下において、結果的に駐車賃料の値上げが行われた明確な理由を伺う。

回答
 駐車料金は、近傍の複数の民間駐車場の賃料の平均額を基に定めることとし、調査の結果、近傍の民間駐車場の賃料と乖離があった場合には、必要な見直しを行っています。

質問事項
一の8 最近の住宅家賃の動向について伺う。

回答
 都内全域で見ると、民間賃貸住宅の家賃は、最近10年では、ほぼ横ばいで推移しています。

平成21年第四回都議会定例会

平成21年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  清水ひで子

質問事項
一 多摩地域の漁業振興について

一 多摩地域の漁業振興について
 はじめに奥多摩湖のアオコの大量発生の問題についてです。
 奥多摩湖のアオコ大量発生は2007年には多少減少したものの、2008年にはまた増加するなど毎年のように問題になっています。悪臭、景観などで、釣り客、ハイカーなど奥多摩湖の水と緑のふれあいを求めてくる年間100万人とも言われる観光客などにマイナスの影響を与えています。良好な水質にしてほしいというのは、地元の人たちばかりではなく、観光客も含めて強い要望になっています。
 奥多摩湖のアオコ対策の現状は、水道局が行っているアオコ発生場所の広がりを押さえ、表層部のアオコを底の方に移送するというものですが、現在の発生状況を考えると、事態は対策をもっと強める必要があります。
 アオコ発生の対策は、水道水の水質確保の点ばかりでなく、奥多摩の環境改善、地域経済振興をすすめるうえで、重要性な柱となるものです。関係者の連携した取り組みが求められております。
1 生活系・養魚場・温泉などからの排水対策、森林の適切な管理による自然流水の水質浄化対策、発生してしまった湖での繁殖抑制など、関係自治体、東京都の各関係局などの連携した取り組みが欠かせません。また、東京都の各研究機関の協力も得て、都として、奥多摩湖アオコ対策プロジェクトなどを発足させ、一日も早く長期的・系統的な対策にのりだしてはどうですか。答弁を求めます。
 奥多摩湖では、ブラックバスの放流対策も重要な課題となっています。ブラックバスの無秩序な放流により在来種の量が激減し生態系に、深刻な問題を起こしているからです。
2 ブラックバスを放流することが禁止されていることを知らない人も、まだ少なくありません。都として奥多摩湖に「ブラックバスを放流するな」とのお知らせを徹底するよう求めます。
3 琵琶湖などでは、釣り上げたブラックバスを再放流しないよう「回収ボックス」を設置し、その回収を徹底しているとのことです。都としても、こうした回収ボックスを設置するよう求めます。
 次に東京都が、関係者と取り組んでいる、ヤマメ発眼卵放流事業についてです。
 これは漁業協同組合、釣り団体、旧水産試験場、東京都が連携・協力して、奥多摩、檜原でヤマメ発眼卵放流をおこない、もともと生存していた多摩川系ヤマメを保存、育成するというものです。東京都が、放流日・場所・数量などを内容とする発眼卵放流の計画を作成し、養殖センター産のヤマメ発眼卵約10万個を参加者が分担して約200個ずつの特殊なカゴに入れて各地域に放流しています。そして奥多摩で多くのヤマメが成長し、釣り客、キャンプ、観光に訪れる方々の観光資源となり、奥多摩の地域経済振興に役立っています。
 ところが、この発眼卵放流事業をいつまで継続できるか、不安になっています。
 それは、この発眼卵放流に使われる「ふ化器」と言われるカゴが、釣り団体の寄附により補充していますが、一つ2000円ほどかかり、それを補充することが釣り団体にとっては大きな負担になっているからです。台風などがくると流れてしまい、年に数個が消耗してしまいます。
 この発眼卵放流には、「ふ化器」といわれる魚の卵をいれる特殊なボックスが欠かせません。それは、長年の研究、経験から成長しやすい河床をみつけ埋められ、魚が外敵から守られ育っていく上でも、必要不可欠なものです。しかも、卵からの放流は、稚魚放流に比べ経費がかからず、良い条件の河川であればほぼ100%近くが稚魚となり、その効果が確認されています。
4 釣り団体からは、不足分を東京都で補って欲しいとの要望が出ています。こうした要望に応えヤマメの発眼卵放流に使うボックスの不足分を補うことは、多摩の水産業、観光業など地域経済振興につながると思いませんか。都として支援をしてはどうですか。答弁を求めます。
 一方、養殖によって育成されている「奥多摩やまめ」は、多摩地域の特産品として開発され、刺身や寿司、洋食などにも広く利用され需要拡大が見込まれ、地元の期待が強いものがあります。
 この「奥多摩ヤマメ」の需要拡大の上で、魚病の発生は養殖業者の経営に大きな影響をもたらし、河川への魚の放流・増殖に支障が生じるので、東京都では優良種苗の生産・配付を充実するとともに養殖業者に対する指導を強化し、魚病被害のまん延防止・被害の軽減化を図ることが必要です。
 しかし、養殖技術の改良・普及、種苗の生産配布、漁病対策をおこない養殖業の経営安定を図る事業をになってきた奥多摩水産試験場が、2004年度から奥多摩さかな養殖センターとなり事業が東京都農林水産振興財団に委託されるにともない、水産試験場の漁病対策専門の担当者が常駐しなくなり、漁病対策に遅れが生じ、地元から改善を求める声が高まっています。
 2003年度までの5年間の漁病被害率が平均約8%だったのにたいして、2004年度以降の5年間の漁病被害率は11%と3%も増えました。2007年度は、過去15年間で最高の被害率となっており、急いで対策する必要があります。
5 「奥多摩ヤマメ」の需要を拡大するうえで、都の支援は欠かせません。奥多摩水産試験場を復活するよう求めますが、いかがですか。
6 少なくとも、従来の漁病対策を従前の体制水準に回復するよう求めます。
7 奥多摩地域の内水面漁協の経営能力の向上と財務体質の改善をおこなうことも重要です。それは、養殖業者の経営力の強化につながっていきます。都として、河川漁協組合への支援を拡充するよう求めます。

