平成二十一年東京都議会会議録第十八号

○副議長(鈴木貫太郎君) 五十番山下ようこさん。
   〔五十番山下ようこ君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○五十番(山下ようこ君) それでは、私、都議会民主党山下ようこが一般質問をさせていただきます。
 初めは、命を守る大事な医療、医師と看護師の確保について伺います。
 都内には、市町村が運営する公立病院が九カ所あり、いずれも地域医療にとって重要な役割を担っています。例えば、私の地元の青梅市立総合病院は、五百六十余りのベッドを持つ地域の中核的存在で、救命救急センターのある病院として、西多摩地域の三次救急医療を一手に引き受けているほか、二次救急、特に小児二次救急医療機関や地域がん診療拠点として、非常に大きな役割を果たしています。
 公立病院は、地域医療の最後のとりでであり、診療を休止した千葉県の銚子市立病院のようなことがあってはなりません。都としても、公立病院を守り、はぐくむという姿勢で地域医療の確保に取り組んでいただくよう、まず要望いたします。
 地域医療のためには、公立病院など地域の中核的病院で必要な医師が確保されることが重要です。しかし、深刻な医師不足の中、病院の努力だけでは十分な数の医師を確保するのは困難な状況で、都としてもきちんと支援を行っていくべきと考えます。
 そこで、都はどのように医師の確保に取り組んでいるのか、伺います。
 そして、医師に加えて看護職員の確保も大きな課題です。平成十八年の診療報酬改定によって七対一看護が導入されてからというもの、看護師不足は一層深刻化しています。
 看護職員を確保するには、養成数をふやすことが最も直接的な方法といえるでしょうが、少子化の流れの中で、果たして目標とする数の志願者が学校の門をたたくかどうか。さらには、現場の第一線で活躍するための知識と経験を身につけるには並々ならぬ努力と歳月が必要ですから、やはり現在働いている看護師が仕事を続けられるような仕組み、出産、育児などで一たん退職したとしても、比較的短期間で職場復帰できるような仕組みづくりが必要です。
 都は、看護職員の定着や再就職の促進に向けてどのように取り組んでいくのか、伺います。
 さて、続いては、こちらのポスターをごらんください。これは、皆様ご存じ、今回の都議会定例会のお知らせです。キャッチコピーは、ポスターの下の方に書かれている「もっと快適なまち東京へ」。
 かわっての私の質問は、まさにもっと快適なまち、東京を構築するための提案です。
 東京都は、屋上緑化を推進することで、一躍注目される環境都市となりました。植物が持つ温暖化抑制機能、ヒートアイランド抑制機能などの物理的効果と、心をいやす精神的効果を生かした画期的な施策だと思います。東京都環境基本計画も策定されて、東京は世界の模範となる環境都市としてますます発展することが期待されます。
 ただ、私は以前から一つの疑問を抱いております。それは、環境という言葉が、多くの場合、屋外の環境を意味しており、果たして屋内の環境の質についてはどのように確保されているのかということです。環境都市を標榜する以上、屋外だけでなく、屋内、室内の環境にもひとしく配慮しなければならないはずです。
 建築材や事務機器などからさまざまな化学物質が発生し、室内の空気が汚染されている実態が示されたことから、厚生労働省は、室内の空気汚染を低減して快適で健康な居住空間を確保するために、平成十四年に都道府県知事に対して、合計十三種類の化学物質の室内濃度指針値を通達しています。石原知事就任の三年後のことですから、知事も認識していらっしゃることと存じます。
 この通達を受けて対策がとられた結果、現在では多くの場合、その指針値が満たされているようです。ただし、通達では、指針値は、新たな知見や国際的な評価作業の進捗に伴い、将来、変更されることもあるとしています。
 こうした実情を踏まえ、東京都は、厚生労働省がまだ指針値を策定していない四種類の化学物質について、独自に室内濃度の推奨値を提示しており、疑わしい物質には警鐘を鳴らすという都の姿勢と先見性は評価できると考えます。
 この室内濃度指針値を、厚生労働省は、住居にとどまらず、オフィスビル、病院、学校、地下街など、あらゆる室内空間に適用されるべきものとしています。私は、ここが極めて重要なポイントと考えております。なぜなら、室内濃度指針値は、個人の住宅だけでなく、一般の人が立ち入る公共の室内空間までも適用範囲としているからです。
 平成十九年度の統計によりますと、東京で働く人は七百十五万人、このうち勤務時間の多くをオフィス内で過ごす人は推定三百三十六万人、半数近くに及びます。多くの人が働くオフィスの空間は、たとえ民間企業のオフィスであったとしても、決してプライベートなものではなく、公共性の高い空間であり、東京都内で働く人々の環境や健康に責任ある行政として、オフィス空間の空気汚染をも監視して指導する必要があると私は考えます。
