平成二十一年東京都議会会議録第十八号

○副議長(鈴木貫太郎君) 百二十五番馬場裕子さん。
   〔百二十五番馬場裕子君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○百二十五番(馬場裕子君) 子育ての社会化支援と子どもの権利擁護の視点から伺います。
 ことしは、憲法に次ぐ位置にある子どもの権利条約採択二十年、日本の批准から十五年の記念すべき年に当たります。その年に、民主党はチルドレンファーストの理念を掲げ、すべての子どもがひとしく育つ環境を保障することが社会の責務であると訴え、政権を交代させていただきました。教育格差の是正を図るべきと考え、民主党は、高校の実質無償化を実施いたします。貧困や差別、格差の連鎖を断ち、子ども手当施策など、子育ての社会化の実現を目指しております。
 しかし現状は、内閣府が十二月五日付で発表した男女共同参画社会に関する世論調査において、結婚しても必ず子どもを持つ必要がないと答えた二十代女性が六八%、全体でも四三%と、前回調査より六%ふえております。雇用不安や経済の先行き不透明さは、社会保障の前提が崩れるだけではなく、未来が見えない不安感を生み、子育ての負担感を増幅させています。まず子育て世代の負担感を少なくし、子育てを手ごたえある喜びに変えるために、子どもへの責任を親だけにしょわせない、社会全体で子どもを育てるという世代連帯意識を共有し、多くの都民が選択した政策の実現へ向けて、都としても国の施策に連携、協力し、一日も早い実現を図るべきと考えます。
 知事が就任されたとき十歳だった子どもが二十になっています。その子どもたちが東京で子育てができる環境整備が求められています。東京の未来を担う子育てについて、社会全体ですべての子どもを支える子育ての社会化の理念、方針について、知事のご所見を伺います。
 子育ての社会化は産み育てる側の責任と役割を求めるものですが、生まれてくる子どもには健全に生まれる権利があります。子どもは誕生したいというしっかりした意思を持って生まれてきます。赤ちゃんポストの是非や役割、子どもへの虐待など、親や大人の理由で子どもの意思を受けとめ切れていない現状にあります。
 全国の教育の現場で、各種調査がされております。まず注目するのは、藤沢市教育委員会の中学三年生を対象とした学習意識調査です。一九六五年から二〇〇五年の四十年間で、もっと勉強したい子の割合は六五%から二五%へと減少しています。都の児童生徒の学習意欲の状況も、平成二十年度児童・生徒の学力向上を図るための調査で、生徒の日常生活への意欲の有無で正答率に二〇ポイントの差が出ていると報告されています。
 十一月三十日、文科省から発表がありましたが、都教育庁は、八月にこの調査、都内公立小中高校の児童生徒の問題行動等の実態について、都内各区市町村の調査の集約をし、暴力行為、いじめ、不登校ほかに分けて、調査の概要、都教委の対応が述べられております。特に暴力行為のうち生徒間暴力が平成十八年では小学校六十一件が、二十年には二百十件、中学校では五百八件が八百三十六件と、器物損壊も同様の傾向です。
 過度な競争意識によって発達のゆがみが生じていませんか。コミュニケーションのとり方や他者との関係がうまくできていない子どもへセカンドステップなどを取り入れ、学校での社会性学習や子どもの競争に対するストレス対応など、子どもの視点に立った、個に応じた指導が望まれています。
 急増する暴力行為とその低年齢化について、都教委の見解と対策を伺います。
 一方で、子どもの自殺防止も喫緊の課題です。
 二〇〇八年、全国数ですが、小学生九人、中学生七十四人、高校生二百二十五人、大学生五百三十六人、専門生百二十八人。自殺を考える子の気持ちは、死にたいのではなく、生きているのがつらいのだと聞いております。親も学校も社会も余裕がなく、自分の存在を確認できずにいます。自分を認められないと思わせる環境がつくられている中で、子どもが苦しんでいます。