平成21年第四回都議会定例会
清水ひで子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 多摩地域の漁業振興について
1 排水対策、水質浄化対策、繁殖抑制など、関係自治体、都の各関係局等が連携した取組が不可欠である。また、都の各研究機関の協力も得て、奥多摩湖アオコ対策プロジェクトなどを発足させ、1日も早く長期的・系統的な対策に乗り出すべきだが、見解を伺う。

回答
 小河内貯水池における水質保全対策(アオコ対策)については、昭和50年代には、奥多摩町及び小菅、丹波山両村と、水質保全に関する協定を結んだ上で、養魚場排水対策や下水道の整備を行い、アオコの栄養となる窒素やリンの流入削減対策を講じてきました。
 さらに、平成15年度からは、アオコの拡散防止を目的とした分画フェンスや、アオコの繁殖抑制などを目的とした表層水移送装置を設置するとともに、分画フェンスの効果を高めるため、第二取水口のゲート操作による放流水深の調整を行ってきました。
 こうした対策により、アオコの繁殖抑制に効果があると認められたため、今後も、これらの対策を継続して実施していくこととしており、現時点では新たな対策は考えていません。

質問事項
一の2 ブラックバスの放流禁止を知らない人もまだ少なくない。都として奥多摩湖への放流禁止の周知を徹底するべきだが、見解を伺う。

回答
 小河内貯水池においては、一部区域が禁漁区であることに加え、施設管理や水質保全の観点から、えさ釣りなどの行為を禁止するための看板を設置しています。
 ブラックバスの放流行為は、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律上の規制対象となっていることから、注意喚起のための看板の設置など他事例における取組状況等について、情報収集に努めています。

