平成二十一年東京都議会会議録第十七号

   午後三時二十六分開議

○副議長(鈴木貫太郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百十二番服部ゆくお君。
   〔百十二番服部ゆくお君登壇〕

○百十二番(服部ゆくお君) 質問に先立ちまして、川島忠一先生の突然のご逝去に当たり、心からお悔やみ申し上げて、ご冥福をお祈りいたしたいと存じます。
 それでは、都議会自由民主党を代表して質問いたします。
 民主党鳩山政権も、その誕生から百日近くが経過しようとしております。これまでの一連の状況を見ると、ふなれとはいえ、強権的な政権運営で、極めて憂慮すべき点がたくさんあります。
 その最たるものは、国家観がなく、政策の優先順位もなく、この国の未来を閉ざしてしまいかねないことであります。鳴り物入りで始まった事業仕分けも、事実上、財務省の筋書きどおりとの指摘があります。初めに財源捻出ありきで、技術立国日本を支える科学技術予算を大幅削減するなど、近視眼的な対応は枚挙にいとまがありません。
 来年の参議院選挙をにらんで、子ども手当などのばらまき政策を行う財源を捻出するために、後先考えずに公共事業や中小企業支援予算を削ったことで、底入れの気配を見せている景気が二番底に落ち込む可能性も出ております。このままでは鳩山不況になるのではないか、懸念をされています。幾ら子ども手当をもらっても、両親が失業しては元も子もありません。
 民主党は口当たりのよいことばかりを国民に約束し、今になってつじつまが合わなくなり、弁解に終始しています。国民のために、民主党のマニフェストこそ事業仕分けにかけなければなりません。
 民主党鳩山政権のこうした迷走ぶりは、都政にも今後重大な影響を与えることになります。鳩山不況が来れば、税収が大きく落ち込み、必要な政策も打つことができなくなりかねません。こうした民主党鳩山政権に対する率直の評価を知事に伺います。
 次に、今後の財政運営について伺います。
 先ほど述べた事業仕分けは、中身を見ても、短時間で、一面的な議論に終始し、およそ本質から離れたものとなっています。また、例えば下水道事業など、財源とともに地方移管すべきとの結論が出たものも、具体的な移譲の仕組みなど、政府としての対応は明らかにされていません。
 そればかりか、子ども手当や高校の実質無償化、道路関係諸税の暫定税率の廃止など、当然国が持つべき負担を地方へ転嫁するという、あるまじき検討がされています。仮に財源措置がされたとしても、地方交付税の措置という、地方交付税の不交付団体である都に甚大な悪影響を及ぼす許しがたい手法となることも十分想定されます。
 本来、国の予算編成が徐々に明らかにされてくるこの時期になっても、依然として先行きが不透明な現状は、地方全体に大きな不安と、国に対する不信感をもたらしています。
 さらに、これまで我が党が即時撤廃を強く訴えてきた法人事業税の暫定措置についても、国は明確な姿勢を示しておりません。税制の抜本改革が先送りになった今、暫定措置を導入したときの前提さえ崩れており、抜本改革をまつまでもなく、即時撤廃されるべきものであります。
 こうした状況を踏まえ、平成十一年に設置した、地方税財政制度の改善を目指す東京都議会議員連盟、これが再びスタートしました。法人事業税の暫定措置の即時撤廃はもとより、地方負担をふやし、不合理に東京の税源を奪うような動きから都民を守り抜くことを最優先に、地方議会として、都議会各派が知事とともに一致団結し、断固たる戦いを挑まなければならないと考えていることを強く申し上げます。
 さて、都財政を取り巻く状況に目を移すと、今年度の都税収入は、昨年度決算対比で一兆円と、過去最大の減収が見込まれることが明らかになりました。これまで我が党は、近年の急激な景気変動にも対応できるよう、堅実な財政運営の必要性を主張し、都も同じ考えで財政運営を行ってきたわけであります。しかし、この落ち込みが劇的に回復することは当面期待できず、都財政は極めて厳しい環境に置かれています。
 その一方で、都民や中小企業が現に直面している不安を払拭するとともに、少子化への対応など、東京の将来を築き上げる取り組みを行っていかなければなりません。
 厳しい財政環境にあっても、引き続き山積する課題に的確に対応し、都政に課せられた使命をしっかりと果たしていかなければなりません。
 都財政の潮目が大きく変わり、いつにも増してかじ取りの難しい局面を迎えている中、都財政が置かれた状況を改めて自覚した上で、歳入歳出両面にわたる、より一層の努力を行うことが必要です。知事が就任された平成十一年当時の都財政を、ここまで立て直した知事の腕の見せどころではないかと考えます。
 そこで、今後の財政運営をどのように行っていくのか、知事の決意を伺います。
 次に、都民生活の安全・安心を守る施策について、最初に新型インフルエンザ対策について伺います。
 十月二十九日に流行警報が発令された後、いまだ流行が続いており、都内では毎週、小児を中心に多くの新たな患者が発生しています。
 今回の新型インフルエンザにはタミフルやリレンザが有効であり、ほとんどの患者は軽症で終わっていますが、小児、特に未就学児においては、脳症を発症するなど重症化する例も見られます。
 都は、こうした事態を冷静に分析し、国に先駆けて未就学児のワクチン接種前倒しを行いました。一方、国は、ワクチン接種の回数について二転三転するなど、場当たり的に方針を変更し、医療の現場は大いに混乱をしております。
 危機管理において、正確で迅速な情報提供が最も重要なことですが、現場や国民を混乱させるような拙速な情報提供は、現政権の危機管理能力のなさを露呈したものであるといえます。
 ワクチンの供給量は、いまだ限られたものではありますが、都民に的確に情報を伝え、また、医療機関や区市町村としっかりと連携し、円滑な接種を実施していかなければなりません。都の見解を伺います。
 次に、震災時における外出者対策について伺います。
 都の被害想定によると、首都直下地震が発生した場合、千百四十四万人が自宅以外の外出先で被災するとされています。
 地震発生により公共交通機関がとまり、これら膨大な数に上る外出者が、必要な情報を入手できない不安感から混乱を来すことが強く憂慮されています。さらに、こうした外出者が、自宅に向かって一斉に移動を開始したり、情報を求めて鉄道駅などに殺到した場合、路上や駅周辺では大混雑が発生し、集団転倒を誘発するなど、大変危険な状態となります。
 地震発生直後、公的機関は救出活動に重点を置くため、外出者に対する公的な支援には限界があり、自助、共助の理念に基づく外出者対策が重要であります。
 我が党は、本年の予算特別委員会において、徒歩帰宅者への支援体制を一層強化するとともに、駅前滞留者対策、徒歩帰宅者対策、帰宅困難者対策といった、外出者の置かれた状況に応じて個別に講じられていた対策について、総合的に推進していく必要があることを強く指摘したところであります。
 震災時に膨大な数に上る外出者への対策は、一朝一夕には困難であり、日ごろから地元事業者等による準備や取り組みが必要です。
 そこで、これらを踏まえ、震災時の外出者対策にかかわるこれまでの取り組みと今後の進め方について、都の見解を伺います。
 首都直下地震の切迫性が指摘される今日、都民が安心して安全に暮らせる、災害に強い東京の実現が喫緊の課題となっています。
 特に東京には、防災上危険な木造住宅密集地域が広範に広がっており、このような市街地の改善を一日も早く進めることが必要です。
 先日、都は、防災都市づくり推進計画の改定の中間のまとめを公表しました。それによれば、震災時に大きな被害を受けるおそれのある市街地の不燃化の目標の前倒しなどが盛り込まれており、今後、この計画に基づき、災害に強い都市の早期実現が図られることを大いに期待します。
 そこで、今後、防災都市づくりをどのように推進していくのか伺います。
 次に、水道事業について伺います。
 近い将来、七〇%という高い確率で、阪神・淡路大震災クラスの地震が東京を襲うと指摘されております。
 水道管路の被害によって断水し、被災現場では水の確保に苦労したり、避難所から自宅へ帰れても、生活用水が断たれたため、入浴や洗濯などができずトイレも流せないなど、断水による影響は相当大きいものです。
 東京の耐震継ぎ手化率は二四%で、被害想定では、東京全体で約三五%の断水が発生し、その復旧には最大で三十日間を要するとしております。都市活動はもとより、都民生活のあらゆる場面で大きな制約を受けることになります。
 さらに今後、少子高齢化が進む中で、災害弱者が一層増加することを考え合わせますと、予防対策の強化が何より重要です。
 震災時において一日でも早い水道の復旧を目指し、耐震継ぎ手管への取りかえを一層推進すべきと考えますが、所見を伺います。
 予防的な対策とともに、万一、発災した場合には、給水活動などの応急的な対策も重要です。特に、早期の復旧が困難な場所には、通水を優先する復旧方法が有効だと考えます。
 昨年の代表質問で、路上での仮配管による復旧方法を提案し、前向きな回答をいただきましたが、震災時における仮配管方式の活用策について伺います。
 また、水源地域の森林管理についても早急な対策が必要と考えます。森林所有者の中には、自己の山林を手放したいと考える方もいることから、林業経営の支援とは異なる対策が必要です。
 こうしたことを踏まえ、本年第一回定例会において、我が党は、荒廃が進む多摩川上流域の民有林を水道水源林として所有、管理することについて、ただしたところです。
 管理が不十分な民有林については、水道水源林として守っていくことが必要であり、そのための計画をどのように進めていくのか、具体的に伺います。
 次に、中小企業、雇用対策について伺います。
 国が先月十六日に発表した七月から九月期の実質GDPは、前期比年率で四・八%と二期連続のプラスとなり、景気の持ち直し傾向が続いております。これは、前政権下におけるさまざまな景気対策の効果のあらわれであると考えています。
 しかし、特に中小企業の業況は、いまだ回復の兆しが見えず、雇用や賃金についても依然として厳しい状況が続いております。
 こうした状況を踏まえ、我が党は先月十六日、都に対して緊急要望をいたしました。
 この緊急要望の内容は、年末に向けた緊急的な雇用対策の拡充、中小企業のつなぎ融資の拡充、年末の相談体制の整備など、現場の声を反映させた切実なものであります。
 都内中小企業は、受注が思うようにとれず、融資の返済や支払いに追われるなど、年末にかけて、経営に対する不安の声も大きくなっています。年末に向け、厳しい経営状況に置かれている中小企業に対して、具体的にどのような対策を講じるのか伺います。
 雇用を取り巻く環境も厳しさを増しています。都内の完全失業率は五・二%と高い水準で推移し、都民の雇用への不安は、ますます高まっています。
 また、十月一日時点の大卒予定者の内定率も六二・五%と、昨年に比較して大幅に悪化しており、次代を担う若者の社会への入り口が狭められていることは、ゆゆしき問題です。このままでは、ますます深刻な事態になりかねません。雇用の場を確保し、都民の不安を解消していく緊急対策がぜひとも必要です。
 こうしたことから、我が党は、都が設置している雇用創出のための基金を拡充し、失業者に対する雇用創出事業を大幅に追加するほか、企業による雇用の維持や就業に関する相談体制の確保など、さまざまな施策を速やかに実施するよう緊急要望いたしました。我が党の要望に対し、都は、雇用創出事業の追加を盛り込んだ補正予算案を本定例会に提出しました。
 このことを含め、現下の厳しい雇用情勢に対し、都は具体的にどのような取り組みを進めていくのか伺います。
 こうした足元の緊急対策に加えて、都内経済を支えている産業の基盤をしっかりと維持し、次の景気回復や経済成長につなげていくことも不可欠であります。
 具体的には、中小企業の経営力強化を図り、長引く不況にも耐えられる経営体質づくりを支援していくことが重要です。
 都が今年度実施している中小企業経営力向上支援事業、これは、二千社の中小企業に対し、中小企業診断士と商工会議所や商工会の経営指導員が出向いて、きめの細かい支援を行うものであり、中小企業の経営体質の強化に大きな効果を上げていると聞いております。
 また、将来の産業の基盤を維持するためには、中小企業が持つ独自ですぐれた技術や技能をどのように次世代に引き継いでいくかなど、個々の企業だけでは解決できない問題もあり、都の積極的な支援が求められています。
 こうした産業基盤の維持に向けた中小企業の経営力向上や技術の継承などの取り組みに対して、都は強力に支援すべきであると考えますが、所見を伺います。
 さて、今回の経済危機は、百年に一度ともいわれるように、その影響の世界的な広がりと深さにも特徴がありますが、加えて、今回の危機によって、それぞれの国が抱える問題点や弱点が浮き彫りになったといえます。
 我が国では、外需を中心に経済を率先してきた自動車産業などが、大きな影響を受けました。
 このことを考えますと、高度な技術を活用したロボット産業や航空宇宙産業、さらには環境産業や健康産業など、次代を担う新たな産業分野を育成し、経済成長の推進力となるエンジンをふやしていくことが、次の景気の自律的な回復や経済成長の実現には不可欠であります。
 しかし、国においては、中長期的な成長戦略や新しい産業を育成する具体的道筋は、いまだに見えないままであります。
 未曾有の経済危機の中、新政権がいまだに成長戦略という海図をしっかりと示さないまま、日本という船がこの経済危機という荒波を羅針盤なしで航海していると思うと、不安を禁じ得ません。
 今まさに必要なのは、都民や中小企業の不安を取り除いて足元を固めるとともに、強固な産業基盤のもとで、将来の経済発展へと船を進めていくことであります。
 こうした中、都においては、来年二月に技術支援や経営支援の核となる産業支援拠点が多摩に開設され、さらに区部にも平成二十三年度中に開設される予定であり、新事業創出を図ろうとする中小企業に対する支援体制が一層強化されることになります。
 将来の経済成長を見据え、これら二つの産業支援拠点を最大限活用しながら、今後成長が期待されている産業分野の新製品、新技術開発を促進するなど、新しい産業分野の育成に向けた具体的な取り組みをより一層強化していくことが必要であると考えますが、所見を伺います。
 次に、入札契約制度改革について伺います。
 我が党は、かねてより、入札契約制度の改革に向けて、PTを設置し、公共調達における品質管理の重要性を明らかにしてきました。現在、民間建設市場の冷え込みから、公共工事の入札価格の著しい低下が続き、採算がとれない受注案件が増加しています。
 こうした著しい低価格の入札が続けば、中長期的に企業体力が消耗し、技術力の維持が困難になり、結局、将来の公共工事の品質確保に支障が生じるおそれがあることを、さきの定例会で指摘し、都に対して低価格入札に対する早急な対策を求めてきました。
 都は、こうした我が党の指摘を受けとめ、下請への不当なしわ寄せが懸念される極端な低価格入札を防ぐため、大規模工事を対象として特別重点調査制度をいち早く導入し、今議会に提案されている契約議案では、こうした取り組みの効果があらわれ始めています。
 そして、先ごろ発表された入札契約制度改革の実施方針では、我が党が主張してきた公共工事の品質確保に向けた取り組みの強化を中心として、今後の制度改革の方向性が示されました。
 そこで、実施方針で示された品質確保対策を早急に具体化し、実施していく必要があると考えますが、中小規模工事に対する低価格入札への対応も含め、対策の今後の具体的な進め方について伺います。
 次に、豊洲新市場の整備について伺います。
 築地市場の豊洲移転については、市場業界から、都議選後の本年七月に、新市場建設計画推進の嘆願書が提出をされました。
 さらに、業界団体の大多数から成る新市場建設推進協議会が再結成され、新市場の実現に向け、都議会各会派や東京都に対し、先月十七日、早期移転の要望書が提出されました。
 要望書では、産地や顧客からの要請が厳しくなっており、施設が老朽化し、物流や衛生面での課題が抜本的に解決できない築地市場では将来的な展望が見出せないと、早期移転を強く求め、同日の記者会見でも、我々の願いは、一刻も早く、我々の体力があるうちに移転して、理想に近い設備の中でやらせていただきたいことです、いたずらに政争の具にしないでもらいたい、そう切実に訴えられました。
 我が党としては、過去に再整備のとんざを実際に体験した当事者である市場業界が、失敗を繰り返すまいと、移転を切実に願う声に真摯に耳を傾け、一日も早く新市場を開場させることこそが、都議会の役割であると考えております。
 このたび特別委員会が設置され、民主党は、現在地再整備の検討を改めて行うべきとしていますが、再整備を可能とする具体的な根拠は、いまだ示されておりません。
 出口が見えない再整備の議論が繰り返され時間が費やされる間にも、築地市場の老朽化は一層深刻さを増し、取扱量の低迷など、市場を取り巻く環境は厳しくなる一方です。
 このまま抜本的な対策ができない状況が続けば、関係者を翻弄し、築地市場は衰退し、将来、都民に生鮮食料品を安定供給する役割が果たせなくなってしまうのではないでしょうか。
 そこで、市場業界から要望書が提出されたことを踏まえ、豊洲新市場を早期に開場すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、環境問題について伺います。
 現在、デンマークのコペンハーゲンでCOP15が開かれ、京都議定書以降の温暖化ガス削減に関する国際的な取り組みについて議論がなされています。
 一部報道によれば、今回の会議では枠組みの合意には至らないようですが、それでも我々は、温暖化防止と経済成長とを両立させながら、温暖化ガス削減に向けた取り組みを確実に進めていく必要があります。
 このような状況の中で、政府は華々しく削減目標を打ち上げたものの、そのための具体的な道筋をいまだ明らかにしていません。
 一方、都は、世界初となる都市型キャップ・アンド・トレードを来年四月から開始するなど、具体的かつ着実に取り組みを進めていますが、こうした先駆的な取り組みを進めることによって、ぜひ政府の政策をリードしていただきたい。
 そこで、改めて、実効を伴う温暖化対策に対する知事の決意を伺います。
 また、温暖化対策を進める上で、自動車からのCO2を削減することも大きな課題であり、さまざまな取り組みが講じられておりますが、その中で、だれもが手軽に実践できる方法としてエコドライブがあります。
 これに着目して、我が党は、平成十九年第三回定例会において、エコドライブを定着させる仕組みの構築を提案し、都は、これを受け、中小事業者に対するエコドライブ支援機器の装着補助制度の取り組みを進めているところです。
 機器を活用している事業者の皆さんからは、事故の防止はもとより、燃費の節約においても大きな成果があると聞いておりますが、こうした成果を生かし、今後さらにエコドライブの推進を図るべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、土壌汚染対策について伺います。
 本年四月に土壌汚染対策法が改正され、来年の四月に施行されることとなっています。この法改正では、土壌の汚染状況を把握する制度の拡充や汚染土壌の適正処理のための規制の新設など、制度の大幅な見直しが行われました。
 一方、都においては、土壌汚染対策法の制定以前の平成十三年から、環境確保条例において、既に大規模な土地で掘削等の土地改変を行う場合の汚染状況の調査や、汚染拡散防止計画書による適正処理の指導などを制度化し、土壌汚染対策に先駆的に取り組んできています。
 しかし、現実的に見れば、中小事業者にとって土壌汚染対策は、昨今の厳しい経済状況により、ますます大きな負担となっています。
 そこで、今回の法改正を踏まえた今後の都の土壌汚染対策についての基本的な認識と、中小事業者の土壌汚染対策を円滑に進めるためにどのように取り組むのか、所見を伺います。
 次に、まちづくりについて伺います。
 慢性的な交通渋滞は、首都東京の最大の弱点となっております。また、都内にはいわゆるあかずの踏切が二百七十カ所もあり、交通渋滞や市街地の分断の要因となっています。
 東京の交通渋滞を解消し、都市機能の向上や都市環境の改善を図るため、外環など三環状を初めとする幹線道路ネットワークや、連続立体交差などの早期整備が不可欠であります。
 一方、新政権のもとで編成される平成二十二年度予算では、道路関係予算の大幅な削減が見込まれ、東京の道路整備に与える影響が危惧されます。
 今後とも、必要な財源を確実に確保し、東京の道路整備を着実に推進していくことが不可欠であると考えますが、道路整備の推進に向けた都の取り組みについて伺います。
 外環は、首都東京の最大の弱点である交通渋滞の解消のみならず、我が国の国際競争力の向上や首都圏の環境改善など、東京だけでなく、広く国全体に便益が及ぶ、まさに必要な道路であります。
 これまで四十年余りの間、外環計画が放置されていたことによって失われたものは、はかり知れません。平成十三年に、石原知事が当時の国土交通大臣と現地を視察した後、凍結解除され、八年余りが経過しました。
 そして、本年五月には、整備計画決定後、直ちに国の平成二十一年度補正予算で外環の事業費が盛り込まれたことから事業化され、都議会第二回定例会において、外環整備のための補正予算を議決いたしました。
 しかし、新政権による国の補正予算の見直しにより、用地及び補償費が執行停止となったため、用地取得ができない状況となっています。その結果、用地の買い取りを希望している地権者の今後の生活設計にも支障を来すなど、都民生活への影響が出ています。
 いよいよ事業が始まるという段階に至ったにもかかわらず、都、沿線区市及び地権者は、新政権に翻弄されているといえます。この状況を打開するため、超党派で構成する東京都議会外かく環状道路建設促進議員連盟において、十月から十一月にかけて、国等への積極的な要請活動を行ってまいりました。
 このように、外環を取り巻く状況が大きく変化する中で、首都圏のみならず日本全体の活力を引き出す外環の早期整備に向け、都は今後どのように取り組んでいくのか、知事の所見を伺います。
 上野公園は、美術館など多くの文化施設や歴史資源が集積するとともに、不忍池周辺の水辺景観など、水と緑に恵まれ、世界に文化、芸術を発信する、東京を代表する公園であります。
 このため、上野公園を東京の顔となる文化の森として再生するよう、都は平成十九年に上野公園グランドデザイン検討会を設置し、昨年秋に検討会報告が示されました。
 上野公園グランドデザインを受け、都は、上野公園の再生整備に向けてどう取り組んでいるのか、伺います。
 次に、羽田空港の国際化について伺います。
 羽田では、新しい滑走路や国際線旅客ターミナルの整備が急ピッチで進められています。来年十月に新しい滑走路が供用開始され、年間約六万回の国際定期便が就航します。
 我が党はこれまで、羽田の再拡張、国際化を積極的に推進するとともに、二十四時間体制による国際定期便発着で、羽田ハブ空港化の実現を図ることを目指してきました。
 先ごろ、国土交通大臣が、羽田の国際拠点空港化を目指すと発言しましたが、まだ具体的な方策は提示されていません。
 羽田のさらなる国際化をどのように実現していくのか、知事の所見を伺います。
 次に、京浜三港連携について伺います。
 今定例会には、東京都、川崎市、横浜市の三団体で地方自治法に定める協議会を設置するための議案が提出されています。より一層、三港の連携強化を図り、我が国の国際競争力強化のための施策に取り組むことを期待します。
 さて、国はこれまで、我が国港湾の国際競争力強化を図るため、京浜港、阪神港、伊勢湾の三港湾をスーパー中枢港湾として指定し、集中的に育成することとしていました。しかし、先ごろ国は、一つないし二つの国際戦略港湾を選定し、投資の重点化を一層促進することを表明しました。
 これを受け、都は、さきの決算特別委員会における我が党の矢島議員の質問に対し、京浜港として立候補する意思を示したところですが、そもそも三港連携は、スーパー中枢港湾施策と並行して、国内に六十を超える外貿コンテナふ頭を整備するなど、戦略性に疑問のある、これまでの国の港湾政策に対するアンチテーゼという側面もあったと思います。
 今回の国の動向は、三港連携の帰趨に大きな影響を与えると思われますが、都としてはどのように対応していくのか、その考えを伺います。
 次に、八ッ場ダムについて伺います。
 国土交通大臣が、関係都県の意見も聞かず、八ッ場ダムの中止を一方的に宣言して以来、いまだ中止の科学的な根拠は示されていません。地域のことは地域が決めるといっていた政権が、問答無用という形で強権的な結論を出し、地方の強い反発を引き起こしたのは皮肉な結果です。
 地元住民も、中止の一言で、ダム湖を前提とした生活再建の希望を打ち砕かれ、安心して新年を迎えられるのか、大きな不安を抱えています。
 こうした国の姿勢は、政権党が標榜する地域主権とは全く相入れないものと受けとめざるを得ません。
 十月末に大臣は、都県知事の呼びかけに応じて、ようやく話し合いの場を持ちました。各知事から、結論ありきの進め方に対して強い異議が出され、大臣は八ッ場ダム事業の再検証を行うと明言しました。
 我が党は、かねて表明してきたように、八ッ場ダムは、治水や利水の安全を確保し、首都圏における住民の生命や財産を守る極めて重要な施設です。これまでの投資をむだにすることなく、予定どおり完成させるべきです。
 八ッ場ダムの事業推進に向けた、知事の決意を伺います。
 次に、福祉、保健、医療関係について伺います。
 最初に、小児三病院関連、とりわけ北多摩北部地域の小児医療について伺います。
 我が党は、過日の公決全局質疑でも、三病院移転後の地域医療について、さらなる充実を求めました。この地域の移転後の医療の中核を担う多摩北部医療センターには、新型インフルエンザなどの感染症にも十分対応できる小児病棟を既に整備したと聞いております。しかし現在、とりわけ日曜、休日の患者数が多く、待ち時間も長いと聞いています。
 これに対して、さきの厚生委員会の我が党の質疑で、今月から多摩北部医療センターにおいて、日曜、休日等の診療体制を強化する、そういった答弁もありました。
 また、一方で、保護者の皆さんからは、救急にかかるべきか迷う、どこの医療機関にかかったらよいのかと不安の声も聞かれます。
 このため、小児病院移転後も北多摩北部地域の住民が安心できるように、新型インフルエンザへの対応も含めて、なお一層充実した医療体制を構築すべきと考えますが、その具体的な取り組みについて伺います。
 また、小児三病院移転統合については、いまだに、いたずらに反対を唱える一部会派もありますが、我が党は一貫して、深刻な医師不足など限られた医療資源のもとでは、一次、二次、三次の医療機関が適切な役割分担をする中でしっかりとしたネットワークをつくっていく、そういった必要があると主張してまいりました。
 もとより、限りある医療資源を有効に活用するには、地域の医療機関等の連携の充実が求められますが、都立病院は、大学病院や公立病院、民間病院や診療所等との医療ネットワークの構築をさらに積極的に行っていくべきです。
 そこで、再編整備が行われる多摩地域の小児医療を手始めに、都立病院が公社、民間病院との連携づくりを強力に推進し、東京における医療ネットワークのモデルを構築すべきと考えますが、所見を伺います。
 墨東病院の事案から一年、都は周産期医療の大再編を行ってきたところです。そこでこの際、今後の周産期医療の全体像を明らかにすべきと考えますが、この点についても所見を伺います。
 次に、ホームレス対策について伺います。
 我が国の経済は引き続き厳しい状況にあり、雇用情勢は依然として許されない中、師走を迎えております。都は、二十三区との共同により、全国に先駆けて自立支援センターを設置し、地域生活移行支援事業など、ホームレス対策に取り組んできました。都議会自民党のホームレス対策協議会も、今まで大阪と共同で国に対し要望書を提出するなど、都と連携してきました。
 その結果、国は、平成十四年八月、ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法、これを制定して、初めて国の責務を法で明確化いたしました。この法に基づき、都は平成十六年から五カ年間を期間とする事業実施計画を策定し、自立支援や就業機会の確保など、総合的な対策を掲げ、区及び関係機関と連携し、事業を進めてきました。こうした対策の結果、二十三区内のホームレスの数はピーク時の五千八百人から二千五百人と大きく減少いたしました。
 今般、都はこの計画を改定し、ホームレスの自立支援等に関する東京都実施計画(第二次)を発表しました。今後、都はどのようにホームレス対策を進展させていくのか、その取り組みについて伺います。
 次に、重症心身障害児者の在宅支援について伺います。
 重度の知的障害と肢体不自由をあわせ持つ重度心身障害児者の方は、都内に約四千三百人と推計され、その七割に当たる約三千人の方は在宅で生活していると伺っています。我が子が重い障害を持っていても、できる限り長く家庭で過ごさせたいと考えるご家族も多く、在宅で生活する重症心身障害児者とそのご家族に対する支援を充実すべきです。都の基本的な考え方を伺います。