 少しでもペーパーテストで高い点数をとること、そして、有名学校に入学することが豊かな人生を送るための条件であるかのように幼少期から駆り立てられた子どもは、それが少しでもかなわなかったとき、絶望し、自分の価値を見出せなくなります。まんざらでもない自分、大切にされている自分というものを実感できない子どもは、自分より弱い子に対していじめをしたり、自分が気に食わないというだけで暴力行為を行うようになります。
 相手への思いやりの欠如は、みずからに価値を見出せない感情の裏返しの行為であるといえます。昨今の性に関する問題も、こんな自分でも優しくしてくれるという思いから援助交際を行ってしまうといった子どもの声があります。
 かけがえのない自分を実感できる、この自尊感情がなければ、発達にゆがみが生じるのは自明のことです。そして、その自尊感情を持てるということは、子どもの最低限の権利であると私は考えます。
 平成二十年度、東京都教職員研修センターでは、これからの東京の教育を創造する研究として自尊感情や自己肯定感に関する研究、法教育に関する研究、科学リテラシーの向上に関する研究、創造性の育成に関する研究の四つの研究に取り組まれています。
 その中の自尊感情や自己肯定感に関する研究では、学年が進むに従って子どもたちの自尊感情が低くなるという結果が明らかになっており、私は、小学校高学年から特に中学一年、高校生までの喫緊の取り組みが必要と考えます。他の三つの研究はこの自尊感情を高めた上で行われる教育であり、自尊感情や自己肯定感に関する研究の成果をどう生かしていくかが、学校教育において子どもの権利を守るための大きな課題ではないかと考えます。
 子どもの自尊感情の現状と研修センターでの取り組みや研究結果をどう生かしていくのか、伺います。
 生徒の状況をよく知り、対応できるのは教員ですが、個々の教員が担うには課題が大きくなり過ぎました。社会との関係が強まるほど子どもの視点に立った教育が求められていると思います。成熟した少子社会においては、一人一人を大切にした個人指導の方針に変えていくべきと考えます。各学校の状況に合わせた体制、必要な学級編制と教員配置がなければ対応できないと繰り返し申し上げてまいりました。各自治体からもさまざまな要望が出ています。都として取りまとめ、教育に必要な体制を整備すべきと考えます。
 メディアの有害な影響から子どもを守ることは子どもの人権を保障する視点からも、子どもの健全育成を担う社会の責務です。児童ポルノなどに加え、日本では規制がないインターネットなどでの子どもを対象とする性的な情報の交換が増大し、世界的な非難を浴びています。大人社会の中にとどまらず、子どもを対象にした性情報があふれています。子どもの社会が大人社会と同質になりつつある。警視庁の子どもの虐待取扱件数は平成十二年に比べ十九年、二十年と二倍を超え急増し、その中には性的虐待が含まれています。まさに子どもの将来を考えない社会が子どもを巻き込んでいる。子どもの人権侵害、虐待に当たるものといわざるを得ません。
 青少年から幼児までを含め、大人の理由で見過ごされてきた性的被害から子どもの人権を守る視点で、早急な対策を進めるべきと考えますが、ご所見を伺います。
 性的興味を持つ年齢が早まり、図書館に置かれた青少年向け図書にも問題を指摘されるものが含まれる現状です。友達の間で性に関する間違った情報が交換され、悩みが表面化せず、問題が起こります。学校内外を問わず実態を把握した上で、早急な対策がとれればよいのですが、難しい状況です。十代の妊娠の多くが望まないものであることからも、性教育全般の見直しについて強く要望しておきます。
 このほかにも、特別支援教育や日本語支援の必要な子どもへの学習環境は未整備ですし、諸法律、刑法の中に子どもの権利の視点があるか、確認すべきと考えます。
 ライターによる子どもの火遊び死や、遊具の事故など、消費者、生活者の立場から医療、事故から守るため、子どもの視点で検証されていないと思わざるを得ません。
 また、保育園などの子どもの預かり施設、放課後支援施設などが、子育てをする親への支援施策としての視点から、経済的施策に終始していませんか。
