平成二十一年東京都議会会議録第十八号

○副議長(鈴木貫太郎君) 二十三番神林茂君。
   〔二十三番神林茂君登壇〕

○二十三番(神林茂君) 今まさに、国では、事業仕分けを踏まえた予算編成の真っただ中であります。
 都政において石原知事と我が党が取り組んできたように、大胆に行財政を見直し、むだを省き効率化を図っていくことについては、大いに賛意を表するところですが、長い年月をかけて先人の努力によって築き上げてきた、米国や地方自治体や住民との約束事や信頼関係をいとも簡単にほごにしたり、国の将来を担う科学技術や公共事業そのものがまるで悪であるかのように切り捨てられることなど、本来、国としてなさなければならない責務まで放棄し削減することは、数の上にあぐらをかく暴挙としかいいようがありません。
 さらに加えて、あれだけ国民に混乱と迷惑をかけた社会保険庁職員の半数以上を、一月に発足する日本年金機構に何の反省もないままそっくりそのまま送り込んだり、教員の質の向上に欠かせない教員免許更新制度の廃止や学力テストの調査対象を大幅に絞り込むなどの画策が進められており、こうした一連の動きを断固阻止すべく声を上げていかなければなりません。
 そして、何よりも問題なのは、公約に掲げられた自動車関連諸税の暫定税率の廃止や高校の無償化、子ども手当の実施などが、果たしてどのような形で行われ、地方に負担をもたらすことがないのかであります。
 このように都政運営に当たって、今最も危惧されることは、こうした国の一方的な切り捨てや地方への押しつけにより、都民生活に大きな打撃や影響が生じることです。
 都は、現下の厳しい環境に直面する中、産業、雇用や福祉、医療、基盤整備を初めとするまちづくり、水の安定供給、教育に至るまで、なくてはならない都民の暮らしを守るという視点を持って都政運営に当たることが重要であります。
 今後、都税収入の大幅な減収が見込まれ、公約の実現にこだわり、迷走する国の財政運営の中にあって、来年度予算を編成することになりますが、知事の所見を伺います。
 次に、介護人材確保について伺います。
 日本経済が厳しい状況にある中、雇用情勢も非常に厳しく、先日、文部科学省が発表したところによれば、平成二十一年十月一日現在の大学などの就職内定率は五九・一%と、昨年同期比六・七ポイント低下しており、このまま放置すれば第二のロストジェネレーションを生み出しかねない状況です。また、完全失業率も五%台という過去最悪の水準が続いており、都としても雇用対策を迅速に対応することが求められております。
 一方、介護分野においては、離職率が一八・七%と、依然人材不足の状況が続いている上に、国の推計によれば、介護保険サービスに携わる介護従事者は、平成二十六年には最大で百六十万人必要であるとされており、中長期的に総合的な介護人材育成策を講じていくことは喫緊の課題です。
 この切迫した状況の中、先日、我が党は、厳しい経済環境と都民の雇用不安への対応を求める緊急要望を行いました。その内容も踏まえ、深刻な求職ニーズにこたえられるとともに、将来に向けて介護人材確保につながる対応策に即刻取り組むべきと考えますが、所見を伺います。
 介護職員の離職率が高い理由について、一つには、人手不足の中、介護という重労働に携わることから、労働条件が過酷なものとなってしまっていることが挙げられます。また、仕事の内容の割には社会的な評価が低く、賃金も他産業と比較して低いことも問題の一つです。賃金を勤務内容に見合ったものにするなど、処遇改善を図る必要があります。
 また、介護職員は、日々介護を行う中で高齢者の命を直接預かる立場にあり、資質向上についての取り組みも重要です。介護の現場では、人手不足などにより、職員の研修機会の確保や資格取得の支援などになかなか取り組むことができずにいます。現場の声を踏まえ、資質向上に向けた取り組みを計画性を持って着実に推進することが求められます。
 介護職員の処遇改善や資質向上に、都としてどう取り組んでいくのか、所見を伺います。
 連続立体交差事業の高架下利用について伺います。
 現在、都内では七路線八カ所で連続立体交差事業が行われていますが、交通渋滞や踏切事故の解消に資するとともに、鉄道により分断化されていた市街地の一体化が図られ、極めて効果の高い事業となっています。
