平成二十一年東京都議会会議録第十八号

○副議長(鈴木貫太郎君) 十六番斉藤やすひろ君。
   〔十六番斉藤やすひろ君登壇〕

○十六番(斉藤やすひろ君) 初めに、生物多様性について質問します。
 人間と自然が共生しながら多くの種類の生き物が生息する豊かな地球を目指すため、生物多様性については、一九九二年のブラジルでの地球サミットで、生物多様性に関する条約が締結されました。これを受けて、締約国会議、COP10が来年十月に名古屋市で開催されます。会議の期間中には、生物多様性に関する自治体会議も開催される予定となっております。
 都は、環境政策の理念の一つに、自然と共生する都市環境の整備を掲げ、緑化対策等に力を入れております。これに世界的潮流となっている生物多様性への取り組みを加味していくことで、今定例会の所信表明の中で石原都知事が強調された、先進的な環境政策を一段と加速することにつながると考えます。
 そこで、東京における多種多様な生き物をはぐくむ自然との共生について、石原都知事の所見を伺います。
 次に、生物多様性に向けた具体的な取り組みについて質問します。
 私が住んでいる目黒区では、生物の多様性に配慮したまちづくりを掲げ、住民参加型のさまざまな活動が展開されております。
 例えば、小学生の親子などが参加している生き物発見隊という活動では、身近に暮らす生き物を発見するために、子どもたちが区内を流れる目黒川の中に入り、アユやマハゼなどの魚やカニなどを発見し、生息している生き物を通して生物の多様性を学んでおります。
 また、目黒区の自然の姿を区民が定点観測する、いきもの気象台というユニークな取り組みも行われています。これは、国や都が指定した希少種であるオオタカ、ハヤブサ、アオバズク、ウグイスなどの鳥類、クロスジギンヤンマ、ヒグラシなどの昆虫類、ヒキガエル、アオダイショウなどの両生類、爬虫類などを発見したら写真を撮って集積し、子どもたちの環境学習などに活用されております。
 小さな取り組みながらも、地域に根差し、幅広い世代を巻き込んだこうした環境教育の積み重ねが重要であると考えます。
 そこで、都は、生物多様性の視点を含め、このような先進的な区市町村の環境教育を支援していくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、緑の東京十年プロジェクトに関して、緑のネットワークについて質問します。
 現在、同プロジェクトでは街路樹の倍増や校庭芝生化などに取り組み、それらの緑と都立公園などの大きな緑とをつなぐネットワーク化を進めております。
 今後は、このネットワークの網の目をより細かくして、さらに広げていくべきと考えます。その際、本来の生態系を取り戻すために、樹木や草花の種類に配慮することが重要であります。さらに、住宅地や商業地が大半を占めている地域では、民有地の活用や住民の協力も必要であります。
 現在、建築物の新築、増改築の際の緑化施策は進んでおりますが、今後は駐車場や既設建築物の屋上などの緑化について、事例集を作成して事業者に示すなど、民間事業者が民有地を緑化しやすくなるような対応をすべきと考えます。所見を伺います。
 次に、高齢者居住安定確保計画について質問します。
 東京の六十五歳以上の高齢者人口は今後急速に増加すると予測され、超高齢社会に対応した仕組みが求められることになります。特に、高齢者にとって深刻なのが住まいの問題であります。
 私の育った目黒区南部地域は、東京でも有数の木造住宅密集地域です。災害に強いまちづくりを目指し、都市計画道路の整備や再開発が進められています。立ち退きを余儀なくされた高齢者の方々からは、周辺の家賃は高く、住み続けたくても住み続けることができないとの悲痛な声が多く寄せられております。目黒区に限らず、年金で暮らせるような住まいをぜひとも確保してほしいという声や、要介護状態になっても暮らせる住宅を確保してもらいたいというひとり暮らしの高齢者等からの要望も数多く寄せられております。
 こうした切実な声にこたえるためにも、高齢者が適切な生活支援サービスを受けながら、住みなれた地域や住宅で安心して生活が続けられる住環境を早急に整えなければなりません。
 高齢者の住まいに関しては、高齢者住まい法が平成十三年に制定され、以来、高齢者が円滑に入居できる賃貸住宅の登録促進や住宅のバリアフリー化が推進され、一定の成果をおさめてきました。
 高齢者の住まいに関する施策をさらに充実させるため、高齢者住まい法がことし五月に改正されました。大きな改正点は、都道府県が独自に高齢者居住安定確保計画を策定できるとしたこと、さらには、生活支援や介護サービスが確保された高齢者の住まいの実現を、住宅施策と福祉施策とを連携させて進めるようにした点であります。
 高齢者居住安定確保計画は東京の高齢者の住まい整備を担うものであり、早急に策定し、着実に実行していくことが求められます。