 子どもの権利を保障するには、各局事業において子どもの視点からの配慮があるかの検証が必要と考えます。また、社会の変化と子育て環境に関する各種調査、それに基づいた見直しと事業連携を進めるために、都として子どもの権利条例制定に早急に取り組むべきときと考えます。ご所見を伺います。
 次に、東京の交通施策について伺います。
 平成十八年六月、道路交通法の一部改正施行により車両のほとんどが路上駐車禁止となりました。法改正による影響の大きい都民、関係業界の方々より、都民へのサービス提供に支障がある。法改正の趣旨は理解されたと思えるので、今後は駐車が必要な場合の扱いについて検討されるよう強く要望されております。
 医療や介護関係者からは、緊急対応時の届け出に関して、タクシーからは地域の公共交通機関として乗客送迎サービスに支障を来すこと、都民の生活に欠かせない物流サービスにとっては営業の根幹にかかわることです。特に物流網の発達は都市活動の重要な役割を担っており、都内を走る貨物車のほとんどは必ず荷物の積みおろしや配達を伴うものであり、道路や荷さばきスペースは都民の日常生活や経済活動を支える重要な役割を担っております。これからは迷惑駐車と事業用等車両の駐車は、取り締まり上分けて対応すべきと考えます。
 道路交通法改正により、駐車禁止の取り締まり強化も一部実施から都内全域へとなり、三年半が経過しました。改めてその目的と効果について、また、改正内容について、どのような方法で都民に周知されたのか伺います。
 物流業界にとって早急な荷さばき施設の増設が課題です。都では地域の多様な協力を求める物流効率化認定制度を平成二十年七月に発足しました。現在までの取り組み状況について伺います。
 タクシーや物流ではライフラインとしての公益性とともに、高齢社会での医療福祉の安全で速やかな提供に理解をいただき、多くの都民に道路使用の共有意識への社会機運を高めることが肝要と考えます。例えば広島市で取り組んでいる中心市街地の駐車禁止規制一部解除の経過など、全国での地域状況に合わせた改善策など取り組みを調査し、大都市東京ならではの道路使用ルールをつくっていただきたい。
 駐車禁止規制緩和の要望について、固定業務の営業車ほか、事業用車両については一律規制から緩和地域の指定、モデル地域実施の取り組みなど、特例で対応すべきと考えますが、ご所見を伺います。
 最後に、八ッ場ダムについて伺います。
 都は以前、利根川水系ダム事業参加の撤退など、これまで地方発によるダム事業への再検討がされてきたと聞いております。八ッ場ダムについては、前原国交相が中止を表明した途端、知事みずからが早々に建設途中での中止はむだ、国は中止するなら事業費の都負担金を返済すべきと発言されています。
 都は、八ッ場ダムの共同事業者として水道局約四百七十二億、建設局約百六十二億、既に平成二十年度末で約四百五十七億円を払ってしまっています。さらに、地域の生活再建支援に使われる下流都県が出資する水源地域対策基金事業に至っては総事業費未定であり、国庫補助の対象外です。
 八ッ場ダムの維持管理のコストは年四億五千六百万円と試算されており、小河内ダムをはるかに超える費用負担になることが予想できます。負担残金百七十七億円と予想される多額な税負担は、八ッ場ダムの受益者としてダムの耐用年数八十年としても、八十年、また、この八ッ場ダムがある限り負担しなければならないことになります。
 中止の声明に、今まで地元の反対に耳をかしてこなかった受益者東京都が、今さら声高に地元住民の応援団になっているのは恥ずかしくないですか。とめたからこそ見えてきた公共事業の実態を真摯に受けとめ、撤退声明を出されることこそ今後の日本のダム建設のあり方を見直す歴史的地方の判断となると考えます。また、真にリーダーとして知事が行うべき判断だと考えます。
 近年、ダム建設は大規模かつ人為的に自然環境を変えるため、建設後に問題が発生することが多いと、世界各地で見直されつつあります。
 ダムに起因する環境変化、ダム湖になった場所の生物は壊滅し、生態系への影響が大きい。下流の水量減少などによる地域自然環境への影響が大きいため、環境影響評価法による事前のアセスメントが義務づけられています。しかし、八ッ場ダムに関しては、法施行以前の計画ということで、アセスの対象になっておりません。八ッ場ダムの環境アセスメントについて、都のご見解を伺います。
