平成二十一年東京都議会会議録第十八号

   午後一時一分開議

○議長(田中良君) これより本日の会議を開きます。

○議長(田中良君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(田中良君) 昨日に引き続き質問を行います。
 九十五番泉谷つよし君。
   〔九十五番泉谷つよし君登壇〕

○九十五番(泉谷つよし君) 民主党の泉谷つよしでございます。
 まず、マンションについて質問します。
 平成に入り、東京都ではマンションに住む人口の割合が年々上昇しています。計画道路の着工により拡幅工事が行われれば、必ずその沿道にはマンションが建設されます。国が公表した住宅着工統計によれば、平成二十年に新規に着工された都内のマンションは五万九百二十四戸で、総戸数は百四十六万戸を超えています。この状況は、これからも続くと思われます。
 しかし、昨年までマンション問題を取り扱う課がなく、マンション問題を取り扱う部署にマンション管理士もいない状態であり、これから生じるマンションの諸問題に対応できるか大変危惧しており、昨年の質問になったわけです。そのかいもあり、ことしの四月よりマンション課が設置されることになり、マンション問題を十五年以上手がけてきた者としては、大変うれしく思っています。
 そこで、都内のマンションの抱える課題についてお伺いします。
 なぜマンションを支援すべきであるかといえば、行政にとってマンションとは、さまざまな対応やサポートできる存在、つまり、それ自体がコミュニティであるマンションは、行政が施策を進めるに当たりパートナーとなる存在であるとともに、都民と深くかかわるまちづくりの有意義な存在、すなわち都市にとって重要な存在と考えられるからであります。何よりも、まちの中においてボリューム感を持つ存在であると同時に、一度建てれば除去が困難になるからであります。また、まちの景観を形成する重要な要素であり、都民の生活を営む舞台であるのがマンションであるからです。
 そして今、そのマンションが大きな過渡期に来ております。多くの諸問題を抱えています。その中で大きな問題となるのが経年劣化であります。
 マンションは、建物の設備、外装など、経年とともに必要に応じた手入れやメンテナンスを行わなければ、居住空間としての機能が損なわれてしまいます。国の長期修繕計画作成ガイドラインは、居住者一人一人にとっては具体的な理解が困難であり、手入れの具体案は、委託した管理会社に任せきりのところが多くなっております。
 東京都では、築年数を経過したマンションが年々増加し、住宅・土地統計調査によれば、平成二十年には築四十年以上のマンションが五万四千戸に増加し、このまま推移すれば、十年後には今の四・五倍の二十四万五千戸に、十五年後には八倍の四十二万八千戸に到達する見込みであり、マンションの高経年化が加速的に進んでいます。また、それに伴い居住者も高年齢化が進行し、国のマンション総合調査によれば、平成二十年度には六十歳以上の割合が三九・四%と着実に増加しています。
 このことから、東京都は早急にマンション建てかえの指針をつくり、マンションの荒廃を阻止しなければなりませんが、条例を制定し、建てかえをある程度義務づけるべきだと思いますが、都の見解を伺います。
 また、本来、築十年程度で行われてしかるべき外装工事や防水工事などの大規模修繕工事について、築二十年以上のマンションで二五・五%が未実施であります。特に注目に値するのは、築三十年以上経過しているマンションでさえも、二五・四%のマンションで実施されていないということです。
 また、約一割のマンションでは長期修繕計画が作成されておらず、長期修繕計画の作成に当たり管理組合総会の承認を得ていないマンションも三五・六%もあります。また、毎月の修繕積立金額が長期修繕計画に基づく予定工事費より少ないマンションが約八割を超えており、今後、修繕積立金の見直しや資金調達の検討が必要となることは避けては通れない状況です。
 この状況をつくり出している大きな要因として、マンションディベロッパーが、マンション購入をしやすくするため、管理費や修繕積立金を不当に安く設定していることが挙げられます。これが今後の大きな問題につながります。
 よって、東京都は、分譲マンションの売買に当たり、取引業者に管理費等の金額について一定の基準を設けるべきであると考えますが、都の見解を伺います。
 平成二十年度には、新規事業として、マンションの耐震改修に要する費用に対する助成が一億円計上され、目標は二十件で八百戸、上限を五百万円としていましたが、ことしは、一つないし二つぐらいしか使われていないそうです。しかし、昭和五十六年以前の耐震基準のもとで建築されたマンションでは、約七割以上が耐震診断を未実施であります。
 その理由として、耐震改修の費用負担の重さや耐震化への関心の低さが挙げられますが、この助成制度の利用の促進を図るためには、単にお金を出すだけではなく、耐震診断を行った結果、耐震基準を満たさないマンションがどの程度あり、それらの耐震診断を実施したマンションの管理組合がどのような意向を持っているのか把握しておくことも必要だと考えます。
