○副議長(鈴木貫太郎君) 百二番花輪ともふみ君。
〔百二番花輪ともふみ君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕
○百二番(花輪ともふみ君) まず、都営住宅の地域福祉への活用について伺います。
私は、都内各所で実施されている老朽化した都営住宅を建てかえる機会に合わせて、お年寄りや障害者のグループホーム、また保育園など、地域の実情に応じた福祉施設の整備を積極的に進めるべきだと考えています。
先日、障害者のグループホームを運営するNPO法人の方から、次のようなことをいわれました。都営住宅の建てかえに合わせて市区町村や社会福祉法人が福祉の施設をつくる場合には都は敷地を貸してくれるけど、NPOがつくろうとすると貸してくれないとのこと。局に確認したところ、都は建てかえに当たり要綱をつくり、市区町村が福祉施設の設置主体になる場合は敷地を無償で貸し付け、社会福祉法人が主体になるときには三〇%減額で貸し付けるとしています。しかし、そもそもNPO法人は想定していないとのことでした。
そもそもNPO法人を想定していないということも問題なんですが、市区町村ならただなのに、社会福祉法人だとお金を取るということにも疑問を感じます。
これまでは役所が福祉の担い手の中心でした。しかし、近年、社会福祉法人やNPO法人、医療法人、株式会社などへと、その担い手は変わってきています。例えば、障害者のグループホームの都内設置状況を見たとき、居住者全体の七百九十五のうち、社会福祉法人は五百十四、NPO法人は二百三十八、そのほかは三十五、区市町村はわずか八にすぎません。
また、各法人が区から土地を借りて施設をつくる場合は、都営住宅の土地と違って無償が多いとも聞いています。
さきの要綱は、平成十二年に改定されたままです。しかし、社会を取り巻く福祉の環境、その役割分担は大きく変わってきています。取り残されることのないよう、時代に合わせた対応をすべきと考えます。
さらに、今後、大規模な都営住宅の集約、高層、建てかえにより新たに生み出される余剰地は、十年間で六十ヘクタールともいわれています。大変広大で、福祉にとっては魅力的です。これらの土地が各地域の福祉施策の一層の増進に役立つよう、建てかえに際しては、福祉保健局など各局との調整はもちろんのこと、さまざまな地域福祉の担い手や地元自治体、また、地域住民の意見にしっかりと耳を傾けていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
次に、外郭団体について伺います。
外郭団体のうち監理団体の改革については、石原知事就任以降これまで、積極的な取り組みをなされていると認識をしています。団体数は、平成十一年度の六十四団体に対し、現在三十三団体と、三十一団体削減し、契約情報や幹部職員の再就職情報なども、徐々にではありますが、透明化が進んでいます。
しかし、先日、私が局に、削減された三十一団体はどこに行ってしまったんですか、会社を清算したり、または解散したんですかと伺ったところ、幾つかは統合もしましたが、多くは報告団体になりましたということです。報告団体とは、都からの出資比率が二五%未満で、自立的経営を行っていて、全庁的指導を行う必要がない団体とのことです。
この間の改革の中で、報告団体へと指定解除された元監理団体の数は二十一団体。削減したはずの三十一団体のうち二十一団体は、名前を変えただけのようにも見えます。監理団体と報告団体は、どのような考え方で区分けを行っているのか、お聞かせください。
次に、これら報告団体の情報開示について伺います。
報告団体は、全部で五十二団体。監理団体に比べ都の出資割合が低いとはいえ、税金から多額の出資がなされています。また、都との関与が低いといいますが、都の幹部職員の再就職、いわゆる天下りはたくさんあります。その数は六十五人。監理団体への五十五人を上回っています。
私は今回の質問を行うに当たり、議会局を通じ各局へ、報告団体が行う随意契約、さらに、報告団体が出資する子会社、また、子会社への都幹部職員の再就職状況の報告を求めましたが、ほんの一部を除いて、当該情報を把握していないとのお答えでした。
監理団体に関しては、何度となく質疑を行い、一定の情報開示が進んでいます。しかし、その陰で、改革という名のもと、監理団体が報告団体という報告しなくてよい団体へと衣がえしてしまっていたのでは、改革の中身そのものが疑われます。監理団体だった団体が、わざわざ都からの出資を基準の二五%未満に落としたり、また、子会社ばかりでなく孫会社までつくっている、そんな団体もあると聞きます。自立的経営を行っていて、関与が低いほうがいいというのであれば、出資も天下りも引き揚げてはいかがですか。
私は、報告団体についても、監理団体と同様の情報開示を進めるべきと考えますが、お答えください。