 そこでまず、安定確保計画の策定時期、基本的な考え方について、見解を求めます。
 都がこの安定確保計画を策定することによって、高齢者向け優良賃貸住宅等の基準の上乗せや緩和、公的賃貸住宅団地内の高齢者生活支援施設の整備に対する国の直接補助も可能となります。また、区市町村においては、見守りサービスのついた高齢者向け優良賃貸住宅の供給も進むことになります。
 このため、都内の自治体も注目しており、目黒区では、我が党の質問に答え、区長は、東京都の動向を踏まえ、検討組織の設置も視野に入れ、具体的な施策の検討を進めるとの意欲を示しました。
 都として、こうした意欲的な自治体にこたえ、高齢者の安心の住まい確保に向けた施策を構築すべきと考えます。見解を求めます。
 次に、新型インフルエンザ対策について質問します。
 新型インフルエンザの流行が全国的に広がり、一部地域では流行拡大によって医療機関に長い行列ができるなど、パニックに近い状況も見受けられます。都内でも今後さらに患者が急増する事態になれば、同じような状況になりかねません。
 我が党は、第三回定例会で、こうした事態が都内で発生しないように、医療機関の協力を求めて、土日、祭日、夜間も十分に対応できる安心の体制を構築すべきと主張しました。都はこれを受けて具体的な体制を構築しているとお聞きしておりますが、今後は、患者が多く発生している小児の診療体制の強化、さらには外来診療体制の充実に取り組む区市町村への財政支援を十分に行うべきと考えます。都の見解を求めます。
 次に、新型インフルエンザ用ワクチンの接種について質問します。
 現在、都内でも優先接種対象者への接種が進められておりますが、国の供給するワクチン量が十分でないため、医療機関での予約がとりにくいなど、多くの接種希望にこたえられない状況が続いております。
 また、ワクチン接種事業は、国が直接契約した受託医療機関において接種が行われ、接種費用が全国一律とされているなど、国の事業として実施されるものである以上、負担軽減措置も全国一律であるべきです。にもかかわらず、国がワクチン接種の費用負担など最終的な対応を各自治体にゆだねたため、現実には、接種費用に対する独自の助成措置を講じている自治体と、実施していない自治体との差が生じております。
 費用についても国が責任を持つべきであります。自治体の財政力等によって、あたかも命の安全を守る医療に格差があるかのような不公平感は、絶対に生じさせてはなりません。今後の対応について都の見解を求めます。
 今週は障害者週間であります。本日はその最終日で、障害者の日と定められております。障害者には、心臓機能、腎臓機能、呼吸機能、膀胱または直腸機能、小腸機能、免疫機能のように外見からは全くわからない、体の内部に機能障害を持った内部障害者が多数おられます。
 先日、内部障害者の方にお話を聞いた際、通勤電車の中で優先席に座っているときに、外見では障害があることがわからないため、周囲の乗客から厳しい視線を向けられ、あなたは若いのだから譲りなさいよといわれることも多々あるとのことでした。
 同じような悩みを持つ方々がグループを結成し、内部障害者であることをあらわすハート・プラスマークを作成しました。このマークが社会にもっと知られていれば、内部障害者がこうしたつらい経験をしなくても済むとの思いで、社会の理解と協力を呼びかけております。
 東京が目指すユニバーサルデザイン先進都市は、ハード面だけでなく、ソフト面での取り組みが極めて重要であります。内部障害者対策でいえば、私は、社会全体が内部障害者の存在を認識するために、このハート・プラスマークを都の広報紙や都が提供するテレビ番組を利用するなど、都はあらゆる機会を使って訴えていくことが大事だと考えます。都の見解を求め、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 斉藤やすひろ議員の一般質問にお答えいたします。
 東京における自然との共生についてでありますが、いかなる地域であろうと、人間は、自然との共生なくしては存在し得ません。
 奥多摩の山々や小笠原諸島のような動植物豊かな大自然がある一方で、ビルに囲まれた都心の中にも、樹木が茂り、野鳥や昆虫などの生き物が生息している公園や緑地があるなど、東京には多彩な自然があります。
 都心で貴重な自然と都民が触れ合うことのできる広大な神宮の森などは、明治天皇が亡くなられた後に、有志の方々が植樹した結果であります。こうした先人の努力を範として、東京の多彩な自然を守り、育てながら、自然との共生をさらに実感できる東京の実現を目指していきたいと思っております。「十年後の東京」計画もその一端であります。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔環境局長有留武司君登壇〕

