平成二十一年東京都議会会議録第十八号

   午後五時十五分開議

○議長(田中良君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 五十四番岡田眞理子さん。
   〔五十四番岡田眞理子君登壇〕

○五十四番(岡田眞理子君) 私からは三点、築地市場に関して、特別支援教育に関して、そして都営大江戸線勝どき駅に関して質問いたします。
 まず、築地市場に関して伺います。
 二週間ほど前の新聞記事に、東京都がことし九月に初めて実施した築地市場の来場客調査で、観光などの目的で訪れた客の数が休日の一日で約三万三千人に達していたことがわかったとありました。平日でも約一万三千人が来場し、これは上野動物園の一日平均入園者を超えているということです。
 外国人観光客も全体の七%程度いるということからも、築地という市場が世界ブランドとなっていることがうなずけます。今や雑誌やテレビなど、メディアで築地が取り上げられることが多く、全国的にも東京の観光名所の一つとして知られているところです。
 さて、石原知事は、日本が世界第二位の観光赤字国であることから、観光を産業としてとらえ、東京を世界の観光都市にするために改革に着手すると、かつておっしゃられていたと記憶しております。
 観光とは、移動、食事、買い物、宿泊などを初め、さまざまな経済活動をすることでもある。日本を訪れる外国人がふえれば運輸や宿泊、飲食業など多くの産業に経済効果が波及し、新たな雇用の創出にもつながる。このような観点から考えると観光は巨大産業であることは明白であると、「NETで発信石原慎太郎」にも掲載されていました。
 こうして考えてみますと、これだけ築地が東京、日本だけではなく、世界のブランドとして名をはせていることを石原知事はどのようにとらえていらっしゃるのでしょうか。まちの人や観光に訪れている人が、なぜ築地にこんなに人が集まっているのに、市場をよそへ持っていこうとしているんだろうと、市場の移転は解せないといった疑問を投げかけてきています。
 築地だから、銀座や日本橋が近場にあって、便利だから人が集まるのだなどといった観光客の声もあります。今東京随一の観光拠点となっているものを、この築地市場の抜群の集客力をどうとらえ、市場移転問題に絡めるのか。築地を守ろうとしている市場関係者や中央区民のみならず、東京都民、日本国民も注視するこの問題に関して、東京都の観光事業に力を入れていらっしゃる東京都知事としてのお立場からの石原知事の所見をお伺いいたします。
 次に、先日、午後十一時半ごろに築地市場を視察いたしました。私たち民主党新人議員では、その前にも築地市場を朝四時半から視察をしております。午後十一時半に視察をした折、買い荷保管所など場内至るところであちこちに積み荷があり、それには大手量販店名の書かれたメモが張ってあったり、実際に行き先の店の名が書かれたメモを張っている作業を行ったりしている様子を目の当たりにいたしました。
 市場の決まりでは、取引は早くても午前一時から始めることとなっているようですが、一体どうなっているのかと疑問に思っていたところ、二週間ほど前の毎日新聞に、午前一時に競り場のそばに積まれた荷物を指さして、場長がこれはスーパーの物流センター行きだなといったとの記事が載っていました。やはり視察したときと同様に、この記事を見る限りでは、販売時刻以前に取引が終わり、既にスーパー行きの物品が積まれているようです。
 そこでお尋ねいたしますが、この販売時刻前に行われている行為は、市場法、条例に基づいたものなのでしょうか。また市場には転送荷物と通過物があるようですが、この区別はどのように管理を行っているのでしょうか。これも条例にのっとった管理が行われているのでしょうか。見解を伺います。
 続けて、これら取引に関して、抜き打ち検査をしていると聞いていますが、この検査からどのような結果を得て、その分析や活用はどのように行っているのでしょうか。伺います。
 次に、「サンデー毎日」の十二月六日号に、東京都が天下りした築地市場関連団体に関した記事が出ていました。市場移転を推進しているのがまさしくここに書かれた団体でありますが、ここに東京都のOB二十人近くが天下りしていたという、この事実をどう受けとめておられるでしょうか。新市場建設推進協議会に入っていないのが仲卸の東京魚市場卸協同組合で、ここには天下りはありません。とすると、これら天下りが何かしら移転問題にも絡んでいるのではないかとの疑念を持たざるわけにいきません。
 そこでお伺いいたします。さきの質問にも深くかかわります市場の管理や運営に、そして公正取引に天下りの問題は大きな影響があると考えられますが、都の説明を求めます。
 二点目として、特別支援教育に関して質問いたします。
 都立大塚ろう学校城南分教室小学部の来年度以降の募集を停止する方向性が示されました。これに伴い、今後は、聴覚障害教育の地域での充実が重要になってくると思われます。
 そこで、区市町村の小学校に設置されている難聴通級指導学級が聴覚障害のある児童の教育の場として大きな役割を果たすことが求められます。また、通常学級に在籍する学習障害、LDや注意欠陥多動性障害、ADHDなどの発達障害の児童への対応も急務となっています。
 発達障害の児童は、現在は、言語障害や情緒障害等の通級指導学級での対応となっている例が多いのが現状であります。以上のことから、これまで以上に各区市町村にある通級指導学級に対する児童や保護者のニーズが高くなっています。
 そこで、現在の各区市町村立小学校にある通級指導学級を調べてみますと、都内六十二区市町村のうち、難聴通級指導学級を設置しているのは二十区十四市、言語障害通級指導学級を設置しているのは二十一区十八市、情緒障害等通級指導学級を設置しているのは二十三区二十六市と二町五村となっており、すべての区市町村に設置されていない状況がわかります。
 子どもたちは地域の中で、地域の子どもたちとともに教育されることが望ましいと考えます。障害のある子どもたちが成人し、社会の中で自立した生活を送れるようにするためにも、教育現場でのノーマライゼーションの考えが根づき、実践されることが必至であると考えます。聴覚障害のある子にも、言語障害のある子にも、発達障害のある子にも、地元の学校で教育を受けられる環境づくりやシステムの構築が重要であります。
 そこでまず、障害のある子どもが居住する地域の特別支援教育を充実するためにも、すべての区市町村に通級指導学級を設置するべきと考えますが、見解を伺います。
 また、小中学校の通常の学級に在籍している聴覚障害のある児童に対して特別な指導を行う通級指導学級「きこえの教室」がありますが、この「きこえの教室」での教育をこれまで以上に充実していくためには、専門性の高い教員の配置が必要であると考えますが、所見をお伺いいたします。
 過日の文教委員会で大塚ろう学校城南分教室の小学部が募集停止となり、ろう学校に在籍する子どもの保護者の多くは、地域の小学校や中学校に設置されている難聴通級指導学級の取り組みを十分にご存じないのではないかと思います。
 私は約十三年間、難聴・言語障害通級指導学級に勤務しましたが、通常学級に在籍しながら「きこえの教室」に通う子どもたちは、コミュニケーション能力や学習能力の点で、周囲のたくさんの子どもたちに支えられながらさまざまな体験を積み、必要な能力を身につけていきます。このことは障害のない子どもたちにとっても大きな体験であり、社会勉強となっています。
 「きこえの教室」に通級し、通常学級で過ごした高校生のNさんがファストフード店でアルバイトをして、カウンターでの接客業を任せられたということ、その喜びの報告をもらいましたが、これもやはり通常学級で過ごして、コミュニケーション能力を高めた、その成果だと思われます。
 このようなことからも、もっと障害のある子どもを持つ保護者の方や子どもたちに向けて、小中学校における通級指導学級を含む特別支援教育の取り組みを周知するべきだと思いますが、見解を伺います。
 三点目に、都営大江戸線勝どき駅の混雑対策に関して伺います。
 大江戸線が開業して、はや九年が経過しようとしております。この間、乗客数は順調な伸びを示していると聞いております。私の地元、中央区にある勝どき駅の近くには、晴海トリトンスクエアという複合施設が開設され、このため勝どき駅の乗降客数は、開業当初は一日約三万人であったのが、現在は八万人となって、増加している状況にあります。特に駅では、朝の通勤時間帯に乗降客が集中し、ホームから改札を経て地上に至るまで延々と列をなす利用者の我慢も限度に達している状況が見られています。
 駅周辺の晴海、勝どき地域の再開発は、今後次々に高層マンションやオフィスが建設され、これまでにも増して混雑が激しくなることが見込まれております。
 また、このような状況の中で、今後憂慮される直下型地震などに備えた安心・安全な地下コンコースや地上への出入り口の確保が切望されるところであります。
 交通局では、勝どき駅の混雑緩和のために、ホームの増設を含めた抜本的な改良を検討していると伺っていますが、できるだけ早期に対策を具体化する必要があると考えます。交通局の具体的な見解を伺います。
 以上で、私の質問は終わらせていただきます。
 ご答弁のいかんによりましては、再質問を留保させていただきます。(拍手)
   〔教育長大原正行君登壇〕