国では、省庁の仕事を天下り先が随意契約で受け、その天下り先がつくった子会社がその仕事を受け、またその子会社がなどという形で多くの税金がむだに使われていることが明らかになり、天下りに関する社会の認識も厳しさを増しています。天下りをなくしてほしい、これも国民の思いです。こうした状況にあって知事は、幹部職員の天下りについてどのようにお考えか、所見を伺います。
次に、八ッ場ダムについて伺います。
八ッ場ダムの建設中止を公約に掲げた民主党の総選挙勝利を受け、今、国民の目が八ッ場ダムに向けられています。そこで、八ッ場ダムの必要性について伺います。
まず、その治水の効果についてです。
そもそもの八ッ場ダムの計画は、昭和二十二年のカスリーン級の台風の再来に備えるため、利根川の上流に治水ダムをつくる、そういう必要があるということから始まりました。ところが、昨年六月の衆議院における政府の答弁書で、国交省は、カスリーン級の台風が再来した場合、利根川の洪水ピーク量は、八ッ場がある場合も、ない場合も同じで、八ッ場ダムによる治水効果はゼロであることを明らかにしています。
一方、国交省は、八ッ場ダムは二百年に一度の大雨に備えるため、どうしても必要だといっています。ダムがないと、東京だけで九十九万人、七十七平方キロメートルに及ぶ被害が発生し、その被害額は一兆三百四十四億円ふえるということです。もし、これがそのとおりであるなら、大変なことです。
しかし、私が伺った中では、それでは二百年間安心にするために、八ッ場ダム級のダムは、あと幾つあればいいのですかとの問いに対する明確な答えはないようです。国交省では、コンピューターで難しい計算をしているし、その道の専門家である学者の先生たちが検討して出した結果だから、予測に疑う余地はないとしています。であれば、あとどれだけダムをつくれば安心になるのか、示してほしいものです。
日本の公共事業は、つくりたい側の意思が働き、えてして過大に見積もられます。日本で最大級のダム計画にかかわる自治体として、治水におけるダムの必要性を、このような国交省任せにせず、みずからの責任において検証し、明らかにすべきと考えますが、いかがでしょうか。
次に、利水について申し上げます。
東京の水の需要は、この三十年間、右肩下がりです。八ッ場ダムが完成するといわれている平成二十七年には、都も人口減少の時代に入ります。しかし、都が作成している水の需要予測は古いデータに頼ったもので、右肩上がりに水の需要はふえ続け、水が足りないのでダムがもっと必要だというものです。
水の需要予測は、ダムの建設の是非を論じるに当たって大変基本となるデータです。私たちは、この間幾度となく、最新のデータに基づく水の需要予測を求めてきました。しかし局は、現時点では過去のデータとの乖離が認められない、予測を見直す必要はないとの一点張りです。今回もお尋ねしましたが、考えは変わらないということなので、答弁は求めませんが、これを機に、最新のデータに基づく需要予測を行い、ダムの必要性を示すべきと申し上げておきます。
次に、事業費について伺います。
事業費については、予定している四千六百億円のうち、既に三千二百億円も使っており、さらに、ここで中止をすれば、国は、都や県がこれまで負担している負担金を返還しなくてはいけないから、やめる方が余計にお金がかかる、だから続けた方がいいのではないかと主張する声があります。しかし、このまま工事を続けた場合、本当に四千六百億円で済むのでしょうか。
平成十三年、国交省は、八ッ場ダム事業の工期を十年間延長しました。そしてその三年後、事業費を二千百十億円から四千六百億円とはね上げました。さらに昨年、工期をまた五年延長しています。
建設工事などでは、工期が延びれば事業費も増加するということは常識であると聞きます。また、地すべりなどの危険箇所の対策に、当初予定していなかった費用が必要になってくるというようなことも明らかになっているようです。このまま工事を続ければ、事業費が再増額される可能性が大変強いかと思います。心配です。
さらに都は、負担金に対して、これまでどのような工事に幾ら使ったか、またどのような調査に幾ら使ったか、それぞれの道路の進捗状況はどれほどか、それらをしっかりと把握してきたのでしょうか。毎年、国交省から送られてくる請求書どおりに、その明細確認もせずに負担金を支払っていたということはないのでしょうか。
また、国交省任せに支払ってきた負担金を返還させる、させないは、あくまで国と自治体のお金のやりとりの問題であって、行政間で調整すればいい話です。事業をやめたら地方にお金を返すから余計お金がかかるというのはおかしな話で、国民のお財布には関係ない話です。
さきの総選挙での国民の願いは、必要のない公共事業で自然を破壊したり、税金のむだ遣いをすることをやめてほしいということなんです。
