平成二十一年東京都議会会議録第十八号

○議長(田中良君) 五番野田かずさ君。
   〔五番野田かずさ君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○五番(野田かずさ君) 初めに、医療再生について質問をいたします。
 深刻な医師不足の中、救急医療や周産期医療などの医療現場は大変厳しい状況にあり、医療再生に向けた取り組みは急務の課題であります。こうした中、都は、救急医療の東京ルールの推進やスーパー総合周産期センターの整備など、都民の安全・安心を守るため、さまざまな先駆的な施策に取り組んでおります。
 まず、地域医療の再生に向けた、知事の基本的な考え方について伺います。
 都は先般、地域医療再生計画案を取りまとめ、小児医療や周産期医療などの確保充実を図るため、さらにさまざまな施策を講じていくこととしました。本計画は、特に多摩地域において、都立小児総合医療センターに子ども救命センターなど高次の医療機能を集積させるとともに、各地域の小児二次救急医療体制を充実させ、さらに小児総合医療センターとの連携体制を構築することにより、多摩地域全体の医療水準の向上に向け、都が積極的かつ具体的に取り組んでいこうとするものであり、我が党としても高く評価をしているところでございます。
 中でも、子ども救命センターの整備は、これまで都が整備してきた小児の初期、二次救急医療体制に加え、重篤な小児患者に対応する三次救急医療体制を整備するものと認識していますが、その役割について伺います。
 また、地域の医療提供体制の強化に当たっては、高次の医療機能の整備に加え、医療機関相互の連携体制の構築が不可欠であります。特に、大変厳しい状況にある小児医療については、国や都などが医師の養成確保に取り組んでいくとしても、深刻な小児科医不足は直ちには解決しません。こうした現実を直視し、限られた小児医療資源を有効に活用していくためには、医療機関の機能分化と連携を進めていくことこそが、多摩地域の小児医療水準の向上につながるものと考えます。
 こうしたことから、迅速適切な医療を提供するためには多摩地域の医療連携体制の構築を一層進めるべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、都市農業について伺います。
 私の地元、東村山市、東大和市、武蔵村山市は、狭山丘陵があるものの、地域の大半は武蔵野台地の平たんな土地となっております。昔から畑作が盛んで、都内で有数のサツマイモやお茶の産地でしたが、現在では野菜や植木、花壇苗、そして果樹の割合が多くなっております。市街地に隣接した雑木林や豊かな実りを与えてくれる貴重な農地のある田園風景と、豊穣な歴史や独自の文化を支えてきた農家がしっかりと築き上げた地域社会が形成されております。
 私は、このような自然豊かな多摩の緑と、長い間培ってきた人々の営みを、未来に引き継ぐべき都民の貴重な財産として守っていきたいと考えております。しかし、農業が盛んな地元においても、農業者の方々とお話をしますと、相続による農地の減少や、農産物価格が安いなど、農業経営にさまざまな問題が起きていることがわかります。
 農家は、限られた農地で高収益を上げなければ生計が立てられないと考えております。このため、農業者の皆様は、少しでも付加価値の高い農産物をつくることにより所得をふやし、農業の継続を図ろうとされております。大量生産された農産物に比べ、おいしさや希少価値などで特徴を持ったナシやブドウなどを生産し、地元の直売所や自分の庭先で販売することにより、地域住民の評価を得ております。
 東京のように、それぞれの農家が限られた農地で付加価値の高いさまざまな農産物を生産するには大型の栽培施設が必要であり、農業経営を改善するためにも、これらの整備を支援することは非常に重要であると考えております。
 そこでまず、農産物の栽培施設などに対してはどのような支援を行っているのか伺います。
 施設の整備ばかりだけではなく、技術指導等も必要であります。農業者の皆様は、栽培技術を高め、販売戦略を立てることにより農産物の付加価値を高めたいと考えております。