 これは、単にそのマンションの問題にとどまりません。東京都が積極的に関与すべき問題だと考えています。阪神・淡路のような大震災が起きてからでは手おくれになってしまいます。
 今後、どのように耐震診断及び改修の制度の普及を図っていくのか、耐震診断及び改修の義務化も含めて、都の所見をお伺いします。
 また、都内には、昭和四十六年以前に建てられたマンションが約四万八千五百戸もあります。この状況も正確に把握しなければなりません。国土交通省では、危険又は有害な状況にあるマンションの建替えの促進に関する事項により、地方公共団体は、マンションのデータベース化等の整備により危険または有害な状況にあるマンションの的確に努めることとするとあり、市区町村と連携を図り、危険及び有害なマンションの把握をしなければなりません。
 ここでは、耐震補強というより建てかえを施さなければなりません。しかし、このスピードで建てかえが進むとした場合、先ほど申し上げました経年劣化のマンションが急増し、社会問題になることは明らかです。私は、ここで大なたを振るわなければならない時期に来ていると思います。
 分譲マンションは私有財産の集合体であり、その建てかえはあくまでも区分所有者等の自助努力で行うことが基本であり、マンションの区分所有者等建てかえ関係者は、適切な役割分担のもとで、建築、マンション管理、まちづくり、権利調整等の技術及び経験を有する一級建築士、マンション管理士その他専門家を便宜に活用し、積極的に建てかえの円滑化に努力することが必要であります。
 しかし、マンションが、建物の区分所有という、区分所有者が容易に建てかえを決定できない環境下にあることから、老朽化により建てかえを余儀なくされたマンションの建てかえについて、国及び地方公共団体は緊密に連携して、相談体制の整備、情報提供等に積極的に努めるとともに、一定の要件を満たすマンションの建てかえについては、適切に財政上の支援その他多様な支援を行うものとすると、国土交通省で規定されております。したがって、荒廃マンションの増加は見過ごすわけにはいきません。
 そこで、条例で、昭和四十六年以前のマンションの建てかえの義務化などにより促進すべきと考えますが、都の見解をお伺いいたします。
 阪神大震災では、行政とパイプのないマンション住民は、その救助や安否の確認など、すべて最後に回されたという現実があります。特に最近では、個人情報保護法のもと、匿名社会に生きるマンション住民が大震災によって被災した場合、マンション住民に対する救助計画をあらかじめ策定しておくことが最優先課題の一つと考えますが、都の所見をお伺いします。
 また、老朽化したマンションには多くの高齢者が住んでいます。しかし、古いマンションには高齢者の居住を想定した設備が整えられておらず、ふろも廊下もすべて健常者向けにつくられています。中でも、三階から五階建てのマンションでエレベーター未設置のマンションは都内で十四万四千戸に達しますが、これらの古いマンションに対するエレベーター設置費補助は、利子補給による助成制度しか存在しないため、設置するマンションは少なく、新たな助成制度を創設するなど、支援を充実すべきだと考えますが、都の所見をお伺いします。
 次に、都営住宅についてお伺いします。
 先ほどのマンションと同様に、都営住宅も建てかえの時期に来ており、各地で建てかえが行われています。そこには、ただ古くなったから建てかえるというより、明確なビジョンがなければなりません。建てかえに際し都はどのような考えを持っているのか、お伺いいたします。
 また、建てかえるに当たり、建築費用を入居世帯で割れば一世帯当たりの費用が算出できますが、都営住宅を建てかえれば、一世帯当たり、これは建築費だけですが、約一千百万円もの費用がかかります。さらに、現在、都営住宅では地域偏在が問題になっており、人口に対する都営住宅の割合で見ても、二十三区でも、上位三区、足立区、江東区、北区、下位三区、目黒区、文京区、豊島区を比べれば、約一〇%もの隔たりがあり、この偏在が及ぼす基礎的自治体への影響は大きいように思えます。
 また、東京における総世帯の何%が都営住宅の恩恵を受けているのか、そう考えると、都営住宅に入れた人とそうでない人との格差が余りにも大きいのではないかと思います。
 公営住宅法では、低所得者で住まいに困窮する者に住宅を提供する目的がありますが、現在では、その垣根が低くなり、このままでは多くの都営住宅を提供しなければなりません。特に生活保護受給者は住宅費がゼロ円になり、また、さまざまな恩恵にあずかれます。障害をお持ちの方や病気の方はいざ知らず、健常者が、国民年金の額以上に恵まれているにもかかわらず、住宅でもさらに優遇されるのには違和感を覚えます。
 都営住宅の倍率は近年非常に高く、希望しても入れない状況が続いている一方で、地域の賃貸業は空き部屋が多く、困っているところが多いと聞いております。
 であるならば、今後の住宅困窮者に対する住宅供給のあり方については、公営住宅よりも民間の賃貸住宅に対する家賃補助を中心とした施策へ変えるべきと思いますが、都の所見をお伺いいたします。
 以上をもちまして、泉谷つよしの質問を終わりにします。よろしくお願いいたします。(拍手)
   〔都市整備局長河島均君登壇〕

