○副議長(鈴木貫太郎君) 三十四番滝沢景一君。
〔三十四番滝沢景一君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕
○三十四番(滝沢景一君) それでは、一般質問を始めさせていただきたいと思います。
まず初めに、高齢者介護についてお伺いいたします。
首都圏、特に東京都の高齢化は極めて急速に進みつつありますので、都民が安心して暮らしていくために、医療と介護の環境を整えることは必須のことであります。
医療や介護は、人が人を支えることによって成り立つ究極のマンパワー産業であり、多様な雇用の場が提供される環境からも、公的資源の投入に値する重要な分野、成長産業でもあります。
片や、医療や介護の問題といった場合、治療や介護が必要な家族を抱え、就業継続の断念を余儀なくされ、経済的負担に耐え切れず、生活保護あるいは虐待、自殺といった負の連鎖が顕在化しているのが今の社会であります。
いま一度、生活者視点の原点に立ち返り、五つの視点から都政の果たすべく役割について明らかにしていきたいと思います。
まず一点目、東京都の独自性を踏まえた支援、援助についてであります。
介護保険制度は、介護保険法に基づき、基礎自治体が保険者となって、半分は税金を投入しての事業運営である以上、公平公正の観点から、全国同一の基準で運営されることは当然のことでありますが、一方で、現場を抱える保険者は、被保険者の実情を十分把握し、独自の工夫をもって地域に見合った運営を行うことも必要であります。
法では、都道府県の役割を、サービス事業者の指定、指導監督を初め、保険者による保険事業運営が健全かつ円滑に行われるよう、必要な助言及び適切な援助を行うものとされています。
私は、この点について、特に東京都の場合、他の道府県とは違った、首都としての高度成長期に極めて特異な都市開発が進められた広域自治体として、独自の支援、援助のあり方があってしかるべきだと考えております。
介護保険制度が創設されて十年目、これまでの経過を見ると、サービス提供者は民間でという制度設計に従い、介護サービスは基本的に民間事業者が直接担う形で発展してきました。しかし、幾度かの制度改正を経て、この重要な担い手であるサービス事業者は、一定規模以上の大事業者でしか生き残ることができないという実態があるのも事実であります。
東京都は、極めて狭いエリアの中に高齢者が密度高く存在し、基礎自治体も多くは極めて面積的に小規模であり、多数の保険者がそれぞれに制度運営を担っています。一方、道路交通、公共交通網が整備されている中、多くのサービス事業者は複数の保険者のエリアをまたいでサービス提供を行っています。
居宅介護支援においても、介護保険外のさまざまな福祉資源を含めたサービスが各地域ごとに展開される地域事情に精通していて、そういう保険外のサービスの補完的な活用を前提にしたケアプランづくりを行うことが、サービスを受ける側にとっても、新たな雇用創出にとっても、都市型超高齢社会におけるコミュニティ醸成という面からも望ましいといえます。
全国レベルで事業展開する大規模事業者に席巻されるような形ではなく、ごく限定されたエリアで質の高い、特色のあるサービス提供ができる市民企業型サービス事業者の育成にも力を入れることが、東京の介護環境向上のために望ましいと考えます。
そこで、大規模事業者だけでなく、限定的なエリアで質の高い、特色のあるサービス提供ができる小規模な事業者の育成にも力を入れるべきと考えますが、見解を伺います。
二点目は、介護事業者の円滑なサービス提供を支援する配慮であります。
まず、幾つかの点について現状確認をしたいと思います。
個々の介護従事者の処遇改善も重要でありますが、介護サービス事業者がサービスの質を向上していく上でネックになっている課題は多くあります。その代表的な例を挙げれば、一つにはサービス提供時における事業車両の駐車場の問題であり、もう一つは法令や運営基準に付随する事務コストの問題であります。
まず、駐車場問題でありますが、平成十八年に行われた道路交通法の一部改正以降、駐車車両に対する取り締まりが厳しくなったことから、居宅介護支援や訪問介護など、訪問系介護事業者から悲鳴が上がっているとのことを仄聞しています。訪問介護に伴う駐車許可については、地元警察署に申請を行うことになっていますが、定期的な訪問時については一定の配慮がなされるようになったとの一方で、一部の警察署においては緊急時の例外的な対応に違いがあるなど、サービス事業者にとっては極めて切実な問題であるとも聞いています。
訪問系介護事業者だけを特別扱いできないということはあるかと思いますが、利用者から緊急の呼び出しの対応など命にかかわるケースもあり、訪問介護事業者の人道的使命ということをかんがみても、ぜひこの点について柔軟な対応に努めていただくよう要望いたします。
次に、事務コストの問題でありますが、介護サービス事業者に、サービス内容や運営状況に関する情報の公表が義務づけられているところであります。このため、経費負担は小規模事業者にとっては非常に重いものになっています。
