平成二十一年東京都議会会議録第十四号

○議長(田中良君) 四十六番高橋かずみ君。
   〔四十六番高橋かずみ君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○四十六番(高橋かずみ君) 当面する都政の課題について質問をいたします。都知事及び技監並びに関係局長の誠意あるご答弁をお願いいたします。
 まず最初に、東京外かく環状道路の整備推進についてお尋ねいたします。
 東京外かく環状道路について、昨日の我が党の代表質問では、国家戦略及び首都圏の諸課題の観点からお尋ねし、事業推進に向けた答弁をいただきましたが、私からは、地元の状況も踏まえた質問をいたします。
 さて、去る九月七日に、私の地元、練馬区議会の超党派による外かく環状道路建設促進議員連盟主催の外環整備促進大会が、多くの地域住民が参加して開催され、地元においても早期整備への機運が高まっております。
 練馬区西部地域は、都市計画道路の整備が極めておくれている上に、首都高に接続していない関越道と外環の二つのインターチェンジから、一日に合わせて約八万台の車両が出入りしております。このため、当地域の幹線道路の交通渋滞や生活道路の交通安全性の低下が地域にとって喫緊の課題となっており、その解消が地域住民の切なる思いとして大会でも訴えられております。
 既に韓国のソウルでは環状道路が完成しておりますが、中国においても、九月十二日に北京の五環状道路が全線開通したというニュースが飛び込んできております。中国建国六十周年に当たる本年、国威の宣揚の象徴的な開通記念式典が挙行されたと聞いております。
 これに対し、我が国では、三環状道路の整備率はいまだ約四四%であり、首都圏の環状道路整備の面で、大きく韓国や中国に水をあけられているのが現状であります。
 四十年間凍結され、いよいよ事業化された地域住民の悲願である外環について、改めて今後の事業推進に向けた知事の不退転の決意をお伺いいたします。
 次に、地域課題に対する対応の方針についてお伺いいたします。
 外環の整備に当たっては、大深度地下方式による地下構造を基本としておりますが、既設の高速道路との連結部であるジャンクションやインターチェンジを設置する地域においては、地下への出入り口や周辺のまちづくりが大きな課題になっております。
 そこで、国と都では、これらの地域で開催した地域課題検討会などで沿線住民から寄せられた意見や要望に対する取り組みを、対応の方針として四月に取りまとめております。
 外環事業を円滑に進めるためには、ジャンクションなどが設置される地域におけるさまざまな意見や課題に対して、対応の方針を着実に実行することが重要であります。
 都として、対応の方針の実行に向けてどのように取り組むのか、お伺いいたします。
 次に、連続立体交差事業についてお尋ねいたします。
 都内にある数多くの踏切は、交通渋滞や市街地の分断による都市の活力低下の要因となっております。連続立体交差化は、数多くの踏切を同時に除却する極めて効果的な事業であり、私は本事業の積極的な推進を求めてまいりました。
 昨日、我が党の代表質問に対して、事業中の七路線八カ所のうち、JR中央線三鷹駅から国分寺駅間の高架化を本年十二月に完成させ、この区間の踏切すべてを除却するとの答弁がありました。このことは、地域住民の長年の悲願がかなうことであり、実に喜ばしいことであります。この区間に引き続き、その他の箇所についても、一日も早い踏切解消に向けた事業の推進が必要であります。
 そこで、現在事業中の連続立体交差化の取り組みについてお伺いいたします。
 都内を運行する鉄道の中でも、西武新宿線や池袋線は、あかずの踏切が最も多く、連続立体交差化が急がれる路線であります。練馬区では、西武池袋線練馬高野台駅から大泉学園駅間の整備が進められております。とりわけ石神井公園駅付近では、高架橋もほぼでき上がり、地元も、踏切がなくなるときを心待ちにしております。
 そこで、この区間の進捗状況と今後の取り組みについてお伺いいたします。
 また、西武新宿線の井荻駅から東伏見駅付近については、連続立体交差化の事業候補区間として検討が進められていると伺っております。上石神井駅周辺を初め沿線の地域では、まちづくりの取り組み意欲が高く、踏切解消に地元住民は大きな期待を寄せております。この区間についても連続立体交差化を早期に実現されるよう、強く要望しておきます。
 次に、都市の緑の保全についてお尋ねいたします。
 都では、さきに公表された東京の都市づくりビジョンにおいて、より一層環境や緑を重視する方向性を明らかにいたしました。二〇一六年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を目指している現在、東京の緑をふやし、低炭素社会を構築するためにも、まさにこうした視点が重要であります。
 二十三区内でも特に練馬区では、貴重な緑を守っていくため、みどり30推進計画を策定し、緑で覆われる割合、すなわち緑被率を三〇%にふやす取り組みを推進しているほか、世田谷区においても同様に、緑の確保に向けた施策が強化されていると聞いております。こうした取り組みは、これからの東京のまちづくりにとって大いに期待されているところであります。
 しかしながら、都全域に目を転ずると、農地や樹林地など今もなお減少しており、都の取り組みは十分であったとはいえないのであります。
 本年の予算特別委員会では、我が党の質問に対して、都は、既存の緑を保全するために、区市町村と合同で、緑確保の総合的な方針の策定に積極的に取り組むとしております。
 そこで、この方針は現在どのような方向で検討が進んでいるのか、お伺いいたします。
 また、こうした既存の緑を保全するにしても、大半が民有地であることを考えると、樹林地等の所有者の理解と協力を得なければなりません。しかし、樹木の剪定や落ち葉の清掃などの維持管理が十分に行えないという問題ばかりでなく、一本の保護樹木の保全には、地上部の枝張りや地下部の根の広がりを考えると、三十から五十坪の土地について、土地所有者は固定資産税や都市計画税を負担しなければならないという課題が生じております。このような状況では、所有者の理解は広がりません。
 今後、所有者に対するさまざまな負担軽減策が必要でありますが、まず、維持管理などの観点からはどう取り組んでいくのか、お伺いいたします。
 また、所有者が緑を保全していくためには税の軽減も必要だと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 最後に、都市農業の振興についてお尋ねいたします。
 現在、日本の農政は、食料自給率の向上に向けた農業生産の強化が喫緊の課題となっております。このたびの衆議院議員選挙で第一党となった民主党は、この課題に対し、農家の経営規模にかかわらず、米、麦、大豆等を生産、販売している農家に、販売価格と生産費の差額を基本とする所得補償を行う農業者戸別所得補償制度を創設することとしておりますが、具体的な内容がわからず、農家は不安を感じております。
 また、諸外国との自由貿易協定を促進する政策については、我が国の農業へ壊滅的な影響を与えるとの農業団体からの反論により、マニフェストを変更しましたが、いまだに、食の安全、安定供給、食料自給率の向上、国内農業、農村の振興と両立できるとは考えられないとの批判があります。
 さらに、相続税についても、遺産課税方式を検討することとしておりますが、農業団体では、この方式が課税強化につながり、相続税を支払うために今以上に農地を処分せざるを得ず、事業承継ができなくなるのではないかと懸念しております。
 私は、日本各地で熱心に経営に工夫を加え農業生産に取り組んでいる農業者の方々の意欲を大切にし、将来の日本農業発展の礎となる政策を考えるべきだと思います。
 我が都議会自民党は、平成十五年に東京都議会自由民主党都市農政を考える議員連盟を結成し、東京の農業団体や農業者の方々と意見交換を重ねるとともに、将来の夢を折に触れお聞きしてまいりました。そして、農地の相続税、農家の担い手、市街化区域内の農地保全などの課題に対し、多くの政策提言を行ってまいりました。
 東京都も、このような我が党の提言を真摯に受けとめ、施策を構築し、東京の農業振興に取り組んでおり、その成果として、農地と担い手のマッチングや都庁内の局横断的な農地保全への取り組みが進んでおります。
 そこで、都市農業の発展に向けたこれまでの都の取り組み、そして、今後どのように都市農業の振興に取り組んでいくのか、お伺いいたします。
 これで私の一般質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 高橋かずみ議員の一般質問にお答えいたします。
 外環道についてでありますが、外環道は、東京から全国に延びる高速道路をつなぐハブの役割を担う環状道路でありまして、費用対便益が全国でもトップレベルの道路であります。
 ちなみに、 そのコスト・アンド・ベネフィットの指数は二・九という、予定されているプロジェクトでは最高のものでありますが、四十年余りの間、計画を放置してきたことによって失われたものは、はかり知れないと思います。
 国が平成十三年に凍結解除してから八年余り、このたびようやく事業化をさせ、東京の弱点克服と国家的経済ロスの解消に向けて一歩一歩着実に前進はしております。
 新政権においても、事業中の外環道のこうした国家的役割と環境改善の効果を十分に認識して、国として安定的な財源確保と早期完成を目指し、事業の推進を図るように、これからも強く求めてまいります。
 他の質問については、技監並びに関係局長から答弁します。
   〔東京都技監道家孝行君登壇〕