○都市整備局長(河島均君) 泉谷つよし議員の一般質問にお答えいたします。
 八点のご質問にお答えいたします。
 最初に、都内のマンションが抱える課題についてでございますが、都は、維持管理や建てかえ等に関する課題を明らかにした、東京のマンション二〇〇九を取りまとめ、本年十月に公表いたしました。
 その中で整理した主な課題は、まず、マンション管理の担い手不足や高齢化などにより管理組合の運営が困難となるものがあること、次に、維持管理については、修繕積立金が計画修繕に必要な額に至らないマンションが少なくなく、適切な時期に修繕が実施されない可能性があること、さらに、建てかえや耐震化については、費用負担が大きく合意形成が難しいため、実現が容易でないことなどでございます。
 次に、条例によるマンション建てかえの義務づけについてでございますが、マンションの建てかえには専門的知識が必要であることや、区分所有者の合意形成が困難などの課題がございます。
 このため、都はこれまで、建てかえに際してのプロセスや手法などを説明したガイドブックを作成し、管理組合に情報提供するとともに、区市と連携して、管理組合からのさまざまな相談に応じるなどの取り組みを行ってまいりました。
 都としては、マンションの円滑な建てかえを促進するため、今後もこうした取り組みを粘り強く進めていくことが必要であると考えておりまして、私有財産であるマンションの建てかえを条例で義務づけることは考えておりません。
 次に、分譲時における管理費等の額の基準についてでございますが、マンションの管理は、区分所有者がみずからの責任で行っていくことが基本でございまして、購入者が購入時点で入居後の維持管理に関する情報を適切に入手できるようにすることが必要であります。
 このため、都は、マンション管理ガイドラインを策定し、この中で、分譲事業者等が購入者に対し、管理費、長期修繕計画及び修繕積立金の内容や費用等について十分説明することを促しております。
 今後も、ガイドラインの一層の活用を図り、適切な管理費や修繕積立金が設定されるよう誘導してまいります。
 次に、マンション耐震化の制度の普及についてでございますが、都はこれまで、耐震診断や耐震改修を促進するため、キャンペーンなどによる普及啓発や、関係団体と協力した相談体制の整備に取り組むとともに、区市と連携し、管理組合に対して耐震化助成制度の活用を促してまいりました。
 さらに、管理組合における合意形成等を支援するため、今年度、耐震総合相談窓口を設置するとともに、マンション耐震アドバイザー派遣事業を創設いたしました。
 今後、こうした施策を一層推進することによりまして、マンション耐震化の制度の普及を図りながら、管理組合の自主的な取り組みを支援してまいります。
 次に、昭和四十六年以前に建てられたマンションについてでございますが、昭和四十六年の建築基準法の改正前の建物でございましても、耐震性は個々に異なるため、個別に耐震診断を行い、耐震性を確認した上で、必要に応じて耐震改修等の適切な措置を講じていくことが重要でございます。必ずしも昭和四十六年以前であるからということで建てかえをしなければならないということではないと考えております。
 次に、既存マンションへのエレベーターの設置についてでございますが、エレベーターの設置はマンションの改修に該当いたしますので、都が実施しておりますマンションの改修等に対する利子補給制度の対象となります。また、区市や関係団体と連携した相談体制により、技術的な検討や合意形成等の支援を受けることもできます。
 こうした制度を活用することにより、管理組合による自主的な改修の取り組みを支援してまいります。
 次に、都営住宅の建てかえについてでございますが、都営住宅については、都民の住宅セーフティーネットとしての機能を保持するため、老朽化した住宅の建てかえを適切に進めるとともに、敷地を有効活用することにより用地を生み出し、地域のまちづくりに活用する必要があると認識しております。
 こうした考えから、建てかえについては、管理戸数の抑制を図りながら、昭和四十年代以前に建設された住宅を対象として事業を推進しております。これにより、バリアフリー化された住宅への更新を進めるとともに、今後十年間で約六十ヘクタールの用地を生み出し、都市計画道路や福祉施設の整備など、地域のまちづくりに寄与してまいります。
 最後に、家賃補助を中心とした施策への転換についてでございますが、都営住宅は、市場において自力で適正な水準の住宅を確保することが困難な世帯への住宅供給を行う役割を担っております。
 こうしたことから、都は、入居収入基準の見直しなどによりセーフティーネット機能を強化し、真に住宅に困窮する世帯に対して、都営住宅の公平かつ的確な供給に努めておるところでございます。
 民間賃貸住宅に対する家賃補助については、生活保護との関係や財政負担のあり方など多くの課題があることから、都として実施する考えはございません。
   〔総務局長中田清己君登壇〕

○総務局長(中田清己君) 震災時におけますマンション住民に対する救助計画についてでございますが、都は、地域防災計画に基づきまして、マンション等の集合住宅の住民を含め、被災者を迅速に救助するため、都立公園や清掃工場等を、警察、消防、自衛隊の活動拠点として整備するなど、救助機関との緊密な連携体制を構築してまいりました。
 また、毎年実施しております総合防災訓練におきましても、都内に多くの集合住宅があるという実態を踏まえまして、被災した建物からの救助訓練をも実施しておるところでございます。
 今後とも、都は、集合住宅の住民を初めとした都民の生命、財産を震災から守るため、被災者の救助に全力を挙げて取り組んでまいります。

ページ先頭に戻る