午後五時二十二分開議
○議長(田中良君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
質問を続行いたします。
四十九番笹本ひさし君。
〔四十九番笹本ひさし君登壇〕
○四十九番(笹本ひさし君) 当面する諸課題について質問いたします。
一部質問が重複もありますが、明快なご答弁を期待いたします。
初めに、ついせんだってのある地方選挙の街頭演説のさわりの部分をご紹介いたします。
きょうは雨の日ですが、まことにもって恵みの雨といえます。なぜならば、この宇宙空間、百三十七億年前にできたこの宇宙空間で、このように雨の降る星はありますか。ありません。いいかえると、水の惑星はこの美しい地球のみであります。したがって、これを面倒だというのは東京の人たちです。なぜかというと、東京には水も土も欠けている。それと比べると、静岡はどうでしょうか。富士山、日本一美しい霊峰富士山があります。そして南アルプスがある。そこから流れ下る安倍川、富士川、天竜川、これらの水ですばらしい緑の木立、果樹園が育ち、田畑が洗われ、命の水となって駿河湾、遠州灘に注いでいきます。それは栄養たっぷりな水です。そしてすばらしい漁場が豊穣と広がっています。
中略します。
東京の食料自給率はわずかに一%、いいかえると、九九%を他府県に依存しています。しかも、東京はコンクリートジャングルで、それをリサイクルすることができない。したがって、捨てている。捨てている量たるや、世界の飢えている人九億人に対して全世界が食料援助をしている三倍の量に及んでいます。このような東京から我々は脱却しなければなりません。それがこの静岡であります。
そして、以下続きます。これは現静岡県知事の川勝平太氏の演説の冒頭であります。
東京に暮らし、東京に生きる私たちにとっては少々耳の痛い部分はありますが、首都東京に暮らす我々が、この先もずっと子どもたち、さらに次の世代へとつないでいく責任と使命を重く受けとめ、都民の皆様に負託を受けた今こそ強く認識し、国民、都民の生活が第一を貫き、都政に真っすぐにひたむきに邁進をしなくてはなりません。
さて、質問に入ります。
初めに、都立墨東病院にかかわる周産期医療体制について質問をいたします。
平成二十年十月四日土曜日、江東区内のかかりつけ産婦人科医を受診した妊婦の転院搬送に関し、同医院等が都立墨東病院を含め八医療機関に受け入れ可否の連絡をするも、受け入れ困難となる事案が発生しました。その際、他の周産期医療センターに依頼する方が迅速かつ適切な処置ができると都立墨東病院は判断し、伝達するものの、すべての医療機関での受け入れも拒絶され、一時間後の再度の要請にて受け入れました。子どもは緊急帝王切開で無事出産するも、母親の妊婦は三日後に亡くなられました。
同様の事案が江東区の事案のわずか数日前にも調布市内でも発生していました。
東京都では、周産期医療協議会での集中的な検討を経て、スーパー総合周産期センターや周産期コーディネーターの設置など具体化し、つらい教訓が制度に反映されたことに、庁内周産期医療体制整備PTに評価と、安全で安心な医療体制の構築にさらなる期待をするものです。
思えば、昨年二月二十七日、墨田、江東、江戸川の三区の医師会長及び産婦人科医会長名にて、都立墨東病院並びに東京都病院経営本部に対して、城東地区における周産期についてと銘打った、難問が多い周産期医療を都民が安心できる体制との緊急要望が出されておりました。このとき、命の危険のある患者が出た場合を予見した緊急の要望書であっただけに、東部地区に暮らす都民としては、昨年の事案は残念でなりません。
そこで、改めて現況の墨東病院についてお伺いをいたします。
ERの一部として産婦人科のあり方と今後の見通し。
産婦人科常勤医師の人数について。平成十五年八人、平成十六年七名、十八年六名、十九年五名、平成二十年度には四名から三名になったと指摘されていました。そして昨年七月には、土日には当直体制が一名体制となっていました。数年にわたって減少しているにもかかわらず、産科非常勤医師の補充ができなかった最大の要因は何でしょうか。勤務時間や報酬など、処遇にこそ原因があったと推察をいたしますが、いかがでしょうか。