今後の事業費についても、新しい政府に情報の開示を求め、徹底的に検証すべきと思いますが、いかがでしょうか。
私は、八ッ場ダム事業を見直した場合、ダム中止後における地域の人々の生活再建は何にも優先して進めるべきだと考えています。
ダムの本体工事が中止になったからといって、やりかけている道路や鉄道のつけかえ工事も取りやめて、今のまま放置するというわけにはいきません。それについては、しっかりとやり遂げることが必要だと思います。しかし幸いなことに、ダムの本体工事にはまだ一ミリも取りかかっていません。今なら間に合います。
民主党は、八ッ場ダム建設の中止の公約に先立って、ダム事業の廃止等に伴う特定地域の振興に関する特別措置法案の骨子案を発表しています。
これは、ダム事業がないと、地域活性化も望めないという現状を改め、事業をやめても、その地域に住み続ける人が希望を持てるようにするための法案です。
今、地元地域の皆さんは、ダム事業の中止という新たなる不安に悩まされています。私は、事業が中止になった場合でも、このような法律に基づき、ダム計画により、手を入れることがずうっとできずにきて老朽化してしまった家屋などの新改築、生活再建のための物心両面の支援、衰退した地域の産業の再生、移転した方々を呼び戻すためのこれまで買収してきた土地の安価での譲渡など、地域へのさまざまな取り組みを、間を置かずに住民の皆さんとひざ詰めで話し合いながらなされなければならないと思っています。
そしてそれは、一度決めてしまったからといって、ないよりはあった方が安心だとか、情報の開示をそういうことで拒み続けてきた、また、社会の状況が変わっているとわかっているのに事業の再評価を怠って地元の人々を半世紀以上も苦しめてきた国、そして国に追従してきた下流都県が、しっかりと責任を持って進めていくべきものと考えています。
そこで伺います。鳩山次期総理は八ッ場ダム事業の見直しを表明しています。
笹本議員からも申し上げましたが、さきの総選挙での国民の意思を尊重し、都も、新しく発足する政府に協力して八ッ場ダム事業を見直して、あわせて地域住民の生活再建を速やかに進めていくべきと考えますが、知事の答弁を求めます。
私は、この八ッ場ダムの問題が、さまざまな苦難の道を強いられてきた住民の皆さんの思いを振り返り、そこに心を寄せ、これまでの日本の国の公共事業のあり方を反省し役所の仕事の仕方を問い直すものになること、これを願ってやみません。
以上で質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 花輪ともふみ議員の一般質問にお答えいたします。
都幹部職員の再就職についてでありますが、早期に退職の勧奨を受け、渡りを繰り返す国家の公務員とは違いまして、都の幹部職員は、定年またはその直前まで働いた後、監理団体等でその知識、経験を生かして活躍しております。
また、知事就任直後に監理団体の退職金を全廃するなど、不断の改革に取り組んでおりまして、都における再就職は、国の天下りとは大きく質的にも違っていると思います。
監理団体などにおいて業務を遂行するには都政にかかわる知識、経験が必要不可欠でありまして、退職後の都幹部の職員を活用することは、各団体の適切な運営に寄与すると考えております。
一方、いうまでもなく、公務員に対して都民、国民の厳しい目があることは承知しております。都幹部職員の再就職に関する透明性の向上など、正すべき点があれば直ちに正すよう常々厳命しております。
部課長級の再就職情報の公表についても、相手先の意向、相手先での役職等も勘案しながら検討するよう既に指示をしておりまして、今後とも必要な見直しは進めてまいります。
次いで、八ッ場ダム事業についてでありますが、八ッ場ダムの建設により利水と治水の恩恵を受ける関係都県はいうまでもなく、今では水没地の関係住民も一致団結して、一日も早いダムの完成とこれを前提とした生活再建を切望しております。
地元では、ダム事業は公共事業ではなく、失った五十数年の生活を取り戻す生活福祉事業ととらえております。ダム湖を中心とした新しい観光地づくりに取り組もうとしております。ダムを中止して生活再建だけを進めることは、こうした地域住民の心情を全く無視するものであると思います。
選挙の公約について申されますが、選挙というのは非常に複合的、重層的なものでありまして、特に今度の総選挙は、その一番のモーメントはエニシング・バット・自民党ということであったと思います。ゆえに民主党は大勝されたわけでしょうが、しかしその結果が、民主党の公約のすべてを国民が是としたことでは絶対ないと思います。
今すべきことは、関係都県によるこれまでの生活支援策を継続しながら、ダムを一日も早く完成させることである。ダムの事業の中止は全く考えておりません。