 特にNICU等から退院するお子さんについては、在宅療育への円滑な移行を支援することが重要です。そのため、ご家族の不安を軽減できるよう、入院中から相談や支援を行うとともに、地域において重症心身障害児の訪問看護を担う人材を育てていくべきです。都の所見を伺います。
 また、通所施設や短期入所施設においては、呼吸管理など、常時医療を必要とする方からの利用申し込みが増加し、受け入れに苦慮しているといわれています。都はこうした施設の受け入れ体制の整備を支援すべきと考えます。都の所見を伺います。
 次に、介護基盤の緊急整備について伺います。
 本定例会に提案されている基金事業の中には、我が党の要請を受け、都が国に対し緊急要望した定期借地権の一時金に対する補助が盛り込まれるなど、大都市部における介護基盤を整備促進するための支援策が講じられています。本基金を積極的に活用し、介護基盤の整備に着実に取り組んでいくべきであると考えますが、今後、都は、区市町村が進める介護基盤の整備をどのように支援していくのか所見を伺います。
 次に、少子高齢化対策について伺います。
 これからの日本の行く末を考えるとき、急激に進む少子高齢化にいかに対応していくかは待ったなしの課題であります。我が国の発展を支える人材と技術を守り、経済のパイを拡大させていくためには、この状況を打破するための重層的、複合的な対策を講じていかなければなりません。
 こうした認識に立って、我が党は本年九月、少子・高齢化政策推進本部を立ち上げて、有識者や関係団体、民間事業者など現場の声を聞きながら、党を挙げて政策を練り上げてきました。都民の声に耳を傾け、現場のニーズを拾い上げる、同時に、サービスを提供する供給サイドの意見やアイデアを聞く、そしてこの二つを織りなすことで施策にそれを結実させる、これが政治の仕事であり、その施策を実行するのが行政の仕事であります。
 少子化対策でいえば、石原知事が創設した認証保育所はまさにそうした施策の代表です。大都市の実情を踏まえた基準を設け、民間の活力を生かした認証保育所は、今や四百七十カ所以上に設置され、都民にとってはなくてはならない保育サービスへと成長しています。
 現在の民主党政権は、少子化対策として、子ども手当、高校の無償化など現金給付を強化しようとしています。しかし、少子化は単に経済的給付だけで解決する問題では決してありません。現場のニーズを踏まえ、保育、医療、教育、雇用、住宅といった施策を総合的に展開してこそ、安心して子どもを産み育てる社会の実現につながるのであります。
 東京都は、多くの企業、多様な福祉の担い手が持つ、民間ならではの知恵と意欲、そして既存ストックなど、豊富な社会資源を十二分に利用しながら、現場ならではの発想で、少子化の流れを反転させるための国を先導する取り組み、国に制度の変革を迫るなど、果敢に取り組んでいくべきであります。
 こうした我が党の少子高齢化対策に取り組む基本的な姿勢に対して、まず、知事の率直な感想を伺うとともに、今後どのように取り組んでいくのか所見を伺います。
 次に、認証保育所について伺います。
 就学前児童人口の増加や経済情勢の悪化などにより、ことし四月の待機児童は昨年の一・四倍に増加しました。待機児童の九割、これはゼロ歳から二歳までの乳幼児であり、低年齢児を中心に受け入れている認証保育所の役割がますます重要となっています。現在設置されている認証保育所は、定員三十人規模の施設が最も多くなっていますが、これは運営費補助単価が定員三十人の場合に最も有利となり、定員規模が拡大するほど、一人当たりの補助額が逓減する仕組みであるためです。
 三十人定員の施設でも、実際には四十人程度まで定員を拡充できる施設が多く、施設規模に見合った定員へと誘導することができれば、待機児童解消に大きな効果が期待されます。認証保育所の運営費補助単価の区分を見直し、認証保育所のさらなる設置と定員拡充を図るべきと考えますが、所見を伺います。
 また、学童クラブは開所時間が午後六時までのところが大半であり、子どもの小学校入学とともに、仕事と子育ての両立が困難となることが問題となっています。認証保育所での成果を踏まえ、都民のニーズにこたえる都独自の仕組みを検討するよう要望しておきます。
 次に、高齢者の雇用就業施策についてですが、国の人口推計によれば、東京都においても今後人口減少に伴い、十五歳から六十四歳までの生産年齢人口、これは現在の八百七十万人強から、四半世紀後の二〇三五年には七百八十万人弱と、およそ百万人減少すると予想されております。このように生産年齢人口の減少に伴い、今後、労働力人口が大幅に減少するおそれがある中、どのように対応していくかが都政においても中長期的な課題の一つであります。
 一方、改正高年齢者雇用安定法により六十五歳までの継続雇用が確保される中、高齢化の進展により、都内の六十五歳以上人口は現在の二百七十万人から、二〇三五年には三百九十万人と、百万人以上増加する見通しです。高齢者の中には、働く意欲があり、かつすぐれた経験やノウハウを有している方が少なくありません。また、高齢者が望んでいる活躍の場は一様でなく、本格的な就労に備え、地域での短時間の就労や市民活動への参加など、みずからの生きがいや健康状態などの事情を踏まえて、多様な選択肢の中から選べるようにすることが大切です。
 こうしたことから、今後、団塊の世代が六十五歳に到達し始めることを視野に入れた対応が必要であると考えますが、今後の高齢化の進展を見据えた雇用就業対策の基本的な認識と取り組みの方向性を伺います。
 次に、特別養護老人ホームにおける医療的ケアについて伺います。
 我が党の少子・高齢化政策推進本部において、医療関係者や介護事業者団体からのヒアリングを実施いたしました。その中で明らかになった課題の一つが、特別養護老人ホームにおける医療的ケアの問題です。
 医療的ケアとは、例えば入所者が食事をとることができなかった場合に直接胃に栄養を送る胃瘻や、たんの吸引などがあります。入所者の高齢化が進むにつれ、これらのケアを必要とする方もふえる傾向にあります。特別養護老人ホームは国の基準以上の看護師の配置や勤務時間の変更などにより、こうした医療的ケアへのニーズにこたえようと腐心しているのが実態です。
 都として、こうした実態をどのように把握し、また各施設の努力についてどのような支援を考えているのか所見を伺います。
 さて、現在、都では特別養護老人ホームの整備に当たり、ユニット型個室の整備を基本としております。さきの定例会において、我が党の川井幹事長から、多床室での整備に関する質問に対し、今後、施設運営上の課題などを十分検証した上で検討していくとの答弁がありました。医療的ケアの効率的な提供の観点からも、多床室での整備の扱いについてさらに検討されるよう改めて要望しておきます。
 次に、私立学校の振興について伺います。
 公立高校の無償化の議論が国においてなされていますが、都内の高校生の約六割は私立高校生であります。建学以来の歴史と伝統の上に、時代の流れを的確にとらえ、創意と工夫を凝らして特色ある教育を実践し、教育界の先導的役割を果たしてきた東京の私立高校からは、我が国の将来を担う多くの有為な若者が輩出されています。
 しかしながら、少子化の影響などにより、都内の私立高校の多くが赤字経営で苦しんでいるということも事実であり、都では従来から、学校経営の安定化が私学振興の第一歩と考え、経常費補助を私学助成の基幹的補助と位置づけ、その充実を図ってきたところであります。
 国は、平成二十二年度概算要求において、私立高校生に対して、国公立高校授業料と同等額の約十二万円を一律支給することなどにより就学支援を図るなど、世帯への給付に重点を置き、私立学校に対する経営支援という観点が置き去りにされている感があります。
 都は、私立学校が公教育に果たしている役割の重要性を考慮して、私学振興を都政の重要課題の一つに位置づけています。改めて、都の私学振興に対する基本的な考え方を伺います。
 また、我が党は、私立学校の重要性にかんがみ、経常費補助のほか、特別奨学金の給付や育英資金の貸しつけなどにより、保護者の負担軽減についても総合的に推進をしてきました。現行の都の特別奨学金の制度は、都立と私立の授業料の格差を是正するため、所得に応じて補助するもので、学業継続のセーフティーネットの一つとして有効に機能してきており、毎年約三万人の私立高校生が利用しています。
 今後は、これまで果たしてきた有効な機能をさらに発展させるという視点が不可欠と考えます。ついては、今後どのような考え方で保護者の負担軽減施策を実施していくのか伺います。
 なお、先週の報道によれば、この問題に関して野田財務副大臣が、既に地方独自で対策が講じられていることを理由に、地方負担の導入を主張しています。これまでの地方の取り組みをいいことに、みずからのマニフェストに財源とともに取り込もうという極めて乱暴な話であり、地方を出先機関扱いするこのような主張には、都議会全体として断固反対すべきものと申し上げます。
 次に、教育施策について伺います。
 都はこれまで、人事考課制度や副校長、主幹、主任教諭などの職の設置、都立高校改革などを全国に先駆け実施してきました。我が党は、石原知事とともに、東京から日本を変える、その気概でこうした教育改革に取り組んできました。今後も社会のさらなる発展に貢献する人材を育成するために、都の教育を改革してまいります。
 我が国では、礼儀や他人を思いやる文化がはぐくまれ、国民性として根づいてきました。しかし、社会が豊かになる一方で、私たち日本人が大切にしてきたすぐれた伝統や文化、日本人の心が急速に失われつつあることを危惧しています。そして社会の基本単位である家族、子育ての基盤である家庭の役割が低下し、善悪の判断や他人を思いやる心、社会的なマナーなどを身につけることもできなくなってきています。
 そのような状況の中で、都においては、奉仕体験活動や日本の伝統文化理解教育などに取り組み、道徳教育など心の教育を充実させてきました。日本人の美徳、日本人の心を引き継ぎ、後世に伝えるという営みは、一義的には家庭において行われるべきものですが、学校教育も重要な役割を担っています。今後もこうした教育を堅持していくべきだと考えます。この点については知事の見解を伺います。
 先月、都教育委員会は、小一問題や中一ギャップが相当数の学校で発生しているという実態調査の結果を発表しました。これまでも小中学校の校長先生から、入学直後の子どもたちが学校生活に適応できず、教師も子どもたちも困惑しているといった状況があると聞いていましたが、その実態が数字として明らかとなったわけです。
 このことが示すものは、学力向上だけでなく、充実した学校生活を送るためにも、子どもたちがスムーズに学校生活に溶け込み、授業での学習規律を確立することが不可欠だということです。この問題に関連して、子どもたちが基本的な生活習慣を身につけ、社会性を涵養し、人間形成の基礎を培うためにも幼児教育が重要であることは、かねてから我が党が主張してきたところであります。
 一方、小一問題や中一ギャップに関連して、教育長会や校長会などの教育関連団体から、教員の数をふやしてほしい、あるいは小学校一、二年の一学級当たりの児童数を減らしてほしいなどの要望が上がっており、このような教育現場の声に十分耳を傾けつつ、学級編制の持つ重要な意味合いを考慮して、我が党が主張してきた切磋琢磨による教育効果にも十分に配慮した、最もよい方法をとるべきであります。
 そこで、この問題を解決するために、小中学校の入学当初の時期に限っては、教員を加配して、学級規模の縮小も可能とするなどして、教員がより多くの時間子どもと向き合う環境をつくることができるよう、東京都版の新たな学級編制方針を検討し、来年四月から確実に実施すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、オリンピック・パラリンピック招致について伺います。
 知事はこのたび、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会招致に名乗りを上げる意向を表明されました。今回の招致活動では、知事みずからもJOCや多くのアスリートらとともに幾度となく海外に出向き、直接IOC委員と会われるなど、大変な苦労をされました。それだけに世界で闘う難しさを最も肌身をもって感じられたのは知事ご自身だったのではないでしょうか。
 今回の表明は、過去の選考プロセスを踏まえると、次回、東京でのオリンピック・パラリンピック大会の開催を実現するためには、今この時期に手を挙げておく必要があるとのご判断に基づくものであると受けとめております。知事の判断は、今回の貴重なノウハウ、経験が最も生かされやすいこと、また、都民、特に次の世代を生きる若者や子どもたちに引き続き大きな夢を与えられることから、知事と手を携え今回の招致活動に邁進してきた我が党としても、大いに理解するところであります。
 しかしながら、今度こそ開催都市の栄誉をかち取るためには、二〇一六年大会招致活動の経験を詳細にわたって検証し、そこから得た教訓を次に生かす必要があります。また再び都民、国民が一丸となって闘うためには、活動の内容及び検証の結果を広く都民、国民に明らかにした上で、民意をしんしゃくすることが求められるものであります。こうした点の必要性は、知事が記者会見等で再三述べておられたとおり、現在その作業が鋭意進められているものと認識しております。さまざまな検証に先立つこの時期に、二〇二〇年への意思を表明された知事の真意を改めてここで明らかにしていただくことは、これからの議論を円滑にしていくことにつながると思いますが、所見を伺います。
 オリンピックで重要なことは、勝つことではなく参加することである、人生で大切なことは、成功することではなく努力することであるというクーベルタン男爵の教えは、結果よりも過程を重視し、いかなる状況下にあっても最善を尽くすことの大切さを説いています。クーベルタン男爵がオリンピックにおいて目指したのは、スポーツがもたらす教育的な効果による人間の変革であり、社会変革でありました。
 オリンピック憲章では、オリンピズムの目標は、スポーツを人間の調和のとれた発達に役立てることにある、その目的は、人間の尊厳保持に重きを置く平和な社会を推進することにあると示されています。
 我が国初のIOC委員であった嘉納治五郎氏は、自分の能力を有効に活用し、平和な社会の実現に貢献することを、精力善用、自他共栄とあらわし、後世に残しました。
 東京招致の五年前、まだ戦後復興間もないころでありましたが、昭和三十四年、ミュンヘンで開かれたIOC総会で、日本の外交評論家平沢和重氏は、小学校六年生の日本の国語の教科書を片手に、日本では義務教育の段階からオリンピック運動を学んでいると力説して、開催都市の栄誉をかち取ったといわれています。
 昭和三十九年の東京オリンピックが行われた後は、オリンピック教育に対する熱が冷めてきたのも事実であります。しかし、オリンピック精神は普遍的なものであり、子どもたちに繰り返し教えていくべきと考えます。教育長の所見を伺います。
 四年後の平成二十五年にはいよいよ東京国体の開催を迎えることになります。オリンピック招致活動を経て盛り上がった都内のスポーツムーブメントを受け継いで開催する東京国体は、多摩、島しょを中心とした東京の魅力を全国に発信するまたとない機会であり、さらには区市町村の体育施設などの整備を促進する起爆剤としても大いに期待されています。開催の準備は準備委員会を中心に着実に進んでいるものと伺っていますが、なお一層の積極的な取り組みが必要であり、都民に対する大会のPRも十分に展開していただきたいと考えています。
 本年の予算特別委員会において、我が党からは、大会開催機運を盛り上げるため、大会の愛称などを使った目に見える形での取り組みを進めるべきであることを指摘し、都においても制定に向けた検討を進める旨の答弁がありました。そうした中、先月から大会の愛称、あるいはスローガン、マスコットキャラクターの公募が始まって、いよいよ本格的に開催機運の盛り上げがスタートしたと喜ばしく感じています。
 そこで、今後、これらを使ってどのように開催に向けた機運を盛り上げ、準備を推進していくのか伺います。
 東京多摩国体、オリンピック、東京マラソン等、スポーツを通して東京が一つになり、まちの活性化につながり、未来を担う子どもたちに夢と希望と感動を与え、かけがえのない心の財産を残したいものです。
 以上、都議会自民党を代表しての質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 服部ゆくお議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、新政権に対する評価についてでありますが、これは政権の是非を占うための最大のよすがであります本予算を見ないと、軽々にいえないことだと思います。
 政権発足直後に高いCO2削減目標を打ち出したことは、環境問題に非常に関心を持っている都としても高く評価をしております。先般の都の提案を踏まえた全国的なキャップ・アンド・トレード制度を一日も早く実現し、具体的な削減に踏み出してほしいものだと思います。
 太政官制度以来続いてきたこの日本の中央官僚の全国支配も、この際撤廃してもらいたいと熱願しております。政治家が正統な歴史認識を持って、国民と国家のために官僚を使いこなすのをこれから見せてほしいものだと思います。
 一方、昨今の政権の動きからは、日本経済をいかに発展させるか、ひいては日本をどこに導こうとしているのかが判然とせず、いささか憂慮の念を禁じ得ません。ケインズを何も盲信するわけではありませんが、事業効果や経済の波及を十分に検証せずに、初めに公約という言葉ありきということで、公共事業を一方的に削減してしまうのもいささか危うい気がいたします。
 日本の将来にとって科学技術のさらなる進歩は致命的に重要であるにもかかわらず、関連予算を近視眼的に削減する動きもいささか心配であります。
 世界が一段と狭くなりまして、国益のぶつかり合う熾烈な状況になっているのに、地域紛争やテロが国際社会を揺るがす危険が高まる中、沖縄の普天間基地をめぐる政権の動きは、日本にとっても重要な日米関係、日米同盟を毀損しかねないような気がいたします。政治は国家の大計に立って、複雑な連立方程式を解くがごとくに政策を選択し、予算を組み、国家を運営していかなければなりません。引き続き、政権がこの国のかじをいかにとっていくかを刮目していきたいと思っております。
 今後の財政運営についてでありますが、急激な景気の悪化に伴い、今年度の都税収入は前年度に比べて一兆円以上もの大幅な減収が避けられない見通しであります。
 もとより国とは異なり、これまでも皆さんのご協力のもとに徹底した内部努力や施策の見直しをしてまいりました。再構築もしてまいりました。身を切るような努力によって財政再建を果たしておりまして、今回の税収減がすぐさま深刻な事態を招くわけではありませんが、この不況がいつまで続くのかも予想がつきませんし、二番底の懸念もあるなど、先を見通しても、今後しばらくは都財政がますます厳しい環境のもとに置かれることは間違いないと思います。財政の健全性を維持しつつ、都政の諸課題にこたえていくという非常に厳しい財政のかじ取りを覚悟しなければならないと思います。
 ゆえにも、改めて手綱を引き締め、歳入歳出を洗い直し、徹底してむだを排しつつ、都民のためになすべき効果の高い施策を厳選して、来年度予算の編成に当たるつもりであります。
 今こそ都財政の底力が問われていると思います。都政に課せられた使命を着実に果たすべく、渾身の努力を傾けていきたいと思っております。
 次いで、地球温暖化対策についてでありますが、温暖化防止は人類の存亡にかかわる重要な課題でありまして、直ちに実効性のある取り組みを進めなければ間に合わないと思います。
 都は、都市型キャップ・アンド・トレードを構築し、都市としては世界で初めてICAP、国際炭素行動パートナーシップに加盟するなど、独自の先駆的な取り組みを進めてまいりました。
 こうした実績を踏まえて、このたびキャップ・アンド・トレードの全国導入についての提言を行い、国が発電所や製鉄所など大規模施設を対象として運営する国家キャップ・アンド・トレードと、現場を知る地方がオフィスビルや製造工場などを対象とする地域キャップ・アンド・トレードを組み合わせた、国と地方がともに積極的な役割を果たす制度を示しました。
 この提言をもとに国における議論をリードし、真に温室効果ガスの削減に効果的な、世界でも先駆的なキャップ・アンド・トレード制度の実現を目指していきたいと思っております。
 次いで、外環道についてでありますが、外環道はひとり東京のためだけでなく、広く国全体にその便益が及ぶ重要な社会資本でありまして、費用対便益も全国でトップレベルでありまして、その計算方式の指数もはっきりと出ております。環境改善効果も極めて高い道路であります。
 就任以来、一貫して外環道の早期整備を都政の最重要施策の一つに位置づけまして、本年四月には都の事業推進体制を整え、国をも動かし、五月には事業化に至ったわけであります。しかしながら、国の補正予算の見直しによりまして、外環道の予算の一部が執行停止となったことはまことに遺憾であります。
 このような状況下にあっても、地元の沿線区市において今月四日から事業説明会が始まりました。執行可能な予算によって、来年度の用地取得に向けた準備を着実に進めてまいります。
 外環道は、我が国経済を活性化して国を発展させる原動力でありまして、この事業を国の責任において全速力で進めていかなければならないと思っております。このためにも、今年度の用地取得のおくれも取り戻すべく、都議会とともに来年度予算の確保を国に強く求めてまいります。
 次いで、羽田空港のさらなる国際化についてでありますが、羽田は都心と直結し、二十四時間利用できる空港でありまして、国際競争力の強化など、我が国の将来を左右する重要なインフラであります。
 かねてより、羽田のさらなる国際化を推進してきました。これは、亀井静香──政党は何といいましたかな、現在の国民新党の代表が自民党の政調会長のころで、二人で図りまして、かなり強引に四本目の滑走路の構築を決定しましたが、その時点で、実は国交省とも話し合いまして、いずれ将来、できるだけ早く、これを国際化することで、例えば最初はASEANよりもっと近い地域に限られたような国際線ということを想定したようでありますけれども、実はこれは最初のただの案でありまして、近い将来、ヨーロッパの玄関口までは羽田から飛ばそうと。つまり、国際線と国内線をあわせたハブ空港にする既定の路線でありました。
 新しい政権が改めて国際拠点空港として機能を充実させる方向性を示したことは、至極当然であると思います。都も協力を行っている新しい滑走路の工事は、既に九割を超える進捗状況でありまして、最終段階を迎えておりまして、来年十月には本格的な機能を整える国際空港として生まれ変わります。
 この羽田の機能を十全に発揮するには、年間四十万七千回となる昼間の空港容量のうち、まだ配分先が決まっておりません発着枠を活用することによりまして、供用開始時には年間三万回としている昼間の国際線を極力増やしていくべきであると思っております。
 さらに、首都圏の空港容量は、おおむね十年後には需要が逼迫すると見込まれておりまして、さまざまな方策を講じて羽田のさらなる容量拡大を行う必要があると思います。また、C滑走路の延伸の工事期間も短縮して、深夜、早朝に欧米などに飛ぶ長距離用大型機の運航を早期に可能にすることも必要であると思います。
 これらを国に強く求めて、成田空港と一体的な運用によりまして、首都圏の国際空港機能を一段と強化していきたいと思っております。
 次いで、八ッ場ダムへの取り組みでありますが、十月末に国交大臣と関係都県知事が話し合いを行った中で、大臣は、八ッ場ダムの必要について改めて検証すると明言しました。
 国は、今月三日に今後の治水対策のあり方に関する有識者会議を設置しましたが、来年夏までは治水対策全般の議論に費やし、個別事業の検証はその後に先送りされました。最終的な提言も再来年夏というのでは、ちょっと遅過ぎるような気がいたします。
 八ッ場ダムは、利根川下流域の住民や企業にとって、治水、利水の両面で不可欠な施設であると思います。
 例えば、平成八年の渇水期のときに年間百十七日の取水制限が実際に行われました。これは、仮に八ッ場ダムがこのとき完成しておれば、取水制限はそれよりも百日少ない、わずか十七日に減少することができたはずであります。
 民主党は十分な検証もせずに、マニフェストに八ッ場ダムの中止を書き込んだようでありますが、今後の検証は中止を前提とするのではなく、関係都県や地元住民など、だれもが納得できる結論を早急に出すべきであると思います。
 既に国に申し入れておりますが、引き続き他の県知事と一致団結して、政策転換に伴うダムの見直しが首都圏における洪水や渇水のリスクを放置することにならないように、強く国に要請してまいります。
 次いで、少子高齢化対策についてでありますが、ただいま少子高齢化対策を進める上での重要なご指摘、ご提言をいただきました。現場の声と供給サイドの意見を織りなしてこそ、政策は実現するという基本的な姿勢には、私も全く同感であります。
 現場には、現場だからこそ気がつく急所、できる工夫、これまでにない着想があります。また、東京には、多種多才な人材、投資意欲にあふれた企業、進取の精神に満ちたNPOなどが集積しておりまして、こうした現場からの発想と東京の持つ英知と力で、福祉、医療、雇用、住宅、教育など、政策の垣根を超えた重層的、複合的な対策を構築し、国を先導する新しいモデルビルディングを行っていきたいと思います。
 その中で、少子化を突破できるよう、東京の子育て支援策の柱となった認証保育所についても、施策の進化を図っていきたいと思います。
 さらに、縦割りの施策に横ぐしを刺す試みを行いまして、国に制度改革の実現を迫る実効性のある政策提言を行っていきたいと思います。今回のご指摘、ご提案はしかと受けとめまして、対策をしっかりと練り上げていきます。
 次いで、日本人の心の継承についてでありますが、かつて日本には、謙虚、節度、自己犠牲といった武士道に表象されるさまざまな美徳がありました。十九世紀の終わりに日本を訪れました古代の古都トロイの発掘者でありますシュリーマンの旅行記には、アジアを歴訪してみても、アジア人の中で日本人だけが高貴な気質、すばらしい美徳を備えた民族だと感心し切っている記述があります。
 また、ルース・ベネディクトの著書であります「菊と刀」にも、菊の花に象徴される日本人の高潔さ、日本刀に象徴される潔さと勇気、その責任感が描かれております。
 しかし、時代を経るにつれて、立場を超え、世代を超えて世界を律する価値の基軸が毀損され、履き違えられた自由と権利が日本全体を損なってきた感が強いという気がいたします。郷土や国家、伝統や文化というものを離れて、我々が日本人として存在することはあり得ず、これを本質的に立て直していく努力をしなくてはならないと痛感しております。
 日本の自然と文化の中に培われ、古い時代から一貫して続いてきた日本人の特質を現代から未来にかけて子弟につないでいくことは、我々大人の責任でありまして、家庭でのしつけや教育の中でしっかりと伝達していくしかないと思います。
 次いで、オリンピック・パラリンピック招致についてでありますが、東京は計画の質の高さや開催能力を認められながらも、残念ながら勝利を手にすることはできなかったが、招致を通じて多くの経験をすることができました。
 ちなみに申しますが、ある物に書きましたけれども、採決が終わった後、私はもうホテルに引き揚げておりましたけれども、ロンドンのオリンピックの推進の責任者でありますセバスチャン、これはなかなか気難しい人で、私は何度も会いましたが、やっと知己になりましたけれども、彼がわざわざ訪ねてきまして、東京の整備状況は完璧である、ロンドンもうらやましいと。プレゼンテーションは最高だったと思う、しかるにといって、肩をすくめて帰ったそうでありますが、これがこのゲームの難しさを象徴していると思います。
 いずれにしろ、こうした多くの経験を踏まえて、招致はまさに国同士の熾烈な闘いでありまして、そこではさまざまな見えざる力が働き、国の総合力が試された闘いであったと思います。現在、活動報告書をまとめさせておりますが、こうした貴重な経験や成果を後々に生かすことを決して忘れてはならないと思います。
 今回の招致はなりませんでしたが、世界平和や地球環境の未来のために、また日本の閉塞感を打破し、若者たちに夢と勇気を与えるために、この世紀の大イベントの招致に我が国が再挑戦する意味と価値は十分にあると確信しております。
 このたびの意思表明は、次なる国内候補都市を選定する手続の時間的問題を勘案しまして、声を上げておくことが必要だとの判断から行ったものであります。いずれにしても、常々述べていますように、再挑戦については、都民、国民の意向を十分にそんたくし、都議会の皆様との議論を踏まえた上で東京都としての結論を出していくものとの認識は変わっておりません。
 私の意図するところをぜひ酌み取っていただきまして、未来を背負う若い世代によき遺産を残すためにも、大いに議論を深めていただきたいと熱願いたします。
 他の質問については、教育長、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