 そこで、何よりも大切なことは、こうした高架化事業と同時に、駅を中心とした沿線のまちづくりを計画的に進め、防災防犯、環境に配慮した活力ある地域整備を進めていくことであります。殊に、これらの事業で生み出される高架下は貴重な都市空間であり、さまざまな公共利用や駅前の利便性を生かした活用が必要とされております。
 そこで、高架下の利用は、連続立体交差事業を進める東京都が責任を持ってまとめていくべきと考えますが、東京都の役割をどのように受けとめて進めていこうとしているのか、伺います。
 次に、大田区においても、京浜急行線連続立体交差事業で、来春には上り線が高架化されるなど事業が着実に進んでおり、一日も早い完成とその後のまちづくりがどのように進んでいくのか、地元でも関心が高まっております。京浜急行線連続立体交差事業の今後のスケジュールと高架下利用の取り組みについて伺います。
 従来から高架下の利用につきましては、主に、都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する要綱第十条に基づいて、国または地方公共団体が、みずから運営する公共の用に供する施設で利益を伴わないものを設置しようとするときに、いわゆる公租公課相当分高架下の一五%の中で優先活用が図られてきました。
 そこで、まちづくりの視点から設置が望まれる施設を申し上げていきますと、まず、駅前や商店街などの放置自転車を一掃する自転車駐車場が挙げられます。駅から至近な距離になければ活用率が落ちることから、駅前高架下の小さなスペースでも大量の自転車が収納でき、かつ、ワンタッチで出し入れ可能な立体機械式駐輪場を設置すべきであります。
 次に、駅前には広場が計画されていますが、高架下とも一体的な活用を図り、歩行者や車の動線をしっかり確保する中で、電線類の地中化、防災防犯対策、水や緑の憩いと触れ合いの場も含めて検討を進めていただきたいと存じます。
 さらに、地元商店街との連携を図って、駅前の活性化を図るとともに、保育園などの子育て施設や医療施設などの設置を図り、駅がまちの中心になるようなまちづくりの工夫も加えていただきたいと思います。
 また、今後の課題となるのが、公共的な施設である町会、自治会会館や消防団分団本部などを高架下に設置することであります。
 従来より鉄道が存する地域は、長年にわたって鉄道によって地域分断や騒音、振動に悩まされ続け、その大半が住宅が密集する災害の危険性が懸念される地域であります。こうした現況の中で、地域活動を下支えする活動拠点となる町会、自治会会館や、昼夜を問わず防火防災に努める消防団の詰所を高架下に設置することが、地域からも強く求められております。
 無償のボランティアとして、地域の下支えに尽力される多くの方々の思いをしんしゃくしていただき、都としても、高架下利用検討会の中で、地元自治体と連携を図って、ただいま指摘してきた公共の用に供する施設及び公共的な施設が高架下に設置できるように、柔軟な対応をもって検討していただきたいと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、水道事業について伺います。
 水道局では、安全でおいしい水を都民に届けるために、高度浄水処理、直結給水の普及、促進などの施策を行っています。
 直結給水の普及促進は進んでいるものの、現在、都では三割以上の都民が貯水槽水道を使用しております。貯水槽水道は、水質劣化などが生じないよう適切な管理が重要であります。本来、貯水槽水道の管理は設置者が行うものですが、水道局では、クリーンアップ貯水槽と銘打ち、積極的に管理状況の調査や指導を行っており、そのことは評価できます。
 一方、貯水槽水道は、直結給水と比べて残留塩素を消費しやすい構造であるとのことです。一部には、居住者の減少などで水使用量が変化し、滞留時間が長い施設があると聞いています。何らかの手だてを講じていくべきではないでしょうか。また、クリーンアップ貯水槽において調査を拒否された例もあると聞いています。
 そこで、これまでの成果と今後の貯水槽水道対策について見解を伺います。
 次に、利便性向上の観点から、給水装置工事の申請手続について伺います。