○教育長(大原正行君) 岡田眞理子議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、区市町村における通級指導学級の設置についてでございます。
 近年、言語障害や情緒障害等の通級指導学級における指導を希望する発達障害の児童生徒が増加しており、それぞれの地域の実情に即した対応が求められています。
 通級指導学級を含む特別支援学級は、都教育委員会が設置者である区市町村教育委員会からの事前の協議を受けて学級編制に同意し、教員を配置しているものでございます。難聴や言語障害の通級指導学級を設置していない自治体では、設置している近隣の自治体に依頼して、区域外で児童生徒の通級による指導を行っております。
 また、都教育委員会では、平成二十年度から、都立ろう学校において通級による指導や巡回相談を実施し、可能な限り都内全域の聴覚障害のある児童生徒への支援を行っております。
 こうした現状を踏まえ、都教育委員会は、今後とも区市町村教育委員会と一層連携し、地域における特別支援教育の充実を支援してまいります。
 次に、通級指導学級への専門性の高い教員の配置についてでございます。
 聴覚障害など障害のある児童生徒の個に応じた指導を充実するためには、都立特別支援学校のみならず、小中学校に設置されている通級指導学級を含む特別支援学級においても、教員の資質と専門性の向上を図ることが必要であると考えます。
 このため、特別支援教育の教員養成課程を持つ大学を通じまして、教員採用選考の受験を学生に働きかけるなど、専門性の高い教員の採用に努めてまいります。
 また、特別支援学校教諭免許状を所持していない現職教員を対象に、認定講習を実施しているところでございまして、引き続きその受講の機会を確保し、専門性の向上を図ってまいります。
 次に、障害のある子どもの保護者へ、小中学校における通級指導学級も含めた特別支援教育の取り組みを周知することについてでございます。
 聴覚に障害のある子どもの保護者に対しては、就学相談等の際に、難聴の通級指導学級の情報提供や学級を見学する機会を設けるなどの取り組みを行っております。ろう学校においては、難聴の通級指導学級との合同の研修や研究を通じて、相互に教育環境や教育内容等の理解を深める取り組みを進めております。また、地域の聴覚障害教育のセンター的機能を発揮して、小中学校からの相談に応じるなどの支援を行っております。
 こうしたことを踏まえまして、今後とも、子どもの障害の程度や発達段階に応じた適切な進路の選択や変更を行えるよう、保護者に対し、小中学校における通級指導学級も含めた特別支援教育の指導方法や内容など、さまざまな実践的な取り組みを周知するよう努めてまいります。
   〔中央卸売市場長岡田至君登壇〕