○教育長(大原正行君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、小一問題や中一ギャップの解決についてでございます。
 小学校や中学校への入学直後の時期は、その後の充実した学校生活を子どもたちが送るための基礎を固める重要な時期でございます。この時期に、小一問題及び中一ギャップが発生し、学習規律が確保できなかったり、学校不適応が発生したりいたしますと、子どもたちに学力を身につけさせる上での基盤を構築することが困難になります。
 ことし七月に実施して十一月に発表いたしました実態調査では、すべての学校でこうした問題がいつ発生してもおかしくない状況が明らかになりましたことから、都教育委員会としては早急に対策を講じなければならない、重要で深刻な問題であると認識しております。
 都教育委員会としては、この問題に確実に対応し、教員が子どもと向き合う環境をつくるため、ご提案の教員を加配して学級規模の縮小も可能とするなどの対応策について、早急に具体的な検討を進めてまいります。検討に当たりましては、四十人学級のメリット、すなわち生活集団としての学級の教育効果、切磋琢磨による社会的適応能力の育成について十分配慮してまいります。
 また、この施策の開始時期につきましては、お話の平成二十二年四月からの対応を目指しまして関係局と調整してまいります。
 次に、オリンピック精神についてでございます。
 現在、学校教育では、小学校段階から、児童生徒が体育を初め社会科や道徳などの授業において、フェアプレイの精神や昭和三十九年東京オリンピックの歴史的意義などを学習しております。
 さらに、このたびの学習指導要領改訂により、今後、中学校や高等学校の体育理論の授業においては、オリンピックが国際親善や世界平和に大きな役割を果たしていることや、オリンピック精神を世界じゅうに広めるための活動、すなわちオリンピックムーブメントについて必ず学習することとなりました。
 お話の、クーベルタン男爵が追い求めた理想と嘉納治五郎の教えは、ともに国を超え、時代を超えた普遍的な教育的価値であると認識しており、児童生徒がスポーツに親しみ、オリンピック精神を学習することには教育的な意義がございます。
 こうしたことから、今後とも都教育委員会は、児童生徒にオリンピック精神とオリンピックムーブメントの意義を正しく理解させ、スポーツを通して心身ともに調和のとれた児童生徒の育成に努めてまいります。
   〔東京都技監道家孝行君登壇〕