 しかしながら、大地を耕す農業は、気候の変化や土壌の状態、病害虫の発生など、複雑で多様な自然条件に左右されるため、栽培技術についても地域の実情に応じたさまざまな知識と経験が必要です。また、販売戦略を立てるためには、流通や消費動向を把握するなど、情報収集も必要になります。このような農業者のニーズにこたえることが、今後ますます重要になっております。
 そこで、農業者の技術力や経営力の向上に向けた都の支援について伺います。
 おいしく希少価値がある果樹を生産している農業者の皆さんは、その価値を都民に広く知ってもらい、より一層付加価値を高めたいと思っております。都としても、積極的に後押しをしていただきますよう要望しておきます。
 ところで、東村山市では、植木や花壇苗などの生産も盛んであります。農林総合研究センターとの共同で、東京花マットという商品を開発してきた農業者もおります。
 この東京花マットは、花壇苗を並べてマット状に育成したもので、タイルのように敷き詰めることで簡単に花壇がつくれ、柱や壁面に並べることにより立体的な花の装飾ができるなど、新しい緑化の材料として画期的なものであります。しかし、日本経済の冷え込みにより、植木や花壇苗の需要が低迷し、価格も下落しております。東京花マットも同様でございます。植木や花壇苗などの販路拡大を、都はどのように支援しているのか伺います。
 都市農業の活性化のためには、まず地域農業の活性化に目を向ける必要があります。安全で安心、新鮮でおいしい農産物が生産され、地域の特産品として販売されることにより、農業者がさらに農業経営に情熱を燃やし、後継者を育て、農地を手放さずに農業が継続されることになります。このためにも、地域の特性を生かした農業施策を一層充実させていただきたいと思います。
 次に、高齢者の就業について質問をいたします。
 昨日の我が党の服部政調会長の代表質問において、高齢化が急速に進行する中、高齢者の一層の就業促進に取り組むとのご答弁をいただきましたが、さらにこの問題を深める観点から質問をいたします。
 ご承知のとおり、二〇一二年には、団塊の世代が定年後の継続雇用も終了して退職期を迎えることが予想されており、いわゆる二〇一二年問題として、企業における技能の継承や労働力確保が課題となっております。一方で、大量退職する団塊の世代のその後の働き方や生きがいをどう確保していくかも重要な課題です。
 二〇〇七年の独立行政法人労働政策研究・研修機構の団塊の世代の就業と生活ビジョン調査によれば、六十六歳になると、正社員、契約社員や嘱託などを希望する割合が一気に低下する一方で、ボランティア活動を希望する割合は一気に増加していることがわかります。
 こうした調査結果を見ても、私は、今後の団塊の世代向けの就業施策は、ボランティア、NPO、さらには地域活動など、さまざまな要素を加えて高齢者の働き方を支援していくことが必要になると考えます。
 そこで、都は、こうした新たな視点から、六十五歳を迎える団塊の世代に対する就業施策をより一層充実していくべきだと考えますが、見解を伺います。
 次に、水道事業について伺います。
 私の地元にある東村山浄水場では、高度浄水施設が本年度末に完成する予定であります。地元も大きな期待をしておりますので、着実に事業を進めていただきたいと思います。
 ところで、水道局はこれまで、公道にある配水管のダクタイル化や鉛製給水管のステンレス化などにより耐震性の向上を図り、漏水率の低減に力を尽くしてきました。一方、私道内に布設されている給水管については、私道内給水管整備事業の実施により漏水防止、出水不良解消などに精力的に取り組み、また、我が党の要望も踏まえ、事業対象を拡大してきました。
 そこで、本事業のこれまでの取り組みと効果について伺います。
 昨日、我が党の代表質問において、水道管路の耐震強化について質問をいたしました。私は、この私道内給水管整備事業は、管路の耐震化という面から見ても非常に有効と考えます。耐震化というこの事業の意義をより明確に打ち出すことで、地域住民の理解を得られやすくなり、既存の事業の円滑な施行につながるとともに、前倒しも図れると考えます。
 これに加えて、既存の整備対象から外れる給水管にも、依然として強度の劣るものが多数布設されていると聞いております。こうした給水管が多く残っていては、安定給水の確保にも不安があります。水道局は、こうした点に着目して調査し、効果的な取り組みを検討すべきと考えます。