質問事項
一の3 琵琶湖などでは、釣り上げたブラックバスを再放流しないよう、「回収ボックス」を設置している。都も回収ボックスを設置するべきだが、見解を伺う。

回答
 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律では、ブラックバスの再放流は規制の対象となっていないことから、小河内貯水池における、いわゆる回収ボックスの設置について、実施する予定はありません。

質問事項
一の4 ヤマメの発眼卵放流に使うボックスの不足分を都が補うことは、多摩の水産業、観光業など地域産業振興につながると考えられる。見解を伺う。

回答
 内水面の漁業協同組合は、漁業法により漁業権免許を受ける条件として水産動植物を増殖させる義務を負っており、これに要する経費を組合員や釣り団体を含む一般遊漁者から徴収しています。
 ヤマメの発眼卵放流は、この増殖義務に基づき小河内漁業協同組合等、4つの内水面漁業協同組合が実施しているものです。
 このため、発眼卵放流に使うボックスの不足分を都が補うことは考えていません。

質問事項
一の5 「奥多摩ヤマメ」の需要拡大には都の支援が欠かせない。奥多摩水産試験場を復活させるべきだが、見解を伺う。

回答
 都は、旧奥多摩分場における種苗生産事業の効率的な運営と本場との一体的調査研究活動を進めるため、種苗生産事業と試験研究を分離し、平成16年度から、種苗生産事業を農林水産振興財団へ委託しています。
 財団の奥多摩さかな養殖センターでは、漁業協同組合の要望を踏まえ稚魚・発眼卵を安定的に生産・配付しており、本事業を着実に実施しています。
 したがって、旧奥多摩分場を復活させることは考えていません。

質問事項
一の6 少なくとも、従来の魚病対策を従前の体制水準に回復するべきだが、見解を伺う。

回答
 都は、平成16年度の種苗生産事業の委託後も、奥多摩さかな養殖センターに魚病担当者を常駐させ、防除や飼育に関する巡回指導、魚病診断や治療指導など、適切な魚病対策を講じています。
 なお、魚病被害率については年によって変動があり、旧奥多摩分場の存廃が原因ではありません。
 したがって、従前の体制に戻すことは考えていません。

質問事項
一の7 奥多摩地域の内水面漁協の経営能力の向上と財務体質の改善を行うことも重要である。都として、河川漁協組合への支援を拡充するべきだが、見解を伺う。

回答
 都は、漁業協同組合の健全な発展を図るため、全ての漁業協同組合に対し経営指導等を適切に行っています。奥多摩地域の内水面漁業協同組合に対しては、奥多摩やまめを用いた加工品開発や、パンフレットによる普及等の支援も行っています。
 また、内水面漁業の振興を図るため、マス類やアユ等に被害を与えるカワウの防除や、養殖池などの施設整備についての支援も行っています。