○東京都技監(道家孝行君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、道路整備の推進に向けた都の取り組みについてでありますが、東京の道路整備は、渋滞の解消、環境改善、防災性や安全性の向上のみならず、国際競争力の強化や都市の活性化を図る上で必要不可欠でございます。
 このため、外環など首都圏三環状道路を初めとする幹線道路ネットワークの整備や、あかずの踏切を解消する連続立体交差事業などを重点的に実施しております。
 こうした取り組みにより、例えば平成十八年に全線開通いたしました環状第八号線では、杉並区四面道交差点から北区岩淵町までの所要時間が、従来の七十分から六割減の三十分に短縮され、その経済効果は年間三百億円、CO2の削減効果は日比谷公園の面積の二百倍に相当する森林が吸収する年間三万四千トンにも及びます。
 また、今月六日に高架化いたしましたJR中央線の三鷹から国分寺駅間では、ピーク時の一時間に二分しか開かなかった小金井街道踏切など、十三カ所のあかずの踏切すべてを除却し、交通の円滑化などが図られました。
 一方、平成二十二年度予算の国土交通省概算要求では、道路関係予算が二割削減され、さらに行政刷新会議の事業仕分けでは、より一層の削減を図るべきとされております。
 しかしながら、日本の社会、経済の中枢を担う東京の道路整備は事業効果が極めて高く、その便益が全国へ及ぶものであり、ますます激化する国際間競争に打ち勝つためにも、財源を集中的に投入し、整備を一層加速していかなければなりません。
 このため、今後ともあらゆる機会をとらえて東京の道路整備の重要性を国に訴え、平成二十二年度政府予算において必要な財源を確保し、確実に配分するよう強く求めるとともに、日本を牽引する首都東京の道路整備を全力で推進してまいります。
 次に、上野恩賜公園の再整備についてでございます。
 上野恩賜公園は、豊かな緑に文化施設や歴史遺産が溶け込み、文化と自然が一体となった魅力あふれる公園であります。その魅力をさらに向上させ、日本の文化、観光の拠点となるよう検討したグランドデザインを踏まえ、公園の再整備に向けて上野恩賜公園再生基本計画を策定し、本年十月に公表いたしました。
 この計画では、世界に向けた文化の発信強化、魅力ある緑と水の空間創出及び快適な利用の推進という三つの基本方針のもと、エリア別に整備の内容を定めており、順次整備を進めてまいります。
 噴水があります竹の台文化施設エリアの中心部分において、平成二十三年度末の完成を目指し、現在設計を進めており、東京の魅力を表現する多様な文化イベントなどが開催できる広場や、東京都美術館への利用しやすい動線を整備いたします。
 また、オープンカフェを導入するとともに、広場周辺の樹林を憩い安らぐことのできる明るい樹林として再生してまいります。
 今後とも、上野恩賜公園が内外からさらに多くの来訪客を迎え、文化と歴史を体感できる緑豊かな公園となるよう整備を推進してまいります。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 九点についてお答え申し上げます。
 まず、新型インフルエンザのワクチン接種についてでありますが、都は区市町村と連携し、さまざまな媒体を通じてワクチンの効果や接種の受け方などを周知するとともに、休日、夜間の新型インフルエンザ相談センターの体制を充実するなど、都民への的確な情報提供に努めてまいりました。また、重症化しやすいことが判明した未就学児などについては、国に先駆けて接種時期の前倒しを行っております。
 さらに現在、より多くの方に接種の機会を確保するため、地域における医師会等を中心とした集団的接種の取り組みを促進しております。
 今後とも、区市町村や関係機関と連携し、ワクチン接種の円滑な実施を図ってまいります。
 次に、今後の東京における周産期医療の全体像を明らかにすべきとのお尋ねについてでありますけれども、まず、ハイリスクの新生児に対応するNICUについては、今後、大幅に増加させるため、出生一万人対三十床を基本に、東京都周産期医療協議会の意見を伺い、東京都全域を一つの圏域として具体的な整備目標を定め、増床に取り組んでまいります。
 また、周産期医療は高コストで不採算医療であるため、国に対して診療報酬の大幅な引き上げと国庫補助制度の充実を要望するとともに、都としてもNICU増床を促進するための支援策を鋭意検討しております。
 次に、多摩地域についてでございますけれども、小児総合医療センターと多摩総合医療センターの整備により、NICUを現在の清瀬小児病院と八王子小児病院を合わせた十五床から九床増床し、二十四床にするとともに、M-FICU九床を新たに整備し、母体、新生児、いずれにも対応可能な都内最大の総合周産期母子医療センターを確保いたします。
 また、現在のドクターカー一台に加え、新たに新生児も搬送できる小児用ドクターカーを小児総合医療センターに配備し、多摩全域を網羅いたします。
 さらに、リスクに応じた周産期医療体制を構築するため、周産期連携病院に加え、新たに新生児連携病院の創設も検討しておりまして、総合周産期母子医療センターが中心となり、多摩全域を対象としたネットワークグループを立ち上げ、地域の病院や診療所等との連携を進めてまいります。こうしたことにより、多摩地域を含め、都における周産期医療の一層の充実に取り組んでまいります。
 次いで、都のホームレス対策についてでありますが、ホームレスの自立を支援するため、社会全体として取り組むことは重要な課題であると認識してございます。新たな実施計画では、緊急一時保護と就労支援の機能を一体化した新型自立支援センターを整備するとともに、自立支援住宅を設置し、アパート生活が体験できるようにするなど、より実践的な支援を盛り込んでおります。
 また、インターネットカフェ等で寝泊まりしている、いわゆる住居喪失不安定就労者に対しても、安定した生活が営めるよう、生活、居住、就労の各種支援を推進してまいります。
 計画で掲げたこれらの事業を着実に推進し、今後もホームレスの就労自立に向けて、きめ細かな支援を継続的に実施してまいります。
 次いで、重症心身障害児者の在宅支援に関する三点の質問につきまして、まず基本的な考え方についてでございますが、重い障害があっても、可能な限り家族と一緒に地域で生活できるよう、乳幼児期から成人期までの各段階で在宅生活を支える環境を整備していくことが重要であります。
 このため、訪問看護などの医療サービスを充実させるとともに、日中活動の場を確保する通所事業や、家族の休養を支援する短期入所事業などの福祉サービスの基盤整備を進めております。
 今後とも区市町村や関係機関と協力し、重症心身障害児者のライフステージに応じた在宅支援の充実に努めてまいります。
 次いで、在宅療育への移行支援についてでありますが、NICU等の高度な医療施設から、在宅での療育に円滑に移行するためには、ご指摘のように家族の不安を軽減することが重要であります。
 都は、経験豊富な看護師が家庭を訪問して、家族の方に看護技術の指導や訪問看護等の活用に向けた支援などを行う在宅心身障害児者訪問事業を独自に実施しており、平成二十年度は年間約四百五十人の方が利用しております。
 今後、本事業を通じて蓄積したノウハウを活用し、入院中から早期に相談支援を行うとともに、退院後の在宅看護を担う訪問看護人材を育成し、地域の訪問看護ステーションを充実するなど、在宅療養の支援策を検討してまいります。
 次いで、通所施設などの受け入れ体制の整備についてでありますが、近年、在宅の重症心身障害児者については、人工呼吸器や栄養チューブの装着など、常時医療を必要とする方が増加しており、通所施設や短期入所施設におきましても医療的ケアの充実が求められております。
 このため都は、今年度から重症心身障害児者の施設で働く看護師を対象に、呼吸管理等をすることができる高い技術の習得に向けた研修を実施し、看護技術の一層の向上を図っております。
 今後、さらに通所施設や短期入所施設において、専門的な知識を持つ看護師の配置を支援する施策を検討するなど、常時医療を必要とする方の受け入れ促進のための体制整備を進めてまいります。
 次いで、介護基盤の整備に関する区市町村への支援についてのお尋ねでございますけれども、本年五月の国の補正予算では、都道府県に基金を造成し、区市町村において将来必要となる介護基盤の緊急整備を行うための事業が創設されました。
 都は、これを踏まえまして区市町村と協議を重ね、例えば認知症高齢者グループホームでは、六十三カ所、約千人分を現行の介護保険事業計画数に上乗せして整備するなど、事業を拡大することといたします。
 こうした経費を含め、本定例会の補正予算案では約二百五十億円を基金に積み立てることといたしました。今後とも増大する介護ニーズに的確にこたえるため、基金事業を活用しながら区市町村と連携して、介護基盤の一層の整備促進に努めてまいります。
 次いで、認証保育所の定員拡充についてでございますけれども、都は保育サービス拡充緊急三カ年事業に取り組み、今年度は、当初の整備目標をさらに引き上げ、保育ニーズの増大に対応しているところでございますが、お話のように、待機児童を解消する上で、認証保育所の定員規模の拡充は有効な方策であると思っております。このため、定員規模の大きい認証保育所の設置や既存施設の定員拡大が促進されるよう、運営費補助単価の区分の見直しにつきまして、急ぎ検討してまいります。
 最後に、特別養護老人ホームにおける医療的ケアについてでありますが、都は本年六月、特別養護老人ホームにおける医療的ケアの実態を把握するため、調査を実施いたしました。この結果では、ほぼすべての施設において医療的ケアが行われており、さらに入所者の約一割が、胃瘻、経管栄養、喀たん吸引のうち、いずれかの医療処置を必要としておりました。
 こうした入所者に適切に対応するため、施設では国基準を超えた看護職員の配置や勤務時間の変更などの工夫を図っている実態が明らかとなりました。
 今後、こうした実態を踏まえ、医療的ケアを必要とする高齢者を積極的に受け入れている施設の努力にこたえられるよう、特別養護老人ホームの支援方策について検討してまいります。
   〔総務局長中田清己君登壇〕