 大規模の水がめ小河内ダムを擁する緑多い多摩都市部には豊富な地下水がありますが、日本一高価なダム建設計画があるため、その利用については足元の財産を活用しようともせず、無視をされてまいりました。水需要予測も一九八二年に行った予測では一九九〇年時、日量六百八十九万トンとなっていたものが、二〇〇三年の予測では二〇一三年で六百万トンと下方修正されております。ちなみに、二〇〇八年、昨年の一日最大配水量は四百九十二万トンなのです。
 都は、長期水需要予測を見直さずに八ッ場ダム事業に参画し続けております。これまでかかった年数の割に事業は遅々として進んでおりません。二百年に一度の台風のために本当に必要なダムでしょうか。治水上の効果も期待できません。ないよりあった方がましという行政的手法はもうやめるべきです。新政権が中止を表明した今、都と八ッ場ダム事業とのかかわりを見直す最適な時期と考えます。知事のご見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 馬場裕子議員の一般質問にお答えいたします。
 子育ての社会化についてでありますが、子育ての第一義的な責任が親にあることは改めていうまでもありません。しかし、核家族化が進み、地域社会のつながりが希薄になった現代では、次代を担う子どもたちを健やかに育てていくことは、親だけではなく社会全体の責務であるとも思います。
 現場ならではの幅広い発想を生かして、すべての子育て家庭に対する支援の充実や、仕事と生活の調和を進め、安心して子育てのできる東京の実現に取り組んでいきたいと思っております。
 次いで、八ッ場ダム事業の参画見直しについてでありますが、八ッ場ダムについては計画の公表以来、半世紀以上にわたり、地元住民の意向を最大限にそんたくし尊重しながら、国と利根川流域の一都五県において今日まで事業が進められてきました。既に用地取得や道路、鉄道の工事はいずれも八割以上進んでおりまして、現場を見るとインフラはほとんどでき上がっております。河川を迂回させる仮排水路も完成し、本体工事に着手すれば、あと六年でダムはできます。
 新政権はこうした長年の経緯と現実をしんしゃくせず、十分な検証をすることもなくマニフェストをつくり、ダム建設の中止方針を示しました。八ッ場ダムが利根川流域の洪水被害や渇水発生のリスクの軽減に大きな効果を発揮することはこれまでも重ねて申し上げております。
 現に平成八年には、東京も含めて、この流域の五都県市は年間百十七日間という取水制限を強いられました。もし八ッ場が存在していたならば、これは百日マイナス、つまり十七日間で済んだわけでありまして、こういった最近の事例を考えましても、このダムの必要性が検証できると思います。八ッ場ダムが利根川流域の洪水被害や渇水発生のリスクの軽減に大きな効果を発揮することは自明であります。
 都としては、ダム事業への参加見直しは全く考えておらず、引き続き他の県知事と一致団結して事業の継続と早期完成を国に強く要求してまいります。
 他の質問については、警視総監、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔警視総監米村敏朗君登壇〕

○警視総監(米村敏朗君) 道路交通法の改正による駐車取り締まり強化の目的及びその効果など二件のご質問にお答えいたします。
 初めに、道路交通法の改正による駐車取り締まりに関するご質問についてでありますが、新たな駐車対策法制は、一つは、車両の使用者に対する責任追及を可能とする放置違反金制度、いま一つは、駐車取り締まり事務の合理化を図るための放置車両確認事務の民間委託制度、これによって良好な駐車秩序を確立するということを目的として導入されたものであります。
 これによりまして、都心部の幹線道路を中心として、放置車両の減少や交通渋滞の緩和、さらには車両の平均走行時間の短縮など、さまざまな効果があらわれております。
