平成二十一年東京都議会会議録第十八号

○議長(田中良君) 二十五番星ひろ子さん。
   〔二十五番星ひろ子君登壇〕

○二十五番(星ひろ子君) 質問に入る前に、都議会生活者ネットワーク・みらいを代表して、ご逝去されました川島元議長に心より哀悼の意を表します。
 まず初めに、二〇一六年オリンピック招致失敗の直後、石原知事は、二〇二〇年五輪への立候補については、都民、国民がどうとらえるのか、私たちが一方的に決めるべきではないと述べ、その後、広島市と長崎市が名乗りを上げたことについても、東京の経験を提供し、協力すると発言しました。
 ところが、十一月九日、突如、マスコミに再挑戦の意思を示し、都議会に公式表明したのは今議会の冒頭です。
 オリンピック招致特別委員会の議論も緒についたばかりです。再挑戦を表明するならば、敗因分析や招致活動費の決算などをきちんと都議会に報告した上で行うべきと考えますが、石原知事の見解を伺います。
 次に、基金についてですが、二〇一六年オリンピック招致は、十月二日の結果をもって終了し、オリンピック招致のための基金四千億円は今年度末でその目的を終えたと考えます。十一年後のオリンピックは、その後の議会の結論を待つべきものです。
 一方、今年度都税収入は、当初予算額を五千億円も下回る四兆二千六百億円と発表され、景気の底が見えない経済状況がいつまで続くのか、さらなる警戒が必要となっています。格差拡大やワーキングプア問題などの貧困対策や雇用対策、中小企業支援など、待ったなしの緊急課題が山積しています。
 役割を終えたオリンピック招致基金四千億円は、財政調整基金として都民の緊急課題に使うべきと考えますが、見解を伺います。
 温室効果ガスの排出抑制に有効とされる再生可能エネルギーは、コストが高い、出力が低い、不安定であるなど、本格的な普及に向けてさまざまな課題を抱えています。性質の異なる複数の電源を組み合わせ、集中的に制御することによって効率的な利用を図ると同時に、再生エネルギーの利用普及を促進する試みも始まっています。
 この視点から脚光を浴びているのが、スマートグリッドなど、電気、熱、ICTを融合することで低炭素社会を実現する試みです。
 コロラド州ボルダー市は、京都議定書を市として独自採用し、低炭素、高効率なエネルギー消費環境の実現を目指す、世界で最初の本格的なスマートグリッドの実証プログラムを実施しています。
 オランダのアムステルダム市では、二〇二五年、四〇%のCO2削減目標を掲げ、持続可能な住まい、職場、交通、公共スペースの四つの視点から、行政機関や企業のみならず市民を巻き込んだスマートシティーを中核としたまちづくりを目指しています。
 COP15での削減目標の合意を目前に、国内のエネルギー消費構造の抜本的な見直しが迫られていますが、都はどのように取り組むのか、知事の見解を伺います。
 再生可能エネルギーの中でもとりわけ太陽光発電は、国が補助制度を停止して以来、導入が伸びず、世界一の座をドイツ、スペインに明け渡す状況になっていましたが、この十一月からは、余剰電力を今までの二倍程度の価格で電力会社が買い取る制度が開始したため、今後普及が進むと思われます。
 こうした太陽光発電ブームの中、一般家庭では、購入に当たって訪問販売の消費者トラブルも発生していると聞いています。
 そこで、太陽光発電における都の補助制度もある中、一般市民への情報提供やさらなる普及啓発に向けてどのように取り組むのか伺います。
 二〇〇六年六月に成立した住生活基本法を受け、東京都は同年十二月、住宅基本条例を制定し、良好な住環境のもとでゆとりある住生活を享受できる住宅を確保することを目標とした住宅マスタープランが策定されています。
 しかし、実態はといえば、いわゆる低所得者のみならず、中堅所得層と生活保護受給のはざまにいる高齢者、都営住宅入居水準の所得であっても都営住宅に入れない人、給与カットや解雇などで家賃や住宅ローンが払えなくなった世帯など、住宅確保の困難さを訴える声は増すばかりです。
 私たちは、住まいの確保は生活の最低条件と考え、具体的対策として、都営住宅に入れない人への家賃補助を提案してきました。
 厚労省は十月、離職者向けに住宅手当を六カ月間支給する緊急措置を始めましたが、都は家賃補助に対しては前向きとはいえません。