○環境局長(有留武司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、環境教育についてでございますが、お話のように、身近で多様な生き物の観測などを通じて、身の回りの自然について学ぶ環境教育に区市町村が取り組むことは意義深いと認識しております。
 都は、今年度から地球温暖化対策等推進のための区市町村補助制度を開始し、地域の特性に即した地球温暖化対策や緑化推進に取り組む区市町村を支援しております。今年度は、環境教育と連動した、児童生徒等による植樹活動などを補助しており、今後とも、先駆性や他地域への波及効果が高い区市町村の取り組みを積極的に支援してまいります。
 次に、民有地の緑化の推進についてでございますが、都市部で緑化を進めるためには、民有地も含めたあらゆる都市空間で、さまざまな工夫により新たな緑を創出していくことが重要でございます。
 本年十月から緑化計画書制度における緑化基準を強化し、建物の新築、改築時の緑化を推進しております。
 さらに、駐車場緑化の拡大や既存建築物の屋上緑化の推進を図るため、これまでに都が行ったモデル事業や民間施設での先行事例について、設計や維持管理に参考となる情報などを取りまとめた事例集を作成してまいります。加えて、事業者への説明会を開催しまして、これらの事例集などを用いて、民有地における緑の創出を働きかけてまいります。
   〔都市整備局長河島均君登壇〕

○都市整備局長(河島均君) 高齢者の住まいに関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、高齢者居住安定確保計画の策定についてでございますが、高齢者の居住の安定を確保していくためには、高齢者の多様なニーズに応じたケアつき住まいの提供などを計画的、総合的に進めていく必要がございます。
 このため、高齢者向けの賃貸住宅及び老人ホームの供給の目標や、目標を達成するための必要な取り組み等を内容といたします高齢者居住安定確保計画の来年度の策定に向け、都市整備局と福祉保健局とが連携いたしまして、積極的に取り組んでまいります。
 次に、意欲的な自治体にこたえる高齢者の住まいの確保に向けた施策についてでございますが、高齢者向け優良賃貸住宅など、バリアフリー化され、緊急時対応、安否確認等のサービスの利用が可能な住宅の供給を促進するためには、区市町村との緊密な連携が重要でございます。
 このため、高齢者向け優良賃貸住宅の事業主体でございます区市町村に対して、これまで以上に積極的に制度の活用を働きかけるとともに、高齢者向けの賃貸住宅と介護関連施設等の併設を促進するなど、住宅施策と福祉施策との連携を図ってまいります。
 さらに、先駆的事例の情報提供や、都と区市町村の関係部局の連携体制の構築などにより、高齢者の住まいの安定確保に向けた施策を一層推進してまいります。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 三点についてお答えを申し上げます。
 まず、新型インフルエンザ対策についてでありますが、都は、患者の増加に備え、都内の医療機関、医師会、区市町村などに対し、入院及び外来診療体制の強化を要請するとともに、小児患者の入院対応が可能な病院については、東京消防庁の救急医療情報システムに表示し、円滑な受け入れ体制の確保を図ったところであります。
 区市町村が確保する外来診療体制につきましては、日曜日や祭日、夜間帯に診療時間の延長や医師、看護師の増員などの強化を図った場合に、臨時的な財政支援を行ってまいります。
 次に、ワクチン接種についてでありますが、今回のワクチン接種は、個人の重症化予防が主な目的でありますことから、接種費用については、実費相当額が自己負担となっております。国の方針を踏まえた接種費用の負担軽減については、都内すべての区市町村が減免措置を講じております。また、都も所要の経費を負担することとされております。
 都はこれまでも、ワクチン接種が円滑かつ確実に行えるよう、国の責任において実効性ある仕組みを構築し、必要な財源措置を講じるよう提案要求をしてきており、引き続き国に対して強く働きかけてまいります。
 最後に、ハート・プラスマークの普及についてでありますが、内部障害者の方は、身体障害者手帳交付者の四人に一人を占める状況にありますが、外見からはわかりにくいという特徴がございます。このため、内部障害者であることを示すハート・プラスマークについては、広報紙等において周知を図るとともに、毎年十二月初めの障害者週間のポスターでも紹介し、普及に努めております。
 今後も、都民の障害者に対する理解を促進するため、ご提案も含め関係局とも連携し、普及啓発に努めてまいります。

○副議長(鈴木貫太郎君) この際、議事の都合により、おおむね十五分休憩をいたします。
   午後四時五十七分休憩

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