平成二十一年東京都議会会議録第十八号

○議長(田中良君) 七番福士敬子さん。
   〔七番福士敬子君登壇〕

○七番(福士敬子君) 補正予算として計上された基金は、今までの基金の拡充や新設など、合わせて十三基金です。東京都で総額千三百億円にも上るこの基金、おおむね三年間、基金によっては、もう少し長い期間に事業を実施することになります。
 まず、この事業内容をしっかり検討する時間はあったのか、市民の意見、特に区市町村の意見が十分に反映されたものだったのかという点について伺います。
 一例として地域グリーンニューディール基金事業を挙げます。
 この基金の目的は、雇用と環境をつなぐ持続可能な地域経済社会をつくることでした。グリーンニューディールの言葉をオバマ大統領に提言したシンクタンクによれば、事業に当たっては、地域の中でどれだけお金が回っていくのかという地域内乗数効果、一つの事業で他にも波及する相乗効果が大事ということです。
 しかしながら、各地の活用例では、電球の取りかえや太陽光発電機の設置といった事業にとどまっているようです。これでは関連業者が一時もうかっても、地域への波及効果や将来性はありません。
 そこで、地域グリーンニューディール基金を活用して都内でどのような事業が実施されるのか、また、それらがオバマ大統領の掲げたグリーンニューディールの理念どおりの効果があるのか、お尋ねします。
 また、環境省に確認したところ、ことし四月に基金の概要を都道府県に周知し、六月に事業内容の説明会、七月二十四日が事業計画書の提出締め切りとのことでした。非常に短い検討期間だったことがうかがわれます。
 このような事業計画案の決定に際しては、都や区市町村が都民からの意見を集約して事業の採択をすべきだと考えますが、今回の進め方がどうであったのか、お尋ねします。
 この期間で、例えば山口県の基金事業では、電球の取りかえや太陽光発電機の設置も含めて幾つかの事業を例示し、最終的にNPOほか民間から提言を求め、県が選定を行う、いわば公募型で外部の事業提言を受け入れています。
 これは公開の場で判定をする事業仕分け的な手法です。この手法をとることで、都民、特に事業者にグリーンニューディールの意識がつくられ、採択事業はもちろん、不採択の民間事業者も実現の動きをつくっていくことができると思います。この動きを見きわめて、今度は東京都自身が補助などの後押しをすればいいわけです。
 今回はともかく、今後都としても、すべての基金で、事業の決定に加えて、事業の内容自体を外部提言として公募したり、あるいは公募事業の選定に際して、市民を入れた第三者委員会が検討や判定を行う、このようにして、広く都、区市町村でも関係者の意見を取り入れるという仕組みをぜひ検討していただくことを要望しておきます。
 次に、官製ワーキングプアについて、都の臨時職員の働き方及びその実情についてお聞きします。
 公的な仕事をするスタッフとして考えれば、正規職員も非正規職員も、民間委託先の社員も、同じ仕事をしているのなら同じ条件でという、同一価値労働、同一賃金、この原則は守られるべきです。とはいえ、原則論どおりに現実はいかないというのも事実です。それにしても、非正規職員の状態や民間委託先の社員の状況はひど過ぎます。残念ながら、官製ワーキングプアという言葉が生まれたのも当然です。
 その認識が都の職員にはあるのか。同じ立場になってとはいいませんが、せめて自分がそうだったらという想像力と、職場内で改善する行動が必要ではないでしょうか。
 決算カードという、国に提出して情報公開される都の財政状況の公表資料には、臨時職員数はゼロとなっています。したがって、実質的な必要人員は不明です。見えない、隠された存在が臨時職員です。
 今回、私が資料要求して、臨時職員の実態が一部明らかになりました。人数は四月時点で千三百人。しかし、人数変動が激しく、例えば、ある局では二〇〇八年度の四月時点では三百九十七人、二月では六百二十二人となっています。その働き方も明らかになり、当然のように期末手当、退職金、そして社会保険もありません。しかも、都では、社会保険や雇用保険逃れのためかと勘ぐりたくなるように、期間は二カ月が基本であり、業務上やむを得ない特別の理由があるときに限り六カ月までの更新を認めることになっています。
 臨時的な仕事という本来の使われ方であれば、これでもやむを得ないといえますが、現実は違います。私が調べたところ、ある職員は長期にわたって働かされ続け、六カ月の制限をクリアするために職場を転々とする状態だそうです。
 このような実態について、都は把握しているのでしょうか。また、人事委員会はどうなのか伺います。
 また、都は、地方公務員法に認められている、六カ月雇用、一年までは延長可能という法律にも基づくことなく、より厳しい取扱要綱を設けています。まず、取扱要綱を柔軟化し、本来の法律の運用を可能にすべきではないでしょうか。本当に短期間に必要な場合はともかく、今の都の運用は逆に、雇用主である都にも弊害となっているとも思いますが、いかがでしょうか。