平成21年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  石毛しげる

質問事項
一 周産期医療について

一 周産期医療について
 周産期医療は、今や地域医療システムとして円滑に動かなければ崩壊してしまう危機的な状況にある。産科診療所では医師の高齢化や訴訟問題の増加、勤務医にではおいては、劣悪な労働環境などで医師不足が起きている、また看護師、助産師なども同様であり衰退の一途をたどっている。そのことによって、一次医療機関で対応できるはず正常分娩の妊婦が二次、三次に殺到し、高次医療の機能が破綻すると事態に至っている。
 二次、三次が機能しなければ、一次医療機関がリスクを常にはらんでいる分娩を扱うことはできない。二次、三次の機能は勿論であるが、地域周産期医療システムを維持するための必須条件として、一次を担う産科診療所や助産所の存続と、緊急の対応できるスーパー総合周産期母子医療センターなどの連携が重要である。こうした周産期医療が1日も早くも安心、安全な環境を構築することが求められる。
1 周産期医療の緊急対策である、24時間常時受け入れ態勢を整えた「スーパー総合周産期センター」の設置、東京消防庁内への周産期搬送コーディネーターの配置の二点について、その内容を伺う。
2 周産期医療の母体搬送に関して、3ヶ所有るスーパー総合周産期センターとその他の総合周産期母子医療センターとの違いと、スーパー総合周産期センターへ搬送された母体の数及びどのような病状の妊婦が搬送されているのか伺う。
3 一般の救急医療機関と周産期救急それぞれの医療機関数と、これら二つの機能を備えた医療機関の数を伺う。
4 周産期母子医療センターへの母体・新生児の搬送件数及び搬送元について伺う。
5 周産期母子医療センターにおける経膣分娩と帝王切開の分娩数について伺う。
6 産婦人科医の使命は本来妊娠・出産にかかる病気、合併症を伴う出産に対応するものと考える。
周産期にかかる周産期母子医療センター、病院、診療所、助産所のリスクに応じた役割分担について伺う。
7 都における看護師を養成する機関(都立、その他)、助産師を養成する機関の数はいくつか。平成21年3月に都立看護専門学校を卒業した者のうち、助産師コースへ進学した者はどれくらいいるのか、それぞれ伺う。
8 医師と助産師との役割分担から、正常経過の分娩については、助産師を積極的に活用することで、産婦人科医の業務負担を軽減させることが可能である。都として助産師の活用についてどのように推進していくのか伺う。

平成21年第四回都議会定例会
石毛しげる議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 周産期医療について
1 周産期医療の緊急対策である、24時間常時受け入れ態勢を整えた「スーパー総合周産期センター」の設置、東京消防庁内への周産期搬送コーディネーターの配置の2点について、その内容を伺う。

回答
 「スーパー総合周産期センター」は、総合周産期母子医療センターと救命救急センターが、密接な連携を取りながら、救命処置が必要な妊産褥婦をいつでも受け入れ、母体救命を行うものです。平成21年3月25日から運用を開始し、現在、都内に3か所指定しています。
 周産期搬送コーディネーターは、総合周産期母子医療センターによる担当区域内での搬送調整が困難な場合に、都内全域を対象として受入先の調整を行うもので、平成21年8月31日から業務を開始しました。

質問事項
一の2 周産期医療の母体搬送に関して、3か所ある「スーパー総合周産期センター」とその他の総合周産期母子医療センターとの違いと、「スーパー総合周産期センター」へ搬送された母体の数及びどのような病状の妊婦が搬送されているのか伺う。

回答
 総合周産期母子医療センターは、ハイリスクの妊産褥婦と新生児に対する高度な周産期医療を提供する医療機関です。
 「スーパー総合周産期センター」は、こうした総合周産期母子医療センターとしての機能に加えて、救命救急センターとの連携により、脳出血などの緊急な母体の救命処置にも当たるもので、近くの救急医療機関等で受入れが決まらない場合には、必ず受入れを行います。
 平成21年11月末までに、母体救命対応としての事案は29件あり、このうち、「スーパー総合周産期センター」で受け入れた件数は11件です。
 また、搬送された妊産褥婦の主な病状は、脳血管障害やお産直後の出血性ショックなどがあげられます。

質問事項
一の3 一般の救急医療機関と周産期救急それぞれの医療機関数と、これら2つの機能を備えた医療機関の数を伺う。

回答
 平成21年12月現在、東京都指定二次救急医療機関は256か所、周産期母子医療センターは23か所、このうち、これら2つの機能を備えた医療機関は21か所です。

質問事項
一の4 周産期母子医療センターへの母体・新生児の搬送件数及び搬送元について伺う。

回答
 平成20年度における周産期母子医療センターの母体搬送受入件数は、1,558件です。
 主な搬送元は、他の医療機関からが1,349件であり、自宅からが139件となっています。
 新生児の搬送受入件数は1,412件で、その主な搬送元は、他の医療機関からが1,369件、自宅からが30件となっています。