 そこで、今後、私道内における給水管の耐震化に向けてどのような取り組みを行うのか伺います。
 以上で私の質問を終了いたします。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 野田かずさ議員の一般質問にお答えいたします。
 地域医療の再生についてでありますが、産科、小児科などの医療現場は、医師不足などにより大変厳しい状況にあります。医療機関の連携のもと、限られた資源を有効に活用し、都民の安全・安心を確保しなければならないと思います。
 都は、地域全体で救急患者を受けとめる救急医療の東京ルールの推進や、リスクに応じた周産期医療を確保するためスーパー総合周産期センターを整備するなど、先駆的な取り組みを行ってきました。
 さらに、このたび小児総合医療センターを開設するとともに、重篤な子どもを迅速に受け入れ、高度な救命治療を行う、子ども救命センターを新たに整備します。
 もとより、医師の養成や診療報酬の充実など、国が責任を持って改善を図るべき課題が多く、引き続き働きかけていきたいと思っております。
 いずれにしろ、地域医療も含めまして日本全体を覆っている医療の危機、荒廃を再生させるためには、現在の医療を含めた高福祉低負担という体制を変えなければ、絶対に物事はよくならないと痛感しております。都は都なりに医療現場を担う方々の英知を集め、地域医療の充実に全力で取り組んでまいります。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 二点についてお答えを申し上げます。
 まず、子ども救命センターについてでありますが、都は来年度、高度な三次救急医療施設として、仮称子ども救命センターを新たに四カ所整備をいたします。
 同センターでは、小児科医や小児外科医を常時配置するとともに、外科医や整形外科医等を確保いたしまして、二十四時間体制で重篤な状態となった子どもの救命治療を行ってまいります。
 また、小児救急医療の中核として、小児の二次医療機関と連携し、患者受け入れの調整を行うほか、臨床教育の拠点として、地域を支える医師の人材育成などにも取り組み、安心・安全な小児医療体制を確保してまいります。
 次に、多摩地域の医療連携体制についてでありますが、限られた小児医療資源を最大限活用していくためには、初期、二次、三次の小児医療施設がそれぞれの役割分担のもと、その機能を発揮し、重層的に連携することが重要であります。
 このため、小児総合医療センターと多摩北部医療センターなど、地域の中核病院との間で、遠隔診断支援システムの導入やベッドの空き情報の共有化などを行ってまいります。また、地域の中核病院を中心として、診療所等とのネットワーク会議や症例検討会等を実施いたします。こうした取り組みにより、小児医療提供体制を強化してまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

○産業労働局長(前田信弘君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、農産物の栽培施設などへの支援についてでありますが、付加価値の高い農産物を生産するためには、栽培施設など、さまざまな農業用施設の整備が必要であります。
 このため、都では、魅力ある都市農業育成対策事業におきまして、農業者の創意工夫や都民ニーズを生かした農業経営に必要となる施設整備への支援を行っております。
 具体的には、高品質で希少価値の高いブドウを栽培するための大型ハウス、あるいは人気のある完熟トマトを長期間収穫するためのビニールハウス、また都民が家族で楽しめるもぎ取り、摘み取り農園の整備などでありまして、都は、これらの施設整備にかかわる経費の二分の一を補助しております。
 今後とも、農業経営の改善を目指している農業者が行う栽培施設などの整備について、さまざまな形で支援してまいります。
 次に、農業者の技術力や経営力の向上に向けた支援についてであります。
 農産物の付加価値を高めるには、ただいまお答えしました施設整備に加え、農業者の技術力や経営力の向上が必要であることは、ご指摘のとおりであります。