つけ加えますと、本年三月より、墨田、江東、江戸川の医師会の協力連携により、区東部二次保健医療圏における都立墨東病院を中心とした産科診療協力医師登録制度が始まりましたが、地域医療の連携に大いに期待をしたいと考えます。
ここで、先ほど触れましたが、東京都の周産期医療体制についてお伺いいたします。
少子化の時代とはいえ、都内では毎年十万人もの赤ちゃんが生まれています。私の住む江戸川区でも毎年七千人近くの赤ちゃんが生まれています。一方、低出生体重児の増加、母体合併症の状況など、昨年のような周産期の救命事案の起こる可能性はあると思います。
東京都は、昨年秋より東京都周産期医療協議会において集中審議を行い、既存の医療資源を有効に活用してさまざまな取り組みを始めたと理解をいたしております。猪瀬副知事を座長とするプロジェクトチームが結成され、提言もなされました。
昨年の事案の発生から一年がたちますが、東京都は新たにどのような取り組みを行い、周産期医療の充実に取り組んできたのかをお伺いいたします。
産科救急の最後のとりでになる周産期母子医療センターには、あらゆる事態を想定した、高度で多岐にわたる診療機能が備わっていることが望まれるのはいうまでもありません。極端な医師の不足している産科や、また小児科、経営面で採算が難しい救急医療、人員や施設整備の拡充は難しく、現実的には幅広い連携により周産期医療の弱点をカバーしなくてはなりません。命を守る最前線と強く意識をし、お伺いをするものです。
続きまして、特別養護老人ホームなど、介護基盤整備についてのご所見をお伺いします。
本年三月、群馬県渋川市の未届け高齢者施設の火災で入居者十名が犠牲になるという痛ましい事故が発生しました。その事故を教訓にすべきとの提言が社会評論家の安田千恵子氏から区部の区長、執行部に寄せられました。その内容を閲覧すると、傾聴すべき内容があり、その提言の趣旨をご紹介し、大都市特有の事情を抱えた東京区部での高齢者施策の一助になり得ると考え、質問いたします。
東京の高齢者が地方の高齢者施設に入所する最大の要因は、大量の高齢者が存在するにもかかわらず、国の政策、すなわち総量規制などによる高齢者施設や介護つき有料老人ホームなど特定施設入居者生活介護の制限や、在宅介護や地域介護が機能し得なかったことが最大の要因です。軽い認知症ならともかく、老老介護や認認介護など、二十四時間のつきっきり介護など、家族にも地域にもしょせん無理なのはわかっていたはずです。
地域の小規模多機能型居宅介護事業所も採算がとれず、資金力に乏しいNPO法人などが運営していくには余りにも収支バランスが厳しいのが現実です。地域包括支援センターも、介護保険でできるサービスを勧める程度で、根本的な問題解決には至っておりません。重症者には二十四時間のケアができる施設が必要なのに、区部などでは極端に不足し、入所することができないのが現実ではないでしょうか。
平成十九年の特別養護老人ホームの入所希望者数調査によれば、要介護四、五の人数は約七千三百人。老老介護など、在宅介護が困難な高齢者に強制をするから悲劇が起こるのではないでしょうか。このままでは国も自治体も悲劇を放置していることにはなりませんか。社会基盤である介護基盤の安全網の構築を、国や自治体が補助金をつけ民間に任せる方式では、おのずと限界が見えてきます。
東京の都心、特に区部の地価は高く、広大な用地の確保も容易ではありません。原則的には身近な地域で介護も受けられることがよいのはいうまでもありません。現実は、東京固有の事情を考えると困難な例も多いのは当然であります。そこで、郊外の用地に大都市の高齢者施設を整備し、都市が抱える介護事情の解消の一因にならないものかと考えるわけです。都心部には施設での専門的な介護が必要な要介護高齢者は大量にいらっしゃいますが、多くの方が施設への入所を希望しています。
施設整備の用地としては、公共用地、学校跡地の再利用にも期待はいたしますが、地価の高さ、利用できる土地にも制約があることなど、さまざまな事情で施設整備は容易ではありません。大都市の高齢者が地方の施設に入り、住民票を移すと、その地方の人たちの負担がふえるので、高齢者が嫌がられる一因にもなります。