 隠された存在である臨時職員に、同じ机を並べる仲間としての扱いが人権的にも必要なはずです。ましてや、数年間働いている方の場合、能力的にも必要とされているからではないでしょうか。二カ月という期間は、やっと仕事や職場になれたところで、また初めからやり直しをすることになります。経験ある人材を切ることは、雇用主、雇用者双方に不利益かと思います。
 また、三月に雇用した臨時職員は引き続く四月には雇用しないとする規定も、単に四月の人数減らしが目的ともうかがわれますが、理由をお聞かせください。
 次に、提言です。
 臨時職員のうちでも、一定の必要性がある場合は、任期つき職員あるいは任期つき短時間職員の制度を活用してはいかがでしょうか。中野区では、非常勤職員の訴訟を受けて、当面の緩和措置として任期つき短時間職員を導入しました。任期つき採用職員ならば定数にも入り、見える存在となってきます。
 また、現在の各部局ごとの管理となり、見えない存在となっている臨時職員を見える形にするためにも、統計をきちんととり、公開する必要があるのではないでしょうか。お考えを伺います。
 さきの中野区のほか、野田市の公契約条例、行政改革大綱に公契約条例実施を盛り込んでいる小金井市などのように、働く人々の権利、人権を守る動きが他の地域でも広がっています。その動きに沿って、臨時職員など、都の雇用対策にも働く人々の権利を守る視点を盛り込むべきだと申し上げ、次に移ります。
 都立小児病院の廃止条例が前期の三月議会で決まりましたが、いまだに多くの反対の声が寄せられています。少子化対策をうたうのであれば、生まれてきた子どもたちの命を守る対策こそ、行政が放棄してはならない部分だと思います。
 人命保護としては、警察や消防署などが各エリアに設定されています。これは、救助時間を見据えた、距離の範囲が考慮されているのではないでしょうか。年々ハイリスク出産の比率が高まり、新生児や子どもの重症化対策には、一極集中の総合センターでは担い切れない、分散した地域医療が求められているはずです。
 清瀬や八王子小児病院の役割、また、子どもの心の病という特に困難な専門病院を持つ梅ケ丘では、通院する子どもたちの寄り道を見守り、声かけするなど、まちぐるみの温かさで対応すると聞きます。
 兵庫県立柏原病院では、医師不足をなくし、地域で医療を支えることを目的として、保護者が中心となり、コンビニ受診を控えよう、かかりつけ医師を持とう、お医者さんに感謝の気持ちを伝えようのスローガンを掲げて、病院と連携しながら活動を行っています。この地域活動は、医師労働の実態を知り、医師を地域に根づかせる運動でもあります。
 このようなまちづくりも含め、小児病院を取り巻く環境は重要であり、一朝一夕でできるものではありません。この環境対策はどのようにお考えなのか、また、三つの都立病院がある地域の医療はどのように考えておられるのか伺います。
 府中市の小児総合医療センターはPFI方式をとられますが、イギリスに始まったPFIは、原国では病院事業としては否定された後に日本に輸入されたともいわれています。
 先般、清瀬小児病院の清掃業務委託先で、契約した協同組合内の業者が倒産をし、従業員に賃金未払いを起こしました。行政直接の雇用ではないため、従業員は数カ月もの賃金を受け取ることもできずに暮れを迎えそうです。
 こうして、業者が失業者を救うこともできない業務委託があります。PFIにおいては、さらに行政は責任放棄の形で、契約相手先から下請に至っては、もっと見えにくい契約方式となります。昨今の不況の中、PFIによる破綻に向かうのではと心配します。
 日本でも各地でPFIによる医療事業が問題を抱えているようです。高知医療センターは都も視察をされたようですが、都立小児総合医療センターをきちんと運営するための対策をどう考えておられるのか伺います。
 いつ急変するかわかりにくい小児医療は、少子化対策としても行政の責任で税金投入すべきです。
 東京都も水利権を持つ滝沢ダムは、二〇〇五年に、試験的に水をためる作業、いわゆる試験湛水を始めましたが、その途端、貯水池斜面に亀裂が入り、水を抜いて修理が行われました。しかし、その後、水位の操作を行うたびに亀裂や崩落が発生し、いまだにダムの運用には至っていません。
 ダム本体ができ上がって四年が経過し、この間のダムの周辺の亀裂、崩落、道路の亀裂など、水圧による山の形状変化が起きていると思われます。滝沢ダムの現状及び今後の対策工事について伺います。
 八ッ場ダムにおいても、ダムサイトや湛水域は火山層の脆弱な地盤であり、地すべりの危険性が指摘されています。八ッ場ダムは、滝沢ダム以上に安全性に問題があると考えられますが、都の見解を伺います。
 今や節水が進み、給水能力の余裕は、日量百万立方メートルから、地下水を含めれば二百万立方メートル近くに拡大する中、安全性に問題のあるダムを建設することは、都市が豊かにあるためのエゴを地方に押しつけることになります。
 関係知事会としてダム推進の共同声明を出されたようですが、それに対し市民から幾つかの反論が出て、知事あてに要望も出されています。知事はごらんになってどう思われたのか、お考えを伺います。
   〔環境局長有留武司君登壇〕