 現在、給水装置工事を実施する場合には、現状の図面の閲覧、工事や検査の申し込みなど、水道局へ何度も足を運ぶ必要があります。水道局で検討中の電子申請が導入されれば、窓口へ出向く回数や待ち時間軽減など、工事店にとって大きなメリットがあります。また、工事店のパソコンから図面を閲覧できるようにすることも有効だと考えます。一方、工事店の中にはパソコンにふなれな小規模事業者も多いことから、使いやすいシステムにすることはもちろん、十分な周知期間、準備期間を設けるよう、強く要望したいと思います。
 そこで、電子申請導入に向けた検討状況、また、中小規模の工事店にはどのような配慮を行うのか伺いまして、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 神林茂議員の一般質問にお答えいたします。
 都の来年度予算と国政の動向のかかわりについてでありますが、経済情勢は厳しさを増しておりまして、景気が二番底を迎えるおそれもあるなど、都財政はますます厳しい環境のもとに置かれております。そうした中で来年度予算を編成することになりますが、都にも大きな影響を及ぼす新政権の国政運営がどうなっていくかは大きな懸念材料でもあります。
 政治は、ただ時流に便乗するだけではなく、将来もしっかり見据えながら、打つべき手を時期を逸することなく打っていかなければならないものだと思います。地方主権を標榜する新政権が、国の都合で地方に財政負担をつけ回すようなことは絶対にあってはならないと思います。ぜひとも地方主権の理念を貫いて、しっかりとした来年度の国家予算を編成してもらいたいと思っております。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁します。
   〔東京都技監道家孝行君登壇〕

○東京都技監(道家孝行君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、連続立体交差事業の高架下利用における都の役割についてでありますが、連続立体交差事業は、踏切の遮断による交通渋滞や地域分断を解消するだけでなく、道路ネットワークの整備や沿線のまちづくりの促進に極めて効果の高い事業であり、都が事業主体となり、道路整備の一環として実施しております。本事業により新たに創出される高架下は、貴重な都市空間であり、地域のまちづくりの視点から、有効に活用することが重要でございます。
 このため、利用計画の策定に向け、都は、事業の進捗に応じて、地元区市及び鉄道事業者と高架下利用検討会を設置し、沿線のまちづくりや地元要望等を総合的に勘案しながら、主体的に調整を行っております。
 次に、京浜急行本線・空港線連続立体交差事業のスケジュールと高架下利用についてでございます。
 本事業は、第一京浜や環状第八号線に唯一残された踏切など二十八カ所の踏切を除却し、交通渋滞を解消するとともに、羽田空港へのアクセス向上にも寄与する極めて重要な事業であります。現在、高架構造物の工事を実施しており、来年春に上り線を高架化いたします。引き続き下り線の工事を進め、平成二十四年度に全線高架化し、すべての踏切を除却する予定であります。
 本事業における高架下利用につきましては、利用計画の検討、調整を行うため、本年六月に、都、地元区及び鉄道事業者で高架下利用検討会を設置いたしました。現在、検討会において利用可能な箇所や面積などについて検討を進めており、今後とも地域のまちづくりに資する高架下利用計画の策定に向けて取り組んでまいります。
 最後に、公共の用に供する施設及び公共的な施設の高架下利用についてでありますが、駐輪場などの公共の用に供する施設につきましては、地方自治体は、鉄道事業者と協議の上、高架下に設置することができます。都はこれまで、高架下利用検討会において、地元要望も踏まえながら、まちづくりの観点から必要性の高い駐輪場や公園などの施設の設置について高架下利用計画に反映させてまいりました。
 また、集会所などの公共的な施設で地元区市が設置するものにつきましては、検討会において、沿線のまちづくりや地元要望等を総合的に勘案し、引き続き検討してまいります。