○総務局長(中田清己君) 二点のご質問についてお答えいたします。
 まず、震災時の外出者対策についてでございますが、都はこれまで、自助、共助の理念に基づきまして、駅周辺の事業者に対しまして、震災時の混乱防止にみずから取り組むための協議会の設立を働きかけてまいりました。その結果、昨年度までに四カ所で設立され、駅前滞留者対策訓練を実施いたしました。また、民間事業者の協力を得まして、帰宅支援ステーションの整備を進め、現在、約八千百カ所を確保したところでございます。
 さらに先月には、渋谷駅で、駅前滞留者のみならず、徒歩帰宅者や帰宅困難者も想定した総合的な訓練を実施し、来年一月には上野駅でも訓練を実施する予定でございます。
 今後も、都は、新しい災害情報システムを活用した情報提供の充実や、各駅に設立されました協議会が一堂に会する場を設け、共通する課題を検討するなど、総合的な外出者対策を一層推進してまいります。
 次に、東京国体の開催に向けました取り組みについてでございますが、五十四年ぶりに首都東京で開催します東京国体は、多摩・島しょの豊かな自然や歴史、文化など、東京の多様な魅力を発信する絶好の機会でございます。
 都においては、区市町村の競技施設整備に対する財政支援を実施するなど、着実に開催準備を進めるとともに、最大限の環境配慮や全国障害者スポーツ大会との連携など、東京ならではの国体の実現を目指しております。
 開催に向けては、ご指摘のとおり、目に見える形で大会のPRを行うことが重要でございます。現在、都民参加のシンボルとして、大会の愛称やスローガン、マスコットキャラクターについて広く公募も行っております。制定後は、これらを活用した広報や都民運動を展開して開催機運を盛り上げ、開催準備を一層加速してまいります。
   〔都市整備局長河島均君登壇〕