○環境局長(有留武司君) 福士敬子議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、地域グリーンニューディール基金事業についてでございますが、都内各地域において、施設の省エネなどの温暖化対策に資する事業を初め、微量PCB廃棄物や海岸漂着物処理に係る事業など、広範囲にわたる事業が実施される見込みでございます。
 これらの事業の実施により、地域経済への波及効果など、大きな効果が見込まれるものと考えております。
 次に、事業採択についてでございますが、今回の事業採択案の決定に際しては、都は庁内及び区市町村から事業計画案を募集し、提案のあったすべてを国に申請いたしました。
 これに対して国は、全国から申請のあったそれぞれの事業の温室効果ガスの削減効果や雇用効果などの観点から審査を行い、採択事業案を決定したものでございます。
   〔総務局長中田清己君登壇〕

○総務局長(中田清己君) 臨時職員に関します四点のご質問にお答えいたします。
 まず、臨時職員の勤務実態についてでございますが、地方公務員法では、臨時職員の任期は、原則として六月を超えない範囲とされております。
 都では、その趣旨を踏まえまして、六カ月任用した後は、引き続き任用することなく、少なくとも一カ月は任用しない期間を設けることとしております。
 また、一つの職について任期が終了した臨時職員が、仮に他の臨時の職で活用されたとしましても、それは本人の自由意思に基づくものでございます。したがいまして、長期にわたり連続で働かされ続けている、そういった事実はないと認識しております。
 次に、臨時職員の任期についてでございますが、地方公務員法では、緊急または臨時の業務等に限りまして、六月を超えない期間で臨時的任用を行うことができ、延長する場合には、人事委員会の承認を受けまして、六月を超えない期間で更新できると規定されております。
 都では、短期または季節的な業務に従事するという臨時の職の性格を考慮いたしまして、その任期を原則二カ月、最大六カ月としております。
 現行の運用は、法の趣旨に沿うものでありまして、都にとって弊害であるとは考えておりません。
 次に、臨時職員の任用管理についてでございますが、臨時職員の活用は、四月から翌年三月までの会計年度を踏まえ、その任期は原則として三月末までとしております。四月の人数減らしが目的との指摘は当たりませんと考えております。
 最後に、臨時職員の統計についてでございますが、知事部局におきます臨時職員の任用数は、平成二十一年四月時点で一千三百六人でございまして、総務局で適切に把握しております。その結果は、これまでも必要に応じまして情報提供しております。
 なお、各所属におきまして、法律の枠内で任期、勤務時間等を定めて臨時職員の管理を行っておりますのは、その職の性格上、機動的かつ効率的に任用する必要があるからでございます。
   〔人事委員会事務局長泉本和秀君登壇〕

○人事委員会事務局長(泉本和秀君) 臨時職員についてでございますが、人事委員会は、任命権者が定める臨時的任用に関する要綱について、その制定のとき及び改正が行われる都度、地方公務員法の規定の範囲内であることを確認し、承認しておりまして、臨時職員の任用は、各任命権者において適正に行われているものと考えております。
   〔病院経営本部長中井敬三君登壇〕