 都内のビルのオフィス空間を含む公共性の高い室内環境を確保するために、都はどのような対策をとっているのか、伺います。
 さて、室内環境をより快適にするために、私は一つの提言を持って、きょうこの場に参りました。それは、極めて簡単な方法、室内を緑化することです。植物には、いうまでもなく、二酸化炭素を吸収し、酸素を生み出す機能があります。
 昭和四十七年に労働省が定めた事務所衛生基準規則は、事務所の二酸化炭素の濃度を一〇〇〇ppm以下に保つことを義務づけていますが、屋外の二酸化炭素の濃度が三八〇ppmを超えた今日、強制換気によって室内濃度を一〇〇〇ppm以下に保つことはたやすいことではなく、基準を守っていくためにも、今後、室内緑化植物の力を十分に活用する必要があると思われます。
 一方、NASA、アメリカ航空宇宙局の研究によりますと、宇宙ステーションのような密閉空間にたまる化学物質を植物が無差別に吸収するという現象も見出されており、植物による室内空気浄化作用にも注目すべきと考えます。
 さらに、植物には人の心に潤いを与え、いやすという、昔からよく知られた精神的効果があり、ストレス社会の現代、植物は一層大きな役割を果たすものと思われます。
 都は現在、緑の東京十年プロジェクトを推進し、緑あふれる東京の実現に努めていると認識しております。ただ、施策の体系を眺めますと、屋外の緑化が中心で、室内については見落とされているように感じます。室内緑化は、これまで述べてきた理由からもおわかりのように、オフィスで働く人々の心身の健康維持のために効果があるのは明らかと見られ、私は屋外だけでなく室内の緑化についても取り組みを進めることが、もっと快適なまち、東京へとつながるものと考えます。
 室内緑化植物のうち、熱帯性のものなら伊豆諸島や小笠原諸島に、温帯性の植物なら東京西部、多摩地域に生産拠点をつくることが可能ですから、いわゆる地産地消の体制を組むことができますし、都内の園芸農家の生産額の向上という経済的効果や、農業分野での雇用創出も期待できます。さらに、農地を守り、緑を保護することにもなるでしょう。室内緑化には、こうしたさまざまな効果が考えられます。室内緑化についての都の基本的認識を伺います。
 高層ビルが林立する現在の東京からは想像しがたいかもしれませんが、そもそもかつての東京、つまり江戸は、輝かしい園芸文化、植物文化を誇る都でした。
 イギリスには、かつて世界を旅して植物を集めることを職業とするプラントハンターと呼ばれる人たちがいました。その中の一人、ロバート・フォーチュンは、幕末に二回、あのソメイヨシノを生んだことで有名な江戸の染井村、現在の豊島区駒込かいわいを訪れています。
 フォーチュンは、著書「江戸と北京」の中で、もしも植物をめでることが文化のあかしとするならば、江戸庶民の文化水準は、ロンドンの貴族のそれと同等であると述べています。また、染井村については、園芸植物を生産する地域として、世界にこれ以上のものを見たことがないとも記しています。都が現在、行政と都民が協力し合って緑をふやしていく、いわゆる緑のムーブメントを展開しているのも、こうした江戸のDNAを引き継ぐ民族のなせるわざかもしれません。
 大都会の実態に即した緑化を進めていくという視点を、屋外だけでなく、ぜひ室内にも生かして、トータルとして質のよい緑をふやすための具体的な取り組みを推進していただくことを望みます。例えば、都独自の方法として、都内のオフィスなどの室内に植物を配置することを促すような仕掛けについても、ぜひ考えていただきたいと思っております。
 都は、世界で初めて、オフィスビルをも対象とする都市型キャップ・アンド・トレードを来年四月に開始すると認識しております。こうした先駆的な施策に乗り出せるのも、やはり地球温暖化に対する見識の高さゆえと思います。
 先ほど来申し上げているとおり、植物には物理的、化学的、精神的効果などがあり、人間と植物の共存共栄こそが環境都市の理想の姿といえるでしょう。室内の緑化を義務づけるような仕組みの構築を念頭に置きつつ、まずは、温暖化対策でもそうであったように、事業者の自発的な取り組みが促進されるような環境づくりを行っていただくことを、私自身、植物について学んできた人間の一人として、心より願っております。
 ところで、緑化の推進や産業の発展の契機となるものに、公園などを活用したガーデンショーなどのイベントがあります。緑化に関連したイベントについての都の取り組みや考え方を伺います。
 さて、きょうこれまで私は、環境と緑化に関するみずからの考えを述べてまいりました。東京を世界に冠たる環境都市、世界一働きやすいまち、住みよいまち、快適なまちにしていくためには、東京の緑を守り、さらに新たな緑を生み出していくことが大切です。東京都は、緑の東京十年プロジェクトの基本方針で、あらゆる手法を用いて緑の保全、創出を行っていくこととしています。今後ますますの意欲的な取り組みに期待いたします。