○中央卸売市場長(岡田至君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、築地市場の集客力についてです。
 築地市場は、国内外から多種多様な品を大量に集荷し、水産物で世界最大級の取扱量を誇り、首都圏三千三百万人の消費者に豊富で新鮮な生鮮食料品を安定供給しております。
 こうした築地市場が持つ活力に加え、場外市場と一体となったにぎわいなどから、築地独自の魅力が形成され、今日、飲食、買い物、見学などを目的とした多くの来場者が訪れるようになったものと考えております。
 しかし、現在の築地市場は施設の老朽、狭隘化が著しく、品質管理の高度化が困難など深刻な課題を抱え、取扱数量が大きく減少しております。このままでは、都民の食生活を支えるという市場本来の役割を果たすことができず、やがて、ご指摘の集客力の源泉ともいうべき市場としての活気も失われ、築地独自の魅力も損なわれるおそれがあります。
 そのため、一刻も早い抜本的な施設整備を行い、時代のニーズに対応した基幹市場としての機能の強化を図り、新たな市場の魅力を創出していく必要があります。
 次に、販売開始時刻前に行われている行為と市場法、条例との関係などについてであります。
 販売業者の行う卸売の販売開始時刻は、仲卸業者及び売買参加者に対する買い受けの機会をひとしく確保することを目的といたしまして、中央卸売市場条例等で取扱品目ごとに定めており、築地市場水産物部では、養殖活魚が午前零時から、一般鮮魚が午前一時からなどとなっております。都は、巡回業務指導を行い、販売開始時刻を遵守させておるところでございます。
 現場では、大量に取り扱う物品の一部に、販売開始時刻前に注文先のメモを張る例もございますが、これは販売のための準備行為と考えられ、条例上問題はありません。
 また、いわゆる転送品とは、市場の取扱品目のうち、卸売業者や仲卸業者が他市場の卸売業者などへ販売するものを指します。卸売業者は原則として、当該市場の売買参加資格を持つ者にしか販売できないため、売買参加資格を持たない他市場の卸売業者等へ転送物の販売を行う場合には、条例に基づき許可を受けることとしております。
 次に、通過物とは、他市場などへ搬送される物品が輸送の都合などで一時的に持ち込まれるもので、市場で販売されることなく通過するものを指します。通過物は、それを持ち込む販売業者が、条例に基づき、市場に到達したときに速やかに届け出することとしております。
 このように、いわゆる転送物や通過物の取り扱いにつきましては、条例に手続が定められており、その手続に従うよう指導しております。
 次に、抜き打ち検査についてです。
 都は、市場業務における適正な取引を確保するため、中央卸売市場条例に基づき、取引業務の立入検査を行っております。これは卸売業者に対しまして、事前に検査期日の通告をせず、抜き打ちで卸売場などの現場に立ち入り、深夜から早朝にかけまして、取引状況を確認した上で、必要に応じて指摘及び改善指導を行うものです。
 平成二十年度には、中央卸売市場全体で、卸売業者十九社に対しまして三十七回実施し、その結果、入荷物品の検品、市場を通さない無許可の取引行為、卸売場での原産地表示など、八十六件の不備や手続漏れにつきまして、指摘及び改善を行いました。
 指摘事項につきましては適宜改善状況を報告させ、まだ改善されていない事項があれば、さらに指導を行い、適正な取引の確保に努めております。
 最後に、都職員の再就職についてであります。
 築地市場には、場内に約三十もの団体がありまして、その一部に都の職員が再就職していることは承知しております。
 都の職員も退職後、一私人として生計を維持していく必要性があり、民間企業や団体の求めに応じまして、在職中の知識、経験を社会的に有効活用する観点から再就職することがあると考えております。
 しかし、その再就職はあくまで当該個人と企業、団体との関係において行われるものでありまして、築地市場の業界団体に再就職した個々の都職員もまた、当該団体の一職員として職務に従事しているものと考えております。
 したがいまして、都職員の再就職は築地市場の移転問題や市場の適切な管理運営に影響を与えるものではなく、また、再就職先である業界団体は、さきの質問にございました検査の対象でないため、公正な市場取引に支障を来すものでもございません。
   〔交通局長金子正一郎君登壇〕