 都営住宅の新設をストップする中で、今後ますます低廉な住宅が求められます。長期的な視点に立って、いま一度住宅政策を見直す必要があると考えますが、都の所見を伺います。
 精神保健医療福祉施策が、入院医療中心から地域生活中心へと大きく転換する中、東京都では、社会的入院の状態にある精神障害者の地域移行を進めており、東京都障害者計画の精神障害者退院促進支援事業の実施などにより、平成二十三年度末までに二千五百人の地域移行を進めることとしています。このことについて、医療、地域生活支援の両面でお聞きします。
 まず、医療面についてですが、退院後、地域生活を継続していく中において、服薬や通院などが中断し、症状が悪化し、再入院するケースが多いと聞いています。精神障害者の方々が身近な地域で継続して医療を受けられる体制が必要と考えますが、見解を伺います。
 自立支援法の施行後、精神障害者の相談、生活支援は区市町村の役割となりましたが、自治体によってはサービス利用計画策定が進んでいません。地域活動支援センターⅠ型への委託内容も、障害程度区分の認定調査、退院促進支援事業、デイサービス、一般相談など多種多様であり、委託契約予算もばらつきがあります。センターでの主な業務である生活相談においても、利用者の課題を整理、解決するために、まずは同行、付き添いによる支援が必要とされ、専門職による十分な人的配置が求められています。また、退院後の居住支援のグループホームなども充足にはほど遠い現状にあります。
 どの地域に住んでいても安心して福祉サービスが受けられるよう、東京全体の精神障害者施策の充実について、都としてはどのような立場でどう底上げを図っていくのか、ご所見をお伺いいたします。
 最後に、教育財産の活用について伺います。
 都立高校改革推進計画の実施計画は、二十三年度までが計画の継続期間に当たりますが、この中に、地域とのパートナーシップを築く学校づくりとして、都立高校の教育機能の地域、社会への提供ということをうたっています。
 現在、施設開放ということで、グラウンドや体育館は利用されていますが、学習、文化施設についてはほとんど利用が進んでいません。地域においては、高齢者を中心に生涯学習の高まりもあり、学習の場の確保は大きな課題です。特に、若者たちの音楽活動について、練習場所に不足しており、市場の貸しスタジオなどはとても若者には手が出ません。施設開放に関して既に一定のルールも定められており、全校に運営委員会も設置されているのですから、学習、文化施設の開放を一層進めるべきと考えますが、ご所見を伺い、生活者ネットワーク・みらいの質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 星ひろ子議員の一般質問にお答えいたします。
 オリンピック・パラリンピックの再挑戦についてでありますが、昨日も答弁しましたように、世界平和や地球環境の未来のために、また、若者たちに夢と勇気を与えるために、我が国がオリンピック招致に再挑戦する意味と価値は十分あると確信しております。
 もとより再挑戦については、都民、国民の意向を十分にそんたくし、都議会の皆様と議論を踏まえた上で、東京としての結論を出していくべきものとの認識は変わっておりません。未来を担う若者たちによき遺産を残すためにも、今後大いに議論を進めていただきたい。
 二〇一六年の招致活動報告書については、現在まとめさせておりまして、今年度内に公表してまいります。
 次いで、エネルギー政策についてでありますが、化石燃料の多量消費は膨大なエネルギーを生み出し、便利で豊かな生活を実現してきましたが、その一方で、地球環境の限界をはるかに超える二酸化炭素の排出により、深刻な気候変動の危機をもたらしております。
 化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を軸とする低炭素型社会の実現は、気候変動の危機を回避する最大の方策でありまして、多量のエネルギーを消費する都市こそ、再生可能エネルギーの利用拡大を主導すべきものと思っております。
 都は、こうした観点から、太陽エネルギーの普及を初めとする先駆的な再生可能エネルギー施策を展開してきておりまして、今後とも低炭素型社会への転換を先導してまいります。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁させます。
   〔教育長大原正行君登壇〕