 具体的には、明治通り、新宿通りなどの主要路線におきまして、放置車両、放置駐車が約八一%の減少、渋滞の長さが約三八%の短縮、車両の平均走行時間が約一二%短縮しているところであります。
 なお、この新たな駐車対策法制の実施に当たって、私は、ポイントはもともと二つあるということだろうと、こう思います。その一つが、やはり道路の規制につきまして都民の方々に周知していただくということだろうと、こう思います。これにつきましては、マスコミを通じた広報、あるいはポスターや新聞折り込みの活用、あるいは取り締まり重点路線における立て看板等の設置、さらには、重点的に取り締まりを行う場所、時間帯を定めた取締り活動ガイドラインをホームページ等で公表するなど、さまざま幅広い周知に努めたところであります。
 しかし、さらにこの点につきましては不断に工夫を凝らした周知、ドライバーの方がその場で容易に確認しやすいということも含めて、工夫を凝らしてまいりたいというふうに考えております。
 次に、もう一つのポイントは、実は駐車禁止規制の緩和の問題だろうというふうに思います。確かに路外駐車というのが原則ではありますけれども、物流車両等につきまして、道路上での駐車のニーズといいますか、必要性はあろうかというふうに思います。そうした物流車両等に配意をした駐車禁止規制の緩和につきましては、そもそもこの新しい駐車対策法制が施行する前の平成十八年五月以降、順次見直しを行っております。
 ご承知のとおり、築地市場、日本橋問屋街、浅草地区など都内の十三地区において、時間と路線を指定し、集配中の貨物自動車を駐車禁止規制の対象から除外するなどの特例措置を講じてきているところであります。
 さらに、本年九月からは、さまざまな規制緩和の要望がございます、それにこたえるべく、貨物自動車の荷さばきであるとか、あるいはタクシーの客待ちといった、いわゆる駐車の必要性、要望、それと現実問題として駐車スペースをどう確保していくのかという点等につきまして、現在、都内全域で実態調査を行っております。この結果を踏まえて駐車禁止規制の見直しを行ってまいりたいというふうに考えております。
 いずれにせよ、今後とも、物流等の要請と交通の安全、円滑が調和する良好な駐車秩序を確立するため、道路環境、交通実態、あるいは地域住民の要望等に配意をしながら、きめ細かな駐車規制の見直しという点について努めてまいりたいというふうに考えております。
 以上です。
   〔教育長大原正行君登壇〕

○教育長(大原正行君) まず、児童生徒の暴力行為についてでございます。
 児童生徒の問題行動等に関する調査では、都内公立学校の平成二十年度の暴力行為の発生件数は、特定の学校で特定の子どもが繰り返す傾向があることなどから、小学校、中学校で増加しております。
 都教育委員会ではこれまで、児童生徒の暴力行為を未然に防止するために、非行防止・犯罪被害防止に係る指導資料などを配布いたしまして、各学校における指導の徹底に努めてきたところでございます。
 また、各学校が地域や関係機関との連携による問題行動への対応を充実するために、学校サポートチームを活用して、暴力行為の未然防止、早期解決に取り組むよう、区市町村教育委員会を支援してまいりました。
 さらに、平成二十年度からは、暴力行為などが発生した場合には、問題の早期解決を図るために、元教員や臨床心理士などから成る健全育成学校支援員を、区市町村教育委員会及び学校からの要請に応じまして派遣しております。
 今後とも、都教育委員会はこうした取り組みを一層充実し、区市町村教育委員会とも連携して各学校を支援してまいります。
 次に、子どもの自尊感情についてでございます。
 平成二十年度に東京都教職員研修センターが実施した自尊感情に係る調査によれば、自分にはよいところがあるかという設問に否定的な回答をした子どもが、小学校六年生や中学校三年生で約三割おりました。
 そこで、都教育委員会は、児童生徒が自分のよいところを伸ばし、欠点を克服することができるよう、子どもの自尊感情の形成にかかわる研究を行い、その成果を生かした指導内容、方法を開発するため、平成二十一年四月、研究本部を設置いたしました。