○都市整備局長(河島均君) 今後の防災都市づくりの推進についてでございますが、震災時に大きな被害が想定される重点整備地域では、市街地の燃えにくさをあらわす不燃領域率が、平成八年からの十年間で区部平均を三ポイント上回る八ポイントの上昇となっております。これまでの取り組みにより、データの上でも成果があらわれていることから、今後さらに取り組みの充実を図ってまいります。
 まず、重点整備地域におきまして、不燃領域率の平成二十七年度までの目標を従来より五%引き上げ、市街地大火の危険性がほとんどなくなる六五%の達成を目指します。
 また、整備地域につきましては、最新の地域危険度調査の結果等を踏まえ、谷中地域等を拡大するなど、市街地の不燃化や建築物の耐震化の促進に向けて、二十八地域、約七千ヘクタールを指定いたします。
 これらの地域におきまして、それぞれの地元自治体と共同して策定した整備プログラムに基づき、沿道一体整備事業等の整備効果の高い事業や、地区計画等の規制誘導策を積極的かつ重層的に実施して、整備を加速してまいります。
 今後、こうした内容を含む防災都市づくり推進計画を来年一月末を目途に取りまとめ、これをもとに、さまざまな主体と連携して、災害に強い都市づくりに着実に取り組んでまいります。
   〔水道局長尾崎勝君登壇〕