○教育長(大原正行君) 都立学校の施設開放についてでございます。
 都立学校の施設開放は、現在、体育施設を中心に、工事中など特別な例を除きまして、ほぼ全校で実施しております。
 一方、会議室や音楽室などにつきましては、校舎内にあることや、使用が主に土曜日、日曜日、夜間の無人の時間帯になることから、安全上、防犯上、あるいは使用する施設のみを部分的に開放することの問題等、いろいろな困難な場合がほとんどでございます。また、特に音楽活動の場として使用する場合には、音量や時間帯に関しまして近隣への十分な配慮が必要になります。
 学習、文化施設の開放拡大に向けましては、こうした安全、防犯対策、近隣への影響、学校教育への支障の有無などさまざまな課題を整理し、開放拡大の可能性を検討してまいります。
   〔財務局長村山寛司君登壇〕

○財務局長(村山寛司君) 東京オリンピック・パラリンピック開催準備基金についてでございますが、この基金の取り扱いにつきましては、オリンピック・パラリンピック再挑戦についての今後の論議などを見定めつつ、適切に対応してまいります。
 なお、都はこれまで、福祉、医療、教育はもとより、中小企業対策、東京の都市機能の充実など、都民にとって必要な施策に的確に財源を振り向けてきておりまして、また、緊急課題にも的確に対応してきております。
 このことは今後も同様でございまして、厳しい財政環境のもとにあっても、都がなすべき役割はしっかりと果たしてまいります。
   〔環境局長有留武司君登壇〕

○環境局長(有留武司君) 太陽光発電の普及に向けた取り組みについてお答えいたします。
 都民が安心して購入できるようにするためには、太陽光発電に関する十分な情報を得て、実物を見て購入を検討できるようにすることが大切でございます。
 このため、都は、家電量販店等での販売を促進するとともに、都の未利用地を活用した新宿住宅展示場において全戸に太陽光発電を搭載するなどの取り組みを進めてきました。
 こうした取り組みの一方で、昨年秋から消費生活総合センターと連携をとりまして、訪問販売による消費者トラブルを未然に防止するため、区市町村への周知等を依頼するとともに、都のホームページでの注意喚起にも努めてきました。
 今後とも、このような情報提供や普及啓発を進めてまいります。
   〔都市整備局長河島均君登壇〕

○都市整備局長(河島均君) 住宅困窮者への対応などの住宅政策についてでございますが、住宅が量的に充足し、民間住宅市場が発達した今日において、少子高齢化の進展や居住ニーズの多様化に対応するためには、公共住宅に加え、民間住宅も含めた重層的なセーフティーネットの機能が必要でございます。
 これまでも、住宅に困窮する都民に対し、居住の安定確保を図るため、都営住宅などの公共住宅ストックを有効に活用するとともに、不動産業関連団体等とも連携し、比較的低廉な家賃の民間賃貸住宅に関する情報提供などに取り組んでまいりました。
 今後とも、こうした施策の充実を図りながら、社会経済状況の変化に対応した住宅政策を展開してまいります。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 障害者施策について、二点お答えを申し上げます。
 まず、医療についてでありますが、地域で安定した生活を送るためには、適切な医療を身近な地域で継続して受けられることが重要であります。
 このため、区市町村では、地域活動支援センターなどにおいて、医療機関の情報提供や、服薬中断を防ぐための助言等を行っております。
 また、都においては、精神保健福祉センターや保健所において、区市町村など関係機関に対する技術的な支援を実施しております。
 さらに、都では現在、地域における医療機関等の連携促進など、精神障害者の地域生活を支える上で必要な医療提供体制の整備等について検討を行っているところであります。
 次に、福祉サービスについてでありますが、区市町村では、地域活動支援センターに精神保健福祉士等の専門職員を配置し、本人、家族に対する相談支援を実施しております。
 また、グループホームや通所施設など、地域生活を支えるサービスについても、各区市町村が障害福祉計画に基づき確保を図っております。
 都は、地域活動支援センターの運営費補助や、グループホームの整備に対する都独自の助成を実施するなど、サービス基盤の拡充に努めております。
 今後も、精神障害者が地域で安心して生活できるよう、区市町村と連携して、その支援に取り組んでまいります。

ページ先頭に戻る