 今後とも、高架下の有効利用に向けて取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 二点についてお答えを申し上げます。
 まず、介護人材の確保策についてでありますが、東京における全産業の有効求人倍率が〇・五七倍と深刻な就職難の中、介護分野におきましては人手不足が続いておりますことは雇用のミスマッチであり、ご指摘のとおり、早急に解消を図るべき課題と認識をしております。
 このため都は、緊急雇用創出事業臨時特例基金を活用し、離職者等が介護施設などで雇用され、働きながら介護福祉士等の資格を取得することを支援していく事業を実施いたします。
 なお、本事業の対象者といたしましては、高等学校の卒業予定者等も想定しており、雇用機会の創出と人材確保を同時に実現する取り組みとして効果が高いと考えております。
 今後、ハローワークや教育機関等の関係機関と連携し、介護人材の確保、育成に努めてまいります。
 続きまして、介護職員の処遇改善や資質向上についてでありますが、国は本年四月、介護職員の処遇改善等を目的に介護報酬の増額改定を行いました。また、さきの国の補正予算におきましては、都道府県に基金を造成し、介護職員の給与水準の向上を図るための事業や、代替職員の確保により研修の受講を支援する事業が創設をされました。さらに、都では今年度から、介護職員の国家資格取得に取り組む事業者に対する支援などを独自に実施しております。
 今後とも、引き続き基金事業も積極的に活用しながら、介護職員の処遇改善や資質向上に取り組んでまいります。
   〔水道局長尾崎勝君登壇〕

○水道局長(尾崎勝君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、貯水槽水道対策の成果と今後の取り組みについてでございますが、当局では、貯水槽水道の適正な管理を促進するため、平成十六年度から、すべての貯水槽水道を対象に、適正管理に関するパンフレットを配布するとともに、管理状況や設置環境、水質などの点検、調査を行ってまいりました。これまでに、直結給水に切りかえられたものや点検拒否等を除く約十万件の調査を行い、管理に不備のあった施設には、設置者に対して指導助言を行いました。
 中でも、水質に問題のあった施設に対しては、保健所と連携して迅速かつ適切な対応を行ってまいりました。これらにより、多くの施設が改善されるとともに、設置者の管理意識が向上するなどの効果が得られました。
 今後は、新たな取り組みとして、タンク内での水の滞留時間が長いなど水道水に必要な残留塩素を消費しやすい施設に対して、その要因を把握するとともに、タンクの水位調整など具体的な改善策を提案してまいります。さらに、点検を拒否された施設の設置者に対しては改めて協力を求めるなど、適正管理の徹底を図ってまいります。これらの取り組みの着実な実施により、貯水槽水道における安全でおいしい水の供給に努めてまいります。
 次に、電子申請の導入に向けた検討状況についてでございますが、電子申請システムにつきましては、平成二十三年度の運用開始を目指し、現在、その準備を進めております。また、給水装置の図面検索システムにつきましては、既存図面の電子化を進めるとともに、平成二十五年度の導入に向けた検討を行っております。
 電子申請の導入に当たりましては、ご指摘のとおり、一部の指定事業者におきまして、申請方式の変更に速やかに対応できないなどの状況が考えられます。このため、申請様式の簡素化や、入力内容を画面上から簡単に選択できるようにするなど、指定事業者の負担とならないよう、使いやすいシステムを構築してまいります。
 これに加え、現行の申請方式も一定期間継続するとともに、操作講習会の開催や相談窓口の設置など、サポート体制を整備いたします。こうしたことを踏まえ、利便性の高い電子申請システムの構築に向けて着実に取り組んでまいります。

○副議長(鈴木貫太郎君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩をいたします。
   午後三時二分休憩

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