恐らくこの問題は、七割完成しているプロジェクトというものをこれからどうするか、かかった費用も膨大でありますが、私は、メディアを通じて国民の討論、批判の対象になり得るものと思っていますし結果がどうなるか予測し切れませんけれども、国民はこの問題についてごくごく妥当な世論というものを形成して結果を待つと思います。
他の質問については、関係局長から答弁いたします。
〔都市整備局長河島均君登壇〕
○都市整備局長(河島均君) 都営住宅及び八ッ場ダムに関する三点の質問にお答えいたします。
まず、都営住宅建てかえ時の福祉施設の整備についてでございますが、建てかえに当たって、老朽化した住宅を更新するとともに、地域のまちづくりに配慮しながら事業を進めることが重要でございます。
これまでも都営住宅建設に関連する地域開発要綱に基づき、地元区市と連携し、保育所、高齢者在宅サービスセンターなどの施設を整備しております。
また、建てかえで創出する用地につきましても、事業に支障のない範囲で、地元区市の要望を踏まえ関係局とも連携しながら、多様な主体による福祉施設の整備を支援しております。
今後とも、建てかえに合わせ、福祉施設の整備を積極的に支援することにより、地域のまちづくりに寄与してまいります。
次に、八ッ場ダムの治水面での必要性についてのご質問でございます。
都は、八ッ場ダムの建設に関する基本計画の策定や変更に際しまして、国から必要な資料の提供や説明を受け、その都度内容が妥当であることを確認しております。
なお、お話の中で、政府答弁書において、カスリーン台風が再来した場合、八ッ場ダムの治水効果はゼロであるとしているとのご指摘がございました。
これは、昭和二十二年のカスリーン台風の際にたまたま吾妻川の上流域における降雨が少なかったためでありますが、このことをもってこの流域に建設される八ッ場ダムの治水効果を否定することは、今後同程度の規模の台風が吾妻川流域に豪雨を降らせた場合における洪水発生の可能性に目をつぶることになります。
国におきましては、豪雨がどのように降るかあらかじめ特定できないことから、過去のさまざまな降雨パターンを用いて気象条件を踏まえた検討を行っておりまして、その結果、八ッ場ダムの治水効果はあるとの結論を得ております。
さらに、さきの東京地裁の判決におきましても、ダムの治水対策上の必要性が認められているところでございます。
最後に、八ッ場ダムの事業費についてでございますが、都は平成十六年に国との間で、コスト管理等に関する連絡協議会を設置いたしました。その後、国と一都五県へと拡大された同協議会の場におきまして、国から必要な資料の提供や説明を受け、コスト縮減について検討を行ってまいりました。
こうした取り組みにより、これまで橋梁の施工計画の見直しや仮排水トンネルの延長の縮小など、さまざまな工夫による工事費の圧縮が図られております。
今後とも、コスト管理の徹底に努めながら事業を推進するよう、引き続き国に強く求めてまいります。
〔総務局長中田清己君登壇〕
○総務局長(中田清己君) 監理団体等に関します二点のご質問にお答えします。
まず、監理団体と報告団体の区分けについてでございますが、監理団体は、都政の現場の一翼を担うなど行政を支援、補完する団体であり、一方、報告団体は、公益性があるため都からの出資等を行っているものの、都政との直接的な関係は薄く、みずからの経営責任のもと自主的な経営を行う団体でございます。
このため、監理団体に対しましては所管局のみならず総務局が全庁的な立場から指導監督を行う一方、報告団体に関しましては所管局が決算や職員数など運営状況に関する報告を受け、出資者等の立場から関与を行っております。
個々の団体の区分けに当たりましては、単に出資比率のみではなく、都政との関連性などを勘案し判断しております。また、状況の変化に応じまして、監理団体から報告団体、報告団体から監理団体、こういった区分けの変更も行っております。
次に、報告団体に関します情報開示の推進についてでございますが、報告団体は、先ほど述べましたように、公益性の観点から都からの出資等の必要性はあるものの、都政との直接的な関係は薄い団体でありまして、その情報公開に関しましては、みずからの経営責任における判断のもとで実施すべきものであると考えております。
このため、監理団体と同様に、都から報告団体へ契約情報の公開などを求めることは、報告団体の自主性を尊重する観点から適切ではなく、またその事業執行にも多大な影響を与えかねません。
一方、都が実施します都幹部職員の再就職情報の公表に関しましては、知事の答弁にありましたように、今後、相手先の意向、役職等も勘案しながら、透明性を一層向上させるべく適切に取り組んでまいります。
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