○水道局長(尾崎勝君) 水道事業に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、耐震継ぎ手管への取りかえ促進についてでございますが、当局ではこれまで、水道管路の耐震強化を図るため、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、新たに開発されました抜け出し防止機能を有する耐震継ぎ手管を平成十年度から全面的に採用し、平成二十年度末までに総延長の二四%を取りかえてまいりました。
 しかしながら、現在の整備状況では、首都直下型地震の場合、被害想定における断水率が都平均で約三五%、地盤の軟弱な東部地域のうち、最大の区で約八○%であり、すべてを復旧するには三十日間を必要といたします。
 また、都民要望におきましても、飲料水に加え、ふろ、トイレといった生活用水が震災時に何よりも重要であり、水道の一日でも早い復旧が求められております。
 このため、現在の取りかえスケジュールを大幅に前倒しすることとし、平成二十二年度を初年度とする新たな取りかえ計画の中で、事業費及び復旧日数の短縮などについて早期に明らかにし、震災対策を強化してまいります。
 次に、震災時における仮配管方式の活用策でございますが、震災時におきましては、倒壊した建物が路上をふさぎ、掘削による水道管の復旧が困難な場合や、橋梁に添架された水道管が損傷し、復旧工事に時間を要する場合がございます。このような場合は、断水を早期に解消する上で、路上に仮配管を布設する方法が有効であると考えます。既に、日常的に行っている配水管の取りかえ工事におきまして仮配管工法を採用し、断水時間の大幅な短縮を図っており、このノウハウは震災時においても活用できます。
 また、震災復旧等への対応力を強化するため、都内八カ所に配管材料を分散して備蓄しておりますが、これらを適宜、仮配管方式による復旧に転用することにより、さらに迅速な対応が可能となります。
 このように、震災時には、被災した現場の状況に応じて仮配管方式を広く活用し、早期の通水を目指してまいります。
 最後に、水源地域における民有林への具体的な取り組みについてでございますが、多摩川上流の荒廃した民有林では、土砂の流出防止機能など、森林が本来持つ機能が低下し、小河内貯水池の水質悪化などの影響が懸念されることから、これまでの取り組みに加え、踏み込んだ対策が必要であると認識しております。
 このため、荒廃した民有林を手放したいと考える土地所有者がいることを踏まえ、購入の検討を進めてまいりましたが、森林購入に際しては、境界が不明確な土地があることや投機による地価の高騰など、考慮すべき課題もございます。
 これらを踏まえ、平成二十二年度から五年程度の期間、管理が不十分で手放す意向のある民有林を試験的に購入するとともに、これを通じて課題の解決を図ってまいります。
 こうした取り組みにより、将来にわたって多摩川上流の水源地域を良好な状態で保全し、水道水源林の機能を最大限発揮できるよう努めてまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

○産業労働局長(前田信弘君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、年末に向けた中小企業支援策についてでありますが、都内中小企業を取り巻く経営環境は、年末に向けて一層厳しさが増すことが見込まれますことから、都としては、さらなる資金繰りや受注の確保を初めとした実効性のある緊急対策を打ち出したところでございます。
 具体的には、まず、特別相談窓口を財団法人東京都中小企業振興公社に設置し、中小企業の経営、融資に関する相談に対応してまいります。
 第二に、中小企業の資金繰りを支援するため、制度融資において、国の緊急保証制度に対応した経営緊急、これを引き続き重点的に推進するほか、クイックつなぎの融資限度額を引き上げ、年末にかけて緊急に必要となる決済資金等に備えてまいります。
 さらに第三として、先般、取り扱いを開始した、地域の金融機関と連携した新たな保証つき融資制度について、取扱金融機関を拡大し、都内中小企業の資金需要にこたえてまいります。
 また、売上高が減少している中小企業に対し、都はこれまでも、展示会への参加等、受注拡大に向けた取り組みを支援してまいりました。現下の厳しい状況を踏まえ、一段の支援強化が必要なことから、第四として、現在、大企業を中心とした発注側企業約七十社に対しまして、局幹部職員が直接、受注機会拡大に向けた協力要請を実施しているところでございます。
 加えて、第五になりますが、地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターにおきまして、本年三月から実施しております依頼試験等の利用料金を五○%減額する緊急支援を、年度末まで三カ月延長してまいります。
 こうしたさまざまな緊急対策を講じることによりまして、厳しい経営状況に置かれた中小企業の支援に万全を期してまいります。
 次に、厳しい雇用情勢に対する取り組みについてであります。
 都はこれまでも、雇用の創出や離職者に対する職業訓練の大幅な拡充など、さまざまな対策を講じてまいりましたが、雇用情勢は依然として厳しく、年末を控え、一層の取り組みが求められております。
 このため、まず公的な雇用創出に向け、緊急雇用創出事業の基金を大幅に拡充するとともに、年度内に三百を超える事業を追加で実施し、これにより新たに約六千人の雇用を生み出してまいります。
 また、企業における雇用の維持や採用の拡大について、都内の経済団体に対し要請を行っているほか、新規学卒者向けの合同就職面接会を、さきの十一月に続き来年の二月にも開催して、未内定の学生等の就職を支援していきます。
 さらに、都民の就業に係るさまざまな問題にこたえるため、労働相談情報センターと、しごとセンターが共同で開催する特別相談会に加え、年末の二十九日、三十日には臨時相談窓口も開設いたします。
 今後とも、雇用情勢に適切に対応し、切れ目のない雇用の創出を図るとともに、さまざまな取り組みを重層的に展開することによりまして、就業支援に積極的に取り組んでまいります。
 次に、中小企業の経営力向上と技術継承についてでありますが、都内の産業基盤を維持発展させていくためには、ご指摘のとおり、中小企業の経営体質を強化するとともに、すぐれた技術を絶やすことなく次代に継承していくことが重要でございます。
 このため、まず、中小企業の経営力向上に向け、都と中小企業支援機関が連携して中小企業経営力向上支援事業を実施し、中小企業診断士などが二千社を目標に企業に直接出向いてアドバイスを行っているところでございます。既に千社を超える企業訪問を終え、多くの企業が事業計画や財務内容の改善に着手しております。その中には、新たな販路開拓を行ったことによって大幅な収益回復につながった企業や、地域中小企業応援ファンドなどの都の補助事業に採択された企業も出ております。
 現在、残り一千社の訪問診断を実施中でありまして、今後とも中小企業の経営力の向上に取り組んでまいります。
 また、東京には高度な技術を持つ中小企業が多数存在しておりますが、これを支える技術者の方々の高齢化が進んでおりまして、その技術継承も喫緊の課題となっております。
 このため、都としては、現場の実態に即し、円滑に次世代へ技術継承ができるよう、区市町村や地域の工業団体等と連携した新たな仕組みづくりを検討してまいります。
 次に、新しい産業分野の育成に向けた取り組みについてであります。
 将来の産業発展を実現していくためには、足元の経済危機の克服に向けた対策に万全を期すだけでなく、次代を担う新たな産業分野の育成を図っていく必要があります。
 東京には、ロボットや航空宇宙産業、さらには環境、健康産業など、今後成長が期待される産業が多数存在しております。その育成には、企業や大学が持つ技術を結集し、新たな研究開発や事業活動を促進していくことが重要であります。
 このため、今年度から平成二十三年度にかけて、多摩と区部に順次開設する産業支援拠点を中核として、新技術、新製品の開発支援や、産学公に金融機関も加えたネットワークの構築による事業化の促進などに積極的に取り組んでまいります。
 また、産業支援拠点の中心となる東京都立産業技術研究センターは、首都大学東京と連携して、環境、省エネ技術の研究開発等、重点課題の解決に向けてさまざまな取り組みを進めております。今後、その成果を中小企業に着実に移転させることで、産業の活性化につなげてまいります。
 都としては、このような成長産業分野の育成や技術開発の促進により、新たな産業発展の道を切り開いてまいります。
 最後に、高齢化の進展を見据えた雇用就業施策の基本的な認識と取り組みの方向についてでありますが、高齢化が急速に進行する中、労働力人口を確保し、経済の活力を維持するためには、高齢者が意欲と能力を生かして、年齢にかかわりなく働き続けることができる社会を目指す必要がございます。
 我が国の高齢者は、諸外国と比べても就業意欲が高く、すぐれた技術、技能を持つ方も多い一方で、定年後は体力や経済力などの個人差が大きくなり、希望する就業形態も、フルタイムの雇用から短時間勤務、臨時的な就業まで幅広いものとなっております。
 このため、都はこれまでも、しごとセンターにおいて就業相談や職業紹介を行うとともに、専門スキルを持つ人材の中小企業での活用を進め、また、区市町村が設置するシルバー人材センター等を支援してまいりました。
 都内で六十万人を超える団塊世代の方が六十五歳に到達する時期を間近に控える中、高齢者がその意欲と能力を生かして働くことができるよう、多様な就業機会の確保がますます重要となってきておりまして、今後とも高齢者の一層の就業促進に取り組んでまいります。
   〔財務局長村山寛司君登壇〕