○東京都技監(道家孝行君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、現在事業中の連続立体交差化の取り組みについてでございます。
 連続立体交差事業は、数多くの踏切を同時に除却することにより、交通渋滞や地域分断を解消し、地域の活性化にも資する極めて効果の高い事業であります。
 これまで、東急目黒線など三十三カ所で事業を実施してきておりまして、二百九十八カ所の踏切を除却してまいりました。
 現在、七路線八カ所で整備を進めており、平成二十七年度までにさらに百八カ所の踏切を除却する予定でございます。
 JR中央線では本年十二月に十三カ所の踏切を除却し、京浜急行本線・空港線では平成二十二年春に上り線全区間を高架化するなど、事業の推進に積極的に取り組んでおります。
 今後とも、必要な財源確保に努めるとともに、地元区市や鉄道事業者と連携し、連続立体交差事業を一層推進してまいります。
 次に、西武池袋線練馬高野台駅から大泉学園駅間の進捗状況と今後の取り組みについてでございますが、本事業は、延長二・四キロメートルの区間を高架化し、九カ所の踏切を除却することにより、富士街道などの交通渋滞の解消を図るものでございます。
 このうち、練馬高野台駅から石神井公園駅付近までの延長一・二キロメートルの区間につきましては、上り線の高架構造物がおおむね完成し、現在、軌道や電気設備の工事を進めており、今年度中に上り線を高架化いたします。これにより、この区間の踏切の遮断時間が約三割減少することが見込まれ、交通渋滞が緩和されるものと考えております。
 引き続き下り線の工事を進め、平成二十三年度までに高架化を完了し、この区間の踏切をすべて除却する予定であります。
 また、石神井公園駅付近から大泉学園駅までの延長一・二キロメートルの区間につきましても、平成二十四年度の工事着手に向けて用地取得を着実に進めてまいります。
 今後とも、関係住民の理解と協力を得ながら一日も早い完成を目指し、本事業に積極的に取り組んでまいります。
   〔都市整備局長河島均君登壇〕