質問事項
一の5 周産期母子医療センターにおける経膣分娩と帝王切開の分娩数について伺う。

回答
 平成20年度に周産期母子医療センターで取り扱った経膣分娩は14,070件、帝王切開による分娩は5,871件です。うち、緊急帝王切開は2,580件です。

質問事項
一の6 産婦人科医の使命は本来、妊娠・出産にかかる病気、合併症を伴う出産に対応するものと考える。周産期にかかる周産期母子医療センター、病院、診療所、助産所のリスクに応じた役割分担について伺う。

回答
 周産期母子医療センターは、ハイリスクの妊娠・分娩及び高度な新生児医療に対応する、三次の医療機関としての役割を担っています。
 周産期連携病院などの二次の医療機関は、緊急帝王切開も含めミドルリスクの妊娠・分娩に対応します。
 ローリスクの妊娠・分娩は、一次医療機関が対応しますが、このうち助産所は正常分娩のみ対応します。

質問事項
一の7 都における看護師を養成する機関(都立、その他)、助産師を養成する機関の数はいくつか。平成21年3月に都立看護専門学校を卒業した者のうち、助産師コースへ進学した者はどれくらいいるのか、それぞれ伺う。

回答
 看護師を養成する機関は、都立が首都大学東京を含めて8校、その他は66校です。助産師を養成する機関は、都立が首都大学東京の1校、その他は15校です。
 平成21年3月に都立看護専門学校を卒業した者498名のうち、助産師受験資格取得のため進学した者は12名です。

質問事項
一の8 医師と助産師との役割分担から、正常経過の分娩については、助産師を積極的に活用することで、産婦人科医の業務負担を軽減させることが可能である。都として助産師の活用についてどのように推進していくのか伺う。

回答
 都は、平成20年度から、周産期母子医療センター等の医療機関が院内助産所や助産師外来の設置を促進するよう、助産師の確保や施設整備などに対する支援を行っています。
 また、院内助産所等の開設のノウハウなどに関する研修を実施しています。