○財務局長(村山寛司君) 公共工事の品質確保対策についてのご質問にお答えいたします。
 公共工事を初めとする公共調達を適正に実施していくためには、市場環境の変化を踏まえながら、品質確保と適正な競争とのバランスがとれた入札契約制度の構築が必要であります。
 こうした観点から、都は、公共工事の入札契約制度の今後のあり方を検討するため、昨年六月に研究会を設置し、その提言を踏まえて実施方針を策定いたしました。
 実施方針では、低価格入札が多発している現状を踏まえまして、工事品質の確保を中心として適正な競争を実現していくための制度改革の方向性を明らかにいたしました。
 具体的には、大規模工事につきましては、特別重点調査制度を導入いたしまして、著しい低価格入札につきましては、調査により、落札者とはしないという措置を講じることとし、既に実施をいたしました。
 また、中小規模工事につきましては、その額未満の金額による入札の場合には失格とする最低制限価格が既に設けられておりますが、より一層適切な工事の履行を図るために、市場実態に即した価格水準へと、この最低制限価格を引き上げるとともに、事業者による適正な積算努力を促すため、従来設けておりました最低制限価格の設定上限を撤廃いたします。
 来年一月から、これの実施に向けまして、早期に改正内容を事業者に周知してまいります。
 今後とも、公共工事の品質確保のため、今回策定した実施方針に基づきまして、低価格入札対策を初め、制度改革の着実な実施に向け取り組んでまいります。
   〔中央卸売市場長岡田至君登壇〕

○中央卸売市場長(岡田至君) 豊洲新市場の開場についてのご質問にお答えいたします。
 お話のとおり、先月、市場業界の大多数から、豊洲新市場建設計画推進の要望書が提出されております。
 そこでも述べられておりますように、開場以来七十年余りが経過した築地市場は、施設が老朽化しており、耐震性やアスベストの問題に加えて、構造物の劣化による損傷や落下、路面の亀裂、破損等の危険が高まり、安全性に多くの不安を抱えるなど、限界に達しております。しかし、狭隘な敷地で営業を続けながらの工事となることから、抜本的な改善は極めて困難であります。
 また、取扱量の減少などによりまして、市場業者の経営は厳しさを増しており、取引の維持拡大のため、品質管理の徹底や物流の効率化など、顧客ニーズへの対応に迫られておりますが、築地市場では一貫した温度管理ができず、細かな仕分けを行うための荷さばき場が十分確保できないなど限界があり、市場業者は将来に向けた経営戦略を描くことができません。
 今回の要望書には、このような現状に強い危機意識を持ち、長い年月をかけ幾度となく協議を重ね、現在地再整備は不可能とし、早期移転による市場の発展に希望を託し、一致協力して計画の実現に向け準備を進めてきた市場業者の切実な願いが込められております。
 都といたしましては、この要望にこたえるため、万全な土壌汚染対策を確実に実施した上で、一日でも早い豊洲新市場の開場を目指し全力で取り組んでまいります。
   〔環境局長有留武司君登壇〕

○環境局長(有留武司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、エコドライブの推進についてでございますが、エコドライブによりCO2削減に大きな効果を上げるためには、都民や事業者の意識的かつ実践的な取り組みを促すことが必要でございます。
 そのため、都はエコドライブインストラクターを養成し、区市等と連携した講習会等を実施するとともに、平成十九年度からエコドライブ支援機器の装着補助制度に取り組んできておりまして、都民や中小事業者へのエコドライブの普及、定着と、CO2の削減に一定の成果を上げてきました。
 事業者団体の集計データでは、機器を活用したエコドライブの教育、指導により、約一○%燃料消費量が減少するなど、燃費が大きく改善したと聞いております。
 都は今後、これらの燃費データ等の活用を通じた取り組みを、関係者の協力も得ながら一層推進し、エコドライブの普及促進など、自動車部門の温暖化対策をさらに進めてまいります。
 次に、土壌汚染対策についてでございますが、お話のとおり、都は、法制定以前の平成十三年から、環境確保条例に基づき、今回の法改正で新たに導入された土地改変に対する規制などを既に実施してきております。
 こうしたことから、条例に基づく土壌汚染対策については、法改正による大きな影響はないと考えておりまして、引き続き着実な運用を図ってまいります。
 また、円滑な土壌汚染対策を進めるためには、資力の乏しい中小事業者であっても着実に取り組むことができるよう、コストを低減することが重要でございます。
 このため、今後とも、掘削除去によらず、盛り土による封じ込めなどの対策や、汚染土壌を搬出することなく現在地で有害物質の浄化を行う方法など、より低コストで環境負荷の少ない対策の普及を図ってまいります。
   〔港湾局長比留間英人君登壇〕

○港湾局長(比留間英人君) 国際戦略港湾選定への対応についてでございます。
 これまで国の港湾政策は、全国にくまなく外貿コンテナふ頭を整備する分散投資、施設整備中心の施策体系などの課題があり、必ずしも我が国港湾の国際競争力の強化に結びついているとはいえませんでした。
 今般、躍進するアジア諸港との競争に勝ち抜くため、重点投資する港湾を全国で一つか二つに絞り込み、さらなる選択と集中を図るという方向が示されました。
 京浜港は、取扱貨物量、貿易額ともに全国一位であり、コンテナ貨物のほか、原油、自動車などさまざまな貨物を取り扱う総合物流港湾として、首都圏四千万人の生活と産業を支えており、国際戦略港湾に当然選定されるべきであると認識しております。
 都といたしましては、速やかに川崎市、横浜市と共同して、国の新しい取り組みが、京浜港への貨物集荷策など、ハード、ソフト両面を含めた総合的な物流政策となるよう、国に対して提案するとともに、京浜港を国際戦略港湾に選定するよう、議会のご協力もいただきながら、積極的に働きかけてまいります。
   〔病院経営本部長中井敬三君登壇〕

○病院経営本部長(中井敬三君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、北多摩北部地域の小児医療体制についてでありますが、地域の中核病院の役割を担う多摩北部医療センターでは、本年六月に小児科病棟を改修し、病床数を十三床から三十五床に整備拡充するとともに、清瀬小児病院から三名の医師をチームで派遣するなど、体制強化を図ってまいりました。
 しかし、ご指摘のように、新型インフルエンザへの対応など、最近の患者動向を踏まえますと、さらなる受け入れ体制の強化を図り、万全を期す必要があると考えております。
 そのため、多摩北部医療センターにおいて、当面、今月から、特に小児救急患者数の多い土曜準夜と日曜、休日の日勤、準夜帯の当直体制を強化していくこととし、そのために必要な医師、看護師の確保を都として支援してまいります。
 さらに、清瀬小児病院転出後に向けて、小児医療専門のさまざまな相談を受けるため、看護師や医療相談員による医療相談機能を強化するなど、安心して診療を受けられる体制を整備してまいります。
 今後とも、小児病院が転出する地域の医療体制の充実に、関係局と連携しながら全力で取り組んでまいります。
 次に、都立病院の地域における医療ネットワークの構築についてでありますが、ご指摘のとおり、限られた医療資源を十分に活用して、地域の住民が安心して医療を受けられる体制を構築するためには、各医療機関が、初期、二次、三次の役割分担のもとに重層的に連携していくことが非常に重要であります。
 とりわけ小児総合医療センターには、多摩地域全体をカバーする小児医療の拠点としての役割が期待されており、周産期医療、救急医療など、さまざまな分野での医療連携体制の構築が求められております。
 そのため、東京都地域医療再生計画に基づき、小児総合医療センターと多摩北部医療センターなどの中核病院との間で、情報システムを活用した診断支援などの取り組みを行ってまいります。
 また、重症心身障害児が地域で安心して暮らせる医療体制を確立するために、在宅医療の支援や重症化した場合の受け入れ体制づくりに向けて、地域の中核病院や各医療機関から成る医療ネットワークの構築などについて検討を進めてまいります。
 さらに、他の都立病院、公社病院の間においても、このような連携策を必要な医療課題に即して構築し、多様な病院間のネットワークづくりに積極的に取り組んでまいります。
   〔生活文化スポーツ局長秋山俊行君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(秋山俊行君) 私学振興に関する二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、私学振興に対する基本的な考え方についてでございますが、都内の高校生の約六割が通う私立高校は、その建学の精神に基づき、個性的で特色ある教育を展開し、都の公教育において大きな役割を果たしているものと認識しております。
 このため、都は私立学校の教育条件の維持向上、生徒の修学上の経済的負担の軽減、学校経営の健全化を目的とする経常費補助を基幹的補助と位置づけ、充実を図ってまいりました。またあわせて、耐震化に対する助成や保護者負担軽減策など、私学振興のための施策を広範に展開してきたところでございます。
 少子化の影響などによりまして、私立学校の経営状況が厳しい中、今後とも公教育において大きな役割を果たす私立学校が、都民の期待にこたえる質の高い教育を確保していくため、学校運営に対する支援の柱となります経常費補助を中心に、私立学校の振興に努めてまいります。
 次に、私立高校生の保護者負担軽減についてでございますが、ご指摘のとおり、都では、私立高校生の保護者の経済的負担を軽減するため、経常費補助を通して授業料の抑制を図りますとともに、返済が不要の特別奨学金制度や、育英資金の貸与など、幅広い修学支援策を実施し、また、その充実を図ってきたところでございます。
 現在、国においては、一定額を一律支給するなどの新たな就学支援金制度の導入が検討されておりますが、都といたしましては、私立高校生が家計状況により修学困難とならないよう、効果的な修学支援を行う観点から、一定所得以下の保護者を対象に、所得に応じて助成することが重要であるというふうに考えておりまして、現行の特別奨学金制度が果たしているセーフティーネットの機能をより一層高め、保護者負担の軽減に向けて取り組んでいく考えでございます。

○副議長(鈴木貫太郎君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時三十一分休憩

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