 そこで、改めて、緑の都市づくりに向けた石原慎太郎都知事の決意を伺い、私の質問の結びとさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 山下ようこ議員の一般質問にお答えいたします。
 緑の都市づくりについてでありますが、環境、エコロジーを象徴する色としては、だれもが緑を挙げるわけでありまして、緑というのは人間の生活の潤いにとって本当に不可欠なものだと思います。東京を緑豊かな美しいまちへと再生させるためには、新たな緑の創出と、今ある緑を保全する取り組みが重要であると思います。
 そのため、街路樹の倍増や校庭の芝生化などに取り組むとともに、規制や誘導によりまして、民間の緑を保全、創出するなど、多角的な取り組みを推進しております。さらに、都民や企業と協力しまして緑を守り育てるムーブメントを展開し、緑あふれる都市東京の実現を目指してまいります。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監道家孝行君登壇〕

○東京都技監(道家孝行君) 都立公園における緑化に関連したイベントについてお答えをいたします。
 都立公園では、緑に触れる機会をふやし、その価値を知るとともに、都民が緑化に取り組むきっかけとするため、神代植物公園のバラフェスタや、木場公園のまちなか緑化講座など、それぞれの公園の特徴を生かして、都民や企業と協働し、継続的にイベントを実施しております。
 とりわけ、都心の貴重な緑の拠点でもあります日比谷公園と丸の内仲通りをつないで、緑と花の回廊づくりを目指したガーデンショー、東京ガーデンジュエリーを平成十六年から開催をしております。このイベントでは、若手ガーデンデザイナーの発掘、支援を目的とするコンテストなどを実施しており、毎年多くの人々が会場を訪れ、楽しまれております。
 こうした都心ならではのポテンシャルを生かした緑に関するイベントは、オフィス街で働く人々などにいやしの空間を提供し、都市における花と緑の効果を知っていただき、環境を意識したライフスタイルを提案するなど、緑の普及啓発に大きな役割を担っております。
 今後も、都市に潤いを与える緑に対する関心を高め、緑化を推進する取り組みを継続的に進めてまいります。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 三点についてお答えをいたします。
 まず、医師確保についてでありますが、都は、医師の養成、定着、再就業といった観点から、医師確保の取り組みを行っております。
 養成対策としましては、救急や小児、周産期、僻地医療に従事する医師を確保するため医師奨学金制度を創設し、今年度から、都が指定する大学の医学生に奨学金の貸与を行っております。
 定着、再就業対策としては、昨年度から医師勤務環境改善事業を開始し、救命救急センターや周産期母子医療センターなどの医療機関が行う、医師の交代制勤務や短時間勤務の導入、女性医師の復職支援研修などの取り組みを支援しております。
 今後ともこうした取り組みにより、地域医療を担う医師を確保してまいります。
 次いで、看護職員の定着、再就業についてでありますが、都は、看護職員の定着を図るため、看護師宿舎やナースステーションの整備などの勤務環境の改善や、新卒の看護職員が不安なく職場に適応できるよう、医療機関が行う臨床研修を支援しております。
 また、再就業支援につきましては、東京都ナースプラザにおいて、離職中の看護職の研修及び相談事業を実施しているほか、身近な地域の病院で復職支援研修などを行う看護職員地域確保支援事業を都独自に実施をしております。さらに、今年度から、看護職員が出産、育児などを迎えても働き続けられるよう、短時間正職員制度を導入する中小病院を支援しております。
 こうした取り組みにより、看護師確保に努めてまいります。
 最後に、ビル等の室内環境の確保についてでありますが、多くの人が利用する延べ床面積三千平方メートル以上の建築物の所有者等は、空気中の二酸化炭素、ホルムアルデヒド等の濃度測定を行い、室内の衛生的な環境を確保することが法令により義務づけられております。
 都内各保健所等は、これらの建築物に立入検査を行い、室内空気中の濃度が管理基準に適合しない場合には改善指導を実施しております。また、建築物の所有者等に対して毎年講習会を実施し、新たな法規制や改善策などの情報提供を行っております。
 今後とも、こうした取り組みを徹底し、オフィス等における衛生的な環境の確保に努めてまいります。
   〔環境局長有留武司君登壇〕

○環境局長(有留武司君) 室内の緑化についてお答えいたします。
 緑は、美しく風格のある都市景観の創出に加えまして、そこに住む人々の心にゆとりやくつろぎを与えるなど、その役割は多様かつ重要であります。オフィス空間などの室内緑化についても、都民に潤いや安らぎを与えるとともに、身の回りにある緑を大切に守りたいと思う心をはぐくむなど、さまざまな効果があるものと認識しております。

ページ先頭に戻る