このことに象徴されますように、サービス提供そのものではなく、付随する義務的な事務作業に多大な負担がかかることが、地域に寄り添って満足度の高いサービスを提供したいという良心的な個人事業者、市民事業者を結果的に淘汰してしまう事態となっています。
そこで、付随する義務的な事務に対する財政的な支援ないし事務の見直しが必要と考えますが、見解をお伺いいたします。
三点目は、特別養護老人ホーム等の広域型施設の整備についてであります。
先般の群馬県渋川市における高齢者施設の火災で、介護を要する高齢者、特に低所得者や単身者のための施設の絶対的不足が改めてクローズアップされました。ことし三月に策定された東京都高齢者保健福祉計画によれば、都内特養入所希望者数は三万八千人とのことであり、施設整備の緊急性、重要性は明らかであります。
東京都においても、要介護高齢者の入所施設を中心に、介護基盤整備促進を自治体に対して強く働きかけていると聞いていますが、広域型の特別養護老人ホームや介護老人保健施設の整備については、広城自治体としての責任において東京都が主導的に進めるべきと考えますが、お答えください。
四点目には、地域密着型サービスヘの支援であります。
各自治体で進めるべき地域密着型サービスについても、特に今後の在宅介護支援において重要な役割を果たすと期待されている小規模多機能型居宅介護事業所については、既存の介護報酬、運営基準等の枠組みの中での単独での事業展開は極めて困難であり、計画的な整備が進まない状態にあります。
保険者独自の報酬設定や支援という選択肢はあるにせよ、各自治体とも財政的な支援を継続的に実施することは非常に困難な状況にあります。現場からは、イニシアルコストの支援よりランニングコストの支援が必要だという声が聞かれます。
小規模多機能型居宅介護事業者は、既存の民家の活用によるサービス提供も可能であり、用地確保や費用負担の面で困難性が高い入居施設よりも整備が容易であり、適切に整備されていれば、比較的介護度の低い施設入居希望者数を減らしていくことも可能になります。
そこで、小規模多機能型居宅介護事業者へのランニングコストヘの財政的支援の必要性についてお答えください。
さらに、現在の雇用状況の中で、緊急雇用対策として離職者に対する職業訓練が行われており、その一環として介護労働者への就業を目的とする職業訓練がある。確かに、現在の介護福祉現場は、とりわけ民間を中心に人手不足の状況であり、他業界からの雇用シフトについては促進すべきである。
しかし、現在の介護福祉労働者の雇用は極めて不安定であり、安定的な継続雇用が行われていないのが現状です。その実態は、非正規化と低賃金化が進み、この結果、離職者が絶えず、さらには労働条件が悪化するという悪循環の状況になっています。
現在の介護保険施設などにおける介護職員の雇用環境は不安定な状況にあるため、今後、より安定的かつ継続した雇用の改善が望まれます。そこで、介護保険施設など現場で働く介護職員の離職防止や安定促進に向けた都の取り組みについて伺います。
五点目は、医療と介護の連携強化のため、東京都の主導的役割であります。
今後、特に重要となると考えられる医療と介護の連携、機能強化について触れておきます。
要介護認定を受けるまでのプロセスとして、必ずしも徐々に老化が進んでということではなく、年齢にかかわらず元気で生活をしていて、介護とは無縁と思っていた方が、突然、脳血管障害であったり転倒による骨折であったりということで、まず入院し、何の準備もないままに退院しなければならなくなり、大きな不安、不便を抱えて在宅介護生活に入るというケースが多く見受けられます。
特に、脳血管障害のように退院後もリハビリテーションが必要であったり、末期がんのように在宅介護であっても医療的なケアが必要であったり、医療と介護のサービスが切れ目なく提供されることが求められています。また、高齢者の介護の問題では、認知症への対応も極めて重要な問題であり、介護という視点から、医療関係者の理解の度合いが今後の環境整備を左右するといえます。
高齢者医療に深い理解をお持ちの医療関係者が既に各地域で介護の分野でご尽力されていることは承知しておりますが、一方で、まだまだ理解が十分ではなく、ケアマネジャーが現場で大変な苦労をしているとも聞いております。
医療と介護の密接不可分な関係性を十分に踏まえ、医療関係者が介護保険制度の基本的な仕組みを理解し、円滑な連携が図られるため、東京都として今後どのように取り組んでいくのか、高齢者介護の質問をこれで最後にしたいと思います。
次に、小児地域医療についてお伺いいたします。
都議会民主党は、地域住民の生命、安全を守り、そして責任を持つ立場から、八王子小児病院、清瀬の小児病院、梅ケ丘病院の府中への移転及び統合に当たっては、小児地域医療が確保されることが確認されなければ、この間、三つの病院を存続されるべきと主張をしています。一方、地域における小児医療体制の維持、充実から、小児病院の存続の必要性を求めている住民のいることも承知しております。