○交通局長(金子正一郎君) 大江戸線勝どき駅の混雑対策についてお答えいたします。
 勝どき駅は、駅周辺の開発に伴い、大江戸線各駅の中でも特に混雑が激しくなってきたことから、これまで、出入り口の増設やエスカレーターの高速化など、さまざまな対策を講じてまいりました。
 また、来年度には、駅に隣接する地域の再開発に合わせまして、新たな出入り口を設置する予定でございます。
 今後も、駅周辺の開発が予定されており、さらに利用者の増加が見込まれることから、これまでの議会における質疑も踏まえ、抜本的対策としてホームの増設や改札口のある地下一階コンコースの拡張など、大規模改良を実施することといたしました。
 今後、関係機関との協議や調整を進め、早期着工に努めてまいります。
   〔五十四番岡田眞理子君登壇〕

○五十四番(岡田眞理子君) 築地市場に関して、再質問させていただきます。
 今、市場長から答弁をいただきましたが、私は石原知事に質問をしているのです。
 石原知事は、平成十二年三月の本会議において、築地市場を仮にほかのどこかに移したとしても、ブランドとしての築地というものが惜しみがたいならば、新築地というブランドでもつくったらいかがかなどと答弁していますが、とんでもないことです。
 築地だから、銀座や日本橋が近場にあって便利だから人が集まるといった観光客の言葉は、先ほど述べたとおりです。
 また、神社仏閣のあるところの門前市に相当する場外市場があるからこそ、築地は、ご本尊に当たる築地市場と門前市である場外とが共存共栄の関係で、食の文化を形成する東京随一の観光拠点となっているのです。
 石原知事はこの築地市場の抜群の集客力をどうとらえ、市場移転問題に絡めるのか、築地を守ろうとしている市場関係者や中央区民のみならず、東京都民、日本国民も注視しているこの問題に関して、東京都の観光事業に力を入れていらっしゃる東京都知事としてのお立場からの石原知事の所見を、改めてお伺いいたします。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕
   〔発言する者あり〕

○知事(石原慎太郎君) そんなに再質問というのはうれしいのかね。あなたのおっしゃることはいささか本末転倒で、ナンセンスですな。築地は……(発言する者あり)黙って聞きなさい。築地は観光地じゃないんですよ。あくまでも生鮮食品の流通の市場ですよ。ですから、施設が荒廃して、不健全なものを提供せざるを得ない、そういう事故が起こったらどうするんですか。そういったものを防ぐために移転ということを考えた。目と鼻の先の豊洲に築地が移転して、新しい観光地になったら結構じゃないですか。しかし、それは第二義的なことであって、あくまでも安全に生鮮の食品を提供するという、市場としての施設というのが必要なんです。

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