 このため、都では、地域に展開する農業改良普及センターの指導員が日常的に農家を訪問いたしまして、それぞれの農業者のニーズにこたえて、直接、技術指導や経営相談、情報提供、後継者育成などを行うとともに、農林総合研究センターにおいても、新品種や新技術の開発に取り組んでおります。
 今後も、地域や個々の農業者の実情に応じた、一層きめ細かい対応を行うことによりまして、農業者が将来にわたり安定した農業を継続できるように支援してまいります。
 次に、植木や花壇苗などの販路拡大への支援についてでありますが、景気の低迷による建設工事の減少などに伴い、緑化植物の需要が落ち込んでございます。
 このため、産業労働局では、道路や公園などの整備を行う関係各局などに対しまして、都内産植木の供給可能量の情報を提供するなどして、利用促進を図っております。
 また、花壇苗については、東京都農業祭などで機会あるごとにPRを行うとともに、来年度整備予定の街路樹モデル園におきまして花壇苗を展示し、利用方法を広く紹介してまいります。
 引き続き、さまざまな機会をとらえて、都内産の植木や花壇苗などの消費拡大を図ってまいります。
 最後に、団塊の世代向けの就業施策の充実についてでございます。
 国が行った就業実態調査等を見ても、高齢者の方々は、みずからの就業意欲や体力、また家庭の事情などに応じまして、正社員としての働き方のほか、短時間勤務やボランティア活動、さらには地域での起業など、さまざまな働き方を希望されております。こうした高齢者の方々が、希望に応じて働き続けることができる社会を実現していくためには、国の雇用政策や社会保障政策との整合性を図りながら、高齢者就業施策の拡充に取り組んでいく必要があります。
 このため、都は、団塊の世代の方々が六十五歳以上を迎えることを視野に入れまして、就業支援セミナーにおいて、新たにNPOやボランティア活動、起業等も含めたさまざまな働き方の情報を提供するとともに、多様な就業先の開拓に積極的に取り組むシルバー人材センターへの支援強化を検討し、高齢者の就業機会の拡大を図ってまいります。
   〔水道局長尾崎勝君登壇〕

○水道局長(尾崎勝君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、私道内給水管整備事業のこれまでの取り組みと効果についてでございますが、私道内には複数本の長距離給水管が布設されていることが多く、漏水や出水不良の主な原因となっております。そこで、平成六年度より、給水管が三本以上布設されている私道を対象に、給水管を整理し、新たに配水管を布設する本事業を開始いたしました。
 平成十九年度からは対象範囲を拡大し、給水管が三本に満たなくても、水道を使用しているお客様が十五世帯以上ある私道につきまして、配水管を布設することといたしました。
 さらに、平成二十一年度からは、水道を使用しているお客様が十世帯以上ある私道につきましても対象とし、事業の範囲を拡大したところであります。
 これまで、約五百七十キロメートルを整備し、漏水防止や出水不良の解消に大きく貢献してまいりました。なお、今後、約八百五十キロメートルの整備を計画しております。
 次に、私道内における給水管の耐震化に向けた取り組みについてでございますが、ご指摘のとおり、私道内給水管整備事業は、漏水防止や出水不良の解消といった効果とともに、震災対策上も有効な施策でございます。
 このため、事業目的を説明するパンフレットなどに耐震性向上の事業効果を強く打ち出し、私道の地権者や近隣の住民の皆さんに理解されやすい広報に努めることで、一層の理解を得て、工事の円滑な推進を図ってまいります。
 さらに、私道内に布設されている給水管で、強度が弱く、耐震性の課題が懸念される給水管につきましても、平成二十二年度に、強度や劣化要因などに着目した、詳細な調査分析を行う予定でございます。
 既存の事業を着実に進めるとともに、耐震性の観点から、弱点となる給水管につきましても、調査結果を踏まえて対応策の検討を行い、私道内給水管整備の一層の推進に努めてまいります。

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