また、八王子市としては、平成十三年十二月、都立病院改革マスタープランを基点とした一連の計画の流れ、小児総合医療センターの工事着工、小児病院跡地利用といったさらなる地域医療への取り組み環境へと努力されていることも承知しています。しかし、八王子市民を初め、八王子小児病院を必要としている人たちにとっては大変重要な問題でもあります。
まず、現状についてお聞きしたいと思いますけれども、八王子小児病院移転後、地元自治体が取り組む小児地域医療への対応を例に、これは清瀬の小児病院移転後の清瀬市にもいえると思いますけれども、東京都の役割、責任を明らかにされていません。
移転の前提として、さきに述べたように、移転後の地域における小児医療体制の継続、さらには充実していくことが、地元自治体の課題として残されました。いいかえれば、移転後、小児地域医療体制が後退するようなことがあれば、八王子小児病院は存続されなければならないということであります。
行政においては、福祉保健局、病院経営本部、そして八王子市を構成員とする八王子地域における小児医療に関する協議会を設置し、平成二十年九月、八王子地域における小児医療体制についてを取りまとめました。この協議会のまとめには、小児医療体制の確保、充実に向けた基本的な方向性が示されています。
八王子小児病院が担ってきた入院医療については、市内の大学病院である二つの中核病院が受け入れることとしておりますので、小児病床数の拡充が要請されてきます。また、中核病院が移転後の二次医療すべての受け皿になることを考えた場合、入院の必要な救急患者用の病床確保や感染症患者用の個室化などへの対応が中核病院に求められてきます。 八王子小児病院が診てきた患者を中核病院で円滑に受け入れる医療体制が構築されるために、東京都はどのような支援を実行していくのか、お答えください。
国においてNICUの整備目標を引き上げていくことにより、都は、今後さらなる整備を進めていくことになりました。八王子小児病院はNICU九床を設置しておりましたが、中核病院においてNICUを整備する場合、どのような支援策が予定されているのか、お答えください。
次に、八王子小児病院跡地整備への財政支援についてお伺いいたします。
八王子市は、病院の跡地、施設を活用し、小児医療、障害児、障害者の療育事業を展開し、移転後の医療体制を確保する計画を立てています。
八王子小児病院の建物譲渡に対し、地域医療を後退させないという趣旨からすれば、本来的には無償譲渡が望ましいと考えますが、どのような配慮がなされているのか、お答えいただきたいと思います。
また、既存の施設について、解体や大幅な改修が必要とされ、その上新たな医療機器を整備というように、地元には大きな財政負担がかかってきます。このため、財政問題は福祉保健局で協議されているとお聞きしますが、現実は既存制度の枠の中での議論にとまっているようです。しかし、八王子小児病院の移転は、八王子市に新たな地域医療政策を求める特殊事情でもあることを考慮すれば、既存制度に加え、新たな制度が必要と考えておりますが、お答えいただきたいと思います。
長年培ってきた八王子小児病院の実績や地域での小児医療の果たしてきた役割は、とてつもなく大きいものです。ぜひとも八王子小児病院と清瀬、梅ケ丘を継続し、地域の小児医療を担うとして、府中との連携により広域的な対応を構築してこそ、三多摩の医療が前進したと思いますけれども、東京都の考え方をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)
〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕
○福祉保健局長(安藤立美君) 滝沢景一議員の一般質問にお答えをいたします。
まず、高齢者介護に関する六点についてお答えをいたします。
最初に、介護サービス事業者の育成についてでありますが、都は、小規模な事業者が事業を安定的に継続することができるよう、人材の確保、育成を支援するため、職員の資格取得の取り組みに対する支援や、訪問介護事業所のサービス提供責任者に対する研修などを実施しております。
今後とも、小規模な事業者を含め、介護事業者が質の高いサービスを提供できるよう支援をしてまいります。
次に、介護サービス事業者の負担軽減についてでありますが、介護サービス事業者の事務負担について、昨年度、国により事務手続や書類を削減、簡素化する見直しが行われ、負担軽減が図られております。また、都では今年度、介護サービス情報の公表制度にかかわる手数料額を四万七百円から二万六千三百円に引き下げ、事業者の負担を大幅に軽減いたしました。
今後とも、国に対し事業者の負担軽減を図るよう改善を求めてまいります。