平成21年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  和田宗春

質問事項
一 武道必修化について
二 教員の離任、離職の現況と対策について

一 武道必修化について
 我が国伝統の武道は、年齢・性別を超えて知性と体力の向上、人間形成の道として、国内はもとより海外にまで広く普及している。
 東京都においても、関係者の努力により、武道を通して礼節及び克己の精神を学びながら心身の鍛練に励む都民は確実に増加しており、武道は定着してきているところである。
 また、多くの都民は、地域の道場、体育施設などを活用し、各種武道に励んでいて、武道は都民生活に潤いをもたらしている。
 平成18年12月、60年ぶりに教育基本法が改正され、教育の目標に、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うことが位置付けられ、学校教育法も改正された。
 こうしたことを受け、平成20年1月の中央教育審議会答申において、保健体育科における武道の指導を充実し、我が国固有の伝統や文化により一層触れることができるようにすることが重要であると示され、平成20年3月、中学校学習指導要領の改訂により、武道が必修化されることとなった。
 現行の中学校学習指導要領では、「武道の領域は、第1学年においては、武道及びダンスのうちから男女とも1領域を選択して履修できるようにすること、第2学年及び第3学年においては、球技、武道及びダンスのうちから2領域を選択して履修できるようにすること」と示されており、必ずしもすべての生徒が武道を学習することとはなっていない。
 今回の改訂により、平成24年度からは、全中学校において武道の学習が開始されるが、今まで選択制であったこともあり、保健体育科の教諭でも武道の指導経験のない人が多いと聞いている。
1 このたびの学習指導要領の改訂により、中学校で武道が必修となり、平成24年度から完全実施となる。この中学校武道必修化の具体的内容と、これまでの都教育委員会の取組について伺う。
2 学校において、今後、武道が必修となることに伴い、武道の価値を生かした指導の充実のため、教員の指導力向上が喫緊の課題であると考えるが、都教育委員会は、この課題にどのように取り組んでいくか伺う。
二 教員の離任、離職の現況と対策について
1 東京都教育委員会では、教員の大量退職に伴う教員の大量採用を行っているが、小学校(全科)における受験倍率が特に低下しており、東京の教育の質の向上のため優秀な教員の確保は、差し迫った重要な課題である。一方、全国に目を向けてみると、教員採用選考の受験倍率は高く、教員になりたいと希望する優秀な受験者であっても、教員の職に就きにくい地域がある。こうした状況から、東京都教育委員会は、他県にまで足を延ばして新規採用教員の確保を行っているが、直ぐ辞めるような状況では意味が無い。新規採用教員のほとんどは、1年の条件附採用期間を経て正式採用となるものと考えているが、昨年度に新規採用された教員のうち、正式採用とならなかった人数について、全国と東京都の状況を伺う。
2 昨年度に新規採用された教員のうち、正式採用とならなかった理由について、全国と東京都の状況を伺う。
3 希望して東京都教育委員会の教員採用選考を受験し、合格して条件附採用教員となったが、1年の試行期間中に転職などで自主退職した教員は何人で、その理由の主なものは何か、伺う。
4 自主退職となったことについて、本人の教員志望動機が曖昧であったのか、又は1年間の条件附採用期間中に厳しい現実を経験したことが、その背景にあるのではないかと推察する。とりあえず安定した公務員を目指すという安易な姿勢は論外として、教員生活の厳しさに接して自主退職しているとすれば、その改善が急がれていると考えている。学校現場では、いじめや不登校への対応、地域との連携など、学習指導面のほかにも多種多様な課題への対応があり、残業が常態化して多忙感が深まっている。東京都教育委員会が把握している職務実態について、伺う。
5 東京都教育委員会では、副校長などの管理職になるための登竜門として教育管理職選考という試験を実施しているが、受験倍率が5年前と比べて低下していると聞いている。特に、副校長となる一歩手前の主幹教諭など中堅教員を対象とした管理職選考では、受験を申し込む教員、つまり受験者の確保に苦労していることを、現場の副校長から聞いている。中堅教員を対象とした管理職選考の受験倍率低下の原因について、伺う。
6 中堅教員を対象とした管理職選考の受験倍率低下の原因は、現在の学校現場全体の過密な実態を象徴しており、教員の多忙感を深めているのではないかと思う。このような状況を改善することが必要と考えるが、東京都教育委員会の見解を伺う。

平成21年第四回都議会定例会
和田宗春議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 武道必修化について
1 平成20年3月の学習指導要領の改訂により、中学校で武道が必修となり、同24年度から完全実施となる。この中学校武道必修化の具体的内容と、これまでの都教育委員会の取組について伺う。

回答
 このたびの中学校学習指導要領の改訂により、平成24年度からは、保健体育の授業では武道を必ず指導することとなり、男女を問わず、中学生は、柔道、剣道、相撲の中から一つの種目を学習することとなりました。
 都教育委員会は、これまで、区市町村教育委員会や中学校に対し、武道必修化の意義やねらいを周知し、指導面や施設設備面等の安全対策を働き掛けるとともに、本年度、保健体育科教員を対象とした柔道の指導者講習会の開催や、児童・生徒用の武道実技のDVD視聴覚教材の制作を行っています。

質問事項
一の2 学校において今後、武道が必修となることに伴い、武道の価値を生かした指導の充実のため、教員の指導力向上が喫緊の課題であると考えるが、都教育委員会は、この問題にどのように取り組むのか伺う。

回答
 生徒が、武道の学習を通して、我が国固有の伝統や文化に触れ、伝統的な考え方や行動の仕方を大切にし、自分で自分を律する克己の心等を身に付けていくことは、日本人として、これからの国際社会をたくましく生きていくために必要であり、心豊かな青少年を育成することに寄与するものです。
 武道は、専門的な指導力を必要とすることから、今後、都教育委員会は、教員のための指導事例集の制作や、剣道や相撲等の指導者講習会の開催により指導力の向上に努めていくとともに、競技団体等と連携を図り地域の有段者など外部の専門家の力を活用した授業モデルを検討していきます。