○都市整備局長(河島均君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、外環整備に関する対応の方針の実行についてでございますが、国と都では、沿線区市で開催した地域課題検討会やオープンハウス等を通じて寄せられたさまざまな意見や要望への対応の方針を取りまとめ、四月に公表いたしました。
 今後、都は、事業を進めるに当たりまして、この方針に示した外環整備を契機とした周辺のまちづくりへの支援や協力などを着実に行ってまいります。
 また、沿線区市への情報提供や意見交換を行う場である連絡会などにおきまして、国の取り組み状況について、適宜、区市とともに確認を行い、外環事業の円滑な推進が図られるよう、国に対し、対応の方針の確実な履行を求めてまいります。
 次に、緑確保の総合的な方針についてでございますが、本方針は、緑の保全を一層強化するために、既存の緑の望ましいあり方や保全の取り組みの方向を明らかにし、区市町村とともに新たな施策の展開を目指すものでございます。
 昨年、緑の現状の調査に着手いたしまして、本年、有識者会議や都と区市町村による合同検討委員会を発足させ、検討を開始いたしました。
 具体的には、崖線の緑など保全すべき対象を明らかにした上で、特別緑地保全地区の指定を一層推進することや、民間による支援策も含め、社会全体で屋敷林の緑を保全する仕組みの構築等、新たな視点による検討を積極的に行っております。
 年内には、これらを盛り込んだ素案を作成し、パブリックコメントを実施した上で、年度末までに方針を取りまとめ、貴重な緑の保全を強力に推進してまいります。
 最後に、樹林地の所有者に対する負担軽減策についてでございますが、市街地に残る樹林地を保全し、良好に維持していくためには、お話のとおり、落ち葉の清掃など管理の問題に的確に対応していくことが重要でございます。
 このため、樹林地の管理を行うボランティア団体の育成やその活動に対する支援につきまして、有識者や区市町村の意見を踏まえながら、新たな仕組みの構築に取り組んでおります。
 また、都や区市町村が土地所有者等と契約をいたしまして緑地を公開する市民緑地の制度につきましてもより一層の普及を図るなど、樹林地の所有に対する負担軽減に向けた施策の検討を積極的に進めてまいります。
   〔主税局長熊野順祥君登壇〕

○主税局長(熊野順祥君) 緑の保全のための税の軽減についてお答えいたします。
 緑の保全は、都にとりまして重要な政策課題の一つであり、補助制度など他の施策とあわせて税制を活用していくことも有効であると考えております。
 二十三区内におきましては、既に一定の要件を満たす特定保存樹林地の固定資産税等を減免する制度がございますが、今後、緑の保全を図るために税制をどう活用していくかにつきまして、関係局と連携を図りながら、鋭意検討してまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

○産業労働局長(前田信弘君) 都市農業に関するご質問にお答えいたします。
 都市農業の振興への取り組みについてでありますが、東京の農業と農地は、新鮮で安全・安心な農産物を都民に提供するだけでなく、農業との触れ合いや体験の場の提供、都市環境の保全、災害時の避難場所の提供など多面的な機能を持ち、都民生活において重要な役割を果たしております。
 都はこれまで、都市農業の振興に向け、農業経営の向上や担い手の育成などの観点から、生産施設の整備支援、後継者に対する技術指導や研修の実施など、さまざまな施策を展開してまいりました。また、都市農地保全に向けては、農業、農地を生かしたまちづくり等、都独自の施策を展開するとともに、国に相続税制度や都市農地制度の改善を強く働きかけてまいりました。
 今後とも、これらの施策を着実に推進するとともに、経営改善への支援や遊休農地活用のための農業への都民参加の仕組みの充実を図るなどして、都市農業の一層の振興に努めてまいります。