○病院経営本部長(中井敬三君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、小児病院に必要な環境についてでありますが、小児総合医療センターが整備される多摩メディカルキャンパス及びその周辺には、以前から総合病院や専門病院、療育施設、特別支援学校など、医療、福祉、教育関係のさまざまな施設が立地しており、長い年月の経過の中で、この地域にしっかり根づいたものとなっております。
 また、今回のセンター開設に当たっては、府中キャンパス地域連絡会等の場で、地域住民の方々とさまざまな情報交換、意見交換を重ねてきており、今後も同様の取り組みを行ってまいります。
 また、小児病院転出後の地域医療についてでありますが、小児病院が転出する地域の小児医療体制を確保していくことは大変重要であり、これまで、地域の中核病院の体制整備や医師確保の支援など、さまざまな支援策を講じてきております。
 今後とも、地域の方々が安心できる地域医療体制の確保に向けて取り組みを進めてまいります。
 次に、都立小児総合医療センターにおけるPFI事業についてでありますが、都立病院のPFI事業は、病院経営や診断業務など病院運営の中核部分については、都が引き続き直接行い、これまでも個別に委託してきた医事業務や建物管理などの医療周辺業務については、PFI事業者が包括的に担うこととしております。
 PFI事業の実施に当たっては、PFI事業者の提供するサービスが都の求める水準を満たしているかチェックする、いわゆるモニタリングを定期、随時に実施するとともに、水準が満たされていない場合には、業務改善勧告、サービス対価の支払い留保、減額などを適時適切に行うこととしており、これらの取り組みにより適正な履行が確保されると考えております。
   〔都市整備局長河島均君登壇〕

○都市整備局長(河島均君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、滝沢ダムの現状と今後の対策工事についてでございますが、滝沢ダムは独立行政法人水資源機構が建設事業を進めております。
 本体工事が完了し、試験湛水を行っている段階において、貯水池の斜面の一部に変化が生じ、周辺道路における亀裂が確認されましたが、既に事業者は専門家による検討会から指導助言を得て、適切に対策工事を実施中でございます。
 ダム本体には漏水や変形などは生じておらず、機能上全く問題はないことから、来年度末までに斜面等における工事を完了させて、本格的にダムの運用を始める予定でございます。
 次に、八ッ場ダムの安全性についてでございますが、一般的に、ダム建設を行う場合は、計画から建設、竣工、貯水池運用の各工程において、地すべり等への調査を行い、必要な対策工事を行うこととなっております。
 八ッ場ダムにつきましては、国の資料によれば、平成八年に地質や地すべりの専門家から成る検討委員会を設置し、貯水池周辺の地盤の性質や状態、地すべりの可能性について調査検討を行っております。
 具体的には、地形図、地質図等の文献資料を分析し、貯水池周辺全域において、地すべりの可能性があり、かつ湛水の影響を受ける箇所を抽出しております。これらの箇所を対象に、地形の状況、岩盤の風化状況等について現場調査を行っております。
 さらに詳細な地質調査を実施し、検討を重ねた結果、現時点で安全対策の必要な三カ所について範囲を絞り込み、技術的な対策を行うこととしております。
 ダムが完成した後も、国は検討委員会の意見を聞きながら、貯水池の斜面の地盤変化を観測するなど、安全性の確保に万全を期すこととしております。
 最後に、市民からの意見についてでございますが、八ッ場ダム建設に反対する市民団体の意見は、住民訴訟を提訴した原告の主張と同様の趣旨となっております。
 その主張は、東京、前橋、水戸のすべての地裁判決において既に一蹴されておりまして、司法の場におきましても、国と一都五県が進めてきた八ッ場ダム建設の必要性が認められておるのでございます。
   〔七番福士敬子君登壇〕

○七番(福士敬子君) 河島局長は、いつから知事になられたのでしょうか。
 知事は、反論も含めてきちんとチェックしてこそ正しい判断ができるだろうというふうに思いまして、どう思われたのかというお考えを伺いました。知事ご自身のお考えはないのか、改めてお伺いをいたします。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 局長の答弁と全く同じでございます。

○議長(田中良君) 以上をもって質問は終わりました。