次に、介護サービス基盤の整備についてでありますが、都は、特別養護老人ホームなどの整備について、保険者である区市町村が地域の介護ニーズを踏まえて算定したサービス見込み量に基づき、計画的な基盤整備に努めております。また、整備に当たりましては、平成二十年度から、高齢者人口に比べ整備状況が十分でない地域の補助単価を最高一・五倍に加算するなど、多様な手法を活用しながら着実な介護基盤の整備に努めているところであります。
次に、小規模多機能型居宅介護事業所に対する支援についてでありますが、地域密着型サービスである小規模多機能型居宅介護事業所につきましては、区市町村が地域の実情に応じ、独自の高い介護報酬の設定が行える仕組みとなっております。また、今年度の介護報酬改定により、事業開始後一定の期間、登録者数が定員の八割に満たない事業所に対し、事業開始時支援加算制度が創設をされました。
このように、小規模多機能型居宅介護事業所に対する介護報酬額については一定の改善が図られており、都独自の運営費補助は考えておりません。
次に、介護職員の離職防止や定着促進に向けた取り組みについてでありますが、介護人材の確保等については、既に本年度、特別養護老人ホームなどの施設を対象として、求人、採用活動経費、職員の資格取得経費などについても補助を実施しております。さらに、経営コンサルタントを活用した雇用管理の改善策の検討や、職員の負担軽減を目的とした福祉機器の導入などにより、介護人材の定着促進に取り組む事業者を支援しているところであります。
次いで、医療関係者の介護保険制度に対する理解の促進についてでありますが、都では、介護保険制度における要介護認定に必要な意見書を作成する主治医に対し研修を実施しており、平成二十年度は千八十人が受講しております。また、病院スタッフと在宅療養生活を支える医師や訪問看護師、ケアマネジャー等が顔の見える連携づくりに取り組むモデル事業を今年度四カ所で行うこととしております。今後とも、これらの取り組みを通じて医療と介護の連携を図ってまいります。
次に、医療に関しまして、八王子地域の小児医療についてであります。
八王子小児病院移転後の小児医療の中核を担う東海大学八王子病院及び東京医科大学八王子医療センターにおいて、それぞれ六床、計十二の小児病床を新たに確保できる見込みとなっております。都においては、両中核病院が小児の休日・全夜間診療事業の参画医療機関でありますことから、この設備整備に対する補助を予定しております。
次に、NICUの整備についてでありますが、八王子地域における小児医療に関する協議会のまとめでは、NICUを整備することにつきまして、八王子市は両中核病院と検討を行っていくとともに、将来的に両中核病院がNICUを整備する際には、八王子市と東京都が必要な支援を行うこととしております。
今後、両中核病院が周産期母子医療センターとしてNICUを整備する際には、必要な支援を行ってまいります。
最後に、八王子小児病院移転後の地域の小児医療体制の確保についてでありますが、都は、両中核病院における小児医療部門の整備に対する支援に加えまして、今年度、小児科医師数が少ない多摩地域などを対象として、小児の二次救急医療に参画する医療機関や、この医療機関などへ医師を派遣する大学を支援いたします小児医療体制緊急強化事業に取り組むこととしているところでございます。
〔病院経営本部長中井敬三君登壇〕
○病院経営本部長(中井敬三君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、八王子小児病院の土地及び建物についてでありますが、平成二十年九月の八王子市との協議会のまとめにおいて、市が事業を実施するに当たって、都は支援を行うこととしております。しかしながら一方で、病院会計は地方公営企業法において、常に企業の経済性を発揮するという基本原則が課されております。いずれにいたしましても、引き続き市と精力的に協議をし、結論を出してまいりたいと思います。
次に、小児三病院の継続についてでありますが、今日、小児科、新生児科、産科などの医師は極めて深刻な不足状況にあります。また、看護師も全国的、慢性的に不足しております。このような中では、初期、二次、三次医療の役割発揮と互いの連携により、限られた医療資源を最大限に有効活用することが不可欠でございます。こうした考えに基づき、小児病院を移転統合して小児総合医療センターを整備し、多摩地域の小児救命救急や周産期医療等の一層の充実を図ることとしております。
小児病院の転出に当たっては、当該地域の小児医療体制を確保することが非常に重要であり、これまでも、小児科医の増員、小児病棟の開設や小児病床の確保、初期救急医療の充実など、さまざまな対策を講じてきております。
今後も、地元自治体や医師会などと連携しながら、小児病院が転出する地域の小児医療体制の確保等に努め、地域の方々が安心して医療を受けられる体制整備に全力で取り組んでまいります。
Copyright © 1999
Tokyo Metropolitan Assembly All Rights Reserved.