質問事項
二 教員の離任、離職の現況と対策について
1 昨年度に新規採用された教員のうち、正式採用とならなかった人数について、全国と東京都の状況を伺う。

回答
 平成20年4月1日から同年6月1日までに都道府県及び政令指定都市に教員として採用された者のうち、正式採用に至らなかった人数は、315人です。
 このうち、都は78人です。

質問事項
二の2 昨年度に新規採用された教員のうち、正式採用とならなかった理由について、全国と東京都の状況を伺う。

回答
 都において、正式採用に至らなかった教員78人のうち、約97%の76人が自主退職です。
 全国においても約97%が自主退職です。

質問事項
二の3 希望して都教育委員会の教員採用選考を受験し、合格して条件附採用教員となったが、1年の試行期間中に転職などで自主退職した教員は何人で、その理由の主なものは何か伺う。

回答
 都において、自主退職した教員76人のうち、転職や他の道府県の教員となるなど自己都合で退職した教員は、約68%の52人です。
 残り約32%の24人が病気を理由に退職しています。

質問事項
二の4 学校現場では、いじめや不登校への対応、地域との連携など、学習指導面のほかにも多種多様な課題への対応があり、残業が常態化して多忙感が深まっている。都教育委員会が把握している職務実態について伺う。

回答
 平成19年10月に都教育委員会が東京都公立学校の副校長及び主幹等を対象に実施した「副校長等の職務実態調査」において、高等学校及び特別支援学校の勤務日の平均残業時間は、副校長で3時間19分、主幹で2時間2分となっています。
 また、残業時間における業務内容については、副校長では「事務・報告書作成」、主幹では「会議・打合せ」に最も多くの時間を費やしています。

質問事項
二の5 教育管理職選考試験の受験倍率が5年前と比べ低下しているとのことだが、中堅教員を対象とした管理職選考の受験倍率低下の原因について、見解を伺う。

回答
 教員の大量退職期にある現在、教育管理職も多くの退職者が生じるため、優秀な教育管理職となる人材を確保することは、喫緊の課題となっていますが、特に40歳代前半の教員数が全体の年齢分布の中でも少なくなってきており、受験有資格者の人数は年々減少しています。
 また、東京都教育委員会が平成19年10月に東京都公立学校の副校長及び主幹等を対象に実施した「副校長・主幹の職務等に関するアンケート」の結果、教育管理職選考のB選考の受験対象者である主幹など中堅教員が、管理職に求められる複雑化・多様化する課題に対応するための責任の重さ、副校長の業務の多忙さに不安を感じていることも窺えます。
 これらのことが、教育管理職選考の受験倍率が低い要因となっていると考えます。

質問事項
二の6 中堅教員を対象とした管理職選考の受験倍率低下の原因は、現在の学校現場全体の過密な実態を象徴しており、教員の多忙感を深めているのではないかと思われる。このような状況を改善するべきだが、見解を伺う。

回答
 教員の多忙感が深まっている状況について、都教育委員会として、改善していく必要があると考えています。
 このため、まず、学校全体の事務量を縮減することを目的に、教育委員会等から各学校への調査報告依頼を縮減するためのモデル校実態調査などを行い、改善に取り組んでいます。
 また、今年度から主幹教諭を補佐する主任教諭制度を導入し、組織的に課題解決を図ることができる体制の整備を行いました。
 さらに、学校を支える仕組みとして、昨年度から退職教員を活用した非常勤教員制度を導入し、学習指導や校務分掌を担わせるなど学校支援を行っています。
 今後も、こうした取組を進め、教員の職務改善に努めていきます。

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