現実的には、住所地特例により受け入れ地域の負担は発生はしませんが、地域介護や在宅介護の流れで、排除とはいわないまでも歓迎されないのが現状だと思います。勢い、事故を起こした未届けの高齢者施設に入居させざるを得ない現実に目を背けることはできません。
事故のあった未届け施設においては、生活保護対象者が入居していたという事実も、大都市の複雑な事情の一面をかいま見る思いです。都心に足りない、広くて安い土地や自然。地方に行けば土地も安く、自然もあります。今の介護報酬では十分な働き手の確保はすぐには期待できないかもしれませんが、雇用創出にも効果が期待できるかもしれません。大都市と地方が手を組み、多くの要介護高齢者のために貢献できないものかと考えます。都市と地方のパートナーシップ、公設民営の施設や高齢者介護分野の企業誘致、地方の雇用環境改善、医師不足の解消にも効果が期待できるのではないかと考えます。
つけ加えますが、水害や土砂崩れなどの自然災害には細心の注意が必要です。公がなすべきことは多いはずです。群馬県渋川市のような悲惨なケースを二度と繰り返してはなりません。喫緊急務の課題です。
そこで質問です。都内の未届け有料ホームの把握、管理、指導の現状についてお伺いします。
東京固有の事情により、都民のために都外の用地を活用して特別養護老人ホームの整備について検討する場合、具体的な障壁は何でしょうか。
都外に設置された特別養護老人ホームへ都民の方々が入所している状況についてどのように認識をしていますか。
あわせて、指導はどのように行われておりますか。
この質問の最後に、大都市東京の都心区のように用地の確保がそもそも困難な場合、今後もふえ続ける要介護高齢者に備え、都は介護基盤の整備をどのように促進していくつもりでしょうか、ご見解を伺います。
続きまして、直轄事業の東京都負担金の国に対する返還請求についてお伺いをします。
このたびの衆議院選挙の民主党のマニフェスト、政権公約の五つの原則の第一に、国の総予算の徹底効率化、不要で急を要さない事業の根絶を掲げました。川辺川ダムや八ッ場ダムの中止を掲げたマニフェストは、国民の皆様の圧倒的なご支持をいただきました。
いうまでもなく、マニフェストは有権者との契約、すなわち約束であります。約束である公約は実行されなければなりません。かつて、公約を守らないぐらいのことは大したことではないと明言をした首相がいましたが、政権交代が国民の意思で具現化され、民主主義の精神である国民主権の政治が貫かれた今では、そのような言葉はしょせん通用するわけはありません。
さて、全面的な見直しの対象である国の大型直轄事業である八ッ場ダムの建設中止の場合、知事は、東京都負担金の既に支払い済みの四百五十七億円を返還請求するつもりとのご発言をされております。特定多目的ダムを根拠とされてのご発言とは思いますが、そのとおりで変更はございませんでしょうか。
昨日、知事は、都議選は衆議院選挙の前哨戦に位置づけられ、国政の影響を受けたとのご発言がありました。しかしながら、都議選の直後の衆議院選挙のマニフェストにおいても、八ッ場ダムの中止を掲げ、都議選を上回る国民の皆様からのご支持をいただき、政権交代が起こりました。政権を選択された国民の皆様とのそごはお感じになりませんか。それとも、しょせん専門的な知見や情報を持ち得ない国民世論には、新銀行や築地移転同様に、判断は難しいとお考えでしょうか。私は、国民、都民の皆様が納得できるすべての情報公開をすべきだと考えます。
以上で質問を終わります。(拍手)
〔病院経営本部長中井敬三君登壇〕
○病院経営本部長(中井敬三君) 笹本ひさし議員の一般質問にお答えいたします。
墨東病院の産科医師が数年にわたり補充できなかった主な要因についてでありますが、産科医については、墨東病院に限らず、全国的な不足状況にあります。その要因としては、分娩に伴う昼夜を問わない過酷な勤務状況や、訴訟リスクが高いといったことが挙げられますが、これに加え、平成十六年度から導入された医師臨床研修制度を契機に、派遣元である大学医局への入局者が減少し、新たに産科医師を派遣できるだけの余裕がなくなったことがこの不足に拍車をかけたと考えられます。