 今後、大学と共同研究を行うとともに、研究協力校を指定するなどして、指導の具体的なあり方についての研究を進め、研究成果を指導資料としてまとめて、各学校の取り組みに生かしてまいります。
   〔青少年・治安対策本部長倉田潤君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(倉田潤君) 性的被害から青少年を守る施策についてでありますが、近年、インターネット、携帯電話の急速な普及に伴い、青少年が出会い系サイト等を通じ犯罪に巻き込まれる事件が発生するとともに、性行動の低年齢化が進むなど、青少年の性を取り巻く環境等が大きく変化してまいりました。
 そのため、都は、平成十七年に東京都青少年の健全な育成に関する条例を改正し、青少年に対し性について慎重な行動を促す啓発等を行うとともに、青少年に対する反倫理的な性交等を禁止し、違反者に罰則を科すことといたしました。
 また、事業者に対し、インターネット上の有害情報を取り除くフィルタリングの提供に努める義務規定を置くとともに、フィルタリングの普及啓発に取り組んでまいりました。
 今後とも、さまざまな有害な情報や環境から青少年を守る施策を推進してまいります。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 子どもの権利条例の制定についてでありますが、子どもの福祉の増進のためには、実効性のある具体的な施策に取り組んでいくことが必要であり、都では、次世代育成支援東京都行動計画に基づき、総合的かつ効果的な施策を進めております。
 また、子どもの権利擁護につきましては、平成十六年度に専門相談事業を開始し、子ども本人から直接相談を受けるとともに、深刻な権利侵害事案には弁護士等の権利擁護専門員が対応しております。
 お話の権利条例の制定については、権利のとらえ方を含め多様な意見があり、慎重な対応が必要と考えております。
   〔都市整備局長河島均君登壇〕

○都市整備局長(河島均君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京における地区物流効率化認定制度の取り組み状況についてでございますが、本制度は、荷さばきスペースの確保や地区独自の交通ルールなどの施策を含む物流効率化計画を策定することにより、交通の円滑化や環境の改善を図ることを目的としております。
 昨年七月の本制度運用開始以来、区市町村の都市計画担当者、商工行政担当者及び運送事業者向けの説明会を実施いたしまして、制度の周知を図っております。
 また、既に運送事業者や商店街関係者等による協議会が設立されている三地区におきましては、駐車場管理者や交通管理者との調整など、計画策定に対する支援を行っております。
 今後とも、地区物流の効率化を推進し、地域の活性化と良好なまちづくりの実現に向けて取り組んでまいります。
 次に、ダム建設の環境アセスメントについてでございますが、八ッ場ダムの基本計画は環境影響評価法の施行前に策定されているため、法律に基づくアセスメントの対象とはなっておりません。
 しかし、国は昭和五十四年以来、自然環境について現地調査を行うとともに、昭和六十年には事務次官通達に基づく建設省所管事業を対象とする環境アセスメントを実施しております。その後も国は、環境対策の充実に向けて継続的に調査を実施し、生態系保全の専門家の意見を聞きながら、ホタルの生態環境の保全、貴重な植物や猛禽類の保護、生物の生息空間となるビオトープの整備など、さまざまな取り組みを行っております。
 また、当初の計画よりダムサイトの位置を約六百メートル上流に変更いたしまして、名勝吾妻峡の指定区間のうち最も観光客の多い地点を含む、下流側の約四分の三について現状のまま保存することにしております。
 国が八ッ場ダムの建設事業に伴い行ってきたこのような環境アセスメントと、これを踏まえた対策の取り組みについては、妥当であると受けとめております。

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