こうした中で、都は、都立病院の厳しい勤務に見合う処遇改善や、増加する女性医師のための育児短時間勤務制度の導入、あるいは院内保育室の二十四時間化などの勤務環境の整備を行うなど、総合的、重層的な医師確保定着対策に全国に先駆けて取り組んでまいりました。この結果、墨東病院産科の常勤医師は、昨年九月の三名から現在七名に増加しております。これに加えて、地域の医師会との連携も始まり、現在は安定的な診療体制が確保されている状況にあります。
なお、都立病院全体の常勤産科医師数についても、昨年の九月の十九名から現在は二十六名と、約四割の増加となっております。
〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕
○福祉保健局長(安藤立美君) 五点についてお答え申し上げます。
まず、周産期医療についてでありますが、都は本年三月、救命処置が必要な重症妊産婦を必ず受け入れる、いわゆるスーパー総合周産期センターを三カ所確保し、これまでに十九件の母体救命に対応し、成果を上げております。
また、ミドルリスクの妊産婦に対して緊急診療を行う八カ所の周産期連携病院を整備いたしました。
これらの取り組みを効果的に機能させるため、都内全域を対象に妊産婦や新生児の救急搬送を調整する周産期搬送コーディネーターを先月末に東京消防庁指令室に配置いたしました。
こうした重層的な取り組みにより、周産期医療の充実を着実に進めております。
続いて、未届け有料老人ホームの把握等についてでありますが、都は、高齢者施設での火災事故を踏まえ、都内の未届け施設に対し、関係機関と連携して届け出指導を行ってきた結果、本年八月末までに六件の届け出がございました。今回新たに社会福祉士や消防署員、区市の建築指導担当職員等から成る緊急対策チームを適宜編成し、施設設備やサービス提供の実態を調査するとともに、届け出促進に向けた指導を強力に行っております。
また、未届け施設の情報の共有化等を図るため、東京消防庁や区市と連絡協議会を設置するなど、今後とも関係者間で連携しながら指導を徹底してまいります。
次いで、他県における都民専用の特別養護老人ホームの整備についてでありますが、特別養護老人ホームの運営基準において、施設は正当な理由なくサービスの提供を拒んではならないとされており、利用者を特定した特別養護老人ホームを設置することは認められておりません。都民専用の施設の設置はこの運営基準に抵触するとされており、困難でございます。
次に、他県にある特別養護老人ホームの都民の入所状況や指導についてでありますが、入所状況につきましては、保険者である区市町村が住所地特例の管理事務として把握をしております。
また、施設に対する指導については、介護保険法に基づき、当該施設が所在する都道府県が行っております。
最後に、介護サービス基盤の整備についてでありますが、都では、介護サービス基盤整備のため、未利用の都有地の減額貸付を行うとともに、区市町村みずからが学校跡地などを事業者に貸し付けた上で独自に整備費を補助した場合は、包括補助事業による補助を行うなど、区市町村有地の活用を促しております。
さらに、平成二十年度から、特別養護老人ホーム等について、高齢者人口に比べ整備状況が十分でない地域の補助単価を最高一・五倍に加算するなど、地域バランスを勘案しながら整備の促進に努めているところであります。
〔都市整備局長河島均君登壇〕
○都市整備局長(河島均君) 八ッ場ダムの建設費負担金についてのご質問にお答えいたします。
八ッ場ダムは、特定多目的ダム法に基づきまして、流域の一都五県の合意のもと、国により建設が進められております。関係都県の知事が事業継続の意見を表明しているにもかかわらず、国の方針としてダムを中止する場合には、国は法に基づき建設費負担金を返還することとなっております。
仮に事業が中止されるような場合には、都民に損害を与えないよう、国に納付額の返還を請求することは、法的にも至極当然のことでございます。
八ッ場ダムは関係都県のすべてが必要不可欠としている施設であり、都としても、国に対し事業の継続と早期完成を強く求めてまいります。
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